(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024706
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】包装材及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20240216BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20240216BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B32B27/28 101
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127510
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】和泉 敦
(72)【発明者】
【氏名】佐井 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】関根 秀和
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
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3E086DA08
4F100AK04A
4F100AK04B
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4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】本発明は、ヒートシール性、リサイクル性、低きょう雑物個数、耐ブロッキング性、及び酸素バリア性に優れた包装材を提供することを目的とする。
【解決手段】ヒートシール層、バリア層、紙基材、及び表面保護層を順次有する包装材であって、前記ヒートシール層が、アクリル樹脂及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、かつ、前記ヒートシール層の塗工量が、1~18g/m2であり、前記表面保護層が、スチレン-アクリル共重合樹脂(B)を含む、包装材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール層、バリア層、紙基材、及び表面保護層を有する包装材であって、
前記ヒートシール層が、アクリル樹脂(A)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、かつ、前記ヒートシール層の塗工量が、1~18g/m2であり、
前記表面保護層が、スチレン-アクリル共重合樹脂(B)を含む、包装材。
【請求項2】
表面保護層のガラス転移温度Tg(C)が、ヒートシール層のガラス転移温度Tg(D)よりも大きく、Tg(C)とTg(D)との差が、10℃以上である、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
表面保護層が、更に、炭化水素ワックスを含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項4】
炭化水素ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~12である、請求項3に記載の包装材。
【請求項5】
バリア層が、紙基材に対してヒートシール層と対向して配置される、請求項1に記載の包装材。
【請求項6】
バリア層が、ビニルアルコール樹脂及び/又はエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂を含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項7】
包装材全量中の紙基材含有量が、50質量%以上である、請求項1に記載の包装材。
【請求項8】
請求項1~7いずれかに記載の包装材から形成された包装袋。
【請求項9】
ヒートシール層、バリア層、紙基材、及び表面保護層を有する包装材の製造方法であって、
バリア層を有する紙基材の一方の面上に、アクリル樹脂(A)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含むヒートシール剤を塗工して、塗工量が1~18g/m2のヒートシール層を形成する工程と、
バリア層を有する紙基材の他方の面上に、スチレン-アクリル共重合樹脂(B)を含むオーバーコート剤を塗工して表面保護層を形成する工程とを含む、包装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装材及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品パッケージその他の包装物には装飾や表面保護のために印刷が施されているのが一般的である。また、印刷物の意匠性、美粧性、高級感等の印刷品質は、そのでき如何によって、消費者の購入意欲を促進させるものであり、産業上の価値は大きい。
【0003】
一般的に、パッケージの構成には主にプラスチックフィルムが用いられ、透明であるため中身を視認できる使用方法もあり、特にラミネート包装材が用いられることが多かった。例えば、特許文献1においては、基材、印刷層、接着剤層及びシーラント層からなるラミネート包装材であって、印刷層及び接着剤層にバイオマス樹脂が使用された発明が記載されている。しかし、そもそもラミネート型包装材は、石油由来プラスチックフィルムの使用量が多い。そのため、環境対応、カーボンニュートラルであり、更にプラスチックの使用量を削減可能な包装材が望まれており、技術開発がなされている。
【0004】
例えば、特許文献2には、表面保護層、印刷層、紙基材層、樹脂層を順次有する包装材料であり、樹脂層がポリエチレン樹脂であり、表面保護層がニトロセルロース樹脂である包装材料に関する発明が記載されている。しかしながら、上記樹脂層は、ヒートシール性を確保するためにポリエチレンに厚みを持たせる必要があるため、包装材質量の約半分をポリエチレンが占めてしまう。リサイクル性の観点から、包装材中の紙含有量は多い方が好ましいが、上記発明において、ヒートシール層を低塗布量化した場合は、ヒートシール性に課題があると推察される。また、紙基材上へポリエチレンを加熱溶融塗工する際、ポリエチレンは紙基材の一部を取り込んだ状態で固化する。ポリエチレンは、アルカリ耐性及び耐水性に優れ、古紙回収工程において溶解しないため、リサイクル性、低きょう雑物個数に課題がある。さらに、表面保護層がニトロセルロース樹脂であるため、耐ブロッキング性及び低きょう雑物個数に課題がある。上記課題解決に加え、包装材に求められる耐ブロッキング性、酸素バリア性を向上させる必要がある。
【0005】
従って、ヒートシール性、リサイクル性、低きょう雑物個数、耐ブロッキング性、酸素バリア性に優れた包装材として満足できるものは未だ見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-051796号公報
【特許文献2】特開2020-55171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、紙のリサイクル性を保持したまま、ヒートシール性、低きょう雑物個数、耐ブロッキング性、酸素バリア性に優れた包装材、それを用いた包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の包装材を用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち本発明は、ヒートシール層、バリア層、紙基材、及び表面保護層を有する包装材であって、
前記ヒートシール層が、アクリル樹脂(A)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、かつ、前記ヒートシール層の塗工量が、1~18g/m2であり、
前記表面保護層が、スチレン-アクリル共重合樹脂(B)を含む、包装材に関する。
【0010】
また、本発明は、表面保護層のガラス転移温度Tg(C)が、ヒートシール層のガラス転移温度Tg(D)よりも大きく、Tg(C)とTg(D)との差が、10℃以上である、上記包装材に関する。
【0011】
また、本発明は、表面保護層が、更に、炭化水素ワックスを含む、上記包装材に関する。
【0012】
また、本発明は、炭化水素ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~12である、上記包装材に関する。
【0013】
また、本発明は、バリア層が、紙基材に対してヒートシール層と対向して配置される、上記包装材に関する。
【0014】
また、本発明は、バリア層が、ビニルアルコール樹脂及び/又はエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂を含む、上記包装材に関する。
【0015】
また、本発明は、包装材全量中の紙基材含有量が、50質量%以上である、上記包装材に関する。
【0016】
また、本発明は、上記包装材から形成された包装袋に関する。
【0017】
また、本発明は、ヒートシール層、バリア層、紙基材、及び表面保護層を有する包装材の製造方法であって、
バリア層を有する紙基材の一方の面上に、アクリル樹脂(A)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含むヒートシール剤を塗工して、塗工量が1~18g/m2のヒートシール層を形成する工程と、
バリア層を有する紙基材の他方の面上に、スチレン-アクリル共重合樹脂(B)を含むオーバーコート剤を塗工して表面保護層を形成する工程とを含む、包装材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、ヒートシール性、リサイクル性、低きょう雑物個数、耐ブロッキング性、及び酸素バリア性に優れた包装材及び包装袋を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0020】
なお、以下の説明において「部」は特に断らない限り「質量部」、「%」は「質量%」を示す。また、包装材を「積層体」と記載する場合があるが同義である。
また、「印刷インキ」とは、印刷層を形成するための顔料その他の着色剤を含有するインキをいう。「オーバーコート剤」とは、表面保護層を形成するための、顔料その他の着色剤を含有しないコート剤をいうが、意図せず混入した僅かな着色剤等を排除するものではない。
【0021】
[包装材]
ヒートシール層、バリア層、紙基材、及び表面保護層を有する包装材であって、前記ヒートシール層が、アクリル樹脂(A)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、かつ、前記ヒートシール層の塗工量が、1~18g/m2であり、前記表面保護層が、スチレン-アクリル共重合樹脂(B)を含む、包装材に関する。
【0022】
[ヒートシール層]<ヒートシール剤>
本願におけるヒートシール層は、ヒートシール剤を塗工してなり、当該ヒートシール剤は、アクリル樹脂(A)、及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、更に、溶剤を含む。また、他の樹脂、添加剤を含んでも良い。溶剤は、環境負荷の観点から、水性であることが好ましい。ヒートシール剤の粘度は、印刷適性等の観点から、20~200mPa・sであることが好ましい。
【0023】
ヒートシール剤が含む樹脂として、アクリル樹脂(A)、及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の他に、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等を含んでも良い。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
ヒートシール層中の樹脂の含有量は、ヒートシール層100質量%中、80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましい。上記範囲である場合、ヒートシール性が良好となる。
【0025】
ヒートシール層中の樹脂の引張強さは、98~270kg/cm2であることが好ましく、130~240kg/cm2であることがより好ましく、160~200kg/cm2であることが特に好ましい。上記樹脂の伸びは、650~900%であることが好ましく、700~850%であることがより好ましく、750~800%であることが特に好ましい。上記樹脂の硬度(ショア硬さ)は、17~38であることが好ましく、21~34であることがより好ましく、25~30であることが特に好ましい。引張強さ、伸び、及び硬度が上記範囲である場合、ヒートシール層の硬さと柔軟性のバランスが良好となり、ヒートシール性と耐ブロッキング性の両立が可能となる。
【0026】
《引張強さ、及び伸びの測定》
本願において、引張強さは、プラスチック試験片を伸ばして破壊するのに必要な力であり、伸びは、プラスチック試験片が破壊されたときの試験片の長さと、元の試験片の長さとの比率である。引張強さ及び伸びは、ASTMD638に準拠して測定される。
【0027】
《硬度(ショア硬さ)》
本願において、硬度(ショア硬さ)は、圧子を押し込んだ際の押し込み深さである。硬度(ショア硬さ)は、デジタルショア硬度計TIME5431(TIME社製)を用いて、ISO-868に準拠して測定される。
【0028】
<アクリル樹脂(A)>
アクリル樹脂(A)とは、アクリルモノマー由来の構成単位を含む樹脂である。アクリル樹脂(A)はカルボキシル基その他の酸性基を有していることが好ましい。アクリル樹脂(A)の酸価は、20~120mgKOH/gであることが好ましく、30~100mgKOH/gであることがより好ましく、40~80mgKOH/gであることが特に好ましい。アクリル樹脂(A)の酸価が20mgKOH/g以上である場合、リサイクル性が良好となり、120mgKOH/g以下である場合、耐ブロッキング性が良好となる。アクリル樹脂(A)のガラス転移温度は、-40~10℃であることが好ましく、-30~5℃であることがより好ましく、-20~0℃であることが特に好ましい。アクリル樹脂(A)のガラス転移温度が上記範囲である場合、耐ブロッキング性及びヒートシール性が良好となる。
【0029】
アクリル樹脂(A)はアクリルモノマーの単独重合体や、アクリルモノマーと酸性モノマーからなる共重合体、エチレンとアクリルモノマーからなる共重合体などが好適に挙げられ、耐ブロッキング性の観点から、エチレンとアクリルモノマーからなる共重合体が好ましい。
【0030】
前記(メタ)アクリルモノマーを含むモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル化合物、
N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の少なくとも1個のN-置換メチロール基を含有する(メタ)アクリル酸アミド誘導体、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル、
ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類の(メタ)アクリル酸のモノ又はジエステル類、
スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン誘導体、
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル化合物、
アクリル酸、メタクリル酸、
マレイン酸、イタコン酸等の酸基を有するビニル化合物が挙げられる。
ヒートシール性の面から、アクリル樹脂(A)は、カルボキシル基及び/又は水酸基を有するものが好ましく、アクリル樹脂(A)が水酸基を有する場合、アクリル樹脂(A)を構成するモノマーとして(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル化合物を含有するものが好ましい。
【0031】
アクリル樹脂(A)は、市販品を用いてもよく、例えば、BASF社製 JONCRYL PDX7356、PDX-7326、PDX-7430、星光PMC社製 PE-1126、JE-1113、KE1148、ジャパンコーティングレジン社製 AC-3100等を使用することができる。
【0032】
<エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂>
エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂は、エチレンと酢酸ビニルからなる共重合体である。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂中の酢酸ビニル含有量は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂100質量%中、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることが特に好ましく。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の最低造膜温度は、40~120℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましい。酢酸ビニル含有量、及び最低造膜温度が上記範囲である場合、ヒートシール性が良好となる。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂のガラス転移温度は、-60~20℃であることが好ましく、-25~5℃であることがより好ましく、-20~-10℃であることが特に好ましい
【0033】
上記エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂は例えば、ジャパンコーティングレジン社製 アクアテックスECシリーズ、住友化学工業社製 スミカフレックスS-201HQ、S-305、S-305HQ、S-328HQ、S-400HQ、S-401HQ、S-408HQE、S-410HQ、S-450HQ、S-455HQ、S-456HQ、S-460HQ、S-467HQ、S-470HQ、S-480HQ、S-510HQ、S-520HQ、S-752、S-755を使用することができる。
【0034】
《酸価の測定》
本願において酸価は、樹脂固形分1g中に含有する酸性基を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JISK0070に準拠して測定される。
【0035】
《ガラス転移温度の測定》
本願においてガラス転移温度は、島津製作所社製DTG-60Aを用いた、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)により測定した。詳細には、窒素雰囲気下、測定温度範囲-100~200℃、昇温速度1℃/分の条件において、ベースラインシフトにおける変曲点の温度をガラス転移温度とした。
【0036】
《重量平均分子量の測定》
本願において重量平均分子量(Mw)は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができる。
水性樹脂の場合は、ポリエチレングリコールを標準物質に用いた換算分子量として求めることができ、測定器としてはGPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-401などが挙げられ、カラムとしては、昭和電工社製Shodex OHpak LB-805などが挙げられる。検出器としては例えば、RI(示差屈折計)などが挙げられ、測定温度は、カラム温度が20~50℃であることが好ましい。溶離液としては0.1規定のNaNO3水溶液が挙げられ、流速は0.2~5mL/分である。
油性樹脂の場合は、ポリエチレングリコールを標準物質に用いた換算分子量として求めることができ、測定器としては、GPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-104等が挙げられ、カラムとしては、昭和電工社製Shodex LF-404等が挙げられる。検出器としては、RI(示差屈折計)等が挙げられ、測定温度は、カラム温度が20~50℃であることが好ましい。溶離液としてはテトラヒロドフラン等が挙げられ、流速は0.2~5mL/分である。
【0037】
《最低造膜温度の測定》
本願において、JIS K 6828-1:2003に準拠し、テスター産業社製 TP-801MFTテスターで測定した温度を最低造膜温度とした。
【0038】
<添加剤>
ヒートシール層は、更に、消泡剤、乳化剤、防腐剤、可塑剤、アマイドワックス、炭化水素ワックス、及びキレート架橋剤等の任意の添加剤を含むことができ、消泡剤及び又は乳化剤を含むことが好ましい。
【0039】
《消泡剤》
本願において、消泡剤を含むことが好ましく、消泡剤を含む場合、ヒートシール層の平滑性が向上することで、ヒートシール強度が良好となる。消泡剤は、シリコン系消泡剤及び非シリコン系消泡剤が挙げられ、消泡性の観点から、シリコン系消泡剤が好ましい。ヒートシール層中の消泡剤の含有量は、ヒートシール層100質量%中、0.01~1質量%であることが好ましく、0.05~0.5質量%であることがより好ましく、0.1~0.3質量%であることが特に好ましい。
【0040】
消泡剤は、市販品を用いてもよく、例えば、BYK社製 BYK-024、BYK-025、BYK-028等を使用することができる。
【0041】
《乳化剤》
本願において、乳化剤を含むことが好ましい。乳化剤を含む場合、水への溶解性が向上することで、リサイクル性及び低きょう雑物個数が良好となる。乳化剤は、ビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられ、リサイクル性の観点より、ビニルアルコール樹脂及びカチオン系界面活性剤が好ましい。ヒートシール層中の乳化剤の含有量は、ヒートシール層100質量%中、0.01~1質量%であることが好ましく、0.05~0.5質量%であることがより好ましく、0.1~0.3質量%であることが特に好ましい。
【0042】
<ヒートシール層の形成>
本発明におけるヒートシール層は、紙基材の表面保護層を具備した面とは反対側に位置する。ヒートシール層の形成方法は、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式等、公知の印刷方式から適宜選択でき、好ましくはフレキソ印刷方式である。ヒートシール層の塗工量は、1~18g/m2であり、3~12g/m2であることが好ましく、4~8g/m2であることが特に好ましい。上記範囲である場合、ヒートシール性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0043】
ヒートシール層は、例えば、表面保護層と反対側の紙基材面上に、ヒートシール剤を用いて印刷した後、揮発成分を乾燥して除去することによって形成することができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式が好適である。例えば、グラビア印刷では、必要に応じて適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給された後、塗布され、オーブンによる乾燥によって被膜を定着させることでヒートシール層を得ることができる。
【0044】
(グラビア印刷)
《グラビア版》
グラビア印刷において、グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻又は腐蝕・レーザーによって各色の凹部を形成する。彫刻とレーザーの使用に制限はなく、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては80線~250線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。
【0045】
《グラビア印刷機》
グラビア印刷機においては、一つの印刷ユニットが、上記グラビア版及びドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
【0046】
[バリア層]
本願の包装材及び包装袋は、バリア性を付与するためのバリア層を有する。
バリア層は、光、磁気、各種気体など、バリアすべき対象が包装材を透過するのを制御するために存在し、バリア成分を含む。
バリア層は、ヒートシール層側にバリア層を有する紙基材、表面保護層側にバリア層を有する紙基材、及び紙基材がバリア性樹脂を含む形態が挙げられ、ヒートシール側にバリア層を有する紙基材が好ましい。なお、紙基材がバリア性樹脂を含む形態は、紙基材中にバリア層であるバリア性樹脂が浸透している状態で、バリア層は、平らな層を形成していないが、バリア性樹脂は、紙基材とは別に連続相として存在し、バリア層として確認できる。
本願において、バリア層の好ましい形態としては、紙基材上のヒートシール層側にある場合、紙基材上の表面保護層側にある場合、及び紙基材がバリア性を有し、バリア層として機能することが挙げられ、より好ましい形態としては、紙基材上のヒートシール層側にある場合が挙げられる。上記の場合、ヒートシール層形成時に、紙へのヒートシール剤の染み込みを抑制できるため、ヒートシール性が良好となる。紙基材がバリア層として機能する場合は、紙基材がバリア成分を含むことで、バリア性を発現している状態を指し、バリア成分は紙基材中に均一に存在しても良いし、不均一に存在しても良い。
【0047】
バリア層は、前記バリア成分を、蒸着法や、ラミネート法、Tダイキャスト法、液状にして塗工・乾燥等によって形成することができる。バリア成分として、例えば、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の金属化合物、あるいはポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、バリアナイロン樹脂(MXD)等のバリア性樹脂が挙げられるが、ビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂を含むことが好ましい。バリア層がビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂である場合、水への溶解性が高くなるため、リサイクル性及び低きょう雑物個数が良好となる。バリア層は、単層構成でも複層構成でもよく、1つの層中に2種以上の化合物を含んでも良い。
【0048】
《ビニルアルコール樹脂》
上記ポリビニアルコール樹脂を、例えば、溶液とし、当該溶液の塗工・乾燥によって、紙基材上へ積層することで、バリア層を形成することができる。上記ビニルアルコールのケン化度は40~100モル%が好ましい。上記ビニルアルコール樹脂の塗工量は、1~24g/m2であることが好ましく、3~12g/m2であることがより好ましい。ケン化度及び塗工量について、上記範囲である場合、バリア性が良好となる。
【0049】
上記ビニルアルコール樹脂は、例えば、クラレポバールLM-20SO(クラレ社製)、ゴーセノールNM-14(日本合成化学工業製)などを例示することができる。
【0050】
《エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂》
上記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂を、例えば、溶液とし、当該溶液の塗工・乾燥によって、紙基材上へ積層することで、バリア層を形成することができる。上記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂のエチレン含有量は、25~50モル%であることが好ましい。上記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂の塗工量は、1~20g/m2であることが好ましく、3~10g/m2であることがより好ましい。エチレン含有量及び塗工量について、上記範囲である場合、バリア性が良好となる。
【0051】
上記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂は、例えば、エバールEP-F101(クラレ社製)、ソアノールD2908(日本合成化学工業社製)などを例示することができる。
【0052】
上記バリア層は更に易接着層を有していてもよい。易接着層としては、ポリウレタン樹脂層、アクリル樹脂(上述の<アクリル樹脂(A)と同一でも良いし、異なっていても良い>)層、ポリエステル樹脂、及びビニルアルコール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、水性である前記樹脂を含むことがより好ましい。易接着層は印刷その他の公知の方法により形成できる。
【0053】
《液状にして塗工・乾燥する方法》
バリア成分を、揮発成分中に溶解または分散させ、液状にして塗工・乾燥する方法としては、例えば、基材上に、印刷機などで塗工した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。塗工方法としてはグラビア印刷方式、フレキソ印刷方式等公知の印刷方式が挙げられる。例えば、必要に応じてグラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給された後、塗布され、オーブンによる乾燥によって被膜を定着させることでバリア層を得ることができる。
【0054】
《蒸着法》
上記蒸着法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(PhysicalVaporDeposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(ChemicalVaporDeposition法、CVD法)等を好適に挙げることができる。
【0055】
(真空蒸着法)
真空蒸着法は、アルミニウム、シリカ、及びアルミナ等の金属化合物を、高周波誘導加熱、直接通電加熱、又はエレクトロンビーム加熱等により、1200~1500℃、10-1~10-2Pa程度の条件下で蒸着させる方法である。被蒸着物は、真空蒸着前に、表面へのコロナ放電処理等による密着性向上処理を行うことができる。
【0056】
(スパッタリング法)
スパッタリング法は、アルミニウム、シリカ、及びアルミナ等の金属化合物を、10-1~10-2Pa程度の条件下で、Ar等の不活性ガスを導入し、電圧負荷することで実施される。
【0057】
<バリア性樹脂>
紙基材に含まれるバリア性樹脂は、例えば、セロハン、ビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、パラフィン樹脂、アクリル樹脂(上述の<アクリル樹脂(A)>と同一でも良いし、異なっていても良い)、ロジン樹脂及びエポキシ樹脂等が挙げられ、ビニルアルコール樹脂及びエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂であることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
[紙基材]
紙基材は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。このような紙基材としては、例えば、中質紙、上質紙、新聞用紙、各種コート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙やアート紙、キャスト紙、クラフト紙、コートボール、アイボリー紙、カード紙、カップ原紙、キャスト紙、遮光紙、及びこれらの表面処理された紙基材が挙げられる。
なお、紙基材の坪量は、好ましくは50~150g/m2、より好ましくは55~120g/m2、更に好ましくは60~90g/m2である。
【0059】
[表面保護層]
本願において表面保護層は、スチレン-アクリル共重合樹脂(B)を含み、紙基材のヒートシール層を具備した面の反対側に位置する。表面保護層はスチレン-アクリル共重合樹脂(B)を含むオーバーコート剤により形成することができ、形成方法は、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式等、公知の印刷方式から適宜選択でき、好ましくはフレキソ印刷方式である。本願において「オーバーコート剤」は、顔料等の着色剤を含有しないものを表すが、意図せず混入した僅かな着色剤を含むものを排除するものではない。
表面保護層の塗工量は、1.5~12g/m2であることが好ましく、より好ましくは3~7g/m2である。表面保護層の塗工量が1.5g/m2以上である場合、表面保護層の均一性が向上するため、光沢、耐熱性、及び耐ブロッキング性が良好となり、塗工量が12g/m2以下である場合、表面保護層内の残留溶剤量が減少するため、耐ブロッキング性が良好となる。
【0060】
<表面保護層に含まれるスチレン-アクリル共重合樹脂(B)>
スチレン-アクリル共重合樹脂(B)は、水性樹脂であることが好ましく、当該水性樹脂は水溶性樹脂であっても水性エマルジョン樹脂であってもよいが、水性エマルジョン樹脂であることが好ましい。
【0061】
スチレン-アクリル共重合樹脂(B)は、酸基を有することが好ましく、その場合の酸価は、20~200mgKOH/gであることが好ましく、30~150mgKOH/gであることがなお好ましく、80~120mgKOH/gであることが更に好ましい。スチレン-アクリル共重合樹脂(B)が酸基を有し、その酸価が上記範囲である場合、リサイクル性及び低きょう雑物個数が良好となる。スチレン-アクリル共重合樹脂(B)の重量平均分子量は、2000~600000であることが好ましく、50000~600000であることがより好ましく、70000~600000であることが特に好ましい。スチレン-アクリル共重合樹脂(B)のガラス転移温度は、-20~80℃であることが好ましく、-10~60℃であることがなお好ましく、0~40℃であることが更に好ましい。スチレン-アクリル共重合樹脂(B)の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる。
【0062】
スチレン-アクリル共重合樹脂(B)の引張強さは、630~770kg/cm2であることが好ましく、655~745kg/cm2であることがより好ましく、680~720kg/cm2であることが特に好ましい。上記樹脂の伸びは、1~20%であることが好ましく、1.5~10%であることがより好ましく、2~5%であることが特に好ましい。上記樹脂の硬度(ロックウェル硬さ)は、M70~M85であることが好ましく、M73~M82であることがより好ましく、M76~M79であることが特に好ましい。引張強さ、伸び、及び硬度が上記範囲である場合、表面保護層の硬さと柔軟性のバランスが良好となり、リサイクル性、低きょう雑物個数と耐ブロッキング性の両立が可能となる。
【0063】
《硬度(ロックウェル硬さ)》
本願において、硬度(ロックウェル硬さ)は、圧子を押し込んだ際の押し込み深さである。硬度(ロックウェル硬さ)は、ポータブル硬度計(ミツトヨ社製)を用いて、ASTM D785に準拠して測定される。
【0064】
<表面保護層に用いてよいスチレン-アクリル共重合樹脂(B)以外の樹脂>
表面保護層は、さらにスチレン-アクリル共重合樹脂(B)以外の樹脂を含んでよく、例えば、ウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂、ひまし油系樹脂、ロジン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂(後述の<アクリル樹脂(A’)>と同一でも良いし、異なっていても良い)、ウレタン-アクリル樹脂、スチレン-アリルアルコール共重合樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ダンマル樹脂、及びこれらの変性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0065】
表面保護層に含まれるスチレン-アクリル共重合樹脂(B)は、市販品を用いてもよく、例えば、BASF社製、ジョンクリル74J、ジョンクリル537E等を使用することができる。
【0066】
<表面保護層に含まれる添加剤>
本発明の表面保護層には、必要に応じて各種添加剤を含有させることができる。例えば、分散剤、ワックス、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、造膜助剤、撥水剤、剥離剤(シリコン)である。
具体的には、耐摩擦性を向上させるために、ポリエチレンワックス等の炭化水素ワックスのワックス樹脂微粒子分散体、乾燥性や塗膜隠蔽性を向上させるために、シリカ、硫酸バリウム、樹脂ビーズ、炭酸カルシウム、タルク等の体質顔料、防滑性を付与するために無機系微粒子及び粘着性樹脂(アクリル樹脂(後述の<アクリル樹脂(B)>と同一であっても良いし、異なっていても良い)、酢酸ビニル樹脂)、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物、造膜助剤等の各種添加剤を添加することができ、耐摩擦性向上の観点から、ポリエチレンワックス等の炭化水素ワックスを含むことが好ましい。
【0067】
<ポリエチレンワックス等の炭化水素ワックス>
表面保護層は、ポリエチレンワックス等の炭化水素ワックスを含むことが好ましい。表面の光沢を向上させて、耐水性を向上させる目的である。なお、ここでいうポリエチレンワックスとは、粒子状であり、フィッシャー・トロプシュ製法で得られたポリエチレンも含む。ポリエチレンワックスの平均粒子径は0.05~10μmであることが好ましく、0.1~8μmであることがなお好ましい。表面保護層中のポリエチレンワックスの含有量は、表面保護層100質量%中、0.1~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、6~10質量%であることが更に好ましい。また、JISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~12が好ましい。
【0068】
<オーバーコート剤>
表面保護層は、オーバーコート剤により形成されることが好ましい。オーバーコート剤は、水性オーバーコート剤であることが好ましい。当該オーバーコート剤はスチレン-アクリル共重合樹脂(B)、及び水性媒体を含み、更に、ポリエチレンワックスを含むことが好ましい。更に、スチレン-アクリル共重合樹脂(B)以外の樹脂、添加剤を含んでもよい。オーバーコート剤の粘度は、印刷適性等の観点から、20~200mPa・sであることが好ましい。
【0069】
オーバーコート剤におけるスチレン-アクリル共重合樹脂(B)の固形分の含有量は、オーバーコート剤の全質量中、25~100質量%であることが好ましく、25~75質量%であることがより好ましく、25~45質量%であることが特に好ましい。
【0070】
(水性媒体)
オーバーコート剤は、水性媒体を含むことが好ましい。水性媒体の主成分は水であることが好ましいが、水に加えて、水溶性有機溶剤を使用できる。具体的には、印刷条件(スピード、版深、デザイン、乾燥温度)に応じて、アルコール系有機溶剤、グリコール系有機溶剤等を含有させることができる。水性媒体の含有量は、オーバーコート剤全量に対して30質量%以下であることが好ましい。
ここで、本発明において、主成分が水であるとは、水性媒体中、水の含有量が最も多いことをいう。また、水溶性有機溶剤とは、25℃で液体であり、かつ、25℃の水に対する溶解度が1質量%以上であるものを指す。
【0071】
上記アルコール系有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、ノルマルブタノール、ターシャリブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール等が挙げられる。
【0072】
上記グリコール系有機溶剤としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジブチルグリコール等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
<オーバーコート剤の製造方法>
オーバーコート剤は、攪拌羽根、回転翼等を供えた攪拌機に、樹脂を有機溶剤に溶解又は分散させた樹脂溶液、溶剤を仕込み、混合、攪拌して得ることができる。撹拌速度としては特に制限されることはなく、50~2000rpmで行うことが可能である。オーバーコート剤の取り扱い、塗布性等の向上のために、さらに溶剤を適宜追加することもできる。
オーバーコート剤の粘度は、印刷適性等の観点から、50~300mPa・sであることが好ましい。
【0074】
<表面保護層の形成>
表面保護層は、例えば、紙基材上に、オーバーコート剤を用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。印刷方法としてはフレキソ印刷方式が挙げられ、例えば、オーバーコート剤がフレキソ印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることで表面保護層を得ることができる。
【0075】
包装材は、表面保護層側の紙基材上に、更に、印刷インキを塗工してなる印刷層を有しても良い。また、本出願において、「印刷インキ」は顔料等の着色剤を含有するものを表す。
【0076】
[印刷層]
印刷層は、紙基材と表面保護層の間に位置し、着色剤及び水性樹脂を含むことが好ましい。水性樹脂とは水に溶解又は分散可能な樹脂をいい、水溶性樹脂及び水性エマルジョン樹脂が挙げられる。ここで、水性エマルジョン樹脂は、水に不溶又は難溶であるが、界面活性剤等を用いて水中で分散安定化されている樹脂を指す。
【0077】
印刷層が水性エマルジョン樹脂を含む場合、当該水性エマルジョン樹脂の平均粒子径は、10~500nmであることが好ましく、30~200nmであることがより好ましい。上記平均粒子径は、印刷層の形成に印刷インキが用いられる場合は、当該印刷インキ中における平均粒子径である。
【0078】
印刷層の膜厚は0.1~10μmであることが好ましく、0.3~6μmであることがより好ましく、0.5~3μmであることが特に好ましい。本発明では、単一の印刷層だけでなく、複数の印刷層が重なった層も印刷層とし、色相の異なる印刷層を任意に組み合わせることができる。
【0079】
<印刷層に含まれる水性樹脂>
印刷層中の水性樹脂の含有量は、印刷層の全質量中、10~70質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがより好ましい。
上記水性樹脂としては、アクリル系樹脂(スチレン-アクリル共重合樹脂である場合を除く)、スチレン-アクリル共重合樹脂(B’)、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、アクリル樹脂(A’)、ウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂、ひまし油系樹脂、ロジン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン-アリルアルコール共重合樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ダンマル樹脂、及びこれらの変性樹脂が挙げられる。
中でも、印刷層が、スチレン-アクリル共重合樹脂(B’)、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、及びアクリル樹脂(A’)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、スチレン-アクリル共重合樹脂(B’)を含むことがなお好ましい。包装材の耐熱性が向上するためである。
【0080】
なお、水性樹脂は酸基を有することが好ましく、当該酸基が、塩基性化合物で中和されていることが好ましい。酸性基とはヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシ基など等が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。当該塩基性化合物として、例えば、アミン化合物、アルカリ金属化合物が好適に挙げられる。
【0081】
上記アミン化合物としては、例えば、アンモニア;ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが挙げられる。上記アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
(スチレン-アクリル共重合樹脂(B’))
スチレン-アクリル共重合樹脂(B’)は、水溶性樹脂として用いられる、水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b’1)であってもよいし、水性エマルジョン樹脂として用いられる、スチレン-アクリル共重合樹脂(b’2)エマルジョンであってもよい。スチレン-アクリル共重合樹脂(B’)は上記スチレン-アクリル共重合樹脂(B)と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0083】
(水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b’1))
水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b’1)は、酸基を有していることが好ましく、その場合の酸価は、150~350mgKOH/gであることが好ましく、200~300mgKOH/gであることがより好ましい。水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b’1)が酸基を有し、その酸価が上記範囲である場合、リサイクル性及び低きょう雑物個数が良好となる。
【0084】
水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b’1)の重量平均分子量は1500~50000であることが好ましく、1500~30000であることがより好ましく、1500~8000であることが特に好ましい。水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b’1)のガラス転移温度は、40~130℃が好ましく、60~100℃がより好ましい。水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b’1)の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好になる。
【0085】
水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b’1)は、市販品を用いてもよく、例えば、星光PMC社製 GL-2439、YL-1098が使用できる。
【0086】
(スチレン-アクリル共重合樹脂(b’2)エマルジョン)
スチレン-アクリル共重合樹脂(b’2)は、酸基を有していることが好ましく、その場合の酸価は、5~80mgKOH/gであることが好ましく、20~60mgKOH/gであることがより好ましい。スチレン-アクリル共重合樹脂(b’2)が酸基を有し、その酸価が上記範囲である場合、リサイクル性及び低きょう雑物個数が良好となる。スチレン-アクリル共重合樹脂(b’2)の重量平均分子量は、8000~800000であることが好ましく、20000~500000であることがより好ましい。スチレン-アクリル共重合樹脂(b’2)のガラス転移温度は、-20~60℃が好ましく、0~40℃がより好ましい。スチレン-アクリル共重合樹脂(b’2)の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる。
【0087】
印刷層は、上記水溶性樹脂および水性エマルジョン由来の樹脂を両方含むことが好ましい。水溶性樹脂および水性エマルジョン樹脂の固形分比率は、水溶性樹脂:水性エマルジョン樹脂=1:99~75:25であることが好ましく、1:99~55:45であることがより好ましく、15:85~35:65であることが特に好ましい。上記比率の場合、耐ブロッキング性が良好となる。
【0088】
スチレン-アクリル共重合樹脂(b’2)エマルジョンは、市販品を用いてもよく、例えば、BASF社製 ジョンクリル662、669、668、665、667、PDX 7198、633-E、LMV7051、90、HPD396が挙げられる。
【0089】
(スチレン-マレイン酸共重合樹脂)
スチレン-マレイン酸共重合樹脂は、酸基を有していることが好ましく、その場合の酸価は、100~180mgKOH/gであることが好ましく、120~160mgKOH/gであることがより好ましい。スチレン-マレイン酸共重合樹脂が酸基を有し、その酸価が上記範囲である場合、リサイクル性及び低きょう雑物個数が良好となる。スチレン-マレイン酸共重合樹脂の重量平均分子量は1500~50000であることが好ましく、4000~30000であることがより好ましい。スチレン-マレイン酸共重合樹脂のガラス転移温度は、40~120℃が好ましく、60~100℃がより好ましい。スチレン-マレイン酸共重合樹脂の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる。
【0090】
スチレン-マレイン酸共重合樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、星光PMC社製 M-30、荒川化学社製 アラスターシリーズを使用することができる。
【0091】
(アクリル樹脂(A’)(スチレン-アクリル共重合樹脂(B’)である場合を除く))
アクリル樹脂(A’)は、酸基を有していることが好ましく、その場合の酸価は、20~100mgKOH/gであることが好ましく、40~80mgKOH/gであることがより好ましい。アクリル樹脂が酸基を有し、その酸価が上記範囲である場合、リサイクル性及び低きょう雑物個数が良好となる。アクリル樹脂(A’)の重量平均分子量は1500~10000であることが好ましく、4000~30000であることがより好ましい。アクリル樹脂(A’)のガラス転移温度は、10~90℃が好ましく、30~70℃がより好ましい。アクリル樹脂(A’)の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる。
【0092】
アクリル樹脂(A’)は、市販品を用いてもよく、例えば、星光PMC社製 X-310、VS-1057、GL-2439、TS-1316を使用することができる。
【0093】
<印刷層に含まれる着色剤>
印刷層は、着色剤を含むことが好ましい。前記着色剤の含有量は、印刷層全質量中、1~60質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがより好ましい。
【0094】
着色剤としては顔料が好ましく、当該顔料としては、有機顔料、無機顔料いずれでも使用可能である。有機顔料としては、有機化合物、及び/又は有機金属錯体からなる顔料の使用が好ましい。無機顔料としては、酸化チタンを含むものが好ましい。
【0095】
有機顔料として具体的な例をカラーインデックス(Colour Index International、略称C.I.)のC.I.ナンバーで示す。
好ましくは、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブラック7であり、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
(無機顔料)
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられ、アルミニウムはリーフィングタイプ又はノンリーフィングタイプがあるが、ノンリーフィングタイプが好ましい。
【0097】
<印刷層に含まれる添加剤>
本発明の印刷層には、必要に応じて各種添加剤を含有させることができる。例えば、分散剤、ワックス、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、造膜助剤が挙げられる。
具体的には、耐摩擦性を向上させるために、ポリエチレンワックス等のワックス樹脂微粒子分散体、乾燥性や塗膜隠蔽性を向上させるために、カオリン、水酸化アルミニウム、クレー、タルク等の体質顔料、防滑性を付与するために無機系微粒子及び粘着性樹脂(アクリル樹脂(前述の<アクリル樹脂>と同一でも良いし、異なっていても良い)、酢酸ビニル樹脂)、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物、造膜助剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0098】
<印刷インキ>
印刷層は、上記着色剤及び上記バインダー樹脂を含む印刷インキにより形成されることが好ましい。
【0099】
<印刷インキの製造方法>
印刷層の形成に用いられる印刷インキは、例えば、顔料を樹脂等により分散機を用いて有機溶剤中に分散させ、得られた顔料分散体に樹脂、各種添加剤や有機溶剤等を混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、調整することができる。25℃における印刷インキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から50mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から300mPa・s以下の範囲であることが好ましい。
【0100】
<印刷層の形成>
印刷層は、例えば、ヒートシール層と反対側の紙基材面上に、印刷インキを用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。印刷方法としてはフレキソ印刷方式が好適であり、例えば、フレキソ印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることで印刷層を得ることができる。
【0101】
本願における、包装材の積層構成の例として、以下のものを好適に挙げることができる。下記の例において、「/」は各層の境界を意味する。
ヒートシール層/バリア層/紙基材/表面保護層
ヒートシール層/バリア層/紙基材/印刷層/表面保護層
ヒートシール層/紙基材/バリア層/表面保護層
ヒートシール層/紙基材/バリア層/印刷層/表面保護層
ヒートシール層/紙基材/印刷層/バリア層/表面保護層
ヒートシール層/バリア性樹脂を含む紙基材/表面保護層
ヒートシール層/バリア性樹脂を含む紙基材/印刷層/表面保護層
【0102】
<ヒートシール層に含まれる樹脂と表面保護層に含まれる樹脂とのガラス転移温度の差>
ヒートシール層の低塗布量化にあたり、ヒートシール剤を塗工・乾燥することで、均一な膜を形成することができる。なお、ヒートシール剤に含まれる溶剤がヒートシール層中に残留した場合、ブロッキングが発生しやすくなるが、ヒートシール層に含まれる樹脂のガラス転移温度よりも、表面保護層に含まれる樹脂のガラス転移温度を高くすることで、包装材に耐ブロッキング性を付与することができる。上記ヒートシール層及び表面保護層が、2種以上の樹脂を含む場合を考慮し、以下式にて、ヒートシール層のガラス転移温度Tg(D)、及び表面保護層のガラス転移温度Tg(C)を算出した。
【0103】
【0104】
Tg(C)と、Tg(D)との差が、10~110℃であることが好ましく、50~80℃であることがより好ましい。上記範囲である場合、タック切れ、荷重分散、及び造膜性のバランスが良好となるため、耐ブロッキング性及びヒートシール性が向上する。
【0105】
<包装材中の紙基材量>
包装材全量中の紙基材含有量は、低きょう雑物個数低減の観点から、50~99質量%以上であることが好ましく、65~95質量%以上であることがより好ましく、80~90質量%であることが特に好ましい。
【0106】
<包装袋>
本発明における包装材は、所定のサイズにカットされて、ヒートシール層同士を互いに合わせた形で縁部分をヒートシールされて包装袋となる。ヒートシールの温度としては50~250℃であることが好ましく、80~180℃であることがなお好ましい。ヒートシール圧力としては1~5kg/cm2等の条件であればよい。1枚の包装材を折り曲げて縁をヒートシールしたり、2枚以上の包装材をヒートシールしたりすることで包装袋を形成できる。また、包装袋は、中身を包装した後、すべての開口部をヒートシールすることでも包装袋を形成できる。この包装袋は、食品、医薬品等の包装袋として幅広く利用する事ができる。
【実施例0107】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。また、「NV.」とは不揮発性分の質量%を表す。
【0108】
<調整例1>ニトロセルロース樹脂溶液NC1の調整
ニトロセルロースnc1(NV.70%(溶剤:イソプロピルアルコール)、重量平均分子量:10,000、ガラス転移温度:155℃)57.1部を、酢酸エチル21.5部とイソプロピルアルコール21.5部に混合溶解させて、NV.40%のニトロセルロース樹脂溶液(NC1)を得た。
【0109】
<調整例2>ヒートシール剤HS1の調整
エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA1(住友化学社製、スミカフレックス S-410HQ、最低造膜温度:0℃、ガラス転移温度:-18℃、ビニルアルコール樹脂系乳化剤、NV.=50%) 91.7部、水/イソプロピルアルコール混合溶剤(質量比率1:1) 8.2部、BYK-024(BYK社製、消泡剤) 0.1部となるように添加、撹拌混合してヒートシール剤HS1を得た。
【0110】
<調整例3~9>ヒートシール剤HS2~8の調整
表1に記載した原料及び配合比を使用した以外は調整例2と同様の方法で、ヒートシール剤HS2~8を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA2(住友化学社製、スミカフレックス S-305HQ、最低造膜温度:3℃、ガラス転移温度:7℃、ビニルアルコール樹脂系乳化剤、NV.=50%)
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA3(住友化学社製、スミカフレックス S-328HQ、最低造膜温度:0℃、ガラス転移温度:-5℃、ビニルアルコール樹脂系乳化剤、NV.=50%)
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA4(住友化学社製、スミカフレックス S-408HQE、最低造膜温度:0℃、ガラス転移温度:-30℃、ビニルアルコール樹脂系乳化剤、NV.=50%)
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA5(ガラス転移温度:-47℃、NV.=50%)
・エチレン-アクリル共重合樹脂エマルジョンEAC1(ガラス転移温度:-15℃、NV.=50%)
・エチレン-アクリル共重合樹脂エマルジョンEAC2(ガラス転移温度:-30℃、NV.=50%)
・アクリル樹脂エマルジョンAC1(星光PMC社製、JE-1113、酸価:42mgKOH/g、ガラス転移温度:-24℃、NV.=50%)
【0111】
【0112】
<調整例10>バリアコート剤V1の調整
クラレポバールLM-20SO(クラレ社製、ケン化度=40モル%、NV.=100%)50部、水 25部、イソプロピルアルコール 25部を加え、80℃で加熱攪拌し、バリアコート剤V1を得た。
【0113】
<調整例11>バリアコート剤V2の調整
ソアノールD2908(三菱ケミカル社製、エチレン含有量=29モル%、NV.=100%)50部に、水 25部、イソプロピルアルコール 25部を加え、80℃で加熱攪拌し、バリアコート剤V2を得た。
【0114】
<調整例12>オーバーコート剤X1の製造
水4.3部、スチレン-アクリル共重合樹脂エマルジョンSAC1(酸価108mgKOH/g、ガラス転移温度:60℃、NV.40%)を87.6部、ポリエチレンワックス8.1部となるように添加、撹拌混合してオーバーコート剤X1を得た。
【0115】
<調整例13~17、比較調整例1>オーバーコート剤X2~7の製造
表2に記載した原料及び配合比を使用した以外は調整例12と同様の方法で、オーバーコート剤V2~7を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
・スチレン-アクリル共重合樹脂エマルジョンSAC2(酸価:51mgKOH/g、ガラス転移温度:-10℃、NV.40%)
・スチレン-アクリル共重合樹脂エマルジョンSAC3(酸価:38mgKOH/g、ガラス転移温度:9℃、NV.40%)
・スチレン-アクリル共重合樹脂エマルジョンSAC4(酸価:100mgKOH/g、ガラス転移温度:16℃、NV.40%)
・スチレン-アクリル共重合樹脂エマルジョンSAC5(酸価:50mgKOH/g、ガラス転移温度:96℃、NV.40%)
【表2】
【0116】
以下実施例にて包装材の製造方法を示す。
【0117】
<ヒートシール層の残留溶剤量評価>
得られた中間積層体における紙/バリア層の構成部分から、10cm角に5枚切り出した。切り出した5枚のサンプルについて、180℃、20分の条件で加熱し、それぞれのサンプルの加熱前後の重量変化量を算出し、5枚のサンプルの重量変化量の平均値を残留溶剤量とした。同様に、紙/バリア層/ヒートシール層の構成部分についても、残留溶剤量を算出し、式5でヒートシール層の残留溶剤量を算出した。
(式5)
ヒートシール層の残留溶剤量(mg)=(紙/バリア層/ヒートシール層の5サンプル平均の残留溶剤量)-(紙/バリア層部分の5サンプル平均の残留溶剤量)
【0118】
<ヒートシール層の塗工量測定>
得られた中間積層体におけるヒートシール層/バリア層/紙の構成部分から、10cm角に5枚切り出し、バリア層/紙の構成部分から、10cm角に5枚切り出した。それぞれのサンプルの重量を測定し、式6でヒートシール層の塗工量を算出した。
(式6)
ヒートシール層の塗工量(mg)=(ヒートシール層/バリア層/紙の5サンプルの平均重量)-(バリア層/紙の5サンプルの平均重量)
【0119】
<バリア層、印刷層及び表面保護層の塗工量測定>
バリア層、印刷層、及び表面保護層において、計算式及びサンプルの切り出し箇所が異なる以外は、<ヒートシール層の塗工量測定>と同様の方法で塗工量を算出した。なお、クラフト紙については、以下のものを用いた。
クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2、原反幅:100cm)
<式7>
バリア層の塗工量(mg)=(バリア層/紙の5サンプルの平均重量)/(クラフト紙の5サンプルの平均重量)
<式8>
印刷層の塗工量(mg)=(バリア層/紙/印刷層の5サンプルの平均重量)/(バリア層/紙の5サンプルの平均重量)
<式9>
表面保護層の塗工量(mg)=(ヒートシール層/バリア層/紙/印刷/表面保護層の5サンプルの平均重量)/(ヒートシール層/バリア層/紙/印刷層の5サンプルの平均重量)
【0120】
<実施例1>包装材P1の製造
クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2、原反幅:100cm)に対し、版深50μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン70℃の条件下で、バリアコート剤V1を2度重ね印刷して紙基材全面にバリア層を形成し、次に、バリア層を有する紙基材のバリア層側に対し、版の片側半分に非画像部を有する版深50μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン70℃の条件下で、ヒートシール剤HS1を2度重ね印刷してヒートシール層を形成し、ヒートシール層/バリア層/紙基材の構成である中間積層体p1を得た。中間積層体p1は、紙/バリア層構成の部分と、紙/バリア層/ヒートシール層構成の部分とが混在しており、残留溶剤量評価用のサンプルを得ることができる。中間積層体p1のヒートシール層に含まれる残留溶剤量は1mgであった。
次に、印刷インキ(アクワPKバイオ23黄、東洋インキ社製、黄インキ、含有樹脂の詳細は後述)及びオーバーコート剤X1を酢酸エチル:イソプロピルアルコール=7:3(質量比)の混合溶剤で希釈し、それぞれザーンカップ#3(離合社製)25℃で15秒になるよう粘度を調整した。
中間積層体p1における、紙基材のヒートシール層の反対面に対し、250線/インチのアニロックスロール、及び感光性樹脂製のベタ版を備えた小型フレキシプルファー印刷機(フレキソ印刷機)を用いて、印刷速度50m/分の条件下で、希釈したアクワPKバイオ23黄を紙基材全面に印刷し、1200Wドライヤーで10秒間乾燥させ、印刷層を形成した。次に、印刷層上に対し、200線/インチのアニロックスロール、及び感光性樹脂製のベタ版を備えた小型フレキシプルファー印刷機(フレキソ印刷機)を用いて、印刷速度50m/分の条件下で、オーバーコート剤X1を印刷層全面に印刷し、ヒートシール層/バリア層/紙基材/印刷層/表面保護層の構成である包装材P1を得た。なお、表面保護層の塗工において、[包装材の評価]での包装材P1必要分を確保した後は、塗工を終了し、塗工量測定用として、ヒートシール層/バリア層/紙基材/印刷層の構成部分の一部を保管した。
包装材P1における、Tg(C)とTg(D)との差は、78℃であった。
【0121】
上記印刷インキアクワPKバイオ23黄が含む樹脂は以下の通りである。
・スチレン-アクリル共重合樹脂エマルジョンSAC6(酸価:36mgKOH/g、ガラス転移温度:14℃)
・スチレン-アクリル共重合樹脂溶液SAC7(酸価:213mgKOH/g、重量平均分子量:8000、ガラス転移温度:73℃)
なお、上記SAC6とSAC7の不揮発性分比率は、SAC4:SAC5=75:25である。
【0122】
<実施例2~26>包装材P2~26の製造
表3に示したヒートシール剤、紙基材、バリアコート剤、印刷インキ、及びオーバーコート剤を使用した以外は、実施例1と同様の手順で、同様の構成を有する包装材P2~37をそれぞれ作製した。
【0123】
<比較例1>包装材P27の製造
クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2、100cm)に対し、紙基材の端から50cmの幅で、樹脂温度330℃、塗工速度80m/分の条件下で、ポリエチレン樹脂(融点:120℃)を熱溶融押出塗工し、ヒートシール層/紙基材の構成である中間積層体p27を得た。中間積層体p27のヒートシール層に含まれる残留溶剤量は0mgであった。
次に、印刷インキ(アクワPKバイオ23黄、東洋インキ社製、黄インキ)及びオーバーコート剤X1を酢酸エチル:イソプロピルアルコール=7:3(質量比)の混合溶剤で希釈し、それぞれザーンカップ#3(離合社製)25℃で15秒になるよう粘度を調整した。
中間積層体p27における、紙基材のヒートシール層の反対面に対し、250線/インチのアニロックスロール、及び感光性樹脂製のベタ版を備えた小型フレキシプルファー印刷機(フレキソ印刷機)を用いて、印刷速度50m/分の条件下で、希釈したアクワPKバイオ23黄を紙基材全面に印刷し、1200Wドライヤーで10秒間乾燥させ、印刷層を形成した。次に、印刷層上に対し、200線/インチのアニロックスロール、及び感光性樹脂製のベタ版を備えた小型フレキシプルファー印刷機(フレキソ印刷機)を用いて、印刷速度50m/分の条件下で、オーバーコート剤X1を印刷層全面に印刷し、紙基材/印刷層/表面保護層の構成である包装材P27を得た。なお、表面保護層の塗工において、[包装材の評価]での包装材P27必要分を確保した後は、塗工を終了し、塗工量測定用として、ヒートシール層/紙基材/印刷層の構成部分の一部を保管した。
包装材P27における、Tg(C)とTg(D)との差は、185℃であった。
【0124】
<比較例2>包装材P28の製造
クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2、100cm)に対し、版深50μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン70℃の条件下で、バリアコート剤V1を2度重ね印刷して紙基材全面にバリア層を形成し、次に、バリア層を有する紙基材のバリア層側に、紙基材の端から50cmの幅で、樹脂温度330℃、塗工速度80m/分の条件下で、ポリエチレン樹脂(融点:120℃)を熱溶融押出塗工し、ヒートシール層/バリア層/紙基材の構成である中間積層体p28を得た。中間積層体p28は、紙/バリア層構成の部分と、紙/バリア層/ヒートシール層構成の部分とが混在しているため、残留溶剤量評価用のサンプルを得ることができる。中間積層体p28のヒートシール層に含まれる残留溶剤量は0mgであった。
次に印刷インキ(アクワPKバイオ23黄、東洋インキ社製、黄インキ)及びオーバーコート剤X1を酢酸エチル:イソプロピルアルコール=7:3(質量比)の混合溶剤で希釈し、それぞれザーンカップ#3(離合社製)25℃で15秒になるよう粘度を調整した。
中間積層体p1における、紙基材のヒートシール層の反対面に対し、250線/インチのアニロックスロール、及び感光性樹脂製のベタ版を備えた小型フレキシプルファー印刷機(フレキソ印刷機)を用いて、印刷速度50m/分の条件下で、希釈したアクワPKバイオ23黄を紙基材全面に印刷し、1200Wドライヤーで10秒間乾燥させ、印刷層を形成した。次に、印刷層上に対し、200線/インチのアニロックスロール、及び感光性樹脂製のベタ版を備えた小型フレキシプルファー印刷機(フレキソ印刷機)を用いて、印刷速度50m/分の条件下で、オーバーコート剤X1を印刷層全面に印刷し、紙基材/印刷層/表面保護層の構成である包装材P28を得た。なお、表面保護層の塗工において、[包装材の評価]での包装材P28必要分を確保した後は、塗工を終了し、塗工量測定用として、ヒートシール層/バリア層/紙基材/印刷層の構成部分の一部を保管した。
包装材P28における、Tg(C)とTg(D)との差は、185℃であった。
<比較例3~6>包装材P29~32の製造
表4に示したヒートシール剤、紙基材、バリアコート剤、印刷インキ、及びバリアコート剤を使用した以外は、実施例1と同様の手順で、同様の構成を有する包装材P29~32をそれぞれ作製した。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
[包装材の評価]
実施例1~26、比較例1~6で得られた包装材P1~32について、以下に記載の評価を行った。結果を表3、表4に示す。なお、残留溶剤量測定のため、包装材の一部分はヒートシール層を有していないが、その部分は以下評価には使用しない。
【0129】
<ヒートシ-ル性評価>
得られた包装材を15mm×100mmの大きさに切り取り、ヒートシール層面同士が重なるように折り曲げ、以下の装置及び条件でヒートシールし、シールされていない両端部を小型引張試験機に固定し、ヒートシール強度を評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《ヒートシール条件》
装置:テスター産業株式会社製ヒートシールテスター、シール幅:折り曲げ部より
10mm、ヒーター温度:160℃、シール圧力:2kg/cm2、
シール時間:1sec
《ヒートシール強度測定条件》
装置:インテスコ社製 小型引張試験機(モデル;IM-20)、試験片幅:15mm、
剥離モード:90°剥離、引張速度:300mm/min
《評価基準》
A.ヒートシール強度が3.5N以上である。
B.ヒートシール強度が2.5N以上、3.5N未満である。
C.ヒートシール強度が1.0N以上、2.5N未満である。
D.ヒートシール強度が1.0N未満である。
【0130】
<リサイクル性>
得られた包装材を3cm角の裁断片になるように切り出し、その裁断片を合計58gとなるように計量し、試料として試験に用いた。2Lパルパーに、30℃の温水を1.5L、3.75%の水酸化ナトリウム水溶液を7mL(対紙0.5%)、1.5%に希釈した脱墨剤(花王株式会社製DI-7027)を7mL(対紙0.2%)投入してから試料を加え、3000rpm、20分間撹拌を行った。攪拌開始から2分後に、蓋に付着した試料を少量の水で槽内に洗い流した。離解終了後に試料を150メッシュの金網を用いて625gまで濃縮した。
【0131】
2Lパルパーに常温の精製水1350mLを加え、濃縮した試料と共に1分間再離解し、2Lパルパーから10Lバケツに試料を移し、30℃±2℃の温水を加え、5.4kgに希釈した。その内4.3kgを分取し、J.TAPPI No.39準拠のフローテーターである極東振興(株)製SF-25で、スクリュー回転数1500rpm、空気供給量4L/分の条件で10分間攪拌を行った。
【0132】
フローテーター槽内の試料を回収し、試料に水を加えて総量を8kgに希釈した後、硫酸アルミニウム溶液を加え、pHを5.0~5.6に調整し、回収パルプを得た。
【0133】
JIS P8222で定める、手すき機(φ160mm、熊谷理機工業(株)製)で150メッシュの金網を用いて、回収パルプから湿紙を作製し、濾紙で挟み、410kPa の圧力で5分間プレスして脱水した。その後回転式ドラム乾燥機を用い、表面温度を90℃で4分間乾燥させた。乾燥後の秤量が60gとなる様に調整し、再生紙5枚を作製した。残った回収パルプも上記と同条件で乾燥させ、乾燥パルプを得た。
【0134】
得られた5枚の再生紙及び乾燥パルプについて、明らかにヒートシール層、バリア層、紙基材、印刷層、及び表面保護層に由来しないと思われる金属片等のきょう雑物を除去した。
得られた再生紙を、以下の方法により性能評価を行った。結果を表3、表4に示す。
【0135】
再生紙5枚と乾燥パルプについて、以下式にて、パルプ回収率を算出し、以下基準にて評価を行った。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
式10 紙基材質量(g)=70(g/m2)×{(58gの試料の総面積(m2)}
式11 パルプ回収率(質量%)={再生紙5枚質量(g)+乾燥パルプ質量(g)}/紙基材質量(g)
《評価基準》
A.パルプ回収率が、95質量%以上である。
B.パルプ回収率が、90質量%以上、95質量%未満である。
C.パルプ回収率が、80質量%以上、90質量%未満である。
D.パルプ回収率が、80質量%未満である。
【0136】
<低きょう雑物個数の評価>
上記で作製した再生紙について、ダートカウンターApogee System Inc.製Spec*Scan 2000を用いて0.3mm2以上の低きょう雑物個数(個/167cm2)の測定をJIS P8208 パルプ-きょう雑物測定方法に従い行った。測定値は得られた5枚の平均値とした。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
A.低きょう雑物個数が0個
B.低きょう雑物個数が1~2個
C.低きょう雑物個数が3~4個
D.低きょう雑物個数が5個以上
【0137】
<耐ブロッキング性評価>
得られた包装材を40mm角に2枚切り出し、1枚の包装材片のヒートシール層面と、もう1枚の包装材片の表面保護層面を完全に重ね、温度40℃、湿度80%RH、荷重100N/cm2の環境下で圧着した。24時間静置したのち、2枚重ねた包装材同士を剥離し、印刷層の剥離状態を目視で観察し、下記基準にて評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
A.ヒートシール層面への印刷層の転移量が5面積%未満である。
B.ヒートシール層面への印刷層の転移量が5面積%以上、10面積%未満である。
C.ヒートシール層面への印刷層の転移量が10面積%以上、25面積%未満である。
D.ヒートシール層面への印刷層の転移量が25面積%以上である。
【0138】
<酸素バリア性評価>
得られた包装材について、JIS K 7126-2:2006に準拠した方法で酸素透過度測定を行い、下記基準にて評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
A.酸素透過度が100g/m2・24h未満である。
B.酸素透過度が100g/m2・24h以上、1000g/m2・24h未満である。
C.酸素透過度が1000g/m2・24h以上、10000g/m2・24h未満である。
D.酸素透過度が10000g/m2・24h以上である。
【0139】
上記結果から、比較例1及び2は、ヒートシール層にポリエチレン樹脂を含むため、ヒートシール性、リサイクル性、低きょう雑物個数を満たさなかった。さらに比較例1では、バリア層がないため、酸素バリア性を満たさなかった。比較例3は、ヒートシール層の塗工量が1g/m2未満であるため、ヒートシール性を満たさず、比較例4は、ヒートシール層の塗工量が18g/m2超過であるため、リサイクル性、低きょう雑物個数、及び耐ブロッキング性を満たさなかった。比較例5は、バリア層を含まないため、酸素バリア性を満たさなかった。比較例6は、表面保護層にスチレン-アクリル共重合樹脂(B)を含まなかったため、低きょう雑物個数及び耐ブロッキング性を満たさなかった。
一方実施例は、ヒートシール層にエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、表面保護層にスチレン-アクリル共重合樹脂(B)を含み、ヒートシール層の塗工量の範囲を満たすため、ヒートシール性、リサイクル性、低きょう雑物個数、耐ブロッキング性、及び酸素バリア性が良好である。特に、ヒートシール層の塗工量5g/m2であり、ヒートシール層のTg(D)と、表面保護層のTg(C)との差が、78℃であり、表面保護層にポリエチレンワックスが含まれており、バリア層がヒートシール側に位置する実施例1において、優れたヒートシール性、リサイクル性、低きょう雑物個数、耐ブロッキング性、及び酸素バリア性を有していた。