(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024660
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
H05K9/00 W
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212148
(22)【出願日】2023-12-15
(62)【分割の表示】P 2023502711の分割
【原出願日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2021147043
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】香月 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】田島 宏
(72)【発明者】
【氏名】石岡 宗悟
(72)【発明者】
【氏名】上農 憲治
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐屈曲性が充分に高く、かつ、高周波領域の信号を伝送する伝送回路に用いられたとしても電磁波シールド特性が充分に高い電磁波シールドフィルムを提供する。
【解決手段】接着剤層と、接着剤層の上に積層されたシールド層と、シールド層の上に積層された絶縁層とからなる電磁波シールドフィルムであって、シールド層には、開口面積が1~5000μm
2である複数の開口部50が形成されており、開口部は、開口面積が1μm
2を超え、300μm
2以下である第1開口部51と、開口面積が300μm
2を超え、5000μm
2以下である第2開口部52とを含み、開口部のうち、第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が80%以下であり、第2開口部が占める数の割合(累積頻度)が20%以上であり、第1開口部が占める数の割合の方が、第2開口部が占める数の割合よりも高い。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層と、前記接着剤層の上に積層されたシールド層と、前記シールド層の上に積層された絶縁層とからなる電磁波シールドフィルムであって、
前記シールド層には、開口面積が1~5000μm2である複数の開口部が形成されており、
前記開口部は、開口面積が1μm2を超え、300μm2以下である第1開口部と、開口面積が300μm2を超え、5000μm2以下である第2開口部とを含み、
前記開口部のうち、前記第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が80%以下であり、前記第2開口部が占める数の割合(累積頻度)が20%以上であり、
前記第1開口部が占める数の割合の方が、前記第2開口部が占める数の割合よりも高いことを特徴とする電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記シールド層の開口率は、3~10%である請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
JISK7129に準じた水蒸気透過度が、温度80℃、湿度95%RH、差圧1atmで、40g/m2・24h以上である請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記シールド層は、金属層からなる請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
前記金属層は、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、錫、パラジウム、クロム、チタン及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む請求項4に記載の電磁波シールドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばフレキシブルプリント配線板(FPC)などのプリント配線板に電磁波シールドフィルムを貼り付けて、外部からの電磁波をシールドすることが行われている。
【0003】
電磁波シールドフィルムは、通常、導電性接着剤層と、金属薄膜等からなるシールド層と、絶縁層とが順に積層された構成を有する。この電磁波シールドフィルムをプリント配線板に重ね合わせた状態で加熱プレスすることにより、電磁波シールドフィルムは接着剤層によってプリント配線板に接着されて、シールドプリント配線板が作製される。この接着後、はんだリフローによってシールドプリント配線板に部品が実装される。また、プリント配線板は、ベースフィルム上のプリントパターンが絶縁フィルムで被覆された構成となっている。
【0004】
シールドプリント配線板を製造する際に、加熱プレスやはんだリフローによりシールドプリント配線板を加熱すると、電磁波シールドフィルムの接着剤層やプリント配線板の絶縁フィルム等からガスが発生する。また、プリント配線板のベースフィルムがポリイミドなど吸湿性の高い樹脂で形成されている場合には、加熱によりベースフィルムから水蒸気が発生する場合がある。接着剤層や絶縁フィルムやベースフィルムから生じたこれらの揮発成分は、シールド層を通過することができないため、シールド層と接着剤層との間に溜まってしまう。そのため、はんだリフロー工程で急激な加熱を行うと、シールド層と接着剤層との間に溜まった揮発成分によって、シールド層と接着剤層との層間密着が破壊され、電磁波シールド特性が低下してしまう場合がある。
【0005】
このような問題を解決するために、シールド層(金属薄膜)に複数の開口部を設け、通気性を向上させることが行われている。
シールド層に複数の開口部を設けると、揮発成分が発生したとしても、揮発成分は、開口部を通じてシールド層を通過することができる。そのため、シールド層と導電性接着剤層との間に揮発成分が溜まることを防止することができ、層間密着が破壊されることによる電磁波シールド特性の低下を防止することができる。
【0006】
このようなシールド層(金属薄膜)に開口部を有する電磁波シールドフィルムとして、特許文献1には、導電性接着剤層と、前記導電性接着剤層の上に積層されたシールド層と、前記シールド層の上に積層された絶縁層とからなる電磁波シールドフィルムであって、前記シールド層には、複数の開口部が形成されており、下記層間剥離評価において、膨れが生じず、KEC法で測定した200MHzにおける前記電磁波シールドフィルムの電磁波シールド特性が、85dB以上であり、前記開口部の開口面積と、開口ピッチとが所定の関係を満たすことを特徴とする電磁波シールドフィルムが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、絶縁層と金属層と導電性接着剤層とから構成され、前記金属層は、膜厚が0.2~5μmであり、面積が0.7~5000μm2の開口部を10000~200000個/cm2有し、開口率が0.05~40%であり、かつ金属層の開口部において、開口部の中心点から最近隣の開口部の中心点までの距離、及び、金属層の面積S中の開口部の個数が所定の関係を満たすことを特徴とする電磁波シールドシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6404533号公報
【特許文献2】特許第6202177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び特許文献2に記載の電磁波シールドフィルム(電磁波シールドシート)では、シールド層(金属層)と導電性接着剤層との間に揮発成分が溜まることを防止することができ、層間密着が破壊されることをある程度防ぐことができる。しかし、シールド層に開口部を形成すると電磁波シールド特性や耐屈曲性が低下する。特に、50GHz以上の高周波領域の信号を伝送する伝送回路に用いられる場合は、電磁波シールド特性が不充分になるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、耐屈曲性が充分に高く、かつ、高周波領域の信号を伝送する伝送回路に用いられたとしても電磁波シールド特性が充分に高い電磁波シールドフィルムを提供することである。
【0011】
本発明の電磁波シールドフィルムは、接着剤層と、上記接着剤層の上に積層されたシールド層と、上記シールド層の上に積層された絶縁層とからなる電磁波シールドフィルムであって、上記シールド層には、開口面積が1~5000μm2である複数の開口部が形成されており、上記開口部は、開口面積が1μm2を超え、300μm2以下である第1開口部と、開口面積が300μm2を超え、5000μm2以下である第2開口部とを含み、上記開口部のうち、上記第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が30~90%であり、上記第2開口部が占める数の割合(累積頻度)が10~70%であることを特徴とする。
【0012】
本発明の電磁波シールドフィルムには、開口面積が1~5000μm2である複数の開口部が形成されている。
そのため、電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置する際に、揮発成分が発生したとしても、揮発成分は開口部を通過することができる。従って、シールド層と導電性接着剤層との間に揮発成分が溜まることを防止することができ、層間密着が破壊されることを防ぐことができる。
【0013】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、シールド層に開口部が形成されており、該開口部が、開口面積が1μm2を超え、300μm2以下である第1開口部と、開口面積が300μm2を超え、5000μm2以下である第2開口部とを含む。
電磁波シールドフィルムにおいて、電磁波シールド特性はシールド層の面積に依存する。そのため、揮発成分の透過性を向上させるためシールド層の開口部の面積を大きくすると、電磁波シールド特性が低下してしまう。つまり、電磁波シールド特性と揮発成分の透過性とはトレードオフの関係にある。
開口部の大きさを一様に調整した場合、電磁波シールド特性と揮発成分の透過性とを高いレベルで両立することは難しい。
一方、本発明の電磁波シールドフィルムでは、シールド層に開口面積が小さい第1開口部と開口面積が大きい第2開口部とが形成されている。
このように開口面積が大きい第2開口部と開口面積が小さい第1開口部とを併存させることにより、電磁波シールド特性を維持したまま、揮発成分の透過性を向上させることができる。
【0014】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、開口部のうち、上記第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が30~90%であり、上記第2開口部が占める数の割合(累積頻度)が10~70%である。
このような範囲であると、揮発成分の透過性及び電磁波シールド特性を充分に向上させることができる。
開口部のうち、第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が30%未満であると、第2開口部が占める割合が多くなるので、電磁波シールド特性が低下する。
開口部のうち、第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が90%を超えると、第2開口部が占める割合が少なくなるので、揮発成分の透過性が低下する。
【0015】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記シールド層の開口率は、3~10%であることが好ましい。
シールド層の開口率が上記範囲内であると、揮発成分の透過性及び電磁波シールド特性を両立させつつ、これらを向上させることができる。
シールド層の開口率が3%未満であると、揮発成分の透過性が低下しやすくなる。
シールド層の開口率が10%を超えると、電磁波シールド特性が低下しやすくなる。また、シールド層の強度が低下し、耐屈曲性が低下しやすくなる。
【0016】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、JISK7129に準じた水蒸気透過度が、温度80℃、湿度95%RH、差圧1atmで、40g/m2・24h以上であることが好ましい。
水蒸気透過度がこのような範囲であると、シールド層と接着剤層との間に揮発成分が溜まりにくくなる。そのため、揮発成分によりシールド層と接着剤層との層間密着が破壊されにくくなる。
【0017】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、シールド層が金属層からなることが好ましい。
また、金属層は、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、錫、パラジウム、クロム、チタン及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
これらの金属は、電磁波シールドフィルムのシールド層として適している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐屈曲性が充分に高く、かつ、高周波領域の信号を伝送する伝送回路に用いられたとしても電磁波シールド特性が充分に高い電磁波シールドフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の電磁波シールドフィルムのシールド層の一例を模式的に示す平面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の電磁波シールドフィルムのシールド層の別の一例を模式的に示す平面図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明の電磁波シールドフィルムのシールド層の別の一例を模式的に示す平面図である。
【
図2D】
図2Dは、本発明の電磁波シールドフィルムのシールド層の別の一例を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の電磁波シールドフィルムを備えるプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1に係る電磁波シールドフィルムのシールド層の平面写真の二値化画像である。
【
図5】
図5は、実施例1に係る電磁波シールドフィルムのシールド層における開口面積の大きさの階級と、開口部の数の累積頻度との関係を示すヒストグラムである。
【
図6】
図6は、比較例1に係る電磁波シールドフィルムのシールド層の平面写真の二値化画像である。
【
図7】
図7は、比較例1に係る電磁波シールドフィルムのシールド層における開口面積の大きさの階級と、開口部の数の累積頻度との関係を示すヒストグラムである。
【
図8】
図8は、比較例2に係る電磁波シールドフィルムのシールド層の平面写真の二値化画像である。
【
図9】
図9は、比較例2に係る電磁波シールドフィルムのシールド層における開口面積の大きさの階級と、開口部の数の累積頻度との関係を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の電磁波シールドフィルムについて具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0021】
図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、電磁波シールドフィルム10は、絶縁層20と、シールド層30と、接着剤層40とが順に積層された電磁波シールドフィルムである。
【0022】
また、シールド層30には、開口面積が1~5000μm2である複数の開口部50が形成されている。開口部50の開口面積は、50~5000μm2であることが好ましく、50~2000μm2であることがさらに好ましい。
このような開口部50が形成されていると、電磁波シールドフィルム10をプリント配線板に配置する際に、揮発成分が発生したとしても、揮発成分は開口部を通過することができる。そのため、シールド層30と接着剤層40との間に揮発成分が溜まることを防止することができ、層間密着が破壊されることを防ぐことができる。
【0023】
開口部50は、開口面積が1μm2を超え、300μm2以下である第1開口部51と、開口面積が300μm2を超え、5000μm2以下である第2開口部52とを含む。
電磁波シールドフィルムにおいて、電磁波シールド特性はシールド層の面積に依存する。そのため、揮発成分の透過性を向上させるためシールド層の開口部の面積を大きくすると、電磁波シールド特性が低下してしまう。つまり、電磁波シールド特性と揮発成分の透過性とはトレードオフの関係にある。
開口部の大きさを一様に調整した場合、電磁波シールド特性と揮発成分の透過性とを高いレベルで両立することは難しい。
一方、電磁波シールドフィルム10では、シールド層30に開口面積が小さい第1開口部51と開口面積が大きい第2開口部52とが形成されている。
このように開口面積が大きい第2開口部52と開口面積が小さい第1開口部51とを併存させることにより、電磁波シールド特性を維持したまま、揮発成分の透過性を向上させることができる。
【0024】
電磁波シールドフィルム10では、開口部50のうち、第1開口部51が占める数の割合(累積頻度)が30~90%であり、第2開口部52が占める数の割合(累積頻度)が10~70%である。
なお、第1開口部51が占める数の割合(累積頻度)が30~80%であることが好ましく、第2開口部52が占める数の割合(累積頻度)が20~70%であることが好ましい。
このような範囲であると、揮発成分の透過性及び電磁波シールド特性を充分に向上させることができる。
開口部のうち、第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が30%未満であると、第2開口部が占める割合が多くなるので、シールド特定が低下する。
開口部のうち、第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が90%を超えると、第2開口部が占める割合が少なくなるので、揮発成分の透過性が低下する。
【0025】
なお、本明細書において、第1開口部及び第2開口部の判定、第1開口部が占める数の割合(累積頻度)及び第2開口部が占める数の割合(累積頻度)は、以下の方法で測定することができる。
まず、走査電子顕微鏡(SEM)を用いてシールド層の画像を取得する。次に、取得した画像を、画像解析ソフト「GIMP2.10.6」を用いて、シールド層30部分と、開口部50の空隙部分とを白と黒に2値化する。次いで、開口部50の空隙部分のピクセル数から、第1開口部51であるか、第2開口部52であるかの判定を行う。第1開口部が占める数の割合(累積頻度)及び第2開口部が占める数の割合(累積頻度)は、第1開口部51の数及び第2開口部52の数を数えることにより算出する。
【0026】
電磁波シールドフィルム10では、シールド層30の開口率は、3~10%であることが好ましい。
シールド層30の開口率が上記範囲内であると、揮発成分の透過性及び電磁波シールド特性を両立させつつ、これらを向上させることができる。
シールド層の開口率が3%未満であると、揮発成分の透過性が低下しやすくなる。
シールド層の開口率が10%を超えると、電磁波シールド特性が低下しやすくなる。また、シールド層の強度が低下し、耐屈曲性が低下しやすくなる。
【0027】
なお、本明細書において、シールド層の開口率は、以下の方法で測定した値を意味する。
まず、走査電子顕微鏡(SEM)を用いてシールド層の画像を取得する。次に、取得した画像を、画像解析ソフト「GIMP2.10.6」を用いて、シールド層30部分と、開口部50の空隙部分とを白と黒に2値化する。次いで、シールド層30部分のピクセル数と、開口部50の空隙部分のピクセル数から開口率を算出する。
【0028】
電磁波シールドフィルム10では、シールド層30における開口部50の密度は、特に限定されないが、10~1000個/mm2であることが好ましく、20~500個/mm2であることがより好ましく、50~200個/mm2であることがさらに好ましい。
シールド層における開口部の密度が、10個/mm2未満であると、揮発成分の通り道が狭くなるので、層間密着の破壊が生じやすくなる。
シールド層における開口部の密度が、1000個/mm2を超えると、シールド層の強度が低下し、シールド層が破壊されやすくなる。
【0029】
電磁波シールドフィルム10では、シールド層30の厚さは、0.1~20μmであることが好ましく、0.5~10μmであることがより好ましく、1.0~6μmであることがさらに好ましい。
シールド層の厚さが0.1μm未満であると、シールド層が薄すぎるためシールド層の強度が低くなる。そのため、耐屈曲性が低下する。また、電磁波を充分に反射及び吸収しにくくなるので電磁波シールド特性が低下する。
シールド層の厚さが20μmを超えると、電磁波シールドフィルム全体が厚くなり扱いにくくなる。
【0030】
電磁波シールドフィルム10では、シールド層30は金属層からなっていてもよく、導電性接着剤層からなっていても良い。
【0031】
シールド層30が金属層からなる場合、金属層は、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、錫、パラジウム、クロム、チタン及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。また、金属層は、これらの群から選択される少なくとも2種の合金からなっていてもよい。
これらの金属は、電磁波シールドフィルムのシールド層として適している。
【0032】
シールド層30が、導電性接着剤層からなる場合、導電性接着剤層は、導電性粒子と、接着性樹脂組成物とから構成されていることが好ましい。
【0033】
導電性粒子としては、特に限定されないが、金属微粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等であってもよい。
【0034】
接着性樹脂組成物の材料としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等を用いることができる。
接着性樹脂組成物の材料はこれらの1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0035】
次に、電磁波シールドフィルム10における第1開口部51及び第2開口部52の配置について説明する。
図2Aは、本発明の電磁波シールドフィルムのシールド層の一例を模式的に示す平面図である。
図2Bは、本発明の電磁波シールドフィルムのシールド層の別の一例を模式的に示す平面図である。
図2Cは、本発明の電磁波シールドフィルムのシールド層の別の一例を模式的に示す平面図である。
図2Dは、本発明の電磁波シールドフィルムのシールド層の別の一例を模式的に示す平面図である。
【0036】
図2Aに示すように、電磁波シールドフィルム10では、第1開口部51及び第2開口部52の形状及び配列が不規則に形成されていてもよい。
このような第1開口部51及び第2開口部52を形成する方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
まず、エッチング液に対して溶解性の低い難溶解性成分と、難溶解性成分よりもエッチング液に対して溶解性の高い易溶解性成分を含む金属箔を準備する。この金属箔をエッチング液に浸し易溶解性成分を溶解することにより易溶解性成分があった部分に開口部を形成することができる。
易溶解性成分として、第1開口部51が形成されるような大きさの成分と、第2開口部52が形成されるような大きさの成分を金属箔に含ませるようにし、エッチング液の組成、エッチング条件等を調整することにより第1開口部51及び第2開口部52が占める数の割合(累積頻度)を制御することができる。
なお、
図2Aに示すような第1開口部51及び第2開口部52を有するシールド層では、開口部が形成されている部分と、シールド層が存在している部分に斑が生じる。そのため、シールド層が広く存在する部分が生じる。このような部分を有する電磁波シールドフィルム10は電磁波シールド特性が向上する。
【0037】
また、
図2Bに示すように、電磁波シールドフィルム10では、第1開口部51が規則的に一定の周期で形成されており、第2開口部52の形状及び配列が不規則に形成されていてもよい。
このような第1開口部51及び第2開口部52を形成する方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
まず、エッチング液に対して溶解性の低い難溶解性成分と、難溶解性成分よりもエッチング液に対して溶解性の高い易溶解性成分を含む金属箔を準備する。この金属箔をエッチング液に浸し易溶解性成分を溶解することにより易溶解性成分があった部分に開口部を形成することができる。
この際、易溶解性成分として、第2開口部が形成されるような成分を金属箔に含ませる。これにより第2開口部52の形状及び配列が不規則に形成されたシールド層を形成することができる。
その後、シールド層に、レーザー等で規則的に一定の周期で第1開口部51を形成することにより
図2Bに示すような、第1開口部51が規則的に一定の周期で形成されており、第2開口部52の形状及び配列が不規則に形成されているようなシールド層30を形成することができる。
【0038】
また、
図2Cに示すように、電磁波シールドフィルム10では、第1開口部51の形状及び配列が不規則に形成されており、第2開口部52が規則的に一定の周期で形成されていてもよい。
このような第1開口部51及び第2開口部52を形成する方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
まず、エッチング液に対して溶解性の低い難溶解性成分と、難溶解性成分よりもエッチング液に対して溶解性の高い易溶解性成分を含む金属箔を準備する。この金属箔をエッチング液に浸し易溶解性成分を溶解することにより易溶解性成分があった部分に開口部を形成することができる。
この際、易溶解性成分として、第1開口部が形成されるような成分を金属箔に含ませる。これにより第1開口部51の形状及び配列が不規則に形成されたシールド層を形成することができる。
その後、シールド層に、レーザー等で規則的に一定の周期で第2開口部52を形成することにより
図2Cに示すような、第1開口部51の形状及び配列が不規則に形成されており、第2開口部52が規則的に一定の周期で形成されているようなシールド層30を形成することができる。
【0039】
また、
図2Dに示すように、電磁波シールドフィルム10では、第1開口部51及び第2開口部52が規則的に一定の周期で形成されていてもよい。
このような第1開口部51及び第2開口部52は、シールド層となる金属箔に上記のような開口部が形成されるようにレーザー等により開口部を形成してもよく、シールド層となる金属箔に上記のような開口部が形成されるようにレジストを配置した後にエッチングにより形成してもよく、上記のような開口部が形成されるように金属めっきを行うことにより形成してもよく、上記のような開口部が形成されるように導電性ペーストを印刷して形成しても良い。
【0040】
電磁波シールドフィルム10では、絶縁層20は充分な絶縁性を有し、シールド層30及び接着剤層40を保護できれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、活性エネルギー線硬化性組成物等から構成されていることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂組成物としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等が挙げられる。
【0041】
上記熱硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等が挙げられる。
【0042】
上記活性エネルギー線硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等が挙げられる。
【0043】
絶縁層20は1種単独の材料から構成されていてもよく、2種以上の材料から構成されていてもよい。
【0044】
絶縁層20には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0045】
絶縁層20の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、1~15μmであることが好ましく、3~10μmであることがより好ましい。
絶縁層20の厚さが1μm未満であると、薄すぎるのでシールド層30及び接着剤層40を充分に保護しにくくなる。
絶縁層20の厚さが15μmを超えると、厚すぎるので電磁波シールドフィルム10が折り曲りにくくなり、また、絶縁層20自身が破損しやすくなる。そのため、耐屈曲が要求される部材へ適用しにくくなる。
【0046】
電磁波シールドフィルム10では、接着剤層40は、導電性を有していてもよく、導電性を有していなくてもよいが、導電性を有していることが好ましい。
【0047】
まず、接着剤層40が導電性を有する場合について説明する。
接着剤層40が導電性を有する場合、接着剤層40は、導電性粒子と、接着性樹脂組成物とから構成されていることが好ましい。
【0048】
導電性粒子としては、特に限定されないが、金属微粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等であってもよい。
【0049】
導電性粒子が金属微粒子である場合、金属微粒子としては、特に限定されないが、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、アルミニウム粉、銅粉に銀めっきを施した銀コート銅粉、高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した微粒子等であってもよい。
これらの中では、経済性の観点から、安価に入手できる銅粉又は銀コート銅粉であることが好ましい。
【0050】
導電性粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.5~15.0μmであることが好ましい。
導電性粒子の平均粒子径が0.5μm以上であると、接着剤層の導電性が良好となる。
導電性粒子の平均粒子径が15.0μm以下であると、接着剤層を薄くすることができる。
【0051】
導電性粒子の形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、リン片状、デンドライト状、棒状、繊維状等から適宜選択することができる。
【0052】
接着性樹脂組成物の材料としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等を用いることができる。
接着性樹脂組成物の材料はこれらの1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0053】
接着剤層40における導電性粒子の配合量は、特に限定されないが、15~80重量%であることが好ましく、15~60重量%であることがより好ましい。
上記範囲であると、接着剤層40のプリント配線板への接着性が向上する。
【0054】
接着剤層40の厚さは、特に限定されず、必要に応じ適宜設定することができるが、0.5~20.0μmであることが好ましい。
接着剤層の厚さが0.5μm未満であると、良好な導電性が得られにくくなる。
接着剤層の厚さが20.0μmを超えると、電磁波シールドフィルム全体の厚さが厚くなり扱いにくくなる。
【0055】
また、接着剤層40は、異方導電性を有していてもよく、等方導電性を有していてもよいが、異方導電性を有することが好ましい。
接着剤層40が異方導電性を有すると、等方導電性を有する場合に比べて、プリント配線板の信号回路で伝送される高周波信号の伝送特性が向上する。
【0056】
接着剤層40における導電性粒子の割合を2~40重量%とすることにより、接着剤層40に異方導電性を付与することができる。
また、接着剤層40における導電性粒子の割合を、40重量%を超え、80重量%以下とすることにより、接着剤層40に等方導電性を付与することができる。
【0057】
次に、接着剤層40が導電性を有さない場合について説明する。
接着剤層40が導電性を有さない場合、接着剤層40は、接着性樹脂組成物から構成されていることが好ましい。
接着性樹脂組成物の好ましい材料は、上述した接着剤層40が導電性を有する場合における好ましい接着性樹脂組成物の材料と同じである。
【0058】
接着剤層40が導電性を有する場合、及び、導電性を有さない場合のいずれの場合であっても、必要に応じて、接着剤層40は、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤等を含んでいてもよい。
【0059】
電磁波シールドフィルム10では、JISK7129に準じた水蒸気透過度が、温度80℃、湿度95%RH、差圧1atmで、40g/m2・24h以上であることが好ましく、200g/m2・24h以上であることがより好ましい。
電磁波シールドフィルム10がこのようなパラメータを有すると揮発成分がシールド層を通過しやすくなる。その結果、シールド層と接着剤層との間に揮発成分が溜まりにくくなる。そのため、揮発成分によりシールド層と接着剤層との層間密着が破壊されにくくなる。
【0060】
電磁波シールドフィルム10では、絶縁層20とシールド層30との間にアンカーコート層が形成されていてもよい。
アンカーコート層の材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0061】
また、電磁波シールドフィルム10は、絶縁層20側に支持体フィルムを備えていてもよく、接着剤層40側に剥離性フィルムを有していてもよい。
電磁波シールドフィルム10が、支持体フィルムや剥離性フィルムを有していると、電磁波シールドフィルム10の輸送や、電磁波シールドフィルム10を用いたシールドプリント配線板等を製造する際の作業において、電磁波シールドフィルム10が扱いやすくなる。
なお、このような支持体フィルムや剥離性フィルムは、プリント配線板等に電磁波シールドフィルム10を配置する際に剥がされることになる。
【0062】
本発明の電磁波シールドフィルムは、プリント配線板に配置され、シールドプリント配線板の一部となる。このようなシールドプリント配線板について説明する。
【0063】
図3は、本発明の電磁波シールドフィルムを備えるプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
図3に示すシールドプリント配線板1は、プリント回路62が形成されたベース部材61と、プリント回路62を覆うようにベース部材61上に設けられた絶縁フィルム63を有するプリント配線板60と、プリント配線板60上に設けられた電磁波シールドフィルム10を有する。
なお、シールドプリント配線板1では、電磁波シールドフィルム10の接着剤層40が、プリント配線板の絶縁フィルム63に接している。
【0064】
シールドプリント配線板1は、電磁波シールドフィルム10を備える。
そのため、電磁波シールドフィルム10のシールド層30と接着剤層40との層間剥離が生じにくく、電磁波シールド特性が良好となる。
【0065】
なお、電磁波シールドフィルム10の接着剤層40が導電性を有し、プリント回路62にはグランド回路が含まれている場合、絶縁フィルム63にグランド回路を露出するように孔を設け、接着剤層40と、グランド回路とを接触させてもよい。
このような構成とすることにより、シールド層30とグランド回路とを電気的に接続することができるので、電磁波シールド特性が向上する。
【0066】
また、ベース部材61と絶縁フィルム63は、いずれもエンジニアリングプラスチックからなることが好ましい。例えば、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂が挙げられる。
【0067】
プリント回路62は、銅等の通常の回路用材料を用いることができる。
【0068】
ベース部材61とプリント回路62とは、接着剤によって接着しても良いし、接着剤を用いない、いわゆる、無接着剤型銅張積層板と同様に接合しても良い。また、絶縁フィルム63は、複数枚の可撓性絶縁フィルムを接着剤により貼り合わせたものであっても良く、感光性絶縁樹脂の塗工、乾燥、露光、現像、熱処理などの一連の手法によって形成しても良い。
【実施例0069】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
厚さが5μmのエポキシ樹脂からなる絶縁層を準備した。
次に、絶縁層に、厚みが3μmであり、酸化銅(I)粒子を含む圧延銅箔を配置した。
その後、圧延銅箔に対しエッチング処理を行って厚み1μmにした。これにより銅箔中の酸化銅(I)を溶解し開口部を設け、これをシールド層とした。
【0071】
シールド層をSEMにより撮影し、画像解析ソフト「GIMP2.10.6」を用いて、シールド層部分と、開口部の空隙部分とを白と黒に2値化した。
SEM画像の2値化後の画像を
図4に示す。
図4は、実施例1に係る電磁波シールドフィルムのシールド層の平面写真の二値化画像である。
また、その画像を解析し、第1開口部が占める数の割合(累積頻度)、第2開口部が占める数の割合(累積頻度)及びシールド層の開口率を算出した。結果を表1に示す。
また、実施例1に係るシールド層に形成された開口部の開口面積の大きさの階級と、開口部の数の累積頻度との関係を
図5に示す。
図5は、実施例1に係る電磁波シールドフィルムのシールド層における開口面積の大きさの階級と、開口部の数の累積頻度との関係を示すヒストグラムである。
【0072】
その後、シールド層に、厚さが15μmとなるように、リン含有エポキシ樹脂に、AgコートCu粉末を20重量%添加した導電性を有する接着剤層をコーティングした。コーティング方法としては、リップコート方式を用いた。
以上の工程を経て実施例1に係る電磁波シールドフィルムを作製した。
【0073】
(比較例1)
厚さ1μmの圧延銅箔(JX金属株式会社製)に対し、レーザー照射を行い、複数の開口部を形成し、シールド層とした。
【0074】
シールド層をSEMにより撮影し、画像解析ソフト「GIMP2.10.6」を用いて、シールド層部分と、開口部の空隙部分とを白と黒に2値化した。
SEM画像の2値化後の画像を
図6に示す。
図6は、比較例1に係る電磁波シールドフィルムのシールド層の平面写真の二値化画像である。
また、その画像を解析し、第1開口部が占める数の割合(累積頻度)、第2開口部が占める数の割合(累積頻度)及びシールド層の開口率を算出した。結果を表1に示す。
また、比較例1に係るシールド層に形成された開口部の開口面積の大きさの階級と、開口部の数の累積頻度との関係を
図7に示す。
図7は、比較例1に係る電磁波シールドフィルムのシールド層における開口面積の大きさの階級と、開口部の数の累積頻度との関係を示すヒストグラムである。
【0075】
次に、シールド層を厚さが5μmのエポキシ樹脂からなる絶縁層の上に配置した。
その後、シールド層の上に、厚さが15μmとなるように、リン含有エポキシ樹脂に、AgコートCu粉末を20重量%添加した導電性を有する接着剤層をコーティングした。コーティング方法としては、リップコート方式を用いた。
以上の工程を経て比較例1に係る電磁波シールドフィルムを作製した。
【0076】
(比較例2)
厚さが5μmのエポキシ樹脂からなる絶縁層を準備した。
絶縁層の一方の主面に、銀ペーストを印刷して50nmの銀層を形成した。この際、銀層に、直径100μmの円形の露出部が、規則的に1000μm毎に形成されるようにした。
次に、銀ペースト印刷後の絶縁層を無電解銅めっき液(奥野製薬工業株式会社製「ARGカッパー」、pH12.5)中に55℃で20分間浸漬し、銀層の上に無電解銅めっき膜(厚さ0.5μm)を形成した。
次いで、上記で得られた無電解銅めっき膜の表面をカソードに設置し、含リン銅をアノードに設置し、硫酸銅を含む電気めっき液を用いて電流密度2.5A/dm2で30分間電気めっきを行うことによって、銀層の上に、合計の厚さが1μmの銅めっき層を積層しシールド層とした。電気めっき液としては、硫酸銅70g/リットル、硫酸200g/リットル、塩素イオン50mg/リットル、トップルチナSF(奥野製薬工業株式会社製の光沢剤)5g/リットルの溶液を用いた。
【0077】
シールド層をSEMにより撮影し、画像解析ソフト「GIMP2.10.6」を用いて、シールド層部分と、開口部の空隙部分とを白と黒に2値化した。
SEM画像の2値化後の画像を
図8に示す。
図8は、比較例2に係る電磁波シールドフィルムのシールド層の平面写真の二値化画像である。
また、その画像を解析し、第1開口部が占める数の割合(累積頻度)、第2開口部が占める数の割合(累積頻度)及びシールド層の開口率を算出した。結果を表1に示す。
また、比較例2に係るシールド層に形成された開口部の開口面積の大きさの階級と、開口部の数の累積頻度との関係を
図9に示す。
図9は、比較例2に係る電磁波シールドフィルムのシールド層における開口面積の大きさの階級と、開口部の数の累積頻度との関係を示すヒストグラムである。
【0078】
その後、シールド層に、厚さが15μmとなるように、リン含有エポキシ樹脂に、AgコートCu粉末を20重量%添加した導電性を有する接着剤層をコーティングした。コーティング方法としては、リップコート方式を用いた。
以上の工程を経て比較例2に係る電磁波シールドフィルムを作製した。
【0079】
(層間剥離の有無の評価)
実施例1の電磁波シールドフィルムを熱プレスによりプリント配線板上に配置した。次いで、このプリント配線板を、23℃、63%RHのクリーンルーム内に7日間放置した後、リフロー時の温度条件に曝して層間剥離の有無を評価した。なお、リフロー時の温度条件としては、鉛フリーハンダを想定し、最高265℃の温度プロファイルを設定した。また、層間剥離の有無は、シールドフィルムを貼り付けたプリント配線板をIRリフローに5回通過させ、膨れの有無を目視により観察して評価した。
その結果、実施例1に係る電磁波シールドフィルムには、膨れが全く生じなかった。
【0080】
【0081】
(耐屈曲性の評価)
実施例1及び比較例1~2に係る電磁波シールドフィルムを以下の方法で評価した。
各電磁波シールドフィルムを熱プレスにより50μm厚みのポリイミドフィルムの両面に貼り付け、縦×横=130mm×15mmの大きさにカットして試験片とし、各試験片の耐屈曲性を、MIT耐折疲労試験機(株式会社安田精機製作所製、No.307 MIT形耐折度試験機)を用い、JIS P8115:2001に規定される方法に基づき耐屈曲性を測定した。
試験条件は、以下の通りである。
折曲げクランプ先端R:0.38mm
折曲げ角度:±135°
折曲げ速度:175cpm
荷重:500gf
検出方法:内蔵電通装置にて、シールドフィルムの断線を感知
【0082】
また、耐屈曲性の評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
〇:折り曲げ回数が2500回でも断線が発生しなかった。
×:折り曲げ回数が2500回未満で断線が発生した。
【0083】
(電磁波シールド特性の評価)
実施例1及び比較例1~2に係る電磁波シールドフィルムの電磁波シールド特性について、同軸管法により測定した。
【0084】
同軸管法は、ASTM D4935に準拠し、温度25℃、相対湿度30~50%の条件で、キーコム社の同軸管タイプのシールド効果測定システムを用いて、1~10GHzの電磁波が、実施例1及び比較例1~2に係る電磁波シールドフィルムによって減衰する減衰量を測定した。結果を表1に示す。
なお、表1中の電磁波シールド特性の評価における割合(%)は、1GHzでの電界の減衰量に対する、10GHzでの電界の減衰量の割合を意味する。
【0085】
表1に示すように、実施例1に係る電磁波シールドフィルムは、高周波領域における電磁波シールド特性が、低周波領域における電磁波シールド特性と比べ、低下しないことが判明した。さらに、耐屈曲性が充分に高いことが判明した。
【0086】
一方、比較例1及び2に係る電磁波シールドフィルムでは、高周波領域における電磁波シールド特性が、低周波領域における電磁波シールド特性と比べ低下することが判明した。さらに、耐屈曲性が不充分であることが判明した。