(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002468
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ロータリ圧縮機及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/356 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
F04C18/356 T
F04C18/356 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101656
(22)【出願日】2022-06-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中武 豊晴
(57)【要約】
【課題】信頼性の高いロータリ圧縮機等を提供する。
【解決手段】ロータリ圧縮機は、シリンダと、ローラと、クランク軸と、上軸受と、下軸受と、を備えるとともに、シリンダとローラとの間の空間を仕切る板状のベーン51dと、ベーン51dをローラに向けて付勢するベーンばね51eと、を備え、ベーン51dにおいてローラとは反対側の端部には、ベーンばね51eが挿入される一対の背面溝G1a,G1bが設けられ、ベーンばね51eの中心軸線X1を基準として、一対の背面溝G1a,G1bの底付近から径方向外側に凹んでなる一対の径方向溝G2a,G2bがベーン51dに設けられ、ベーンばね51eが、一対の径方向溝G2a,G2bに設置されている。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内で公転する環状のローラと、
前記ローラの内周面に摺接する偏心部を有するシャフトと、
前記シリンダの上側に設けられ、前記シャフトを軸支する上軸受と、
前記シリンダの下側に設けられ、前記シャフトを軸支する下軸受と、
前記シリンダと前記ローラとの間の空間を仕切る板状のベーンと、
前記ベーンを前記ローラに向けて付勢するベーンばねと、を備え、
前記ベーンにおいて前記ローラとは反対側の端部には、前記ベーンばねが挿入される一対の背面溝が設けられ、
前記ベーンばねの中心軸線を基準として、一対の前記背面溝の底付近から径方向外側に凹んでなる一対の径方向溝が前記ベーンに設けられ、
前記ベーンばねが、一対の前記径方向溝に設置されている、ロータリ圧縮機。
【請求項2】
シリンダと、
前記シリンダ内で公転する環状のローラと、
前記ローラの内周面に摺接する偏心部を有するシャフトと、
前記シリンダの上側に設けられ、前記シャフトを軸支する上軸受と、
前記シリンダの下側に設けられ、前記シャフトを軸支する下軸受と、
前記シリンダと前記ローラとの間の空間を仕切る板状のベーンと、
前記ベーンを前記ローラに向けて付勢するベーンばねと、を備え、
前記ベーンにおいて前記ローラとは反対側の端部には、前記ベーンばねが挿入される一対の背面溝が設けられ、
前記ベーンばねの中心軸線を基準として、一対の前記背面溝の底付近から径方向内側に凹んでなる一対の径方向溝が前記ベーンに設けられ、
前記ベーンばねが、一対の前記径方向溝に設置されている、ロータリ圧縮機。
【請求項3】
前記ベーンばねは、当該ベーンばねにおいて前記ローラ側に設けられる密着巻部と、前記密着巻部から前記ローラとは反対側に螺旋状に延びる有効巻部と、を有し、
前記ベーンばねの伸縮に伴って、前記密着巻部が一対の前記背面溝に接触し、前記有効巻部は前記背面溝に接触しないこと
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】
一対の前記径方向溝の底の間の距離をD1とし、一対の前記径方向溝の前記ローラとは反対側の端部の間の距離をD2とし、前記ベーンばねの開放状態における前記ローラ側の先端付近の外径をd1とした場合、D2<d1<D1の関係が成り立つこと
を特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項5】
一対の前記径方向溝の底の間の距離をD1とし、一対の前記径方向溝の前記ローラとは反対側の端部の間の距離をD2とし、前記ベーンばねの開放状態における前記ローラ側の先端付近の外径をd2とした場合、D2<D1<d2の関係が成り立つこと
を特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項6】
一対の前記背面溝において、上側の前記背面溝の上縁部と、下側の前記背面溝の下縁部と、の間の上下方向の距離は、前記ローラとは反対側に向かうにつれて長くなること
を特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項7】
前記ベーンは、上側の前記背面溝の前記上縁部、及び下側の前記背面溝の前記下縁部を含むテーパ状の縁部として、前記ローラに近い側である一対の第1縁部と、一対の前記第1縁部に連なり、前記ローラから遠い側である一対の第2縁部と、を有し、
一対の前記径方向溝の前記ローラとは反対側の端部の間の距離をD2とし、一対の前記第2縁部における前記ローラとは反対側の端部の間の距離をD3とし、前記第1縁部と前記第2縁部との境界点の間の距離をD4とした場合、D2<D4<D3の関係が成り立つこと
を特徴とする請求項6に記載のロータリ圧縮機。
【請求項8】
前記ベーンばねは、当該ベーンばねにおいて前記ローラ側に設けられる密着巻部と、前記密着巻部から前記ローラとは反対側に螺旋状に延びる有効巻部と、を有し、
前記密着巻部が前記径方向溝に設置された状態において、当該密着巻部は、前記径方向溝から前記ローラとは反対側にも延在していること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロータリ圧縮機。
【請求項9】
前記密着巻部において前記ローラ側の1巻目における3/4以上は、前記ベーンばねの開放状態において所定平面上に存在し、
前記所定平面は、前記密着巻部において前記ローラ側の1巻目の先端を通り、前記ベーンばねの前記中心軸線に対して垂直な平面であること
を特徴とする請求項8に記載のロータリ圧縮機。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載のロータリ圧縮機を備えるとともに、室外熱交換器と、膨張弁と、室内熱交換器と、を備える空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ圧縮機等に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリ圧縮機のシリンダとローラとの間の空間を仕切るベーンに関して、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、ロータリ圧縮機の分割ベーンにおけるテーパ状部の最終端をコイルスプリングの線径と略同一の幅寸法に形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、分割ベーンにおけるテーパ状部の最終端をコイルスプリングの線径と略同一の幅寸法にすることで、コイルスプリングの外れを防止するようにしている。しかしながら、ロータリ圧縮機が高速で駆動された場合のコイルスプリング(ベーンばね)の外れやばねズレ等を抑制し、ロータリ圧縮機の信頼性をさらに高めることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、信頼性の高いロータリ圧縮機等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係るロータリ圧縮機は、シリンダと、前記シリンダ内で公転する環状のローラと、前記ローラの内周面に摺接する偏心部を有するシャフトと、前記シリンダの上側に設けられ、前記シャフトを軸支する上軸受と、前記シリンダの下側に設けられ、前記シャフトを軸支する下軸受と、前記シリンダと前記ローラとの間の空間を仕切る板状のベーンと、前記ベーンを前記ローラに向けて付勢するベーンばねと、を備え、前記ベーンにおいて前記ローラとは反対側の端部には、前記ベーンばねが挿入される一対の背面溝が設けられ、前記ベーンばねの中心軸線を基準として、一対の前記背面溝の底付近から径方向外側に凹んでなる一対の径方向溝が前記ベーンに設けられ、前記ベーンばねが、一対の前記径方向溝に設置されていることとした。なお、その他については、実施形態の中で説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、信頼性の高いロータリ圧縮機等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るロータリ圧縮機の縦断面図である。
【
図2A】第1実施形態に係るロータリ圧縮機の第1圧縮機構部における
図1のII-II線矢視断面図である。
【
図2B】第1実施形態に係るロータリ圧縮機の第1圧縮機構部における別の状態の断面図である。
【
図3A】第1実施形態に係るロータリ圧縮機のベーンやベーンばねを含む断面図である。
【
図3B】第1実施形態に係るロータリ圧縮機において、
図3Aに示す領域K1の部分拡大図である。
【
図3C】第1実施形態に係るロータリ圧縮機における
図3AのIII-III線矢視断面図である。
【
図4A】第1実施形態に係るロータリ圧縮機において、ベーンばねが開放された状態の寸法関係を示す説明図である。
【
図4B】第1実施形態に係るロータリ圧縮機において、ベーンばねがベーンに設置された状態の寸法関係を示す説明図である。
【
図5】第2実施形態に係るロータリ圧縮機において、ベーンばねが開放された状態の寸法関係を示す説明図である。
【
図6A】第3実施形態に係るロータリ圧縮機において、ベーンばねが開放された状態を示す図である。
【
図6B】第3実施形態に係るロータリ圧縮機において、ベーンばねをベーン側から軸方向に見た場合の図である。
【
図6C】第3実施形態に係るロータリ圧縮機において、ベーンばねがベーンに設置された状態を示す図である。
【
図7A】第4実施形態に係るロータリ圧縮機が備えるベーンの側面図である。
【
図7B】第4実施形態に係るロータリ圧縮機において、ベーンばねがベーンに設置された状態を示す図である。
【
図8A】第5実施形態に係るロータリ圧縮機が備えるベーンの側面図である。
【
図8B】第5実施形態に係るロータリ圧縮機において、ベーンばねがベーンに設置された状態を示す図である。
【
図8C】第5実施形態に係るロータリ圧縮機における
図8BのIV-V線矢視断面図である。
【
図9】第6実施形態に係る空気調和機の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
<ロータリ圧縮機の構成>
図1は、第1実施形態に係るロータリ圧縮機100の縦断面図である。
なお、
図1に示す白抜き矢印Y1,Y2は、冷媒が流れる向きを示している。
ロータリ圧縮機100は、ガス状の冷媒を圧縮する機器である。
図1に示すように、ロータリ圧縮機100は、密閉容器1と、電動機2と、電源端子3と、クランク軸4(シャフト)と、圧縮機構部5と、消音カバー61,62と、を備えている。
【0010】
密閉容器1は、電動機2やクランク軸4、圧縮機構部5等を収容する容器であり、略密閉されている。密閉容器1は、円筒状の筒チャンバ1aと、この筒チャンバ1aの上側を塞ぐ蓋チャンバ1bと、筒チャンバ1aの下側を塞ぐ底チャンバ1cと、を備えている。
【0011】
密閉容器1の筒チャンバ1aには、2本の吸込パイプP1,P2が差し込まれて固定されている。吸込パイプP1は、第1圧縮機構部51の吸込室C2(
図2A参照)に冷媒を導く管である。他方の吸込パイプP2は、第2圧縮機構部52の吸込室(図示せず)に冷媒を導く管である。なお、吸込パイプP1,P2の上流側には、冷媒の気液分離を行うためのアキュムレータ200が接続されている。
【0012】
また、密閉容器1の蓋チャンバ1bには、吐出パイプP3が差し込まれて固定されている。吐出パイプP3は、第1圧縮機構部51や第2圧縮機構部52で圧縮された冷媒をロータリ圧縮機100の外部に導く管である。密閉容器1には、ロータリ圧縮機100の潤滑性やシール性を高めるための潤滑油が封入され、密閉容器1の底部に油溜りM1として貯留されている。
【0013】
電動機2は、クランク軸4を回転させる駆動源であり、密閉容器1の内部に設置されている。
図1に示すように、電動機2は、固定子2aと、回転子2bと、を備えている。固定子2aは、電磁鋼板が積層されてなる円筒状の部材であり、筒チャンバ1aの内周面に固定されている。また、固定子2aには、巻線21aが所定に巻回されている。回転子2bは、電磁鋼板で形成された鉄心と、鉄心に埋設された永久磁石(図示せず)と、を有する円筒状の部材であり、固定子2aの径方向内側に回転自在に配置されている。回転子2bには、クランク軸4が同軸で固定されている。
【0014】
クランク軸4は、電動機2の駆動に伴って回転子2bと一体で回転する軸である。クランク軸4は、上下方向に延びており、上軸受51c及び下軸受52kによって回転自在に軸支されている。
図1に示すように、クランク軸4は、主軸部4aと、偏心部41b,42bと、を備えている。主軸部4aは、電動機2の回転子2bに同軸で固定されている。主軸部4aは、一方の偏心部41bの上側の他、偏心部41b,42bの間や、他方の偏心部42bの下側に設けられている。
【0015】
偏心部41b,42bは、主軸部4aに対して偏心している部分であり、主軸部4aと一体形成されている。一方の偏心部41bは、上側のローラ51bの内周面に摺接している。他方の偏心部42bは、下側のローラ52bの内周面に摺接している。また、一方の偏心部41bは、他方の偏心部42bに対して反対側に偏心している。これによって、偏心部41bの移動に伴う回転のアンバランスが他方の偏心部42bで打ち消されるため、ロータリ圧縮機100の振動を抑制できる。
【0016】
図1に示すように、クランク軸4の内部には、潤滑油を軸方向に導く給油流路4eが設けられている。給油流路4eは、密閉容器1に油溜りM1として貯留されている潤滑油を圧縮機構部5に導く流路である。給油流路4eは、クランク軸4の軸方向に設けられ、クランク軸4の下端で開口している。給油流路4eの上端は、偏心部41b,42bよりも上側に位置している。
【0017】
給油流路4eの下端付近には、所定に捻じ曲げられた薄板状の金属片4fがオイルポンプとして設けられている。そして、金属片4fがクランク軸4と一体で回転することで、給油流路4eを介して潤滑油が汲み上げられるようになっている。また、図示はしないが、給油流路4eからローラ51b,52bの径方向内側に潤滑油を導く横孔等が適宜に設けられている。
【0018】
圧縮機構部5は、クランク軸4の回転に伴ってガス状の冷媒を圧縮する機構であり、電動機2の下側に設けられている。圧縮機構部5は、第1圧縮機構部51と、第2圧縮機構部52と、を含んで構成されている。第1圧縮機構部51は、吸込パイプP1からの冷媒を圧縮する機構であり、シリンダ51aと、ローラ51bと、上軸受51cと、仕切板B1と、ベーン51dと、ベーンばね51eと、吐出弁51fと、を備えている。
【0019】
第2圧縮機構部52は、吸込パイプP2からの冷媒を圧縮する機構であり、第1圧縮機構部51の下側に設けられている。第2圧縮機構部52は、シリンダ52aと、ローラ52bと、下軸受52kと、仕切板B1と、ベーン52dと、ベーンばね52eと、吐出弁52fと、を備えている。
【0020】
図2Aは、第1圧縮機構部51における
図1のII-II線矢視断面図である。
なお、
図2Aでは、ベーン51dにおけるローラ51b側の先端が、シリンダ51aの内周面よりも径方向内側に位置しているときの状態を示している。
図2Aに示すシリンダ51aは、ローラ51bや上軸受51c(
図1参照)、仕切板B1(
図1参照)とともにシリンダ室C1を形成する部材であり、環状(円筒状)を呈している。なお、シリンダ室C1とは、シリンダ51aとローラ51bとの間の空間である。シリンダ室C1には、吸込室C2と圧縮室C3とが含まれている。
【0021】
ローラ51bは、電動機2(
図1参照)の駆動に伴ってシリンダ51a内で公転する部材であり、環状(円筒状)を呈している。そして、ローラ51bが、シリンダ51aの内周面に摺接しつつ、シリンダ51aの内側を公転するようになっている。
【0022】
ベーン51dは、シリンダ51aとローラ51bとの間の空間(シリンダ室C1)を仕切る板状部材である。ベーン51dの先端がローラ51bの外周面に押し当てられることで、シリンダ室C1が吸込室C2と圧縮室C3とに仕切られる。
【0023】
図2Aに示すように、シリンダ51aから径方向外側に突出してなる円弧状の基端部51hが、シリンダ51aと一体で設けられている。この基端部51h及びシリンダ51aを径方向に貫通している吸込通路H1に、吸込パイプP1が差し込まれて固定されている。そして、吸込パイプP1及び吸込通路H1を順次に介して、吸込室C2にガス状の冷媒が供給されるようになっている。
【0024】
基端部51hの所定箇所には、ベーンばね51eを装着するためのベーンばね装着穴H2が径方向に設けられている。そして、ベーンばね装着穴H2と、シリンダ51aの径方向内側の空間と、を連通させるように、径方向のスリット(
図2Aには符号を図示せず)がシリンダ51aに設けられている。このスリットは、ベーン51dを径方向で進退させるための隙間であり、ベーン51dの板厚よりも若干幅広に設けられている。
【0025】
ベーンばね51eは、ベーン51dをローラ51bに向けて径方向内向きに付勢するばねであり、ベーンばね装着穴H2に設置されている。そして、圧縮機構部5の内・外の圧力差やベーンばね51eの付勢力によって、ベーン51dの先端がローラ51bの外周面に押し当てられるようになっている。
【0026】
シリンダ51aの上面の内周縁部の所定箇所には、吐出切欠きN1が設けられている。この吐出切欠きN1は、圧縮された冷媒を吐出弁51f(
図1参照)に導く切欠きであり、その縁が円弧状を呈している。なお、吸込通路H1の吸込室C2側の開口部と、吐出切欠きN1とは、周方向においてベーン51dの近傍に設けられている。具体的には、吸込通路H1は、周方向においてベーン51dの一方側(吸込室C2側)で開口している。また、吐出切欠きN1は、周方向においてベーン51dの他方側(圧縮室C3側)に設けられている。
【0027】
図2Bは、第1圧縮機構部51における別の状態の断面図である。
なお、
図2Bでは、圧縮室C3で冷媒の圧縮が開始されるときの「上死点」にローラ51bが位置しているときの状態を示している。「上死点」では、ローラ51bの中心がベーン51dの先端に最も近づき(つまり、ベーン51dが最も後退し)、シリンダ室C1の全体が圧縮室C3になっている。そして、シリンダ51a内でローラ51bが公転することで、圧縮室C3の容積が縮小して、冷媒が圧縮されるようになっている。
【0028】
再び、
図1に戻って説明を続ける。
図1に示す上軸受51cは、クランク軸4を回転自在に軸支する滑り軸受であり、シリンダ51aの上側(クランク軸4の軸方向一方側)に設けられている。この上軸受51cは、シリンダ51aや仕切板B1、下軸受52kとともに複数のボルト(図示せず)で締結され、さらに、筒チャンバ1aの内周面に固定されている。
【0029】
上軸受51cにおいて、シリンダ51aの吐出切欠きN1(
図2参照)に対応する箇所には、吐出弁51fが設けられている。吐出弁51fは、圧縮室C3(
図2参照)で圧縮された冷媒を密閉容器1内の空間に吐出するための弁(板ばね)であり、上軸受51cに設けられている。そして、圧縮された冷媒の圧力が吐出弁51fの弾性力に打ち勝ったときに、吐出弁51fが開くようになっている。
【0030】
仕切板B1は、上側のシリンダ51aやローラ51bと、下側のシリンダ52aやローラ52bと、を上下方向に仕切る板状部材である。仕切板B1は、第1圧縮機構部51及び第2圧縮機構部52の両方に含まれている。
【0031】
下軸受52kは、クランク軸4を回転自在に軸支する滑り軸受であり、シリンダ52aの下側(クランク軸4の軸方向他方側)に設けられている。そして、第2圧縮機構部52において、シリンダ52aとローラ52bとの間の圧縮室(図示せず)で圧縮された冷媒が、吐出弁52fを介して、密閉容器1の内部の空間に吐出されるようになっている。なお、第2圧縮機構部52の構成は、第1圧縮機構部51の構成(
図2A、
図2B参照)と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0032】
図1に示す消音カバー61,62は、冷媒の圧縮に伴う騒音を抑制するためのカバーである。一方の消音カバー61は、上軸受51cの上面の一部(吐出弁51fの設置箇所を含む領域)を覆った状態で、上軸受51cに固定されている。他方の消音カバー62は、下軸受52kの略全体を下側から覆った状態で、下軸受52kに固定されている。それぞれの消音カバー61,62には、圧縮された冷媒を密閉容器1内の空間に放出するための複数の孔(図示せず)が設けられている。
以下では、主に第1圧縮機構部51のベーン51dやベーンばね51eについて詳細に説明するが、第2圧縮機構部52のベーン52dやベーンばね52eについても同様である。
【0033】
図3Aは、ベーン51dやベーンばね51eを含む断面図である。
図3Aに示すベーン51dは、前記したように、シリンダ室C1(
図2A参照)を吸込室C2と圧縮室C3とに仕切る金属製の板状部材である。そして、ベーンばね51eの付勢力等によって、ベーン51dの先端(
図3Aにおける左端)がローラ51b(
図2A参照)の外周面に押し当てられるようになっている。ベーンばね51eは、前記したように、ベーン51dをローラ51b側(
図2A参照)に付勢するばねであり、金属製の線材が螺旋状に巻回された構成になっている。
【0034】
図3Aに示すように、ベーン51dは、矩形状の板に一対の背面溝G1a,G1bが設けられた構成になっている。すなわち、ベーン51dにおいてローラ51b(
図2A参照)とは反対側の端部には、ベーンばね51eが挿入される一対の背面溝G1a,G1bが設けられている。一方の背面溝G1aには、ベーンばね51eの上端付近が挿入される(
図3Cも参照)。他方の背面溝G1bには、ベーンばね51eの下端付近が挿入される(
図3Cも参照)。また、背面溝G1aの底に近づくにつれて、背面溝G1aの上下方向の溝幅が狭くなっている。
【0035】
図3Aに示すように、ベーンばね51eの中心軸線X1を基準として、一対の背面溝G1a,G1bの底付近から径方向外側に凹んでなる一対の径方向溝G2a,G2bがベーン51dに設けられている。一対の径方向溝G2a,G2bは、ベーンばね51eのばねズレを抑制し、また、ベーンばね51eを設置しやすくするための溝である。
【0036】
なお、「ばねズレ」とは、ベーンばね51eの先端がベーン51dから離れたり、ベーンばね51eが本来の位置から径方向にずれたりすることを意味している。例えば、ロータリ圧縮機100(
図1参照)が高速で駆動している場合において、ベーンばね51eの伸縮がローラ51b(
図2A参照)の移動速度に追いつかないときには、ベーンばね51eの先端がベーン51dから離れやすくなる。そこで、第1実施形態では、ベーン51dの径方向溝G2a,G2bにベーンばね51eを設置することで、前記した「ばねズレ」を抑制するようにしている。
【0037】
図3Aに示すように、一対の径方向溝G2a,G2bにベーンばね51eが設置されている。ベーンばね51eにおいて、ローラ51b側の端部は径方向溝G2a,G2bに設置され、ローラ51bとは反対側の端部はベーンばね装着穴H2に設置されている。なお、ベーンばね51eは、圧入機等(図示せず)を用いて設置されることが多いが、作業員によって手作業で設置されることもある。
【0038】
図3Bは、
図3Aに示す領域K1の部分拡大図である。
図3Bに示す背面溝G1aの底G1mの面は、ベーン51dのローラ51b側(
図1参照)の端面に対して略平行になっている。また、背面溝G1aの底G1mと、径方向溝G2aとが面一になっている。これによって、ベーンばね51eが背面溝G1aの底G1mに押し込まれたとき、ベーンばね51eが、その周方向の弾性力で径方向溝G2aに入り込みやすくなる。
【0039】
図3Bの例では、ベーンばね51eにおいて、ローラ51b側(
図1参照)の端から数えて1巻目の部分が径方向溝G2aに入り込んでいる。つまり、ベーンばね51eの1巻目が径方向溝G2aに接触している。これによって、ベーンばね51eを径方向(
図3Aの中心軸線X1に対して垂直な方向)に固定できるとともに、長手方向(中心軸線X1に対して平行な方向)にも固定できる。その結果、ロータリ圧縮機100(
図1参照)の駆動中におけるベーンばね51eのばねズレや折損を抑制できる。なお、他方の径方向溝G2b(
図3A参照)は、ベーンばね51eの中心軸線X1を基準として、上側の径方向溝G2aに対して上下対称の構成になっている。
【0040】
図3Cは、
図3AのIII-III線矢視断面図である。
図3Cに示すように、背面溝G1a,G1bは、ベーン51dの厚さ方向(横方向)に沿って設けられている。そして、一方の背面溝G1aの底の上側を切り欠くように、径方向溝G2aが設けられている。また、他方の背面溝G1bの底の下側を切り欠くように、径方向溝G2bが設けられている。
図3Cに示すように、ベーンばね51eの内径及び外径は、ベーン51dの板厚よりも長くなっている。なお、ベーンばね51eの径方向の周囲には、ベーン装着穴H2(
図2A参照)の周面が存在している。
【0041】
図4Aは、ベーンばね51eが解放された状態の寸法関係を示す説明図である。
図4Aに示すように、一対の径方向溝G2a,G2bの底の間の上下方向の距離(
図3Aの中心軸線X1に対して垂直な上下方向の距離)をD1とする。また、一対の径方向溝G2a,G2bのローラ51b(
図1参照)とは反対側の端部の間の上下方向の距離をD2とする。また、ベーンばね51eの開放状態におけるローラ51b側の先端付近の外径をd1とした場合、以下の式(1)の関係が成り立っている。
なお、径方向溝G2aの「底」とは、径方向溝G2aの壁面の上端である。また、他方の径方向溝G2bの「底」とは、径方向溝G2bの壁面の下端である。また、ベーンばね51eの「開放状態」とは、ベーンばね51eを伸縮させる外力がほとんど作用していない状態である。
【0042】
D2<d1<D1 ・・・(1)
【0043】
このような構成によれば、ベーンばね51eが径方向溝G2a,G2bに入り込むため、ベーンばね51eの先端が径方向及び長手方向に固定される。その結果、ロータリ圧縮機100(
図1参照)の駆動中にベーン51dが高速で移動した場合でも、ベーンばね51eのばねズレを抑制できる。なお、式(1)の大小関係は、ベーンばね51eが開放された状態の他、ベーンばね51eがベーン51dに設置された状態(
図4B参照)でも成り立っている。
【0044】
また、一対の背面溝G1a,G1bにおいて、上側の背面溝G1aの上縁部G11aと、下側の背面溝G1bの下縁部G11bと、の間の上下方向の距離は、ローラ51b(
図2A参照)とは反対側に向かうにつれて長くなっている。すなわち、一対の径方向溝G2a,G2bのローラ51b(
図1参照)とは反対側の端部の間の上下方向の距離をD2とし、一対の背面溝G1a,G1bのローラ51b(
図1参照)とは反対側の端部の間の上下方向の距離をD3とした場合、以下の式(2)の関係が成り立っている。
【0045】
D2<D3 ・・・(2)
【0046】
このような構成によれば、上側の背面溝G1aの上縁部G11aと、下側の背面溝G1bの下縁部G11bとがテーパ状を呈しているため、ベーンばね51eを背面溝G1a,G1bに挿入する作業が行いやすくなる。
【0047】
図4Aに示すように、ベーンばね51eは、密着巻部511eと、有効巻部512eと、密着巻部513eと、を備えている。また、ベーンばね51eの中心軸線X1(
図3A参照)に沿う方向において、ローラ51b側(
図2A参照)から順に、密着巻部511e、有効巻部512e、及び密着巻部513eが設けられている。すなわち、ベーンばね51eは、このベーンばね51eにおいてローラ51b側(
図2A参照)に設けられる密着巻部511eと、密着巻部511eからローラ51bとは反対側に螺旋状に延びる有効巻部512eと、を有している他、有効巻部512eからローラ51b(
図2A参照)とは反対側に密着巻部513eを有している。
【0048】
密着巻部511e,513eとは、ベーンばね51eが開放された状態で、軸方向に隣り合う線材同士が互いに接触又は近接している部分である。なお、密着巻部511e,513eによるベーンばね51eの弾性力への寄与は非常に少ない(又はほとんどない)。また、有効巻部512eとは、ベーンばね51eが開放された状態で、軸方向に隣り合う線材同士が互いに離れている部分である。ベーンばね51eの弾性力は、主に有効巻部512eの伸縮によって発生する。
【0049】
図4Aの例では、ベーンばね51eの中心軸線X1に沿う方向において、密着巻部511eの内径及び外径のそれぞれが略一定になっている(有効巻部512eも同様)。また、他方の密着巻部513eについては、ベーン51dとは反対側に向かうにつれて、その内径及び外径が大きくなっている。密着巻部513eにおいてベーン51dとは反対側の端部は、ベーンばね装着穴H2(
図3A参照)に圧入等で固定される。
【0050】
図4Bは、ベーンばね51eがベーン51dに設置された状態の寸法関係を示す説明図である。
前記したように、ベーンばね51eの外径d1は、径方向溝G2a,G2bの底の間の上下方向の距離D1よりも短く、また、径方向溝G2a,G2bの入口側の上下方向の距離D2よりも長い(D2<d1<D1)。したがって、製造時に作業員がベーンばね51eをベーン51dに押し込むと、ベーンばね51eの1巻目が径方向で圧縮され、径方向溝G2a,G2bの入口側を乗り越えて、径方向溝G2a,G2bに入り込む。このとき、ベーンばね51eの1巻目を元の寸法に戻すような弾性力が生じるため、ベーンばね51eが径方向溝G2a,G2bに接触する。このようにして、作業員はベーンばね51eをベーン51dに容易に設置できる。
【0051】
図4Bの例では、背面溝G1aの上縁部G11aにおけるローラ51b側(
図2A参照)の端部や、他方の背面溝G1bの下縁部G11bにおけるローラ51b側(
図2A参照)の端部が、密着巻部511e(
図4A参照)の1巻目と2巻目との間に入り込んでいる。つまり、ベーンばね51eがベーン51dに設置された状態では、密着巻部511e(
図4A参照)の1巻目と2巻目との間に隙間が生じており、また、密着巻部511eの一部(
図4Bでは2巻目)がベーン51dの背面溝G1a,G1bに接触している。
【0052】
なお、ベーンばね51eの伸縮に伴って、密着巻部511eが一対の背面溝G1a,G1bに接触するが、有効巻部512eは背面溝G1a,G1bに接触しない(又は接触することがほとんどない)。これによって、ベーンばね51eの弾性力が背面溝G1a,G1bとの接触で損なわれることを防止できる。
【0053】
<効果>
第1実施形態によれば、ベーン51dの一対の背面溝G1a,G1b(
図3A参照)から径方向外側に凹んだ構成の径方向溝G2a,G2b(
図3A参照)が設けられている。これによって、ロータリ圧縮機100(
図1参照)の駆動中、ベーンばね51eの径方向や長手方向において、ベーンばね51eの先端とベーン51dとが一体的に移動する。その結果、ベーンばね51eにおけるばねズレや折損を抑制し、ひいては、ロータリ圧縮機100の信頼性を高めることができる。
【0054】
また、ベーンばね51eの伸縮に伴って密着巻部511e(
図4A参照)が背面溝G1a,G1bに接触するが、有効巻部512eが背面溝G1a,G1bに接触することはほとんどない。これによって、ベーンばね51eの能力が最大限に発揮されるため、ロータリ圧縮機100の性能が高められる。
また、ベーンばね51eの先端付近の外径d1は、径方向溝G2a,G2bの入口側の上下方向の距離D2よりも長い。したがって、作業員は、ベーンばね51eの周方向の弾性力を利用して、ベーンばね51eを径方向溝G2a,G2bに容易に装着できる。
【0055】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、ベーンばね51Ae(
図5参照)と径方向溝G2a,G2bとの間の寸法関係が第1実施形態とは異なっているが、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0056】
図5は、ベーンばね51Aeが解放された状態の寸法関係を示す説明図である。
図5に示すように、一対の径方向溝G2a,G2bの底の間の距離(中心軸線X1に対して垂直な径方向の距離)をD1とし、一対の径方向溝G2a,G2bのローラ51b(
図1参照)とは反対側の端部の間の距離をD2とする。また、ベーンばね51Aeの開放状態におけるローラ51b側の先端付近の外径をd2とした場合、以下の式(3)の関係が成り立つようにしてもよい。
【0057】
D2<D1<d2 ・・・(3)
【0058】
このような構成によれば、ベーンばね51Aeの先端をベーン51dの径方向溝G2a,G2bに挿入する際、ベーンばね51Aeが径方向外側に広がろうとする弾性力を利用できる。そして、ベーンばね51Aeの先端がベーン51dの径方向溝G2a,G2bに設置された状態では、ベーンばね51Aeから径方向溝G2a,G2bの底を径方向外向きに押圧する弾性力が作用する。これによって、ベーンばね51Aeが径方向及び長手方向においてベーン51dにしっかりと固定される。
【0059】
<効果>
第2実施形態によれば、ベーンばね51Aeの外径d2が距離D1,D2よりも長いため、ベーンばね51Aeが径方向外側に広がろうとする際の弾性力が径方向溝G2a,G2bに作用する。これによって、ベーンばね51Aeのばねズレを効果的に抑制できる。
【0060】
≪第3実施形態≫
第3実施形態は、ベーンばね51Be(
図6A参照)のローラ51b側の1巻目の3/4以上が所定平面F1(
図6A参照)上に存在する点が第1実施形態とは異なっているが、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0061】
図6Aは、第3実施形態に係るロータリ圧縮機において、ベーンばね51Beが開放された状態を示す図である。
図6Aに示すように、ベーンばね51Beは、ローラ51b(
図2A参照)に近い側から順に、密着巻部511Beと、有効巻部512Beと、密着巻部513Beと、を有している。そして、密着巻部511Beにおいてローラ51b側(
図1参照)の1巻目における約3/4(
図6Bの角度θも参照)が、ベーンばね51Beの開放状態において所定平面F1上に存在している。ここで、所定平面F1とは、密着巻部511Beにおいてローラ51b側(
図1参照)の1巻目の先端を通り、ベーンばね51Beの中心軸線X1に対して垂直な平面である。つまり、ベーンばね51Beの1巻目の約3/4は、螺旋状ではなく、所定平面F1に含まれる円弧状になっている。
【0062】
このような構成にすることで、ベーンばね51Beが径方向溝G2a,G2bに設置された状態では、背面溝G1a,G1bの底の面に対して、所定平面F1が略平行になる。その結果、背面溝G1a,G1bの底の面に対して、ベーンばね51Beの中心軸線X1が略垂直になるため、ベーンばね51Beの傾きを抑えることができる。
【0063】
図6Bは、ベーンばね51Beをベーン側から軸方向に見た場合の図である。
なお、
図6Bに示す角度θ(約270°)は、所定平面F1上(
図6A参照)に存在する密着巻部511Beの範囲を示している。また、
図6Bでは、密着巻部511Beの紙面奥側に有効巻部512Be(
図6A参照)が存在するため、有効巻部512Beは隠れた状態になっている。
【0064】
前記したように、密着巻部511Beの1巻目の約3/4は、ベーンばね51Beの中心軸線X1(
図6A参照)に対して垂直な所定平面F1上(
図6A参照)に存在している。なお、密着巻部511Beの1巻目の3/4以上(例えば、3/4以上かつ9/10以下)が、ベーンばね51Beの中心軸線X1(
図6A参照)に対して垂直な所定平面F1上(
図6A参照)に存在するようにしてもよい。このような構成でも、同様の効果が奏される。
【0065】
図6Cは、ベーンばね51Beがベーン51dに設置された状態を示す図である。
図6Cに示すように、密着巻部511Beが径方向溝G2a,G2bに設置された状態において、密着巻部511Beは、径方向溝G2a,G2bからローラ51b(
図2A参照)とは反対側にも延在している。このような構成によれば、径方向溝G2a,G2bからローラ51b(
図2A参照)とは反対側にも密着巻部511Beが延在しているため、有効巻部512Beが背面溝G1a,G1aに接触することを抑制できる。したがって、ベーンばね51Beの能力が損なわれることを抑制できる。
【0066】
また、ベーンばね51Beがベーン51dに設置された状態では、密着巻部511Beの1巻目の約3/4以上が背面溝G1a,G1bの底の面に対して平行になる。その結果、ベーンばね51Beの軸方向が背面溝G1a,G1bの底の面に対して垂直になるため、ベーンばね51Beの傾きを抑制できる。
【0067】
<効果>
第3実施形態によれば、密着巻部511Beの1巻目の3/4以上が、中心軸線X1に対して垂直な所定平面F1上(
図6A参照)に存在している。これによって、ベーンばね51Beの傾きが抑えられるため、ベーンばね51Beの能力を十分に発揮できる。
【0068】
≪第4実施形態≫
第4実施形態は、ベーン51Cd(
図7A参照)の形状が第1実施形態とは異なっているが、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0069】
図7Aは、第4実施形態に係るロータリ圧縮機が備えるベーン51Cdの側面図である。
図7Aに示すように、ベーン51Cdは、上側の背面溝G1aの上縁部G11a、及び下側の背面溝G1bの下縁部G11bを含むテーパ状の縁部として、ローラ51b(
図2A参照)に近い側である一対の第1縁部G12a,G12bと、この一対の第1縁部G12a,G12bに連なり、ローラ51b(
図2A参照)から遠い側である一対の第2縁部G13a,G13bと、を有している。
【0070】
また、一対の第1縁部G12a,G12bにおけるローラ51b側(
図2A参照)の端部の間の上下方向の距離をD2とする。言い換えると、一対の径方向溝G2a,G2bのローラ51b(
図2A参照)とは反対側の端部の間の上下方向の距離をD2とする。また、一対の第2縁部G13a,G13bにおけるローラ51b(
図2A参照)とは反対側の端部の間の上下方向の距離をD3とする。また、第1縁部G12a,G12bと第2縁部G13a,G13bとの境界点T1a,T1bの間の上下方向の距離をD4とする。つまり、上側の第1縁部G12aと第2縁部G13aとの間の境界点T1aと、下側の第1縁部G12bと第2縁部G13bとの境界点T1bと、の間の距離をD4とする。このような場合、以下の式(4)の関係が成り立っている。
【0071】
D2<D4<D3 ・・・(4)
【0072】
このような構成によれば、ベーンばね51eの有効巻部512e(
図4A参照)が背面溝G1a,G1bに接触しにくくなるため、ベーンばね51eの能力が損なわれることを抑制できる他、ベーンばね51eの設置作業が行いやすくなる。
【0073】
図7Bは、ベーンばね51eがベーン51Cdに設置された状態を示す図である。
図7Bの例では、ベーンばね51eの密着巻部511e(
図4A参照)の1巻目が径方向溝G2a,G2bに入り込み、2巻目が第1縁部G12a,G12bに接触している。一方、ベーンばね51eの有効巻部512e(
図4A参照)が背面溝G1a、G1bに接触することはほとんどない。したがって、前記したように、ベーンばね51eの能力が損なわれることを抑制できる。
【0074】
<効果>
第4実施形態によれば、ベーンばね51eの有効巻部512e(
図4A参照)が背面溝G1a、G1bに接触することがほとんどないため、ベーンばね51eの能力を十分に発揮させることができる。また、ベーンばね51eを径方向溝G2a,G2bに挿入する際、有効巻部512e(
図4A参照)が背面溝G1a,G1bに接触しにくくなるため、ベーンばね51eの設置作業が行いやすくなる。
【0075】
≪第5実施形態≫
第5実施形態では、背面溝G1a,G1b(
図8A参照)の径方向内側に一対の径方向溝G3a,G3b(
図8A参照)が設けられる点が第1実施形態とは異なっている。なお、その他については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0076】
図8Aは、第5実施形態に係るロータリ圧縮機が備えるベーン51Ddの側面図である。
図8Aに示すように、ベーンばね51eの中心軸線X1(
図8B参照)を基準として、一対の背面溝G1a,G1aの底付近から径方向内側に凹んでなる一対の径方向溝G3a,G3bがベーン51Ddに設けられている。そして、一対の径方向溝G3a,G3bにベーンばね51eが設置されている。
なお、背面溝G1aの底の面と、径方向溝G3aの壁面と、は面一になっている。同様に、背面溝G1bの底の面と、径方向溝G3bの壁面と、が面一になっている。
【0077】
図8Bは、ベーンばね51eがベーン51Ddに設置された状態を示す図である。
図8Bの例では、ベーンばね51eにおいて、ローラ51b側(
図2A参照)の端部から数えて1巻目が径方向溝G3a,G3bに入り込んでいる。また、ベーンばね51eは、その1巻目の内周側が径方向溝G3a,G3bに接触している。これによって、ベーンばね51eの先端を径方向に固定できるとともに、長手方向にも固定できる。
【0078】
また、ベーンばね51eの密着巻部511eが径方向溝G3a,G3bに設置された状態において、密着巻部511eは、径方向溝G3a,G3bからローラ51b(
図2A参照)とは反対側にも延在している。なお、ベーンばね51eの伸縮に伴って、密着巻部511eが一対の背面溝G1a,G1bに接触するが、有効巻部512eは背面溝G1a,G1bに接触することがほとんどない。これによって、ベーンばね51eの能力を十分に発揮させることができる。
【0079】
図8Cは、
図8BのIV-V線矢視断面図である。
図8Cに示すように、背面溝G1a,G1aは、ベーン51Ddの厚さ方向(紙面の横方向)に沿って設けられている。そして、一方の背面溝G1aの底の下側を切り欠くように、径方向溝G3aが設けられている。また、他方の背面溝G1bの上側を切り欠くように、径方向溝G3bが設けられている。
図8Cに示すように、ベーンばね51eの内径及び外径は、ベーン51Ddの板厚よりも長くなっている。なお、ベーンばね51eの径方向の周囲には、ベーン装着穴H2(
図2A参照)の壁面が存在している。
【0080】
なお、ベーンばね51eの内径rは、径方向溝G3aの底の角部(ベーン51Ddの厚さ方向の端部)と中心軸線X1との間の距離L1よりも長くなっている。また、ベーンばね51eの内径rは、径方向溝G3aにおいてローラ51b(
図2A参照)とは反対側の端の角部(ベーン51Ddの厚さ方向の端部)と中心軸線X1との間の距離L2よりも短くなっている。これによって、ベーンばね51eの先端付近が径方向溝G3a,G3bに係止される。
【0081】
<効果>
第5実施形態によれば、ベーン51Ddの一対の背面溝G1a,G1b(
図8A参照)から径方向内側に凹んだ構成の径方向溝G3a,G3b(
図8A参照)が設けられる。これによって、ロータリ圧縮機100(
図1参照)の駆動中、ベーンばね51eの径方向や長手方向において、ベーンばね51eの先端とベーン51Ddとが一体的に移動する。したがって、ベーンばね51eにおけるばねズレを抑制し、ひいては、ロータリ圧縮機100の信頼性を高めることができる。
【0082】
≪第6実施形態≫
第6実施形態では、第1実施形態で説明したロータリ圧縮機100(
図1参照)を備える空気調和機W1(
図9参照)について説明する。なお、ロータリ圧縮機100の構成については、第1実施形態(
図1参照)で説明したものと同様であるから説明を省略する。
【0083】
図9は、第6実施形態に係る空気調和機W1の構成図である。
なお、
図9の実線矢印は、暖房運転時における冷媒の流れを示している。
一方、
図9の破線矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示している。
空気調和機W1は、冷房や暖房等の空調を行う機器である。
図9に示すように、空気調和機W1は、ロータリ圧縮機100と、室外熱交換器71と、室外ファン72と、膨張弁73と、四方弁74と、室内熱交換器75と、室内ファン76と、を備えている。
【0084】
図9の例では、ロータリ圧縮機100、室外熱交換器71、室外ファン72、膨張弁73、及び四方弁74が、室外機U1に設けられている。一方、室内熱交換器75及び室内ファン76は、室内機U2に設けられている。
【0085】
ロータリ圧縮機100は、第1実施形態(
図1参照)と同様の構成を備えている。なお、
図9では図示を省略しているが、ロータリ圧縮機100の吸込側には、冷媒の気液分離を行うためのアキュムレータが接続されている。
室外熱交換器71は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室外ファン72から送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。室外ファン72は、室外熱交換器71に外気を送り込むファンである。室外ファン72は、駆動源である室外ファンモータ72aを備え、室外熱交換器71の付近に設置されている。
【0086】
室内熱交換器75は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室内ファン76から送り込まれる室内空気(空調室の空気)と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。室内ファン76は、室内熱交換器75に室内空気を送り込むファンである。室内ファン76は、駆動源である室内ファンモータ76aを備え、室内熱交換器75の付近に設置されている。
【0087】
膨張弁73は、「凝縮器」(室外熱交換器71及び室内熱交換器75の一方)で凝縮した冷媒を減圧する弁である。なお、膨張弁73によって減圧された冷媒は、「蒸発器」(室外熱交換器71及び室内熱交換器75の他方)に導かれる。
【0088】
四方弁74は、空気調和機W1の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。例えば、冷房運転時(
図9の破線矢印を参照)には、冷媒回路Q1において、ロータリ圧縮機100、室外熱交換器71(凝縮器)、膨張弁73、及び室内熱交換器75(蒸発器)を順次に介して、冷媒が循環する。一方、暖房運転時(
図9の実線矢印を参照)には、冷媒回路Q1において、ロータリ圧縮機100、室内熱交換器75(凝縮器)、膨張弁73、及び室外熱交換器71(蒸発器)を順次に介して、冷媒が循環する。
【0089】
<効果>
第6実施形態によれば、性能や信頼性の高いロータリ圧縮機100を空気調和機W1が備えている。これによって、空気調和機W1の性能や信頼性を高めることができる。
【0090】
≪変形例≫
以上、本発明に係るロータリ圧縮機100等について各実施形態で説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、背面溝G1a(
図3B参照)の底G1mの面と径方向溝G2aとが面一であり、また、他方の背面溝G1bの底の面と径方向溝G2bとが面一である場合について説明したが、これに限らない。すなわち、背面溝G1aの底から所定の段差(図示せず)を介して、径方向溝G2aが設けられるようにしてもよい(他方の径方向溝G2bも同様)。
【0091】
また、各実施形態では、ベーンばね51eの1巻目が径方向溝G2a,G2b(
図3A参照)に入り込んでいる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、ベーンばね51eにおいてローラ51b側の複数巻分が径方向溝G2a,G2bに入り込むようにしてもよい。
また、各実施形態では、ベーンばね51eの有効巻部512eの一方側に密着巻部511eが設けられ、他方側に別の密着巻部513eが設けられる場合について説明したが、これに限らない。例えば、密着巻部511e,513eの一方又は両方を適宜に省略することも可能である。また、背面溝G1a,G1bの縁部の形状に合わせて、密着巻部511eの長手方向(軸方向)の中間部で外径が短くなるようにベーンばね51eを形成してもよい。
【0092】
また、各実施形態では、ロータリ圧縮機100(
図1参照)が第1圧縮機構部51(
図1参照)と第2圧縮機構部52(
図1参照)とを備える構成について説明したが、これに限らない。例えば、ロータリ圧縮機が1つの圧縮機構部(図示せず)を備える構成にしてもよい。この場合には、図示はしないが、シリンダやローラの上側には上軸受が設けられ、下側には下軸受が設けられる。また、ロータリ圧縮機が3つ以上の圧縮機構部(図示せず)を備える構成であってもよい。
【0093】
また、第6実施形態では、空気調和機W1(
図9参照)が四方弁74(
図9参照)を備える場合について説明したが、これに限らない。例えば、冷房専用や暖房専用の空気調和機の場合には、四方弁を適宜に省略してもよい。
また、各実施形態は、適宜に組み合わせることが可能である。例えば、第3実施形態(
図6A参照)と第4実施形態(
図7A参照)とを組み合わせてもよいし、また、第3実施形態(
図6A参照)と第5実施形態(
図8A参照)とを組み合わせてもよい。その他にも、例えば、第2実施形態~第5実施形態のいずれかと第6実施形態(
図9参照)とを組み合わせることも可能である。
【0094】
また、各実施形態では、ロータリ圧縮機100(
図1参照)が縦置きである場合について説明したが、これに限らない。すなわち、ロータリ圧縮機100が横置きや斜め置きで配置される場合にも各実施形態を適用できる。
また、第6実施形態で説明した空気調和機W1(
図9参照)は、ルームエアコンやパッケージエアコンの他、ビル用マルチエアコンといったさまざまな種類の空気調和機に適用できる。
【0095】
また、第6実施形態では、ロータリ圧縮機100を備える空気調和機W1(
図9参照)について説明したが、これに限らない。すなわち、ロータリ圧縮機100を備える冷凍サイクル装置は、冷凍機や給湯機、空調給湯システムの他、冷蔵庫等であってもよい。
【0096】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0097】
1 密閉容器
2 電動機
3 電源端子
4 クランク軸(シャフト)
4a 主軸部
41b,42b 偏心部
5 圧縮機構部
51a,52a シリンダ
51b,52b ローラ
51c 上軸受
51d,52d,51Cd,51Dd ベーン
51e,52e,51Ae,51Be ベーンばね
511e,511Be 密着巻部
512e,512Be 有効巻部
52k 下軸受
71 室外熱交換器
72 室外ファン
73 膨張弁
74 四方弁
75 室内熱交換器
76 室内ファン
100 ロータリ圧縮機
d1,d2 外径(ベーンばねの外径)
D1 距離(一対の径方向溝の底の間の距離)
D2 距離(一対の径方向溝のローラとは反対側の端部の間の距離)
D3 距離(一対の第2縁部におけるローラとは反対側の端部の間の距離)
D4 距離(第1縁部と第2縁部との境界点の間の距離)
F1 所定平面
G1a,G1b 背面溝
G11a 上縁部
G11b 下縁部
G12a,G12b 第1縁部
G13a,G13b 第2縁部
G1m 底
G2a,G2b 径方向溝
G3a,G3b 径方向溝
T1a,T1b 境界点
X1 中心軸線
W1 空気調和機
【手続補正書】
【提出日】2022-10-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内で公転する環状のローラと、
前記ローラの内周面に摺接する偏心部を有するシャフトと、
前記シリンダの上側に設けられ、前記シャフトを軸支する上軸受と、
前記シリンダの下側に設けられ、前記シャフトを軸支する下軸受と、
前記シリンダと前記ローラとの間の空間を仕切る板状のベーンと、
前記ベーンを前記ローラに向けて付勢するベーンばねと、を備え、
前記ベーンにおいて前記ローラとは反対側の端部には、前記ベーンばねが挿入される一対の背面溝が設けられ、
前記ベーンばねの中心軸線を基準として、一対の前記背面溝の底付近から径方向外側に凹んでなる一対の径方向溝が前記ベーンに設けられ、
前記ベーンばねが、一対の前記径方向溝に設置されており、
前記ベーンばねは、当該ベーンばねにおいて前記ローラ側に設けられる密着巻部と、前記密着巻部から前記ローラとは反対側に螺旋状に延びる有効巻部と、を有し、
前記ベーンは、上側の前記背面溝の上縁部、及び下側の前記背面溝の下縁部を含むテーパ状の縁部として、前記ローラに近い側である一対の第1縁部と、一対の前記第1縁部に連なり、前記ローラから遠い側である一対の第2縁部と、を有し、
一対の前記径方向溝の前記ローラとは反対側の端部の間の距離をD2とし、一対の前記第2縁部における前記ローラとは反対側の端部の間の距離をD3とし、前記第1縁部と前記第2縁部との境界点の間の距離をD4とした場合、D2<D4<D3の関係が成り立っており、
前記第1縁部と前記第2縁部とのなす角は、前記ベーンばねの前記中心軸線の側から見て、鈍角であり、
前記ベーンばねの伸縮に伴って、前記密着巻部が一対の前記背面溝に接触し、前記有効巻部は前記背面溝に接触しない、ロータリ圧縮機。
【請求項2】
一対の前記径方向溝の底の間の距離をD1とし、前記ベーンばねの開放状態における前記ローラ側の先端付近の外径をd1とした場合、D2<d1<D1の関係が成り立つこと
を特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
一対の前記径方向溝の底の間の距離をD1とし、前記ベーンばねの開放状態における前記ローラ側の先端付近の外径をd2とした場合、D2<D1<d2の関係が成り立つこと
を特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】
一対の前記背面溝において、上側の前記背面溝の前記上縁部と、下側の前記背面溝の前記下縁部と、の間の上下方向の距離は、前記ローラとは反対側に向かうにつれて長くなること
を特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項5】
前記密着巻部が前記径方向溝に設置された状態において、当該密着巻部は、前記径方向溝から前記ローラとは反対側にも延在していること
を特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項6】
前記密着巻部において前記ローラ側の1巻目における3/4以上は、前記ベーンばねの開放状態において所定平面上に存在し、
前記所定平面は、前記密着巻部において前記ローラ側の1巻目の先端を通り、前記ベーンばねの前記中心軸線に対して垂直な平面であること
を特徴とする請求項5に記載のロータリ圧縮機。
【請求項7】
請求項1に記載のロータリ圧縮機を備えるとともに、室外熱交換器と、膨張弁と、室内熱交換器と、を備える空気調和機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係るロータリ圧縮機は、シリンダと、前記シリンダ内で公転する環状のローラと、前記ローラの内周面に摺接する偏心部を有するシャフトと、前記シリンダの上側に設けられ、前記シャフトを軸支する上軸受と、前記シリンダの下側に設けられ、前記シャフトを軸支する下軸受と、前記シリンダと前記ローラとの間の空間を仕切る板状のベーンと、前記ベーンを前記ローラに向けて付勢するベーンばねと、を備え、前記ベーンにおいて前記ローラとは反対側の端部には、前記ベーンばねが挿入される一対の背面溝が設けられ、前記ベーンばねの中心軸線を基準として、一対の前記背面溝の底付近から径方向外側に凹んでなる一対の径方向溝が前記ベーンに設けられ、前記ベーンばねが、一対の前記径方向溝に設置されており、前記ベーンばねは、当該ベーンばねにおいて前記ローラ側に設けられる密着巻部と、前記密着巻部から前記ローラとは反対側に螺旋状に延びる有効巻部と、を有し、前記ベーンは、上側の前記背面溝の上縁部、及び下側の前記背面溝の下縁部を含むテーパ状の縁部として、前記ローラに近い側である一対の第1縁部と、一対の前記第1縁部に連なり、前記ローラから遠い側である一対の第2縁部と、を有し、一対の前記径方向溝の前記ローラとは反対側の端部の間の距離をD2とし、一対の前記第2縁部における前記ローラとは反対側の端部の間の距離をD3とし、前記第1縁部と前記第2縁部との境界点の間の距離をD4とした場合、D2<D4<D3の関係が成り立っており、前記第1縁部と前記第2縁部とのなす角は、前記ベーンばねの前記中心軸線の側から見て、鈍角であり、前記ベーンばねの伸縮に伴って、前記密着巻部が一対の前記背面溝に接触し、前記有効巻部は前記背面溝に接触しないこととした。なお、その他については、実施形態の中で説明する。