IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ マツイカガク株式会社の特許一覧

特開2024-24560金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物および積層体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024560
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物および積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20240215BHJP
【FI】
C09D11/101
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127483
(22)【出願日】2022-08-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(71)【出願人】
【識別番号】592057961
【氏名又は名称】マツイカガク株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三木 健生
(72)【発明者】
【氏名】植田 俊
(72)【発明者】
【氏名】桃川 大毅
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AE06
4J039BB01
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE22
4J039BE27
4J039EA04
4J039EA05
4J039EA38
4J039EA43
4J039GA02
4J039GA05
(57)【要約】
【課題】蒸気レトルト耐性だけでなく熱水レトルト耐性にも優れ、かつ、金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性が優れる金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物を提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂と、着色剤と、重合性化合物と、重合開始剤とを含み、ポリエステル樹脂は、水酸基過剰率が1.15~1.90であり、重合性化合物のモノマー成分の平均アクリル当量は、110~145である、金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂と、着色剤と、重合性化合物と、重合開始剤とを含み、
前記ポリエステル樹脂は、水酸基過剰率が1.15~1.90であり、
前記重合性化合物のモノマー成分の平均アクリル当量は、110~145である、金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂は、
多塩基酸を含む酸成分が、2価の酸であり、
多価アルコール成分が、2価のアルコールである、請求項1記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂は、多塩基酸を含む酸成分として、脂環式多塩基酸、脂環式多塩基酸の無水物、芳香族系多塩基酸および芳香族系多塩基酸の無水物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂の酸価は、35mgKOH/g以下である、請求項1または2記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、1000~5000である、請求項1または2記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂の含有量は、10~40質量%である、請求項1または2記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項7】
金属板またはベースコート層を設けた金属板と、請求項1または2記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物からなる皮膜と、熱硬化性トップコート用ニス層とが、この順に積層された、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物および積層体に関する。より詳細には、本発明は、蒸気レトルト耐性だけでなく熱水レトルト耐性にも優れ、かつ、金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性が優れる金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
食料缶などの金属容器の表面に印刷層を形成するために、種々のインキ組成物が開発されている。特許文献1には、水素添加ビスフェノールAおよびドデセニル無水コハク酸等を含むポリエステル樹脂を含む光硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57-14613号公報
【特許文献2】特開2022―65754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食料缶は、その製造過程において、蒸気レトルトや熱水レトルト等のレトルト処理が行われる。しかしながら、特許文献1に記載のインキ組成物を用いた食料缶は、熱水レトルト耐性が不充分であり、白化を生じる可能性がある。そのため、特許文献1に記載のインキ組成物は、金属容器の用途が限定される。
【0005】
また、インキ組成物は、金属基材に印刷される場合、密着性やブロッキング耐性(基材への裏移り耐性)が求められる。密着性およびブロッキング耐性は、いわゆるトレードオフの関係にあり、これらの物性を両立させるために、例えば特許文献2に記載の活性エネルギー線硬化型インキが知られている。しかしながら、特許文献2に記載のインキ組成物は、重い金属板を用いた印刷板を積み重ねた場合に、ブロッキング耐性が充分でなく、また、レトルト耐性も食料缶用途の滅菌処理に耐えられるものではなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、蒸気レトルト耐性だけでなく熱水レトルト耐性にも優れ、かつ、金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性が優れる金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物および積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、使用するポリエステル樹脂の水酸基過剰率、および、重合性化合物のモノマー成分の平均アクリル当量に着目し、これらが特定の範囲に含まれるよう調整されることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。上記課題を解決する本発明の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物および積層体には、以下の構成が主に含まれる。
【0008】
(1)ポリエステル樹脂と、着色剤と、重合性化合物と、重合開始剤とを含み、前記ポリエステル樹脂は、水酸基過剰率が1.15~1.90であり、前記重合性化合物のモノマー成分の平均アクリル当量は、110~145である、金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【0009】
このような構成によれば、得られる皮膜は、蒸気レトルト耐性だけでなく熱水レトルト耐性にも優れる。また、得られる皮膜は、金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性が優れる。
【0010】
(2)前記ポリエステル樹脂は、多塩基酸を含む酸成分が、2価の酸であり、多価アルコール成分が、2価のアルコールである、(1)記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【0011】
このような構成によれば、得られる皮膜は、蒸気レトルト耐性だけでなく熱水レトルト耐性にもより優れる。また、得られる皮膜は、金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性がより優れる。
【0012】
(3)前記ポリエステル樹脂は、多塩基酸を含む酸成分として、脂環式多塩基酸、脂環式多塩基酸の無水物、芳香族系多塩基酸および芳香族系多塩基酸の無水物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、(1)または(2)記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【0013】
このような構成によれば、得られる皮膜は、蒸気レトルト耐性だけでなく熱水レトルト耐性にも、さらに優れる。
【0014】
(4)前記ポリエステル樹脂の酸価は、35mgKOH/g以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【0015】
このような構成によれば、得られる皮膜は、より優れた蒸気レトルト耐性および熱水レトルト耐性を有する。
【0016】
(5)前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、1000~5000である、(1)~(4)のいずれかに記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【0017】
このような構成によれば、得られる皮膜は、金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性が、さらに優れる。
【0018】
(6)前記ポリエステル樹脂の含有量は、10~40質量%である、(1)~(5)のいずれかに記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【0019】
このような構成によれば、得られる皮膜は、金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性が、さらに優れる。
【0020】
(7)金属板またはベースコート層を設けた金属板と、(1)~(6)のいずれかに記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物からなる皮膜と、熱硬化性トップコート用ニス層とが、この順に積層された、積層体。
【0021】
このような構成によれば、得られる積層体は、蒸気レトルト耐性だけでなく熱水レトルト耐性にも優れる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、蒸気レトルト耐性だけでなく熱水レトルト耐性にも優れ、かつ、金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性が優れる金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物および積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物>
本発明の一実施形態の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物(以下、インキ組成物ともいう)は、ポリエステル樹脂と、着色剤と、重合性化合物と、重合開始剤とを含む。ポリエステル樹脂は、水酸基過剰率が1.15~1.90である。重合性化合物のモノマー成分の平均アクリル当量は、110~145である。以下、それぞれについて説明する。
【0024】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、多塩基酸を含む酸成分と多価アルコール成分とを構成成分とするポリエステルである。ポリエステル樹脂は、多塩基酸を含む酸成分が2価の酸であり、多価アルコール成分が2価のアルコールであることが好ましい。これにより、得られる皮膜は、蒸気レトルト耐性だけでなく熱水レトルト耐性にもより優れる。また、得られる皮膜は、金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性がより優れる。
【0025】
酸成分に含まれる多塩基酸は特に限定されない。多塩基酸は、複数のカルボキシ基を有する化合物であり、多価アルコール成分と縮重合して高分子量化させるための成分である。多塩基酸としては芳香族多塩基酸、脂肪族多塩基酸、脂環式多塩基酸、α、β-不飽和ジカルボン酸等の化合物を使用できる。これらの中でも、多塩基酸を含む酸成分は、脂環式多塩基酸、脂環式多塩基酸の無水物、芳香族系多塩基酸および芳香族系多塩基酸の無水物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。複数のカルボキシ基を有する化合物は、2または3以上のカルボキシ基を備えており、これらの酸無水物であってもよい。また、酸無水物基は、2つのカルボキシル基から脱水によって生成するものであるため、本実施形態においては、酸無水物基1個はカルボキシル基2個に相当するものとする。
【0026】
芳香族多塩基酸としては、例えば、オルソフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族多塩基酸としては、例えばコハク酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、およびダイマー酸等が挙げられる。脂環式多塩基酸としては、例えば1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。α、β-不飽和ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。なお、これらの化合物のアルキルエステル、および酸無水物も使用することができる。これらの中でも、酸成分は、脂環式多塩基酸又はその無水物、芳香族系多塩基酸又はその無水物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。これにより、インキ組成物は、より優れた蒸気レトルト耐性および熱水レトルト耐性を有する。
【0027】
多価アルコール成分は、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシ)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシ)グリコール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等である。これらの中でも、多価アルコール成分は、水添ビスフェノールA、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、インキ組成物は、より優れた蒸気レトルト耐性および熱水レトルト耐性を有する。
【0028】
本実施形態のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、1000以上であることが好ましく、1300以上であることがより好ましい。また、ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の重合平均分子量が上記範囲内であることにより、本実施形態のインキ組成物を用いて得られる皮膜は、より優れた金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性を有する。なお、本実施形態のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、たとえば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0029】
本実施形態のポリエステル樹脂の水酸基過剰率は、1.15~1.90である。水酸基過剰率は、1.15以上であればよい。また、水酸基過剰率は、1.90以下であればよく、1.6以下であることが好ましい。水酸基過剰率が1.15未満である場合、インキ組成物は、得られる皮膜のレトルト耐性のうち、熱水レトルト耐性が劣る。一方、水酸基過剰率が1.90を超える場合、インキ組成物は、金属基材に対するブロッキング耐性を維持したまま、密着性を向上させることができない。
【0030】
なお、本実施形態において、カルボキシル基に対する水酸基のモル比率である水酸基過剰率(OH量/COOH量)は、用いたモノマーの配合に基づき、以下の式によりOH量およびCOOH量を算出し、OH量/COOH量を算出することにより求め得る。
OH量=配合に使用した各モノマーのモル数×価数
COOH量=配合に使用した各モノマーのモル数×価数
【0031】
ポリエステル樹脂の酸価は特に限定されない。一例を挙げると、ポリエステル樹脂の酸価は、0.1mgKOH/g以上であることが好ましい。また、ポリエステル樹脂の酸価は、35mgKOH/g以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の酸価が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、より優れた蒸気レトルト耐性および熱水レトルト耐性を有する。なお、本実施形態において、酸価は、例えば、中和滴定法により算出することができる。
【0032】
ポリエステル樹脂の含有量は、インキ組成物中、10質量%以上であることが好ましい。また、ポリエステル樹脂の含有量は、インキ組成物中、40質量%以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、本実施形態のインキ組成物を用いて得られる皮膜は、より優れた金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性を有する。
【0033】
また、上記ポリエステル樹脂に加え、従来、用いられるインキ用樹脂が併用されてもよい。インキ用樹脂は、石油樹脂、エポキシ樹脂、アリル樹脂、ケトン樹脂などである。
【0034】
(着色剤)
着色剤は特に限定されない。一例を挙げると、着色剤は、各種無機顔料または有機顔料である。
【0035】
無機顔料、有機顔料は、耐熱性、耐光性、レトルト耐性を有するものであることが好ましい。無機顔料は、酸化チタン、シリカ、カーボンブラック等である。有機顔料は、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キノフタロン系顔料等である。
【0036】
着色剤の含有量は、種類や目的によって適宜調整される。一例を挙げると、着色剤の含有量は、インキ組成物中、10質量%以上であることが好ましい。また、着色剤の含有量は、インキ組成物中、60質量%以下であることが好ましい。着色剤の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、分散安定性が優れ、皮膜物性においては、顔料濃度が高いことによる弊害を回避できる。
【0037】
(重合性化合物)
重合性化合物は、重合性官能基を有し、活性エネルギー線の照射によって重合する化合物である。重合性化合物は、好ましくは光の照射によって重合する光ラジカル重合性化合物である。光重合性化合物は、光重合性のモノマー又はオリゴマーであってよい。
【0038】
光重合性化合物は特に限定されない。一例を挙げると、光重合性化合物は、エチレン性不飽和基を有するモノマー(エチレン性不飽和モノマー)等である。ここで、エチレン性不飽和モノマーとは、エチレン性不飽和結合(炭素-炭素二重結合)を有するモノマーである。エチレン性不飽和モノマーは、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等のエチレン性不飽和基を有するモノマー(ビニルモノマー)である。
【0039】
エチレン性不飽和基は、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基、(メタ)アクリロイル基等であってもよく、好ましくは(メタ)アクリロイル基である。なお、本実施形態において、「(メタ)アクリロイル基」は、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」を意味する。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリルアミド基」についても同様である。
【0040】
ラジカル重合性化合物は、モノマー成分として、(メタ)アクリレート化合物等を含む。モノマー成分は、(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートモノマーであってもよく、(メタ)アクリロイル基を複数有する多官能(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。
【0041】
単官能(メタ)アクリレートモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、単官能(メタ)アクリレートモノマーは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド等である。
【0042】
多官能(メタ)アクリレートモノマーは、2官能(メタ)アクリレートモノマー、3官能(メタ)アクリレートモノマー、4官能(メタ)アクリレートモノマー、5官能(メタ)アクリレートモノマー、6官能(メタ)アクリレートモノマー等であってよく、ジオール化合物の2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレートモノマー、トリオール化合物の2つまたは3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジまたはトリ(メタ)アクリレートモノマー等であってもよい。
【0043】
2官能(メタ)アクリレートモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、2官能(メタ)アクリレートモノマーは、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレ-ト、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのネオペンチルグリコールに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに2モルのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート等である。
【0044】
3官能(メタ)アクリレートモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、3官能(メタ)アクリレートモノマーは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたトリ(メタ)アクリレート等である。
【0045】
4官能(メタ)アクリレートモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、4官能(メタ)アクリレートモノマーは、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等である。
【0046】
5官能(メタ)アクリレートモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、5官能(メタ)アクリレートモノマーは、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等である。
【0047】
6官能(メタ)アクリレートモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、6官能(メタ)アクリレートモノマーは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等である。
【0048】
多官能(メタ)アクリレートモノマーは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトールの複数の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたポリ(メタ)アクリレートであってもよい。
【0049】
重合性化合物全体の説明に戻り、本実施形態の重合性化合物は、モノマー成分の平均アクリル当量が110~145である。モノマー成分の平均アクリル当量は、110以上であればよく、120以上であることが好ましい。また、モノマー成分の平均アクリル当量は、145以下であればよく、140以下であることが好ましい。モノマー成分の平均アクリル当量が110未満である場合、インキ組成物は、金属基材に対する密着性が劣る。一方、モノマー成分の平均アクリル当量が145を超える場合、インキ組成物は、金属基材に対するブロッキング耐性が劣り、裏移りしやすい。なお、本実施形態において、平均アクリル当量は、以下の式に基づいて算出し得る。
各モノマーのアクリル当量=分子量/アクリロイル基数
インキ組成物中のモノマーの平均アクリル当量=(各モノマーのアクリル当量×各モノマーの質量%)の総和/インキ組成物中のモノマーの合計質量%
【0050】
重合性化合物の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、重合性化合物の含有量は、インキ組成物中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、重合性化合物の含有量は、インキ組成物中、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。重合性化合物の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、より優れた金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性を有する。
【0051】
(重合開始剤)
重合開始剤は、活性エネルギー線の照射を受けてラジカルを発生させる成分であり、インキ組成物を硬化させるために配合される。
【0052】
重合開始剤は特に限定されない。一例を挙げると、重合開始剤は、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス-2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等である。
【0053】
重合開始剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、重合開始剤の含有量は、インキ組成物中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、重合開始剤の含有量は、インキ組成物中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。重合開始剤の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、充分に硬化しやすい。
【0054】
(任意成分)
本実施形態のインキ組成物は、上記したポリエステル樹脂、着色剤、重合性化合物および重合開始剤のほか、体質顔料、ワックス、重合禁止剤、分散剤等である。
【0055】
体質顔料は、インキ組成物に粘弾性を付与したり、流動性を調整したり、ミスチングを防止する等のために、好適に含まれる。
【0056】
体質顔料は特に限定されない。一例を挙げると、体質顔料は、クレー、タルク、マイカ、カオリナイト(カオリン)、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ベントナイト、重質炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ジルコニア、アルミナ等である。
【0057】
体質顔料が含まれる場合において、体質顔料の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、体質顔料の含有量は、インキ組成物中、0質量%を超えることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、体質顔料の含有量は、インキ組成物中、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。体質顔料の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、粘弾性、流動性が調整されやすく、ミスチングが防がれやすい。
【0058】
ワックスは特に限定されない。一例を挙げると、ワックスは、ポリエチレン系ワックス、オレフィン系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等のワックス類である。
【0059】
ワックスが含まれる場合において、ワックスの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、ワックスの含有量は、インキ組成物中、0質量%を超えることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、ワックスの含有量は、インキ組成物中、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0060】
重合禁止剤は特に限定されない。一例を挙げると、重合禁止剤は、ブチルヒドロキシトルエン等のフェノール化合物、酢酸トコフェロール、ニトロソアミン、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン等である。
【0061】
重合禁止剤が含まれる場合において、重合禁止剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、重合禁止剤の含有量は、インキ組成物中、0質量%を超えることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、重合禁止剤の含有量は、インキ組成物中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
分散剤は特に限定されない。一例を挙げると、分散剤は、カルボジイミド系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤、脂肪酸アミン系分散剤、変性ポリアクリレート系分散剤、変性ポリウレタン系分散剤、多鎖型高分子非イオン系分散剤、高分子イオン活性剤等である。
【0063】
分散剤が含まれる場合において、分散剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、分散剤の含有量は、着色剤を100質量%とした場合において、1~200質量%であることが好ましい。
【0064】
本実施形態のインキ組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、インキ組成物は、ロールミル、ボールミル、ビーズミルなどを用いて、常法によって調製することができる。
【0065】
<積層体>
本発明の一実施形態の積層体は、金属板またはベースコート層を設けた金属板と、上記した金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキからなる皮膜と、熱硬化性トップコート用ニス層とが、この順に積層された、積層体である。
【0066】
本実施形態のインキ組成物は、金属板等の基材に印刷されて、皮膜を形成する。金属板は特に限定されない。一例を挙げると、金属板は、ステンレススチール、アルミニウム、錫メッキ鋼板、ティンフリースチール等の金属板、または、これらの金属板上にベースコート(プライマー)層を設けた金属下地板等である。ベースコート層の形成には、たとえば金属印刷において一般的に用いられるサイズ塗料やホワイトコーティングなどのベースコート用組成物が用いられてもよい。また、金属基材は、PETフィルムがラミネート処理されていてもよい。
【0067】
金属板に本実施形態のインキ組成物を印刷する方法は特に限定されない。一例を挙げると、印刷方法は、湿し水を利用したオフセット方式、ドライオフセット方式等の通常の印刷方式である。
【0068】
得られるインキ皮膜の膜厚は特に限定されない。一例を挙げると、インキ皮膜の膜厚は、0.1~6μmである。
【0069】
インキ組成物を硬化する条件は特に限定されない。活性エネルギー線硬化反応に用いる活性エネルギー線は、紫外線や電子線等である。紫外線の光源は、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)などが挙げられ、これらの光源を有する紫外線照射装置などが利用できる。なお、光量や光源配置、搬送速度等は必要に応じて調整され得る。高圧水銀灯を使用する場合には、80~160W/cm程度の光量を有するランプ1灯に対して搬送速度2~100m/分程度で硬化させるのが好ましい。一方、電子線の場合には、10~300kV程度の加速電圧を有する電子線加速装置により、搬送速度5~50m/分程度の条件で硬化させるのが好ましい。
【0070】
インキ層上には、熱硬化性トップコート用ニス層が形成される。熱硬化性トップコート用ニス層は、任意の水性型、溶剤型の熱硬化性トップコート用ニスが例示できる。市販で入手可能な溶剤型熱硬化性トップコート用ニスとしては、トーヨーケム(株)製のポリエステル/アミノ系トップコート用ニスなどがある。
【0071】
熱硬化性トップコート用ニス層を形成する方法は特に限定されない。一例を挙げると、熱硬化性トップコート用ニス層は、ロールコーター塗装された後、150℃~250℃で5秒~15分間加熱乾燥されることによって、外観、硬度、加工性、レトルト耐性に優れる塗膜を形成することができる。
【0072】
熱硬化性トップコート用ニス層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、熱硬化性トップコート用ニス層の厚みは、3μm以上であることが好ましい。また、熱硬化性トップコート用ニス層の厚みは、10μm以下であることが好ましい。熱硬化性トップコート用ニス層の厚みが上記範囲内であることにより、積層体は、成型等の加工性に優れ、レトルト処理後の白化が抑制される。
【0073】
本発明の金属印刷インキ組成物は、優れた印刷適性を有し、高光沢、高加工性のインキ皮膜を金属板上に形成することができることから、シート用金属印刷インキとして好適に使用することができる。
【0074】
以上、本実施形態のインキ組成物によれば、得られる皮膜は、蒸気レトルト耐性だけでなく熱水レトルト耐性にも優れる。また、得られる皮膜は、金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性が優れる。
【0075】
また、本実施形態の積層体によれば、得られる積層体は、蒸気レトルト耐性だけでなく熱水レトルト耐性にも優れる。
【実施例0076】
以下、実施例と比較例とにより本発明をより詳細に説明する。本発明は、これら実施例に限定されない。なお、表中の各数値は質量基準によるものである。
【0077】
使用した原料は、以下の通りである。
<樹脂>
テトラヒドロ無水フタル酸:リカシッドTH、152g/mol、価数2、新日本理化(株)製
ヘキサヒドロ無水フタル酸:リカシッドHH、154g/mol、価数2、新日本理化(株)製
無水フタル酸:無水フタル酸、148g/mol、価数2、川崎化成工業(株)製
イソフタル酸:イソフタル酸、166g/mol、価数2、三菱ガス化学(株)製
水添ビスフェノールA:リカビノールHB、240g/mol、価数2、新日本理化(株)製
1,6ヘキサンジオール:1,6ヘキサンジオール、118g/mol、価数2、UBE(株)製
シクロヘキサンジメタノール:CHDM、144g/mol、価数2、SK CHEMICALS社製
ジエチレングリコール:ジチレングリコール、106g/mol、価数2、丸善石油化学(株)製
<モノマー>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:MIRAMER M600、6官能、アクリル当量96、MIWON社製
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート:MIRAMER M410、4官能、アクリル当量117、MIWON社製
トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート:MIRAMER M3130、3官能、EO3モル、アクリル当量143、MIWON社製
ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート:MIRAMER M216、2官能、PO2モル、アクリル当量164、MIWON社製
EO変性フェニルアクリレート:EBECRYL110、単官能、EO2モル、アクリル当量236、(株)ダイセル製
<着色剤>
リオノールブルーFG7330:Pigment Blue15:3、トーヨーカラー(株)製
<体質顔料>
タルク:松村産業(株)製
<助剤>
S-381-N1:オレフィン系微粉末ワックス、シャムロック社製
<光重合開始剤>
Omnirad 379:2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、IGM Resins社製
Omnirad DETX:2,4-ジエチルチオキサントン、IGM Resins社製
<重合禁止剤ベース>
重合禁止剤として和光純薬工業(株)製Q1301(N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)5質量%をMIRAMER M3130に95質量%に溶解させて液状混合物を調整した。
【0078】
以下の実施例で実施した各種測定の詳細は以下のとおりである。
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、東ソー(株)製のゲルパーミネイションクロマトグラフィ(HLC-8320)で測定した。検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。また、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、カラムとしてTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)を3本用いた。測定は、流速0.6mL/分、注入量10μL、およびカラム温度40℃の条件下で行った。
(酸価)
酸価は、中和滴定法によって測定した。具体的には、先ず、ポリエステル樹脂1gをキシレン20mLに溶解させた。次いで、先に調製したポリエステル樹脂の溶液に、指示薬として3重量%のフェノールフタレイン溶液を1mL加えた後に0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液で中和滴定を行った。酸価の単位は、mgKOH/gである。
【0079】
<ワニス1-1の調製>
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、および温度計を備えた4つ口フラスコに、テトラヒドロ無水フタル酸:206質量%(100モル%)、水添ビスフェノールA:359.4質量%(85モル%)、1、6ヘキサンジオール:31.2質量%(15モル%)を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、220℃で常法にてエステル化し、酸価15.1,重量平均分子量1834のポリエステル樹脂(樹脂1)を得た。次いで、温度を110℃に下げてハイドロキノン4質量%、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート199.8質量%、トリメチロールプロパンEO(3)変性トリアクリレート199.8質量%を添加し均一に攪拌し、樹脂分60質量%のワニス1-1を作製した。
【0080】
<ワニス1-2の調製>
ワニス1-1の調製と同様の操作にて、樹脂(1)を得た後、ハイドロキノン4質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート399.6質量%を添加し均一に攪拌し、樹脂分60質量%のワニス1-2を作製した。
【0081】
<ワニス1-3の調製>
ワニス1-1の調製と同様の操作にて、樹脂(1)を得た後、ハイドロキノン4質量%、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート399.6質量%を添加し均一に攪拌し、樹脂分60質量%のワニス1-3を作製した。
【0082】
<ワニス1-4の調製>
ワニス1-1の調製と同様の操作にて、樹脂(1)を得た後、ハイドロキノン4質量%、トリメチロールプロパンEO(3)変性トリアクリレート399.6質量%を添加し均一に攪拌し、樹脂分60質量%のワニス1-4を作製した。
【0083】
<ワニス1-5の調製>
ワニス1-1の調製と同様の操作にて、樹脂(1)を得た後、ハイドロキノン4質量%、ネオペンチルグリコールPO(2)変性ジアクリレート399.6質量%を添加し均一に攪拌し、樹脂分60質量%のワニス1-5を作製した。
【0084】
<ワニス1-6の調製>
ワニス1-1の調製と同様の操作にて、樹脂(1)を得た後、ハイドロキノン4質量%、EO(2)変性フェニルアクリレート399.6質量%を添加し均一に攪拌し、樹脂分60質量%のワニス1-6を作製した。
【0085】
<ワニス2~12、ワニスA~E>
表1に記載の樹脂合成時の仕込みモル比、水酸基過剰率を変更した以外は、樹脂1と同様に、樹脂2~12および樹脂A~Eを合成した。次いで、ハイドロキノン4質量%と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパンEO(3)変性トリアクリレート、ネオペンチルグリコールPO(2)変性ジアクリレートを同質量%ずつ添加し均一に攪拌し、樹脂分60質量%のワニス(ワニス2~12、ワニスA~E)を作製した。
【0086】
【表1】
【0087】
<実施例1>
表2に記載の処方に従い、各成分を混合した後、40℃に加熱した3本ロールミルにて練肉攪拌することにより、実施例1のインキ組成物を調製した。得られたインキ組成物について、以下の評価方法により、密着性、ブロッキング耐性、レトルト耐性(熱水レトルト耐性および蒸気レトルト耐性)を評価した。結果を表1に示す。
【0088】
<実施例2~23、比較例1~25>
表2~表4に記載の処方に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、インキ組成物を調製し、評価した。結果を表2~表4に示す。なお、表2~表4の実施例1~23、比較例1~25のインキ成分の表記は、ワニス成分を樹脂とアクリルモノマー成分に分けて記載されている。
【0089】
<試験サンプルの作成方法>
評価に使用する金属板として、電気ブリキ板(新日鐵住金(株)製のET2.8/2.8 T2.5B)に、ポリエステル/アミノ系ベースコーティング(トーヨーケム(株)製)を塗膜量140mg/100cm2で塗装し、180℃、10分間焼付けしたベースコート層を設けた金属板を作成した。得られたインキを、RIテスター(テスター産業(株)製)を用いて、上記金属板のベースコート層上に、膜厚1.5μmになるように展色し、パナソニック電工(株)製高出力UV-LED照射装置を使用し、照射距離10mm、波長350~420nm(中心波長385nm)、コンベア速度30m/分の条件で紫外線を照射しインキを硬化させ、試験サンプルAとした。また、同様の印刷条件で3度刷りした後に、ポリエステル/アミノ系トップコーティング(トーヨーケム(株)製)を塗布量70mg/100cm2で塗装し、180℃、10分間焼付け、試験サンプルBを作成した。得られた試験サンプルA、およびBを用いて、以下の方法により評価を行なった。なお、RIテスターとは、被記録媒体にインキを展色させる試験機であり、インキの転移量や印圧を調整することができる。
【0090】
<密着性>
上記方法で作成した試験サンプルAのインキ皮膜に対して、セロハンテープ剥離試験(JIS K 5600に準拠)を行い、碁盤目の数を以下の基準で評価した。○△以上を実用レベルと判断した。
(評価基準)
○:剥離がなかった。
○△:剥離は、10%未満であった。
△:剥離は、10%以上30%未満であった。
×:30%以上剥離した。
【0091】
<ブロッキング耐性>
上記方法で作成した試験サンプルAを3cm×5cmにカットし、インキ皮膜の対面に同じ大きさにカットした電気ブリキ板を重ね、ブロッキングテスター(テスター産業(株)製)にて3kg/cm2の荷重をかけたまま40℃の電気オーブンに1時間静置後取出し、対面の電気ブリキ板にインキが裏移りしているかどうかを目視により以下の基準で評価した。○△以上を実用レベルと判断した。
(評価基準)
○:裏移りしなかった。
○△:僅かに裏移りが確認できた。
△:明らかな裏移りが確認できた。
×:明らかな裏移りが確認でき、インキ皮膜の剥離が確認できた。
【0092】
<熱水レトルト耐性>
上記方法で作成した試験サンプルBを125℃の熱水に浸漬したまま90分間滅菌処理を行い、その後、塗膜表面の白化度合いを目視により以下の基準で評価した。○△以上を実用レベルと判断した。
(評価基準)
○:白化がなかった。
○△:僅かに白化があった。
△:明らかな白化が確認できた。
×:塗膜全体が完全に白化した。
【0093】
<蒸気レトルト耐性>
上記方法で作成した試験サンプルBを125℃の蒸気で90分間滅菌処理を行い、その後、塗膜表面の白化度合いを目視により以下の基準で評価した。○△以上を実用レベルと判断した。
(評価基準)
○:白化がなかった。
○△:僅かに白化があった。
△:明らかな白化が確認できた。
×:塗膜全体が完全に白化した。
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
表2~表4に記載のとおり、本発明の実施例1~23のインキ組成物は、蒸気レトルト耐性だけでなく熱水レトルト耐性にも優れた。また、実施例1~23のインキ組成物は、金属基材に対する密着性およびブロッキング耐性が優れた。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂と、着色剤と、重合性化合物と、重合開始剤とを含み、
前記ポリエステル樹脂は、水酸基過剰率が1.15~1.90であり、
前記重合性化合物のモノマー成分の平均アクリル当量は、110~140であり、
前記ポリエステル樹脂は、多塩基酸を含む酸成分として、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、オルソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む、金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分が、2価のアルコールである、請求項1記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂の酸価は、35mgKOH/g以下である、請求項1または2記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、1000~5000である、請求項1または2記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂の含有量は、10~40質量%である、請求項1または2記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項6】
金属板またはベースコート層を設けた金属板と、請求項1または2記載の金属印刷用活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物からなる皮膜と、熱硬化性トップコート用ニス層とが、この順に積層された、積層体。