(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024698
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3207 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
A61B17/3207
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002497
(22)【出願日】2021-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】多田 裕一
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM36
4C160NN01
(57)【要約】
【課題】排出する流れの識別性を向上させることができる医療デバイスを提供する。
【解決手段】生体管腔から物体を排出する医療デバイス10であって、基端側から先端側へ延在し、基端側へ物体を通すことが可能な排出ルーメン21を備えたシャフト20と、排出ルーメン21の基端部に連通する排出通路50と、排出通路50へ流体を供給可能な混入部60と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔から物体を排出する医療デバイスであって、
基端側から先端側へ延在し、基端側へ物体を通すことが可能な排出ルーメンを備えたシャフトと、
前記排出ルーメンの基端部に連通する排出通路と、
前記排出通路へ流体または当該排出通路内を移動可能な移動体を供給可能な混入部と、を有する医療デバイス。
【請求項2】
前記排出通路の前記混入部よりも排出側の少なくとも一部は、透明または半透明である請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記排出通路に連結されて排出側へ流体を送るポンプを有する請求項1または2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記混入部は、前記ポンプの排出側に配置される請求項3に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記管体の基端部に連結されて前記ポンプを内包する操作部を有し、
前記混入部は、前記操作部の内部に配置される請求項3または4に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記ポンプは、間歇的に前記排出ルーメンの内部の圧力を減少させ、送液する構造を有する請求項3~5のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記混入部は、逆止弁を有する請求項3~6のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記ポンプが減少させる圧力は、前記逆止弁を開くことが可能である請求項7に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記混入部は、前記排出通路と連通し、流れ方向の一部に内径を減少させた絞り部を備えた主要流路と、前記絞り部にて前記主要流路に連通する混入流路と、を有し、前記主要流路および前記混入流路は、ベンチュリ管を形成する請求項1~8のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記移動体は、空気である請求項1~9のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体管腔の物体を排出するための医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血管等の生体管腔から血栓等を体外へ排出する医療デバイスが使用されている。例えば、アテレクトミーデバイスは、血管内のプラークや血栓などによる狭窄部を切削して排出するために使用される。アテレクトミーデバイスは、ドライブユニットに搭載された吸引手段を用いて、切削時に発生したデブリをデバイス内に回収する機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体管腔からデバイス内に回収されたデブリ等の物体が、デバイス内を円滑に流れずに滞る場合がある。この場合、デバイス内の流れの有無を識別する必要がある。しかしながら、外観のみで流れの有無を識別することは困難である。
【0005】
例えば特許文献1には、流体の時間微分圧力変化を測定することで、流体の流れの停止を判別する方法が記載されている。しかしながら、この方法は、圧力を測定する必要があり、デバイス内の流れの有無を、外観のみで認識することは困難である。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、排出する流れの識別性を向上させることができる医療デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る医療デバイスは、生体管腔から物体を排出する医療デバイスであって、基端側から先端側へ延在し、基端側へ物体を通すことが可能な排出ルーメンを備えたシャフトと、前記排出ルーメンの基端部に連通する排出通路と、前記排出通路へ流体または当該排出通路内を移動可能な移動体を供給可能な混入部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した医療デバイスは、排出ルーメンを通って基端側へ向かう流れに、混入部によって流体または移動体を混入させることができる。このため、医療デバイスは、流れに外観的なコントラストを作り出して、排出する流れの有無の識別性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る医療デバイスを示す平面図である。
【
図2】実施形態に係る医療デバイスの基端部を示す断面図である。
【
図3】実施形態に係る医療デバイスの混入部を示す平面図である。
【
図4】変形例を示す図であり、操作部の一部を断面で示し、他の部位を平面で示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面における各部材の大きさや比率は、説明の都合上誇張され実際の大きさや比率とは異なる場合がある。
【0011】
本実施形態に係る医療デバイス10は、急性下肢虚血や深部静脈血栓症において、血管内に挿入され、血栓、プラーク、アテローム、石灰化病変等の物体を破壊して排出する処置に用いられる。本明細書では、デバイスの血管に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。なお、破壊して排出する物体は、必ずしも血栓、プラーク、アテローム、石灰化病変に限定されず、生体管腔内に存在し得る物体は、全て該当し得る。また、本明細書では、排出される廃液が向かう側(上流から下流へ向かう側)を「排出側」と称することとする。
【0012】
医療デバイス10は、
図1および2に示すように、基端側へ物体を通すことが可能な排出ルーメン21を備えた長尺なシャフト20と、シャフト20の先端部に連結される切削部30と、シャフト20の基端部が連結される操作部40とを備えている。医療デバイス10は、さらに、シャフト20に設けられる排出ルーメン21に連通する排出通路50と、排出通路50へ流体を供給可能な混入部60と、シャフト20に設けられる駆動シャフト22を回転させる駆動部70と、排出通路50に連結される吸引部80と、排液バッグ90とを備えている。
【0013】
シャフト20は、駆動部70により回転駆動される駆動シャフト22と、駆動シャフト22を回転可能に収容する外管23と、外管23の先端部の側面に固定される先端チューブ26とを備えている。
【0014】
駆動シャフト22は、切削部30に連結されて、回転力を切削部30に伝達する。駆動シャフト22は、柔軟で、かつ基端側から作用する回転の動力を先端側に伝達可能な特性を有する。駆動シャフト22は、切削された物体を基端側へ移動させるための排出ルーメン21が形成されている。駆動シャフト22は、外管23を貫通し、先端部に切削部30が固定されている。駆動シャフト22の基端部は、駆動部70に連結されている。駆動シャフト22は、先端に、排出ルーメン21が開口する先端開口部24を有している。先端開口部24は、切削して形成される吸引対象物であるデブリが入り込む入口である。駆動シャフト22は、基端部に、基端開口部25を有している。基端開口部25は、先端開口部24から駆動シャフト22の内部に入ったデブリが放出される出口である。なお、排出ルーメン21は、駆動シャフト22の内部ではなく、外管23と駆動シャフト22の間や、駆動シャフト22の内側に設けられる他の管体の内部に形成されてもよい。
【0015】
切削部30は、血栓、プラークや石灰化病変等の物体を切削して小さくする部材である。したがって、“切削”とは、接触する物体に力を作用させて、物体を小さくすることを意味する。切削における力の作用方法や、切削後の物体の形状や形態は、限定されない。切削部30は、上述した物体を切削できる強度を有している。切削部30は、駆動シャフト22の先端部に固定されている。切削部30は、駆動シャフト22よりも先端側へ突出する円筒である。切削部30は、中空であり、排出ルーメン21と連通してもよい。切削部30の先端は、鋭利な刃31を備えている。なお、刃31の形状は、特に限定されない。切削部30は、刃31ではなく、微小な砥粒を多数有してもよい。
【0016】
駆動部70は、駆動シャフト22を回転させる。駆動部70は、回転駆動軸71と、回転駆動軸71を回転させる第1のモータ72とを備えている。回転駆動軸71は、駆動シャフト22の基端部に固定される。第1のモータ72の回転速度は、特に限定されないが、例えば5,000~200,000rpmである。
【0017】
吸引部80は、排出通路50に連結されたポンプ81と、ポンプ81を回転させる第2のモータ82とを備えている。ポンプ81は、第2のモータ82により駆動されて、排出通路50の上流側に陰圧を作用させる。ポンプ81は、排出ルーメン21および排出通路50を介して吸引した排液を、下流側へ移動させて、排液バッグ90へ排出する。ポンプ81は、例えばペリスタルティックポンプである。ペリスタルティックポンプは、回転する複数のローラーによりチューブを部分的に潰し、潰した位置を移動させることで、チューブの内部の流体を移動させる。チューブの潰れた位置には流体が内包されないため、ペリスタルティックポンプは、間歇的に流体を移動させることができる。ペリスタルティックポンプは、チューブの潰れた部位によって上流側と下流側を確実に隔絶できる。このため、ペリスタルティックポンプは、混入部60により混入される流体の上流側への逆流を効果的に防止でき、安全性が高い。なお、ポンプ81の形態は、特に限定されない。ポンプ81は、上流側と下流側を確実に隔絶できる、例えばダイヤフラム式ポンプであってもよい。ポンプ81により生じる排出通路50内の流速は、特に限定されないが、例えば20~30mm/分である。ポンプ81により生じる供給通路50内の流量は、特に限定されないが、例えば250~460mm3/分である。
【0018】
外管23は、可撓性を備える管体であり、基端部が操作部40に固定されている。外管23の先端部は、切削部30の基端側に位置している。先端チューブ26は、可撓性を備える管体であり、外管23の先端部の外周面に固定されている。先端チューブ26は、内部にガイドワイヤを挿入可能なガイドワイヤルーメン27を有している。
【0019】
操作部40は、吸引部80、駆動部70、混入部60および排出通路50の一部を内包する操作部本体41と、操作部本体41の内部に固定されて外管23の基端部が固定された接続部42とを備えている。接続部42は、駆動シャフト22が回転可能に貫通する内部空間を備えた中空部43が形成されている。中空部43の内部空間は、駆動シャフト22の基端開口部25と連通している。基端開口部25は、例えば、駆動シャフト22の基端部の内周面から外周面へ貫通する孔である。接続部42の基端部には、接続部42の内部空間を密封するリング状のシール部44が配置されている。シール部44の外周面は、中空部43の内周面と密着し、シール部44の内周面は、駆動シャフト22の外周面と摺動可能に密着する。中空部43の先端側の内周面には、外管23の基端部が固定されている。中空部43の外周面には、内部空間と排出通路50を連通させるポート45が形成されている。
【0020】
排出通路50は、
図2および3に示すように、ポート45とポンプ81の間に配置される第1通路51と、ポンプ81と混入部60の間に配置される第2通路52と、混入部60と排液バッグ90の間に配置される第3通路53とを備えている。第1通路51、第2通路52および第3通路53は、管体により形成される。第1通路51は、ポンプ81の吸引力(陰圧)を、ポート45、中空部43の内部空間、および駆動シャフト22の基端開口部25を介して、排出ルーメン21に作用させることができる。第2通路52は、ポンプ81から排出される廃液を、混入部60へ搬送することができる。第3通路53は、混入部60を通過した廃液を、排液バッグ90へ搬送することができる。排出通路50の少なくとも第3通路53は、術者が内部の流れを目視できるように、透明または半透明である。第2通路52と第3通路の間で流体を混入しやすいように、第3通路53の内径は、第2通路52の内径よりも大きいことが好ましい。一例として、第1通路51の内径は2.0mm、第2通路52の内径は2.0mm、第3通路53の内径は2.2mmである。
【0021】
混入部60は、排出通路50に空気を混入させる部位である。混入部60は、第2通路52の基端部に連結された流入部61と、第3通路53の先端部に連結された流出部62と、流入部61と流出部62の間に配置される主要流路63と、主要流路63に連通する混入流路64とを備えている。混入部60は、吸引部80よりも下流側に配置される。このため、混入部60から排出通路50に混入した空気が、吸引部80を超えて上流側へ逆流することを抑制できる。なお、混入部60は、吸引部80よりも上流側に配置されてもよい。
【0022】
主要流路63は、流入部61と流出部62の間で内径が減少する絞り部65を有している。混入流路64は、絞り部65で、主要流路63に対して略垂直に連通している。一例として、流入部61の内径は3.7mm、流出部62の内径は3.7mm、絞り部65の内径は1.6mmである。なお、主要流路63は、内径が減少する絞り部65を有さなくてもよい。例えば、主要流路63は、一定の内径で形成されてもよい。
【0023】
混入流路64は、逆止弁66を有している。逆止弁66は、外部から混入流路64への流れを許容しつつ、混入流路64から外部への流れを抑制する。逆止弁66は、特に限定されないが、例えばダックビル弁である。なお、逆止弁66は、例えば、気体を通すが液体を通さない膜体であってもよい。また、混入流路64は、逆止弁66を有さずに開口のみを有してもよい。
【0024】
次に、本実施形態に係る医療デバイス10の使用方法を、血管内の血栓、石灰化病変等の病変部を破壊して吸引する場合を例として説明する。
【0025】
初めに、術者は、ガイドワイヤ(図示せず)を血管に挿入し、病変部の近傍へ到達させる。次に、術者は、医療デバイス10のガイドワイヤルーメン27に、ガイドワイヤの基端を挿入する。この後、ガイドワイヤをガイドとして、医療デバイス10を病変部の近傍へ到達させる。
【0026】
次に、術者は、医療デバイス10の駆動部70および吸引部80を作動させる。これにより、回転駆動軸71の回転と、ポンプ81の吸引が開始される。回転駆動軸71は、駆動シャフト22および切削部30を回転させる。回転する切削部30は、血管内で病変部を切削する。
【0027】
ポンプ81は、吸引力(陰圧)を、ポート45を介して中空部43の内部空間に作用させる。このため、中空部43の内部空間に位置する基端開口部25から、駆動シャフト22の排出ルーメン21に陰圧が作用する。したがって、切削部30の刃31により切削された病変部は、デブリとなって、駆動シャフト22の先端開口部24から排出ルーメン21に吸引される。
【0028】
吸引されたデブリを含む排液は、排出ルーメン21の基端開口部25から中空部43の内部空間に到達する。中空部43の内部空間の排液は、ポート45から第1通路51へ流入し、ポンプ81を通って第2通路52へ排出される。第2通路52へ移動した排液は、混入部60へ到達する。
【0029】
混入部60へ到達した排液は、流入部61から絞り部65を通り、流出部62へ流れる。このとき、排液は、ベンチュリ効果により、絞り部65で流速を上昇させ、圧力を減少させる。これにより、操作部本体41の内部の空気(流体)が、逆止弁66を通って混入流路64から主要流路63へ入り、排液に混入される。なお、逆止弁66が設けられるため、混入流路64から操作部本体41の内部へ排液が漏れることが抑制される。
【0030】
なお、管の内部の流速は、管の内壁面の近くで遅くなり、管の内壁面から離れるほど速くなる。これにより、管の内部の圧力は、管の内壁面の近くで低くなる。このため、主要流路63に絞り部65が形成されなくても、空気(流体)が混入流路64から主要流路63へ入り、排液に混入される。
【0031】
混入流路64から主要流路63へ流入する空気は、途切れない定常流とならずに間歇的に流れるため、気泡を有する泡状(粒状)となることができる。混入流路64から主要流路63へ流入する空気は、途切れない定常流となった場合であっても、乱流により泡状となることができる。特に、ポンプ81が間歇的に排液を送るため、混入流路64から主要流路63へ流入する空気も間歇的となりやすく、泡状(粒状)となりやすい。さらに、逆止弁66が、ダックビル弁のように機械的な動きの遅れが生じる構造であれば、逆止弁66を通る空気(流体)は、間歇的となって流れやすい。したがって、排液と空気は、コントラストにより目視で識別しやすい。このため、術者は、第3通路53を通る排液に空気がどの程度混入されているか否かを、目視により容易に識別できる。なお、排液が流れていない場合には、混入流路64から排液に空気は混入されない。したがって、術者は、排液に空気が混入されているか否かを識別することで、排液が流れているか否かを容易に識別できる。
【0032】
操作部本体41の内部の空気は、駆動する第1のモータ72および第2のモータ82により昇温しやすい。操作部本体41の内部の空気の温度が上昇し過ぎると、医療デバイス10の駆動部70や吸引部80の動作が不安定となる可能性がある。しかしながら、操作部本体41の内部の空気は、混入部60から排出通路50を通って排出される。操作部本体41の内部の空気が排出されると、操作部本体41の隙間等から、外部の空気が操作部本体41の内部へ流入する。これにより、操作部本体41の内部が冷却され、医療デバイス10の駆動部70や吸引部80の動作を安定させることができる。
【0033】
第3通路53へ送られた排液および空気は、第3通路53を流れて排液バッグ90に排出される。病変部の切削およびデブリの吸引が完了した後、術者は、医療デバイス10の動作を停止させる。このため、駆動シャフト22の回転が停止し、かつポンプ81の吸引が停止する。これにより、切削部30による切削およびデブリの排出が停止される。この後、医療デバイス10を血管から抜去し、処置が完了する。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る医療デバイス10は、生体管腔から物体を排出する医療デバイス10であって、基端側から先端側へ延在し、基端側へ物体を通すことが可能な排出ルーメン21を備えたシャフト20と、排出ルーメン21の基端部に連通する排出通路50と、排出通路50へ流体(例えば空気)を供給可能な混入部60と、を有する。
【0035】
上記のように構成した医療デバイス10は、排出ルーメン21を通って基端側へ向かう流れに、混入部60によって流体を混入させることができる。このため、医療デバイス10は、流れに外観的なコントラストを作り出して、排出する流れの有無の識別性を向上させることができる。また、混入部60により混入された流体は、上流側へ流れないため、生体管腔内へ不用意に混入されない。このため、本医療デバイス10は、安全性が高い。
【0036】
また、排出通路50の混入部60よりも排出側の少なくとも一部は、透明または半透明である。これにより、術者は、目視によって、排出する流れの有無を容易に認識できる。
【0037】
また、医療デバイス10は、排出通路50に連結されて排出側へ流体を送るポンプ81を有する。これにより、排出ルーメン21に効果的に吸引力を作用させることができる。
【0038】
また、混入部60は、ポンプ81の排出側に配置される。これにより、混入部60から排出通路50に混入した流体が、ポンプ81を超えて上流側へ逆流することを抑制できる。
【0039】
また、医療デバイス10は、管体の基端部に連結されてポンプ81を内包する操作部40を有し、混入部60は、操作部40の内部に配置される。これにより、ポンプ81が生み出す熱により加熱された空気を、混入部60によって排出通路50から排出できる。このため、操作部40の内部を冷却して、医療デバイス10の動作を安定させることができる。混入部60は、発熱しやすい第1のモータ72や第2のモータ82の近くに配置されれば、第1のモータ72や第2のモータ82を効果的に冷却できる。
【0040】
また、ポンプ81は、間歇的に排出ルーメン21の内部の圧力を減少させ、送液する構造を有する。これにより、排出通路50を通る流れに混入される流体が間歇的となりやすいため、流れの有無の識別性を向上させることができる。
【0041】
また、混入部60は、排出通路50と連通し、流れ方向の一部に内径を減少させた絞り部65を備えた主要流路63と、絞り部65にて主要通路63に連通する混入流路64と、を有し、主要流路63および混入流路64は、ベンチュリ管を形成する。これにより、ベンチュリ効果により内圧が低下する絞り部65へ、混入部60から流体や移動体を容易に混入させることができる。ベンチュリ効果は、排出通路50を流体が流れることで生じることから、流れがない場合には生じないため、流れの有無を容易に認識できる。
【0042】
また、混入部60は、逆止弁66を有する。これにより、排出ルーメン21を通って基端側へ向かう流れが、混入部60から意図せずに排出されることを抑制できる。
【0043】
また、ポンプ81が減少させる圧力は、逆止弁66を開くことが可能である。移動体は、空気であってもよい。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、医療デバイス10が挿入される生体管腔は、血管に限定されず、例えば、脈管、尿管、胆管、卵管、肝管等であってもよい。また、医療デバイス10は、切削部30および駆動シャフト22を備えなくてもよい。この場合、排出ルーメン21は、管体であるシャフト20の内部に形成される。
【0045】
また、
図4に示す変形例のように、医療デバイス10は、気泡センサ100と、表示部101とを備えてもよい。気泡センサ100は、例えば操作部40の内部に配置されて、第3通路53を排液バッグ90へ向かって流れる気泡の数をカウントできる。気泡センサ100は、例えば超音波センサであるが、気泡を検出できれば、構造は限定されない。表示部101は、気泡センサ100の出力結果から流速を算出して表示させる。表示部101は、例えばモニタと、CPUなどの演算部を有している。
【0046】
また、混入部60から排出通路50へ混入されるものは、空気以外の気体、色付きの(例えば白色の)液体、排出通路50内を移動可能な固体である移動体であってもよい。なお、液体の場合、排出通路50を流れる廃液と混ざって定常流とならないように、高粘度の流体であることが好ましい。高粘度の流体は、排液に含まれる体液(例えば血液)よりも高い粘度を有する流体であり、例えば造影剤や高張液である。なお、流体は、高粘度の流体に限定されず、例えば生理食塩液であってもよい。また、流体は、体液(例えば血液)と混ざりにくい油脂系の流体であってもよい。移動体は、例えば、排出通路50内を移動可能な大きさの球体(ビーズ)である。混入部60から排出通路50へ混入するものが空気以外である場合には、混入流路64に、混入する流体や移動体を供給する供給管や容器が連結される。
【0047】
また、吸引力は、ポンプ81ではなく、駆動シャフト22によって発生してもよい。駆動シャフト22は、アルキメディアンスクリューポンプの構造を備えていれば、回転することで、吸引力を発生できる。この場合、医療デバイス10は、ポンプ81を備えなくても、デブリを排出できる。
【0048】
また、吸引力は、内圧が大気圧よりも低い状態で密封された真空容器を排液バッグ90として使用することで、真空容器によって発生してもよい。この場合、医療デバイス10は、ポンプを備えなくても、デブリを真空容器の吸引力によって排出できる。
【符号の説明】
【0049】
10 医療デバイス
20 シャフト
21 排出ルーメン
22 駆動シャフト
30 切削部
40 操作部
50 排出通路
60 混入部
63 主要流路
64 混入流路
65 絞り部
66 逆止弁
70 駆動部
80 吸引部
81 ポンプ