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特開2024-24566自律移動装置および自律移動装置による注意喚起方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024566
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】自律移動装置および自律移動装置による注意喚起方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240215BHJP
   G08B 21/24 20060101ALI20240215BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
G05D1/02 S
G08B21/24
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127489
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】門川 隆進
【テーマコード(参考)】
5C086
5H301
【Fターム(参考)】
5C086AA53
5C086AA54
5C086BA17
5C086BA22
5C086CA11
5C086DA08
5C086EA40
5C086EA45
5C086FA06
5C086FA17
5H301AA01
5H301BB03
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301LL02
5H301LL03
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】建築現場などの作業音が大きな過酷な環境においても、作業者の危険のレベルに応じて適切な注意喚起を行って、作業者の安全を図る。
【解決手段】自律移動装置は、制御部と、周辺の障害物を検知する測域検知センサと、自律移動装置が作業を行うエリアの図面データと、音声を発声する音声スピーカと、超音波を発声する超音波発生装置とを備え、図面データは、作業者の進入禁止エリアと、進入禁止エリアの周辺に取られる注意エリアに関する情報が定義され、制御部は、図面データを参照し、測域検知センサに障害物が検知されたときに、音声スピーカにより音声を発生させ、測域検知センサに障害物が検知され、その障害物が進入禁止エリアまたは注意エリアにあると判定したときに、音声スピーカにより音声を発生させ、かつ、超音波発生装置により超音波を発声させる指令を行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律して移動して作業を行う自律移動装置であって、
制御部と、
周辺の障害物を検知する測域検知センサと、
前記自律移動装置が作業を行うエリアの図面データとを備え、
前記図面データは、特定のエリアに関する情報が定義され、
前記制御部は、前記図面データを参照し、前記測域検知センサに障害物が検知されたときの第一の注意喚起情報を出力し、前記測域検知センサに障害物が検知され、その障害物が特定のエリアにあると判定したときに、前記第一の注意喚起情報とは異なる第二の注意喚起情報を出力する指令を行うことを特徴とする自律移動装置。
【請求項2】
前記第一の注意喚起情報が音声であり、前記第二の注意喚起情報が超音波情報であることを特徴とする請求項1記載の自律移動装置。
【請求項3】
前記特定のエリアが、作業者の進入禁止エリアと、前記進入禁止エリアの周辺に取られる注意エリアであることを特徴とする請求項1記載の自律移動装置。
【請求項4】
前記進入禁止エリアと前記注意エリアで、注意喚起に対するレベルを異ならせることを特徴とする請求項3記載の自律移動装置。
【請求項5】
自律して移動して作業を行う自律移動装置による注意喚起方法であって、
前記自律移動装置は、
制御部と、
周辺の障害物を検知する測域検知センサと、
前記自律移動装置が作業を行うエリアの図面データと、
音声を発声する音声スピーカと、
超音波を発声する超音波発生装置とを備え、
前記図面データは、作業者の進入禁止エリアと、前記進入禁止エリアの周辺に取られる注意エリアに関する情報が定義され、
前記制御部は、前記図面データを参照し、前記測域検知センサに障害物が検知されたときに、前記音声スピーカにより音声を発生させ、前記測域検知センサに障害物が検知され、その障害物が前記進入禁止エリアまたは前記注意エリアにあると判定したときに、前記音声スピーカにより音声を発生させ、かつ、超音波発生装置により超音波を発声させる指令を行うことを特徴とする自律移動装置による注意喚起方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動装置および自律移動装置による注意喚起方法に係り、特に、建築現場における墨出しを自動的に行うロボットを使用した場合の作業者の安全を確保するのに好適な自律移動装置および自律移動装置による注意喚起方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駅、空港などの公共交通機関や、ショッピングモールにおいて、警備や案内を行う自律走行をするロボットが知られている。この場合に、現場にいる人に対して、注意喚起を行い未然に衝突事故などを防止し、周囲の人の安全を確保することが重要な課題となる。
【0003】
これに関連し、ロボットが作業現場にいる作業者の安全を図るために、注意喚起を行う技術としては、例えば、特許文献1がある。特許文献1に開示された作業現場用警報装置では、撮像部で撮像された周囲画像情報に、人を示す人物画像情報が含まれると判定された場合に、周囲画像情報が生成された場所が予め定められた危険範囲に該当するという警告条件を満たすか否かを判定する。そして、この判定が肯定的となった場合に、人に対して作業の危険性を注意喚起する警告音声を発生させるようにし、これにより、危険範囲で作業を行なう作業者に対して的確に警告を与えることによって作業者の注意喚起を図り作業者の安全を図るとしている。
【0004】
また、同様に、特許文献2に記載された技術では、撮像部で撮像された周囲画像情報に、設備あるいは資材を示す設備資材画像情報と、人を示す人物画像情報との双方が含まれると判定された場合に、設備あるいは資材と人との位置関係が予め定められた警告条件を満たすか否かを判定する。そして、この判定が肯定的となった場合に、人に対して作業の危険性を注意喚起する警告音声を発生させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-174331号公報
【特許文献2】特開2021-144555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、ロボットの撮像した周囲画像情報と人との関連性を判定し、警告条件を満たすときに、人に対して作業の危険性を注意喚起する警告音声を発生させるようにしている。
【0007】
しかしながら、上記従来技術に関しては、ロボットが危険のレベルに応じて、作業者に対して、注意喚起をして警告する方法については、開示されていない。
【0008】
作業現場では、作業者に対しては、様々な障害物や危険な物体、立ち入ってはいけないエリアなどが存在することが考えられるが、危険性が低い場合でも、危険性が高い場合と同じ警告を行っていては、作業者の作業効率が落ちると同時に、真に危険性が高いときに作業者の注意が散漫になり、かえって、作業者の危険性が高くなること事態に陥ることもありうる。
【0009】
また、音声のみの警告では、作業音が大きな場合では、作業者が聴き取りにくく、警告に気づかないこともありうる。
【0010】
本発明の目的は、建築現場などの作業音が大きな過酷な環境においても、作業者の危険のレベルに応じて適切な注意喚起を行って、作業者の安全を図ることのできる自律移動装置および自律移動装置による注意喚起方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の自律移動装置の構成は、好ましくは、自律して移動して作業を行う自律移動装置であって、制御部と、周辺の障害物を検知する測域検知センサと、前記自律移動装置が作業を行うエリアの図面データとを備え、前記図面データは、特定のエリアに関する情報が定義され、前記制御部は、前記図面データを参照し、前記測域検知センサに障害物が検知されたときの第一の注意喚起情報を出力し、前記測域検知センサに障害物が検知され、その障害物が特定のエリアにあると判定したときに、前記第一の注意喚起情報とは異なる第二の注意喚起情報を出力する指令を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、建築現場などの作業音が大きな過酷な環境においても、作業者の危険のレベルに応じて適切な注意喚起を行って、作業者の安全を図ることのできる自律移動装置および自律移動装置による注意喚起方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る墨出し作業自動システムの全体構成を示す図である。
図2】作業移動ロボットのハードウェア構成を示す図である。
図3】作業移動ロボットの機能構成を示す図である。
図4】墨出し作業自動システムの施工エリアモデルを示す図である。
図5】作業移動ロボットが作業者に注意喚起をするときの動作モデルを説明する図である。
図6】作業注意喚起情報テーブルの一例を示す図である。
図7】作業移動ロボットが行う処理を示すフローチャートである。
図8A】タブレットに表示される作業移動ロボット監視画面の一例を示す図である(その一)。
図8B】タブレットに表示される作業移動ロボット監視画面の一例を示す図である(その二)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
建物の建設現場や、道路等での工事現場、崖などの危険な場所において、人間の侵入を防ぐためのバリケード、柵が設置されている。しかしながら、携帯電話等を見ながら歩く大人や、子供が誤って柵に激突、通過してしまったり、動物等が侵入してきたりすることがある。また、農作物を動物から守る場合にも、田畑への害獣の侵入を防ぐことも重要である。
【0015】
本発明は、安全面や、コンクリートやペンキ等の施工中の段階等のために、侵入してくる人や動物を防ぐために、センサを備えた自律移動ロボットが、人等が所定のエリアへ侵入したことを検知すると、侵入した対象に対して、適切に注意喚起を行い、所定のエリアへの侵入を防ぐものである。特に、侵入対象の侵入度合いや、侵入対象の種類に応じて、より効果のある注意喚起方法にて報知・撃退を行うことができる。
【0016】
特に、本発明に係る実施形態としては、建築現場などの施工現場環境において、図面データに基づいて、墨出し作業を自動的におこなう墨出し作業自動システムを例に採って説明する。
【0017】
墨出しとは、建築工事において、工事の進行に必要な線・形や寸法を表示することである。一般に、職人が墨つぼを用いて墨で表示することから、墨出しという用語が使われている。
以下、本発明に係る実施形態を、図1ないし図8Bを用いて説明する。
【0018】
先ず、図1ないし図3を用いて墨出し作業自動システムの構成について説明する。
【0019】
本実施形態の墨出し作業自動システムは、図1に示されるように、作業移動ロボット100、タブレット10、追尾型トータルステーション200からなる。
【0020】
作業移動ロボット100は、追尾型トータルステーション200と連携し、相対距離を算出し、作業現場で所定の場所に所定の精度を以て墨出し作業を行う自律移動装置である。なお、作業移動ロボット100の構成は、後に詳説する。
【0021】
追尾型トータルステーション200は、作業移動ロボット100に取り付けられた計測ターゲットをレーザ等で追尾して、三次元空間における計測ターゲットの位置を計測する測量器である。追尾型トータルステーション200は、計測結果を基に、作業移動ロボット100の位置を計測し、無線通信により、作業移動ロボット100の位置データを転送する。
【0022】
タブレット10は、操作者によって操作されるコントロール操作端末であり、作業移動ロボット100と無線通信により接続され、作業移動ロボット100の間で、コントロール情報および図面情報を送受信して、作業移動ロボット100の動作を制御する。なお、タブレット10は、スマートフォンやラップトップパソコンなどの情報処理装置であってもよい。
【0023】
次に、図2を用いて作業移動ロボットのハードウェア構成について説明する。
作業移動ロボット100は、図2に示されるように、フレーム101、車輪102、走行モータ103、バッテリ104、制御機構105、測域センサ110、衝突検知センサ111、音声スピーカ120、超音波発生装置121、ガイドレール130、墨出し駆動部131、印字部132、カメラ133を備える。
【0024】
フレーム101は、作業移動ロボット100の基本的枠組みであり、この作業移動ロボット100のその他の装置が取り付けられる。作業移動ロボット100は、走行モータ103により床面に接している車輪102を回転させることによって、自走させる。作業移動ロボット100は、充電式であり、作業移動ロボット100は、バッテリ104を電源としている。制御機構105は、タブレット10からの指令情報と追尾型トータルステーション200からの位置データ、センサ類からのデータに基づいて、作業移動ロボット100の移動を制御したり、作業移動ロボット100の周辺の作業者に対して、音声や超音波により注意喚起をする(詳細は後述)制御を行う。制御機構105は、MPU(Micro Processor Unit)がメモリ上のプログラムを実行する形態でもよいし、専用のハードウェアにより実装されてもよい。
【0025】
測域センサ110は、作業移動ロボット100の周囲について、赤外線により人や物を検知するセンサである。制御機構105は、測域センサ110からのセンサ情報を参照して、作業移動ロボットの走行を中止するか否かを判断する指標として利用する。衝突検知センサ111は、作業移動ロボット100の前後面のバンパに配備されており、衝突した際に衝突情報を検知するセンサである。制御機構105は、検知情報により、作業移動ロボット100の移動動作を中断して停止させる。
【0026】
音声スピーカ120は、作業移動ロボット100が移動していることを周知するために音声警告を発する。超音波発生装置121は、超音波を指定の領域に照射する装置であり、作業者に対して、衝突の警告のために指定の領域に収束させた超音波照射圧によって対象に触れられた感覚(触覚)で刺激する。ここで、超音波とは、人間の可聴域の音波(20Hz~20000Hz程度)よりも高周波の空気振動である。
【0027】
ガイドレール130は、フレーム101に取り付けられ、一定範囲で前後に移動できるようになっている。墨出し駆動部131は、ガイドレール130に向かって一定範囲で左右に移動できるように取り付けられており、床側に印字部132が取り付けられている。印字部132の床側の中央付近には、印字ノズル(図示せず)があり、床に墨出しのためのインクを噴射する。また、印字ノズルの側方にカメラ133が取り付けられており、タブレット10からの指令により、墨出しの結果を撮像できるようになっている。
【0028】
次に、図3を用いて作業移動ロボットの機能構成について説明する。
作業移動ロボット100は、図3に示されるように、機能部として、制御部300、センサI/F部310、警告装置I/F部311、指令装置I/F部312、測量装置I/F部313、撮像装置I/F部314、センサ部320、警告部321、撮像部322、記憶部330を備える。
【0029】
制御部300は、走行制御部301、印字制御部302、警告判定部303のサブ機能部よりなる。走行制御部301は、制御機構105により、図面データと追尾型トータルステーション200からの位置データ、タブレット10からの指令に基づき、走行モータ103を制御し、作業移動ロボット100の移動、停止、速度の制御を行う。印字制御部302は、図面データと追尾型トータルステーション200からの位置データに基づき、墨出し駆動部131を移動させ、床への墨出しの印字の制御を行う。警告判定部303は、センサからの情報に基づき、警告をするか否かを判定する。
【0030】
センサI/F部310は、測域センサ110、衝突検知センサ111とのインタフェース処理を行う。警告装置I/F部311は、警告を行う音声スピーカ120、超音波発生装置121とのインタフェース処理を行う。指令装置I/F部312は、タブレット10など作業移動ロボット100に指令を行う情報処理装置のインタフェース処理を行う。測量装置I/F部313は、作業移動ロボット100の位置データを送信する追尾型トータルステーション200などの測量装置とのインタフェース処理を行う。撮像装置I/F部314は、カメラ133とのインタフェース処理を行う。センサ部320は、測域センサ110、衝突検知センサ111により、センシング処理を行う。警告部321は、音声スピーカ120、超音波発生装置121により、それぞれ音または超音波により、作業者に対して警告を行う。撮像部322は、カメラ133により、墨出しの撮像を行う。
【0031】
記憶部330は、作業移動ロボット100の必要なデータを保持する。記憶部330には、設定ファイル群331、図面データ332やその他のワークデータ(図示せず)が格納される。図面データ332は、施工現場のCADデータに墨出し位置の情報を含むデータである。なお、図面データ332で表される施工エリアモデルについては、後に説明する。
【0032】
次に、図4および図5を用いて墨出し作業自動システムの施工エリアモデルと注意喚起のための動作モデルについて説明する。
【0033】
施工エリア401は、施工対象とするエリアであり、追尾型トータルステーション200は、施工エリア401内の作業移動ロボット100の位置を計測して位置データを送信する。施工エリア401内に、図4に示されるように、移動可能エリア402、進入禁止エリア403、注意エリア404、作業指示点410がとられる。
【0034】
移動可能エリア402は、作業移動ロボット100の移動可能領域であり、作業移動ロボット100が墨出しをするエリアである。
【0035】
進入禁止エリア403は、作業移動ロボット100あるいは作業者が侵入してはいけないエリアである。作業指示点410は、作業移動ロボット100が移動し、作業するための基準点である。
【0036】
注意エリア404は、進入禁止エリア403の周囲にとられるオフセットエリアである。作業移動ロボット100が、このエリアで作業者を検知したときには、注意喚起のため警告を発するエリアである。例えば、注意エリア404は、進入禁止エリア403から1.0m外側に拡大したエリアとする。
【0037】
次に、図5を用いて作業移動ロボットが作業者に警告をするとるときの動作モデルを説明する。
作業移動ロボット100は、図面データに基づいて移動可能エリア402を走行し、作業移動ロボット100が備える測域センサ110により、付近に人や動物、モノといった障害物が近くにあるか検知する(測域センサ検知領域420)。
【0038】
この際、作業移動ロボット100自身の座標情報と、検知した障害物と作業移動ロボット100との相対的な距離・方角に基づいて、障害物のある座標を特定することができる。
【0039】
検知した座標、領域に従って、状態に即した注意喚起を実施する。例えば、図5の例で、作業者W1は、測域センサ検知領域420のみに入っていて、進入禁止エリア403や注意エリア404には入っていない。このときに、作業移動ロボット100との接触の危険性を知らせるために音声による注意喚起を実施する。
【0040】
作業者W2は、測域センサ検知領域420に入っていて、かつ、注意エリア404に入っている。このときには、音声での注意喚起に加えて超音波を障害物に照射することによって早々に注意エリアから離れるよう、注意喚起を施すようにする。
【0041】
このように、検知した障害物の位置(座標)に応じて、対応する報知を行うことで、障害物に対して作業移動ロボット100との接触や、進入禁止エリア403への侵入を防止することができる。
【0042】
また、本実施形態では、障害物を検知する手段として測域センサを例にしたが、カメラ(全方位カメラ)を作業移動ロボット100に搭載し、障害物が人、動物、その他静止物であるかを画像処理によって特定してもよい。その場合、障害物が静止物である場合は、報知は行わず、タブレット10に通知を行う方法でもよいし、静止物であっても、近くに作業者がいて、音声による報知を行うことで近くの作業者に静止物の除去を知らせることができる場合は、音声による報知のみ実施してもよい。また、検知した人の身長(大人、子供)や、動物の種別に応じて、音声での報知内容や音量を変更してもよい。
【0043】
また、進入禁止エリア403と注意エリア404で、報知方法を異ならせてもよい。例えば、進入禁止エリア403に侵入した障害物は、即座に侵入をやめるように、注意エリア404のときと比較して、超音波や音声の出力レベルを大きくしてもよい。
【0044】
次に、図6を用いて作業移動ロボットの注意喚起をするときに用いるデータ構造について説明する。
作業注意喚起情報テーブル600は、作業移動ロボット100が作業者に対して注意喚起を行うときの条件とその注意喚起の方法に関する情報を保持するテーブルであり、図6に示されるように、パターンID600a、走行状況600b、エリア600c、注意喚起方法600dの各フィールドを有する。
【0045】
パターンID600aには、パターンを一意的に識別するIDが格納される。走行状況600bには、作業移動ロボット100の走行状況を示す名称または識別子が、例えば、「走行前」、「走行中」、「停止時」のように格納される。エリア600cには、測域センサ110により障害物(作業者)を検知したエリアを示す名称または識別子が、例えば、「注意エリア」、「進入禁止エリア」のように格納される。また、該当しないときには、NULL値が設定される。注意喚起方法600dには、作業移動ロボット100に関して走行状況600b、エリア600cに記載した値にマッチしたときに、作業移動ロボット100が行う注意喚起方法を示す名称または識別子が、例えば、「音声」、「音声+超音波」、「音声(小)+超音波(小)」、「音声(大)+超音波(大)」のように格納される。ここで、「音声」は、作業移動ロボット100が音声スピーカ120により音声のみを発生することを意味し、「音声+超音波」は、作業移動ロボット100が音声スピーカ120により音声を発生し、同時に、超音波発生装置121により超音波発生することを意味する。また、音声(小)、超音波(小)、音声(大)、超音波(大)は、それぞれ、音声と超音波のレベルの大小を表している。
【0046】
次に、図7を用いて作業移動ロボットが行う処理について説明する。
先ず、作業移動ロボット100の制御部300は、リトライカウンタをリセットする(0にする)(S101)。リトライカウンタとは、以下で説明するように、測域センサ110が障害物を検知したときに、異常表示をするか否かを判定するためのカウンタである。
【0047】
次に、作業移動ロボット100の制御部300は、図5に示したように、測域センサ検知領域420内に障害物があるか否かを判定し(S102)、障害物があるときには(S102:YES)、S103に行き、障害物がないときには(S102:NO)、S120に行く。
【0048】
S102で、障害物があるときには、制御部300は、作業移動ロボット100が走行中か否かを判定し(S103)、走行中のときには(S103:YES)、走行を停止し(S104)、走行中でないときには(S103:NO)、S105に行く。
【0049】
S102で、障害物があるときであり、かつ、S103で、走行中でないときには、制御部300は、リトライカウンタ=3であるか否かを判定し(S105)、S105で、リトライカウンタ=3でないときには(S105:NO)、S110に行き、リトライカウンタ=3のときには(S105:YES)、タブレット10に、異常表示を行い(S106)、処理を終了する。
【0050】
S105で、リトライカウンタ=3でないときには、リトライカウンタを1インクリメントし(S110)、作業移動ロボット100の制御部300は、音声スピーカ、超音波発生装置121により、超音波作業注意喚起情報に従った注意喚起を行い(S111)、S102に戻る。
【0051】
S102で、障害物がないときには、作業移動ロボット100の制御部300は、走行を開始し(S120)、墨出し作業を実行する(S121)。
【0052】
次に、作業移動ロボット100の制御部300は、未実行の墨出し作業があるか否かを判定し(S122)、未実行の墨出し作業があるときには(S122:YES)、S101に戻り、未実行の墨出し作業がないときには(S122:NO)、処理を終了する。
【0053】
次に、図8Aおよび図8Bを用いてタブレットに表示される作業移動ロボット監視画面について説明する。
【0054】
作業移動ロボット監視画面900は、タブレット10に表示される画面であり、図8Aおよび図8Bに示されるように、走行モード表示901、作業移動ロボット詳細情報表示欄910、注意喚起情報表示欄920、マップ表示欄930、中断ボタン940、管理画面ボタン941、電源ボタン942、停止ボタン943が表示される。
【0055】
走行モード表示901には、作業移動ロボット100の走行モードが、「走行中」、「停止中」のように表示される。作業移動ロボット詳細情報表示欄910には、ロボットの走行、バッテリ情報、注意喚起に関する情報やメッセージなどの詳細情報が表示される。注意喚起情報表示欄920には、作業移動ロボット100の注意喚起の状態に関する情報が表示される。図8Aの例は、図5に示した作業者W1(図中、作業者の位置は、▲で表示)が検知されたときに表示される情報であり、測域センサ検知領域で検知された作業者に対して音声で注意喚起をしていることを示すために、「注意喚起中、ロボット周辺検知、音声」のように表示される。図8Bの例は、図5に示した作業者W2が検知されたときに表示される情報であり、注意エリアにいて、測域センサ検知領域で検知された作業者に対して音声と超音波で注意喚起をしていることを示すために、「注意喚起中、注意エリア検知、音声+超音波」のように表示される。マップ表示欄930は、タブレット10内図形データに基づき、施工エリアのマップが表示される。作業移動ロボット100が、障害物を検知したときに、それを明確に認識できるように表示してもよい。中断ボタン940は、墨出し作業を中断するときに指示するボタンである。管理画面ボタン941は、管理画面(図示せず)を表示するための指示ボタンである。電源ボタン942は、作業移動ロボット100の電源のON/OFFを行うためのボタンである。停止ボタン943は、作業移動ロボット100の動作を停止するためのトグルボタンである。作業移動ロボット100が停止中であるときにタッチすると、このボタンを動作は再開される。
【0056】
以上、本実施形態の墨出し作業自動システムによれば、作業移動ロボットに対して、周辺に作業者がいる場合と、周辺に作業者がいて、かつ、その作業者が注意エリアや進入禁止エリアなど危険なエリアにする場合など、作業者の危険のレベルに応じて適切な注意喚起を行って、作業者の安全を図ることができる。特に、超音波で作業者に警告するときには、現場での騒音などによらず適切に作業者に対して、注意喚起を行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
10…タブレット、100…作業移動ロボット、200…追尾型トータルステーション、
101…フレーム、102…車輪、103…走行モータ、104…バッテリ、105…制御機構、110…測域センサ、111…衝突検知センサ、120…音声スピーカ、121…超音波発生装置、130…ガイドレール、131…墨出し駆動部、132…印字部、133…カメラ、
401…施工エリア、402…移動可能エリア、403…進入禁止エリア、404…注意エリア、410…作業指示点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B