(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024681
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】電気コネクタ及びこれを備えた電気コネクタ対
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
H01R13/42 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219587
(22)【出願日】2023-12-26
(62)【分割の表示】P 2021050947の分割
【原出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000231822
【氏名又は名称】日本端子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内海 雅之
(72)【発明者】
【氏名】澁澤 勇樹
(57)【要約】
【課題】コネクタのハウジングに対するリテーナの保持強度を安定的に確保できる。
【解決手段】電気コネクタ5は、複数の金属端子31と、複数の金属端子31がそれぞれ挿入される複数の端子収容室47、及び複数の金属端子31の挿入方向に相当する前後方向と直交する左右方向に延びるリテーナ挿入孔51を有するハウジング9と、リテーナ挿入孔に挿入されることにより、端子収容室47に挿入された金属端子31を保持するリテーナ35と、を備え、リテーナは、ハウジングに係止される被係止部57を有し、ハウジングは、その外殻をなす上壁41、下壁42、左壁43、及び右壁44を有し、左壁及び右壁の少なくとも一方には、リテーナ挿入孔が開口し、上壁又は下壁の内面側には、左右方向に延び、かつリテーナ挿入孔の一部を構成する溝53が形成され、溝には、リテーナの被係止部を係止する係止部55が形成されている構成とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気コネクタであって、
複数の金属端子と、
前記複数の金属端子がそれぞれ挿入される複数の端子収容室、及び前記複数の金属端子の挿入方向に相当する前後方向と直交する左右方向に延びるリテーナ挿入孔を有するハウジングと、
前記リテーナ挿入孔に挿入されることにより、前記端子収容室に挿入された前記金属端子を保持するリテーナと、を備え、
前記リテーナは、前記ハウジングに係止される被係止部を有し、
前記ハウジングは、その外殻をなす上壁、下壁、左壁、及び右壁を有し、
前記左壁及び前記右壁の少なくとも一方には、前記リテーナ挿入孔が開口し、
前記上壁又は前記下壁の内面側には、前記左右方向に延び、かつ前記リテーナ挿入孔の一部を構成する溝が形成され、
前記溝には、前記リテーナの前記被係止部を係止する係止部が形成されている、電気コネクタ。
【請求項2】
前記溝は、前側面、後側面、及び底面によって画定され、
前記係止部が、前記前側面または前記後側面に形成されている、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記リテーナの前記被係止部は、前記リテーナの前方または後方に向けて突設された突起であり、
前記リテーナは、前記突起が形成された挿入側部、及び前記挿入側部に連なる基部を有し、
前記突起を含めた前記挿入側部の前後方向幅の大きさは、前記基部の前後方向幅以下である、請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記上壁及び前記下壁の間において前記前後方向にそれぞれ延在し、かつ前記左右方向に所定の間隔で配置された複数の内壁を有し、
前記複数の内壁は、前記各端子収容室の左右の側壁を構成し、かつ前記リテーナ挿入孔の一部を構成する切欠き部をそれぞれ有し、
前記複数の内壁のうち前記リテーナの前記挿入側部に対向する内壁における前記切欠き部は、前記リテーナの前記基部に対向する内壁における前記切欠き部よりも小さな前後方向幅を有する、請求項3に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記リテーナにおいて、前記挿入側部には、前記突起の内側に配置され、前記挿入側部を上下方向に貫通する長孔が設けられている、請求項3または請求項4に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記リテーナの前記突起と前記長孔との間には、前記突起が前記係止部に係止される際に弾性変形する弾性変形部が形成され、
前記弾性変形部の上下方向幅は、前記挿入側部全体における上下方向幅の最大値よりも小さい、請求項5に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記リテーナは、前記複数の金属端子を係止する端子係止部を有し、
前記端子係止部は、前記左右方向に直交する断面において前記端子収容室側かつ前方に突出する部位をなす、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項8】
前記ハウジングにおいて前記溝が形成された前記上壁又は前記下壁の前記左右方向の中間部には、前記ハウジングの内側に変位することにより、前記電気コネクタと対をなす他の電気コネクタのハウジングを係止するハウジング係止部が形成され、
前記リテーナの前記溝に対向する側における前記左右方向の中間部には、前記ハウジング係止部に対応するように配置された凹部が形成されている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項9】
前記金属端子は、雄型の金属端子に接続可能な雌型の金属端子であり、
前記ハウジングは、前記雄型の金属端子を保持する雄側のハウジングに接続可能な雌側のハウジングである、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電気コネクタと、前記電気コネクタと接続可能に設けられた他の電気コネクタと、を備えた電気コネクタ対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングに収容された複数の金属端子を保持するリテーナを備えた電気コネクタ及びこれを備えた電気コネクタ対に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジングの端子収容室にそれぞれ挿入された複数の金属端子を係止することにより、それら金属端子のハウジングからの抜けを防止するリテーナを備えた電気コネクタが普及している(特許文献1を参照)。一方、リテーナは、ハウジングの外殻をなす側壁に開口するリテーナ挿入孔に挿入されるが、その反挿入方向に外力が作用すると、リテーナ挿入孔から離脱してしまう可能性がある。
【0003】
そのようなリテーナの離脱を防止するために、例えば、リテーナの可撓アームに形成された係止突起が、ハウジングのリテーナ挿入孔の開口を画定する外壁(側壁)に係止される電気コネクタが開発されている(特許文献2を参照)。また例えば、リテーナに形成された係止突起が、ハウジングの複数のキャビティ(端子収容室)を仕切る側壁に係止される電気コネクタが開発されている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3-097875号公報
【特許文献2】特開平11-16625号公報
【特許文献3】特開2015-133216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2に記載された従来技術では、リテーナに形成された係止突起が、リテーナの挿入方向に対して垂直に配置されたハウジングの外壁や内壁(金属端子がそれぞれ収容される端子収容室の側壁)に係止されるため、ハウジングに対するリテーナの保持強度(すなわち、ハウジングからのリテーナの離脱を防止する能力)は、ハウジングの外壁や内壁を構成する部材の剛性や強度(すなわち、壁の厚み、形状等)に左右される。
【0006】
したがって、上記従来技術では、ハウジングの設計上、外壁や内壁の厚み等の変更に制約があると、ハウジングに対するリテーナの保持強度を十分に確保することが難しい場合がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、ハウジングに対するリテーナの保持強度を安定的に確保できる電気コネクタ及びこれを備えた電気コネクタ対を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面では、電気コネクタ(5)であって、複数の金属端子(31)と、前記複数の金属端子がそれぞれ挿入される複数の端子収容室(47)、及び前記複数の金属端子の挿入方向に相当する前後方向と直交する左右方向に延びるリテーナ挿入孔(51)を有するハウジング(9)と、前記リテーナ挿入孔に挿入されることにより、前記端子収容室に挿入された前記金属端子を保持するリテーナ(35)と、を備え、前記リテーナは、前記ハウジングに係止される被係止部(57)を有し、前記ハウジングは、その外殻をなす上壁(41)、下壁(42)、左壁(43)、及び右壁(44)を有し、前記左壁及び前記右壁の少なくとも一方には、前記リテーナ挿入孔が開口し、前記上壁又は前記下壁の内面側には、前記左右方向に延び、かつ前記リテーナ挿入孔の一部を構成する溝(53)が形成され、前記溝には、前記リテーナの前記被係止部を係止する係止部(55)が形成されている構成とする。
【0009】
これによると、上壁又は下壁の内面側に設けられた溝に、リテーナの被係止部を係止する係止部が形成されているため、ハウジングに対するリテーナの保持強度を安定的に確保することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の側面では、前記溝は、前側面(53A)、後側面(53B)、及び底面(53C)によって画定され、前記係止部が、前記前側面または前記後側面に形成されている構成とする。
【0011】
これによると、溝の底面以外に係止部が形成されるため、溝における係止部の形成がハウジングの上壁又は下壁の厚みに影響を及ぼすことを回避できる。
【0012】
本発明の第3の側面では、前記リテーナの前記被係止部は、前記リテーナの前方または後方に向けて突設された突起(57)であり、前記リテーナは、前記突起が形成された挿入側部(71)、及び前記挿入側部に連なる基部(73)を有し、前記突起を含めた前記挿入側部の前後方向幅の大きさは、前記基部の前後方向幅以下である構成とする。
【0013】
これによると、リテーナの被係止部として突起を設ける場合でも、リテーナの前後方向幅の増大を抑制しつつ、基部においてリテーナがハウジングに対して安定的に保持するのに必要な前後方向幅を確保できる。
【0014】
本発明の第4の側面では、前記ハウジングは、前記上壁及び前記下壁の間において前記前後方向にそれぞれ延在し、かつ前記左右方向に所定の間隔で配置された複数の内壁(49)を有し、前記複数の内壁は、前記各端子収容室の左右の側壁を構成し、かつ前記リテーナ挿入孔の一部を構成する切欠き部(59)をそれぞれ有し、前記複数の内壁のうち前記リテーナの前記挿入側部に対向する内壁における前記切欠き部(59A)は、前記リテーナの前記基部に対向する内壁における前記切欠き部(59B)よりも小さな前後方向幅を有する構成とする。
【0015】
これによると、挿入側部および基部に対応するように、前後方向幅の異なる切欠き部を有する内壁を設けることにより、前後方向幅がより小さいリテーナの挿入側部および前後方向幅がより大きいリテーナの基部をそれぞれ安定的に保持できる。
【0016】
本発明の第5の側面では、前記リテーナにおいて、前記挿入側部には、前記突起の内側に配置され、前記挿入側部を上下方向に貫通する長孔(87)が設けられている構成とする。
【0017】
これによると、リテーナの突起と長孔との間の部位の変形が容易となるため、突起がハウジングの係止部に対して容易に係止される。
【0018】
本発明の第6の側面では、前記リテーナの前記突起と前記長孔との間には、前記突起が前記係止部に係止される際に弾性変形する弾性変形部(89)が形成され、前記弾性変形部の上下方向幅は、前記挿入側部全体における上下方向幅の最大値よりも小さい構成とする。
【0019】
これによると、弾性変形部の上下方向幅が挿入側部全体における上下方向幅の最大値よりも小さいため、挿入側部の剛性を極力確保しつつ、リテーナの突起と長孔との間の弾性変形部の変形が阻害されることを回避できる。
【0020】
本発明の第7の側面では、前記リテーナは、前記複数の金属端子を係止する端子係止部を有し、前記端子係止部(83、93)は、前記左右方向に直交する断面において前記端子収容室側かつ前方に突出する部位をなす構成とする。
【0021】
これによると、上壁又は下壁の内面側に設けられた溝に、リテーナの被係止部を係止する係止部が形成された場合でも、リテーナ挿入孔の過度の拡大(すなわち、ハウジングの剛性の低下)を抑制しつつ、リテーナによって金属端子を安定的に係止することができる。
【0022】
本発明の第8の側面では、前記ハウジングにおいて前記溝が形成された前記上壁又は前記下壁の前記左右方向の中間部には、前記ハウジングの内側に変位することにより、前記電気コネクタと対をなす他の電気コネクタのハウジングを係止するハウジング係止部(61)が形成され、前記リテーナの前記溝に対向する側における前記左右方向の中間部には、前記ハウジング係止部に対応するように配置された凹部(95)が形成されている構成とする。
【0023】
これによると、電気コネクタが対をなす他の電気コネクタと接続する際に、リテーナによってハウジング係止部の内側への変位(すなわち、電気コネクタと他の電気コネクタとの接続)が阻害されることを回避できる。
【0024】
本発明の第9の側面では、前記金属端子は、雄型の金属端子(11)に接続可能な雌型の金属端子(31)であり、前記ハウジングは、前記雄型の金属端子を保持する雄側のハウジング(13)に接続可能な雌側のハウジング(33)である構成とする。
【0025】
これによると、リテーナと金属端子とが係合するための構造を、雌型の金属端子により容易に確保できるため、リテーナを備えた電気コネクタの構造が簡易となる。
【0026】
本発明の第10の側面では、上記第1から第9の側面のいずれか1つに係る電気コネクタ(5)と、前記電気コネクタと接続可能に設けられた他の電気コネクタ(3)と、を備えた電気コネクタ対(1)とする。
【0027】
これによると、電気コネクタ対を構成する電気コネクタにおいて、上壁又は下壁の内面側に設けられた溝に、リテーナの被係止部を係止する係止部が形成されているため、ハウジングに対するリテーナの保持強度を安定的に確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
このように本発明によれば、建造物において、ルーバー材を所定位置に簡易に取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図5】リテーナ35の(A)上面側の斜視図および(B)下面側の斜視図
【
図6】
図5(A)に示したリテーナ35のVI-VI線断面図
【
図7】雌側ハウジング33に対するリテーナ35の装着動作を示す説明図(雌側ハウジング33は、
図3のVII-VII線断面に相当する。)
【
図8】雌側ハウジングに対するリテーナの装着動作を示す説明図(雌側ハウジング33は、
図3のVIII-VIII線断面に相当する。)
【
図9】リテーナ35による雌端子31の保持状態を示す(A)
図3のIXa-IXa線断面図および(B)
図3のIXb-IXb線断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る電気コネクタ及びこれを備えた電気コネクタ対について図面を参照しながら説明する。説明の便宜上、
図1等に矢印で示すように上下、前後、及び左右の方向を定める。ただし、実際に使用される電気コネクタ及びこれを備えた電気コネクタ対の配置は、それらの方向には限定されない。
【0031】
図1に示すように、電気コネクタ対1は、電線同士や、電線および電気器具(回路基板等)などを電気的に接続する器具である。電気コネクタ対1は、互いに接続可能な雄側コネクタ3および雌側コネクタ5(電気コネクタ)を備える。
【0032】
雄側コネクタ3は、複数の雄型の金属端子(以下、雄端子という。)11と、それら雄端子11を収容する樹脂製の雄側ハウジング13と、を有する。
【0033】
複数の雄端子11は、それぞれピン状の先端部11Aを有し、雄側ハウジング13内において列をなすように所定の間隔で配置される。
【0034】
雄側ハウジング13は、後側に略矩形の開口13Aを有する箱形の形状を有する。雄側ハウジング13は、その外殻をなす上壁15、下壁16、左壁17、右壁18、及び前壁19を有する。開口13Aは、上壁15、下壁16、左壁17、及び右壁18の後縁によって画成される。雄側ハウジング13は、その下壁16を回路基板21に当接させた状態で、取付金具23によって回路基板21に固定される。回路基板21は、複数の雄端子11に対して電気的に接続されている。なお、複数の雄端子11は、回路基板21の代わりに電線にそれぞれ接続されてもよい。
【0035】
雌側コネクタ5は、
図2にも示すように、複数の雌型の金属端子(以下、雌端子という。)31と、それら雌端子31を収容する樹脂製の雌側ハウジング33と、雌側ハウジング33に取り付けられる樹脂製のリテーナ35と、を有する。
【0036】
各雌端子31は、前側に位置する角形の筒状部31Aと、後側に位置する圧着部31Bとを有する。各圧着部31Bには電線34が接続されている。
【0037】
雌側ハウジング33は、略直方体状をなし、その外殻をなす上壁41、下壁42、前壁43(
図3参照)、後壁44、左壁45、右壁46、を有する。雌側ハウジング33は、雄側ハウジング13と接続可能な相補的構造を有する。雌側ハウジング33は、その一部(後部)を除いて雄側ハウジング13の開口13Aから雄側ハウジング13内に挿入されることにより、雄側ハウジング13と嵌合可能である。
【0038】
雌側ハウジング33には、複数の雌端子31がそれぞれ挿入される複数の端子収容室47が形成されている。各端子収容室47は、略直方体状をなす空間を有し、その空間は、前壁43および後壁44を貫通するように前後方向に延在する。各端子収容室47の上面および下面は、それぞれ上壁41および下壁42の内面によって概ね画定される。また、各端子収容室47の左右の側面は、上壁及び下壁の間において前後方向にそれぞれ延在する複数の内壁49、左壁45、及び右壁46のいずれかよって概ね画定される。つまり、上壁41及び下壁42は、複数の端子収容室47の上壁及び下壁として機能する。また、内壁49、左壁45、及び右壁46は、複数の端子収容室47の側壁としても機能する。
【0039】
雌側ハウジング33の左壁45には、リテーナ35が挿入されるリテーナ挿入孔51の挿入側の開口45Aが形成されている。リテーナ挿入孔51は、雌側ハウジング33内において左壁45から右壁46まで左右方向に延在する。左壁45に形成された開口45Aは、
図4にも示すように、四隅がR面取りされた略矩形をなす。
【0040】
リテーナ挿入孔51に関し、上壁41の内面側(下面側)には、左右方向に延び、かつリテーナ挿入孔51の一部(上部)を構成する溝53が形成されている。溝53は、上方に向けて凸状をなし、前側面53A、後側面53B、及び底面(ここでは、上側に位置する)53Cによって画定される。後側面53Bから前方に向けて突設された突起(係止部)55(以下、ハウジング突起55という。
図7(A)、(B)参照)は、リテーナ35に形成された突起(被係止部)57(以下、リテーナ突起57という。)を係止する。ハウジング突起55は、それぞれ矩形状をなす傾斜面55A、平行面55B、及び垂直面55Cを有する。傾斜面55Aは、その左縁が後側面53Bに接続され、その左縁から右前方に(すなわち、後側面53Bに対して斜めに)延びる。平行面55Bは、傾斜面55Aの右縁に連なり、後側面53Bと平行に右方に延びる。垂直面55Cは、平行面55Bの右縁に連なり、後側面53Bに対して垂直に延びることにより、その右縁が後側面53Bに接続される。
【0041】
このように、上壁41の内面側に設けられた溝53に、リテーナ突起57を係止するハウジング突起55が形成されているため、雌側ハウジング33に対するリテーナ35の保持強度が安定的に確保される。また、溝53の後側面53B(底面53C以外)にハウジング突起55が形成される(すなわち、上壁41の厚み方向に突出しない)ため、溝53におけるハウジング突起55の形成が雌側ハウジング33の上壁41の厚みに影響を及ぼすことを回避できる。なお、溝53は、下壁42の内面側(ここでは、上側に位置する)に形成されてもよい。また、ハウジング突起55は、前側面53Aから後方に向けて突設されてもよい。
【0042】
また、リテーナ挿入孔51に関し、各内壁49はリテーナ35の一部(下部)の断面形状に対応するように形成された切欠き部59を有する。
【0043】
雌側ハウジング33の右壁46には、リテーナ35の先端を露出する開口46A(
図7(A)、(B)参照)が形成されている。ただし、右壁46の開口46Aは省略されてもよい。
【0044】
雌側ハウジング33の上壁41には、雄側ハウジング13における上壁15の内面側に設けられた係止部(図示しない開口または係止爪等)に係止される被係止爪(ハウジング係止部)61が設けられている。また、上壁41には、ユーザが、雄側ハウジング13に対して雌側ハウジング9を嵌合(電気的に接続)する際に、ユーザによって操作される操作片63(
図1参照)が設けられている。ユーザは、操作片63を下方に押圧することにより、上壁41における被係止爪61の周辺を雌側ハウジング33の内側(下方)に変位させて、雄側ハウジング13の係止部による被係止爪61の係止を容易とする。リテーナ挿入孔51の上方に位置する上壁41の一部には、開口41A(
図2参照)が設けられている。開口41Aにより、溝53の底面53Cの一部が切り欠かれる。ユーザは、開口41Aによってリテーナ挿入孔51に対するリテーナ35の挿入状況を確認することができる。
【0045】
雌側ハウジング33の下壁42には、雌端子31の後方への移動を規制する(すなわち、端子収容室47からの離脱を防止する)複数の弾性係止爪65(
図9(A)、(B)参照)が設けられている。各弾性係止爪65は、略上下方向に変位可能に設けられており、各雌端子31が正規の収容位置(すなわち、端子収容室47に各雌端子31が完全に挿入された状態)にある場合に、その筒状部31Aの底壁に形成された開口に挿入される。
【0046】
リテーナ35は、雌側ハウジング33の端子収容室47に挿入された複数の雌端子31を保持する。より詳細には、リテーナ35は、雌側ハウジング33のリテーナ挿入孔51に挿入された状態で、正規の収容位置にある各雌端子31と係合することにより、各雌端子31の後方への移動を規制する。これにより、各雌端子31の後方への移動は、雌側ハウジング33の弾性係止爪65およびリテーナ35によって二重に規制される。
【0047】
リテーナ35は、
図5(A)、(B)にも示すように、雌側ハウジング33の挿入側に位置する挿入側部71と、挿入側部71の後方に連なる基部73と、基部73の後端に形成されたフランジ部75とを有する。
【0048】
挿入側部71は、
図5(B)に示すように、上段部81、中段部82、及び下段部(端子係止部)83を有する。上段部81の後面81Aには、ハウジング突起55に係止されるリテーナ突起57が突設されている。リテーナ突起57は、それぞれ矩形状をなす傾斜面57A、平行面57B、及び垂直面57Cを有する。傾斜面57Aは、その右縁が後面81Aに接続され、その右縁から左後方(すなわち、後面81Aに対して斜めに)に延びる。平行面57Bは、傾斜面57Aの左縁(挿入方向後方)に連なり、後面81Aと平行に左方に延びる。垂直面57Cは、平行面57Bの左縁に連なり、後面81Aに対して垂直に延びることにより、その左縁が後面81Aに接続される。
【0049】
また、上段部81における係止突起85の内側(前方)には、上段部81を上下方向に貫通する長孔87が設けられている。これにより、リテーナ突起57と長孔87との間の部位は、リテーナ突起57がハウジング突起55に係止される際に弾性変形する弾性変形部89として機能する。弾性変形部89(すなわち、上段部81)の上下方向幅は、
図6にも示されるように、挿入側部71全体における上下方向幅の最大値よりも小さい。これにより、挿入側部71の剛性を極力確保しつつ、リテーナ突起57と長孔との間の弾性変形部89の変形が阻害されることを回避できる。
【0050】
長孔87の前縁87Aは、中段部82の後面82Aを超えて更に前方に到っており、これにより、長孔87は、リテーナ35の下方から見た場合(
図5(B)参照)には、上方から見た場合(
図5(A)参照)よりも小さい前後方向幅を有する。このような構成により、挿入側部71の剛性を中段部82によって確保しつつ、弾性変形部89(すなわち、上段部81)の厚みをより小さく、かつ長孔87の前後方向幅をより大きくする(すなわち、ハウジング突起55との係合時にリテーナ突起57を変位し易くする)ことができる。
【0051】
挿入側部71において、中段部82は、上段部81よりも狭い前後方向幅を有する。また、下段部83は、リテーナ35の左右方向に直交する断面(
図9(B)参照)において、中段部82から、端子収容室47側(下方)かつ前方に突出するように形成されている。下段部83は、中段部82よりも狭い前後方向幅を有する。このような下段部83の構成により、上壁41の内面側に設けられた溝53にリテーナ突起57が形成されている場合でも、リテーナ挿入孔51の過度の拡大(すなわち、雌側ハウジング9の剛性の低下)を抑制しつつ、リテーナ35によって雌端子31を安定的に係止することができる。
【0052】
基部73は、
図5(A)に示すように、上段部91、中段部92及び下段部(端子係止部)93を有する。上段部91は、挿入側部71の上段部81の左方(挿入方向後方)に連なる。中段部92は、挿入側部71の中段部82の左方に連なる。中段部92は、挿入側部71の中段部82よりも広い前後方向幅を有する。下段部93は、挿入側部71の下段部83の左方に連なる。
【0053】
リテーナ突起57を含む挿入側部71は、平面視において基部73よりも狭い前後方向幅を有する。これにより、雌側ハウジング33に係止されるリテーナ35の被係止部としてリテーナ突起57を設ける場合でも、リテーナ35の前後方向幅の増大を抑制しつつ、基部73においてリテーナ35が雌側ハウジング33に対して安定的に保持するのに必要な前後方向幅を確保できる。ただし、リテーナ突起57を含む挿入側部71の平面視における前後方向幅は、必要に応じて基部73の前後方向幅よりも大きく設定されてもよい。
【0054】
フランジ部75は、雌側ハウジング9の開口43Aに嵌め込み可能であり、その外縁は、四隅がR面取りされた略矩形をなす。
【0055】
リテーナ35の上面における左右方向の中間部(挿入側部71および基部73の上面の一部)には、雌側ハウジング33にリテーナ35が装着された状態で、雌側ハウジング33の被係止爪61の位置に対応するように配置された凹部95が形成されている。これにより、雌側コネクタ5が雄側コネクタ3と接続する際に、リテーナ35によって雌側ハウジング33の被係止爪61の内側への変位が阻害されることを回避できる。
【0056】
次に、ユーザによる雌側ハウジング9に対するリテーナ35の装着動作(すなわち、リテーナ35による複数の雌端子31の係止動作)について説明する。
【0057】
ユーザ(図示せず)は、
図7(A)及び
図8(A)に示す状態から、リテーナ35を右方に移動させることによりリテーナ挿入孔51に対して挿入する。これにより、
図7(B)及び
図8(B)に示すように、リテーナ35がリテーナ挿入孔51に装着される。
【0058】
リテーナ挿入孔51に対するリテーナ35の挿入途中において、リテーナ突起57の傾斜面57Aが、ハウジング突起55の傾斜面55Aに当接する。その状態において、ユーザが更にリテーナ35を右方に押し込むことにより、リテーナ突起57は、内側(前方)に変位しつつ、ハウジング突起55を乗り越えるようにしてハウジング突起55の右方に移動する。これにより、リテーナ突起57の垂直面57Cが、ハウジング突起55の垂直面55Cに当接した状態となり、リテーナ35の左方への移動が規制される(すなわち、リテーナ35のリテーナ挿入孔51からの離脱が防止される)。
【0059】
図7(B)に示すように、リテーナ挿入孔51を構成する溝53の前後方向幅(前側面53Aおよび後側面53Bの間隔)は、リテーナ突起57を含めたリテーナ35(挿入側部71)の上段部81の前後方向幅と略同一か、または上段部81の前後方向幅よりも僅かに大きい。これにより、リテーナ突起57の傾斜面57Aが ハウジング突起55の傾斜面55Aに当接するまでは、リテーナ挿入孔51に対するリテーナ35の挿入が阻害されることはない。
【0060】
また、
図8(B)に示すように複数の内壁49のうち、リテーナ35の挿入側部71に対向する内壁49の切欠き部59Aは、基部73に対向する内壁49の切欠き部59Bよりも小さな前後方向幅を有する。リテーナ35の挿入側部71および基部73に対応するように、前後方向幅の異なる切欠き部59A、59Bを有する内壁49を設けることにより、前後方向幅がより小さいリテーナ35の挿入側部71および前後方向幅がより大きいリテーナの基部73をそれぞれ安定的に保持できる。
【0061】
雌側ハウジング33に対するリテーナ35の装着が完了すると、
図9(A)、(B)に示すように、雌端子31の筒状部31Aの後端にリテーナ35の下段部83または下段部93が当接することにより、雌端子31の後方への移動(すなわち、端子収容室47からの離脱)が防止される。
【0062】
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。上述の実施形態に示した電気コネクタ及びこれを備えた電気コネクタ対の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも当業者であれば本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 :電気コネクタ対
3 :雄側コネクタ
5 :雌側コネクタ(電気コネクタ)
9 :雌側ハウジング
11 :雄端子
13 :雄側ハウジング
15 :上壁
16 :下壁
17 :左壁
18 :右壁
19 :前壁
21 :回路基板
23 :取付金具
31 :雌端子(金属端子)
33 :雌側ハウジング
34 :電線
35 :リテーナ
41 :上壁
42 :下壁
43 :前壁
44 :後壁
45 :左壁
46 :右壁
47 :端子収容室
49 :内壁
51 :リテーナ挿入孔
53 :溝
53A:前側面
53B:後側面
53C:底面
55 :ハウジング突起
57 :リテーナ突起
59 :切欠き部
61 :被係止爪(ハウジング係止部)
63 :操作片
65 :弾性係止爪
71 :挿入側部
73 :基部
75 :フランジ部
81 :上段部
82 :中段部
83 :下段部(端子係止部)
85 :係止突起
87 :長孔
89 :弾性変形部
91 :上段部
92 :中段部
93 :下段部(端子係止部)
95 :凹部