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  • 特開-搖動式継手 図1
  • 特開-搖動式継手 図2
  • 特開-搖動式継手 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024693
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】搖動式継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/04 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
F16L27/04
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222630
(22)【出願日】2023-12-28
(62)【分割の表示】P 2019036098の分割
【原出願日】2019-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000151025
【氏名又は名称】株式会社タブチ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】西條 一樹
【テーマコード(参考)】
3H104
【Fターム(参考)】
3H104JA03
3H104KB09
3H104LA03
3H104LA12
3H104LA20
3H104LF03
3H104LF14
3H104LG03
3H104LG30
(57)【要約】
【課題】部品点数を削減しながら地震などの搖動に対応することができる搖動式継手である。
【解決手段】継手本体と、この継手本体に接続する継手パイプからなる搖動式継手である。継手本体は、長手方向中央部の通水孔と、この通水孔の側面から拡開して先端側内側に大径部を備え、継手パイプは継手本体側外面を球体部とし、この球体部から円筒部を延長しており、前記大径部に装着するとともに内周には前記球体部の曲率に合わせた負曲面部を有する球体部の規制リングを設け、前記球体部を前記負曲面部に対して搖動可能とした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体と、前記継手本体に接続する継手パイプとを備える搖動式継手であって、
前記継手本体は、
長手方向中央部の通水孔と、
前記通水孔の側面から拡開して先端側内側に設けられた大径部と、
を備え、
前記継手パイプは、
継手本体側外面に設けられた球体部と、
前記球体部から延長された円筒部と、
内面継手本体側にテーパ状に傾斜した段部と、
を備え、
前記継手パイプの内面は、水道管が前記段部まで挿通されるように形成され、
前記揺動式継手は、前記継手本体の大径部の内周側に装着され、当該内周側に前記球体部の曲率に合わせた負曲面部を有し、前記球体部を位置決めする規制リングを更に備え、
前記球体部を前記負曲面部に対して搖動可能としたことを特徴とする搖動式継手。
【請求項2】
前記球体部の先端は、外側の円弧面から切り落とした形状で終わっている請求項1記載の搖動式継手。
【請求項3】
前記球体部と、前記規制リングと、前記継手本体の拡開部によって形成される空間にOリングを設けた請求項1または2記載の搖動式継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道管などの継手に係り、特に継手前後の管同士が搖動した場合に、その搖動を吸収するための搖動式継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から水道配管において、配管パイプを継手で接続する際に地震やその他の振動を吸収するためにスイング式の配管継ぎ手が用いられることは公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-249894号公報
【特許文献2】特開2015-187499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら公知技術は、いずれも伸縮可撓性継手と称され、継手本体と継手パイプを接続した場合に、継手本体に対して継手パイプが一定量の範囲内で伸縮すると同時に、一定角度の範囲内で搖動することができるように構成されている。これは、地震などの上下振動が継手に加わった場合などに、継手本体と継手パイプをボールジョイントによって搖動させることに加えて、所定量以上の応力が加えられた場合に、継手本体に対する継手パイプが伸縮することによって応力を吸収しようとするものであった。
【0005】
これらの公知技術では、継手の構造に搖動のための構成と、伸縮のための構成を組み込む必要があるため、部品点数が多くなるという問題がある。また、伸縮のための構成と搖動のための構成を同じ箇所に集約する必要があるために、全体として大型化するという課題もあり、継手の大きさのために省スペース化を図ることが困難である。
【0006】
ところで、従来はこの種の継手では、地震などの振動を吸収する構造として、継手本体と継手パイプが搖動することと、両者が伸縮することを同時に行う必要があると考え、これを達成するための継手を開発してきた経緯がある。しかしながら、これらを両立させるためにはそれぞれの機能に応じた構造が必要になるので、結果として部品点数が多くなるという問題がある。つまり、これら双方の機能はそれぞれ別の動きに対応するものであるため、採用する部材を共通化できるところは少ない。
【0007】
一方、地震の震動はP波が最初に到達し、続いてS波が到達するものである。そして、P波そのものは微振動であることが多く、これに続くS波の振動がP波よりはるかに大きく、エネルギーが大きいが、あまりエネルギーが大きい場合には継手構造として搖動と伸縮の双方を利用しても吸収することはできず、継手が破壊されてしまう。つまり、大きい地震にはたとえ搖動メカニズムと収縮メカニズムを同時に適用した場合でも継手が破壊せずに応力を吸収することはできない。そうであれば、構造的に複雑になる公知の伸縮継手よりも、伸縮機能を省略して搖動機能のみで中規模までの地震に対応する構成のほうが部品点数も省略することができる。発明者はこの点に着目し、部品点数を削減して地震などの搖動に対応することができる搖動式継手を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の搖動式継手ではこれらの目的を達成するために、継手本体と、この継手本体に接続する継手パイプを基本的な構成とした。そして、継手本体は、長手方向中央部の通水孔と、この通水孔の側面から拡開して先端側内側に大径部を備え、前記継手パイプは継手本体側外面を球体部とし、この球体部から円筒部を延長しており、前記大径部の内周側に装着するとともに内周には前記球体部の曲率に合わせた負曲面部を有する球体部の規制リングを設け、前記球体部を前記負曲面部に対して搖動可能とするという手段を用いた。この構成では、継手本体に対して継手パイプを接続するために締め込みリングを用いており、3つの部品だけで搖動式の継手を完成することができる。
【0009】
また、球体部の先端は、外側の円弧面から切り落とした形状で終わらせたという手段も用いた。ここでは、例えば特許文献2のように円弧状の構成より継手本体側に直管状のパイプが突出することはないので、継手パイプを搖動させた場合でも余分なスペースを必要とせず、省スペース化が可能となる。
【0010】
さらに、止水を目的として、球体部と、締め込みリングと、継手本体の拡開部によって形成される空間にOリングを設けるという手段を用いた。従来、Oリングによる止水には、止水箇所に応じた数のOリングを用いていたが、本発明では2箇所の止水箇所を1個のOリングで同時に止水するので、部品点数の削減に寄与する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、上記手段を採用したので、少ない部品点数で継手本体に対する継手パイプの搖動を許容することになる。また、Oリングを1個だけとすることによってさらに部品点数を抑制することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の搖動式継手の斜視図。
図2】同、分解組図。
図3】同、半截縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付した図面に従って説明する。図1は本発明の搖動式継手の一形態を示す斜視図、図2は当該継手を構成する部材を分解して示した斜視図であって、1は長手方向中央部に通水路が形成された継手本体、2は継手パイプであり、基本的にはこれら2つの部材を組み合わせて本発明の搖動式継手を構成する。継手パイプ2は、直管状の円筒部3と、その継手本体1側には球体部4を有する構成であり、円筒部3と球体部4は一体である。なお、長手方向中央部には通水路5が設けられている。6は、継手本体1と継手パイプ2の管に挟まれて止水をするためのOリングである。7は、その外ネジ部7aが継手本体1の拡開部の先端側に形成された大径部1aに螺合し、継手パイプ2を継手本体1に結合するための締め込みリングであり、内面は継手パイプ2の球体部4の曲率に合わせた負の曲率を有する負曲面部7bを有している。8は継手本体1と継手パイプ2、および締め込みリング7などにゴミやほこりが侵入することを防止するための軟質樹脂製のブーツである。
【0014】
図3は上記構成を組み立てたところを示す半截断面図であって、継手本体1に対して継手パイプ2を挿通し、締め込みリング7を継手本体1に対して螺合する。この場合、締め込みリング7を締めこんでいくと、締め込みリング7の先端部が継手本体1の突合部9に当接すると同時に、継手パイプ2の球体部4は継手本体1の内面拡開部10に当接した状態で保持される。そして、締め込みリング7の内面の負曲面部7bと継手本体1の内面拡開部10の2箇所によって継手パイプ2の球体部4が支持されているので、継手パイプ2は継手本体1に対して搖動が許容される。本実施形態の構造では、継手パイプ2の搖動角度は矢印AとBで示したように、±8度に設計されている。±8度程度に搖動を許容すれば、通常の地震による縦振動であれば十分に吸収することが可能である。なお、±8度の搖動角度は本実施形態におけるものであり、さらに大きい搖動角度に設計することも可能である。ただし、この場合には全体構造は大型化するが、基本的な構成は本実施形態と変わるところはない。
【0015】
なお、球体部4を締め込みリング7の負曲面部7bと継手本体1の内面拡開部10の2箇所で支持するのは、継手パイプ2の搖動に際してガタツキを抑えることと、スムーズな搖動を行うためである。ただし、負曲面部7bだけで確実に支持することができるのであれば、内面拡開部10による支持を省略することも可能である。ところで、本実施形態では締め込みリング7と大径部1aの結合はネジによる螺合としているが、必要なことは締め込みリングと大径部が確実に結合され、球体部4を正確に位置決めできることであり、例えば双方を嵌合させたりすることも本発明の範囲に含まれる。すなわち、締め込みリング7は球体部4の規制リングとして機能することで十分である。また、11は継手パイプ2の内面継手本体側に形成された段部であり、塩化ビニルパイプを直接挿通した場合にこの段部11まで挿通することによって確実に塩化ビニルパイプを装着することができる。そのため、従来では必要であった塩化ビニルソケットなどの他の部品を必要とすることがない。
【0016】
ところで、本実施形態の構成では内側を流れる水道水などの流体が不用意に漏えいする箇所は、継手パイプ2の球体部4と締め込みリング7の接触面と、継手本体1の大径部1aと締め込みリング7の螺合部の2箇所である。そこで、これらの両方を同時にシールするためにOリング6が一か所に設けられている。すなわち、本実施形態の搖動式継手では、1つのOリング6によって2箇所のシールを達成している。これによって、精度の高い止水を行うと同時に、部品点数を削減し、部品管理を容易としている。
【0017】
本実施形態に示した搖動式継手は、一例を示したものであって、搖動角度をさらに大きくするために球体部4を大きくし、さらに継手本体1の内面拡開部10の球体部4に対する接触長さを長くすることについては設計変更の一部であって、本発明の想定する範囲である。
【符号の説明】
【0018】
1 継手本体
2 継手パイプ
3 円筒部
4 球体部
6 Oリング
7 締め込みリング
9 突合部
10 内面拡開部
11 段部
図1
図2
図3