IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンケンの特許一覧

<>
  • 特開-面状発熱体 図1
  • 特開-面状発熱体 図2
  • 特開-面状発熱体 図3
  • 特開-面状発熱体 図4
  • 特開-面状発熱体 図5
  • 特開-面状発熱体 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024701
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】面状発熱体
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20240216BHJP
   H05B 3/03 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H05B3/20 349
H05B3/03
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127502
(22)【出願日】2022-08-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】591107230
【氏名又は名称】株式会社デンケン
(74)【代理人】
【識別番号】100141106
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 清志
(72)【発明者】
【氏名】一丸 晴福
【テーマコード(参考)】
3K034
3K092
【Fターム(参考)】
3K034AA07
3K034AA10
3K034AA25
3K034JA09
3K092QA05
3K092QB14
3K092QB18
3K092QB21
3K092QC17
3K092RF04
(57)【要約】
【課題】発熱量を安定化させることができる。
【解決手段】発熱用導電性糸を少なくとも含み、所定間隔で配置される横糸8と、絶縁性糸からなり、横糸8に交差して所定間隔で編み込まれて配置される縦糸10と、横糸8の両端部に電気的に接続するようにそれぞれ配置される1対の電極線6と、を有し、一対の電極線6の各々は、横糸8方向における両端部のうち外側に位置する外側端部に配置され横糸と交互に交差して編み込まれた1列以上の外側端部電極線単位6aと、外側端部電極線単位6aの内側に配置された二列以上の内部電極線単位6bとを有し、内部電極線単位
6bは、隣接する内部電極線単位6bと長手方向に電気的に離接を反復するように配置された二列以上の電極線単位で構成している。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱用導電性糸を少なくとも含み、所定間隔で配置される横糸と、
絶縁性糸からなり、前記横糸に交差して所定間隔で編み込まれて配置される縦糸と、
前記横糸の両端部に電気的に接続するようにそれぞれ配置される1対の電極線と、を有し、
前記一対の電極線の各々は、前記横糸方向における両端部のうち外側に位置する外側端部に配置され前記横糸と交互に交差して編み込まれた1列以上の外側端部電極線単位と、前記外側端部電極線単位の内側に配置された二列以上の内部電極線単位とを有し、
前記内部電極線単位は、隣接する内部電極線単位と長手方向に電気的に離接を反復するように配置された二列以上の電極線単位で構成している
ことを特徴とする面状発熱体。
【請求項2】
前記電極線に隣接する縦糸である隣接縦糸は複数列配置されており、前記電極線に隣接しない縦糸である非隣接縦糸より内部糸の本数が多くなるように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の面状発熱体。
【請求項3】
前記隣接縦糸に隣接する前記非隣接縦糸と、前記隣接縦糸との前記横糸方向における間隔は、前記非隣接縦糸同士の間隔より短くなるように配置した
ことを特徴とする請求項2記載の面状発熱体。
【請求項4】
前記隣接縦糸同士の間隔は、前記隣接縦糸に隣接する前記非隣接縦糸と前記隣接縦糸との前記横糸方向における間隔より短くなるように配置した
ことを特徴とする請求項3記載の面状発熱体。
【請求項5】
前記内部電極線単位は、隣接する内部電極線単位と長手方向に電気的に離接を反復するように配置されることにより、互いに接触した電熱線の束の本数が少なくなる箇所において、前記内部電極線単位のうち最も内側に配置された内部電極線単位を含む束と前記縦糸とを跨ぐように前記横糸を配置した
ことを特徴とする請求項1記載の面状発熱体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の発熱体を織糸として用いて形成した面状発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性の発熱体を織糸として用いて形成した面状発熱体がよく知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、経糸として、側端位電線と中間位電線とが間に絶縁性の経糸を挾むことなく密に隣接して並べられると共に、端部に絶縁性の経糸が設けられ、緯糸として、絶縁性の緯糸と導電発熱糸とが交互となるように織られている面状発熱体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平8-28268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の面状発熱体では、経糸として、側端位電線と中間位電線とが間に絶縁性の経糸を挾むことなく密に隣接して並べられると共に、端部に絶縁性の経糸が設けられているので、発熱量が安定しないという問題があった。
【0006】
より具体的には、側端位電線と中間位電線とは、隣接して並べられるが、中間位電線は一方側に隣接する側端位電線または他方側に隣接する他の中間位電線のいずれか一方と、その側面において接している状態と離れている状態が、その長さにそって交互に生ずるように組織されている。
【0007】
そのため、側端位電線と中間位電線とは、左右いずれかに曲げられながら緯糸に織られているので、それぞれ様々な応力が加わりことにより抵抗値にバラツキが生じ、全体の発熱量が不安定となるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、発熱量を安定化させる面状発熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するため、本発明に係る面状発熱体の第1の特徴は、
発熱用導電性糸を少なくとも含み、所定間隔で配置される横糸と、
絶縁性糸からなり、前記横糸に交差して所定間隔で編み込まれて配置される縦糸と、
前記横糸の両端部に電気的に接続するようにそれぞれ配置される1対の電極線と、を有し、
前記一対の電極線の各々は、前記横糸方向における両端部のうち外側に位置する外側端部に配置され前記横糸と交互に交差して編み込まれた1列以上の外側端部電極線単位と、前記外側端部電極線単位の内側に配置された二列以上の内部電極線単位とを有し、
前記内部電極線単位は、隣接する内部電極線単位と長手方向に電気的に離接を反復するように配置された二列以上の電極線単位で構成している
ことにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る面状発熱体によれば、発熱量を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る面状発熱体の全体構成を示す全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る面状発熱体の各電極線と縦糸との幅方向における位置関係を模式的に示した説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る面状発熱体の詳細を模式的に示した説明図である。
図4】本発明の変形例1に係る面状発熱体の詳細を模式的に示した説明図である。
図5】本発明の変形例2に係る面状発熱体の詳細を模式的に示した説明図である。
図6】本発明の変形例3に係る面状発熱体の縦糸の位置関係を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0013】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る面状発熱体の全体構成を示す全体構成図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る面状発熱体2は、横糸8と縦糸10と電極線6とを有する織布5と、リード線22とを備えている。
【0016】
織布5の横糸8は、発熱用導電性糸と、必要に応じて絶縁糸を含む糸で構成してある。横糸8を構成する発熱用導電性糸は、たとえば絶縁性フィラメントの外周を導電性塗料で被覆したものである。この発熱用導電性糸は、単線でも撚り線でも良い。絶縁性フィラメントの材質としては、特に限定されないが、ポリエステル、コットン、ナイロン、ガラス繊維などである。導電性塗料としては、たとえば導電性粒子を混入して得られる温度依存性の高い正温度特性(PTC)型の導電性塗料などが用いられる。
【0017】
PTC型の導電性塗料としては、高温になるにつれて、抵抗が増大し、良好な自己温度調節機能を発揮するものであれば特に限定されず、たとえば金属粒子、カーボン粒子(カーボンブラック粒子、グラファイトカーボン粒子、黒鉛粒子)などの、導電性粒子を含有するものが用いられる。導電性粒子としては、カーボン粒子が好ましく用いられる。
【0018】
このような導電性塗料中に、絶縁性フィラメントを浸漬して乾燥させれば、本実施形態の横糸8を構成する導電性糸が得られる。導電性糸の電気抵抗値は、おおむね、500~10000Ω/cmである。
【0019】
本実施形態では、縦糸10は、面状発熱体2の長手方向Lに沿って延び、その長手方向Lに直交する幅方向Wに沿って所定間隔で配置され、絶縁性糸で構成してある。
【0020】
縦糸10を構成する絶縁性糸は、たとえば導電性塗料で被覆されていない以外は同様な導電性糸の芯材として用いられる絶縁性フィラメントで構成される。また、例えば金属線を絶縁被覆したものでも良い。この縦糸10も、単線でも撚り線でも良い。
【0021】
横糸8の幅方向Wの両端には、一対の電極線6が織布5の長手方向Lに沿って配置してある。
【0022】
本実施形態では、織布5における隣り合う横糸8相互間の間隔L1は、好ましくは0.01~50mmである。また、織布5における隣り合う縦糸10相互間の間隔W1は、好ましくは0.01~50mmである。
【0023】
横糸8の配置間隔L1が狭すぎると、単位面積あたりの発熱量が大きくなりすぎる傾向にあり、横糸8の配置間隔L1が広すぎると、面状発熱体全体としての発熱能力が低下する傾向にある。なお、縦糸10は、ほとんど発熱に寄与しないため、織布5としての強度を保持できる限り、縦糸10の配置間隔W1は、横糸8の配置間隔L1よりも広くすることができる。ただし、横糸8と縦糸10との織布5を形成する作業性を考慮すると、横糸の配置間隔W1と、縦糸の配置間隔L1とは、実質的に同じ程度がよい。
【0024】
縦糸10と、横糸8と、電極線6とを有する織布5は、図示しないが、透明または不透明な絶縁被覆層で上下方向から挟むように被覆される。絶縁被覆層は、特に限定されないが、たとえば塩化ビニルシート、PETシート、ポリオレフィンシート、ポリウレタンシート、アクリルシートなどで構成される。
【0025】
織布5を絶縁被覆層で被覆するための方法としては、特に限定されないが、接着剤による方法、熱融着による方法などが例示される。接着剤を用いる場合には、接着剤としては、ポリウレタン系やエポキシ樹脂系の接着剤が好ましく使用される。
【0026】
また、上述した実施形態における面状発熱体2の絶縁被覆層は、単層膜でも良いが、たとえば塩化ビニルシートとポリエチレンテレフタレート(PET)シートとの多層膜で構成しても良い。この絶縁被覆層を、塩化ビニルシートとPETシートとの多層膜で構成する場合には、内側を塩化ビニルシートで構成し、外側をPETシートで構成することが好ましい。PETシートを外側に配置することで、外側からの液体の浸透を有効に防止することができる。また、内側に比較的に柔軟な塩化ビニルシートを配置することで、発熱体となる織布を挟み込んでの熱融着が容易になると共に、外側のPETシートの破損を、内側の塩化ビニルシートで補填することができる。多層膜は、たとえば熱ラミネーション工法などで製造することができる。
【0027】
各電極線6の長手方向Lの端部には、電源に接続するためのリード線22が接続してある。このリード線22を介して、一対の電極線6間に印加される電圧は、特に限定されないが、たとえば250ボルト以下である。電極線6の間に電圧が印加されると、横糸8の長手方向Wに電流が流れ、横糸8が発熱する。面状発熱体における発熱部の発熱温度は、絶縁被覆層4の材質などにもよるが、80℃以下程度が好ましい。
【0028】
本実施形態に係る面状発熱体2は、並列電極タイプで、いわゆる線面タイプの面状発熱体である。そのため、面状発熱体の一部に破損が生じて、横糸8からなる線状発熱素子の一部が切断されたとしても、他の横糸8には電流が供給され、発熱を維持することができる。また、切断された横糸8は、電流が流れずに発熱しないのみであり、他の横糸8に印加される電圧も変化せず、異常発熱などが発生するおそれもない。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態に係る面状発熱体2の各電極線6と縦糸10との幅方向Wにおける位置関係を模式的に示した説明図である。
【0030】
図2に示すように、横糸8の幅方向Wの両端には、一対の電極線6が織布5の長手方向Lに沿って配置してある。一対の電極線6は、横糸8と同様に、発熱用導電性糸と、必要に応じて絶縁糸を含む糸で構成してある。電極線6を構成する発熱用導電性糸は、たとえば絶縁性フィラメントの外周を導電性塗料で被覆したものである。
【0031】
一対の電極線6の各々は、外側端部電極線単位6aと、内部電極線単位6bとを有している。
【0032】
外側端部電極線単位6aは、幅方向W(横糸方向)における両端部のうち外側に位置する外側端部に配置されており、内部電極線単位6bは、外側端部電極線単位6aの内側に二列以上配置されている。
【0033】
電極線単位6に隣接する縦糸10である隣接縦糸10aは、電極線に隣接しない縦糸10である非隣接縦糸10bより高強度の縦糸である。具体的には、隣接縦糸10aは、非隣接縦糸10bより構成する内部糸の糸本数が増加されることにより高強度を実現している。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に係る面状発熱体2の詳細を模式的に示した説明図である。
【0035】
図3に示すように、外側端部電極線単位6aは、外側端部電極線単位6a1と外側端部電極線単位6a2とを有している。外側端部電極線単位6a1と外側端部電極線単位6a2とは、幅方向W(横糸方向)における両端部のうち外側に位置する外側端部に配置されており、横糸8と交互に交差して編み込まれている。具体的には、外側端部電極線単位6a1と外側端部電極線単位6a2ともに、横糸8aの下方を潜り、横糸8bの上方を跨ぎ、横糸8cの下方を潜り、横糸8dの上方を跨ぎ・・・と、横糸8と交互に交差して編み込まれている。
【0036】
このように、外側端部電極線単位6aと横糸8とは交互に交差して編み込まれるので、外側端部電極線単位6aに生じる応力はほぼ一定となり抵抗値が安定するため、面状発熱体2が発熱する発熱量全体の安定化を図ることができる。
【0037】
一方、内部電極線単位6bは、隣接する内部電極線単位6bと長手方向Lに電気的に離接を反復するように配置された二列以上の電極線単位で構成している。例えば、内部電極線単位6bの1つである内部電極線単位6b1は、横糸8a,8bと交互に交差して編み込まれている箇所においては、外側端部電極線単位6a2と電気的に接触している。その一方、横糸8e,8fと交互に交差して編み込まれている箇所においては、外側端部電極線単位6a2と離間し電気的に非接触状態となっており、内部電極線単位6b2と電気的に接触している。また、内部電極線単位6b2は、横糸8a,8bと交互に交差して編み込まれている箇所においては、内部電極線単位6b3と電気的に接触している。その一方、横糸8e,8fと交互に交差して編み込まれている箇所においては、内部電極線単位6b3と離間し電気的に非接触状態となっており、内部電極線単位6b1と電気的に接触している。
【0038】
このように、内部電極線単位6bは、隣接する内部電極線単位6bと長手方向Lに電気的に離接を反復するように配置されているので、電極線6の長手方向Lにおいて電流分布を偏る箇所が発生することを防止し、比較的均一な電流分布を形成させることができる。
【0039】
横糸8a,8bと交互に交差して編み込まれている箇所においては、外側端部電極線単位6a1と、外側端部電極線単位6a2と、内部電極線単位6b1とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b2と内部電極線単位6b3とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b4と内部電極線単位6b5とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b6と内部電極線単位6b7と内部電極線単位6b8とが電気的に接触し、1本の電極線束となっている。
【0040】
一方、横糸8e,8fと交互に交差して編み込まれている箇所においては、外側端部電極線単位6a1と外側端部電極線単位6a2とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b1と内部電極線単位6b2が電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b3と内部電極線単位6b4とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b5と内部電極線単位6b6とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b7と内部電極線単位6b8とが電気的に接触し、1本の電極線束となっている。
【0041】
このように、横糸8a,8bと交互に交差して編み込まれている箇所においては、4本の電極線の束が形成されており、横糸8e,8fと交互に交差して編み込まれている箇所においては、5本の電極線の束が形成されている。
【0042】
隣接縦糸10a3は、内部電極線単位6b8に隣接しており、横糸8と交互に交差して編み込まれている。隣接縦糸10a3と内部電極線単位6b8とは、横糸8a,8bと交互に交差して編み込まれている箇所においては、同じ電極線の束とし、横糸8e,8fと交互に交差して編み込まれている箇所においては、異なる電極線の束としている。そのため、内部電極線単位6b8は、横糸8と交互に交差して編み込まれることなく、横糸8cを跨ぎ、さらに横糸8fを跨ぐようにて編み込まれる。このように、交差して編み込まれていない箇所の編み込み強度は低下する可能性があるので、互いに接触した電熱線の束の本数が少なくなる箇所、すなわち横糸8bと交互に交差して編み込まれている箇所において、内部電極線単位6bのうち最も内側に配置された内部電極線単位6b8を含む束と隣接縦糸10a3とを跨ぐように横糸8bを配置している。
【0043】
このように横糸8が編み込まれていることで、内部電極線単位6b8の横糸8と交差して編み込まれていない箇所の編み込み強度を補強することができる。
【0044】
また、隣接縦糸10a1は、外側端部電極線単位6a1に隣接して配置されており、横糸8と交互に交差して編み込まれている。
【0045】
<変形例1>
本発明の一実施形態に係る面状発熱体2の変形例1について説明する。
【0046】
図4は、本発明の変形例1に係る面状発熱体2の詳細を模式的に示した説明図である。
【0047】
図4に示すように、図3に示した本発明の一実施形態に係る面状発熱体2と異なり、本発明の変形例1に係る面状発熱体2では、外側端部電極線単位6aとして、外側端部電極線単位6a1のみを有している。
【0048】
このように、外側端部電極線単位6aは1列の電極線単位で構成するようにしてもよいし、複数列の電極線単位で構成するようにしてもよい。
【0049】
また、図3に示した本発明の一実施形態に係る面状発熱体2では、1列の隣接縦糸10a1が、外側端部電極線単位6a1に隣接して配置され、1列の隣接縦糸10a3が、内部電極線単位6b8に隣接して配置されていたがこれに限らない。
【0050】
図4に示すように、本発明の変形例1に係る面状発熱体2では、外側端部電極線単位6a1に隣接して配置された隣接縦糸10aは、隣接縦糸10a1と隣接縦糸10a2の2列を有し、1本の縦糸の束として外側端部電極線単位6a1に隣接して配置されており、横糸8と交互に交差して編み込まれている。
【0051】
また、内部電極線単位6b8に隣接して配置された隣接縦糸10aは、隣接縦糸10a3と隣接縦糸10a4の2列を有し、それぞれ互い違いとなるように横糸8と交互に交差して編み込まれている。隣接縦糸10a4に隣接して、非隣接縦糸10b2が配置されている。ここでは、隣接縦糸10aは電極線単位6の両側に2列ずつ配置したがこれに限らず、3列でも4列でもよい。また、本発明の変形例1に係る面状発熱体2では、電極線6の両側、すなわち、外側端部電極線単位6a1に隣接して高強度の隣接縦糸10a2が内部電極線単位6b8に隣接して高強度の隣接縦糸10a3が配置されているが、これに限らず、電極線6の外側または内側の少なくともいずれか一方に高強度の縦糸10を配置するようにしてもよい。
【0052】
<変形例2>
本発明の一実施形態に係る面状発熱体2の変形例2について説明する。
【0053】
図5は、本発明の変形例2に係る面状発熱体2の詳細を模式的に示した説明図である。
【0054】
図3に示した本発明の一実施形態に係る面状発熱体2では、内部電極線単位6b1~6b8の8本の内部電極線単位6bを有する構成を例に挙げて説明したが、これに限らない。
【0055】
図5に示すように、本発明の変形例2に係る面状発熱体2では、内部電極線単位6b1~6b10の10本の内部電極線単位6bを有している。
【0056】
横糸8a,8bと交互に交差して編み込まれている箇所においては、外側端部電極線単位6a1と、外側端部電極線単位6a2と、内部電極線単位6b1とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b2と内部電極線単位6b3とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b4と内部電極線単位6b5とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b6と内部電極線単位6b7とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b8と内部電極線単位6b9と内部電極線単位6b10とが電気的に接触し、1本の電極線束となっている。
【0057】
一方、横糸8e,8fと交互に交差して編み込まれている箇所においては、外側端部電極線単位6a1と外側端部電極線単位6a2とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b1と内部電極線単位6b2が電気的に接触し、1本の電極線束となっており、と内部電極線単位6b3と内部電極線単位6b4とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b5と内部電極線単位6b6とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b7と内部電極線単位6b8とが電気的に接触し、1本の電極線束となっており、内部電極線単位6b9と内部電極線単位6b10とが電気的に接触し、1本の電極線束となっている。
【0058】
このように、横糸8a,8bと交互に交差して編み込まれている箇所においては、5本の電極線の束が形成されており、横糸8e,8fと交互に交差して編み込まれている箇所においては、6本の電極線の束が形成されている。
【0059】
隣接縦糸10a3は、内部電極線単位6b10に隣接しており、横糸8と交互に交差して編み込まれている。隣接縦糸10a3と内部電極線単位6b10とは、横糸8a,8bと交互に交差して編み込まれている箇所においては、同じ電極線の束とし、横糸8e,8fと交互に交差して編み込まれている箇所においては、異なる電極線の束としている。そのため、内部電極線単位6b10は、横糸8と交互に交差して編み込まれることなく、横糸8cの下方を潜り、さらに横糸8fの下方を潜るようにて編み込まれる。このように、交差して編み込まれていない箇所の編み込み強度は低下する可能性があるので、互いに接触した電熱線の束の本数が少なくなる箇所、すなわち横糸8aと交互に交差して編み込まれている箇所において、内部電極線単位6bのうち最も内側に配置された内部電極線単位6b10を含む束と隣接縦糸10a3とを跨ぐように横糸8aを配置している。
【0060】
<変形例3>
本発明の一実施形態に係る面状発熱体2の変形例3について説明する。
【0061】
図6は、本発明の変形例3に係る面状発熱体2の縦糸の位置関係を示した断面図である。
【0062】
図6に示すように、本発明の変形例3に係る面状発熱体2では、4列の隣接縦糸10a1~10a4と、隣接縦糸10a1~10a4の内側に配置されている3列の非隣接縦糸10b1~10b3とを有している。隣接縦糸10a1~10a4は同一の構成を有し、非隣接縦糸10b1~10b3は同一の構成を有している。なお、図6では、3列の非隣接縦糸10b1~10b3のみを描いているが、隣接縦糸10aの間に設けられている非隣接縦糸10bは、多数列配置されている。
【0063】
電極線単位6に隣接する縦糸10である隣接縦糸10a1~10a4は、非隣接縦糸10b1~10b3より高強度の縦糸である。
【0064】
具体的には、隣接縦糸10a4は、内部糸10a41~10a46の6本の内部糸の撚り線で構成されている。その一方、非隣接縦糸10b1は、内部糸10b11~10b12の2本の内部糸の撚り線で構成されている。
【0065】
このように、隣接縦糸10a1~10a4は、非隣接縦糸10b1~10b3と比較して、糸本数が増加されることにより高強度を実現している。
【0066】
これにより、外側端部電極線単位6aに隣接する縦糸10の強度が増すので、より外側端部電極線単位6aに生じる応力をより一定とさせることができるため、抵抗値が安定し、面状発熱体2が発熱する発熱量全体の安定化を図ることができる。
【0067】
また、電極線単位6を編み込む際に電極線単位6が切断する場合がある。そこで、このような構成とすることにより、電極線単位6を編み込む際に引っ張り応力を低下させることができるので、電極線単位6の切断を防止することができる。また、電極線単位6が伸長することを抑制することができるので、抵抗値を安定化させることができる。
【0068】
また、幅方向W(横糸方向)における隣接縦糸10a1~10a4同士の間隔aは、隣接縦糸10a1と非隣接縦糸10b3との間隔bより短くなるように配置されている。
【0069】
さらに、隣接縦糸10a1と非隣接縦糸10b3との間隔bは、非隣接縦糸10b1~10b3同士の間隔cより短くなるように配置されている。
【0070】
これにより、電極線単位6の近傍は折り曲げにくく、電極線単位6から離れた箇所で折り曲げ易くなるので、電極線単位6に生じる応力をより一定とさせることができる。
【0071】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
(付記1)
発熱用導電性糸を少なくとも含み、所定間隔で配置される横糸と、
絶縁性糸からなり、前記横糸に交差して所定間隔で編み込まれて配置される縦糸と、
前記横糸の両端部に電気的に接続するようにそれぞれ配置される1対の電極線と、を有し、
前記一対の電極線の各々は、前記横糸方向における両端部のうち外側に位置する外側端部に配置され前記横糸と交互に交差して編み込まれた1列以上の外側端部電極線単位と、前記外側端部電極線単位の内側に配置された二列以上の内部電極線単位とを有し、
前記内部電極線単位は、隣接する内部電極線単位と長手方向に電気的に離接を反復するように配置された二列以上の電極線単位で構成している
ことを特徴とする面状発熱体。
【0072】
このように配置することにより、外側端部電極線単位と横糸とは交互に交差して編み込まれるので、外側端部電極線単位に生じる応力はほぼ一定となり抵抗値が安定するため、発熱量の安定化を図ることができる。
【0073】
(付記2)
前記電極線に隣接する縦糸である隣接縦糸は複数列配置されており、前記電極線に隣接しない縦糸である非隣接縦糸より内部糸の本数が多くなるように形成されている
ことを特徴とする面状発熱体。
【0074】
これにより、電極線に隣接する縦糸の強度が増すので、より外側端部電極線単位に生じる応力をより一定とさせることができるため、抵抗値が安定するため、発熱量の安定化を図ることができる。
また、電極線単位を編み込む際に電極線単位が切断する場合がある。そこで、このような構成とすることにより、電極線単位を編み込む際に引っ張り応力を低下させることができるので、電極線単位の切断を防止することができる。また、電極線単位が伸長することを抑制することができるので、抵抗値を安定化させることができる。
【0075】
(付記3)
前記隣接縦糸に隣接する前記非隣接縦糸と、前記隣接縦糸との前記横糸方向における間隔(b)は、前記非隣接縦糸同士の間隔(c)より短くなるように配置した
ことを特徴とする面状発熱体。
【0076】
これにより、電極線単位に生じる応力をより一定とさせることができるので、電極線単位に生じる応力を、互いに隣接した縦糸で吸収することができる。これにより、電極線単位が伸長したり、破断したりすることを防止することができる。
【0077】
(付記4)
前記隣接縦糸同士の間隔(a)は、前記隣接縦糸に隣接する前記非隣接縦糸と前記隣接縦糸との前記横糸方向における間隔(b)より短くなるように配置した
ことを特徴とする面状発熱体。
【0078】
これにより、電極線単位近傍は折り曲げにくく、電極線単位から離れた箇所で折り曲げ易くなるので、電極線単位に生じる応力をより一定とさせることができる。
【0079】
(付記5)
前記内部電極線単位は、隣接する内部電極線単位と長手方向に電気的に離接を反復するように配置されることにより、互いに接触した電熱線の束の本数が少なくなる箇所において、前記内部電極線単位のうち最も内側に配置された内部電極線単位を含む束と前記縦糸とを跨ぐように前記横糸を配置した
ことを特徴とする面状発熱体。
【0080】
これにより、編み込み強度を補強することができる。
【符号の説明】
【0081】
2 面状発熱体
4 絶縁被覆層
5 織布
6 電極線
6a 外側端部電極線単位
6b 内部電極線単位
8 横糸
10 縦糸
10a 隣接縦糸
10a41~10a46 内部糸
10b 非隣接縦糸
10b11~10b12 内部糸
22 リード線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱用導電性糸を少なくとも含み、所定間隔で配置される横糸と、
絶縁性糸からなり、前記横糸に交差して所定間隔で編み込まれて配置される縦糸と、
前記横糸の両端部に電気的に接続するようにそれぞれ配置される対の電極線と、を有し、
前記一対の電極線の各々は、前記横糸方向における両端部のうち外側に位置する外側端部に配置され前記横糸と上下方向に交互になるように交差して編み込まれた列以上の外側端部電極線単位と、前記外側端部電極線単位の内側に配置された二列以上の内部電極線単位とを有し、
前記内部電極線単位は、隣接する内部電極線単位と長手方向に電気的に離接を反復するように配置された二列以上の電極線単位で構成している
ことを特徴とする面状発熱体。
【請求項2】
前記電極線に隣接する縦糸である隣接縦糸は複数列配置されており、前記電極線に隣接しない縦糸である非隣接縦糸より内部糸の本数が多くなるように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の面状発熱体。
【請求項3】
前記隣接縦糸に隣接する前記非隣接縦糸と、前記隣接縦糸との前記横糸方向における間隔は、前記非隣接縦糸同士の間隔より短くなるように配置した
ことを特徴とする請求項2記載の面状発熱体。
【請求項4】
前記隣接縦糸同士の間隔は、前記隣接縦糸に隣接する前記非隣接縦糸と前記隣接縦糸との前記横糸方向における間隔より短くなるように配置した
ことを特徴とする請求項3記載の面状発熱体。
【請求項5】
前記内部電極線単位は、隣接する内部電極線単位と長手方向に電気的に離接を反復するように配置されることにより、互いに接触した電線の束の本数が少なくなる箇所において、前記内部電極線単位のうち最も内側に配置された内部電極線単位を含む束と前記縦糸とを跨ぐように前記横糸を配置した
ことを特徴とする請求項1記載の面状発熱体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
隣接縦糸10a3は、内部電極線単位6b8に隣接しており、横糸8と交互に交差して編み込まれている。隣接縦糸10a3と内部電極線単位6b8とは、横糸8a,8bと交互に交差して編み込まれている箇所においては、同じ電極線の束とし、横糸8e,8fと交互に交差して編み込まれている箇所においては、異なる電極線の束としている。そのため、内部電極線単位6b8は、横糸8と交互に交差して編み込まれることなく、横糸8cを跨ぎ、さらに横糸8fを跨ぐようにて編み込まれる。このように、交差して編み込まれていない箇所の編み込み強度は低下する可能性があるので、互いに接触した電線の束の本数が少なくなる箇所、すなわち横糸8bと交互に交差して編み込まれている箇所において、内部電極線単位6bのうち最も内側に配置された内部電極線単位6b8を含む束と隣接縦糸10a3とを跨ぐように横糸8bを配置している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
隣接縦糸10a3は、内部電極線単位6b10に隣接しており、横糸8と交互に交差して編み込まれている。隣接縦糸10a3と内部電極線単位6b10とは、横糸8a,8bと交互に交差して編み込まれている箇所においては、同じ電極線の束とし、横糸8e,8fと交互に交差して編み込まれている箇所においては、異なる電極線の束としている。そのため、内部電極線単位6b10は、横糸8と交互に交差して編み込まれることなく、横糸8cの下方を潜り、さらに横糸8fの下方を潜るようにて編み込まれる。このように、交差して編み込まれていない箇所の編み込み強度は低下する可能性があるので、互いに接触した電線の束の本数が少なくなる箇所、すなわち横糸8aと交互に交差して編み込まれている箇所において、内部電極線単位6bのうち最も内側に配置された内部電極線単位6b10を含む束と隣接縦糸10a3とを跨ぐように横糸8aを配置している。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
(付記5)
前記内部電極線単位は、隣接する内部電極線単位と長手方向に電気的に離接を反復するように配置されることにより、互いに接触した電線の束の本数が少なくなる箇所において、前記内部電極線単位のうち最も内側に配置された内部電極線単位を含む束と前記縦糸とを跨ぐように前記横糸を配置した
ことを特徴とする面状発熱体。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱用導電性糸を少なくとも含み、所定間隔で配置される横糸と、
絶縁性糸からなり、前記横糸に交差して所定間隔で編み込まれて配置される縦糸と、
前記横糸の両端部に電気的に接続するようにそれぞれ配置される一対の電極線と、を有し、
前記一対の電極線の各々は、前記横糸方向における両端部のうち外側に位置する外側端部に配置され前記横糸と上下方向に交互になるように交差して編み込まれた一列以上の外側端部電極線単位と、前記外側端部電極線単位の内側に配置された二列以上の内部電極線単位とを有し、
前記内部電極線単位は、隣接する内部電極線単位と長手方向に電気的に離接を反復するように配置された二列以上の電極線単位で構成しており、
前記電極線に隣接する縦糸である隣接縦糸は複数列配置されており、前記電極線に隣接しない縦糸である非隣接縦糸より内部糸の本数が多くなるように形成されている
ことを特徴とする面状発熱体。
【請求項2】
前記隣接縦糸に隣接する前記非隣接縦糸と、前記隣接縦糸との前記横糸方向における間隔は、前記非隣接縦糸同士の間隔より短くなるように配置した
ことを特徴とする請求項記載の面状発熱体。
【請求項3】
前記隣接縦糸同士の間隔は、前記隣接縦糸に隣接する前記非隣接縦糸と前記隣接縦糸との前記横糸方向における間隔より短くなるように配置した
ことを特徴とする請求項記載の面状発熱体。
【請求項4】
前記内部電極線単位は、隣接する内部電極線単位と長手方向に電気的に離接を反復するように配置されることにより、互いに接触した電極線の束の本数が少なくなる箇所において、前記内部電極線単位のうち最も内側に配置された内部電極線単位を含む束と前記縦糸とを跨ぐように前記横糸を配置した
ことを特徴とする請求項1記載の面状発熱体。