(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002471
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】振動デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20231228BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20231228BHJP
H01L 23/10 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H01L23/02 J
H01L23/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101662
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】金本 陽子
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108CC11
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE17
5J108GG03
5J108GG08
5J108GG14
(57)【要約】
【課題】高精度な振動デバイスを提供する。
【解決手段】振動部21、及び、平面視で振動部21を囲む枠部23、を有する水晶振動板2と、水晶振動板2の一方の面側に接合された第1封止部材3と、水晶振動板2の他方の面側に接合された第2封止部材4と、接着層11と、を備え、第1封止部材3及び第2封止部材4の少なくとも一方はフィルム12であり、フィルム12は、接着層11を介して枠部23と接合され、振動部21側の面に接着層11のない領域を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部、及び、平面視で前記振動部を囲む枠部、を有する振動板と、
前記振動板の一方の面側に接合された第1封止部材と、
前記振動板の他方の面側に接合された第2封止部材と、
接着層と、
を備え、
前記第1封止部材及び前記第2封止部材の少なくとも一方は樹脂製フィルムであり、
前記樹脂製フィルムは、前記接着層を介して前記枠部と接合され、前記振動部側の面に前記接着層のない領域を有する、振動デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の振動デバイスであって、
前記第1封止部材、及び、前記第2封止部材は、前記樹脂製フィルムである、振動デバイス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の振動デバイスであって、
前記振動部には、励振電極が設けられており、
前記接着層のない領域は、平面視で、少なくとも前記励振電極と重なる領域である、振動デバイス。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の振動デバイスであって、
前記接着層のない領域は、平面視で、少なくとも前記振動部と重なる領域である、振動デバイス。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の振動デバイスであって、
前記接着層のない領域には、吸着層が配置されている、振動デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の振動デバイスであって、
前記吸着層は、前記樹脂製フィルムにおける前記振動板側の面と、前記接着層と、の間に配置されている、振動デバイス。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の振動デバイスであって、
前記第1封止部材と前記第2封止部材との間の空間において、
前記接着層における前記空間側の端部は、無機膜で覆われている、振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外枠部を有する水晶振動板と、水晶振動板の一方の主面側の外枠部に接合された第1樹脂フィルムと、水晶振動板の他方の主面側の外枠部に接合された第2樹脂フィルムと、を備えた圧電振動デバイスが開示されている。
【0003】
上記文献によれば、第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムは、表裏両面の全面に形成された接着層を介し、熱プレスを用いて外枠部に加熱圧着されている。水晶振動板を外部基板に実装する場合は、熱プレスよりも高い温度のはんだリフロー処理などを用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、樹脂フィルムの全面に接着層が形成されているため、はんだリフロー処理を用いた際、接着層から溶剤等が揮発してアウトガスが発生し、水晶振動板の周波数変動などに悪影響を及ぼす恐れがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
振動デバイスは、振動部、及び、平面視で前記振動部を囲む枠部、を有する振動板と、前記振動板の一方の面側に接合された第1封止部材と、前記振動板の他方の面側に接合された第2封止部材と、接着層と、を備え、前記第1封止部材及び前記第2封止部材の少なくとも一方は樹脂製フィルムであり、前記樹脂製フィルムは、前記接着層を介して前記枠部と接合され、前記振動部側の面に前記接着層のない領域を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の振動デバイスの構成を示す斜視図。
【
図3】
図2に示す振動デバイスのA-A線に沿う断面図。
【
図7】
図6に示す封止部材のB-B線に沿う断面図。
【
図12】第2実施形態の振動デバイスの構成を示す断面図。
【
図14】変形例の振動デバイスの構成を示す断面図。
【
図15】変形例の振動デバイスの構成を示す平面図。
【
図16】変形例の振動デバイスの構成を示す断面図。
【
図17】変形例の振動デバイスの構成を示す平面図。
【
図18】変形例の振動デバイスの構成を示す断面図。
【
図19】変形例の振動デバイスの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、
図1~
図4を参照しながら、振動デバイス1の構成を説明する。
【0009】
図1に示すように、振動デバイス1は、振動板としての水晶振動板2と、水晶振動板2の表裏の両主面のうち一方の主面側を覆って封止する第1封止部材3と、他方の主面側を覆って封止する第2封止部材4(
図4参照)と、を備えている。
【0010】
第1封止部材3及び第2封止部材4は、例えば、樹脂製フィルムである。振動デバイス1は、直方体であり、平面視で矩形である。具体的には、振動デバイス1は、例えば、平面視で、1.2mm×1.0mmであり、厚みが0.2mmである。
【0011】
水晶振動板2は、矩形の水晶板を水晶の結晶軸であるX軸の周りに35°15′回転させて加工したATカット水晶板であり、その表裏の両主面が、XZ´平面である。本実施形態では、
図2及び
図4に示すように、矩形の水晶振動板2の長辺方向にZ´が、短辺方向にX軸が、それぞれ設定されている。
【0012】
水晶振動板2は、平面視が矩形状の振動部21と、振動部21の周囲を、貫通部22を挟んで取り囲む枠部23と、振動部21と枠部23とを連結する連結部24と、を備えている。枠部23は、振動部21及び連結部24よりも厚く形成されている。第1封止部材3及び第2封止部材4は、接着層11を介して、枠部23と接合されている。
【0013】
また、水晶振動板2は、平面視が矩形状の振動部21を、その一つの角部に設けた一箇所の連結部24によって枠部23に連結しているので、2箇所以上で連結する構成に比べて、振動部21に作用する応力を低減することができる。
【0014】
連結部24は、例えば、枠部23の内周のうち、X軸方向に沿う一辺から突出し、かつ、Z´軸方向に沿って形成されている。水晶振動板2のZ´軸方向の両端部には、第1実装端子27及び第2実装端子28が形成されている。
【0015】
第1実装端子27及び第2実装端子28は、はんだなどによって、回路基板等に直接接合されている。よって、振動デバイス1の長辺方向(Z´軸方向)に収縮応力が働き、応力が振動部21に伝搬することにより、振動デバイス1の発振周波数が変化しやすくなることが考えられる。しかしながら、本実施形態では、収縮応力に沿う方向に連結部24が形成されているため、収縮応力が振動部21に伝搬することを抑えることができる。これにより、振動デバイス1を回路基板に実装した際の、発振周波数の変化を抑制することができる。
【0016】
振動部21の一方の面には、第1励振電極25が形成されている(
図2参照)。振動部21の他方の面には、第2励振電極26が形成されている(
図4参照)。平面視矩形の水晶振動板2の長辺方向(Z´軸方向)の一辺部の枠部23には、第1励振電極25と電気的に接続された第1実装端子27が、水晶振動板2の短辺方向(X軸方向)に沿って形成されている。一方、他辺部の枠部23には、第2励振電極26と電気的に接続された第2実装端子28が、同様に、水晶振動板2の短辺方向(X軸方向)に沿って形成されている。第1実装端子27及び第2実装端子28は、振動デバイス1を回路基板などに実装するための端子である。
【0017】
第1実装端子27は、矩形環状の第1封止パターン201に連設されている(
図2参照)。第2実装端子28は、矩形環状の第2封止パターン202に連設されている(
図4参照)。第1実装端子27及び第2実装端子28は、振動部21を挟んで、水晶振動板2の長辺方向(Z´軸方向)の両端部にそれぞれ形成されている。
【0018】
第1実装端子27及び第2実装端子28は、水晶振動板2の両主面に設けられており、両主面の第1実装端子27同士及び両主面の第2実装端子28同士は、それぞれ、水晶振動板2の対向する長辺側の側面電極および水晶振動板2の対向する短辺側の端面電極を介して電気的に接続されている。
【0019】
図2に示すように、水晶振動板2の表面側には、第1封止部材3が接合される第1封止パターン201が、略矩形の振動部21を取り囲むように、矩形環状に形成されている。第1封止パターン201は、第1実装端子27に連なる接続部201aと、接続部201aの両端部から水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部201bと、水晶振動板2の短辺方向に沿って延出して、第1延出部201bの延出端を接続する第2延出部201cと、を備えている。
【0020】
第2延出部201cは、第1励振電極25から引き出された第1引出し電極203に接続されている。第1実装端子27は、第1引出し電極203及び第1封止パターン201を介して第1励振電極25に電気的に接続されている。
【0021】
水晶振動板2の短辺方向に沿って延出する第2延出部201cと第2実装端子28との間には、電極が形成されていない無電極領域が設けられて、第1封止パターン201と第2実装端子28との絶縁が図られている。
【0022】
図4に示すように、水晶振動板2の裏面側には、第2封止部材4が接合される第2封止パターン202が、略矩形の振動部21を取り囲むように矩形環状に形成されている。この第2封止パターン202は、第2実装端子28に連なる接続部202aと、接続部202aの両端部から水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部202bと、水晶振動板2の短辺方向に沿って延出して、各第1延出部202bの延出端を接続する第2延出部202cと、を備えている。
【0023】
第2延出部202cは、第2励振電極26から引き出された第2引出し電極204、更に、接続部202aと第1延出部202bとを介して接続されている。第2実装端子28は、第2引出し電極204及び第2封止パターン202を介して、第2励振電極26に電気的に接続されている。水晶振動板2の短辺方向に沿って延出する第2延出部202cと第1実装端子27との間には、電極が形成されていない無電極領域が設けられて、第2封止パターン202と第1実装端子27との絶縁が図られている。
【0024】
図2に示すように、第1封止パターン201の、水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部201bの幅は、長辺方向に沿って延びる枠部23の幅より狭く、第1延出部201bの幅方向(
図2における上下方向)の両側には、電極が形成されていない無電極領域が設けられている。
【0025】
第1延出部201bの両側の無電極領域の内、外側の無電極領域は、第1実装端子27まで延びていると共に、第2実装端子28と第2延出部201cとの間の無電極領域に連なっている。これによって、第1封止パターン201の接続部201a、第1延出部201b、及び、第2延出部201cの外側は、平面視で「コ」の字状の略等しい幅の無電極領域によって囲まれている。
【0026】
第1封止パターン201の接続部201aの幅方向の内側には、無電極領域が形成されている。この無電極領域は、第1延出部201bの内側の無電極領域に連なっている。第2延出部201cの幅方向の内側には、連結部24の第1引出し電極203を除いて無電極領域が形成されている。この無電極領域も、第1延出部201bの内側の無電極領域に連なっている。これにより、第1封止パターン201の接続部201a、第1延出部201b、及び、第2延出部201cの幅方向の内側は、連結部24の第1引出し電極203を除いて平面視で矩形環状の略等しい幅の無電極領域によって囲まれている。
【0027】
図4に示すように、第2封止パターン202の、水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部202bの幅は、長辺方向に沿って延びる枠部23の幅より狭く、第1延出部202bの幅方向(
図4における上下方向)の両側には、電極が形成されていない無電極領域が設けられている。
【0028】
第1延出部202bの両側の無電極領域の内、外側の無電極領域は、第2実装端子28まで延びていると共に、第1実装端子27と第2延出部202cとの間の無電極領域に連なっている。これによって、第2封止パターン202の接続部202a、第1延出部202b、及び、第2延出部202cの外側は、平面視で逆「コ」の字状の略等しい幅の無電極領域によって囲まれている。
【0029】
第2封止パターン202の接続部202aの幅方向の内側には、連結部24の第2引出し電極204を除いて無電極領域が形成されている。この無電極領域は、第1延出部202bの内側の無電極領域に連なっている。また、第2延出部202cの幅方向の内側には、無電極領域が形成されている。この無電極領域も、第1延出部202bの内側の無電極領域に連なっている。これにより、第2封止パターン202の接続部202a、第1延出部202b、及び、第2延出部202cの幅方向の内側は、連結部24の第2引出し電極204を除いて平面視で矩形環状の略等しい幅の無電極領域によって囲まれている。
【0030】
上記したように、第1封止パターン201の第1延出部201bを、枠部23の幅よりも狭くし、第1延出部201bの幅方向の両側には、無電極領域を設けている。更に、接続部201a及び第2延出部201cの幅方向の内側には、無電極領域を設けている。
【0031】
一方、第2封止パターン202の第1延出部202bを、枠部23の幅よりも狭くし、第1延出部202bの幅方向の両側には、無電極領域を設けている。更に、接続部202a及び第2延出部202cの幅方向の内側には、無電極領域を設けている。
【0032】
無電極領域は、スパッタリング時に枠部23の側面に回り込んだ第1封止パターン201及び第2封止パターン202を、フォトリソグラフィー技術によりパターニングし、これをメタルエッチングで除去することによって形成される。これにより、第1封止パターン201及び第2封止パターン202が枠部23の側面に回り込むことによる短絡を防止することができる。
【0033】
水晶振動板2の表裏面にそれぞれ接合されて水晶振動板2の振動部21を封止する第1封止部材3及び第2封止部材4は、矩形の樹脂製フィルムである。第1封止部材3及び第2封止部材4は、水晶振動板2の長手方向の両端部の第1実装端子27及び第2実装端子28を除く矩形の領域を覆うサイズであり、矩形の領域に接合される。
【0034】
第1封止部材3及び第2封止部材4は、耐熱性の樹脂フィルムであり、例えば、ポリイミド樹脂製のフィルムである。以下、樹脂製フィルムをフィルム12と称する。このフィルム12は、300℃程度の耐熱性を有している。第1封止部材3及び第2封止部材4は、透明であるが、後述の加熱圧着の条件によっては、不透明となる場合がある。なお、この第1封止部材3及び第2封止部材4は、透明、不透明、あるいは、半透明であってもよい。
【0035】
なお、第1封止部材3及び第2封止部材4は、ポリイミド樹脂に限らず、スーパーエンジニアリングプラスチックに分類されるような樹脂、例えば、ポリアミド樹脂やポリエーテルエーテルケトン樹脂等を用いてもよい。
【0036】
図3に示すように、第1封止部材3及び第2封止部材4は、接着層11を介して、枠部23に接着されている。具体的には、接着層11は、
図2及び
図4に示すように、枠部23と重なる領域のみに配置されている。つまり、接着層11は、平面視で、振動デバイス1の中央部のように、振動部21と重なる領域には無く、枠部23と接触する領域のみに配置されている。言い換えれば、接着層11の表裏の両主面が接着部分として機能している。
【0037】
第1封止部材3及び第2封止部材4は、その矩形の周端部が、接着層11を介して枠部23に、振動部21を封止するように、例えば、熱プレスによって、それぞれ加熱圧着される。接着層11は、例えば、熱可塑性の樹脂である。
【0038】
第1封止部材3及び第2封止部材4は、耐熱性の樹脂フィルムであるので、振動デバイス1を、回路基板等にはんだ実装する場合のはんだリフロー処理の高温に耐えることができ、第1封止部材3及び第2封止部材4が変形等することがない。
【0039】
一方、接着層11は、はんだリフロー処理を用いた際、接着層11から溶剤等が揮発してアウトガスが発生し、水晶振動板2の周波数変動などに悪影響を及ぼす恐れがある。しかしながら、本実施形態によれば、フィルム12において、振動部21側の面に接着層11のない領域を有するので、樹脂製フィルムの全面に接着層11がある場合と比較して、アウトガスの発生量を少なくすることができる。これにより、振動部21の周波数変動に悪影響を及ぼすことを抑えることができる。
【0040】
水晶振動板2の第1励振電極25及び第2励振電極26は、例えば、Ti又はCrからなる下地層の上にAuが積層され、更に、TiやCr又はNiが積層形成されて構成されている。なお、第1実装端子27及び第2実装端子28、第1封止パターン201及び第2封止パターン202、第1引出し電極203及び第2引出し電極204においても、例えば、同様に構成されている。
【0041】
本実施形態では、下地層がTiであり、その上に、AuやTiが積層形成されている。このように、最上層がTiであることにより、Auが最上層である場合と比較して、ポリイミド樹脂との接合強度を向上させることができる。
【0042】
第1封止部材3及び第2封止部材4が接合される矩形環状の第1封止パターン201及び第2封止パターン202の上層は、上記したように、Ti、Cr又はNi(又は、これらの酸化物)から構成されるので、Auなどに比べて、第1封止部材3及び第2封止部材4との接合強度を高めることができる。
【0043】
次に、
図5A~
図5Eを参照しながら、振動デバイス1の製造方法を説明する。
【0044】
まず、
図5Aに示す工程では、加工前の水晶ウェハ(ATカット水晶板)5を準備する。
【0045】
次に、
図5Bに示す工程では、水晶ウェハ5に対して、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、例えば、ウェットエッチングを行って、複数の水晶振動板2a及びそれらを支持するフレーム部(図示せず)等の各部分の外形を形成し、更に、水晶振動板2aに、枠部23a及び枠部23aよりも薄肉の振動部21a等の各部の外形を形成する。
【0046】
次に、
図5Cに示す工程では、スパッタリング技術又は蒸着技術、及びフォトリソグラフィー技術によって、水晶振動板2aの所定の位置に、第1励振電極25a及び第2励振電極26a、第1実装端子27a及び第2実装端子28a等を形成する。
【0047】
次に、
図5Dに示す工程では、水晶振動板2aの表裏の両主面を、第1封止部材3a及び第2封止部材4aでそれぞれ覆うように、第1封止部材3a及び第2封止部材4aを加熱圧着し、各水晶振動板2aの各振動部21aを封止する。第1封止部材3a及び第2封止部材4aによる振動部21aの封止は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行われる。
【0048】
次に、
図5Eに示す工程では、各水晶振動板2にそれぞれ対応するように、第1封止部材3a及び第2封止部材4aを、第1実装端子27及び第2実装端子28の一部が露出するように切断して不要部分を除去し、各水晶振動板2を分離して個片化する。これによって、
図1に示すような振動デバイス1が複数得られる。
【0049】
次に、
図6及び
図7を参照しながら、第1封止部材3及び第2封止部材4の構成を説明する。以下、封止部材3,4と称して説明する。また、
図6及び
図7は、複数の振動デバイス1に貼り付けるための複数の封止部材3,4を個片化する前の状態を示している。
【0050】
図6及び
図7に示すように、封止部材3,4は、フィルム12と、フィルム12の上に配置された接着層11と、Z´軸方向に個片化するための貫通孔13と、を有する。
【0051】
上記したように、封止部材3,4は、振動デバイス1の振動部21と平面視で重なる領域に、接着層11の無い領域である開口部14を有する。このような封止部材3,4を用いることにより、複数の振動デバイス1を同時に形成することができる。
【0052】
次に、
図8A~
図9Cを参照しながら、第1封止部材3及び第2封止部材4の製造方法のうち、第1の形成方法を説明する。
【0053】
まず、
図8A及び
図9Aに示す工程では、フィルム12を準備する。
【0054】
次に、
図8B及び
図9Bに示す工程では、フィルム12と接着層11とを貼り合わせる。なお、接着層11は、予め、振動部21と平面視で重なる領域、即ち、開口部14が除去されている。また、上記したような貼り合わせる方法に限定されず、フィルム12の表面の接着層11を形成する領域のみに接着層11を選択的に成膜や塗布、印刷するようにしてもよい。
【0055】
次に、
図8C及び
図9Cに示す工程では、接着層11及びフィルム12に貫通孔13を形成する。貫通孔13の形成方法としては、特に限定されず、例えば、レーザーカットなどの切断方法を用いて選択的に切断するようにしてもよい。また、エッチング技術を用いて貫通させるようにしてもよい。以上により、複数の振動デバイス1を同時に形成するための封止部材3,4が完成する。
【0056】
次に、
図10A~
図11Cを参照しながら、第1封止部材3及び第2封止部材4の製造方法のうち、第2の形成方法を説明する。
【0057】
まず、
図10A及び
図11Aに示す工程では、接着層11付きのフィルム12を準備する。なお、接着層11は、予めフィルム12の表面全体に形成されている。
【0058】
次に、
図10B及び
図11Bに示す工程では、フィルム12の全面に成膜された接着層11のうち、開口部14に相当する領域の接着層11を取り除く。開口部14を形成する方法は、特に限定されず、例えば、パターニングして開口部14の領域のみを除去するようにしてもよい。
【0059】
次に、
図10C及び
図11Cに示す工程では、接着層11及びフィルム12に貫通孔13を形成する。貫通孔13の形成方法としては、特に限定されず、例えば、上記したような切断方法を用いて選択的に切断するようにしてもよい。また、エッチング技術を用いて貫通させるようにしてもよい。以上により、複数の振動デバイス1を同時に形成するための封止部材3,4が完成する。
【0060】
以上述べたように、第1実施形態の振動デバイス1は、振動部21、及び、平面視で振動部21を囲む枠部23、を有する水晶振動板2と、水晶振動板2の一方の面側に接合された第1封止部材3と、水晶振動板2の他方の面側に接合された第2封止部材4と、接着層11と、を備え、第1封止部材3及び第2封止部材4の少なくとも一方はフィルム12であり、フィルム12は、接着層11を介して枠部23と接合され、振動部21側の面に接着層11のない領域を有する。
【0061】
この構成によれば、フィルム12において接着層11のない領域を有するので、接着層11から溶剤が揮発した場合、フィルム12の全面に接着層11がある場合と比較して、アウトガスの発生量を少なくすることができる。これにより、水晶振動板2の周波数変動に悪影響を及ぼすことを抑えることができる。加えて、接着層11の領域を最小限にするので、使用する接着層11にかかるコストを抑えることができる。
【0062】
また、第1実施形態の振動デバイス1において、第1封止部材3、及び、第2封止部材4は、フィルム12であることが好ましい。この構成によれば、どちらもフィルム12であるので、例えば、ガラスや金属材料で封止する場合と比較して、かかるコストを抑えることができる。
【0063】
次に、
図12を参照しながら、第2実施形態の振動デバイス1Aの構成を説明する。
【0064】
図12に示すように、第2実施形態の振動デバイス1Aは、接着層11における振動部21側の端面を無機膜101で覆っている部分が、第1実施形態の振動デバイス1と異なっている。その他の構成については概ね同様である。このため第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
【0065】
図12に示すように、第2実施形態の振動デバイス1Aは、第1封止部材3の接着層11における振動部21の側、即ち、封止された空間100側に、無機膜101が配置されている。同様に、第2封止部材4の接着層11における振動部21の側、即ち、封止された空間100側に、無機膜101が配置されている。
【0066】
無機膜101は、アウトガスを通さない緻密な膜であることが好ましく、例えば、酸化シリコン(SiO2)やチタン(Ti)などである。チタンであれば、例えば、接着層11を覆うことによるアウトガスの発生の低減効果と、空間100(キャビティとも称する)内部に発生したアウトガスの吸着効果と、の両方を得ることができる。無機膜101は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成される。
【0067】
このように、空間100側に露出する接着層11の端部が無機膜101で覆われているので、接着層11から発生したアウトガスが空間100側に流れることを抑えることができる。
【0068】
次に、
図13A~
図13Dを参照しながら、第2実施形態の振動デバイス1Aの製造方法を説明する。なお、ここでは、第1実施形態の振動デバイス1と異なる、封止部材3,4の製造方法のみを説明する。
【0069】
まず、
図13Aに示す工程では、フィルム12と接着層11とが貼り合わされたものを準備する。
図13Bに示す工程では、接着層11をパターニングする。など、
図13Bまでの工程は、特に限定されず、例えば、上記した第1実施形態の封止部材3,4の製造方法を用いるようにしてもよい。
【0070】
次に、
図13Cに示す工程は、パターニングされた接着層11を含む、フィルム12の全体に、例えば、CVD法を用いて、無機膜101aを成膜する。
【0071】
次に、
図13Dに示す工程は、フィルム12に、例えば、ドライエッチング処理を施して、無機膜101aを垂直方向にエッチングする。これにより、接着層11の端面に、無機膜101を成膜することができる。
【0072】
以上述べたように、第2実施形態の振動デバイス1Aは、第1封止部材3と第2封止部材4との間の空間100において、接着層11における空間100側の端部は、無機膜101で覆われている。この構成によれば、空間100側に露出する接着層11の端部が無機膜101で覆われているので、接着層11から発生したアウトガスが空間100側に流れることを抑えることができる。
【0073】
以下、上記した実施形態の変形例を説明する。
【0074】
上記したように、接着層11は、枠部23と接触する領域以外、全て削除することに限定されず、
図14~
図17に示すようにしてもよい。
【0075】
図14及び
図15に示すように、変形例の振動デバイス1Bは、少なくとも、励振電極25,26と重なる領域W1の接着層11aを除去する。この構成によれば、励振電極25,26と重なる領域W1に接着層11aがないので、接着層11aから溶剤が揮発した場合、励振電極25,26へのアウトガスの影響を抑えることができる。
【0076】
このように、変形例の振動デバイス1Bにおいて、振動部21には、励振電極25,26が設けられており、接着層11aのない領域は、平面視で、少なくとも励振電極25,26と重なる領域であることが好ましい。この構成によれば、励振電極25,26と重なる領域に接着層11aがないので、接着層11aから溶剤が揮発した場合、励振電極25,26へのアウトガスの影響を抑えることができる。
【0077】
図16及び
図17に示すように、変形例の振動デバイス1Cは、少なくとも、振動部21と重なる領域W2の接着層11bを除去する。この構成によれば、振動部21と重なる領域W2に接着層11bがないので、接着層11bから溶剤が揮発した場合、振動部21へのアウトガスの影響を抑えることができる。
【0078】
このように、変形例の振動デバイス1Cにおいて、接着層11bのない領域は、平面視で、少なくとも振動部21と重なる領域であることが好ましい。この構成によれば、振動部21と重なる領域に接着層11bがないので、接着層11bから溶剤が揮発した場合、振動部21へのアウトガスの影響を抑えることができる。
【0079】
また、上記したように、接着層11を除去した領域に何も配置しないことに限定されず、例えば、
図18に示すように、吸着層102を配置するようにしてもよい。具体的には、変形例の振動デバイス1Dは、封止部材3,4において、接着層11が無い領域、即ち、振動部21と重なる領域に、アウトガスを吸着するような吸着層102が配置されている。
【0080】
吸着層102としては、例えば、活性炭、窒化アルミニウム(Al2N3)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)等の遷移金属、またはその合金・化合物としてZr-V-FeやZr-V、Zr-Al等が挙げられる。
【0081】
このように、変形例の振動デバイス1Dにおいて、接着層11のない領域には、吸着層102が配置されていることが好ましい。この構成によれば、吸着層102が配置されているので、アウトガスが発生した場合、アウトガスを吸着することが可能となり、水晶振動板2へのアウトガスの影響を抑えることができる。
【0082】
また、
図19に示す変形例の振動デバイス1Eのように、吸着層103を接着層11と重なる領域、即ち、フィルム12における振動部21側の全面に配置するようにしてもよい。このようにすることにより、吸着層103をパターニングする必要がなく、かかる工数を抑えることができる。また、接着層11と重なって吸着層103が配置されているため、アウトガスをより吸着しやすくすることができる。
【0083】
このように、変形例の振動デバイス1Eにおいて、吸着層103は、フィルム12における水晶振動板2側の面と、接着層11と、の間に配置されていることが好ましい。この構成によれば、接着層11のない領域に加えて、接着層11と重なる部分にも吸着層103が配置されているので、アウトガスが発生した場合、アウトガスを吸着することが可能となり、水晶振動板2へのアウトガスの影響をより抑えることができる。加えて、フィルム12の全面に吸着層103を配置すれば、部分的に吸着層103を配置する場合と比較して、容易に吸着層103を形成することができる。
【0084】
また、上記したように、第1封止部材3及び第2封止部材4の両方とも樹脂製フィルムであることに限定されず、例えば、どちらか一方は、その他の材料、例えば、金属材料やガラスなどを適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1,1A,1B,1C,1D,1E…振動デバイス、2,2a…水晶振動板、3,3a…第1封止部材、4,4a…第2封止部材、5…水晶ウェハ、11…接着層、12…フィルム、13…貫通孔、14…開口部、21,21a…振動部、22…貫通部、23…枠部、24…連結部、25…第1励振電極、25a…第1励振電極、26…第2励振電極、26a…第2励振電極、27…第1実装端子、27a…第1実装端子、28…第2実装端子、28a…第2実装端子、100…空間、101…無機膜、101a…無機膜、102…吸着層、103…吸着層、201…第1封止パターン、201a…接続部、201b…第1延出部、201c…第2延出部、202…第2封止パターン、202a…接続部、202b…第1延出部、202c…第2延出部、203…第1引出し電極、204…第2引出し電極。