(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024664
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20240215BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20240215BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20240215BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G02B7/02 E
G02B7/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214907
(22)【出願日】2023-12-20
(62)【分割の表示】P 2023015247の分割
【原出願日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2022094554
(32)【優先日】2022-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝本 征宏
(72)【発明者】
【氏名】荒内 正彦
(57)【要約】
【課題】可動部の径方向移動を、可動部に付与される衝撃を緩和しつつ規制すること。
【解決手段】光学素子駆動装置は、光学素子を保持可能な可動部及び前記可動部を支持する固定部に分離して配置され、前記可動部を前記固定部に対して移動させるよう協働するコイル及びマグネットを有し、前記固定部は、前記可動部に対して光軸方向結像側に位置する底部と、径方向外側から前記可動部に対向する対向面を形成するよう前記底部から前記光軸方向受光側に延在する柱部と、を有し、前記柱部は、前記対向面を含み前記可動部の径方向移動規制が可能な内側柱部と、溝により前記内側柱部から分割された外側柱部と、を有する。
【選択図】
図11A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を保持可能な可動部及び前記可動部を支持する固定部に分離して配置され、前記可動部を前記固定部に対して移動させるよう協働するコイル及びマグネットを有し、
前記固定部は、前記可動部に対して光軸方向結像側に位置する底部と、径方向外側から前記可動部に対向する対向面を形成するよう前記底部から前記光軸方向受光側に延在する柱部と、を有し、
前記柱部は、前記対向面を含み前記可動部の径方向移動規制が可能な内側柱部と、溝により前記内側柱部から分割された外側柱部と、を有する、
光学素子駆動装置。
【請求項2】
前記外側柱部は、前記光学素子駆動装置のカバーの取付が可能である、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項3】
径方向において、前記内側柱部の寸法は前記外側柱部の寸法よりも小さい、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項4】
前記溝は、平面視で前記対向面と平行に延在する、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光学素子駆動装置と、
前記光学素子と、
前記光学素子により結像される被写体像を撮像する撮像部と、を備える、
カメラモジュール。
【請求項6】
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
請求項4に記載のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、を備える、
カメラ搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スマートフォン等の携帯端末には、小型のカメラモジュールが搭載されている。このようなカメラモジュールには、光学素子を駆動する光学素子駆動装置が使用されている。
【0003】
光学素子駆動装置は、オートフォーカス機能(以下「AF機能」と称する、AF:Auto Focus)及び振れ補正機能(以下「OIS機能」と称する、OIS:Optical Image Stabilization)を有している。光学素子駆動装置は、AF機能により、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行い、OIS機能により、撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して画像の乱れを軽減している。
【0004】
例えば特許文献1には、AF機能とOIS機能とを有する光学素子駆動装置が示されている。特許文献1に示される光学素子駆動装置は、レンズを保持可能なレンズホルダーと、コイル及び磁石を有し、レンズホルダーを光軸の方向(光軸方向)に移動させる第1駆動部と、レンズホルダーを光軸と交差する方向(光軸直交方向)に移動させる第2駆動部と、を有している。
【0005】
特許文献1に示される光学素子駆動装置には、対向する磁石の磁束の変化を検出することでレンズホルダーの位置を検出するホール素子が、設けられている。このホール素子は、レンズホルダーの外周部において、コイルと並ぶ位置に、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)に実装された状態で設置されている。
【0006】
また、レンズホルダー位置検出用のホール素子が配置される光学素子駆動装置の一例として、例えば特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献2では、FPCへのホール素子実装によるサイズ拡大、FPCの外形精度及び実装精度によるホール素子取付精度への影響、FPCへのホール素子実装による取扱困難性等を課題として、ホール素子を基板に実装せず直接的に固定部の凹部に嵌入する構成が提案されている。固定部内には、配線部材がインサート成型されており、この配線部材を介して、ホール素子は、撮像素子を保持する回路基板と電気的に接続されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-180836号公報
【特許文献2】特開2015-175879号公報
【特許文献3】特開2019-66568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、可動部の径方向移動を、可動部に付与される衝撃を緩和しつつ規制することができる光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光学素子駆動装置の一態様は、
光学素子を保持可能な可動部及び前記可動部を支持する固定部に分離して配置され、前記可動部を前記固定部に対して移動させるよう協働するコイル及びマグネットを有し、
前記固定部は、前記可動部に対して光軸方向結像側に位置する底部と、径方向外側から前記可動部に対向する対向面を形成するよう前記底部から前記光軸方向受光側に延在する柱部と、を有し、
前記柱部は、前記対向面を含み前記可動部の径方向移動規制が可能な内側柱部と、溝により前記内側柱部から分割された外側柱部と、を有する。
【0010】
本発明に係るカメラモジュールの一態様は、
上記の光学素子駆動装置と、
前記光学素子と、
前記光学素子により結像される被写体像を撮像する撮像部と、を備える。
【0011】
本発明に係るカメラ搭載装置の一態様は、
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
上記のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可動部の径方向移動を、可動部に付与される衝撃を緩和しつつ規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールを搭載するカメラ搭載装置の一例の正面図であり、
図1Bは、同カメラ搭載装置の一例の背面図である。
【
図2】
図2Aは、本実施の形態に係るカメラモジュールを搭載するカメラ搭載装置の他の例の正面図であり、
図2Bは、同カメラ搭載装置の他の例の斜視図である。
【
図3】本実施の形態に係るカメラモジュールの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図4】本実施の形態に係るカメラモジュールの光学素子駆動装置の外観斜視図である。
【
図5】本実施の形態に係るカメラモジュールにおいてカバーを光学素子駆動装置から取り外した状態を上方から見た分解斜視図である。
【
図6】
図5に示す状態を下方から見た分解斜視図である。
【
図7】
図5に示す光学素子駆動装置においてOIS可動部をOIS固定部から取り外した状態を上方から見た分解斜視図である。
【
図8】
図7に示す状態を下方から見た分解斜視図である。
【
図9】
図7に示すOIS固定部における配線の説明に供する図である。
【
図10】
図7に示すOIS固定部においてホール素子チップアセンブリ及びOISコイルをベース部材から取り外した状態を上方から見た分解斜視図である。
【
図11A】
図5に示す光学素子駆動装置におけるベース部材の四隅柱部の構造の説明に供する側面図である。
【
図11B】
図5に示す光学素子駆動装置におけるベース部材の四隅柱部の構造の説明に供する平面図である。
【
図12】
図5に示す光学素子駆動装置におけるAF駆動部の駆動原理の説明に供する図である。
【
図13】
図5に示す光学素子駆動装置におけるOIS駆動部の駆動原理の説明に供する図である。
【
図14】
図14Aは、
図10に示すベース部材にホール素子チップアセンブリを取り付けた状態を示す平面図であり、
図14Bは、
図14Aに示す状態からさらにOISコイルを取り付けた状態を示す平面図である。
【
図15】
図14Bに示す状態からさらに
図7に示す保護部材を取り付けた状態を示すXV-XV線矢視断面図である。
【
図16】
図5に示す光学素子駆動装置における保護部材の変位規制機構の変形例を示す図である。
【
図17】
図5に示す光学素子駆動装置における保護部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
[カメラ搭載装置の構成について]
まず、本実施の形態に係るカメラモジュールが適用されるカメラ搭載装置について説明する。
【0016】
図1A、
図1Bは、本実施の形態に係るカメラモジュールAを搭載するスマートフォンM(カメラ搭載装置の一例)を示す図である。
図1AはスマートフォンMの正面図であり、
図1BはスマートフォンMの背面図である。スマートフォンMは、一つ以上の背面カメラOCを有し、背面カメラOCに、カメラモジュールAが適用されている。カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を備え、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うと共に、撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して像ぶれのない画像を撮影することができる。
【0017】
図2A、
図2Bは、車載用カメラモジュールVC(Vehicle Camera)を搭載する自動車V(カメラ搭載装置の他の例)を示す図である。
図2Aは自動車Vの正面図であり、
図2Bは自動車Vの後方斜視図である。
図2A及び
図2Bに示すように、車載用カメラモジュールVCは、例えば、前方に向けてフロントガラスに取り付けられたり、後方に向けてリアゲートに取り付けられたりする。この車載用カメラモジュールVCは、バックモニター用、ドライブレコーダー用、衝突回避制御用、自動運転制御用等として使用される。自動車Vの車載用カメラモジュールVCに、カメラモジュールAが適用されている。
【0018】
本実施の形態は、カメラモジュールAをスマートフォンMに適用する場合を例に挙げて説明するが、カメラモジュールAは、カメラモジュールAを有すると共に、カメラモジュールAで得られた画像情報を処理する画像処理部を有する、種々のカメラ搭載装置に適用できる。例えば、カメラ搭載装置は、種々の情報機器及び輸送機器を含む。情報機器は、例えば、カメラ付き携帯電話機、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、webカメラ、カメラ付き車載装置(例えば、バックモニター装置、ドライブレコーダー装置)やドローン等を含む。また、輸送機器は、例えば、自動車やドローン等を含む。
【0019】
[カメラモジュールの構成について]
続いて、カメラモジュールAの概略構成について説明する。なお、本実施の形態の説明には、直交座標系(X,Y,Z)を使用する。なお、本実施の形態では、XY平面におけるX方向及びY方向の中間方向を、U方向及びV方向として説明する(
図12、13参照)。例えば、U方向及びY方向は、本実施の形態では正方形であるカメラモジュールAの平面視形状における対角方向である。なお、本実施の形態の説明で用いる形状に関する表現は、簡略的な概形説明のための便宜的な表現であって、幾何学的に正確な図形の定義が必ずしも当てはまるものでないことは、言うまでもない。
【0020】
図3は、カメラモジュールAの構成を模式的に示す斜視図である。カメラモジュールAは、例えばスマートフォンMで撮影が行われる場合、X方向が上下方向(又は左右方向)、Y方向が左右方向(又は上下方向)、Z方向が前後方向となるように搭載される。すなわち、Z方向が光路方向であり、
図3において、図中上側(+Z側)が光路方向の受光側(マクロ位置側とも称される)、下側(-Z側)が光路方向の結像側(無限遠位置側とも称される)である。Z方向に直交する方向は光路直交方向であり、X方向及びY方向は、光路直交方向の例である。
【0021】
ここで、後述するカバー3の開口部301、後述するAF可動部11においてレンズ部2を収容するレンズ収容開口部110a1、或いは、後述するOIS固定部20において撮像素子502に対する中央開口部250によって形成される光の通り道が光路である(
図4参照)。そして、この光路の延びる方向(各開口部の貫通方向)が光路方向である。光路方向については、光学素子の種類等に基づき、光軸方向や焦点方向(焦点を調整する方向)等、別の呼称を用いてもよい。また、光路直交方向については、光軸直交方向や振れ補正方向等と呼んでもよく、XY平面については、光軸直交面や振れ補正面等と呼んでもよい。
【0022】
また、以下の説明において、特に断らない限り、「径方向」とは、光路又は光軸を中心として放射状又は遠心状に延びる方向を意味し、「周方向」とは、光路周り又は光軸周りに延びる方向を意味する。また、特に断らない限り、「外側」とは光路又は光軸を中心とする径方向における外側を意味し、「内側」とは光路又は光軸を中心とする径方向における内側を意味する。
【0023】
また、以下の説明において、カメラモジュールAの平面視形状(本実施の形態では正方形)の四隅を互いに区別して特定する場合がある。その場合は便宜上、X方向+側且つY方向+側の隅部を第一隅部といい、X方向-側且つY方向+側の隅部を第二隅部といい、X方向-側且つY方向-側の隅部を第三隅部といい、X方向+側且つY方向-側の隅部を第四隅部という。
【0024】
図3に示すように、カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を実現する光学素子駆動装置1と、円筒形状のレンズバレルにレンズが収容されてなるレンズ部2(光学素子の一例)と、レンズ部2により結像される被写体像を撮像する撮像部5と、を備える。
【0025】
光学素子駆動装置1は、外側をカバー3で覆われている。カバー3は、Z方向から見た平面視で矩形状の有蓋四角筒体である。本実施の形態では、カバー3は、平面視で正方形状を有している。カバー3は、上面(Z方向+側の面)に略円形の開口部301を有する。レンズ部2は、カバー3の開口部301から外部に臨む。カバー3は、光学素子駆動装置1のOIS固定部20のベース部材25に、例えば接着により固定される。カバー3は、例えば磁性体からなり、光学素子駆動装置1の外部からの電磁波を遮断したり、光学素子駆動装置1の内部と外部との磁気的な相互作用を防いだりする、シールド部材として機能する。
【0026】
撮像部5は、光学素子駆動装置1の結像側(Z方向の-側)に配置される。撮像部5は、例えば、イメージセンサー基板501、イメージセンサー基板501に実装される撮像素子502及び制御部503を有する。撮像素子502は、例えば、CCD(charge-coupled device)型イメージセンサー、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサー等により構成され、レンズ部2により結像される被写体像を撮像する。光学素子駆動装置1は、イメージセンサー基板501に実装されてイメージセンサー基板501と電気的に接続される。
【0027】
制御部503は、例えば、制御IC(Integrated Circuit)で構成され、光学素子駆動装置1の駆動制御を行う。制御部503は、イメージセンサー基板501に設けられてもよいし、カメラモジュールAが搭載されるカメラ搭載機器(本実施の形態では、スマートフォンM)に設けられてもよい。
【0028】
なお、本実施の形態では、位置が固定されたイメージセンサー基板501に対し、光学素子駆動装置1においてOIS可動部レンズ部2を光軸方向及び光軸直交方向に移動可能とする構成が採られているが、ピント合わせ或いは振れ補正を目的として光軸方向及び光軸直交方向のうちの少なくとも一方においてレンズ部2を固定(移動不能)とし撮像素子502を可動(移動可能)としてもよい。この場合、撮像素子502は、AF可動部又はOIS可動部に保持される光学素子の一例となる。
【0029】
[光学素子駆動装置の構成について]
続いて、光学素子駆動装置1の構成について、
図4~11を用いて説明する。なお、光学素子駆動装置1の構成の説明においては、便宜上、Z方向+側を「上」とし、Z方向-側を「下」とする。
【0030】
図4は、光学素子駆動装置1の外観斜視図である。
図5、6は、光学素子駆動装置1からカバー3を取り外した状態を上方及び下方から見た分解斜視図である。
図7、8は、光学素子駆動装置1においてOIS可動部10をOIS固定部20から取り外した状態を上方及び下方から見た分解斜視図である。
図9は、OIS固定部20における配線の説明に供する図である。
図10は、OIS固定部20においてホール素子チップアセンブリ231A、231D及びOISコイル22A~22Dをベース部材25から取り外した状態を上方から見た分解斜視図である。
図11A、11Bは、光学素子駆動装置1におけるベース部材25の四隅柱部259の構造の説明に供する側面図及び平面図である。
【0031】
光学素子駆動装置1は、OIS可動部10、OIS固定部20、及びOIS支持部30を有する。
【0032】
OIS可動部10は、OIS駆動部の一例であるOIS用ボイスコイルモーターを構成するOISマグネット部を有し、振れ補正時に光軸直交面内で揺動する部分である。OIS固定部20は、OISコイル部を有する部分である。すなわち、光学素子駆動装置1のOIS駆動部には、ムービングマグネット方式が採用されている。OIS可動部10は、AF駆動部を含む「AFユニット」でもある。
【0033】
OIS可動部10は、OIS固定部20上に、OIS固定部20からZ方向+側(光軸方向受光側又は上側)に離間して配置され、OIS支持部30によってOIS固定部20と連結される。
【0034】
[OIS支持部について]
OIS支持部30は、Z方向に沿って延在する複数本のサスペンションワイヤで構成される(以下、「OIS支持部30」に代えて「サスペンションワイヤ30」という)。各サスペンションワイヤ30において、一端(下端)は、OIS固定部20に固定され、他端(上端)はOIS可動部10(具体的には、上側弾性支持部13)に固定される。OIS可動部10は、サスペンションワイヤ30によって、光軸直交面内で揺動可能に支持される。
【0035】
本実施の形態では、サスペンションワイヤ30は、四隅の夫々に一対ずつ配置される。このような配置では、四隅の夫々に一本ずつ配置する場合に比べて、一本当たりのばね定数をより低くしても(換言すれば、可撓性をより高くしても)、同じ重量のOIS可動部を支持することができる。これにより、安定的な支持性能と振れ補正での揺動性能との両立を図ることができる。また、個々のサスペンションワイヤ30に応力が集中し難くなるため、耐久性の向上も図ることができる。
【0036】
四隅の夫々に配置されるサスペンションワイヤ30は、全て又は選択的にAFコイル部111への給電経路として使用される。なお、サスペンションワイヤ30の本数は、8本に限定されず、OIS可動部10を揺動可能に支持する性能が維持される限り、8本より少なくてもよいし、8本より多くてもよい。また、OIS支持部の構成は、サスペンションワイヤのような線状部材には限定されず、例えばエラストマー等の樹脂材料を母材とする枠体によってOIS可動部10を揺動可能に支持する構成であってもよい。また、本実施の形態では、サスペンションワイヤ30は、給電や信号伝送の目的のため金属材料で形成された部材であるが、給電や信号伝送のための手段が別に確保されるのであれば、必ずしもサスペンションワイヤ30を金属材料で形成する必要はない。
【0037】
[OIS可動部について]
OIS可動部10(AFユニットともいう)は、AF可動部11、AF固定部12、及びAF支持部(上側弾性支持部13及び下側弾性支持部14)を有する。
【0038】
[AF可動部について]
AF可動部11は、AF固定部12に対して径方向における内側に離間して配置され、上側弾性支持部13及び下側弾性支持部14によってAF固定部12と連結される。
【0039】
AF可動部11は、AF駆動部の一例であるAF用ボイスコイルモーターを構成するコイル部を有し、ピント合わせ時にAF固定部12に対してZ方向(光軸方向)に移動する部分である。AF固定部12は、AF用ボイスコイルモーターを構成するマグネット部を有する部分である。すなわち、光学素子駆動装置1のAF駆動部には、ムービングコイル方式が採用されている。
【0040】
AF可動部11は、レンズホルダー110及びAFコイル部111を有する。
【0041】
レンズホルダー110は、筒状のレンズ収容部110aを有する。レンズ収容部110aの開口部(レンズ収容開口部)110a1の内周面には、レンズ部2が例えば接着により固定される。なお、レンズホルダー110へのレンズ部2の固定方法は接着に限定されず、他の方法であってもよい。
【0042】
レンズホルダー110は、例えば、ポリアリレート(PAR)又はPARを含む複数の樹脂材料を混合したPARアロイ(例えば、PAR/PC)からなる成形材料で形成される。これにより、従来の成形材料、例えば、液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)よりもウェルド強度が高まるので、レンズホルダー110を薄肉化しても靭性及び耐衝撃性を確保できる。したがって、光学素子駆動装置1の外形サイズを小さくでき、小型化及び軽量化を図れる。
【0043】
レンズホルダー110は、レンズ収容部110aの外周面の上部及び下部の夫々から径方向外側に突出する上側フランジ及び下側フランジ(図示略)を有し、外周面における上側フランジと下側フランジとの間は、全周にわたり連続した溝となっている。すなわち、レンズホルダー110は、ボビン構造を有する。レンズホルダー110の外周面における溝には、AFコイル部111が配置される。
【0044】
AFコイル部111は、ピント合わせ時に通電されるコイルである。AFコイル部111の両端は、レンズホルダー110に設けられた絡げ部(図示略)に絡げられる。
【0045】
AF可動部11の構成の細部については、例えば特許文献3等に記載された公知の技術を適宜採用可能であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0046】
[AF固定部について]
AF固定部12は、AF支持部によりAF可動部11を光軸方向に移動可能に支持する。AF固定部12は、マグネットホルダ12a及びマグネット部125を有する。
【0047】
マグネットホルダ12aは、Z方向からの平面視で正方形の四角筒形状であり、内周面において四隅に対応する部分に、マグネット部125を配置するマグネット配置部を有する。マグネットホルダ12a及びマグネット配置部に装着されたマグネット部125により画定される内側の空洞部は、AF可動部11を収容するレンズホルダー収容開口部を構成する。
【0048】
マグネットホルダ12aの外周面における四隅の夫々には、径方向内側に凹んだ溝が形成されており、各溝にサスペンションワイヤ30が配置される。この溝には、ダンパ材(例えばシリコーンゲル)を配置してよく、ダンパ材の配置により、不要共振(高次の共振モード)の発生を抑制して、OISの動作を安定化させることができる。
【0049】
マグネットホルダ12aにおいて、Z方向-側の端面(裏面)には、下側弾性支持部14が固定され、Z方向+側の面(表面)には、上側弾性支持部13が固定される。
【0050】
本実施の形態では、マグネットホルダ12aは、レンズホルダー110と同様に、ポリアリレート(PAR)又はPARを含む複数の樹脂材料を混合したPARアロイ(例えば、PAR/PC)からなる成形材料で形成されている。これにより、ウェルド強度が高まるので、マグネットホルダ12aを薄肉化しても靭性及び耐衝撃性を確保することができる。したがって、光学素子駆動装置1の外形サイズを小さくすることができ、小型化及び低背化を図れる。
【0051】
マグネット部125は、4つの矩形柱状の永久磁石125A~125D(マグネットの一例)を有する。永久磁石125A~125Dは、マグネット配置部に、例えば接着により固定される。本実施の形態では、永久磁石125A~125Dは、平面視で、略等脚台形状を有する。
【0052】
これにより、マグネットホルダ12aの角部のスペース(具体的にはマグネット配置部)を有効利用できる。永久磁石125A~125Dは、
図12に示すようにAFコイル部111を径方向に横切り、且つ、
図13から理解できる通りOISコイル部22を光軸方向に横切る、磁界が形成されるように着磁される。本実施の形態では、永久磁石125A~125Dは、内周側がN極、外周側がS極に着磁されている。
【0053】
永久磁石125A~125DのZ方向-側の端面(裏面)は、マグネットホルダ12aよりもZ方向-側に突出する。すなわち、OIS可動部10の高さは、永久磁石125A~125Dによって規定される。これにより、磁力を確保するための永久磁石125A~125Dのサイズに応じて、OIS可動部10の高さを最小限に抑えられるので、光学素子駆動装置1の低背化を図ることができる。
【0054】
以上のようなマグネット部125及びAFコイル部111によって、AF用ボイスコイルモーター(AF駆動部)が構成される。また、マグネット部125は、AFマグネット部とOISマグネット部に兼用される。
【0055】
AF固定部12の構成の細部については、例えば特許文献3等に記載された公知の技術を適宜採用可能であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0056】
[AF支持部について]
AF支持部は、AF固定部12に対してAF可動部11を弾性的に支持する。AF支持部は、本実施の形態では、上側弾性支持部13及び下側弾性支持部14を有する。本実施の形態では、上側弾性支持部13及び下側弾性支持部14はいずれも、板バネである場合を例に採る。そこで、以下の説明では、「上側弾性支持部13」及び「下側弾性支持部14」に代えて夫々「上側板バネ13」及び「下側板バネ14」という。板バネは、例えば、ベリリウム銅、ニッケル銅、ステンレスからなる。
【0057】
上側板バネ13は、外側でマグネットホルダ12aのZ方向+側の面(表面)に固定され、内側でレンズホルダー110のZ方向+側の面(表面)に固定される。上側板バネ13において、外側と内側との中間部分に延びるアーム部は弾性変形可能であり、これにより、上側板バネ13の内側部分は上側板バネ13の外側部分に対してZ方向に相対変位可能である。
【0058】
上側板バネ13は、マグネットホルダ12aの表面に固定される外側部分よりもさらに外側に延在する外側延在部を有する。外側延在部は、マグネットホルダ12aにおいてサスペンションワイヤ30が配置される溝のZ方向+側に配置される。外側延在部は、サスペンションワイヤ30の上端がはんだにより固定されるワイヤ固定部131である。
【0059】
なお、四隅夫々において、互いに隣接する2本のサスペンションワイヤ30が固定される一対のワイヤ固定部131は、互いに隣接する2本のサスペンションワイヤ30間で繋がり一体化していてもよいし、互いに隣接する2本のサスペンションワイヤ30間でスリット131aにより分割され相互に独立化していてもよい。
【0060】
一対のワイヤ固定部131が一体化している場合、一方のワイヤ固定部131と一方のサスペンションワイヤ30とをはんだ接合した後、他方のワイヤ固定部131と他方のサスペンションワイヤ30とをはんだ接合しようとすると、熱が、一対のワイヤ固定部131の繋がりを介して、先に接合済みのはんだに伝達し、再溶融ひいては接合箇所の分離を引き起こす不具合が発生するおそれがある。また、隣接する2本のサスペンションワイヤ30同士が振動挙動の影響を与え合う不具合が発生するおそれもある。これに対し、一対のワイヤ固定部131を例えばスリット131aにより分離・独立させることで、これらのような不具合が発生するおそれを抑制することができる。
【0061】
上側板バネ13は、AF制御部(図示略)への給電経路として使用されるサスペンションワイヤ30と接続される給電経路部分と、AF制御部(図示略)に制御信号を伝達する信号経路として使用されるサスペンションワイヤ30と接続される信号経路部分と、に分離している。給電経路部分を構成する上側板バネ13は、マグネットホルダ12aに設けられた絡げ部で、はんだによりAFコイル部111に接続される。
【0062】
下側板バネ14は、外側でマグネットホルダ12aのZ方向-側の面(裏面)に固定され、内側でレンズホルダー110のZ方向-側の面(裏面)に固定される。下側板バネ14において、外側と内側との中間部分に延びるアーム部は弾性変形可能であり、これにより、下側板バネ14の内側部分は下側板バネ14の外側部分に対してZ方向に相対変位可能である。
【0063】
AF支持部の構成の細部については、例えば特許文献3等に記載された公知の技術を適宜採用可能であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0064】
[OIS固定部について]
OIS固定部20は、サスペンションワイヤ30によりOIS可動部10を光軸直交方向に揺動可能に支持する。OIS固定部20は、OISコイル部22、磁気センサー部23、保護部材24、ベース部材25、及び配線部材27を有する。
【0065】
[OISコイル部について]
OIS固定部20は、Z方向(光軸方向)においてマグネット部125に対向する四隅夫々の位置にOISコイル部22を有する。OISコイル部22は、振れ補正時に通電されるコイルである。OISコイル部22は、永久磁石125A~125Dに対応する4つのOISコイル22A~22Dを有する。OISコイル22A~22Dは、本実施の形態では、空芯コイルである。
【0066】
OISコイル22A~22Dのそれぞれの長辺部分を、永久磁石125A~125Dの底面から放射される磁界がZ方向に横切るように(
図13参照)、OISコイル22A~22D及び永久磁石125A~125Dの大きさや配置が設定される。マグネット部125とOISコイル部22との組合せは、OIS用ボイスコイルモーター(OIS駆動部)を構成する。
【0067】
各OISコイル22A~22Dの両端に夫々設けられたリード線の端部は、ベース部材25に設けられた配線部材27のコイル用端子要素27a1(コイル用端子の一例)に、はんだにより接続される。すなわち、本実施の形態では、各OISコイル22A~22Dは、基板を介さず直接的にコイル用端子要素27a1に接続される。ベース部材25には、各OISコイル22A~22Dを配置するためのコイル用凹部(第二凹部の一例)252A~252Dが設けられており、各OISコイル22A~22Dは、四隅のコイル用凹部252A~252Dに夫々配置される。ベース部材25への各OISコイル22A~22Dの配置等の詳細については後述する。
【0068】
[磁気センサー部について]
OIS固定部20は、四隅のうちの第一隅部及び第四隅部において、対応するOISコイル22A、22Dの中央の空洞部内に磁気センサー部23を有する。磁気センサー部23は、マグネット部125(永久磁石125A、125D)によって形成される磁界をホール素子231A1、231D1で検出することにより特定される、光軸直交面における永久磁石125A、125Dとホール素子231A1、231D1との相対位置に基づいて、OIS可動部10の光軸直交面における位置を検出する。磁気センサー部23は、ホール素子チップアセンブリ231A、231Dを有する。ホール素子チップアセンブリ231A、231Dは、ホール素子231A1、231D1(磁気センサーの一例)と、ホール素子231A1、231D1のチップが実装された磁気センサー基板231A2、231D2と、を有する。磁気センサー基板231A2、231D2は、例えばプリント基板(PWB:Printed Wiring Board)である。
【0069】
ホール素子231A1、231D1は、磁気センサー基板231A2、231D2の主面の中央部に設けられ、その周辺部には、基板側端子部が設けられている。基板側端子部は、ベース部材25に設けられた配線部材27の基板用端子要素27b1(基板用端子の一例)に、はんだにより接続される。すなわち、本実施の形態では、各ホール素子231A1、231D1は、磁気センサー基板231A2、231D2を介して基板用端子要素27b1に接続される。ベース部材25には、各ホール素子チップアセンブリ231A、231Dを配置するための基板用凹部(第一凹部の一例)254A、254Dが設けられており、各ホール素子チップアセンブリ231A、231Dは、四隅の基板用凹部254A、254Dに夫々配置される。ベース部材25への各ホール素子チップアセンブリ231A、231Dの配置等の詳細については後述する。
【0070】
[ベース部材について]
ベース部材25は、光路又は光軸が通過する中央開口部250を有する平面視正方形の部材である。ベース部材25は、合成樹脂などの非導電性材料、例えば、液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)からなる。ベース部材25には、配線部材27がインサート成型されている。ここで、配線部材27について、
図9を用いて説明する。
図9は、OIS固定部20における配線の説明に供する図である。
【0071】
配線部材27は、ベース部材25にインサート成型された金属製の板状部材である。配線部材27は、例えばベリリウム銅、ニッケル銅、ステンレス等の導電性材料からなる。
【0072】
配線部材27は、コイル用端子部材27aと、基板用端子部材27bと、ワイヤ用端子部材27cと、を含む。
【0073】
コイル用端子部材27aは、コイル用端子要素27a1と、コイル用端子接続部27a2と、を有する。コイル用端子要素27a1は、ベース部材25に設けられたコイル用凹部252A~252Dの底部で上方に露出されるよう配置され、コイル用凹部252A~252Dに配置されたOISコイル22A~22Dのリード線に、はんだにより直接接続される。コイル用端子接続部27a2は、ベース部材25の外縁から突出して、外部のイメージセンサー基板501に接続可能とされている。コイル用端子部材27aにおいて、ベース部材25から露出又は突出している部分以外の部分は、ベース部材25の内部に埋設されている。
【0074】
基板用端子部材27bは、基板用端子要素27b1と、基板用端子接続部27b2と、を有する。基板用端子要素27b1は、ベース部材25に設けられた基板用凹部254A、254Dの底部で上方に露出されるよう配置され、基板用凹部254A、254Dに配置されたホール素子チップアセンブリ231A、231Dの基板側端子部に、はんだにより直接接続される。基板用端子接続部27b2は、ベース部材25の外縁から突出して、外部のイメージセンサー基板501に接続可能とされている。基板用端子部材27bにおいて、ベース部材25から露出又は突出している部分以外の部分は、ベース部材25の内部に埋設されている。
【0075】
ワイヤ用端子部材27cは、ワイヤ用端子要素27c1と、ワイヤ用端子接続部27c2と、を有する。ワイヤ用端子要素27c1は、ベース部材25の四隅で上方及び下方に露出されるよう配置され、自身に形成された挿通孔に挿通されたサスペンションワイヤ30の下端に、はんだにより直接接続される。ワイヤ用端子接続部27c2は、ベース部材25の外縁から突出して、外部のイメージセンサー基板501に接続可能とされている。ワイヤ用端子部材27cにおいて、ベース部材25から露出又は突出している部分以外の部分は、ベース部材25の内部に埋設されている。
【0076】
[保護部材について]
保護部材24は、ベース部材25において中央開口部250を囲む領域を被覆するように設けられる。保護部材24は、樹脂材料等の非導電材料からなる薄型のプレート部材又はフィルム部材である。保護部材24は、OISコイル22A~22Dの配置領域を完全に覆うため、保護部材24は、Z方向においてOISコイル22A~22Dと永久磁石125A~125Dとの間に介在することになる。よって、外部からの衝撃に伴ってOISコイル22A~22Dと永久磁石125A~125Dとが衝突することを防ぐことができる。また、金属製であるOISコイル22A~22Dに対して、同じく金属製である下側板バネ14が接触して、ショートが発生することも防ぐことができる。ベース部材25において柱状部256A~256Dの頂部及び上面258(柱状部256A~256Dの頂部及び上面258を纏めて「主面」と称してもよい)は、保護部材24の載置面となる。保護部材24の載置面を構成する上面258には、装着された保護部材24の変位(位置ずれ)を規制するための機構としてボス2581がベース部材25の四辺夫々に形成されている。
図7に示す構成では、ボス2581を通す貫通孔24Bやボス2581と嵌合する切欠き部24Aを保護部材24に形成することで、ベース部材25に装着された保護部材24の変位(位置ずれ)を規制することができる。
【0077】
ここで、
図10において破線の円で囲まれたR部分を拡大して示す
図16に示されるように、上面258から上方に突き出るボス2581をベース部材25の外周面2583に設けるようにしてもよい。なお、
図16に示す変形例を適用する場合は、ベース部材25の四辺夫々にてボス2581が設けられる。この場合、
図10等に示される円柱状のボス2581を全て無くす等、保護部材24の載置面における平坦部分の面積をより多く確保することができるほか、
図17に変形例として示すように保護部材241においてボス2581と嵌合する切欠き部241Aを形成する一方、ボスを通す貫通孔を無くして、保護部材241の構成をよりシンプルにすることができる。
【0078】
また、
図17に示す通り、保護部材241を、中央開口部250を囲むベース部材25の形状に対応する形状を有する一枚のプレート又はフィルムとしてもよい。保護部材24、241は薄くて可撓性があるため、二枚の円弧状の保護部材24よりも、一枚の環状の保護部材241のほうが、組付作業時に捩れが生じにくくハンドリングしやすいため、組付作業の効率化が図れる利点がある。
【0079】
ちなみに、本実施の形態では、保護部材24は、OISコイル22A~22Dの配置領域を完全に覆うことができる形状及び寸法を有するものとしたが、OISコイル22A~22Dの配置領域を完全に覆わなくてもよい。例えば、下側板バネ14との接触によるショートを予防すればよいのであれば、
図11Bにおいて二点鎖線で輪郭が概略的に示される保護部材242(保護部材24のさらなる変形例)のように、OISコイル22A~22Dの配置領域のうち、下側板バネ14の移動範囲と重複する領域だけを覆うようにしてもよい。この場合、OISコイル22A~22Dのコイル開口部内側に設けられる柱状部256まで覆うようにすると、保護部材242の載置状態を安定させやすい。また、四隅の柱状部256のうち磁気センサー基板231A2、231D2が配置される柱状部256A、256Dの場合に関していえば(
図10参照)、保護部材242が磁気センサー基板231A2、231D2も覆うことができるため、OISコイル22A、22Dだけでなく磁気センサー基板231A2、231D2も保護することができる。また、保護部材242は、上述の変形例つまり保護部材241のように、一枚の環状のプレート又はフィルムであってもよい。
【0080】
[ベース部材の四隅柱部の構造について]
ここで、ベース部材25の四隅の構造について説明する。
図11A、11Bは、光学素子駆動装置1におけるベース部材25の四隅柱部259の構造の説明に供する側面図及び平面図である。
【0081】
ベース部材25は、OIS可動部10に対してZ方向-側(光軸方向結像側)に位置する平面視正方形状の底部257と、底部257の四隅からZ方向+側(光軸方向受光側)に延在する四隅柱部259と、を有する。底部257のZ方向+側(光軸方向受光側)の面は、OIS可動部10に対向し、保護部材24の載置面となる上面258である。四隅柱部259は、上面258の高さ位置よりも高くなるように底部257から立ち上がっている。
【0082】
四隅柱部259は、相対的に径方向内側に位置する内側柱部2591と、相対的に径方向外側に位置する外側柱部2592と、を有する。内側柱部2591は、OIS可動部10の外周部、より具体的にはマグネットホルダ12aの外周面に対向する可動部対向面2591aを径方向内側に有する。可動部対向面2591aは、OIS可動部10が光軸直交方向に移動する際にマグネットホルダ12aの外周面と当接することで、OIS可動部10の径方向移動規制が可能なストッパーとして機能する。外側柱部2592は、光学素子駆動装置1にカバー3が取り付けられるときに、例えばカバー3の内周面の接着面とする等、カバー3の取付が可能なカバー対向面2592aを径方向外側に有する。
【0083】
ストッパーとして機能する内側柱部2591の可動部対向面2591aも、接着面として機能する外側柱部2592のカバー対向面2592aも、機能性を確保するには対向する相手との対向面積が広いほうが好ましい。そのため、内側柱部2591も外側柱部2592も、光学素子駆動装置1の低背化を阻害しない限り、できるだけ高くすることが望ましい。また、ストッパーとしての四隅柱部259の機能性に関していえば、マグネットホルダ12aとの当接時にマグネットホルダ12aに付与することになる衝撃をできる限り抑制することが望ましい。そこで、本実施の形態では、四隅柱部259、特に四隅柱部259の頂部を、径方向で内側(内側柱部2591)と外側(外側柱部2592)とに分離する分割溝2593が、四隅柱部259に設けられている。これにより、少なくとも四隅柱部259の頂部が、内側と外側に分割される構造となり、径方向において内側柱部2591を薄肉化することができるため、僅かながら内側柱部2591に柔軟性をもたらすことができる。これにより、マグネットホルダ12aとの当接時にマグネットホルダ12aに付与される衝撃の緩和が図られる。分割溝2593が形成される位置は、一例として、内側柱部2591の径方向寸法d1が外側柱部2592の径方向寸法d2よりも小さくなる位置である。内側柱部2591の径方向寸法d1が小さいほど、内側柱部2591の柔軟性の増大が期待できる。
【0084】
[細部構成について]
OIS固定部20におけるその他の細部構成について、ここでは詳述しないが、例えば特許文献3等に記載された公知の技術が適宜採用可能である。
【0085】
[光学素子駆動装置の動作について]
図12、13は、光学素子駆動装置1におけるAF駆動部(AF用ボイスコイルモーター)及びOIS駆動部(OIS用ボイスコイルモーター)夫々の駆動原理の説明に供する図である。
【0086】
光学素子駆動装置1において自動ピント合わせを行う場合には、AFコイル部111に通電する。AFコイル部111に通電すると、マグネット部125の磁界とAFコイル部111に流れる電流との相互作用により、AFコイル部111にローレンツ力が生じる(フレミングの左手の法則)。この場合のローレンツ力の方向は、磁界の方向(径方向内側に向かう方向、
図12参照)及びAFコイル部111に流れる電流の方向(周方向、
図12参照)に直交する方向(つまり、Z方向(光軸方向))である。マグネット部125(永久磁石125A~125D)は固定されているので、AFコイル部111に反力が働く。この反力がAF用ボイスコイルモーター(AF駆動部)の駆動力となり、AFコイル部111を有するAF可動部11がZ方向(光軸方向)に移動し、ピント合わせが行われる。
【0087】
光学素子駆動装置1において振れ補正を行う場合には、OISコイル22A~22Dに通電する。OISコイル22A~22Dに通電すると、マグネット部125の磁界とOISコイル22A~22Dに流れる電流との相互作用により、OISコイル22A~22Dにローレンツ力が生じる(フレミング左手の法則)。この場合のローレンツ力の方向は、OISコイル22A~22Dの長辺部分における磁界の方向(Z方向(光軸方向)、
図13参照)と電流の方向(U方向又はV方向、
図13参照)に直交する方向(つまりV方向又はU方向)である。OISコイル22A~22Dは固定されているので、永久磁石125A~125Dに反力が働く。この反力がOIS用ボイスコイルモーター(OIS駆動部)の駆動力となり、マグネット部125を有するOIS可動部10が光軸直交面内で揺動し、振れ補正が行われる。
【0088】
[OIS固定部におけるベース部材への磁気センサー部及びOISコイル部の配置について]
続いて、OIS固定部20のベース部材25への磁気センサー部及びOISコイル部の配置について、
図10、14、15を用いて説明する。
図10は、OIS固定部20においてホール素子チップアセンブリ231A、231D及びOISコイル22A~22Dをベース部材25から取り外した状態を上方から見た分解斜視図である。
図14Aは、ベース部材25にホール素子チップアセンブリ231A、231Dを取り付けた状態を示す平面図であり、
図14Bは、
図14Aに示す状態からさらにOISコイル22A~22Dを取り付けた状態を示す平面図である。
図15は、
図14Bに示す状態からさらに保護部材24を取り付けた状態を示すXV-XV線矢視断面図である。
【0089】
ホール素子チップアセンブリ231A、231D及びOISコイル22A~22Dが配置されるベース部材25には、基板用凹部254A、254D及びコイル用凹部252A、252B、252C、252Dが形成されている。
【0090】
コイル用凹部252A~252Dは、ベース部材25の四隅夫々において、サスペンションワイヤ30が配置される位置よりも径方向内側、且つ、中央開口部250よりも径方向外側の位置に、形成されている。コイル用凹部252A~252Dの形状は、空芯コイルであるOISコイル22A~22Dの長円型のループ形状に沿うように、中央に柱状部256A、256B、256C、256Dを残す形で形成される環状形状の凹部である。柱状部256A~256Dは、OISコイル22A~22Dの配置において位置決め部材として機能する。なお、柱状部256A~256Dの頂部は、中央開口部250の上縁部を囲む面(ベース部材25の上面258)と略同面である。よって、ベース部材25において柱状部256A~256Dの頂部及び上面258は、保護部材24の載置面として機能する。
【0091】
コイル用凹部252A~252Dのうち、第一隅部及び第四隅部に位置するコイル用凹部252A、252Dにおいては、柱状部256A、256Dを径方向に横切る形で、コイル用凹部252A、252Dの底部をさらに凹ませる基板用凹部254A、254Dが形成されている。基板用凹部254A、254Dの形状は、平面視矩形であるホール素子チップアセンブリ231A、231Dの磁気センサー基板231A2、231D2の外形形状に沿うように、平面視矩形状の凹部である。なお、基板用凹部254A、254Dは、柱状部256A、256Dと交差する部分が若干くびれた形状となっている。言い換えれば、柱状部256A、256Dの夫々を構成する一対の柱が、間に介在する基板用凹部254A、254Dの幅を部分的に狭くしている。このような形状により、柱状部256A、256Dは、ホール素子チップアセンブリ231A、231Dを基板用凹部254A、254Dに配置する際、位置決め部材として機能する。
【0092】
ベース部材25へのホール素子チップアセンブリ231A、231D及びOISコイル22A~22Dの組付け作業においては、まず、ホール素子チップアセンブリ231A、231Dが、基板用凹部254A、254Dに配置され(
図14A参照)、磁気センサー基板231A2、231D2の基板側端子が、基板用凹部254A、254Dの底部で上方に露出する基板用端子要素27b1に、はんだにより接合される。そして、OISコイル22A~22Dが、コイル用凹部252A~252Dに配置され(
図14B参照)、OISコイル22A~22Dの長手方向両側のリード線の先端が、コイル用凹部252A~252Dの両端部分の底部で上方に露出するコイル用端子要素27a1に、はんだにより接合される。
【0093】
すなわち、OIS固定部20(ベース部材25)において磁気センサー基板231A2、231D2に直接接続する基板用端子要素27b1は、コイル用凹部252A、252Dの底部中央に形成される基板用凹部254A、254Dおいて露出するよう設けられる。また、OIS固定部20(ベース部材25)においてOISコイル22A、22Dに直接接続するコイル用端子要素27a1は、コイル用凹部252A、252Dの底部両端において露出するよう設けられている。このように、基板用端子要素27b1及びコイル用端子要素27a1は、共にコイル用凹部252A、252Dの底部領域内に配置されているが、互いに離間した位置にあるため、夫々のはんだ接合作業を容易に行うことができる。
【0094】
なお、組付け作業の最初の段階を、以下のような手順で実行してもよい。まず、ホール素子231A1、231D1を実装していない磁気センサー基板231A2、231D2を基板用凹部254A、254Dに配置して、磁気センサー基板231A2、231D2の外縁に位置する基板側端子を、基板用端子要素27b1に、はんだによって接合する。次いで、磁気センサー基板231A2、231D2の中央に位置するホール素子実装面に、ホール素子231A1、231D1を装着する。このように、磁気センサー基板231A2、231D2とホール素子231A1、231D1とを個別に実装する手順であっても、磁気センサー基板231A2、231D2を基板用凹部254A、254Dに配置してから作業を進めることができるため、位置決め精度を高精度に維持することができる。
【0095】
ベース部材25へのホール素子チップアセンブリ231A、231D及びOISコイル22A~22Dの組付け作業が完了し、さらに保護部材24の取り付けまで完了した状態が、
図15の断面図に示されている。
【0096】
図14A、14Bに示されるようにコイル用凹部252A、252Dの底部の一部に形成される基板用凹部254A、254Dの深さは、
図15に示されるように磁気センサー基板231A2、231D2の厚さ以上の深さである。そのため、ホール素子を基板に実装せず単体で使用する場合に比べて磁気センサー基板231A2、231D2を使用する分だけ厚さが増大するところ、基板用凹部254A、254Dの深さがその増大分を相殺するため、ベース部材25の薄型化に影響を及ぼすことがない。また、基板用凹部254A、254Dに収容しきれず磁気センサー基板231A2、231D2が基板用凹部254A、254Dから突出することも防ぐことができるので、磁気センサー基板231A2、231D2の平面サイズにかかわらず、コイル用凹部252A、252DへのOISコイル22A、22Dの配置の際に磁気センサー基板231A2、231D2が邪魔になることがない。
【0097】
さらに、基板用凹部254A、254Dの深さは、磁気センサー基板231A2、231D2を収容したときに、磁気センサー基板231A2、231D2上のホール素子231A、231Dの光軸方向受光側端部が、コイル用凹部252A、252Dの底部上のOISコイル22A、22Dの光軸方向受光側端部と同等の位置となる、深さである。或いは、基板用凹部254A、254Dの深さは、磁気センサー基板231A2、231D2を収容したときに、磁気センサー基板231A2、231D2上のホール素子231A、231Dの光軸方向受光側端部が、コイル用凹部252A、252Dの底部上のOISコイル22A、22Dの光軸方向受光側端部と同等の位置よりも光軸方向結像側に変位した位置となる、深さである(
図15参照)。これにより、ホール素子231A1、231D1の光軸方向受光側端部がOISコイル22A、22Dの光軸方向受光側端部よりも高い位置に突き出ることを防ぐことができるため、より確実にベース部材25を薄型化することができる。端的にいえば、磁気センサー基板231A2、231D2とOISコイル22A、22DとをZ方向に重ねた配置が可能となるため、装置サイズを最小限に抑制することができる。
【0098】
また、
図14A、14Bに示されるように、OISコイル22A、22Dは、基板用凹部254A、254Dを跨いでコイル用凹部252A、252Dの底部に架設された空芯コイルである。したがって、仮にコイル基板のようなシート型のコイルをコイル用凹部252A、252Dの底部に架設させて使用する場合に比べて、OISコイル22A、22Dの姿勢を安定化させることができるため、ベース部材25の平面視面積の増大ひいては光学素子駆動装置1のサイズ拡大を抑制することができる。
【0099】
以上説明したように、本実施の形態によれば、光学素子駆動装置1は、レンズ部2を保持可能なOIS可動部10及びOIS可動部10を支持するOIS固定部20に分離して配置され、OIS可動部10をOIS固定部20に対して移動させるよう協働するOISコイル22A、22D及び永久磁石125A、125Dと、永久磁石125A、125Dとの相対位置に基づいてOIS可動部10の位置を検出するホール素子231A1、231D1と、を有し、ホール素子231A1、231D1は、磁気センサー基板231A2、231D2に実装され、磁気センサー基板231A2、231D2は、OIS固定部20に設けられる凹部に収容される。これにより、ホール素子231A1、231D1を磁気センサー基板231A2、231D2に実装した状態で配置しても、OIS固定部20の体積増大を抑制することができるため、光学素子駆動装置1の装置サイズ増大を抑制することができる。また、ホール素子231A1、231D1を単体で使用せず磁気センサー基板231A2、231D2を介してOIS固定部20に実装することになるため、ホール素子231A1、231D1の取付状態及び配線部材27との接続状態が確認しづらくなることはなく、ホール素子231A1、231D1の取付精度向上を図ることができる。
【0100】
また、OIS固定部20は、磁気センサー基板231A2、231D2に直接接続する基板用端子要素27b1と、OISコイル22A~22Dに直接接続するコイル用端子要素27a1と、を一体的に備えるベース部材25を有する。これにより、ホール素子231A1、231D1とOISコイル22A~22Dとを個別に接続すればよくなるため、磁気センサー基板231A2、231D2は、ホール素子231A1、231D1の実装専用の基板として用いることができる。よって、磁気センサー基板231A2、231D2のサイズを著しく小さくすることができるため、装置全体のサイズを一層小型化することができる。
【0101】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述した特定の実施の形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、上記実施の形態に記載された具体例に対する種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る光学素子駆動装置及びカメラモジュールは、例えば、スマートフォン、携帯電話機、デジタルカメラ、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、車載カメラ、ドローン等のカメラ搭載装置に搭載して、有用なものである。
【符号の説明】
【0103】
A カメラモジュール
M スマートフォン
OC 背面カメラ
V 自動車
VC 車載用カメラ
1 光学素子駆動装置
2 レンズ部
3 カバー
301 開口部
5 撮像部
501 イメージセンサー基板
502 撮像素子
503 制御部
10 OIS可動部
11 AF可動部
110 レンズホルダー
110a レンズ収容部
110a1 レンズ収容開口部
111 AFコイル部
12 AF固定部
12a マグネットホルダ
125 マグネット部
125A、125B、125C、125D 永久磁石
13 上側弾性支持部(上側板バネ)
131 ワイヤ固定部
131a スリット
14 下側弾性支持部(下側板バネ)
20 OIS固定部
22 OISコイル部
22A、22B、22D、22D OISコイル
23 磁気センサー部
231A、231D ホール素子チップアセンブリ
231A1、231D1 ホール素子
231A2、231D2 磁気センサー基板
24、241、242 保護部材
24A、241A 切欠き部
24B 貫通孔
25 ベース部材
250 中央開口部
252、252A、252B、252C、252D コイル用凹部(第二凹部)
254A、254D 基板用凹部(第一凹部)
256、256A、256B、256C、256D 柱状部
257 底部
258 上面
2581 ボス
2583 外周面
259 四隅柱部
2591 内側柱部
2591a OIS可動部対向面
2592 外側柱部
2592a カバー対向面
2593 分割溝
27 配線部材
27a コイル用端子部材
27a1 コイル用端子要素
27a2 コイル用端子接続部
27b 基板用端子部材
27b1 基板用端子要素
27b2 基板用端子接続部
27c ワイヤ用端子部材
27c1 ワイヤ用端子要素
27c2 ワイヤ用端子接続部
30 OIS支持部(サスペンションワイヤ)