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特開2024-24608回転可能な操作要素を有するモータハンドピースおよび医療用ハンド器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024608
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】回転可能な操作要素を有するモータハンドピースおよび医療用ハンド器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/16 20060101AFI20240215BHJP
   A61B 17/32 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
A61B17/16
A61B17/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023127891
(22)【出願日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】10 2022 119 982.7
(32)【優先日】2022-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ バーク
(72)【発明者】
【氏名】アーロン ボグラー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL01
4C160LL04
4C160LL09
4C160NN02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エンドエフェクタを駆動するための医療用のモータハンドピースを提供する。
【解決手段】ハンドグリップ部と、スリーブ形状の操作要素であって、ハンドグリップ部の遠位端部においてハンドグリップの長手方向軸を中心として回転可能に支持され、操作要素の回転運動をエンドエフェクタ(8、22)の運動へ変換するように又はエンドエフェクタ(8、22)において機能を発揮するように、エンドエフェクタ(8、22)に連結可能な操作要素と、を備え、操作要素は、少なくとも1つのころ軸受を介してハンドグリップ部に回転可能に支持されている医療用のモータハンドピース、ならびに、本開示による医療用のモータハンドピースと、モータハンドピースからエンドエフェクタ(8、22)へトルクを伝達するために、シャフト(10)を介してモータハンドピースに連結されたエンドエフェクタ(8、22)と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位のエンドエフェクタ(8)を駆動するための医療用モータハンドピース(2)であって、
ハンドグリップ部(4)と、
好ましくはスリーブ形状の操作要素(12)であって、前記ハンドグリップ部(4)の遠位端部においてハンドグリップの長手方向軸を中心として回転可能に支持され、前記操作要素(12)の回転運動を前記エンドエフェクタ(8、22)の運動へ変換するように又は前記エンドエフェクタ(8、22)において機能を発揮するように、前記エンドエフェクタ(8、22)に連結可能な前記操作要素(12)と、を備え、
前記操作要素(12)は、少なくとも1つのころ軸受(102)を介して前記ハンドグリップ部(4)に回転可能に支持されていることを特徴とする、医療用モータハンドピース(2)。
【請求項2】
前記モータハンドピース(2)は、シャフト(10、20)を介して前記エンドエフェクタ(8、22)に連結可能であり、
前記操作要素(12)は、第1の回転方向への前記操作要素(12)の回転運動時に、前記シャフト(10、20)に対して前記エンドエフェクタ(8、22)を屈曲させるように前記エンドエフェクタ(8、22)を動かすことを特徴とする、請求項1に記載の医療用モータハンドピース(2)。
【請求項3】
前記エンドエフェクタ(8、22)は、第1の連結装置(28)を備え、
前記シャフト(10、20)は、第2の連結装置(30)を備え、
前記第1の連結装置(28)と前記第2の連結装置(30)は、連結状態において互いに動作可能に係合しており、
前記第1の回転方向と反対の第2の回転方向への前記操作要素(12)の回転運動が、前記第1の連結装置(28)と前記第2の連結装置(30)との間の動作可能な係合を解除することを特徴とする、請求項2に記載の医療用モータハンドピース(2)。
【請求項4】
前記操作要素(12)は、好ましくは中空シャフトとして構成される、前記ハンドグリップ部(4)のキャリア要素(18)に回転可能に支持されていることを特徴とする、請求項1~3の1つに記載の医療用モータハンドピース(2)。
【請求項5】
前記ころ軸受(102)の外輪は、前記操作要素(12)と一体的に形成されていることを特徴とする、請求項1~4の1つに記載の医療用モータハンドピース(2)。
【請求項6】
前記ころ軸受(102)の内輪は、前記キャリア要素(18)と一体的に形成されていることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の医療用モータハンドピース(2)。
【請求項7】
前記操作要素(12)は、前記ころ軸受(102)の転動体を取り付けるための充填開口(108)を有することを特徴とする、請求項1~6の1つに記載の医療用モータハンドピース(2)。
【請求項8】
少なくとも1つの前記ころ軸受(102)は、玉軸受、針状ころ軸受、又は円筒ころ軸受として構成されていることを特徴とする、請求項1~7の1つに記載の医療用モータハンドピース(2)。
【請求項9】
前記操作要素(12)は、2つの前記ころ軸受(102)を介して前記ハンドグリップ部(4)に支持されていることを特徴とする、請求項1~8の1つに記載の医療用モータハンドピース(2)。
【請求項10】
医療用ハンド器具(1)であって、
請求項1~9の1つに記載の医療用モータハンドピース(2)と、
前記モータハンドピース(2)からエンドエフェクタ(8、22)へトルクを伝達するために、シャフト(10、20)を介して前記モータハンドピース(2)に連結された前記エンドエフェクタ(8、22)と、を備える、医療用ハンド器具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠位のエンドエフェクタ(ツール)を駆動するための医療用モータハンドピースに関し、ハンドグリップ部と、ハンドグリップ部の遠位端部においてハンドグリップの長手方向軸を中心として回転可能に支持される好ましくはスリーブ形状の操作要素であって、例えば、操作要素の回転運動をエンドエフェクタの運動へ変換するように又はエンドエフェクタにおいて機能を発揮するように、エンドエフェクタに連結可能な操作要素と、を有する医療用モータハンドピースに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の低侵襲手術では、このようなツール/器具および関連する器具ハンドピース/ハンド器具は、例えば、関節鏡介入、脊椎外科手術、および同様の整形外科/外科治療での骨や軟骨の処理や神経外科手術での有機材料の処理に使用される。ツール/器具は、ハンドピース/ハンドグリップ/ハンドル部と、場合によっては、フライスカッター、回転ナイフ、研磨ヘッドなどの交換可能なエフェクタとを有する。エフェクタは、ツール/器具のシャフトの遠位端に取り付けられ、場合によっては、回転駆動される。使用目的や目標ツール速度に応じて、油圧、空気圧、または電気モータ駆動装置がツール駆動装置として設けられ、この駆動装置は、ツールおよび/またはハンド器具またはハンドグリップ部内のトルク伝達トレインを介してツールヘッド(エフェクタ)に動作可能に接続されている。駆動装置は、ツール内および/またはハンド器具内で一体化されていてもよいし、電力供給ラインまたはトルク伝達ラインを介してツールまたはハンド器具に連結される外部駆動装置として構成されていてもよい。
【0003】
例えば、脊椎手術において狭いスペースで手術を行うことができるように、医療用ハンド器具のシャフトの遠位シャフト部に角度をつけることが有利である。言い換えれば、外科的介入、特に低侵襲介入では、使用する器具の設置スペースと良好な扱いやすさが大きな役割を果たす。従って、器具シャフトは、可能な限り小さなスペースで、特に遠位エフェクタの領域で、能動的に屈曲可能(操作機構を介して意図的に実行される)であるべきである。
【0004】
さらに、操作条件および/または作業環境の変化への迅速な適応を保証し、患者への負担を可能な限り小さく抑えるために、ツールまたはエフェクタを迅速かつ容易に交換できると有利である。
【0005】
医療用ハンド器具用の屈曲可能なシャフトは周知されており、通常、近位シャフト部と屈曲可能な遠位シャフト部とを有する。遠位シャフト部および近位シャフト部の各々は、それぞれのシャフト部軸に対して傾斜した端部/斜めの端面を有する。つまり、遠位シャフト部および近位シャフト部の一端/端部/端面が、垂直ではなく、傾斜している/斜めになっているということである。ベベル/斜めの端部/端面はそれぞれ、本質的に同じ作用角度を有する。したがって、近位シャフト部と遠位シャフト部とが、ある相対的な回転位置において一直線のシャフト/チューブを形成するように、ベベルが互いに一致する。遠位シャフト部がその長手方向軸を中心として近位シャフト部に対して回転し、近位シャフト部が静止したままであると、斜めの端面/端部によって遠位シャフト部は必然的に傾斜する。
【0006】
さらに、DE 10 2017 010 033 A1にも、医療装置が開示されており、この医療装置は、長手方向軸を有するガイド管と、それに固定的に接続された近位の第1の連結部と、遠位のシリンダシェル形状の旋回ヘッドとを備えるガイドユニットと、ガイド管内で軸方向に移動可能であり、旋回ヘッドに接続された作動管とを有し、作動管は、近位の操作要素を介して旋回ヘッドを旋回させる。回転可能な外科用ツールの遠位ガイド要素をより正確に配向するため、ひいてはそのようなツールの作業ヘッドを角度配向するために、操作要素は、長手方向軸を中心として回動可能であり、作動管の軸方向変位に伴って旋回ヘッドを旋回させる。
【0007】
さらに、US7,585,300 B2またはUS10,070,872 B2には、ハンドピースとハンドピース内に受容されたシャフトとを有する外科用器具の例が開示されており、シャフトの遠位端においてツールヘッドが回動可能である。ツールヘッドの回動は、ハンドピースに回転可能に配置されたハンドホイールを介して引き起こされる。同様に、US8,303,594 B2には外科用ハンドピースが開示されており、この外科用ハンドピースでは、ツールヘッドの回動はハンドピースに配置されたレバーを介して引き起こされる。
【0008】
さらに、US9,597,093 B2は、近位端を駆動装置にトルク伝達可能に連結でき、遠位端にツールヘッドを有するツールを開示している。ツールヘッドは、ツールヘッドの領域に配置されたスリーブの回転によって、ツールシャフトに対して回動可能である。
【0009】
ハンドピースに対して屈曲/回動可能な回転ツールを有する外科用ハンド器具のさらなる例は、特にUS10,178,998 B2、US10,307,180 B2、またはUS10,524,820 B2に開示されている。
【0010】
しかしながら、従来技術には、ツールとその屈曲可能なシャフトが、駆動装置、すなわちハンドグリップ部との複雑な連結を必要とするという欠点がある。そのため、簡単かつ迅速に連結を解除することは容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の課題および目的は、従来技術の欠点をなくす又は少なくとも低減することであり、特に、医療用または外科用ハンド器具、特にその(モータ駆動の)ハンドピースの扱いやすさを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題および目的は、本開示による汎用のハンド器具に関して、請求項1の主題によって解決される。
【0013】
本開示によれば、医療用のハンド器具は、ハンドグリップ部の/上の前(遠位)端部において、少なくとも1つのころ軸受/ころ軸受部を介して(ハンドピース長手方向軸を中心として)回転可能に支持される(手動操作可能な)操作要素を備える。
【0014】
これにより、操作要素をほとんど遊びなく(軸方向に)取り付けることができる。さらに、スティックスリップ現象がないため、最適な摺動性を得ることが可能である。
【0015】
有利な実施形態は、従属請求項に記載され、以下に説明される。
【0016】
モータハンドピースは、シャフトを介してエンドエフェクタに連結可能であってよく、操作要素は、第1の回転方向への操作要素の回転運動時に、シャフトに対してエンドエフェクタを屈曲させるようにエンドエフェクタを動かすことができることが好ましい。エンドエフェクタが第1の連結装置を備え、シャフトが第2の連結装置を備え、これらの連結装置が連結状態において互いに動作可能に係合し、第1の回転方向と反対の第2の回転方向への操作要素の回転運動によって、第1の連結装置と第2の連結装置との間の動作可能な係合が解除されると、さらに有利であり得る。
【0017】
換言すれば、操作要素は、(手でしっかりと保持された)ハンドグリップ部に対して第1の回転方向および第1の回転方向と反対の第2の回転方向に回転可能であって、第1の回転方向への操作要素の回転時に、シャフトに対してエフェクタ部を屈曲させ(第1の回転方向へさらに回転されると、シャフトを真っ直ぐに戻し)、第2の回転方向への操作要素の回転時に、(遠位シャフト部の屈曲運動なしに)エフェクタ部とシャフトとの間の連結を解除してよい。
【0018】
この文脈では、ハンドグリップ部、特に操作要素が、好ましくはラベル及び/又はピクトグラムの形態の、第1の回転方向及び/又は第2の回転方向の機能を示す少なくとも1つのマーク/インジケータを有することが実用的であり得る。
【0019】
さらに、ハンドグリップ部に対する操作要素の回転をロック位置でロックするために、好ましくは遠位方向に変位可能なロックスライドの形態のロック要素が、ハンドグリップ部、特に操作要素に設けられてよい。言い換えれば、ロックスライドは、シャフトに対するエフェクタ部の屈曲を特定の/選択された角度でロック/固定するために設けられてよい。
【0020】
特に有利な実施形態では、操作要素は、ハンドグリップ部のキャリア要素に回転可能に支持されていてよい。キャリア要素は、中空のシャフトまたはスリーブの形態であることが好ましい。
【0021】
好ましい更なる発展によれば、ころ軸受の外輪が、操作要素と一体的に形成されていてよい。換言すれば、ころ軸受の外輪の軌道が、操作要素に一体化されていてよい。このために、好ましくは、ころ軸受の転動体が収容される円周溝を操作要素の内周面に形成されてよい。こうすることで、軸受構造を特にコンパクトにすることができる。
【0022】
さらに、ころ軸受の内輪がキャリア要素と一体的に形成されていると有利である。換言すれば、ころ軸受の内輪の軌道が、キャリア要素に一体化されていてよい。このために、好ましくは、ころ軸受の転動体が収容される円周溝をキャリア要素の外周面に形成してよいことが好ましく、こうすることにより、軸受アセンブリをさらにコンパクトにすることができる。
【0023】
有利な実施形態では、操作要素は、ころ軸受の転動体を取り付けるための充填開口を有してよい。
【0024】
本開示によれば、少なくとも1つのころ軸受は、玉軸受、針状ころ軸受、または円筒ころ軸受として構成されていてよい。
【0025】
好ましい更なる発展として、操作要素は、2つのころ軸受を介してハンドグリップ部に支持されてよい。
【0026】
さらに、本開示は、本開示による医療用モータハンドピースと、エンドエフェクタであって、モータハンドピースからエンドエフェクタにトルクを伝達するために、シャフトを介してモータハンドピースに連結されたエンドエフェクタと、を備える医療用ハンド器具に関する。
【0027】
すなわち、本開示は、医療用ハンド器具の玉軸受で取り付けられた操作要素に関する。ハンドピースの回転可能な操作要素は、少なくとも1つの完全な球面軸受部を含む。これは、内輪の軌道がハンドグリップ部のキャリア要素(キャリア)と一体化されており、外輪の軌道が操作要素(回転スリーブ)と一体化されているので、特にコンパクトな軸受設計である。本開示によるハンド器具は、非常に小さなクリアランスで、操作要素の軸支を可能にする。さらに、スティックスリップ現象を防止することができる。つまり、最適な摺動性を確保することができる。
【0028】
以下、図を用いて好ましい実施例を参照しながら、本開示をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本開示の好ましい実施形態による医療用ハンド器具の斜視図である。
図2図2は、本開示の好ましい実施形態による医療用ハンド器具のさらなる斜視図である。
図3図3は、好ましい実施形態による医療用ハンド器具のモータハンドピースの一部の縦断面図である。
図4図4は、好ましい実施形態による医療用ハンド器具のモータハンドピースの断面図である。
図5図5は、シャフトが真っ直ぐな状態の、好ましい実施形態による医療用ハンド器具の遠位端部の一部の縦断面図である。
図6図6は、シャフトが屈曲した状態の、好ましい実施形態による医療用ハンド器具の遠位端部の一部の縦断面図である。
図7図7は、解除状態の、好ましい実施形態による医療用ハンド器具の遠位端部の一部の縦断面図である。
図8図8は、好ましい実施形態による医療用ハンド器具のモータハンドピースの等角斜視図である。
図9図9は、好ましい実施形態による医療用ハンド器具のモータハンドピースの一部の縦断面図である。
図10図10は、好ましい実施形態の変形例による医療用ハンド器具の縦断面斜視図である。
図11図11は、好ましい実施形態の変形例による医療用ハンド器具の摺動リンクの詳細図である。
図12図12は、好ましい実施形態による医療用ハンド器具のハンドグリップ部の一部の縦断面図である。
図13図13は、好ましい実施形態によるハンド器具の断面図である。
図14図14は、好ましい実施形態によるハンド器具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図は、概略的なものであり、本開示の理解を助けることのみを目的としている。同一の要素には同一の参照符号が付される。
【0031】
図1は、本開示の好ましい実施形態による医療用ハンド器具1の斜視図である。医療用ハンド器具1は、医療用モータハンドピース2を有し、このモータハンドピース2は、近位ハンドグリップ部4を有し、図1に概略的に示されるように、駆動ユニット6に連結可能である。あるいは、駆動ユニット6は、モータハンドピース2内に収容されてよく、電源接続を介して電力を供給されてよい。
【0032】
さらに、ハンド器具1は、(ツール)シャフト10を介して、モータハンドピース2、特にハンドグリップ部4に連結可能または取り外し可能な遠位ツール(エンドエフェクタ/エフェクタ部)8を備える。ツール/エンドエフェクタ8は、例えば、フライスカッター、ドリル、又は研磨ヘッドとして構成されていてよい。
【0033】
シャフト10がハンドグリップ部4に連結されている時には、ハンド器具1、特にハンドグリップ部4およびシャフト10に配置されたトルク伝達経路を介して、トルクが駆動ユニット6からツール8へ伝達され、ツール8を回転させる。外科的介入(手術)または医療処置の状況でハンド器具1を使用する場合、ツール8がシャフト10に対して屈曲可能である(図1の矢印Cで示す)ことが知られている。すなわち、以下にさらに詳細に説明するように、ツール8の長手方向軸S1とシャフト10のシャフト長手方向軸S2が180°ではない角度(ストレートシャフト配向)、特に180°より小さい角度を互いに形成するように、ツール8とシャフト10とが互いに対して屈曲可能である(図6参照)。
【0034】
この目的のために、図1に示すように、本開示によるハンド器具1にはスリーブ状の操作要素12が設けられている。操作要素12は、ハンドグリップ部4の遠位端部に配置されており、ハンドグリップ部4の長手方向軸を中心として第1の回転方向Aおよび第1の回転方向Aと反対の第2の回転方向Bに回転可能である。言い換えれば、モータハンドピース2はハンドグリップ部4と遠位に配置された操作要素12とを備え、これらは互いに同軸に配置されており、操作要素12はハンドグリップ部4に対して回転可能である。
【0035】
ツール8がシャフト10に対して屈曲していない中立のゼロ位置から操作要素12を第1の回転方向Aへ回転させることにより、図1に示すように、ツール8がシャフト10に対して屈曲する(例えば、前述の先行技術において既に提供されているように、2つのシャフト部の端面がシャフト長手方向軸に対して斜めにされる結果として)。本開示によるハンド器具1において、第1の回転方向Aは、ハンドグリップ部4に対する操作要素12の左への回転として定義される。言い換えれば、第1の回転方向Aは、ツール8の遠位平面図における操作要素12の時計回りの回転に対応する。
【0036】
図2に示すように、本開示によるハンド器具1において、操作要素12は、ハンドグリップ部4に対して第1の回転方向Aとは反対の第2の回転方向Bにも回転可能である。すなわち、第2の回転方向Bは、ツール8の遠位平面図における操作要素12の反時計回りの回転または右への回転として定義される。図2に矢印Dで示すように、操作要素12を第2の回転方向Bに回転させることによって、ツール8とシャフト10との連結が解除される。したがって、以下により詳細に説明するように、操作要素12を第2の回転方向Bに回転させることで、簡単かつ迅速なツール交換が保証される。
【0037】
図3及び図4は、好ましい実施形態によるハンド器具1の一部の断面図を示す。操作要素12の回転運動をシャフト10へ伝達するために、調整ピン14が操作要素12の径方向に配置されている。調整ピン14の径方向外側の端部は、操作要素12の内周面に形成された軸方向溝16に受容されている。調整ピン14は、径方向内側で、回転伝達スリーブ18に受容されている。回転伝達スリーブ18は、シャフト10に回転不能に固定されており、調整ピン14が円周方向に動くと、回転伝達スリーブ18およびシャフト10が回転する。すなわち、操作要素12が第1の回転方向Aまたは第2の回転方向Bに回転すると、調整ピン14が操作要素12とともに軸方向溝16内を移動し、回転方向に応じて、ツール8が屈曲するか又は外れる。
【0038】
図5は、ストレートシャフト状態のハンド器具1の遠位端部の縦断面を示す。すなわち、操作要素12が、ハンドグリップ部4に対して回転していない状態である(ゼロ位置)。よって、ツール8およびシャフト10は屈曲しておらず、ツール8の長手方向軸S1は、シャフト長手方向軸S2と同一線上にある。図5に示すように、シャフト10は、ハンドグリップ部4に対向しかつハンドグリップ部4に連結可能な近位シャフト部20と、ツール8に連結可能な遠位シャフト部22とを有する。よって、操作要素12がハンドグリップ部4に対して回転しておらず、シャフト10がストレートシャフト状態であるとき、近位シャフト部20および遠位シャフト部22は、一直線上に配置されるか、または互いに対する角度が0°である。近位シャフト部20は、略管状であり、その遠位端部にシャフト長手方向軸S2に対して斜めになった端面24を有する。遠位シャフト部22も、略管状である。当該管は、遠位端に向かって先細りになっている。遠位シャフト部22は、その近位端部にシャフト長手方向軸S2に対して斜めになった端面26を有する。
【0039】
傾斜端面24、26はそれぞれ、シャフト長手方向軸S2の法線面に対して、好ましくは22.5°の作用角度を有する。シャフト10がストレートシャフト状態又は伸長した状態であるとき、2つの傾斜端面24、26は、傾斜端面24、26の長手方向端部がシャフト長手方向軸S2に対して互いに反対側に位置するように、互いにオフセットしている。傾斜端面24、26は、互いに当接している。傾斜端面24、26は、必ずしも22.5°の作用角度を有する必要はない。例えば、10°、18°、30°、45°または他の作用角度も考えられる。
【0040】
上述したように、遠位シャフト部22は、ツール8に連結可能に構成されている。すなわち、遠位シャフト部22は、ツール受容部を構成しており、ツール8は、ツール受容部に受容され、ツール受容部、すなわち遠位シャフト部22に対して回転可能に支持される。
【0041】
このために、遠位シャフト部22には第1の連結装置28が配置されている。ツール8には第2の連結装置30が設けられており、この連結装置30は、連結状態において、第1の連結装置28と協働して、ツール8と遠位シャフト部22の間の接続を実現し、軸方向Aでツール8を遠位シャフト部22に固定する。
【0042】
上述したように、図5では、ツール8または遠位シャフト部22それぞれの長手方向軸S1と、シャフト長手方向軸S2、すなわち近位シャフト部20の長手方向軸とは、0°の角度を含む。さらに、図5は、ツール8と遠位シャフト部22との間の連結状態を示す。すなわち、遠位シャフト部22内に/に設けられた第1の連結装置28と、ツール8に設けられた第2の連結装置30とが、互いに係合または協働している。ツール8は、例えばフライスヘッドなどのツールヘッド/エフェクタ32と、ツールシャフト34とを備える。ツールヘッド32とツールシャフト34は互いに回転不能に固定されている。
【0043】
図5はさらに、ツールシャフト34が、ころ軸受ユニット36を介して遠位シャフト部22に回転可能に取り付けられていることを示している。駆動シャフト38は、近位シャフト部20を通って延び、ツールシャフト34に回転不能に固定されており、駆動ユニット6からのトルクをトルク伝達列の形態でツールシャフト34に印加する。このトルクの印加によって、ツールシャフト34は、遠位シャフト部22に対して回転する。ころ軸受ユニット36は、軸方向Aに互いに離間して配置された少なくとも1つ、この実施例ではちょうど2つのころ軸受40、より正確には玉軸受を有するが、代替的に滑り軸受として構成されていてもよい。ころ軸受40は、ころ軸受ユニット36の一部である軸受ハウジング42に収容されている。
【0044】
第2の連結装置30は、軸受ハウジング42に挿入されるので、ツール8に直接は設けられていない。ころ軸受ユニット36ひいては軸受ハウジング42は、軸方向Aでツールシャフト34に固定されて配置される。代替的に、第2の連結装置30がツールシャフト34に直接設けられることも考えられる。第2の連結装置30は、軸受ハウジング42の周方向に連続して延びる又は周方向に延びる軸方向固定溝44として構成されている。軸方向固定溝44は、半円形または円形のセグメント状断面を有することが好ましい。
【0045】
遠位シャフト部22に設けられた第1の連結装置28は、少なくとも1つのロックボール46を有する。ロックボール46の直径は、ロックボール46が軸方向固定溝44内に受容可能であるように選択される。軸方向固定溝44は、軸方向固定溝44に接触するロックボール46の少なくとも一部の円周全体を取り囲むことが好ましい。連結状態では、ロックボール46は、軸方向固定溝44内に保持され、軸方向固定溝44の反対側では、ラッチピン/スライダ48の遠位端によって保持されている。ラッチピン48は、第1の連結装置28の一部である。ラッチピン48は、径方向Rに固定されている。ラッチピン48は、遠位シャフト部22内で軸方向に変位可能または移動可能に配置されている。
【0046】
図5に示す連結状態において、ロックボール46は、軸方向固定溝44に受容されており、径方向でラッチピン48によって軸方向固定溝44内に保持されている。軸方向Aのラッチピン48のこの位置を接続位置と呼ぶ。近位シャフト部20の遠位端の縁部63は、ラッチピン48が近位シャフト部20に向かって軸方向に移動することを阻止する。
【0047】
近位シャフト部20は、固定外管50と、内歯54を有する中空ホイール52と、外歯58を有するピニオン56と、偏心固定ブッシュ60とを含む。中空ホイール52は外管50内に配置されており、外管50の長手方向軸は中空ホイール52の長手方向軸に対応する。従って、外管50と中空ホイール52は同軸に配置されている。中空ホイール52は、近位シャフト部20に受容された中空シャフト62を介して、回転伝達スリーブ18、すなわち操作要素12に接続されている。
【0048】
上述したように、外管50は固定管として構成されているので、動かない。外管50の遠位端は、傾斜端面24を有する。外管50の遠位端はさらに、受容ボア64およびころ軸受66のための受容ピンを有する。外管50は、ころ軸受66のボールのためのフルート/溝を有する。遠位シャフト部22は、ころ軸受66に取り付けられている。
【0049】
内歯54はピニオン56の外歯58と噛み合っている。これにより、操作要素12によって制御される中空ホイール52の回転がピニオン56へ伝達される。ピニオン56の回転方向は、中空ホイール52の回転方向と同じである。ピニオン56は中空ホイール52によって駆動されるが、ピニオン56は偏心固定ブッシュ60内で回転する。固定ブッシュ60は、中空ホイール52に対して偏心して配置されている。すなわち、偏心固定ブッシュ60の長手方向軸は中空ホイール52の長手方向軸と平行であるが、これらの長手方向軸は重なり合っていない、または互いにオフセットしている。遠位シャフト部22は、調整ブッシュ68を有する。調整ブッシュ68は、近位シャフト部20の受容ボア64に取り付けられている。調整ブッシュ68は、ピニオン56の回転が調整ブッシュ68へ伝達されるように、可撓性シリコンホース70を介してピニオン56に接続されている。このために、可撓性シリコンホース70は、例えば溶接または接合によって、調整ブッシュ68およびピニオン56に取り付けられている。調整ブッシュ68はまた、フォロワピン(図示せず)を介して遠位シャフト部22にも形状嵌合接続されているので、調整ブッシュ68の回転は遠位シャフト部22へ伝達される。
【0050】
図6は、シャフト10の遠位端部を通る縦断面を示し、遠位シャフト部22は、近位シャフト部20に対して、2つの端面24、26それぞれが22.5°ずつの作用角度で、よって45°だけ屈曲している。遠位シャフト部22は、図5の位置と比べて、自身の長手方向軸S1を中心に180°回転している。この位置でも、傾斜端面24、26は、互いの上に完全に/平らに乗っている。しかしながら、遠位シャフト部22の回転により、傾斜端面24、26の長手方向端は互いに隣り合う。そのため、傾斜端面24、26の作用角度が足し合わされる。その結果、遠位シャフト部22は、近位シャフト部20と比較して、傾斜端面24、26の作用角度の2倍だけ屈曲する。
【0051】
図6に示す位置では、フォロワピンは固定ブッシュ60に対向している。すなわち、調整ブッシュ68は、伸長位置から最大屈曲位置まで180°回転している。45°の位置は、この構造の反転点を表している。この位置では、調整ブッシュ68は180°回転している。代替実施形態では、中空ホイール52、すなわち操作要素12をさらに回転させると、遠位シャフト部22が、初期位置(ゼロ位置)まで回転して戻ってもよい。しかしながら、好ましい本実施形態では、ゼロ位置への復帰は、操作要素12の回転方向を逆転させることによってのみ生じる。180°を超える操作要素12の過回転を防止又は阻止するために、ハンドピースには対応するストッパが設けられている。
【0052】
さらに、図6では、遠位シャフト部22が近位シャフト部20に対して最大調整可能角度位置または最大角度屈曲位置で曲げられている状態でも、ロックボール46が径方向Rでラッチピン48によって軸方向固定溝44内に保持されていることが分かる。このように、ツール8は、この角度位置においても、第1の連結装置28と第2の連結装置30との間の係合によって、軸方向Aで遠位シャフト部に固定される。
【0053】
遠位シャフト部22と近位シャフト部20との間の移行領域に配置されている、ツールシャフト34へ向かうトルク列、特に駆動シャフト38は、可撓性を有する。トルク列のこの可撓性部によって、近位シャフト部20内のトルク列に対して、ツールヘッド32を有するツールシャフト34の遠位部を遠位シャフト部22と共に屈曲させることが可能である。同時に、トルク列の可撓性部は、ツールシャフト34の近位部に加えられたトルクがさらにツールヘッド32へと伝達されることを可能にするように構成されている。
【0054】
図7は、ツール8と遠位シャフト部22とが解除状態にあるシャフト10の遠位端部の縦断面図である。すなわち、図7に示す位置では、第1の連結装置28と第2の連結装置30とが互いに動作的に係合していないので、ツール8を取り外すまたは交換することができる。第1の連結装置28と第2の連結装置30との動作的係合を解除するために、操作要素12を第2の回転方向Bに回転させる(図2参照)。こうすることで、以下でより詳細に説明するように、ロックボール46が軸方向固定溝44に受容されなくなる。その代わりに、ロックボール46は、軸受ハウジング42の外周面に接した状態で、ラッチピン48によって径方向Rに保持される。
【0055】
ロックボール46が、図5に示す連結状態から軸方向固定溝44から抜け出て解除状態へと移るためには、ラッチピン48が近位シャフト部20に向かって軸方向Aに移動しなければならない。この移動は、連結状態では、近位シャフト部20の周縁部63によって阻止される。しかしながら、縁部63は、ラッチピン受容窪み72の位置で途切れている。操作要素12が第2の回転方向Bに回転されると、遠位シャフト部22は、ラッチピン48が周方向にラッチピン受容窪み72と水平になるように近位シャフト部20に対して配置されるまで、例えば(-)18°だけ、屈曲時とは反対の方向に近位シャフト部分20に対して回転する。第1の連結装置28の一部である付勢要素74が、ラッチピン48を近位シャフト部20に向かって軸方向Aに押す。このように、付勢要素74は、ラッチピン48、より具体的にはラッチ突起76として形成されたラッチピン48の近位端を、ラッチピン受容窪み72内へ押し入れる(図7に示す)。ラッチ突起76がラッチピン受容窪み72と係合するときのラッチピン48の位置は、解除状態または解除位置と呼ばれる。
【0056】
解除位置では、ラッチピン48の遠位端は軸方向固定溝44に対向していない。従って、ロックボール46は、径方向Rに軸方向固定溝44内に保持されていない。よって、ツール8は、遠位シャフト部22に対して軸方向Aに固定されていない。連結状態からツール8の遠位端に(軸方向Aに)引張力を加えると、ロックボール46が軸方向固定溝44から外れる。このようにして、ツール8を遠位シャフト部22から取り外すことができる。
【0057】
図8は、シャフト10がハンドグリップ部4に連結されていない状態の、好ましい実施形態によるモータハンドピース2の遠位端部の斜視図である。上述したように、第1の回転方向Aへ操作要素12が回転すると、ツール8が屈曲し、第2の回転方向Bへ操作要素12が回転すると、第1の連結装置28と第2の連結装置30との間の動作的係合が解除されて、ツール8とシャフト10、すなわち遠位シャフト部22との間の連結が解除される。操作を容易にするために、回転方向を示す矢印の形態でインジケータ78が操作要素12に設けられている。操作要素12の遠位側でハンドグリップ部4に回転不能に固定されたインジケータスリーブ80上のインジケータ78との組み合わせにより、ユーザは、ハンド器具1を操作する際に、どの回転方向がどの機能に対応するかを迅速に認識することができる。この目的のために、図8に示すように、インジケータスリーブ80の外周面には様々な角度位置が付けられており、その各々が、第1の回転方向Aへの操作要素12の規定された回転、したがってシャフト10に対するツール8の規定された屈曲位置、ならびに、ロックシンボル、またはオープンロックのシンボルに対応する。従って、ユーザは、個々の回転方向A、Bにそれぞれの機能、すなわち屈曲または連結解除を割り当てることができる。したがって、モータハンドピース2は、操作要素12と共に、直感的な操作と2つの機能の統合を可能にする。
【0058】
図8に示すように、好ましい実施形態によるモータハンドピース2には、ロックスライド82が配置されている。ロックスライド82は、(遠位の)ロック位置と(近位の)ロック解除位置との間で操作要素12に対して軸方向にのみ移動できるように、径方向及び周方向に操作要素12に固定的に受容されている。以下により詳細に説明するように、ロック位置では、操作要素12はハンドグリップ部4に対して回転できない。
【0059】
この目的のために、ロック位置では、図9に示すように、ロックスライド82の遠位ピボット部83が、インジケータスリーブ80に受容されたラッチリング84と係合する。ラッチリング84は周方向に離間した複数の凹部を有し、ロック位置においてピボット部83が凹部内へ突出することによって、操作要素12がハンドグリップ部4に対して周方向に固定又は維持される。ラッチリング84の凹部は、インジケータスリーブ80の外周面に設けられたインジケータ78に対応することが好ましい。これにより、ユーザは、ツール8の屈曲を規定された角度に容易に設定することができ、屈曲したツール8をこの角度で固定することができる。
【0060】
そして、角度の調整または接続解除のために、操作要素12をハンドグリップ部4に対して回転させることができるようにするためには、ロックスライド82をロック位置からロック解除位置、すなわち近位方向に変位させる必要がある。
【0061】
好ましい実施形態によるモータハンドピース2では、ロックスライド82が、ばね要素86を介して操作要素12に対して軸方向に付勢されている。ばね要素86は、ロックスライド82をロック位置に向かって、すなわち遠位方向に押圧するように、ロックスライド82と操作要素12のストップ面との間に配置されている。したがって、ばね要素86は、ロックスライド82をロック位置に保持する自動復元力をロックスライド82に与える。
【0062】
あるいは、モータハンドピース2がばね要素86を有さないことも当然考えられる。手動リセットを備える好ましい実施形態の変形例に係るこのようなモータハンドピースでは、ユーザは、ロック解除のためにロックスライド82を近位方向に引き、ロックするためにロックスライド82を遠位方向に能動的に押す必要がある。
【0063】
図10及び図11に示すように、好ましい実施形態の変形例によるモータハンドピース2には、追加のボール押圧要素88が設けられている。ボール押圧要素88は、ハンドグリップ部4にしっかりと受容されている摺動リンク(キャロットラッチリング)94(図11参照)に対してボール92を近位方向に押圧するばね要素90を有している。摺動リンク94には、少なくとも部分的にボール92を受容可能なキャロット形状のラッチ凹部96が形成されている。
【0064】
ラッチリング84の凹部と同様に、ラッチ凹部96は、操作要素12のある回転時にツール8がシャフト10に対して傾けられる規定された角度に対応する。すなわち、操作要素12がハンドグリップ部4に対して規定角度だけ回転されると、ボール押圧要素88は、ばね要素90の付勢によってボール92が摺動リンク94の対応するラッチ凹部96に係合する規定角度に達するまで操作要素12と共に回転する。したがって、追加のボール押圧要素88は、角度調節時にユーザへの触覚フィードバックを可能にする。
【0065】
図12は、好ましい実施形態による医療用ハンド器具1のモータハンドピース2の縦断面図である。図12では、シャフト10がモータハンドピース2に含まれていない。
【0066】
図12に見られるように、モータハンドピース2又はハンドグリップ部4は、その遠位端部に、スリーブの形態で構成されており、径方向内面又は内部にシャフト10を受容するための接続部を有するキャリア要素98を有する。
【0067】
操作要素12は、キャリア要素98の径方向外面に配置されている。上記で説明したように、操作要素12は、内径がキャリア要素98の外径よりも実質的に大きいスリーブの形態をしている。換言すれば、操作要素12は、操作要素12とキャリア要素98との間に径方向の隙間が形成されるように、キャリア要素98の周りに配置されている。従って、上述したように、操作要素12を、ハンドグリップ部4に対して、特にキャリア要素98に対して回転させることができる。
【0068】
図12に示すように、操作要素12は、少なくとも1つの軸受部100を介してキャリア要素98に回転可能に支持されている。本開示によれば、少なくとも1つの軸受部100は、ころ軸受102として構成されている。好ましい実施形態では、ころ軸受102は、特に図13に見られるように、軸受部100の全周にわたって転動体としての玉が設けられた玉軸受である。すなわち、好ましい実施形態による軸受部100は、完全な球面軸受部である。
【0069】
軸受部100の特にコンパクトな構成を実現するために、ころ軸受102の内輪の軌道がキャリア要素98と一体化されている。このために、キャリア要素98の外周面には円周溝104が形成されており、その中にころ軸受102の転動体が受容されている。
【0070】
同様に、ころ軸受102の外輪の軌道は、操作要素12と一体化されている。すなわち、操作要素12の内周面には円周溝106が形成されており、その中にころ軸受102の転動体が受容されている。
【0071】
図13及び図14は、好ましい実施形態によるハンド器具1のモータハンドピース2の断面図である。上述したように、軸受部100は、完全な球面軸受部として構成されている。すなわち、転動体は、軸受部100の全周にわたって配置されている。
【0072】
図13および図14に見られるように、ロックスライド82の領域には充填開口108が形成されている。ころ軸受102の転動体は、この充填開口108を介して充填することができる。言い換えれば、操作要素12は、転動体を取り付けるために充填開口108を有している。
【0073】
転動体を取り付けた後、図13に示すように、充填開口108は閉鎖要素110で覆われる。これにより、転動体の脱落が防止される。あるいは、充填開口108は、ロックスライド82によって、特にロックスライド82のリターン要素の部品によって覆われてもよく、この場合、この目的のために追加の部品を設ける必要がない。
【0074】
医療用ハンド器具1の好ましい実施形態は上述した通りである。この実施形態では、ころ軸受102として構成された軸受部100が設けられており、この軸受部100を介して、操作要素12がハンドグリップ部4のキャリア要素98に回転可能に支持されている。代替として、操作要素12は、2つの軸受部100を介してキャリア要素98に支持されてもよい。こうすることで、操作要素12が傾いてしまう可能性が減り、摩擦のより少ない、より安定した軸受を実現することができる。
【0075】
上述したように、好ましい実施形態による医療用ハンド器具1では、ころ軸受102として玉軸受が使用されている。しかし、これに代えて、ころ軸受102として針状ころ軸受や円筒ころ軸受を用いてもよい。このようなころ軸受によって、単列軸受であっても傾きを効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0076】
1:ハンド器具
2:モータハンドピース
4:ハンドグリップ部
6:駆動ユニット
8:ツール
10:シャフト
12:操作要素
14:調整ピン
16:軸方向溝
18:回転伝達スリーブ
20:近位シャフト部
22:遠位シャフト部
24、26:傾斜端面
28:第1の連結装置
30:第2の連結装置
32:ツールヘッド/エフェクタ
34:ツールシャフト
36:ころ軸受ユニット
38:駆動シャフト
40:ころ軸受
42:軸受ハウジング
44:軸方向固定溝
46:ロックボール
48:ラッチピン
50:外管
52:中空ホイール
54:内歯
56:ピニオン
58:外歯
60:固定ブッシュ
62:中空シャフト
63:近位シャフト部の縁部
64:受容ボア
66:ころ軸受
68:調整ブッシュ
70:シリコンホース
72:ラッチピン受容窪み
74:付勢要素
76:ラッチ突起
78:インジケータ
80:インジケータスリーブ
82:ロックスライド
83:ピボット部
84:ラッチリング
86:ばね要素
88:ボール押圧要素
90:ばね要素
92:ボール
94:摺動リンク(カロットラッチリング)
96:ラッチ凹部
98:キャリア要素
100:軸受部
102:ころ軸受
104:円周溝
106:円周溝
108:充填開口
110:閉鎖要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位のエンドエフェクタを駆動するための医療用モータハンドピースであって、
ハンドグリップ部と
作要素であって、前記ハンドグリップ部の遠位端部においてハンドグリップの長手方向軸を中心として回転可能に支持され、前記操作要素の回転運動を前記エンドエフェクタの運動へ変換するように又は前記エンドエフェクタにおいて機能を発揮するように、前記エンドエフェクタに連結可能な前記操作要素と、を備え、
前記操作要素は、少なくとも1つのころ軸受を介して前記ハンドグリップ部に回転可能に支持されていることを特徴とする、医療用モータハンドピース。
【請求項2】
前記モータハンドピースは、シャフトを介して前記エンドエフェクタに連結可能であり、
前記操作要素は、第1の回転方向への前記操作要素の回転運動時に、前記シャフトに対して前記エンドエフェクタを屈曲させるように前記エンドエフェクタを動かすことを特徴とする、請求項1に記載の医療用モータハンドピース。
【請求項3】
前記エンドエフェクタは、第1の連結装置を備え、
前記シャフトは、第2の連結装置を備え、
前記第1の連結装置と前記第2の連結装置は、連結状態において互いに動作可能に係合しており、
前記第1の回転方向と反対の第2の回転方向への前記操作要素の回転運動が、前記第1の連結装置と前記第2の連結装置との間の動作可能な係合を解除することを特徴とする、請求項2に記載の医療用モータハンドピース。
【請求項4】
前記操作要素は、前記ハンドグリップ部のキャリア要素に回転可能に支持されていることを特徴とする、請求項1~3の1つに記載の医療用モータハンドピース。
【請求項5】
前記ころ軸受の外輪は、前記操作要素と一体的に形成されていることを特徴とする、請求項1~4の1つに記載の医療用モータハンドピース。
【請求項6】
前記ころ軸受の内輪は、前記キャリア要素と一体的に形成されていることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の医療用モータハンドピース。
【請求項7】
前記操作要素は、前記ころ軸受の転動体を取り付けるための充填開口を有することを特徴とする、請求項1~6の1つに記載の医療用モータハンドピース。
【請求項8】
少なくとも1つの前記ころ軸受は、玉軸受、針状ころ軸受、又は円筒ころ軸受として構成されていることを特徴とする、請求項1~7の1つに記載の医療用モータハンドピース。
【請求項9】
前記操作要素は、2つの前記ころ軸受を介して前記ハンドグリップ部に支持されていることを特徴とする、請求項1~8の1つに記載の医療用モータハンドピース。
【請求項10】
医療用ハンド器具であって、
請求項1~9の1つに記載の医療用モータハンドピースと
前記モータハンドピースからエンドエフェクタへトルクを伝達するために、シャフトを介して前記モータハンドピースに連結された前記エンドエフェクタと、を備える、医療用ハンド器具。
【外国語明細書】