(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024695
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】誤配送防止システム、管理コンピュータ、作業者端末装置、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20240215BHJP
B65G 69/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B65G1/137 A
B65G69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002813
(22)【出願日】2024-01-11
(62)【分割の表示】P 2022111858の分割
【原出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】515237061
【氏名又は名称】株式会社LIFE
(71)【出願人】
【識別番号】521460985
【氏名又は名称】株式会社ロンコ・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100121371
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 和人
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛之
(57)【要約】
【課題】パレットの誤配を確実に防止でき、荷台へのパレット搬入作業効率の低下を招かない誤配送防止技術の提供。
【解決手段】業者に携帯され、眼鏡型デバイスと接続された作業者端末装置と、眼鏡型デバイスが撮影する前景映像から、各パレットと対応づけられた各パレットオブジェクトのうち、輸送車の荷台に次に運搬すべきパレットのオブジェクトを指示する拡張現実コンテンツを生成するARコンテンツ生成手段と、ARコンテンツ生成手段により生成される拡張現実コンテンツを、眼鏡型デバイスに表示するARコンテンツ表示手段とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物流拠点の出荷ヤードに仮置きされたパレットを、輸送車の荷台に搬入する際に、輸送先の誤ったパレットを輸送車の荷台に搬入することにより生じる誤配送を防止する誤配送防止システムであって、
前記出荷ヤードに仮置きされる各パレットに付されたRFタグであるパレットタグと、
各パレットを輸送車の荷台に運搬する荷役作業を行う各作業者に付されたRFタグである作業者タグと、
前記出荷ヤードの各所に複数設置され、前記各パレットタグ及び前記各作業者タグとの間で電波の送受信を行う、フェーズドアレイ型のアンテナである天井アンテナと、
前記各天井アンテナにより、前記各パレットタグ及び前記各作業者タグと通信を行い、これらのRFタグに記憶されたの識別情報を読み取るとともに、前記各天井アンテナに対する該RFタグの後方散乱電波の到来方向を検出する天井リーダと、
前記各作業者に装着される眼鏡型のデバイスであって、拡張現実の表示処理を行う眼鏡型デバイスと、
前記各作業者に携帯され、前記眼鏡型デバイスと接続され又は前記眼鏡型デバイスと一体に構成された作業者端末装置と、
前記天井リーダ及び前記作業者端末装置と通信回線を介して接続された一乃至複数の管理コンピュータと、を備え、
前記眼鏡型デバイスは、
透過風景に重ねて拡張現実コンテンツの表示を行うレンズ型ディスプレイと、
該眼鏡型デバイスの姿勢情報を検出するセンサである姿勢情報検出手段と、
該眼鏡型デバイスの前景画像を撮影する撮影手段と、を備えており、
前記管理コンピュータは、
前記作業者端末装置を所持するそれぞれの作業者に対して、該作業者が、該作業者が担当する輸送車の荷台に、次に運搬するパレットを指定する運搬パレット指定手段と、
前記各天井アンテナの設置位置、並びに前記天井リーダにより検出される、前記各作業者タグ及び前記各パレットタグの識別情報及び前記各天井アンテナに対する到来方向に基づき、前記各作業者タグ及び前記各パレットタグの位置を推定するタグ位置推定手段と、を備え、
前記管理コンピュータ又は前記作業者端末装置は、
前記作業者端末装置を所持するそれぞれの作業者に対し、前記タグ位置推定手段により推定された該作業者の前記作業者タグの位置情報、及び該作業者の前記眼鏡型デバイスの前記姿勢情報検出手段により検出される姿勢情報、並びに前記タグ位置推定手段により推定された前記各パレットタグの位置に基づき、該作業者の視界前方に存在する前記パレットタグに対応するパレットを選択する周辺パレット選択手段と、
前記眼鏡型デバイスの前記撮影手段により撮影される前景画像から、個々のパレットの画像であるパレットオブジェクトを抽出するパレットオブジェクト抽出手段と、
前記眼鏡型デバイスの姿勢情報検出手段が検出する前記眼鏡型デバイスの姿勢情報、前記タグ位置推定手段により推定された該作業者の前記作業者タグの位置情報、及び前記周辺パレット選択手段により選択される前記各パレットの前記パレットタグの位置情報に基づき、前記パレットオブジェクト抽出手段が抽出する前記各パレットオブジェクトと前記各パレットとを対応づける前景内パレット特定手段と、
前記前景内パレット特定手段により前記各パレットと対応づけられた前記各パレットオブジェクトのうち、前記運搬パレット指定手段により指定された、輸送車の荷台に次に運搬すべきパレットのオブジェクトを指示する拡張現実コンテンツを生成するARコンテンツ生成手段と、を備え、
前記作業者端末装置は、
前記ARコンテンツ生成手段により生成される拡張現実コンテンツを、前記レンズ型ディスプレイに表示するARコンテンツ表示手段
を備えたことを特徴とする誤配送防止システム。
【請求項2】
運搬パレット指定手段は、前記作業者端末装置を所持するそれぞれの作業者に対して、該作業者が、該作業者が担当する輸送車の荷台に、次以降に運搬するパレットの順序を指定するものであり、
前記ARコンテンツ生成手段は、前記前景内パレット特定手段により前記各パレットタグと対応づけられた前記各パレットオブジェクトのうち、前記運搬パレット指定手段により指定された、輸送車の荷台に次以降に運搬すべきパレットのオブジェクトの順序を指示する拡張現実コンテンツを生成するものであることを特徴とする請求項1記載の誤配送防止システム。
【請求項3】
前記タグ位置推定手段は、
或る識別情報kの前記各作業者タグ又は前記各パレットタグであるRFタグkからの後方散乱電波を受信した前記天井アンテナをA
i(i=1,…,N
k;N
k≧2)とし、
予め計測され設定されている、前記天井アンテナA
iの設置位置の中心座標を(a
ix,a
iy,a
iz)とし、
前記天井リーダにより、前記天井アンテナA
iで検出される前記RFタグkからの後方散乱電波の到来方向ベクトルを(α
ki,β
ki,γ
ki)(但し、α
ki
2+β
ki
2+γ
ki
2=1)とするとき、
前記RFタグkの推定位置の位置座標(x
k,y
k,z
k)を
【数1】
により算出するものであることを特徴とする
請求項1記載の誤配送防止システム。
【請求項4】
前記作業者端末装置は、
前記眼鏡型デバイスの前記姿勢情報検出手段により検出される該眼鏡型デバイスの加速度及び角速度の情報に基づき、慣性航法により該眼鏡型デバイスを装着する作業者の推定位置である慣性航法推定位置の算出を行う慣性航法位置推定手段を備え、
前記タグ位置推定手段は、前記各作業者タグの位置の推定については、
或る識別情報kの前記各作業者タグであるRFタグkからの後方散乱電波を受信した前記天井アンテナをA
i(i=1,…,N
k;N
k≧2)とし、
予め計測され設定されている、前記天井アンテナA
iの設置位置の中心座標を(a
ix,a
iy,a
iz)とし、
前記天井リーダにより、前記天井アンテナA
iで検出される前記RFタグkからの後方散乱電波の到来方向ベクトルを(α
ki,β
ki,γ
ki)(但し、α
ki
2+β
ki
2+γ
ki
2=1)とし、
該作業者タグが付された作業者が装着する前記作業者端末装置の前記慣性航法位置推定手段により推定される該作業者の前記慣性航法推定位置を(a
0x,a
0y,a
0z)とし、
(a
0x,a
0y,a
0z)及び(a
ix,a
iy,a
iz)(i=1,…,N
k;N
k≧2)に対して重み定数を、それぞれw
0,w
1,…,w
Nkとするとき、
前記RFタグkの推定位置の位置座標(x
k,y
k,z
k)を
【数2】
により算出するものであることを特徴とする
請求項3記載の誤配送防止システム。
【請求項5】
前記周辺パレット選択手段は、前記作業者端末装置を所持するそれぞれの作業者に対し、前記タグ位置推定手段により推定された該作業者の前記作業者タグの位置、及び該作業者の前記眼鏡型デバイスの前記姿勢情報検出手段により検出される姿勢情報、並びに前記タグ位置推定手段により推定された前記各パレットタグの位置に基づき、該作業者の視界前方及び該作業者の所定の距離以内の近傍に存在する前記パレットタグに対応するパレットを選択するものであり、
前記管理コンピュータは、
前記タグ位置推定手段により推定される該作業者の前記パレットタグ及び前記作業者タグの位置情報に基づき、前記パレットタグ及び前記作業者タグの経時的な移動方向及び移動量を検出するタグ移動検出手段と、
前記タグ移動検出手段により検出される、前記各パレットタグ及び前記各作業者タグの経時的な移動方向及び移動量、及び前記周辺パレット選択手段に検出される、前記各作業者タグの近傍に存在する前記パレットタグの情報に基づき、前記各作業者タグに対応する作業者が運搬中のパレットを特定する運搬中パレット特定手段と、
前記各作業者タグに対応する各作業者に対して、前記運搬中パレット特定手段が特定する運搬中のパレットの輸送先と、該作業者が担当する輸送車の輸送先を照合し、両輸送先が異なる場合には、該作業者の特定情報を含む誤運搬情報を出力する誤配送検出手段と、を備え
前記ARコンテンツ生成手段は、前記誤配送検出手段により誤運搬情報が出力された場合、該誤運搬情報により特定される作業者のARコンテンツ表示手段に表示する拡張現実コンテンツとして、現在運搬中のパレットの輸送先が誤っている旨の警告を表示する拡張現実コンテンツを生成するものであること
を特徴とする請求項1記載の誤配送防止システム。
【請求項6】
前記出荷ヤードの一端に複数設けられた、輸送車の荷台後部のテールゲートが接続する出荷ゲートのそれぞれに対し、該出荷ゲートの床面に固定して設けられたRFタグであるゲートタグと、
前記出荷ゲートに接続する各輸送車の荷台のテールゲート上方の天井部に設けられ、RFタグと通信を行い、これらのRFタグに記憶されたの識別情報を読み取り、該RFタグの識別情報を該輸送車の識別情報と共に通信回線を介して前記管理コンピュータに送信する荷台リーダと、を備え、
前記管理コンピュータは、
各輸送車の行先情報を該輸送車の識別情報と関連付けて記憶する輸送車情報記憶手段と、
各パレットの行先情報及び該パレットの位置情報を、該パレットの識別情報と関連付けて記憶するパレット情報記憶手段と、
前記出荷ゲートに接続した輸送車の荷台に搬入すべき一乃至複数のパレットの識別情報、位置情報及び運搬順序を、該輸送車に対する出庫タスクとして、該輸送車の識別情報と関連付けて記憶する出庫タスク記憶手段と、
前記出庫タスク記憶手段に記憶された前記出庫タスクのうち、前記作業者端末装置を所持するそれぞれの作業者が担当する前記出庫タスクを、該作業者の識別情報と関連付けて記憶する作業者ジョブ記憶手段と、
前記出荷ゲートに接続した或る輸送車の前記荷台リーダから、該輸送車の識別情報c及び前記ゲートタグの識別情報gを受信した場合、前記輸送車情報記憶手段から、該輸送車の識別情報cに対応する行先情報を取得する輸送車行先情報抽出手段と、
前記輸送車行先情報抽出手段により抽出された、識別情報cの輸送車の行先情報と同じ行先情報を有する一乃至複数のパレットの識別情報を、前記パレット情報記憶手段から取得し、該輸送車に対する前記出庫タスクとして、該輸送車の識別情報cと関連付けて前記出庫タスク記憶手段に保存する出庫タスク生成手段と、
前記出庫タスク生成手段により前記出庫タスク記憶手段に保存された該輸送車に対する前記出庫タスクに対し、該出庫タスクに属する各パレットの識別情報に対応するパレットの位置情報を、前記タグ位置推定手段から取得し、前記出庫タスク記憶手段に保存するとともに、取得した各パレットの位置情報に基づき、各パレットを該輸送車の荷台に運搬する運搬順序を決定し、前記出庫タスク記憶手段に保存するパレット運搬順序決定手段と、を備え、
前記運搬パレット指定手段は、
前記作業者端末装置を所持するそれぞれの作業者に対して、
該作業者の識別情報に対応する前記出庫タスクを前記作業者ジョブ記憶手段から取得し、
該出庫タスクに対応する一乃至複数のパレットの識別情報及び運搬順序を、前記出庫タスク記憶手段から取得し、
取得した一乃至複数のパレットの識別情報に対応する各パレットから、それらの運搬順序に従って、該作業者が、該作業者が担当する輸送車の荷台に、次に運搬するパレットを指定するものであること、
を特徴とする請求項1記載の誤配送防止システム。
【請求項7】
前記作業者端末装置は、
該作業者端末装置を所持する作業者の指示入力に従って、前記管理コンピュータに対し、作業者ジョブ登録要求を送信する作業者ジョブ登録要求手段を備え、
前記管理コンピュータは、
前記作業者端末装置から作業者ジョブ登録要求を受信すると、前記出荷ゲートに接続した各輸送車の前記荷台リーダにより取得されるRFタグの識別情報から、該作業者端末装置を所持する作業者に付された作業者タグの識別情報を探索し、該作業者タグの識別情報が取得された前記荷台リーダに対応する輸送車の識別情報を特定し、前記出庫タスク記憶手段に記憶された、該輸送車の識別情報に対応する前記出庫タスクを、該作業者端末装置を所持する作業者が担当する前記出庫タスクとして、前記作業者ジョブ記憶手段に保存する作業者ジョブ登録手段を備えたこと
を特徴とする請求項6記載の誤配送防止システム。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一に記載の誤配送防止システムに用いられる管理コンピュータであって、請求項1乃至7の何れか一に記載された管理コンピュータ。
【請求項9】
コンピュータに読み込ませて実行することにより、該コンピュータを、請求項7記載の管理コンピュータとして機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項1乃至7の何れか一記載の誤配送防止システムに用いられる作業者端末装置であって、請求項1乃至7の何れか一に記載された作業者端末装置。
【請求項11】
拡張現実の表示処理を行う眼鏡型デバイスに接続され、又は該眼鏡型デバイスに内蔵されたコンピュータに読み込ませて実行することにより、該コンピュータを、請求項10記載の作業者端末装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流拠点の出荷ヤードに仮置きされたパレットを、輸送車の荷台に搬出する際に、輸送先の誤ったパレットを輸送車の荷台に搬入することにより生じる誤配送を防止する誤配送防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
物流倉庫や配送センターなどの物流拠点では、建屋内に保管されている荷物を店舗、工場、他の物流拠点(以下「行先」という。)に向けて出荷する。この際、纏まった量の荷物を同じ行先に出荷する場合には、同じ行先の荷物を1つ乃至複数のパレット(カゴパレット、ボックスパレット、平パレット等)に纏めて収容し、パレット単位で出荷作業が行われる。出荷作業では、輸送車への積み込みを行う出荷ゲートの手前の出荷ヤードに、一旦、出荷するパレットを行先別毎に纏めて仮置きし、作業者が出荷ヤードのパレットを出荷ゲートに接続された輸送車の荷台に運搬して積み込む。このとき、作業者のヒューマンエラーにより、行先の誤ったパレットを輸送車の荷台に積み込むケースがあり、このニューマンエラーにより生じる誤配送が問題となっている。
【0003】
かかる誤配送を防止する技術としては、パレットや荷物にRFタグ(RFID(radio frequency identification)で用いられるICタグ)を付して出荷管理を行う技術が知られており、例えば、特許文献1~3に記載の技術が公知である。
【0004】
特許文献1には、荷物を運送する車両(T)の行先を示す行先情報を取得する行先情報取得部(131)と、複数の荷物が積載された収容器(100)(台車、パレット、箱体又はコンテナ等)が車両に乗せられてから車両が走行を開始するまでの間に車両に搭載された情報読取装置(2)において収容器に付された無線タグ(101)(RFタグ)から読み出された収容器識別情報を取得する識別情報取得部(132)と、収容器識別情報に基づいて特定される収容器に対応する地域と、行先情報が示す行先との関係が所定の条件を満たさない場合に警告情報を出力する情報出力部(134)とを有する収容器管理装置が記載されている。情報出力部は、例えば、収容器(100)の管理者の情報端末、又は収容器(100)のIDを送信した情報読取装置(2)が搭載された車両(T)の運転手が使用する情報端末に対して警告情報を送信する。これにより、収容器(100)が、割り当てられた地域(荷物の送り先)と異なる行先に向かう車両(T)に積み込まれたことを、管理者又は車両(T)の運転者が把握することが可能となり、収容器(100)が誤配送されるのを未然に防止できる。
【0005】
特許文献2に記載の配送管理システムは、トラックの荷台コンテナの搬出・搬入口又は開閉扉にRFIDリーダ(車載ユニット)のアンテナ(無線ICタグ読取アンテナ)を設置し、搬出・搬入口を通過する荷物に付されたRFタグ(無線ICチップ)の識別情報を、RFIDリーダで読み取るものである。このシステムでは、RFタグには、予め荷物に関する荷物情報を記憶させておき、RFIDリーダで読み取った荷物情報を、車載物流管理端末に送信し、荷台への荷物の搬入・搬出を監視することで、荷物の誤配送や配送漏れを防止する。
【0006】
特許文献3には、集配計画および該集配計画に沿った各荷役作業にかかる荷物情報を管理する物流管理サーバ(116)と、それぞれ車輌に付帯され、集配計画に沿った作業の実行を管理する複数のモバイル端末(130,140)とを含む、物流管理システムであって、各々のモバイル端末は、割り当てられた自身の集配計画に沿った現在の荷役作業の完了前に、当該モバイル端末を付帯する車輌の荷室内の荷物群の検品の指示を受け付ける荷室検品指示受付手段と、荷物に付された無線タグから無線タグリーダにより読み取られた荷物群の情報を、物流管理サーバが管理する荷物情報と照合する照合手段と、荷室内の検品の指示に基づく照合の結果、荷室内の荷物群が物流管理サーバで管理される状態と一致しなかった場合には、現在の荷役作業の完了状態への遷移を制限する制限手段とを備えた物流管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-51636号公報
【特許文献2】特開2008-30929号公報
【特許文献3】特開2014-214022号公報
【特許文献4】米国特許第10430623B1号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Redmon, Joseph, et al. "You only look once: Unified, real-time object detection." Proceedings of the IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition. (2016), arXiv:1506.02640.
【非特許文献2】Girshick, Ross, et al. "Rich feature hierarchies for accurate object detection and semantic segmentation." Proceedings of the IEEE conference on computer vision and pattern recognition. (2014), arXiv:1311.2524.
【非特許文献3】He, Kaiming, et al. "Spatial pyramid pooling in deep convolutional networks for visual recognition." IEEE transactions on pattern analysis and machine intelligence 37.9 (2015) pp.1904-1916, arXiv:1406.4729.
【非特許文献4】Girshick, Ross. "Fast R-CNN." Proceedings of the IEEE international conference on computer vision. (2015), arXiv:1504.08083.
【非特許文献5】Ren, Shaoqing, et al. "Faster R-CNN: Towards real-time object detection with region proposal networks." Advances in neural information processing systems. (2015), arXiv:1506.01497.
【非特許文献6】Liu, Wei, et al. "SSD: Single Shot MultiBox Detector." European conference on computer vision. Springer, Cham, (2016), arXiv:1512.02325.
【非特許文献7】Redmon, Joseph, and Ali Farhadi. "YOLO9000: better, faster, stronger." arXiv preprint (2016), arXiv:1612.08242.
【非特許文献8】Fu, Cheng-Yang, et al. "DSSD: Deconvolutional Single Shot Detector." arXiv preprint (2017), arXiv:1701.06659.
【非特許文献9】林和則,「狭帯域信号の到来方向推定」,電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review,8巻,3号,pp.143-150,2015年.
【非特許文献10】菊間信良,「アレーアンテナの基礎」,[online],令和4年6月22日検索,2010アジア・パシフィックマイクロ波会議付設 マイクロウェーブ展2010 MWE2009基礎講座データ集,<URL:https://apmc-mwe.org/MicrowaveExhibition2010/program/tutorial2009/TL03-01.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の誤配送防止システムは、何れも、輸送車の荷台に搬入された(又は搬入直前の)荷物やパレット(以下「パレット等」)に付されたRFタグの情報を、荷台に設置されたRFIDリーダで読み取り、各パレット等の行先を、輸送車の行先と照合して、行先の誤り(誤配送)を検出し、運転手や作業者に報知するものである。この場合、誤配送を報知された運転手や作業者は、行先の誤りのパレット等を荷台から降ろすことで、誤配送は防止できる。
【0010】
しかしながら、誤配送が報知されるたびに、行先の誤りのパレット等を荷台から降ろして、そのパレット等がもともと置いてあった場所に戻すのは、作業効率が悪く、労働生産性の低下を招く。また、パレット等を元の場所に戻す際に、戻し場所を誤って別の行先のパレット等置き場に戻すと、その後、連鎖的に行先の誤ったパレット等の積み込みを招くという問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、作業者のヒューマンエラーによるパレットの誤配送を確実に防止でき、且つ荷台へのパレット搬入作業の作業効率の低下を招くことのない誤配送防止技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る誤配送防止システムの第1の構成は、物流拠点の出荷ヤードに仮置きされたパレットを、輸送車の荷台に搬入する際に、輸送先の誤ったパレットを輸送車の荷台に搬入することにより生じる誤配送を防止する誤配送防止システムであって、
前記出荷ヤードに仮置きされる各パレットに付されたRFタグであるパレットタグと、
各パレットを輸送車の荷台に運搬する荷役作業を行う各作業者に付されたRFタグである作業者タグと、
前記出荷ヤードの各所に複数設置され、前記各パレットタグ及び前記各作業者タグとの間で電波の送受信を行う、フェーズドアレイ型のアンテナである天井アンテナと、
前記各天井アンテナにより、前記各パレットタグ及び前記各作業者タグと通信を行い、これらのRFタグに記憶されたの識別情報を読み取るとともに、前記各天井アンテナに対する該RFタグの後方散乱電波の到来方向を検出する天井リーダと、
前記各作業者に装着される眼鏡型のデバイスであって、拡張現実の表示処理を行う眼鏡型デバイスと、
前記各作業者に携帯され、前記眼鏡型デバイスと接続され又は前記眼鏡型デバイスと一体に構成された作業者端末装置と、
前記天井リーダ及び前記作業者端末装置と通信回線を介して接続された一乃至複数の管理コンピュータと、を備え、
前記眼鏡型デバイスは、
透過風景に重ねて拡張現実コンテンツの表示を行うレンズ型ディスプレイと、
該眼鏡型デバイスの姿勢情報を検出するセンサである姿勢情報検出手段と、
該眼鏡型デバイスの前景画像を撮影する撮影手段と、を備えており、
前記管理コンピュータは、
前記作業者端末装置を所持するそれぞれの作業者に対して、該作業者が、該作業者が担当する輸送車の荷台に、次に運搬するパレットを指定する運搬パレット指定手段と、
前記各天井アンテナの設置位置、並びに前記天井リーダにより検出される、前記各作業者タグ及び前記各パレットタグの識別情報及び前記各天井アンテナに対する到来方向に基づき、前記各作業者タグ及び前記各パレットタグの位置を推定するタグ位置推定手段と、を備え、
前記管理コンピュータ又は前記作業者端末装置は、
前記作業者端末装置を所持するそれぞれの作業者に対し、前記タグ位置推定手段により推定された該作業者の前記作業者タグの位置情報、及び該作業者の前記眼鏡型デバイスの前記姿勢情報検出手段により検出される姿勢情報、並びに前記タグ位置推定手段により推定された前記各パレットタグの位置に基づき、該作業者の視界前方に存在する前記パレットタグに対応するパレットを選択する周辺パレット選択手段と、
前記眼鏡型デバイスの前記撮影手段により撮影される前景画像から、個々のパレットの画像であるパレットオブジェクトを抽出するパレットオブジェクト抽出手段と、
前記眼鏡型デバイスの姿勢情報検出手段が検出する前記眼鏡型デバイスの姿勢情報、前記タグ位置推定手段により推定された該作業者の前記作業者タグの位置情報、及び前記周辺パレット選択手段により選択される前記各パレットの前記パレットタグの位置情報に基づき、前記パレットオブジェクト抽出手段が抽出する前記各パレットオブジェクトと前記各パレットとを対応づける前景内パレット特定手段と、
前記前景内パレット特定手段により前記各パレットと対応づけられた前記各パレットオブジェクトのうち、前記運搬パレット指定手段により指定された、輸送車の荷台に次に運搬すべきパレットのオブジェクトを指示する拡張現実コンテンツを生成するARコンテンツ生成手段と、を備え、
前記作業者端末装置は、
前記ARコンテンツ生成手段により生成される拡張現実コンテンツを、前記レンズ型ディスプレイに表示するARコンテンツ表示手段
を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、荷役作業を行う各作業者が装着する眼鏡型デバイスに、該作業者が担当する輸送車の荷台に、次に運搬すべきパレットを指示する拡張現実コンテンツが、現実の作業者の視界前景に重ねて表示されるため、作業者が輸送車の荷台に運搬するパレットを取り間違うヒューマンエラーを防止することができる。また、作業者が出荷ヤードに仮置きされたパレットを運搬し始める前にパレットを指示する拡張現実コンテンツが表示されるので、一度行先の誤りのパレットを輸送車の荷台に運搬した後にそのパレット等がもともと置いてあった場所に戻すといった無駄な作業が生じることがなく、労働生産性の低下を招くことがない。
【0014】
ここで、「パレット」(pallet)とは、ユニットロードシステムを推進するために用いられ、物品を荷役,輸送,及び保管するために単位数量に取りまとめて載せる面をもつもの(上部構造物をもつものを含む)をいう(JIS Z 0106, JIS Z 0111:2006, 1011, JIS Z 0106: 1997, 1001参照)。パレットには、カゴパレット(カゴ台車を含む)、ボックスパレット、平パレット、二方差しパレット、四方差しパレットなどの物流パレット全般が含まれる。「拡張現実」(Augmented Reality;AR)とは、現実世界にデジタルコンテンツを重ねて表示する技術のことをいう。「拡張現実コンテンツ」とは、眼鏡型デバイスのレンズ型ディスプレイに於いて、現実世界に重ねて表示する画像のデジタルデータをいう。「姿勢情報検出手段」としては、一般的に広く用いられている、9軸センサを用いた姿勢検出手段などを用いることが出来る。
【0015】
タグ位置推定手段が各パレットタグの位置を推定する手法としては、各天井アンテナの設置位置をアンカーポイント(位置が既知である点)、各パレットタグの位置をターゲットポイント(位置を求めたい対象点)として、アンカーポイントに対するターゲットポイントの方位ベクトル(到来方向ベクトル)から、最小二乗法(各アンカーポイントから方位ベクトルの向きに延びる半直線とターゲットポイントとの距離の二乗和を最小とするターゲットポイントの位置を求める方法)や最尤推定法(例えば、各方位ベクトルの誤差を正規分布と仮定した尤度関数を最大化するターゲットポイントの位置を求める方法)によりターゲットポイントの位置を推定する手法などを用いることが出来る。
【0016】
パレットオブジェクト抽出手段が前景画像からパレットオブジェクトを抽出する手法としては、例えば、YOLO(You only Look Once)(非特許文献1参照),R-CNN(非特許文献2参照),SPPnet(非特許文献3参照),Fast R-CNN(非特許文献4参照),Faster R-CNN(非特許文献5参照),SSD(非特許文献6参照),YOLOv2(非特許文献7参照),DSSD(非特許文献8 参照)などの、現在広く用いられているCNN(Convolutional Neural Network)を用いた各種の物体検出アルゴリズムを使用することが出来る。
【0017】
本発明に係る誤配送防止システムの第2の構成は、前記第1の構成に於いて、前記出荷ヤードに仮置きされる各パレットには、該パレットの前側に付された前パレットタグと、該パレットの後側に付された後パレットタグと、が前記パレットタグとして付されており、
前記前景内パレット特定手段は、前記眼鏡型デバイスの姿勢情報検出手段が検出する前記眼鏡型デバイスの姿勢情報、及び前記周辺パレット選択手段により選択される前記各パレットの前記前パレットタグ及び前記後パレットタグの位置情報によって特定される前記各パレットの中心位置及び向きに基づき、前記パレットオブジェクト抽出手段が抽出する前記各パレットオブジェクトと前記各パレットタグとを対応づけることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、各パレットの前パレットタグと後パレットタグの位置をタグ位置推定手段で推定することで、該パレットの中心位置と向きとを検出することができる。これにより、前景内パレット特定手段がパレットオブジェクトを抽出する際に、パレットの向きの情報も用いてオブジェクト抽出だできるので、より正確なパレットオブジェクトの抽出が可能となる。
【0019】
本発明に係る誤配送防止システムの第3の構成は、前記第1又は2の構成に於いて、運搬パレット指定手段は、前記作業者端末装置を所持するそれぞれの作業者に対して、該作業者が、該作業者が担当する輸送車の荷台に、次以降に運搬するパレットの順序を指定するものであり、
前記ARコンテンツ生成手段は、前記前景内パレット特定手段により前記各パレットタグと対応づけられた前記各パレットオブジェクトのうち、前記運搬パレット指定手段により指定された、輸送車の荷台に次以降に運搬すべきパレットのオブジェクトの順序を指示する拡張現実コンテンツを生成するものであることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、作業者の眼鏡型デバイスのレンズ型ディスプレイには、輸送車の荷台に次以降に運搬すべきパレットのオブジェクトの順序を指示する拡張現実コンテンツが、各パレットの現実世界の景観に重ねて表示される。従って、作業者は、AR表示で指示される順序に従ってパレットの運搬を行うことで、誤配送を防止できる。
【0021】
本発明に係る誤配送防止システムの第4の構成は、前記第1乃至3のいずれか一の構成に於いて、前記タグ位置推定手段は、
或る識別情報kの前記各作業者タグ又は前記各パレットタグであるRFタグkからの後方散乱電波を受信した前記天井アンテナをAi(i=1,…,Nk;Nk≧2)とし、
予め計測され設定されている、前記天井アンテナAiの設置位置の中心座標を(aix,aiy,aiz)とし、
前記天井リーダにより、前記天井アンテナAiで検出される前記RFタグkからの後方散乱電波の到来方向ベクトルを(αki,βki,γki)(但し、αki
2+βki
2+γki
2=1)とするとき、
前記RFタグkの推定位置の位置座標(xk,yk,zk)を
【0022】
【数1】
により算出するものであることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、タグ位置推定手段は、比較的精度良く各RFタグの位置推定を行うことができるとともに、ガウス消去法やガウス・ジョルダン法などによる逆行列計算は一定の計算量以内で逆行列計算を行うことができるため、ARで必要とされるリアルタイムでの各RFタグの位置推定に適する。
【0024】
本発明に係る誤配送防止システムの第5の構成は、前記第4の構成に於いて、
前記作業者端末装置は、
前記眼鏡型デバイスの前記姿勢情報検出手段により検出される該眼鏡型デバイスの加速度及び角速度の情報に基づき、慣性航法により該眼鏡型デバイスを装着する作業者の推定位置である慣性航法推定位置の算出を行う慣性航法位置推定手段を備え、
前記タグ位置推定手段は、前記各作業者タグの位置の推定については、
或る識別情報kの前記各作業者タグであるRFタグkからの後方散乱電波を受信した前記天井アンテナをAi(i=1,…,Nk;Nk≧2)とし、
予め計測され設定されている、前記天井アンテナAiの設置位置の中心座標を(aix,aiy,aiz)とし、
前記天井リーダにより、前記天井アンテナAiで検出される前記RFタグkからの後方散乱電波の到来方向ベクトルを(αki,βki,γki)(但し、αki
2+βki
2+γki
2=1)とし、
該作業者タグが付された作業者が装着する前記作業者端末装置の前記慣性航法位置推定手段により推定される該作業者の前記慣性航法推定位置を(a0x,a0y,a0z)とし、
(a0x,a0y,a0z)及び(aix,aiy,aiz)(i=1,…,Nk;Nk≧2)に対して重み定数を、それぞれw0,w1,…,wNkとするとき、
前記RFタグkの推定位置の位置座標(xk,yk,zk)を
【0025】
【数2】
により算出するものであることを特徴とする。
【0026】
この構成により、各作業者タグに関しては、より精度の高い位置推定が可能となる。
【0027】
本発明に係る誤配送防止システムの第6の構成は、前記第1乃至5の何れか一の構成に於いて、前記周辺パレット選択手段は、前記作業者端末装置を所持するそれぞれの作業者に対し、前記タグ位置推定手段により推定された該作業者の前記作業者タグの位置、及び該作業者の前記眼鏡型デバイスの前記姿勢情報検出手段により検出される姿勢情報、並びに前記タグ位置推定手段により推定された前記各パレットタグの位置に基づき、該作業者の視界前方及び該作業者の所定の距離以内の近傍に存在する前記パレットタグに対応するパレットを選択するものであり、
前記管理コンピュータは、
前記タグ位置推定手段により推定される該作業者の前記パレットタグ及び前記作業者タグの位置情報に基づき、前記パレットタグ及び前記作業者タグの経時的な移動方向及び移動量を検出するタグ移動検出手段と、
前記タグ移動検出手段により検出される、前記各パレットタグ及び前記各作業者タグの経時的な移動方向及び移動量、及び前記周辺パレット選択手段に検出される、前記各作業者タグの近傍に存在する前記パレットタグの情報に基づき、前記各作業者タグに対応する作業者が運搬中のパレットを特定する運搬中パレット特定手段と、
前記各作業者タグに対応する各作業者に対して、前記運搬中パレット特定手段が特定する運搬中のパレットの輸送先と、該作業者が担当する輸送車の輸送先を照合し、両輸送先が異なる場合には、該作業者の特定情報を含む誤運搬情報を出力する誤配送検出手段と、を備え
前記ARコンテンツ生成手段は、前記誤配送検出手段により誤運搬情報が出力された場合、該誤運搬情報により特定される作業者のARコンテンツ表示手段に表示する拡張現実コンテンツとして、現在運搬中のパレットの輸送先が誤っている旨の警告を表示する拡張現実コンテンツを生成するものであること
を特徴とする。
【0028】
この構成によれば、仮に作業者が誤ったパレットを運搬しようとした場合、パレットを動かし始めた初期段階で誤配送検出手段が誤運搬情報を出力し、拡張現実コンテンツとして、作業者の眼鏡型デバイスのレンズ型ディスプレイに、現在運搬中のパレットの輸送先が誤っている旨の警告が表示される。これにより、作業者が輸送車の荷台に運搬するパレットを取り間違うヒューマンエラーを、より確実に防止することができる。
【0029】
本発明に係る誤配送防止システムの第7の構成は、前記第1乃至6の何れか一の構成に於いて、前記出荷ヤードの一端に複数設けられた、輸送車の荷台後部のテールゲートが接続する出荷ゲートのそれぞれに対し、該出荷ゲートの床面に固定して設けられたRFタグであるゲートタグと、
前記出荷ゲートに接続する各輸送車の荷台のテールゲート上方の天井部に設けられ、RFタグと通信を行い、これらのRFタグに記憶されたの識別情報を読み取り、該RFタグの識別情報を該輸送車の識別情報と共に通信回線を介して前記管理コンピュータに送信する荷台リーダと、を備え、
前記管理コンピュータは、
各輸送車の行先情報を該輸送車の識別情報と関連付けて記憶する輸送車情報記憶手段と、
各パレットの行先情報及び該パレットの位置情報を、該パレットの識別情報と関連付けて記憶するパレット情報記憶手段と、
前記出荷ゲートに接続した輸送車の荷台に搬入すべき一乃至複数のパレットの識別情報、位置情報及び運搬順序を、該輸送車に対する出庫タスクとして、該輸送車の識別情報と関連付けて記憶する出庫タスク記憶手段と、
前記出庫タスク記憶手段に記憶された前記出庫タスクのうち、前記作業者端末装置を所持するそれぞれの作業者が担当する前記出庫タスクを、該作業者の識別情報と関連付けて記憶する作業者ジョブ記憶手段と、
前記出荷ゲートに接続した或る輸送車の前記荷台リーダから、該輸送車の識別情報c及び前記ゲートタグの識別情報gを受信した場合、前記輸送車情報記憶手段から、該輸送車の識別情報cに対応する行先情報を取得する輸送車行先情報抽出手段と、
前記輸送車行先情報抽出手段により抽出された、識別情報cの輸送車の行先情報と同じ行先情報を有する一乃至複数のパレットの識別情報を、前記パレット情報記憶手段から取得し、該輸送車に対する前記出庫タスクとして、該輸送車の識別情報cと関連付けて前記出庫タスク記憶手段に保存する出庫タスク生成手段と、
前記出庫タスク生成手段により前記出庫タスク記憶手段に保存された該輸送車に対する前記出庫タスクに対し、該出庫タスクに属する各パレットの識別情報に対応するパレットの位置情報を、前記タグ位置推定手段から取得し、前記出庫タスク記憶手段に保存するとともに、取得した各パレットの位置情報に基づき、各パレットを該輸送車の荷台に運搬する運搬順序を決定し、前記出庫タスク記憶手段に保存するパレット運搬順序決定手段と、を備え、
前記運搬パレット指定手段は、
前記作業者端末装置を所持するそれぞれの作業者に対して、
該作業者の識別情報に対応する前記出庫タスクを前記作業者ジョブ記憶手段から取得し、
該出庫タスクに対応する一乃至複数のパレットの識別情報及び運搬順序を、前記出庫タスク記憶手段から取得し、
取得した一乃至複数のパレットの識別情報に対応する各パレットから、それらの運搬順序に従って、該作業者が、該作業者が担当する輸送車の荷台に、次に運搬するパレットを指定するものであること、
を特徴とする。
【0030】
この構成によれば、或る輸送車Tが出荷ゲートに接続すると、輸送車Tの荷台のテールゲート上方の天井部に設けられた荷台リーダが、当該出荷ゲートのゲートタグを読み取って、ゲートタグの識別情報gを該輸送車の識別情報cと共に管理コンピュータに送信する。管理コンピュータは、該輸送車Tの識別情報c及び前記ゲートタグの識別情報gを受信すると、識別情報cの該輸送車Tの行先情報Dを取得し、行先情報Dと同じ行先情報を有するパレットの識別情報{p}を、パレット情報記憶手段から取得し、該輸送車Tに対する出庫タスクTk(T)として、これらのパレットの識別情報を、該輸送車Tの識別情報cと関連付けて出庫タスク記憶手段に保存する。これにより、輸送車Tに積み込むべきパレットの識別情報が、出庫タスクTk(T)として、出庫タスク記憶手段に記憶される。次いで、パレット運搬順序決定手段は、出庫タスクTk(T)に属する各パレットの識別情報{p}に対応するパレットの位置情報を、タグ位置推定手段から取得し、出庫タスクTk(T)に補完して出庫タスク記憶手段に保存する。また、パレット運搬順序決定手段は、各パレットの位置情報に基づき、各パレットを該輸送車Tの荷台に運搬する運搬順序を決定し、出庫タスクTk(T)に補完して出庫タスク記憶手段に保存する。これにより、出庫タスクTk(T)に属する各パレットの運搬順序情報と位置情報が、出庫タスク記憶手段に記憶される。従って、運搬パレット指定手段は、出庫タスク記憶手段に記憶された、出庫タスクTk(T)に属する各パレットの運搬順序情報に基づき、次に運搬するパレットを指定することができる。
【0031】
本発明に係る誤配送防止システムの第8の構成は、前記第7の構成に於いて、前記作業者端末装置は、
該作業者端末装置を所持する作業者の指示入力に従って、前記管理コンピュータに対し、作業者ジョブ登録要求を送信する作業者ジョブ登録要求手段を備え、
前記管理コンピュータは、
前記作業者端末装置から作業者ジョブ登録要求を受信すると、前記出荷ゲートに接続した各輸送車の前記荷台リーダにより取得されるRFタグの識別情報から、該作業者端末装置を所持する作業者に付された作業者タグの識別情報を探索し、該作業者タグの識別情報が取得された前記荷台リーダに対応する輸送車の識別情報を特定し、前記出庫タスク記憶手段に記憶された、該輸送車の識別情報に対応する前記出庫タスクを、該作業者端末装置を所持する作業者が担当する前記出庫タスクとして、前記作業者ジョブ記憶手段に保存する作業者ジョブ登録手段を備えたことを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、或る作業者Wが、荷物の搬入作業を行う輸送車Tの荷台の荷台リーダの近傍で、作業者端末装置を操作して作業者ジョブ登録要求を送信することで、その輸送車Tに係る出庫タスクTk(T)に、その作業者Wが関連付けられ、作業者Wが担当する出庫タスクTk(T)として、作業者ジョブ記憶手段に保存される。
【0033】
本発明に係る管理コンピュータは、前記第1乃至8の何れか一に記載の誤配送防止システムに用いられる管理コンピュータであって、前記第1乃至8の何れか一に記載されたものであることを特徴とする。
【0034】
本発明に係る作業者端末装置は、前記第1乃至8の何れか一に記載の誤配送防止システムに用いられる作業者端末装置であって、前記第1乃至8の何れか一に記載されたものであることを特徴とする。
【0035】
本発明に係る管理コンピュータ用プログラムは、コンピュータに読み込ませて実行することにより、該コンピュータを、前記第1乃至8の何れか一の構成の誤配送防止システムに於ける管理コンピュータとして機能させることを特徴とする。
【0036】
本発明に係る作業者端末装置用プログラムは、拡張現実の表示処理を行う眼鏡型デバイスに接続され、又は該眼鏡型デバイスに内蔵されたコンピュータに読み込ませて実行することにより、該コンピュータを、前記第1乃至8の何れか一の構成の誤配送防止システムに於ける作業者端末装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明によれば、荷役作業を行う各作業者が装着する眼鏡型デバイスに、該作業者が担当する輸送車の荷台に、次に運搬すべきパレットを指示する拡張現実コンテンツを、現実の作業者の視界前景に重ねて表示されることで、作業者が輸送車の荷台に運搬するパレットを取り間違うヒューマンエラーを防止することができる。また、作業者が出荷ヤードに仮置きされたパレットを運搬し始める前にパレットを指示する拡張現実コンテンツが表示されるので、一度行先の誤りのパレットを輸送車の荷台に運搬した後にそのパレット等がもともと置いてあった場所に戻すといった無駄な作業が生じることがなく、労働生産性の低下を招くことがない。これにより、作業者のヒューマンエラーによるパレットの誤配送を確実に防止でき、且つ荷台へのパレット搬入作業の作業効率の低下を招くことのない誤配送防止技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の実施例1に係る誤配送防止システムの物理的な構成を表す図である。
【
図2】物流拠点の出荷ヤードに仮置きされたパレットの配置及び出荷ゲートの配置の一例を表す平面図である。
【
図3】実施例1に係る誤配送防止システムの機能的な構成を表すブロック図である。
【
図4】
図3の各記憶部を構成するリレーショナル・データベースの具体的なデータ構造を表すER図である。
【
図5】固定位置のフェーズドアレイ型の天井アンテナA
1,A
2とRFタグPの配置図である。
【
図6】DOAベクトルd
1,d
2が誤差を含む場合のアンカーポイントa
1,a
2とターゲットポイントrとDOAベクトルd
1,d
2の位置関係を示す図である。
【
図7】実施例1の誤配送防止システムにおける、各パレットタグ1及び各作業者タグ2の位置情報の随時推定・更新処理を表すフローチャートである。
【
図8】輸送車が出荷ゲートに接続した時の誤配送防止システムの全体的な動作を表すフローチャートである。
【
図9】作業者ジョブ登録時の誤配送防止システムの全体的な動作を表すフローチャートである。
【
図10】運搬作業開始前の運搬パレットの指示に関する誤配送防止システムの全体的な動作を表すフローチャートである。
【
図11】ARコンテンツ生成部151により生成されるARコンテンツの一例を示す図である。
【
図12】人為的過誤判定警告に関する誤配送防止システムの全体的な動作を表すフローチャートである。
【
図13】誤運搬報知ARコンテンツの一例を示す図である。
【
図14】出庫完了処理に関する誤配送防止システムの全体的な動作を表すフローチャートである。
【
図15】実施例2に係る誤配送防止システムの機能的な構成を表すブロック図である。
【
図16】実施例2に係る誤配送防止システムに於ける、運搬作業開始前の運搬パレットの指示に関する誤配送防止システムの全体的な動作を表すフローチャートである。
【
図17】実施例3に係る誤配送防止システムの機能的な構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例0040】
(1)誤配送防止システムの構成
図1は、本発明の実施例1に係る誤配送防止システムの物理的な構成を表す図である。
図2は、物流拠点の出荷ヤードに仮置きされたパレットの配置及び出荷ゲートの配置の一例を表す平面図である。実施例1の誤配送防止システムは、チェーン店などの店舗に商品を配送する物流拠点である物流センターの出荷ヤードに仮置きされたカゴ台車(カゴパレット。以下、単に「パレット」という。)を、各店舗に向かう輸送トラック(以下、単に「輸送車」という。)の荷台に搬入する際に、輸送先の誤ったパレットを輸送車の荷台に搬入することにより生じる誤配送を防止するシステムである。なお、「出荷ヤード」とは、物流拠点の敷地内で輸送車に荷物を搬入する荷役作業を行うエリアである。
図2に示すように、出荷ヤードの一端には、輸送車Tの荷台後部のテールゲートが接続する出荷ゲートGが複数設けられている。また、出荷ヤードの内部には、出荷するパレットを仮置きする出荷パレット仮置き場が設けられており、この出荷パレット仮置き場に、出荷する複数のパレットPが配列して仮置きされている。荷役作業を行う作業者Wは、これらのパレットPを、出荷ゲートGに接続する輸送車Tの荷台へ搬入する。
【0041】
図1に示した誤配送防止システムは、パレットタグ1(前パレットタグ1a及び後パレットタグ1b)、作業者タグ2、ゲートタグ3、天井アンテナ4、天井リーダ5、荷台リーダ6、眼鏡型デバイス7、音声出力デバイス8、作業者端末装置9、無線LANルータ10、管理サーバ11(第1の管理コンピュータ)、タグ位置推定器12(第2の管理コンピュータ)及び通信回線13を備えている。
【0042】
パレットタグ1は、出荷ヤードに仮置きされる各パレットPに付されたRFタグである。
図1内の「パレット単体拡大図」に示すように、1台のパレットPには、該パレットPの前側上部に付された前パレットタグ1aと、該パレットPの後側上部に付された後パレットタグ1bとの、2つのパレットタグ1,1が付されている。作業者タグ2は、各パレットPを輸送車Tの荷台Lに運搬する荷役作業を行う各作業者Wに付されたRFタグである。
図1では、RFタグは、作業者Wが装着するヘルメットに付されている。ゲートタグ3は、出荷ゲートGのそれぞれに対し、該出荷ゲートGの床面に固定して設けられたRFタグである。
【0043】
天井アンテナ4は、出荷ヤードの各所に複数設置され、各パレットタグ及び前記各作業者タグとの間で電波の送受信を行う、フェーズドアレイ型のアンテナである。ここで、フェーズドアレイ型のアンテナとは、複数配列したアンテナ素子に位相の異なる信号を加えることで、アンテナのメインローブ方向を自在に制御して、電波の放射パターンを変えることができるアンテナをいう(例えば、特許文献4,非特許文献9参照)。天井リーダ5は、各天井アンテナ4により、各パレットタグ1及び各作業者タグ3と通信を行い、これらのRFタグに記憶されたの識別情報を読み取るとともに、各天井アンテナ4に対する該RFタグの後方散乱電波の到来方向を検出するRFIDリーダである。
【0044】
荷台リーダ6は、各輸送車Tの荷台Lのテールゲート上方の天井部に設けられ、RFタグと通信を行い、該RFタグに記憶されたの識別情報を読み取り、該RFタグの識別情報を該輸送車Tの識別情報と共に通信回線13を介して管理サーバ11に送信するRFIDリーダである。
【0045】
ARグラス7(眼鏡型デバイス)は、各作業者Wに装着される眼鏡型のデバイスであって、拡張現実の表示処理を行う表示デバイスである。尚、本実施例では、眼鏡型デバイスの一例としてARグラス7を用いるが、眼鏡型デバイスとしては、これ以外にも、MRグラスなどのAR/MRコンテンツが表示可能なヘッドマウントディスプレイを使用することも出来る。ここで、「AR」とは、拡張現実(Augmented Reality)を意味し、現実空間に付加情報を表示させ、現実世界を拡張する技術をいう。「MR」とは、複合現実(Mixed Reality)を意味し、現実世界にCG(computer graphics)などで作られた人工的な仮想世界の情報を取り込み、現実世界と仮想世界を融合させた世界をつくる技術をいう。ARは、MRも包含する概念である。音声出力デバイス8は、各作業者Wに装着されるヘッドフォン,イヤホン,骨伝導スピーカ等の音声を出力するデバイスである。作業者端末装置9は、各作業者Wに携帯され、ARグラス7及び音声出力デバイス8と接続され、無線LANによる通信が可能な携帯型コンピュータである。無線LANルータ10は、作業者端末装置9や荷台リーダ6と通信回線13との間の無線通信を中継するネットワーク機器である。
【0046】
タグ位置推定器12(第2の管理コンピュータ)は、天井リーダ5に接続され、各天井アンテナ4の設置位置、並びに天井リーダ5により検出される、各作業者タグ2及び各パレットタグ1の識別情報及び各天井アンテナ4に対する到来方向に基づき、各作業者タグ2及び各パレットタグ1の位置を推定するコンピュータである。管理サーバ11(第1の管理コンピュータ)は、タグ位置推定器12,各作業者端末装置9,荷台リーダ6と通信回線を介して接続されたコンピュータである。本実施例では、「管理コンピュータ」は、通信回線13を介して接続された、管理サーバ11及びタグ位置推定器12の2台のコンピュータにより構成されている。尚、本実施例では、通信量を減らすためにタグ位置推定器12は管理サーバ11と切り離して別体のコンピュータで構成しているが、通信回線13の速度が十分に速ければ、タグ位置推定器12と管理サーバ11は一体のコンピュータで構成してもよい。
【0047】
図3は、実施例1に係る誤配送防止システムの機能的な構成を表すブロック図である。
図3に於いて、
図1,
図2の構成部分に対応する構成部分には同符号を付している。
【0048】
本実施例に於けるARグラス7(眼鏡型デバイス)は、レンズ型ディスプレイ7a,姿勢情報検出部7b,撮影部7cを備えている。レンズ型ディスプレイ7aは、眼鏡のレンズ部分に当たる場所に設けられた透過型のディスプレイ・デバイスであり、透過風景に重ねて拡張現実コンテンツの表示を行う。姿勢情報検出部7bは、ARグラス7の姿勢情報を検出するセンサである。本実施例では、姿勢情報検出手段7bとして、9軸センサを用いることとする。「9軸センサ」とは、9自由度のの慣性計測装置モジュールからなる複合センサで、3軸加速度センサ,3軸ジャイロセンサ(3軸角速度センサ),3軸方位センサ(3軸地磁気センサ)を内蔵するセンサをいう。撮影部7cは、該眼鏡型デバイスの前景画像を撮影するデバイスであり、CCD(Charge Coupled Device;電荷結合素子)イメージセンサ,CMOSイメージセンサなどの固体撮像素子が用いられる。
【0049】
本実施例に於ける作業者端末装置9は、姿勢推定部101,ARコンテンツ表示部102,ジョブ登録要求部103,無線通信インタフェース部104を備えている。姿勢推定部101は、ARグラス7の姿勢情報検出部7bが出力する姿勢情報(加速度ベクトル,角速度ベクトル,方位ベクトル)に基づき、ARグラス7の姿勢(ロール,ピッチ,ヨーの回転角)を推定するモジュールである。ARコンテンツ表示部102は、後述のARコンテンツ生成部151により生成される拡張現実コンテンツを、ARグラス7のレンズ型ディスプレイ7aに表示する処理を行うモジュールである。ジョブ登録要求部103は、作業者端末装置9を所持する作業者Wの指示入力に従って、管理コンピュータ11に対し、作業者ジョブ登録要求(作業者Wが所持する作業者端末装置9の識別情報(作業者端末ID)を含む。)を送信する処理を行うモジュールである。無線通信インタフェース部104は、作業者端末装置9と無線LANルータ10との間での無線通信を行うインタフェースである。
【0050】
本実施例に於けるタグ位置推定器12は、アンカー位置記憶部110,タグ位置推定部111を備えている。アンカー位置記憶部110は、各天井アンテナ4が設置された点(アンカーポイント)の位置座標を記憶するモジュールである。タグ位置推定部111は、アンカー位置記憶部110に記憶された各天井アンテナ(アンカーポイント)の位置情報、並びに天井リーダ5により検出される、各パレットタグ1及び各作業者タグ2の識別情報及び各天井アンテナ(アンカーポイント)に対する到来方向に基づき、各パレットタグ1及び各作業者タグ2の位置の推定演算を行うモジュールである。
【0051】
本実施例に於ける管理サーバ11は、通信インタフェース部119,作業者端末情報記憶部120,作業者情報記憶部121,パレット情報記憶部122,輸送車情報記憶部123,ゲート情報記憶部124,出庫タスク記憶部125,出庫パレット情報記憶部126,作業者ジョブ記憶部127,輸送車行先情報抽出部130,出庫タスク生成部131,パレット運搬順序決定部132,作業者ジョブ登録部135,タグ位置更新部140,姿勢取得部145,映像取得部146,周辺パレット選択部147,パレットオブジェクト抽出部148,前景内パレット特定部149,運搬パレット指定部150,ARコンテンツ生成部151,ARコンテンツ送信部152,タグ移動検出部160,運搬中パレット特定部161,誤配送検出部162,パレット出庫判定部170,タスク完了判定部171を備えている。
【0052】
通信インタフェース部119は、通信回線13及び無線LANルータ10を介して、各荷台リーダ6及び各作業者端末装置9との通信を行うインタフェースモジュールである。尚、実際には、管理サーバ11は、タグ位置推定器12とも通信回線13を介して接続されており、通信インタフェース部119を介して通信が行われるが、
図3では、理解を容易にするため、管理サーバ11とタグ位置推定器12は直接接続して記載している。
【0053】
作業者端末情報記憶部120は、各作業者端末装置9に関する情報を記憶し管理するモジュールである。作業者情報記憶部121は、各作業者Wに関する情報を記憶し管理するモジュールである。パレット情報記憶部122は、各パレットPに関する情報を記憶し管理するモジュールである。パレット情報記憶部122には、各パレットの行先情報,該パレットのサイズ情報,パレットタグ1の識別情報(前パレットタグID,後パレットタグID)などが、該パレットの識別情報(パレットID)と関連付けて記憶されている。
輸送車情報記憶部123は、各輸送車Tに関する情報を記憶し管理するモジュールである。輸送車情報記憶部123には、各輸送車Tの行先情報が、該輸送車Tの識別情報(輸送車ID)と関連付けて記憶されている。ゲート情報記憶部124は、各出荷ゲートGに関する情報を記憶し管理するモジュールである。
【0054】
出庫タスク記憶部125は、各出庫タスクに関する情報を記憶し管理するモジュールである。出庫タスク記憶部125には、各出庫タスクの対象となる輸送車Tの識別情報,出荷ゲートGの識別情報等が、該出庫タスクの識別情報(出庫タスクID)と関連付けて記憶されている。ここで、「出庫タスク」とは、出荷ゲートGに接続した1台の輸送車Tに対して課された一連のパレットの出庫に関する荷役仕事をいう。出庫パレット情報記憶部126は、各出庫タスクに於いて出庫する各パレットP(以下「出庫パレット」という。)に関する情報を記憶し管理するモジュールである。出庫パレット情報記憶部126には、出庫タスクの識別情報(出庫タスクID),各出庫パレットPの識別情報(パレットID),該パレットPの位置情報(前パレットタグ,後パレットタグの位置情報),輸送車Tの荷台に搬入する際の運搬順序等が、該出庫パレットの識別情報(出庫パレットID)と関連付けて記憶されている。
【0055】
尚、本実施例では、データベースの論理設計の都合上、パレット情報記憶部122と出庫パレット情報記憶部126が協働して、本発明の「パレット情報記憶手段」を構成しており、また、出庫タスク記憶部125と出庫パレット情報記憶部126が協働して、本発明の「出庫タスク記憶手段」を構成している。
【0056】
作業者ジョブ記憶部127は、各作業者ジョブに関する情報を記憶し管理するモジュールである。作業者ジョブ記憶部127には、各作業者ジョブの対象となる作業者の識別情報(作業者ID),出庫タスクの識別情報(出庫タスクID),作業者の位置情報等が、該作業者ジョブの識別情報(作業者ジョブID)と関連付けて記憶されている。ここで、「作業者ジョブ」とは、1つの出庫タスクに対して、それを担当する作業者が行うべき荷役仕事をいう。
【0057】
輸送車行先情報抽出部130は、出荷ゲートGに接続した輸送車Tの荷台リーダ6から、該輸送車Tの識別情報(輸送車ID)Id(T)及びゲートタグGの識別情報(ゲートID)Id(G)を受信した場合、輸送車情報記憶部123から、該輸送車Tの識別情報Id(T)に対応する行先情報を取得する処理を行うモジュールである。出庫タスク生成部131は、輸送車行先情報抽出部130により抽出された、輸送車Tの行先情報と同じ行先情報を有する一乃至複数のパレットPの識別情報{Id(P)}を、パレット情報記憶部122から索出し、該輸送車Tに対する出庫タスクTk(T)を該輸送車Tの識別情報Id(T)と関連付けて出庫タスク記憶部125に作成・保存するとともに、索出た各パレットPの識別情報{Id(P)}を、該出庫タスクTk(T)の出庫パレットとして出庫パレット情報記憶部126に保存する処理を行うモジュールである。パレット運搬順序決定部132は、出庫タスク生成部131により出庫タスク記憶部125に生成・保存された輸送車Tに対する出庫タスクTk(T)に対し、該出庫タスクTk(T)に属する各出庫パレットのパレットタグ1の位置情報を、タグ位置推定器12のタグ位置推定部111から取得し、出庫パレット情報記憶部126に保存するとともに、取得した各出庫パレットの位置情報に基づき、各出庫パレットを輸送車Tの荷台に運搬する運搬順序を決定し、出庫パレット情報記憶部126に保存する処理を行うモジュールである。
【0058】
作業者ジョブ登録部135は、通信回線13を介して、或る作業者Wが所持する作業者端末装置9のジョブ登録要求部103から作業者ジョブ登録要求(作業者Wの作業者ID及び作業者Wが所持する作業者端末装置9の作業者端末IDを含む。)を受信すると、各出荷ゲートGに接続した各輸送車Tの荷台リーダ6により取得されるRFタグの識別情報の中から、該作業者端末装置9を所持する作業者Wに付された作業者タグの識別情報(作業者タグID)Id(Wt)を探索し、該作業者タグの識別情報Id(Wt)が取得された荷台リーダ6に対応する輸送車Tの識別情報(輸送車ID)Id(T)を特定し、出庫タスク記憶部125に記憶された、該輸送車Tの識別情報Id(T)に対応する出庫タスクTk(T)を、該作業者端末装置9を所持する作業者Wが担当する出庫タスクとして、作業者ジョブ記憶部127に生成・保存する処理を行うモジュールである。
【0059】
タグ位置更新部140は、タグ位置推定器12のタグ位置推定部111から出力される、天井リーダ5で読み取られた各RFタグの識別情報及び位置情報が入力されると、それそれのRFタグの識別情報に従って、パレット情報記憶部122及び出庫パレット情報記憶部126に登録された各出庫パレット(パレットタグ)の位置情報、及び作業者ジョブ記憶部127に登録された各作業者(作業者タグ)の位置情報を更新する処理を行うモジュールである。このタグ位置更新部140による位置情報の更新処理は、常時継続して行われる。
【0060】
姿勢取得部145は、通信回線13を介して、作業者WのARグラス7の姿勢情報検出部7bにより検出され作業者端末装置9の姿勢推定部101で推定され送信される姿勢情報を取得するモジュールである。映像取得部146は、通信回線13を介して、作業者WのARグラス7の撮影部7cにより撮影される前景画像を取得するモジュールである。
【0061】
周辺パレット選択部147は、作業者端末装置9を所持するそれぞれの作業者Wに対し、タグ位置推定部111により推定され作業者ジョブ記憶部127に保存された該作業者Wの作業者タグ2の最新の位置情報、及び、姿勢取得部145により取得された該作業者WのARグラス7の姿勢情報、並びに、タグ位置推定部111により推定されパレット情報記憶部122及び出庫パレット情報記憶部126に保存された各パレットタグ1の最新の位置情報に基づき、該作業者Wの視界前方に存在するパレットP(前景内パレット)及び該作業者Wの所定の距離以内の近傍に存在するパレットP(近傍パレット)を選択する処理を行うモジュールである。
【0062】
パレットオブジェクト抽出部148は、ARグラス7の撮影部7cにより撮影され映像取得部146により取得される前景画像から、個々のパレットの画像であるパレットオブジェクトを抽出する、オブジェクト抽出処理を行うモジュールである。前景内パレット特定部149は、姿勢取得部145により取得される作業者WのARグラス7の姿勢情報、及び周辺パレット選択部147により選択される各パレットPのパレットタグ1の位置情報に基づき、パレットオブジェクト抽出部148が抽出する各パレットオブジェクトと各パレットPとを対応づける処理を行うモジュールである。運搬パレット指定部150は、作業者端末装置9を所持するそれぞれの作業者Wに対して、該作業者Wの従事する作業者ジョブに係る出庫タスクTk(T;W)を作業者ジョブ記憶部127及び出庫タスク記憶部125から取得し、該出庫タスクTk(T;W)に係る各出庫パレットの運搬順序を出庫パレット情報記憶部126から取得し、これら出庫パレットの運搬順序を参照することで、該作業者Wが、該作業者Wが担当する輸送車Tの荷台に、次に運搬すべきパレットP及びそれ以降に運搬すべきパレットの順序を指定する処理を行うモジュールである。
【0063】
ARコンテンツ生成部151は、前景内パレット特定部149により各パレットと対応づけられた各パレットオブジェクトのうち、運搬パレット指定部150により指定された、輸送車Tの荷台に次に運搬すべき出荷パレットのオブジェクトを指示する拡張現実コンテンツ、及びそれ以降に運搬すべきパレットの順序を指示する拡張現実コンテンツを生成する処理を行うモジュールである。また、このARコンテンツ生成部151は、後述の誤配送検出部162により誤運搬情報が出力された場合、該誤運搬情報により特定される作業者WのARグラス7に表示させる拡張現実コンテンツとして、現在運搬中のパレットの輸送先が誤っている旨の警告を表示する拡張現実コンテンツを生成する処理も行う。ARコンテンツ送信部152は、ARコンテンツ生成部151により生成される拡張現実コンテンツを、該拡張現実コンテンツに係る作業者Wの作業者端末装置9へ送信する処理を行うモジュールである。
【0064】
タグ移動検出部160は、出庫パレット情報記憶部126及び作業者ジョブ記憶部127に保存・更新される各パレットタグ1及び各作業者タグ2の経時的な移動方向及び移動量を検出する処理を行うモジュールである。運搬中パレット特定部161は、タグ移動検出部160により検出される、各パレットタグ1及び各作業者タグ2の経時的な移動方向及び移動量、及び周辺パレット選択部147に検出される、各作業者タグ2の近傍に存在する近傍パレットのパレットタグ1の情報に基づき、各作業者タグ2に対応する作業者Wが現在運搬中のパレット(運搬中パレット)P(W)を特定する処理を行うモジュールである。誤配送検出部162は、各作業者タグ2に対応する各作業者Wに対して、運搬中パレット特定部161が特定する運搬中パレットP(W)の輸送先(行先)と、該作業者Wが担当する輸送車Tの輸送先(行先)を照合し、両輸送先が異なる場合には、該作業者Wの特定情報(作業者ID)Id(W)を含む誤運搬情報を出力する処理を行うモジュールである。
【0065】
パレット出庫判定部170は、各輸送車Tの荷台リーダ6においてパレットタグ1が検出された場合、出庫パレット情報記憶部126に記憶された該パレットタグ1に対応する出荷パレットの出庫完了情報を「出庫済み」とする処理を行うモジュールである。タスク完了判定部171は、出庫タスク記憶部125に記憶されている未完了の各出庫タスクTk(T)について、出庫パレット情報記憶部126に記憶された該出庫タスクTk(T)に係る出庫パレットの出庫完了情報が全て「出庫済み」となった場合、出庫タスク記憶部125の該出庫タスクTk(T)のタスク完了情報を「完了」とするとともに、作業者ジョブ記憶部127の該出庫タスクTk(T)に係る作業者ジョブのジョブ完了情報を「完了」とする処理を行うモジュールである。
【0066】
(2)データベースの構成
次に、
図3のアンカー位置記憶部110,作業者端末情報記憶部120,作業者情報記憶部121,パレット情報記憶部122,輸送車情報記憶部123,ゲート情報記憶部124,出庫タスク記憶部125,出庫パレット情報記憶部126,作業者ジョブ記憶部127を構成するリレーショナル・データベースの具体的なデータ構造について説明する。
【0067】
図4は、
図3の各記憶部を構成するリレーショナル・データベースの具体的なデータ構造を表すER図(Entity-Relatonship Diagram;実体参照図)である。
図4において、「作業者端末T」のように「○○T」と記した記載の末尾の「T」は「テーブル」を表す。また、各テーブル名の横の括弧内の番号は、そのテーブルに対応する
図3内の各記憶部の番号に対応している(例えば、「出庫タスクT(125)」は、「出庫タスクテーブル」というテーブル名を表し、
図3の「出庫タスク記憶部125」に対応する)。また、各テーブル(エンティティ)において、グレーで着色された属性は主キー属性を示す。
【0068】
図4において、アンカーテーブル(アンカー位置記憶部110)は、各天井アンテナ4が設置された座標点(アンカーポイント)の位置座標を管理するテーブルであり、少なくとも「アンカーID」,「位置座標」の2つの属性のカラムを有する。尚、「アンカーポイント」とは、位置推定を行う際の基準固定点(アンカー)となる、位置が既知である点を意味する。「アンカーID」は、各天井アンテナ4に一対一に付された識別情報(identifier)である。「位置座標」は、各天井アンテナ4が設置された中心座標点(アンカーポイント)の位置座標である。
【0069】
ゲートテーブル(ゲート情報記憶部124)は、各出荷ゲートGに関する情報を記憶し管理するテーブルであり、少なくとも「ゲートID」,「ゲートタグID」,「位置座標」の3つの属性のカラムを有する。「ゲートID」は、各出荷ゲートGの識別情報である。「ゲートタグID」は、各出荷ゲートGの床面に固定して設けられたゲートタグ3の識別情報である。「位置座標」は、各出荷ゲートGのゲートタグの位置座標である。
【0070】
輸送車テーブル(輸送車情報記憶部123)は、各輸送車Tに関する情報を記憶し管理するテーブルであり、少なくとも「輸送車ID」,「行先情報」,「積載数」の3つの属性のカラムを有する。「輸送車ID」は、各輸送車Tの識別情報である。「行先情報」は、各輸送車Tの輸送先(行先)に関する情報である。「積載数」は、各輸送車Tの荷台に積載可能なパレットの数である。
【0071】
作業者端末テーブル(作業者端末情報記憶部120)は、各作業者端末装置9に関する情報を記憶し管理するテーブルであり、少なくとも「作業者端末ID」,「端末種別」の2つの属性のカラムを有する。「作業者端末ID」は、各作業者端末装置9の識別情報である。「端末種別」は、各作業者端末装置9の種別(機種など)である。
【0072】
作業者テーブル(作業者情報記憶部121)は、各作業者Wに関する情報を記憶し管理するテーブルであり、少なくとも「作業者ID」,「作業者所属」,「作業者氏名」,「作業者タグID」,「作業者端末ID」の5つの属性のカラムを有する。「作業者ID」は、各作業者Wの識別情報である。「作業者所属」は、各作業者Wの所属組織名である。「作業者氏名」は、各作業者Wの氏名である。「作業者タグID」は、各作業者Wのヘルメットに付される作業者タグ2の識別情報である。「作業者端末ID」は、各作業者Wが所持する作業者端末装置9の識別情報であり、作業者端末テーブルの「作業者端末ID」と1対(0又は1)の対応関係にある。
【0073】
パレットテーブル(パレット情報記憶部122)は、各パレットPに関する情報を記憶し管理するテーブルであり、少なくとも「パレットID」,「前パレットタグID」,「後パレットタグID」,「パレットサイズ」,「前タグ位置情報」,「後タグ位置情報」,「行先情報」の7つの属性のカラムを有する。「パレットID」は、各パレットPの識別情報である。「前パレットタグID」は、各パレットPの前側上部に付される前パレットタグ1aの識別情報である。「後パレットタグID」は、各パレットPの後側上部に付される後パレットタグ1bの識別情報である。「パレットサイズ」は、各パレットPのサイズ(縦,横,高さ)に関する情報である。「前タグ位置情報」は、前パレットタグ1aの位置座標情報である。「後タグ位置情報」は、後パレットタグ1bの位置座標情報である。「行先情報」は、各パレットPの輸送先(行先)に関する情報である。
【0074】
出庫タスクテーブル(出庫タスク記憶部125)は、各出庫タスクTk(T)に関する情報を記憶し管理するテーブルであり、少なくとも「出庫タスクID」,「ゲートID」,「輸送車ID」,「タスク完了情報」の4つの属性のカラムを有する。「出庫タスクID」は、各出庫タスクTk(T)の識別情報である。「ゲートID」は、各出庫タスクTk(T)に係る輸送車Tが接続する出荷ゲートGのゲートIDであり、ゲートテーブルの「ゲートID」と1対(0又は1)の対応関係にある。「輸送車ID」は、各出庫タスクTk(T)に係る輸送車Tの輸送車IDであり、輸送車テーブルの「輸送車ID」と1対(0又は1)の対応関係にある。「タスク完了情報」は、各出庫タスクTk(T)が完了か、未完了かに関する情報である。
【0075】
出庫パレットテーブル(出庫パレット情報記憶部126)は、各出庫タスクTk(T)に於いて出庫する各出庫パレットP(Tk(T))に関する情報を記憶し管理するテーブルであり、少なくとも「出庫パレットID」,「出庫タスクID」,「パレットID」,「前タグ位置情報」,「後タグ位置情報」,「運搬順序」,「タスク完了情報」の7つの属性のカラムを有する。「出庫パレットID」は、出庫パレットP(Tk(T))の識別情報である。「出庫タスクID」は、各出庫パレットP(Tk(T))に係る出庫タスクTk(T)の出庫タスクIDであり、出庫タスクテーブルの「出庫タスクID」と1対(0以上)の対応関係にある。「パレットID」は、各出庫パレットP(Tk(T))のパレットIDであり、パレットテーブルの「パレットID」と1対(0又は1)の対応関係にある。「前タグ位置情報」は、各出庫パレットP(Tk(T))の前パレットタグ1aの位置座標情報である。「後タグ位置情報」は、各出庫パレットP(Tk(T))の後パレットタグ1bの位置座標情報である。「運搬順序」は、出庫タスクTk(T)に於ける各出庫パレットP(Tk(T))の運搬順序である。「出庫完了情報」は、各出庫パレットP(Tk(T))の出庫(輸送車Tの荷台への積み込み)が完了か、未完了かに関する情報である。
【0076】
なお、ここでは説明の便宜上、パレットテーブルと出庫パレットテーブルとの両方に「前タグ位置情報」,「後タグ位置情報」を重複して登録しているが、データベースの冗長性をなくすために、出庫パレットテーブルの「前タグ位置情報」,「後タグ位置情報」は削除することもできる。
【0077】
作業者ジョブテーブル(作業者ジョブ記憶部127)は、各作業者ジョブJ(Tk(T))に関する情報を記憶し管理するテーブルであり、少なくとも「作業者ジョブID」,「作業者ID」,「出庫タスクID」,「作業者位置情報」,「ジョブ完了情報」の5つの属性のカラムを有する。「作業者ジョブID」は、各作業者ジョブJ(Tk(T))の識別情報である。「作業者ID」は、各作業者ジョブJ(Tk(T))に従事する作業者Wの作業者IDであり、作業者テーブルの「作業者ID」と1対(0又は1)の対応関係にある。「出庫タスクID」は、各作業者ジョブJ(Tk(T))に係る出庫タスクTk(T)の出庫タスクIDであり、出庫タスクテーブルの「出庫タスクID」と1対(0以上)の対応関係にある。「作業者位置情報」は、各作業者ジョブJ(Tk(T))に従事する作業者Wの位置座標情報である。「ジョブ完了情報」は、各作業者ジョブJ(Tk(T))が完了か、未完了かに関する情報である。
【0078】
(3)誤配送防止システムの動作
以上のような構成の本発明の実施例1に係る誤配送防止システムについて、以下その動作を説明する。
【0079】
(3.1)到来方向推定
本発明では、各パレット及び各作業者の位置検出に、RFIDとフェーズドアレイを利用する。フェーズドアレイでは、アンテナ面に配列された複数のアンテナ素子で放射又は受信する電波の位相を制御することで、アンテナのメインローブ方向を走査し、RFタグからの後方散乱電波の到来方向(Direction Of Arrival;DOA)を推定する。このDOA推定に関しては、既に、多くの文献に記載され周知技術である(例えば、非特許文献9,10参照)。本実施例では、各天井アンテナ4にフェーズドアレイアンテナを用いており、天井リーダ5は、これらの天井アンテナ4を用いて、ビームフォーマ(beamformer)法,Capon法,線型予測法,MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法などを用いて、天井アンテナ4に対するRFタグからの後方散乱電波のDOAを推定し、DOAベクトルを出力する。これら各DOA推定法の詳細については、非特許文献10に詳述されているので、ここでは説明は割愛する。DOAベクトルは3次元単位ベクトル(方向余弦ベクトル)とし、以下では、i番目の天井アンテナ4で検出・推定されるk番目のRFタグからの後方散乱電波に対するDOAベクトルを(αki,βki,γki)(但し、αki
2+βki
2+γki
2=1)と記す。
【0080】
(3.2)RFタグの位置推定
本発明では、
図2に示した通り、出荷ヤード内の1つのRFタグ(パレットタグ1又は作業者タグ2)を複数の天井アンテナ4によって検出できるように、複数の天井アンテナ4を、間隔を開けて、出荷ヤードの建屋の天井に配列している。従って、1つのRFタグkに対して、2以上の天井アンテナ4でのDOAベクトルを(α
ki,β
ki,γ
ki)(i=1,…,N
k;但し、iは天井アンテナ4のインデックス,N
kはRFタグkを検出した天井アンテナ4の数)が検出される。そこで、タグ位置推定器12は、これらのDOAベクトル(α
ki,β
ki,γ
ki)を用いてRFタグkの位置座標を推定する。以下、タグ位置推定器12によるRFタグkの位置推定方法について説明する。
【0081】
RFタグkの位置推定方法としては、最小二乗法を用いる手法や最尤推定法を用いる手法が考えられるが、本実施例では、ARコンテンツの生成においてリアルタイムの位置推定が要求されること、ARコンテンツ生成部151によるARコンテンツの生成においては、ロケーションベースの位置合わせに加えて、オブジェクト抽出を用いたビジョンベースの位置補正を採用したため、各パレットタグ及び各作業者タグの位置推定には厳しい精度は求められないこと、に鑑みると、後述のように最小二乗法による位置推定はある一定の計算量以下での推定が可能であるため、これを用いる。
【0082】
まず、説明の簡単化のため、
図5のように、三次元空間内に2つの天井アンテナA
1,A
2と、1つのRFタグPが配置されている場合を考える(但し、
図5では、上下反転して記載している)。天井アンテナA
1,A
2は、建屋の天井面上の定点(アンカーポイント)に固定されており、RFタグPは位置が未知の空間内の点(ターゲットポイント)に於かれているとする。天井アンテナA
1,A
2は、二次元のフェーズドアレイ型のアンテナである。天井アンテナA
1,A
2の位置ベクトルを、其々、a
1=(a
1x,a
1y,a
1z),a
2=(a
2x,a
2y,a
2z)とし、RFタグPの位置ベクトルをr=(x,y,z)とする。天井アンテナA
1,A
2は、メインローブ方向を半球面上で走査させながら質問信号を送信し、各方向ベクトルに対するバックスキャッタ(backscatter;後方散乱)信号を受信し、RFタグPからのバックスキャッタ信号のDOAベクトルd
1,d
2を、天井アンテナA
1,A
2に対するRFタグPの方向ベクトルとして推定する。天井面に固定された直交座標系(グローバル座標系)に於ける各方向ベクトルd
i(i=1,2)の成分表示をd
i=(α
i,β
i,γ
i)(但し、α
i
2+β
i
2+γ
i
2=1)とする。
【0083】
各方向ベクトルdi(i=1,2)に誤差がないと仮定した場合には、位置ベクトルa1,a2と位置ベクトルrとの関係は次のように表される。
【0084】
【0085】
今、アンカーポイントa1,a2から方向d1,d2に向かう直線をL1,L2とし、直線L1上の任意の点r1から直線L2までの距離をhとすると、
【0086】
【数4】
と表される。ターゲットポイントrでは、h=0となるので、
【0087】
【数5】
により、ターゲットポイントrの位置が確定できる。
【0088】
しかしながら、一般に、DOAベクトルd
1,d
2は誤差を含む。そのため、一般には、
図6に示すように、三次元空間内の直線L
1,L
2は交点を有さない。そこで、求むべきターゲットポイントr=(x,y,z)からそれぞれの直線L
i(i=1,2)までの距離をh
iとし、距離h
iの二乗和を評価関数E(r)=Σ
i h
i
2(Σ
iはiについての和演算子を表す。)として、この評価関数E(r)が最小となる位置をターゲットポイントrの位置と推定する(最小二乗法)。距離h
iは、式(3a)と同様に、
【0089】
【数6】
と表される。ターゲットポイントrを決定する位置推定方程式は、次のような3元連立方程式になる。
【0090】
【0091】
DOAベクトル(方向余弦ベクトル)di=(αi,βi,γi)の成分αi,βi,γiの関係式
【0092】
【数8】
を用いて、式(6)の各式を計算すると、最終的に、次のような3元連立線型方程式が得られる。
【0093】
【数9】
従って、ターゲットポイントr=(x,y,z)は、次のようにして計算できる。
【0094】
【0095】
式(9)の右辺の逆行列は、ガウス法やガウス・ジョルダン法によって計算できるため、定数時間内にターゲットポイントrを求めることが可能である。尚、式(8),(9)は、アンカーポイント(天井アンテナ4)の数Nが3以上の場合でも同様に成り立つ。
【0096】
尚、DOAベクトルdiの方位誤差が正規分布に従うと仮定した尤度関数を用いた最尤推定法では、一般に、位置推定方程式はx,y,zについての3元連立非線形方程式となるため、位置推定方程式を解くにあたり、ニュートン法などの逐次近似法を用いる必要がある。そのため、位置推定方程式を解くための計算量が一定でなく、場合によって計算時間が長くなる。然し乍ら、式(6)のように評価関数E(r)による最小二乗法を用いると、上述したように、x,y,zの2次項がうまく打ち消しあって位置推定方程式は線型となり、ガウス法などを用いて常に一定の計算量以下でターゲットポイントrを決定することができる。従って、ARのようにリアルタイムの位置情報が要求される場合の、RFタグの位置推定には、上記式(9)のような評価関数E(r)による最小二乗法を用いるのが適していると考えられる。
【0097】
(3.3)ARグラスの姿勢推定
本実施例では、ARグラス7の姿勢情報検出部7bとして9軸センサを用いている。9軸センサは、スマートフォン等において広く用いられており、9軸センサを用いた姿勢推定の手法もスマートフォンのアプリケーション・プログラム等において広く用いられているので、姿勢推定部101は、これら周知の手法を用いてARグラス7の姿勢(ロール,ピッチ,ヨーの回転角)の推定を行うことが出来る。ここでは、姿勢推定部101によるARグラス7の姿勢推定方法の一例として、9軸センサが内蔵する3軸ジャイロセンサ(3軸角速度センサ),3軸方位センサ(3軸地磁気センサ)のうち、3軸加速度センサを用いたロール回転角θr及びピッチ回転角θpの推定と、3軸方位センサを用いたヨー回転角θyの推定について、結果式だけ示しておく。
【0098】
3軸加速度センサの出力を加速度ベクトルa=(ax,ay,az)とする。ここでのxyz座標系は、ARグラス7に固定されたセンサ座標系である。作業者Wの動作加速度が重力加速度gに比べて十分に小さいと仮定して、ARグラス7のロール回転角θr及びピッチ回転角θpを計算すると、次式のようになる。
【0099】
【0100】
また、3軸方位センサ(3軸地磁気センサ)は、北磁極向きの単位ベクトル(北磁極向きベクトル)d=(dx,dy,dz)を出力する。ここでのxyz座標系も、ARグラス7に固定されたセンサ座標系である。実際にはオフセット補正が必要であるが、ここでは北磁極向きベクトルdはオフセット補正後のベクトルであるとする。このとき、ARグラス7のヨー回転角θyは次式により計算できる。
【0101】
【0102】
(3.4)各RFタグ位置情報の更新
次に、実施例1の誤配送防止システムにおける、各パレットタグ1及び各作業者タグ2の位置情報の随時推定・更新処理について説明する。
図7は、実施例1の誤配送防止システムにおける、各パレットタグ1及び各作業者タグ2の位置情報の随時推定・更新処理を表すフローチャートである。
【0103】
天井リーダ5は、各天井アンテナ4に於ける各パレットタグ1及び各作業者タグ2のDOAベクトルdki(kはRFタグ(パレットタグ1又は作業者タグ2)のインデックス,iは天井アンテナ4(アンカーポイント)のインデックス)を検出し(S1)、検出された各天井アンテナ4に於けるDOAベクトルのリスト(dki)をタグ位置推定器12へ出力する(S2)、という動作を、継続して繰り返し行う。
【0104】
タグ位置推定器12のタグ位置推定部111は、天井リーダ5から各天井アンテナ4に於けるDOAベクトルのリスト(dki)が入力されると(S11)、検出されたそれぞれのRFタグについて、前述の式(9)による位置推定を行い(S12)、推定された各RFタグの(識別情報,位置情報)を管理サーバ11へ送信する(S13)、という動作を、継続して繰り返し行う。
【0105】
管理サーバ11のタグ位置更新部140は、タグ位置推定器12から各RFタグの(識別情報,位置情報)を受信すると(S21)、それぞれのRFタグの識別情報(前パレットタグID,後パレットタグID,又は作業者タグID)に従って、パレット情報記憶部122のパレットテーブルの前タグ位置情報又は後タグ位置情報、若しくは、出庫パレット情報記憶部126の出庫パレットテーブルの前タグ位置情報又は後タグ位置情報、若しくは、作業者ジョブ記憶部127の作業者ジョブテーブルの作業者位置情報を更新する(S22)、という動作を、継続して繰り返し行う。
【0106】
これにより、パレットテーブル,出庫パレットテーブル,及び作業者ジョブテーブルの各RFタグの位置情報は、常時、最新の位置情報に更新され続けることになる。
【0107】
(3.5)輸送車がゲートに接続した時の出庫タスクの生成
次に、実施例1の誤配送防止システムの全体的な動作として、まず、輸送車Tが、出荷ヤードの或る出荷ゲートGに入車し接続した際のシステム動作について説明する。
図8は、輸送車が出荷ゲートに接続した時の誤配送防止システムの全体的な動作を表すフローチャートである。
【0108】
輸送車Tが出荷ゲートGに接続し、輸送車Tの荷台後部のテールゲートが開かれると、輸送車Tの荷台天井入口付近に設けられた荷台リーダ6は、接続した出荷ゲートGのゲートタグ3の識別情報(ゲートタグID)を読み取る(S31)。そして、荷台リーダ6は、輸送車Tの識別情報(輸送車ID)Id(T)と、読み取られた出荷ゲートGのゲートタグ3のゲートタグID Id(Gt)を、通信回線13を介して、管理サーバ11へ送信する(S32)。
【0109】
管理サーバ11は、荷台リーダ6から(Id(T),Id(Gt))を受信すると(S41)、出庫タスク生成部131は、ゲート情報記憶部124からゲートタグID Id(Gt)に対応するゲートID Id(G)を取得し、輸送車Tの荷台へパレットを搬入する出庫タスクTk(T)を、出庫タスク記憶部125の出庫タスクテーブル(
図4参照)に新規に登録する。このとき、新規登録した出庫タスクTk(T)のレコードには、輸送車ID Id(T)及びゲートID Id(G)を登録し、該レコードの「タスク完了情報」は「未完了」とする(S42)。これにより、「輸送車Tの荷台へパレットを搬出する」という出庫タスクTk(T)が新たに生成されたことになる。
【0110】
次いで、輸送車行先情報抽出部130は、輸送車情報記憶部123の輸送車テーブルから、輸送車Tの行先情報D(T)及び積載数Q(T)を取得する(S43)。そして、出庫タスク生成部131は、パレット情報記憶部122のパレットテーブルから、この行先情報D(T)と同じ行先情報をもつパレットの(パレットID,前タグ位置情報,後タグ位置情報)を全部抽出して、抽出した各パレットの其々を、出庫パレット情報記憶部126の出庫パレットテーブルに、出庫パレットとして新規に登録する。このとき、新規登録した各出庫パレットの(パレットID,前タグ位置情報,後タグ位置情報)には、パレットテーブルから抽出した各パレットの(パレットID,前タグ位置情報,後タグ位置情報)を登録する。新規登録した各出庫パレットの「出庫タスクID」には、出庫タスクTk(T)の出庫タスクIDを登録し、「出庫完了情報」は「未完了」とする(S44)。
【0111】
次に、パレット運搬順序決定部132は、出庫タスク生成部131により新規登録された出庫タスクTk(T)に係る各出庫パレットについて、輸送車Tの荷台へ運搬する運搬順序を決定して(S45)、出庫パレットテーブルの各出庫パレットのレコードの「運搬順序」フィールドに、決定した運搬順序を登録する(S46)。ここで、パレット運搬順序決定部132による運搬順序の決定は、次のようにして行う。
【0112】
出庫タスクTk(T)に係る各出庫パレットの前パレットタグ,後パレットタグの位置情報は、出庫パレットテーブルから取得できるので、各出庫パレットの前側位置と後側位置を確定することができる。そこで、各出庫パレットの前側位置と後側位置の情報から、各出庫パレットを仮想的に平面上に配列し(例えば、
図2の出荷パレット仮置き場のパレットの配列を参照)、配列した各出庫パレットに対して、出荷ヤードの各出荷ゲートが配されたサイドに近い順に、運搬順序を決定してゆく。これにより、出庫タスクTk(T)に係るすべての出庫パレットに運搬順序が割り振られる。
【0113】
最後に、パレット運搬順序決定部132は、出庫パレットテーブルに登録された、出庫タスクTk(T)に係る出庫パレットの数が、輸送車Tの積載数Q(T)よりも多い場合には、運搬順序が大きい順(後の順)に、過剰な出庫パレットのレコードを出庫パレットテーブルから削除する(S47)。これにより、出庫パレットテーブルに登録された、出庫タスクTk(T)に係る出庫パレットの数(即ち、出庫タスクTk(T)に於いて輸送車Tの荷台へ搬出する出庫パレットの数)は、輸送車Tの積載数Q(T)以下となるように調整される。
【0114】
(3.6)作業者ジョブ登録時の作業者ジョブの生成
次に、新規に生成された出庫タスクTk(T)に対して、作業者Wが作業者ジョブを登録する際のシステム動作について説明する。
図9は、作業者ジョブ登録時の誤配送防止システムの全体的な動作を表すフローチャートである。
【0115】
まず、「輸送車Tの荷台へパレットを搬出する」という出庫タスクTk(T)に従事する作業者Wは、出荷ゲートGに接続された輸送車Tの開扉されたテールゲートの近傍に立ち、作業者端末装置9を操作して、ジョブ登録要求部103により、管理サーバ11へ作業者ジョブ登録要求(作業者Wが所持する作業者端末装置9の識別情報(作業者端末ID)を含む。)を送信する(S51)。
【0116】
管理サーバ11の作業者ジョブ登録部135は、作業者Wが所持する作業者端末装置9から作業者ジョブ登録要求(作業者端末IDを含む。)を受信すると(S61)、作業者情報記憶部121の作業者テーブルから、当該作業者端末IDに対応する作業者Wの作業者ID Id(W)及び作業者タグID Id(Wt)を取得し、現在出荷ゲートに接続している各輸送車の荷台リーダ6に対し、作業者タグID Id(Wt)の検出要求を送信する(S62)。
【0117】
各輸送車の荷台リーダ6は、作業者タグID Id(Wt)の検出要求を受信すると(S71)、その近傍のRFタグを検索し、作業者タグID Id(Wt)が検出されると、該作業者タグID及びその荷台リーダ6の記憶する輸送車ID Id(T)を含む検出通知を、管理サーバ11へ送信する(S72)。
【0118】
管理サーバ11の作業者ジョブ登録部135は、荷台リーダ6からの検出通知(作業者タグID Id(W),輸送車ID Id(T)を含む。)を受信すると(S63)、作業者ジョブ記憶部127の作業者ジョブテーブル(
図4参照)に、出庫タスクTk(T)に係る作業者Wの作業者ジョブJ(Tk(T),W)を新規に登録する(S64)。このとき、新規登録した作業者ジョブJ(Tk(T),W)のレコードには、作業者Wの作業者ID Id(W),輸送車Tに係る出庫タスクTk(T)の出庫タスクID Id(Tk(T))を登録し、「ジョブ完了情報」は「未完了」とする。これにより、「作業者Wが出庫タスクTk(T)に従事する」という作業者ジョブJ(Tk(T),W)が新たに生成されたことになる。また、これ以降、作業者ジョブテーブルに新規登録した作業者ジョブJ(Tk(T),W)のレコードの「作業者位置情報」フィールドは、上述したタグ位置更新部140によるRFタグの位置情報の更新処理によって、随時最新の位置情報に更新されるようになる。
【0119】
作業者ジョブJ(Tk(T),W)の登録が終わると、管理サーバ11の作業者ジョブ登録部135は、作業者Wが所持する作業者端末装置9に対して、登録完了を知らせる作業者ジョブ登録通知を送信する(S65)。作業者端末装置9は、作業者ジョブ登録通知を受信すると(S52)、作業者ジョブ登録が行われた旨を作業者Wに報知する(S53)。報知の方法は何でもよく、作業者端末装置9に備わったディスプレイに表示したり、音声出力デバイス8やARグラス7を用いて報知したりすることができる。
【0120】
(3.7)運搬作業開始前の運搬パレットの指示
次に、作業者Wが出庫タスクTk(T)に係る出荷パレットの運搬作業を開始する前の運搬パレットの指示に関するシステム動作について説明する。
図10は、運搬作業開始前の運搬パレットの指示に関する誤配送防止システムの全体的な動作を表すフローチャートである。
【0121】
まず、作業者Wが所持する作業者端末装置9の姿勢推定部101は、ARグラス7の姿勢情報検出部7bで検出される9軸センサの出力からARグラス7の姿勢情報を算出し、また、ARグラス7の撮影部7cは、ARグラス7の前景映像を撮影する(S81)。作業者端末装置9は、算出したARグラス7の姿勢情報と撮影したARグラス7の前景映像とを、作業者端末IDとともに管理サーバ11へ送信する(S82)。
【0122】
管理サーバ11は、作業者Wが所持する作業者端末装置9から、(姿勢情報,前景映像,作業者端末ID)を受信すると(S91)、作業者情報記憶部121から作業者端末IDに対応する作業者IDを取得し、作業者ジョブ記憶部127から作業者IDに対応する作業者位置情報r(W)及び出庫タスクTk(T)を取得する(S92)。
【0123】
次いで、周辺パレット選択部147は、作業者位置情報r(W)に基づき、出庫タスクTk(T)に係る出庫パレットのうち作業者Wから所定の距離以内にある出庫パレット(以下「周辺出庫パレット」と呼ぶ。)の出庫パレットIDを出庫パレット情報記憶部126からすべて取得する。また、周辺パレット選択部147は、作業者位置情報r(W)及びARグラス7の姿勢情報に基づき、作業者WのARグラス7の視界領域を算出し、出庫タスクTk(T)に係る出庫パレットのうち作業者WのARグラス7の視界領域内にある出庫パレット(以下「視界内出庫パレット」と呼ぶ。)の出庫パレットIDを出庫パレット情報記憶部126からすべて取得する(S93)。
【0124】
次に、パレットオブジェクト抽出部148は、ARグラス7の前景映像から、パレットのオブジェクト(以下「パレットオブジェクト」という。)を抽出する(S94)。このオブジェクト抽出は、CNN(Convolutional Neural Network)を用いた物体検出アルゴリズムを使用して行う。例えば、リアルタイムオブジェクト検出アルゴリズムとして、YOLO(You Look Only Onse)などがオープンソース・ライブラリとして現在公開されているので、これらのオブジェクト検出アルゴリズムを利用することができる。
【0125】
パレットオブジェクトが抽出された場合(S95)、前景内パレット特定部149は、抽出された各パレットオブジェクトの前景映像内の位置と、ステップS93で先に取得された各視界内出庫パレットの位置情報(出庫パレットテーブルの前タグ位置情報及び後タグ位置情報)に基づき、前景映像内の各パレットオブジェクトと各視界内出庫パレットとを対応させることで、前景映像内の各パレットオブジェクトの出庫パレットIDを特定する(S96)。
【0126】
前景映像内の各パレットオブジェクトのうちの少なくとも1つの出庫パレットIDが特定された場合(S97)、ARコンテンツ生成部151は、出庫パレットIDが特定された各パレットオブジェクトの運搬順序を、出庫パレットテーブルから取得し、ARコンテンツを生成する(S98)。そして、ARコンテンツ送信部152は、生成されたARコンテンツを、作業者Wが所持する作業者端末装置9へ送信する(S99)。作業者Wが所持する作業者端末装置9は、管理サーバ11からARコンテンツを受信すると(S83)、レンズ型ディスプレイ7aに、現実世界と重ねてそのARコンテンツを表示する(S84)。
【0127】
ここで、ARコンテンツ生成部151は、出庫パレットIDが特定された各パレットオブジェクトの運搬順序を参照し、作業者Wが次に輸送車Tの荷台に運搬すべきパレットオブジェクトを指示するARコンテンツを生成する。また、ARコンテンツ生成部151は、出庫パレットIDが特定された各パレットオブジェクトの運搬順序を参照し、次以降に輸送車Tの荷台に運搬すべきパレットオブジェクトの運搬順序を指示する拡張現実コンテンツを生成する。
図11に、ARコンテンツ生成部151により生成されるARコンテンツの一例を示す。
図11に表示されている多数の配列されたカゴ台車(パレット)は、現実世界の映像である。
図11のARコンテンツは、作業者Wが次に輸送車Tの荷台に運搬すべきパレットオブジェクトのパレット前面部が最も目立つ色(例えば赤色)を太枠で囲み、次の次以降に輸送車Tの荷台に運搬すべきパレットオブジェクトのパレット前面部を目立ちすぎない色(例えば青色)の枠で囲んだARコンテンツである。また、作業者Wが次に輸送車Tの荷台に運搬すべきパレットオブジェクトの前方の床面には、当該パレットオブジェクトを指し示す矢印のARコンテンツが表示されている。また、作業者Wが次以降に輸送車Tの荷台に運搬すべきパレットオブジェクトのパレット前面部中央に運搬順序を示す数字のARコンテンツが表示されている。さらに、各パレットオブジェクトの前方の床面には、出庫タスク別に、傾斜コの字状の枠体のARコンテンツが表示され、各枠体の前側には、その出庫タスクに係る輸送車Tが接続するゲートのゲート番号のARコンテンツが表示されている。各傾斜コの字状枠体のうち、作業者Wが従事する出庫タスクに係る傾斜コの字状枠体及びそのゲート番号は、最も目立つ色(例えば赤色)で表示され、それ以外の傾斜コの字状枠体及びそのゲート番号は、目立たない色(例えば灰色)で表示されている。矢印及び各傾斜コの字状枠体及びゲート番号文字の傾斜は、作業者Wの視界の変化に応じて、床面に描かれているよう見えるように変化する。
【0128】
このように、作業者Wが装着するARグラス7に、その作業者Wが次に輸送車Tの荷台に運搬すべきパレットオブジェクトを指示するARコンテンツが、現実の作業者Wの視界前景に重ねて表示されるため、作業者Wが輸送車Tの荷台に運搬べきパレットを取り間違うといったヒューマンエラーを確実に防止することができる。また、作業者Wが出荷ヤードに仮置きされたパレットを運搬し始める前に、次に運搬すべきパレットを指示する拡張現実コンテンツが表示されるので、行先の誤りのパレットを一度輸送車の荷台に運搬した後にそのパレットがもともと置いてあった場所に戻す、といった無駄な作業が生じることがなくなり、この無駄な作業による労働生産性の低下を招くことが防止される。
【0129】
(3.8)運搬作業時の人為的過誤判定警告
次に、作業者Wが出庫タスクTk(T)に係る出荷パレットとは異なるパレットを運搬しようとした場合に於ける人為的過誤判定警告に関するシステム動作について説明する。
図12は、人為的過誤判定警告に関する誤配送防止システムの全体的な動作を表すフローチャートである。
【0130】
まず、タグ移動検出部160は、作業者ジョブ記憶部127に記憶された各作業者Wの作業者位置情報を一定時間Δt毎に取得して、各時刻tに於いて各作業者Wの動きベクトルv(W,t)を計算する。また、タグ移動検出部160は、パレット情報記憶部122に記憶された各パレットPの前タグ位置情報又は後タグ位置情報を一定時間Δt毎に取得して、各時刻tに於いて各パレットPの動きベクトルv(P,t)を計算する(S101)。すなわち、時刻tに於ける作業者W,パレットPの位置ベクトルを、それぞれr(W,t),r(P,t)としたとき、タグ移動検出部160は、v(W,t)=r(W,t)-r(W,t-Δt),v(P,t)=r(P,t)-r(P,t-Δt)によりv(W,t),v(P,t)を計算する。Δtは予め決められた時間間隔とし、例えば、Δtは1秒~5秒程度の、作業者とパレットの動きの検出に適した適度な値に設定する。
【0131】
次いで、運搬中パレット特定部161は、各時刻tに於いて、周辺パレット選択部147により、各作業者Wについて、該作業者Wの所定の距離以内の近傍に存在するパレット(近傍パレット)のうち最も近傍のパレットP(最近傍パレット)を取得する(S102)。そして、運搬中パレット特定部161は、タグ移動検出部160が計算した、時刻tに於ける該作業者Wの動きベクトルv(W,t)と、最近傍パレットPの動きベクトルv(P,t)の差の大きさ|v(W,t)-v(P,t)|を計算し、|v(W,t)-v(P,t)|が所定の閾値以下であれば、該作業者Wが最近傍パレットPを運搬中であると判定する(S103)。
【0132】
ここで、或る作業者Wが最近傍パレットPを運搬中であると判定された場合(S103)、誤配送検出部162は、作業者ジョブ記憶部127に記憶された作業者Wの出庫タスクID Id(Tk(T;W))を取得し、出庫パレット情報記憶部126の出庫パレットテーブルから、出庫タスクID Id(Tk(T;W))に対応する出庫パレットのレコードを抽出し、抽出された出庫パレットのレコードの中に最近傍パレットPのレコードが存在するか否かを検査し、もし存在しなければ「誤運搬」と判定し、誤運搬情報を出力する(S104)。ここで、誤運搬情報には、作業者Wの作業者ID Id(W)及び最近傍パレットPのパレットID Id(P)が含まれる。
【0133】
ARコンテンツ生成部151は、誤配送検出部162から誤運搬情報が出力された場合、作業者Wに誤運搬を報知するARコンテンツ(誤運搬報知ARコンテンツ)を生成し(S105)、誤運搬情報によって特定される作業者Wの作業者端末装置9へ誤運搬報知ARコンテンツを送信する(S106)。
【0134】
作業者Wの作業者端末装置9は、管理サーバ11から誤運搬報知ARコンテンツを受信すると(S111)、ARグラス7に誤運搬報知ARコンテンツを表示することにより、作業者Wに対して最近傍パレットPの運搬が誤りであることを報知する。また、同時に音声出力デバイス8により、作業者Wに対して最近傍パレットPの運搬が誤りであることを報知する(S112)。
【0135】
図13に、誤運搬報知ARコンテンツの一例を示す。
図13で、背景に表示されている多数の配列されたカゴ台車(パレット)は、現実世界の映像である。
図13の例では、作業者Wが搬送中の最近傍パレットPが作業者Wの視界中央に、現実世界の映像に重ねて枠内に「出荷先が誤りです」と表示されたARコンテンツが表示されている。
【0136】
このように、作業者Wが誤ったパレットの運搬をしようとすると、パレットを動かし始めた初期段階で誤配送検出手段が誤運搬情報を出力し、作業者WにARコンテンツや音声により運搬中のパレットPの運搬が誤りであることを報知することで、作業者Wが輸送車Tの荷台に運搬するパレットを取り間違うヒューマンエラーを、より確実に防止することができる。
【0137】
(3.9)荷台搬入時の処理
最後に、作業者Wが出庫タスクTk(T)に係る出荷パレットを輸送車の荷台へ搬入したときの出庫完了処理に関するシステム動作について説明する。
図14は、出庫完了処理に関する誤配送防止システムの全体的な動作を表すフローチャートである。
【0138】
まず、作業者Wが、運搬中の出庫パレットPを輸送車Tの荷台に搬入した場合、輸送車Tの荷台リーダ6は、出庫パレットPのパレットタグ1(前パレットタグ1a及び後パレットタグ1b)を検出する(S121)。出庫パレットPのパレットタグ1が検出されると、荷台リーダ6は、検出されたパレットタグ1の識別情報(パレットタグID)を、輸送車Tの識別情報(輸送車ID)とともに管理サーバ11へ送信する(S122)。
【0139】
管理サーバ11のパレット出庫判定部170は、荷台リーダ6から(パレットタグID,輸送車ID)を受信すると(S131)、パレット情報記憶部122からパレットタグIDに対応するパレットIDを取得し、出庫パレット情報記憶部126の出庫パレットテーブルのパレットIDに対応するレコードの「出庫完了情報」を「完了」とする(S132)。
【0140】
次いで、タスク完了判定部171は、輸送車IDに対応する出庫タスクTk(T)の出庫タスクIDを、出庫タスク記憶部125の出庫タスクテーブルから取得する。そして、出庫パレット情報記憶部126の出庫パレットテーブルから、この出庫タスクIDに対応する出庫パレットのレコードを全部抽出して、抽出した全てのレコードの「出庫完了情報」が「完了」か否かを検査する(S133)。
【0141】
全てのレコードの「出庫完了情報」が「完了」の場合、タスク完了判定部171は、出庫タスクTk(T)は完了したと判定し、出庫タスク記憶部125の出庫タスクテーブルの出庫タスクTk(T)に対応するレコードの「タスク完了情報」を「完了」とする(S134)。これにより、輸送車Tに対する出庫タスクTk(T)は完了する。また、タスク完了判定部171は、作業者ジョブ記憶部127の作業者ジョブテーブルの出庫タスクTk(T)に対応するレコードの「ジョブ完了情報」を「完了」とする(S135)。これにより、出庫タスクTk(T)に従事する各作業者Wの作業者ジョブは完了する。そして、タスク完了判定部171は、出庫タスクTk(T)に従事する各作業者Wの作業者端末装置9に対して、作業者ジョブ完了通知を送信する(S136)。
【0142】
出庫タスクTk(T)に従事する各作業者Wの作業者端末装置9は、作業者ジョブ完了通知を受信すると(S141)、レンズ型ディスプレイ7a及び音声出力デバイス8により、作業者ジョブが完了したことを作業者Wに報知する(S142)。
【0143】
このように、作業者ジョブの完了報知を行うことで、各作業者Wは、出庫タスクTk(T)に対する運搬作業が完了したことを正確に把握することができ、出庫パレットの搬入のし忘れを確実に防止できる。
まず、作業者Wが所持する作業者端末装置9の姿勢推定部101は、ARグラス7の姿勢情報検出部7bで検出される9軸センサの出力からARグラス7の姿勢情報を算出し、また、ARグラス7の撮影部7cは、ARグラス7の前景映像を撮影する(S81)。
次に、作業者端末装置9は、位置情報要求を作業者端末IDとともに管理サーバ11へ送信する(S92a)。管理サーバ11は、作業者Wが所持する作業者端末装置9から、(位置情報要求,作業者端末ID)を受信すると、作業者情報記憶部121から作業者端末IDに対応する作業者IDを取得し、作業者ジョブ記憶部127から作業者IDに対応する作業者の位置情報r(W)及び出庫タスクTk(T)を取得する。そして、出庫タスクTk(T)に係る出庫パレットの出庫パレットIDを出庫パレット情報記憶部126からすべて取得する。そして、取得した各出庫パレットIDに対応する出庫パレットの位置情報(前タグ位置情報及び後タグ位置情報)を取得する。そして、取得した作業者の位置情報r(W)及び各出庫パレットの位置情報を、作業者端末装置9へ送信する(S92b)。
作業者端末装置9は、作業者の位置情報r(W)及び各出庫パレットの位置情報を受信すると、次に、周辺パレット選択部147は、作業者位置情報r(W)に基づき、出庫タスクTk(T)に係る出庫パレットのうち作業者Wから所定の距離以内にある出庫パレット(周辺出庫パレット)の出庫パレットIDを出庫パレット情報記憶部126からすべて取得する。また、周辺パレット選択部147は、作業者位置情報r(W)及びARグラス7の姿勢情報に基づき、作業者WのARグラス7の視界領域を算出し、出庫タスクTk(T)に係る出庫パレットのうち作業者WのARグラス7の視界領域内にある出庫パレット(視界内出庫パレット)の出庫パレットIDを出庫パレット情報記憶部126からすべて取得する(S93)。次に、パレットオブジェクト抽出部148は、ARグラス7の前景映像から、パレットのオブジェクト(以下「パレットオブジェクト」という。)を抽出する(S94)。パレットオブジェクトが抽出された場合(S95)、前景内パレット特定部149は、抽出された各パレットオブジェクトの前景映像内の位置と、ステップS93で先に取得された各視界内出庫パレットの位置情報(出庫パレットテーブルの前タグ位置情報及び後タグ位置情報)に基づき、前景映像内の各パレットオブジェクトと各視界内出庫パレットとを対応させることで、前景映像内の各パレットオブジェクトの出庫パレットIDを特定する(S96)。前景映像内の各パレットオブジェクトのうちの少なくとも1つの出庫パレットIDが特定された場合(S97)、ARコンテンツ生成部151は、出庫パレットIDが特定された各パレットオブジェクトの運搬順序を、出庫パレットテーブルから取得し、ARコンテンツを生成する(S98)。そして、作業者端末装置9は、レンズ型ディスプレイ7aに、現実世界と重ねてそのARコンテンツを表示する(S84)。これらステップS93~S98,S84の動作は、各モジュールが管理サーバ11側か作業者端末装置9側かの違いだけで、基本的に実施例1と同様である。