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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024648
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ダイヤフラム及びダイヤフラム弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/16 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
F16K7/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205029
(22)【出願日】2023-12-05
(62)【分割の表示】P 2022130315の分割
【原出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】390014948
【氏名又は名称】日本ダイヤバルブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】飯村 勝昭
(72)【発明者】
【氏名】三谷 崇
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流体がダイヤフラム弁の外部に漏れることを防止、すなわち外部シールをするために、ダイヤフラムの外周部と弁本体とのシール面圧を確保するダイヤフラム弁を提供する。
【解決手段】ダイヤフラム弁100は、弁本体10、ダイヤフラム20、ボンネット40、及びコンプレッサー60を含む。ダイヤフラム20は、第1の厚みを有する湾曲板状の第1部分と、第1部分の外側を囲み、第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有する平面板状の第2部分と、を含む。第2部分は、第1部分21の外側を囲むシールバンドを含む。ボンネット40は第1部分の一部を収容する内段部を有し、内段部のZ方向の大きさは、第1及び第2の厚みの差よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体に押し付けられてダイヤフラム弁を構成するダイヤフラムであって、
第1の厚みを有する湾曲板状の第1部分と、
前記第1部分の外側を囲み、前記第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有する平面板状の第2部分であって、前記第1部分の外側を囲むシールバンドを含む、前記第2部分と、
を備える、ダイヤフラム。
【請求項2】
請求項1に記載のダイヤフラムであって、
前記第1及び第2の厚みの方向に重ねられたクッションゴム及びシール部品を含み、
前記クッションゴムの一部と前記シール部品の一部とが前記第1部分を構成し、
前記クッションゴムの他の一部と前記シール部品の他の一部とが前記第2部分を構成し、
前記クッションゴムのうちの前記第1部分を構成する前記一部と前記第2部分を構成する前記他の一部との厚みの差が、前記シール部品のうちの前記第1部分を構成する前記一部と前記第2部分を構成する前記他の一部との厚みの差よりも大きい、
ダイヤフラム。
【請求項3】
請求項1に記載のダイヤフラムであって、
前記第1及び第2の厚みの方向に重ねられたクッションゴム及びシール部品を含み、
前記クッションゴムの一部と前記シール部品の一部とが前記第1部分を構成し、
前記クッションゴムの他の一部と前記シール部品の他の一部とが前記第2部分を構成し、
前記クッションゴムのうちの前記第2部分を構成する前記他の一部の厚みが、前記クッションゴムのうちの前記第1部分を構成する前記一部の厚みよりも小さく、前記シール部品のうちの前記第2部分を構成する前記他の一部の厚みよりも大きい、
ダイヤフラム。
【請求項4】
請求項1に記載のダイヤフラムであって、
前記第1及び第2の厚みの方向に重ねられたクッションゴム及びシール部品を含み、
前記クッションゴムの一部と前記シール部品の一部とが前記第1部分を構成し、
前記クッションゴムの他の一部と前記シール部品の他の一部とが前記第2部分を構成し、
前記クッションゴムのうちの前記第2部分を構成する前記他の一部の厚みが、前記クッションゴムのうちの前記第1部分を構成する前記一部の厚みの2分の1以下である、
ダイヤフラム。
【請求項5】
第1及び第2の流路の間に位置する弁本体と、
第1の厚みを有する湾曲板状の第1部分と、前記第1部分の外側を囲み、前記第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有する平面板状の第2部分であって、前記第1部分の外側を囲むシールバンドを含む、前記第2部分と、を含み、前記弁本体とともに前記第1及び第2の流路の間の連通路を構成する第1の状態と、前記第1及び第2の流路の間を塞ぐ第2の状態と、に切り替え可能なダイヤフラムと、
前記第1部分を前記弁本体に向けた押し付け方向に押し付けて前記ダイヤフラムを前記第2の状態とし、前記第1部分の前記弁本体に向けた押し付けを解除して前記ダイヤフラムを前記第1の状態とするコンプレッサーと、
前記第2部分を前記弁本体に向けて押し付けるボンネットと、
を備える、ダイヤフラム弁。
【請求項6】
請求項5に記載のダイヤフラム弁であって、
前記ボンネットは、前記コンプレッサーを収容する筒状部を含み、前記筒状部は、前記第2部分を前記弁本体に向けて押し付ける押圧端面と、前記押圧端面より内側で前記第1部分の一部を収容する内段部と、を有し、前記内段部の前記押し付け方向の大きさが、前記第1及び第2の厚みの差よりも大きい、
ダイヤフラム弁。
【請求項7】
第1及び第2の流路の間に位置する弁本体と、
第1の厚みを有する第1部分と、前記第1部分の外側を囲み、前記第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有する第2部分と、を含み、前記弁本体とともに前記第1及び第2の流路の間の連通路を構成する第1の状態と、前記第1及び第2の流路の間を塞ぐ第2の状態と、に切り替え可能なダイヤフラムと、
前記第1部分を前記弁本体に向けた押し付け方向に押し付けて前記ダイヤフラムを前記第2の状態とし、前記第1部分の前記弁本体に向けた押し付けを解除して前記ダイヤフラムを前記第1の状態とするコンプレッサーと、
前記コンプレッサーを収容する筒状部を含むボンネットであって、前記筒状部が、前記第2部分を前記弁本体に向けて押し付ける押圧端面と、前記第1部分の一部を収容する内段部と、を有し、前記内段部の前記押し付け方向の大きさが、前記第1及び第2の厚みの差よりも大きい、前記ボンネットと、
を備える、ダイヤフラム弁。
【請求項8】
請求項7に記載のダイヤフラム弁であって、
前記ダイヤフラムは、前記内段部より外側の前記押圧端面と前記弁本体との間に位置するシールバンドを含む、
ダイヤフラム弁。
【請求項9】
請求項8に記載のダイヤフラム弁であって、
前記ダイヤフラム及び前記コンプレッサーの形状を前記押し付け方向に投影して重ね合わせたとき、前記第1部分の外縁は、前記コンプレッサーの外縁より外側で前記シールバンドの外縁より内側に位置する、
ダイヤフラム弁。
【請求項10】
請求項6又は請求項7に記載のダイヤフラム弁であって、
前記内段部は、前記ボンネットの内周面と前記押圧端面との稜線の一部に沿って形成された第1の段部と、前記稜線の他の一部に沿って形成された第2の段部と、を含み、前記第1の段部と前記第2の段部とが互いに離れている、
ダイヤフラム弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラム及びダイヤフラム弁に関する。
【背景技術】
【0002】
図8Aは、従来のダイヤフラム弁100aの断面図である。図8Aの右半分が開状態(S1)を示し、左半分が閉状態(S2)を示す。ダイヤフラム弁100aは、弁本体10、ダイヤフラム20a、ボンネット40a、及びコンプレッサー60を備える。
【0003】
弁本体10は第1及び第2の流路C1及びC2の間に位置する。ボンネット40aは、コンプレッサー60を収容し、ダイヤフラム20aの外周部を弁本体10に向けて押し付けた状態でボルト30及びナット50により弁本体10に固定される。ダイヤフラム20aの中心部がコンプレッサー60に固定されており、コンプレッサー60はボンネット40aの内部で往復動する。これにより、ダイヤフラム20aは、弁本体10とともに流路C1及びC2の間の流体の連通路を構成する開状態(S1)と、流路C1及びC2の間を塞ぐ閉状態(S2)と、に切り替えられる。
【0004】
ダイヤフラム弁100aに含まれる部品のうち弁本体10とダイヤフラム20aのみが流体と接するようになっており、コンプレッサー60を含む駆動機構は連通路から隔離されている。このようなダイヤフラム弁は、流体が駆動機構に触れて汚染されることがなく、駆動機構が流体に触れて劣化することもないという特徴を有し、医薬品製造工場、半導体製造工場、化学プラント等で広く使用されている。
【0005】
ダイヤフラム20aは、クッションゴム20cとシール部品20sとを含む。シール部品20sは、フッ素樹脂であるPTFE(polytetrafluoroethylene)で構成され、耐薬品性に優れている。クッションゴム20cはシール部品20sよりも弾性率が小さい材料で構成され、弁本体10やコンプレッサー60の形状にわずかな個体差があってもダイヤフラム20aを弁本体10に隙間なく密着させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭60-14232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
流体がダイヤフラム弁100aの外部に漏れることを防止、すなわち外部シールをするために、ダイヤフラム20aの外周部と弁本体10とのシール面圧を確保することが重要である。このシール面圧は、ボルト30及びナット50の締め付けによるクッションゴム20cの圧縮反力により発生する。
【0008】
図8Bは、クッションゴム20cの圧縮反力の変化を示すグラフである。図8Bの横軸はボルト30及びナット50の締め付け時からの経過時間Tを対数目盛りで示し、縦軸は圧縮反力Fを示す。折れ線F1は初回の締め付け後の特性を示し、直線F2は2回目の締め付け後の特性を示す。クッションゴム20cの圧縮反力Fは、初回の締め付け直後に急激に低下するが、締め付け後約1時間経過すると圧縮反力Fが安定し、その後は経過時間Tの対数にほぼ比例して低下する。圧縮反力Fが安定した後で、初回の締め付け時と同じ締め付けトルクでボルト30及びナット50を再度締め付けると、圧縮反力Fはある程度回復し、その後、急激に低下することはなく経過時間Tの対数にほぼ比例して低下する。そこで、ダイヤフラム弁100aの組み立て工程は、規定の締め付けトルクによるボルト30及びナット50の締め付けの後、例えば4時間後に再度規定の締め付けトルクによる締め付けを含むことが望ましい。
【0009】
しかしながら、シール面圧を確保するために時間を開けてボルト30及びナット50の2回の締め付けを要することは組み立て工程を煩雑にし、施工効率の低下を招く場合がある。
【0010】
一方、ボルト30及びナット50の締め付けトルクを大きくすれば、ダイヤフラム20aの外周部と弁本体10とのシール面圧が高くなり、外部シール性能が向上する可能性がある。
【0011】
しかしながら、過剰な締め付けトルクでボルト30及びナット50を締め付けると、クッションゴム20cのはみ出しが発生して圧縮反力Fが低下し、ダイヤフラム20aの外周部と弁本体10とのシール面圧が却って低下することがある。図8C図8Eの各々は、図8Aの囲み部VIIICDEの拡大図であり、図8Cはボルト30及びナット50の締め付け前、図8Dは適正トルクによる締め付け時、図8Eは過剰トルクによる締め付け時の状態を示す。適正トルクによる締め付け時にもクッションゴム20cがわずかに変形してはみ出しているが適切な圧縮反力Fが得られる。過剰トルクによる締め付け時にはクッションゴム20cが大きくはみ出して適切な圧縮反力Fは得られない。
【0012】
特許文献1(特公昭60-14232号公報)には、ダイヤフラム2の周辺部分に段差を設け、外側を薄肉のガスケット部2bとし、内側を厚肉部2cとしたダイヤフラム弁が記載されている。図9A図9Cは、特許文献1の幾つかの図を示す。特許文献1によれば、ダイヤフラム2の周辺部分が薄肉のガスケット部2bとされたことで、ボルト3及びナット5の締め付け時の外半径方向へのはみ出しが抑制される。従って、締め付けにより付与されるガスケット部2bの締め付け応力が安定する。
【0013】
図9A及び図9Bに示されるように、特許文献1においては、ダイヤフラム2と弁本体1とのシールを行うシールバンド2aが厚肉部2cに設けられている。
【0014】
しかしながら、シールバンド2aによるシールを行うためには、ボンネット4の内段部4cによってシールバンド2aを含む厚肉部2cを押圧し、十分な圧縮反力Fを厚肉部2cに発生させる必要がある。大きい締め付けトルクでボルト3及びナット5を締め付けると、ダイヤフラム2のガスケット部2bのシール面圧は高くなるが、ダイヤフラム2の厚肉部2cは内側にはみ出し、圧縮反力Fが低下してシールバンド2aによるシール面圧は高くならない。図9Dは、図9Aの囲み部IXDの拡大図であり、大きい締め付けトルクによって厚肉部2cの一部が内側にはみ出した様子を示す。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの観点に係るダイヤフラムは、
弁本体に押し付けられてダイヤフラム弁を構成するダイヤフラムであって、
第1の厚みを有する湾曲板状の第1部分と、
前記第1部分の外側を囲み、前記第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有する平面板状の第2部分であって、前記第1部分の外側を囲むシールバンドを含む、前記第2部分と、
を備える。
【0016】
本発明の1つの観点に係るダイヤフラム弁は、
第1及び第2の流路の間に位置する弁本体と、
第1の厚みを有する湾曲板状の第1部分と、前記第1部分の外側を囲み、前記第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有する平面板状の第2部分であって、前記第1部分の外側を囲むシールバンドを含む、前記第2部分と、を含み、前記弁本体とともに前記第1及び第2の流路の間の連通路を構成する第1の状態と、前記第1及び第2の流路の間を塞ぐ第2の状態と、に切り替え可能なダイヤフラムと、
前記第1部分を前記弁本体に向けた押し付け方向に押し付けて前記ダイヤフラムを前記第2の状態とし、前記第1部分の前記弁本体に向けた押し付けを解除して前記ダイヤフラムを前記第1の状態とするコンプレッサーと、
前記第2部分を前記弁本体に向けて押し付けるボンネットと、
を備える。
【0017】
本発明の他の1つの観点に係るダイヤフラム弁は、
第1及び第2の流路の間に位置する弁本体と、
第1の厚みを有する第1部分と、前記第1部分の外側を囲み、前記第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有する第2部分と、を含み、前記弁本体とともに前記第1及び第2の流路の間の連通路を構成する第1の状態と、前記第1及び第2の流路の間を塞ぐ第2の状態と、に切り替え可能なダイヤフラムと、
前記第1部分を前記弁本体に向けた押し付け方向に押し付けて前記ダイヤフラムを前記第2の状態とし、前記第1部分の前記弁本体に向けた押し付けを解除して前記ダイヤフラムを前記第1の状態とするコンプレッサーと、
前記コンプレッサーを収容する筒状部を含むボンネットであって、前記筒状部が、前記第2部分を前記弁本体に向けて押し付ける押圧端面と、前記第1部分の一部を収容する内段部と、を有し、前記内段部の前記押し付け方向の大きさが、前記第1及び第2の厚みの差よりも大きい、前記ボンネットと、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係るダイヤフラム弁100の断面図である。
図2図2は、図1に示される弁本体10の平面図である。
図3図3Aは、図1に示されるダイヤフラム20の平面図である。図3Bは、図3AのIIIB-IIIB線における断面図であり、図3Cは、図3AのIIIC-IIIC線における断面図である。図3Dは、ダイヤフラム20の底面図である。
図4図4は、ダイヤフラム20の各部の厚みを示す断面図である。
図5図5A及び図5Bの各々は、図1に示されるボンネット40の外観及び一部の断面を示す。図5Cはボンネット40の底面図である。
図6図6A及び図6Bの各々は、ダイヤフラム20及びボンネット40を組み合わせた断面図である。
図7図7は、ダイヤフラム20の第1部分21及びシールバンドSBの形状と、コンプレッサー60の形状とを-Z方向に投影して重ね合わせた様子を示す。
図8図8Aは、従来のダイヤフラム弁100aの断面図である。図8Bは、クッションゴム20cの圧縮反力の変化を示すグラフである。図8C図8Eの各々は、図8Aの囲み部VIIICDEの拡大図であり、図8Cはボルト30及びナット50の締め付け前、図8Dは適正トルクによる締め付け時、図8Eは過剰トルクによる締め付け時の状態を示す。
図9図9A図9Cは、特許文献1の幾つかの図を示す。図9Dは、図9Aの囲み部IXDの拡大図であり、過剰な締め付けによって厚肉部2cの一部が内側にはみ出した様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に説明される実施形態は、本発明の一例を示すものであって、本発明の内容を限定するものではない。また、実施形態で説明される構成及び動作の全てが本発明の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0020】
1.ダイヤフラム弁100
図1は、実施形態に係るダイヤフラム弁100の断面図である。図1の右半分が開状態(S1)を示し、左半分が閉状態(S2)を示す。開状態(S1)は本発明における第1の状態に相当し、閉状態(S2)は本発明における第2の状態に相当する。ダイヤフラム弁100は、図8Aに示されるダイヤフラム20a及びボンネット40aの代わりに、ダイヤフラム20及びボンネット40を備える点で、従来のダイヤフラム弁100aと異なる。ダイヤフラム20については図3A図3D及び図4を参照しながら後述し、ボンネット40については図5A図5Cを参照しながら後述する。
【0021】
弁本体10において流体が流れる方向をX方向又は-X方向とする。コンプレッサー60がボンネット40の内部で往復動する方向をZ方向又は-Z方向とする。X方向とZ方向とは互いに垂直である。X方向とZ方向との両方に垂直な方向をY方向又は-Y方向とする。図1はダイヤフラム弁100のXZ面に平行な断面をY方向に見た図に相当する。
【0022】
弁本体10は第1及び第2の流路C1及びC2の間に位置する。ダイヤフラム20は、弁本体10とともに流路C1及びC2の間の流体の連通路を構成する開状態(S1)と、流路C1及びC2の間を塞ぐ閉状態(S2)と、に切り替え可能に構成される。ボンネット40は、コンプレッサー60を収容し、ダイヤフラム20の外周部を弁本体10に向けて押し付けた状態でボルト30及びナット50により弁本体10に固定される。コンプレッサー60は、例えばハンドル90によって操作されるネジ付きスピンドル70の動作により、ボンネット40の内部で往復動する。ダイヤフラム20の中心部に固定されたコンプレッサー60が往復動することにより、ダイヤフラム20を弁本体10の弁座103に押し付けて閉状態(S2)とし、押し付けを解除して開状態(S1)とする。ハンドル90の操作に伴って回転するスピンドル70と回転しないコンプレッサー60との間にはスラスト座金180が配置される。
【0023】
2.弁本体10
図2は、図1に示される弁本体10の平面図である。図2は弁本体10の外観を-Z方向に見た図に相当する。弁本体10は、流路C1に連通する開口101と、流路C2に連通する開口102と、開口101及び102の間に位置する弁座103と、を有する。
【0024】
3.ダイヤフラム20
図3Aは、図1に示されるダイヤフラム20の平面図である。図3Aはダイヤフラム20の外観を-Z方向に見た図に相当する。図3Bは、図3AのIIIB-IIIB線における断面図であり、図3Cは、図3AのIIIC-IIIC線における断面図である。図3B及び図3Cにおいて、切断面を示すハッチングは省略されている。図3Dは、ダイヤフラム20の底面図である。図3Dは、ダイヤフラム20の外観をZ方向に見た図、あるいは図3Aのダイヤフラム20を裏返して見た図に相当する。
【0025】
ダイヤフラム20は、クッションゴム20c及びシール部品20sを含む。クッションゴム20cの内部には基布層BFが配置されている。クッションゴム20c及びシール部品20sの材質については図8Aを参照しながら説明したものと同様でよい。シール部品20sには、環状に盛り上がったシールバンドSBと、シールバンドSBの直径に沿ってY方向の細長状に盛り上がったタッチラインTLとが形成されている。
【0026】
ダイヤフラム20は、以下のように弁本体10に押し付けられてダイヤフラム弁100を構成する。すなわち、シールバンドSBが図2に示される弁本体10の開口101及び102の両方を囲む位置に押し付けられて固定されることで、ダイヤフラム弁100の外部シールが実現する。タッチラインTLが開口101及び102の間に位置する弁座103に押し付けられることで開口101及び102の間が塞がれて閉状態(S2)となり、タッチラインTLの押し付けが解除されることで開状態(S1)となる。
【0027】
ダイヤフラム20は、第1の厚みT1を有する湾曲板状の第1部分21と、第1部分21の外側を囲み、第1の厚みT1よりも小さい第2の厚みT2を有する平面板状の第2部分22と、を含む。クッションゴム20c及びシール部品20sは第1及び第2の厚みT1及びT2の方向に重ねられている。クッションゴム20cの一部とシール部品20sの一部とで、厚みT1を有する第1部分21が構成され、クッションゴム20cの他の一部とシール部品20sの他の一部とで、厚みT2を有する第2部分22が構成される。第1部分21は厚みT2より大きい厚みT1を有するので、弁本体10やコンプレッサー60の形状にわずかな個体差があってもタッチラインTLを弁座103に隙間なく密着させて閉状態(S2)とすることができる。
【0028】
シールバンドSBは、第1部分21の外側を囲むように、第2部分22に形成されている。従って、シールバンドSBを弁本体10に押し付けて外部シールを実現するには、厚みT1よりも小さい厚みT2を有する第2部分22を弁本体10に押し付ければよく、厚みT1を有する第1部分21を弁本体10に押し付ける必要はない。厚みT2を有する第2部分22を押圧しても、クッションゴム20cが大きくはみ出すことがないので、より大きい締め付けトルクでボルト30及びナット50を締め付けることができる。また、初回の締め付け直後でも、厚みT2を有する第2部分22ではクッションゴム20cの圧縮反力の急激な低下が抑制されるので、再度の締め付けが不要となる。
【0029】
図4は、ダイヤフラム20の各部の厚みを示す断面図である。図4においては、図3Cと同じ部分が示されているが、一部の符号は省略されている。また切断面を示すハッチングは省略されている。クッションゴム20cのうち、第1部分21を構成する一部は厚みTc1を有し、クッションゴム20cのうち、第2部分22を構成する他の一部は厚みTc2を有する。シール部品20sのうち、第1部分21を構成する一部は厚みTs1を有し、シール部品20sのうち、第2部分22を構成する他の一部は厚みTs2を有する。
【0030】
厚みTc1は厚みTc2より大きく、厚みTc1と厚みTc2との差Tc1-Tc2は、厚みTs1と厚みTs2との差|Ts1-Ts2|より大きい。厚みTs1と厚みTs2とは同一でもよい。クッションゴム20cのうち、コンプレッサー60によって弁本体10に押し付けられる第1部分21を構成する上記一部の厚みTc1を大きくすることで、弁本体10やコンプレッサー60の形状にわずかな個体差があってもダイヤフラム20を弁本体10に隙間なく密着させることができる。クッションゴム20cのうち、ボンネット40によって弁本体10に押し付けられる第2部分22を構成する上記他の一部の厚みTc2を小さくすることで、大きい締め付けトルクでボルト30及びナット50を締め付けて高いシール面圧をかけることができる。
【0031】
クッションゴム20cのうち、第2部分22を構成する上記他の一部の厚みTc2は、クッションゴム20cのうち、第1部分21を構成する上記一部の厚みTc1よりも小さく、シール部品20sのうち、第2部分22を構成する上記他の一部の厚みTs2よりも大きい。厚みTc2を厚みTc1より小さくすることで、大きい締め付けトルクでボルト30及びナット50を締め付けて高いシール面圧をかけることができる。また、厚みTc2を厚みTs2より大きくすることで、クッションゴム20cの強度を確保し得る。
【0032】
クッションゴム20cのうち、第2部分22を構成する上記他の一部の厚みTc2は、クッションゴム20cのうち、第1部分21を構成する上記一部の厚みTc1の2分の1以下である。厚みTc2を厚みTc1の2分の1以下とすることで、大きい締め付けトルクでボルト30及びナット50を締め付けて高いシール面圧をかけることができる。
【0033】
4.ボンネット40
図5A及び図5Bの各々は、図1に示されるボンネット40の外観及び一部の断面を示す。図5Aの左半分はボンネット40の外観をY方向に見た図であり、右半分はボンネット40のXZ面に平行な断面をY方向に見た図である。図5Bの左半分はボンネット40の外観を-X方向に見た図であり、右半分はボンネット40のYZ面に平行な断面を-X方向に見た図である。図5Cはボンネット40の底面図であり、ボンネット40をZ方向に見た図に相当する。
【0034】
ボンネット40には、4つのボルト孔40hが形成されている。図2に示されるように弁本体10の対応する位置にも4つのボルト孔10hが形成され、図3A及び図3Dに示されるようにダイヤフラム20の対応する位置にも4つのボルト孔20hが形成されている。これらのボルト孔10h、20h、及び40hを4本のボルト30がそれぞれ貫通し、それぞれナット50で締め付けられる。
ボルト穴の数、及びボルト本数は一例を示すものであり、ダイヤフラム20のサイズが大きくなるとボルト穴の数、及びボルト本数は増える。
【0035】
ボンネット40は、コンプレッサー60を収容する筒状部41を含む。筒状部41は、ダイヤフラム20の第2部分22を弁本体10に向けて-Z方向に押し付ける押圧端面42と、押圧端面42より内側で、ダイヤフラム20の第1部分21の一部を収容する内段部43と、を有する。内段部43の-Z方向の大きさGは、ダイヤフラム20の第1及び第2部分21及び22の厚みT1及びT2の差T1-T2よりも大きい。これにより、押圧端面42が第2部分22を押圧するときに、内段部43が第1部分21を押圧することは抑制され、第2部分22に高いシール面圧をかけることができる。-Z方向は、本発明における押し付け方向に相当する。
【0036】
内段部43は、ボンネット40の筒状部41の内周面と押圧端面42との稜線の一部に沿って形成された第1の段部431と、上記稜線の他の一部に沿って形成された第2の段部432と、を含む。第1及び第2の段部431及び432が互いに離れているので、第1及び第2の段部431及び432の切れ目においてはコンプレッサー60がダイヤフラム20の第1部分21を押圧できる。従って、Y方向に長いタッチラインTL(図3D参照)の全体を弁本体10に密着させ、第1及び第2の流路C1及びC2の間を確実に塞ぐことができる。
【0037】
5.ダイヤフラム20及びボンネット40の位置関係
図6A及び図6Bの各々は、ダイヤフラム20及びボンネット40を組み合わせた断面図である。図6Aはダイヤフラム20及びボンネット40のXZ面に平行な断面をY方向に見た図であり、図6Bはダイヤフラム20及びボンネット40のYZ面に平行な断面を-X方向に見た図である。ダイヤフラム20の切断面を示すハッチングは省略されている。
【0038】
図6A及び図6Bに示されるように、ダイヤフラム20に形成されたシールバンドSBは、ボンネット40の内段部43より外側の押圧端面42と、弁本体10との間に位置する。内段部43と弁本体10との間にはシールバンドSBが形成されていないので、内段部43がダイヤフラム20を押圧する必要がない。従って、ボルト30及びナット50の締め付けにより押圧端面42がダイヤフラム20を押圧しても、ダイヤフラム20の一部が内段部43から内側にはみ出すことがないので、圧縮反力の低下が抑制される。
【0039】
6.ダイヤフラム20及びコンプレッサー60の位置関係
図7は、ダイヤフラム20の第1部分21及びシールバンドSBの形状と、コンプレッサー60の形状とを-Z方向に投影して重ね合わせた様子を示す。図7には、第1部分21、シールバンドSB、及びコンプレッサー60のそれぞれの外縁21p、SBp、及び60pのみを示す。
【0040】
図7に示されるように、第1部分21の外縁21pは、コンプレッサー60の外縁60pより外側で、シールバンドSBの外縁SBpより内側に位置する。すなわち、コンプレッサー60は第1部分21の外縁21pより外側は押圧せず、外縁21pより内側を押圧する。ダイヤフラム20のうちのコンプレッサー60によって押圧される部分を第1の厚みT1とし、その外側のシールバンドSBが設けられた部分を第1の厚みT1よりも小さい第2の厚みT2とすることで、第1の厚みT1の部分ではコンプレッサー60によってダイヤフラム20を弁本体10に隙間なく密着させることができ、第2の厚みT2を有する部分では弁本体10に強く押し付けて高いシール面圧をかけることができる。
【0041】
7.その他
上述の実施形態においては、ダイヤフラム20がPTFEのシール部品20sを含む場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。クッションゴム20c及びシール部品20sが、一体成型されたゴムに置き換えられてもよい。
上述の実施形態においては、ハンドル90によって回転させられるスピンドル70によってコンプレッサー60が往復動する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。ダイヤフラム弁100が空気圧式又は電動式の駆動機構を備えていてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の流路の間に位置する弁本体と、
第1の厚みを有する第1部分と、前記第1部分の外側を囲み、前記第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有し、前記第1部分との間に段差を有する第2部分と、を含み、前記弁本体とともに前記第1及び第2の流路の間の連通路を構成する第1の状態と、前記第1及び第2の流路の間を塞ぐ第2の状態と、に切り替え可能なダイヤフラムと、
前記第1部分を前記弁本体に向けた押し付け方向に押し付けて前記ダイヤフラムを前記第2の状態とし、前記第1部分の前記弁本体に向けた押し付けを解除して前記ダイヤフラムを前記第1の状態とするコンプレッサーと、
前記コンプレッサーを収容する筒状部を含むボンネットであって、前記筒状部が、前記第2部分を前記弁本体に向けて押し付ける押圧端面と、前記第1部分の一部を収容する内段部と、を有し、前記内段部の前記押し付け方向の大きさが、前記第1及び第2の厚みの差よりも大きい、前記ボンネットと、
を備える、ダイヤフラム弁。
【請求項2】
請求項に記載のダイヤフラム弁であって、
前記ダイヤフラムは、前記内段部より外側の前記押圧端面と前記弁本体との間に位置するシールバンドを含む、
ダイヤフラム弁。
【請求項3】
請求項に記載のダイヤフラム弁であって、
前記ダイヤフラム及び前記コンプレッサーの形状を前記押し付け方向に投影して重ね合わせたとき、前記第1部分の外縁は、前記コンプレッサーの外縁より外側で前記シールバンドの外縁より内側に位置する、
ダイヤフラム弁。
【請求項4】
請求項に記載のダイヤフラム弁であって、
前記内段部は、前記ボンネットの内周面と前記押圧端面との稜線の一部に沿って形成された第1の段部と、前記稜線の他の一部に沿って形成された第2の段部と、を含み、前記第1の段部と前記第2の段部とが互いに離れている、
ダイヤフラム弁。