(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024558
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】動物安楽死装置
(51)【国際特許分類】
A22B 3/00 20060101AFI20240215BHJP
A22B 3/08 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
A22B3/00
A22B3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127480
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】593138528
【氏名又は名称】株式会社新原産業
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】新原 弘二
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素ガスを利用して動物を安楽的に殺処分する装置であって、作業者の安全性を確実に担保しながら、動物を殺処分することができる動物安楽死装置を提供する。
【解決手段】作業者が出入り可能な作業室内に設置され、動物を収容する密閉空間を内部に有する処理室と、前記処理室内に二酸化炭素ガスを供給するガス供給手段と、前記処理室内のガスを前記作業室外へ排気する排気手段と、前記処理室内に前記作業室外の外気を吸気する吸気手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が出入り可能な作業室内に設置され、動物を収容する密閉空間を内部に有する処理室と、
前記処理室内に二酸化炭素ガスを供給するガス供給手段と、
前記処理室内のガスを前記作業室外へ排気する排気手段と、
前記処理室内に前記作業室外の外気を吸気する吸気手段と、を備えたことを特徴とする動物安楽死装置。
【請求項2】
前記処理室には、開閉扉の施錠と解錠を電気的に切り替える電磁錠が設けられ、
前記電磁錠を制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1記載の動物安楽死装置。
【請求項3】
前記処理室には、該処理室内の二酸化炭素ガス又は酸素の濃度を検知するセンサーを有し、
前記制御手段は、前記センサーからの信号を元に前記開閉扉の電磁錠の施錠と解錠を制御することを特徴とする請求項2記載の動物安楽死装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ガス供給手段による二酸化炭素ガスの供給と停止を制御し、
前記処理室の開閉扉の電磁錠による施錠状態で二酸化炭素ガスの供給を行うことを特徴とする請求項2記載の動物安楽死装置。
【請求項5】
前記排気手段は、前記処理室の密閉空間と前記作業室外部とを接続する排気管と、
前記排気管に接続された強制排気装置と、を有するとともに、
前記吸気手段は、前記処理室の密閉空間と前記作業室外部とを接続する吸気管と、
前記吸気管を開閉する吸気用電磁弁と、を有し、
前記強制排気装置と前記吸気用電磁弁とは、前記制御手段により制御されることを特徴とする請求項3又は4記載の動物安楽死装置。
【請求項6】
前記吸気手段は、前記吸気管を介して外気を強制的に前記処理室内に供給する強制吸気装置を有し、
前記制御手段により前記強制吸気装置が制御されることを特徴とする請求項5記載の動物安楽死装置。
【請求項7】
前記処理室の密閉空間に搬入及び搬出可能な台車であって、動物の収容部が設けられた台車を有することを特徴とする請求項1記載の動物安楽死装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜、家禽等の動物をできるだけ苦しませずに安楽的に殺処分する動物安楽死装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜や家禽等の動物を飼育している際に、伝染病等により殺処分せざるを得ない場合が生じる。また、保健所等で保護された犬、猫等の小動物についても一定期間に飼い主が見つからない場合等でも殺処分が行われている。
【0003】
動物をできるだけ苦痛を与えずに殺処分する方法としては、従来より、二酸化炭素ガス等を使用する方法が知られている(例えば、特許文献1、2等)。
【0004】
例えば、特許文献1では、小動物を格納して安楽死させる処分室と、この処分室に接続され常温の炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給手段と、前記処分室に接続される空気排出手段と、を備え、処分室内の空気を炭酸ガスに置換する事により、小動物を安楽死させるものが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、殺処分の対象となる動物に麻酔ガスを吸入させることによって麻酔をかけ、次いで動物が収容されている処理室内を酸欠状態にして、動物を死に至らしめる動物を安楽死させる方法や装置について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2987772号公報
【特許文献2】特開2005―143389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような従来の二酸化炭素ガスや麻酔ガスを利用して動物を殺処分する装置では、処理後に処分室を開けたり、或いは処分中に誤って処分室を開けたりした際に、処分室内に滞留している高濃度の二酸化炭素ガス等が外部に流出することから、作業者が誤って吸い込んでしまうおそれがあった。したがって、作業者が酸欠症状や不快感、人体に被害等を及ぼしてしまい、安全性に問題があるものであった。
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、二酸化炭素ガスを利用して動物を安楽的に殺処分する装置であって、特に養鶏場における孵卵場において多く発生する成長不良の雛の安楽的な殺処分の際に、作業者の安全性を確実に担保しながら、殺処分することができる動物安楽死装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る動物安楽死装置は、作業者が出入り可能な作業室内に設置され、動物を収容する密閉空間を内部に有する処理室と、前記処理室内に二酸化炭素ガスを供給するガス供給手段と、前記処理室内のガスを前記作業室外へ排気する排気手段と、前記処理室内に前記作業室外の外気を吸気する吸気手段と、を備える。
【0010】
また、前記処理室には、開閉扉の施錠と解錠を電気的に切り替える電磁錠が設けられ、前記電磁錠を制御する制御手段を有することとしてもよい。
【0011】
また、前記処理室には、該処理室内の二酸化炭素ガス又は酸素の濃度を検知するセンサーを有し、前記制御手段は、前記センサーからの信号を元に前記開閉扉の電磁錠の施錠と解錠を制御することとしてもよい。
【0012】
また、前記制御手段は、前記ガス供給手段による二酸化炭素ガスの供給と停止を制御し、前記処理室の開閉扉の電磁錠による施錠状態で二酸化炭素ガスの供給を行うこととしてもよい。
【0013】
また、前記排気手段は、前記処理室の密閉空間と前記作業室外部とを接続する排気管と、前記排気管に接続された強制排気装置と、を有するとともに、前記吸気手段は、前記処理室の密閉空間31と前記作業室外部とを接続する吸気管と、前記吸気管を開閉する吸気用電磁弁と、を有し、前記強制排気装置と前記吸気用電磁弁とは、前記制御手段により制御されることとしてもよい。
【0014】
また、前記吸気手段は、前記吸気管を介して外気を強制的に前記処理室内に供給する強制吸気装置を有し、前記制御手段により前記強制吸気装置が制御されることとしてもよい。
【0015】
また、前記処理室の密閉空間に搬入及び搬出可能な台車であって、動物の収容部が設けられた台車を有することとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、作業者が出入り可能な作業室内に設置され、動物を収容する密閉空間を内部に有する処理室と、前記処理室内に二酸化炭素ガスを供給するガス供給手段と、前記処理室内のガスを前記作業室外へ排気する排気手段と、前記処理室内に前記作業室外の外気を吸気する吸気手段と、を備えたことから、動物を安楽的に殺処分することができるとともに、処理後には処理室内の高濃度の二酸化炭素ガスを外気にスムーズに排気して、作業者が誤って吸入するのを良好に防止できる。その結果、作業者が安全な状態を保持しながら、動物を殺処分することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態における動物安楽死装置の概略図である。
【
図2】
図1の動物安楽死装置の処理室の斜視図である。
【
図3】
図1の動物安楽死装置の処理室の縦断面説明図である。
【
図4】
図1の動物安楽死装置の制御手段の概略説明図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態における動物安楽死装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、好適な実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施の形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
本発明の動物安楽死装置は、例えば、家畜や家禽、犬、猫等の動物を二酸化炭素ガスで意識を失わせた後に安楽的に死に至らしめるための動物殺処分装置である。
【0020】
図1ないし
図4は、本発明の動物安楽死装置の第1の実施形態を示している。本実施形態に係る動物安楽死装置1は、
図1に示すように、作業室2と、作業室2内に設置される処理室3と、ガス供給手段4と、排気手段5と、吸気手段6と、を備えている。さらに動物安楽死装置1は、該処理室3及びガス供給手段4、排気手段5、吸気手段6を制御しうる制御手段7を備えている。
【0021】
本実施形態では、処分対象の動物の一例として、ブロイラー等の肉鶏等、特に鶏の雛に適用する例で説明する。
【0022】
図1に示すように、作業室2は、例えば、外部空間EXと隔離されるように天壁及び側壁で囲まれ、作業者が出入り可能な大きさの作業空間21を形成した部屋等からなる。作業室2では、例えば、処分対象となる鶏の雛等を選別する作業や、処分対象の鶏の雛等を運搬する作業等が行われる。図示しないが、作業室2には、作業者が出入りしたり、動物を搬入・搬出したりする扉が設けられている。
【0023】
処理室3は、例えば、鶏の雛等の動物を収容する密閉空間31が内部に形成された処理ボックスからなる。処理室3は、該動物を内部の密閉空間31に搬入・搬出するための開閉扉32が設けられている。処理室3は、作業室2の内部空間の所定の位置、例えば、壁際や隅部等に設置されている。
【0024】
図2に示すように、処理室3は、その密閉空間31を囲む筐体が、例えば、ステンレス等の硬質素材で設けられており、底壁と4つの側壁と天壁とを有する略直方体状の中空箱体からなる。処理室3は、1つの側壁を開閉扉32として、開閉可能に設けられている。本実施形態では、開閉扉32が設けられている側を処理室の前面とし、その反対側を後面とし、前後方向と直交する横方向を左右方向する。
【0025】
処理室3は、例えば、前後幅800mm×左右幅1100mm×高さ1400mm程度のサイズで設けられている。処理室3は、例えば、底壁が作業室の床面から100mm程度高い位置となるように脚部で支持されている。なお、処理室3の形状やサイズは任意でよく、処理対象の動物等により変更される。
【0026】
図3に示すように、密閉空間31は、動物を収容する中空内部空間であり、処理ガスである二酸化炭素ガスを閉じ込めうる空間である。密閉空間31は、多数の鶏の雛等の小動物を収容した状態で出し入れできる台車8を格納可能な大きさとなっている。
【0027】
本実施形態では、密閉空間31の内部には、2台の台車8を左右に並べた状態で格納できるようなサイズとなっている。密閉空間31の底壁上の左右中央位置には、2台の台車8の左右を位置決めするガイド兼仕切り311が立設されている。
【0028】
開閉扉32は、例えば、側壁に蝶番321を介して処理室本体に対して開閉可能に設けられた横開き式の扉からなる。開閉扉32と処理室本体との当着部分には、ガスが漏れるのを防ぐシール部材(図示せず)が設けられる。
【0029】
さらに、開閉扉32には、閉鎖状態で密閉状態を保持するための密閉用ハンドル322が取り付けられている。密閉用ハンドル322は、処理室3の側壁に固定されたロック受け部323に対してロック、解除可能に設けられている。密閉用ハンドル322は、開閉扉に上下に所定の間隔をあけて2個取り付けられている。開閉扉32を閉鎖した状態で手動で密閉用ハンドル322をロック状態とすることで、開閉扉の閉鎖状態が保持できる。なお、開閉扉32は、観音開き扉や上開き扉、下開き扉等、任意の構造としてもよい。
【0030】
開閉扉32の上部側には、2つの確認窓324が設けられており、処理室3の外部から密閉空間31の様子を確認することができる。
【0031】
処理室3には、電気的に開閉扉32の施錠と解錠を切り替える電磁錠33が設けられている。電磁錠33は、後述の制御手段7により制御される。処理室3は、手動の密閉用ハンドル322に加えて、電磁錠33により開閉扉32を施錠させておくことができるので、例えば、内部に高濃度の二酸化炭素ガスが滞留している状態では人力では開閉扉32を開けないようにロック状態を保持し、作業者が誤って開閉扉32を開けるのを防止し事故を防ぐことができる。
【0032】
電磁錠33は、例えば、制御手段7からの電気信号により作動するソレノイドロック等が利用される。なお、電磁錠33は電気的に制御されることから、例えば、落雷等で作業室2等が停電すると開閉扉32を解錠できなくなるおそれがあるので、停電等の緊急時に手動で電磁錠33を解錠できるように設計しておくとよい。
【0033】
処理室3の前面側の下端には、作業室2の床面から内部の密閉空間31の底壁面を接続したスロープ34が設けられている。スロープ34は、例えば、ステンレス等の硬質素材で形成されており、角度が10度程度に設定されている。これにより、台車8を処理室3の密閉空間31内へスムーズに搬入・搬出することができる。なお、スロープ34は、処理室3に出し入れ自在な構造とすることとしてもよい。
【0034】
ガス供給手段4は、処理室3の密閉空間31内に二酸化炭素ガスを供給するガス供給手段である。
図1に示すように、ガス供給手段4は、例えば、液化された二酸化炭素ガスを封入したガスボンベ41と、該ガスボンベ41に取り付けられた圧力調整器42と、一端が圧力調整器42に接続されるとともに他端が処理室3に接続されたガス供給管43と、ガス供給管43を開閉する電磁弁44と、を有する。
【0035】
ガスボンベ41は、従来周知の液化炭酸ガスボンベからなり、作業室2の床上等に設置されている。圧力調整器42は、例えば、ヒータ付き又はヒータレス等の従来周知の調整器からなり、ガスボンベ41内の液化二酸化炭素を所定の圧力で気化させ、所定の圧力でガス供給管43内に圧送する。
【0036】
ガス供給管43は、例えば、処理室3の天壁のやや後面寄り位置に接続され、密閉空間31と内部連通されている。ガス供給管43は、3つに分岐され、密閉空間31へのガスの導入口を左右方向に所定の間隔で離隔して設けられている。ガス供給管43から処理室3の密閉空間31内へ所定の圧力で供給されることにより、該密閉空間31では対流が生じ、ガス濃度のムラが比較的少ない状態を期待できる。なお、ガス供給管43の処理室3の接続口は、例えば、処理室3の天壁にソケット45等を設け、着脱可能に接続されている。
【0037】
電磁弁44は、制御手段7により開閉制御されて、処理室3の密閉空間31内への二酸化炭素ガスの供給・停止を切り替える。
【0038】
ガス供給手段4は、例えば、該密閉空間31内に該密閉空間31の容積割合の10~20%/分程度の量で供給するように圧力調整器42が設定するとよい。例えば、3~6分程度経過すると、密閉空間31内の二酸化炭素ガスの濃度が約60%以上となるように設定されると好適である。
【0039】
ガス供給手段4は、上記のような量で徐々に二酸化炭素の濃度を上昇させることで、鶏の雛等の対象動物を眠らせるように意識を低下させることができる。二酸化炭素ガスの濃度を急激に上昇させると動物が苦しんで死に至るおそれがあるので、上記のような設定が好適である。さらに、該密閉空間31内の二酸化炭素ガスの濃度が60%以上の状態で、5分間程度経過させると、意識を失った状態の鶏の雛等を確実に死に至らしめることができる。
【0040】
排気手段5は、例えば、処理後に処理室3の密閉空間31内の高濃度の二酸化炭素ガスを作業室2外へ排気する排気手段である。すなわち、排気手段5は、作業者がいる空間である作業室2内の空間に二酸化炭素ガスが流れないように設けられる。
【0041】
本実施形態では、排気手段5は、
図1に示すように、一端が処理室3に接続されるとともに他端が作業室2の外部空間EXまで引き出された排気管51と、該排気管51に接続された強制排気装置52と、を含む。
【0042】
排気管51は、例えば、一端が処理室3の下部側に接続されている。これにより、空気より重い二酸化炭素ガスの排気をスムーズに行わせるようになっている。排気管51は、作業室2の側壁を貫通して、他端開口が外部空間EXに設定されている。なお、排気管51には、例えば、制御手段7により開閉制御される電磁弁等が設けられていてもよい
【0043】
強制排気装置52は、例えば、作業室2の外部空間EXに配置され、排気管51の他端側に接続されている。本実施形態では、強制排気装置52は、例えば、排気ファンからなる。強制排気装置52は、例えば、排気ブロワや負圧吸引ポンプ等、その他任意の排気装置としてもよい。なお、強制排気装置52は、処理室3側の端部に接続された構成や、排気管51の中間位置に介設される構成としても良い。また、強制排気装置52は、作業室2の側壁に埋め込み状に固定して設置することとしてもよい。
【0044】
強制排気装置52は、制御手段7により駆動、停止が制御される。強制排気装置52が駆動されると、排気管51を介して処理室3の密閉空間31内の二酸化炭素ガスを吸引して、作業室2の外部空間EXに強制的に排気させる。
【0045】
さらに、本実施形態では、排気手段5は、前記のガス供給手段4により処理室3の密閉空間31に二酸化炭素ガスが圧力供給される際に、処理室3の空気(酸素)が排出されるための空気排気手段も兼用している。なお、ガス供給手段4により二酸化炭素ガスが処理室3内に供給される際には、強制排気装置52は停止させた状態で、処理室3内の圧力で自然に空気が排出される。
【0046】
吸気手段6は、排気手段5による二酸化炭素ガスの強制排気に伴って、処理室3の密閉空間31内に作業室2外の外気を供給して、スムーズに処理室3の密閉空間31の二酸化炭素ガスを空気と入れ替えるための吸気手段である。
【0047】
本実施形態では、吸気手段6は、
図1に示すように、例えば、一端が処理室3に接続されるとともに他端側が作業室2の外部空間EXに引き出された吸気管61と、該吸気管61を開閉する吸気用電磁弁62と、を有する
【0048】
吸気管61は、一端が処理室3の天壁の隅部近傍位置に接続されており、該処理室3の密閉空間31と内部連通されている。吸気管61は、作業室2の天壁(又は側壁)を貫通して、作業室2の外部空間EXに引き出されている。吸気管61の他端側の開口が外気取り込み口として外部空間EXに臨ませるように、配管されている。
【0049】
吸気用電磁弁62は、例えば、吸気管61と処理室3との接続口部に設置されている。吸気用電磁弁62は、制御手段7により開閉制御される。なお、吸気管61は、例えば、ガス供給手段4により二酸化炭素ガスを密閉空間31に供給して処理室内の空気と二酸化炭素と置換する際に、吸気用電磁弁62を開いておき、該吸気管61を介して処理室内の空気を排気させることとしてもよい。
【0050】
図4に示すように、制御手段7は、前記したように、処理室3の開閉扉32の電磁錠33と、ガス供給手段4の電磁弁44と、排気手段5の強制排気装置52と、吸気手段6の吸気用電磁弁62と、を制御する。制御手段7は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)等からなり、演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置を備え、予め記憶装置に記憶されたプログラムに基づいて各制御を行う。制御手段7は、例えば、処理室3の天壁上にそのコントローラボックスに収容されて設置されている。
【0051】
制御手段7には、各装置を制御するための条件を入力する要素として、処理室3の密閉空間31内の特定のガスの濃度を検知するガス濃度センサー71と、時間を計測する第1、第2タイマー721、722と、が接続されている。さらに、制御手段7には、操作するための操作パネル73が接続されている。
【0052】
本実施形態では、ガス濃度センサー71は、例えば、処理室3の密閉空間31内部に設置され、該密閉空間31の酸素ガスの濃度を測定する。酸素ガスの濃度を測定することにより、その対応関係で二酸化炭素ガスの濃度を推定することができる。例えば、該密閉空間31の酸素ガス濃度が8%となると、二酸化炭素ガス濃度は60%に対応すると考えられる。これらの酸素―二酸化炭素の濃度対応関係を対応表や計算式として予め記憶させておくとよい。なお、ガス濃度センサー71は、二酸化炭素濃度を測定するものでもよい。
【0053】
第1タイマー721は、ガス供給手段4の電磁弁44の開放時間を計時するタイマーである。第1タイマー721は、例えば、ガス供給手段4の電磁弁44が開いた際に作動し、時間を計測する。
【0054】
第2タイマー722は、処理室3での処理時間を計測するタイマーである。第2タイマー722は、ガス供給手段4の電磁弁44が閉鎖された際に作動し、時間を計測する。
【0055】
操作パネル73は、動物安楽死装置1をオン又はオフするための操作ボタンと、ガス供給手段4等の作動状態を点灯表示する作動表示ランプと、前記ガス濃度センサー71により測定したガス濃度の表示装置と、を備えている。
【0056】
本実施形態では、制御手段7は、操作パネル73の操作スイッチを操作することにより、作動表示ランプを点灯させるとともに、処理室3の開閉扉32の電磁錠33を作動させて施錠させる。電磁錠33が施錠された状態で、制御手段7は、吸気手段6の吸気用電磁弁62を閉鎖し、ガス供給手段4の電磁弁44を開放して処理室3の密閉空間31に二酸化炭素ガスを所定の圧力で供給する。
【0057】
制御手段7は、ガス供給手段4の電磁弁44が開放されると、第1タイマー721により計時する。さらに、制御手段7は、随時、ガス濃度センサー71により処理室3の密閉空間31の酸素ガス濃度を測定して、操作パネル73に酸素ガス濃度を表示する。
【0058】
第1タイマー721により所定時間経過したら、制御手段7は、ガス供給手段4の電磁弁44を閉鎖し処理室3の密閉空間31へのガス供給を停止する。なお、制御手段7は、ガス濃度センサー71により所定の酸素ガス濃度以下となった際に、ガス供給を停止するように制御することとしてもよい。ガス供給が停止すると同時に第2タイマー722が作動する。該処理室3の密閉空間31では、所定の濃度の二酸化炭素ガスが充満しており、所定時間、動物を二酸化炭素ガスに暴露させて安楽死処理を行う。
【0059】
第2タイマー722により所定時間経過したら、制御手段7は、排気手段5の強制排気装置52を駆動させると同時に、吸気手段6の吸気用電磁弁62を開放させる。
【0060】
ガス濃度センサー71で処理室3の密閉空間31内の酸素ガス濃度が所定濃度以上となったら(二酸化炭素ガス濃度が所定濃度以下となったら)、制御手段7は、排気手段5の強制排気装置52を停止し、操作パネル73の作動表示ランプを消灯する。さらに、制御手段7は、開閉扉32の電磁錠33を解錠制御する。
【0061】
図3に示すように、台車8は、4つの車輪81で支持される荷台82に取手83が取り付けられて設けられている。荷台82上には、複数のコンテナ84が段積み状に載置されている。台車8は、例えば、車幅452mm程度、前後奥行き640mm程度、コンテナを段積みした総高さが955mm程度に設定されている。前記のように、2つの台車8が処理室3の密閉空間内部に横並び状態で収容される。
【0062】
各コンテナ84は、処理対象の動物である鶏の雛等を多数収容できる収容部となっている。それぞれのコンテナ84のサイズは、例えば、奥行き618mm×横幅428mm×高さ191mm程度に設けられている。コンテナ84は、例えば、メッシュ等からなり、前記のように処理室3の上部から供給される二酸化炭素ガスが下方に流れやすくなっている。
【0063】
本実施形態の動物安楽死装置1を使用する際には、作業室2内に台車8のコンテナ84に鶏の雛等の対象動物を収容した状態で搬入しておく。制御手段7の操作パネル73で装置が停止状態であることを確認して、開閉扉32を開き処理室3の前面側を開放する。台車8を押して、処理室3の密閉空間31内に台車8を収容し、該鶏の雛を密閉空間31内に収容した状態で開閉扉32を閉じる。開閉扉32の密閉用ハンドル322を介して密閉状態を保持させる。
【0064】
ガス供給手段4のガスボンベ41を開くとともに、圧力調整器42でガスの圧力を調整しておく。ガス供給手段4は、1分間当たりの炭酸ガスの供給量が、密閉空間31の容積の10~20%の割合で供給されるように設定する。
【0065】
制御手段7の操作パネル73の操作スイッチを操作すると、作動表示ランプが点灯し、処理室3の開閉扉32は電磁錠33によって施錠される。電磁錠33による施錠状態では人力では開閉扉32を開放することができなくなるので、作業者が誤って開閉扉を開けて事故が発生するのを良好に防止することができる。電磁錠33の施錠状態で、ガス供給手段4の電磁弁44が開放され、二酸化炭素ガスが密閉空間31に供給される。さらに、ガス濃度センサー71により酸素ガス濃度を測定し、操作パネルに酸素濃度を表示させる。
【0066】
第1タイマー721により計時した時間が所定時間経過し、処理室3の密閉空間31の二酸化炭素ガスの濃度が60%以上になると、ガス供給手段4の電磁弁44を閉鎖し、処理室3への二酸化炭素ガスの供給を停止する。この状態で第2タイマー722により処理時間を計測しながら、鶏の雛を安楽死処理させる。
【0067】
第2タイマー722により5分経過後、制御手段7は排気手段5の強制排気装置52を駆動させるとともに、吸気手段6の吸気用電磁弁62を開放する。これにより処理室3の密閉空間31内の二酸化炭素ガスを排気させ、外気を取り入れる。ガス濃度センサー71により、該密閉空間31内の酸素ガス濃度が所定以上に復帰したら、安全な二酸化炭素濃度になったことが確認できる。
【0068】
また、例えば、強制排気装置52の駆動に伴って吸気手段6を介して処理室3内に外部空気を取り入れる量を、少なくとも処理室3の容量と同等かそれ以上となるように設定するとよい。処理室3の容量以上の外部空気を処理室3内に導入することで、より確実に二酸化炭素を酸素に入れ替えて、二酸化炭素ガス濃度を人体に安全なレベルまで下げることができる。
【0069】
このように安全なガス濃度状態で、制御手段7は、強制排気装置52を停止し、処理室3の開閉扉32の電磁錠33を解錠する。作業者は、操作パネル73の作動表示ランプが消灯したのを確認して、開閉扉32の密閉用ハンドル322を操作して、開閉扉32を開放する。
【0070】
その後、台車8を処理室3から搬出して、安楽死させた鶏の雛等の対象動物を取り出す。台車8を移動させながら、作業室2等の外部へ動物を運び出し、最終的に埋め立てや焼却等により処分する。このようにして、作業者は鶏の雛等の安楽死処理全体を安全に行うことができる。
【0071】
次に
図5を参照しつつ本発明の動物安楽死装置の第2の実施形態について説明する。前記実施形態と同一部材には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0072】
本実施形態の動物安楽死装置1Aは、前記実施形態同様に、作業室2と、処理室3と、ガス供給手段4と、排気手段5と、吸気手段6と、制御手段7と、を備えている。
【0073】
本実施形態では、吸気手段6の構成が前記実施形態と異なっている。
図5に示すように、吸気手段6には、処理室3の密閉空間31と外部空間EXとを接続した吸気管61に外気を処理室3内へ比較的高い圧力で圧送する強制吸気装置63が設けられている。
【0074】
強制吸気装置63は、例えば、比較的大きな圧力で送気できるコンプレッサーからなる。本実施形態では、強制吸気装置63のコンプレッサーによる吸気量は、強制排気装置52による排気量と比較して、比較的大きく設定されている。なお、強制吸気装置63は、ファンやブロワ等その他任意の吸気装置でもよい。
【0075】
強制吸気装置63は、制御手段7によって駆動・停止制御される。なお、制御手段7により、送る空気量や空気を送る圧力等を制御することとしてもよい。また、強制吸気装置63の吸気量と、強制排気装置52の排気量とは、略同じ程度に設定してもよく、条件等に応じて任意に調整するとよい。
【0076】
本実施形態に係る動物安楽死装置1Aを使用する際には、前記実施形態と略同様な手順及び制御で安楽死処理される。本実施形態では、処理室3内に二酸化炭素ガスを充満させて鶏の雛等を安楽死処理した後に、二酸化炭素ガスを排気する際に、制御手段7によって、排気手段5の強制排気装置52を駆動させると同時に、吸気手段6の吸気用電磁弁62の開放と強制吸気装置63を駆動させる。
【0077】
処理室3内では、強制吸気装置63により吸気管61を介して上方側から空気が高圧力で圧送されてくることにより、早期に同処理室内に外気を取り入れるとともに、比重が重い二酸化炭素ガスを効率良く排気することができる。すなわち、排気手段5の強制排気装置52と吸気手段6の強制吸気装置63とを協働させて、処理室3内の二酸化炭素ガスを、よりスピーディに、かつより効率よく排気して空気に置換することができる。
【0078】
制御手段7は、ガス濃度センサー71により、該密閉空間31内の酸素ガス濃度が所定以上に復帰したことを検知すると、排気手段5の強制排気装置52を停止させると同時に、吸気手段6の強制吸気装置63を停止させる。
【0079】
本実施形態でも前記実施形態同様に、作業者の安全性を保持しながら、鶏の雛等の対象動物を効率良く安楽死処理させることができる。
【0080】
本発明の動物安楽死装置は、例えば、鶏等の家禽やその雛等を安楽死させるのに良好に適用できる。
【符号の説明】
【0081】
1、1A 動物安楽死装置
2 作業室
3 処理室
31 密閉空間
32 開閉扉
33 電磁錠
4 ガス供給手段
5 排気手段
51 排気管
52 強制排気装置
6 吸気手段
61 吸気管
62 吸気用電磁弁
63 強制吸気装置
7 制御手段
71 ガス濃度センサー
721 第1タイマー
722 第2タイマー
8 台車