(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002472
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】物理量センサーおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20231228BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20231228BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101663
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山田 英幸
(72)【発明者】
【氏名】羽田 秀生
(72)【発明者】
【氏名】若林 慎一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 竜矢
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】電子機器の共振特性の変化に応じて制振することが困難であった。
【解決手段】アクチュエーターを備えた電子機器に取り付けられる物理量センサーであって、物理量に対応する検出信号を出力するセンサー素子と、前記検出信号に基づいて、前記アクチュエーターを駆動するアクチュエーター駆動信号を出力する回路装置と、を備え、前記回路装置は、前記電子機器を振動させて前記電子機器の共振特性を測定するための前記アクチュエーター駆動信号を出力する共振特性測定モードと、前記共振特性測定モードにおいて測定された前記共振特性に基づいて、前記電子機器の振動を低減するための前記アクチュエーター駆動信号を出力する制振モードと、を有する、物理量センサーを構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエーターを備えた電子機器に取り付けられる物理量センサーであって、
物理量に対応する検出信号を出力するセンサー素子と、
前記検出信号に基づいて、前記アクチュエーターを駆動するアクチュエーター駆動信号を出力する回路装置と、を備え、
前記回路装置は、
前記電子機器を振動させて前記電子機器の共振特性を測定するための前記アクチュエーター駆動信号を出力する共振特性測定モードと、
前記共振特性測定モードにおいて測定された前記共振特性に基づいて、前記電子機器の振動を低減するための前記アクチュエーター駆動信号を出力する制振モードと、を有する、
物理量センサー。
【請求項2】
前記共振特性測定モードにおいて、
前記回路装置は、
前記共振特性を測定するための前記アクチュエーター駆動信号として、第1~第n(nは1以上の整数)の周波数を有する第1~第nの交流信号を出力し、
前記センサー素子は、
第1~第nの前記交流信号によって発生した前記電子機器の振動に対応する第1~第nの前記検出信号を出力する、
請求項1に記載の物理量センサー。
【請求項3】
前記回路装置はプロセッサーを含み、
前記共振特性測定モードにおいて、
前記プロセッサーは、前記共振特性を測定するための前記アクチュエーター駆動信号として、正弦波を出力する、
請求項1または請求項2に記載の物理量センサー。
【請求項4】
前記制振モードにおいて、
前記回路装置は、
第1~第nの前記交流信号の振幅および第1~第nの前記検出信号の振幅に基づいて特定された前記電子機器の第1~第k(kは1以上n以下の整数)の共振周波数に対応する第1~第kのバンドパスフィルター処理を行って第1~第kのフィルター透過信号を生成し、
第1~第kの前記フィルター透過信号に基づいて、前記電子機器の振動を低減するための前記アクチュエーター駆動信号を生成する、
請求項2に記載の物理量センサー。
【請求項5】
前記制振モードにおいて、
前記回路装置は、
第1~第kの前記フィルター透過信号に対して第1~第kの位相調整処理を行って第1~第kの位相調整後信号を生成し、
第1~第kの前記位相調整後信号を合成して、前記電子機器の振動を低減するための前記アクチュエーター駆動信号を生成する、
請求項4に記載の物理量センサー。
【請求項6】
第1~第kの前記位相調整処理は、第1~第kの前記フィルター透過信号に対する位相の反転処理である、
請求項5に記載の物理量センサー。
【請求項7】
アクチュエーターと、
物理量に対応する検出信号を出力するセンサー素子と、
前記検出信号に基づいて、前記アクチュエーターを駆動するアクチュエーター駆動信号を出力する回路装置と、を備える電子機器であって、
前記回路装置は、
前記電子機器を振動させて前記電子機器の共振特性を測定するための前記アクチュエーター駆動信号を出力する共振特性測定モードと、
前記共振特性測定モードにおいて測定された前記共振特性に基づいて、前記電子機器の振動を低減するための前記アクチュエーター駆動信号を出力する制振モードと、を有する、物理量センサーと、を備える、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサーおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジャイロセンサー等の物理量センサーによって検出した検出信号に基づいてアクチュエーターを駆動し、電子機器等の制振を行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、アクチュエーター駆動信号を生成する回路を内蔵し、アクチュエーターの制御の応答性を向上させるジャイロセンサー装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子機器は、その大きさや素材等の構成に応じて共振特性が変動し得る。また、電子機器の設置環境が変わると共振特性が変動し得る。従来技術においては、電子機器の共振特性の変化に応じて制振することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための物理量センサーは、アクチュエーターを備えた電子機器に取り付けられる物理量センサーであって、物理量に対応する検出信号を出力するセンサー素子と、前記検出信号に基づいて、前記アクチュエーターを駆動するアクチュエーター駆動信号を出力する回路装置と、を備え、前記回路装置は、前記電子機器を振動させて前記電子機器の共振特性を測定するための前記アクチュエーター駆動信号を出力する共振特性測定モードと、前記共振特性測定モードにおいて測定された前記共振特性に基づいて、前記電子機器の振動を低減するための前記アクチュエーター駆動信号を出力する制振モードと、を有する。
【0006】
また、上記課題を解決するための電子機器は、アクチュエーターと、前記アクチュエーターに取り付けられ、物理量に対応する検出信号を出力するセンサー素子と、前記検出信号に基づいて、前記アクチュエーターを駆動するアクチュエーター駆動信号を出力する回路装置と、を備える電子機器であって、前記回路装置は、前記電子機器を振動させて前記電子機器の共振特性を測定するための前記アクチュエーター駆動信号を出力する共振特性測定モードと、前記共振特性測定モードにおいて測定された前記共振特性に基づいて、前記電子機器の振動を低減するための前記アクチュエーター駆動信号を出力する制振モードと、を有する、物理量センサーと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】物理量センサーを備える制振ボックスの利用例を示す図。
【
図6】物理量センサーを備える制振ボックスの利用例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る物理量センサー2を備える制振ボックス1の利用例を示す図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る制振ボックス1のブロック図である。
図1においては、プロジェクターPが天井Cに取り付けられた状態を示している。プロジェクターPは、図示しないスクリーンに所定の画像を投影する装置である。プロジェクターPは電子機器の一例である。
【0009】
プロジェクターPの一面には制振ボックス1が取り付けられている。制振ボックス1は、筐体を備えており、筐体内に物理量センサー2およびアクチュエーター40を備えている。従って、本実施形態においては、物理量センサー2やアクチュエーター40がプロジェクターPに取り付けられるとも言える。
【0010】
物理量センサー2は、共振特性測定モードと制振モードとのそれぞれで動作する。むろん、他のモードで動作可能であっても良い。制振モードで動作している場合、物理量センサー2は、プロジェクターPの使用過程で発生している振動を検出し、振動を抑制するようにアクチュエーターを駆動することでプロジェクターPを制振することができる(詳細は後述)。
【0011】
また、物理量センサー2は、後述する端子を介してコンピューターPCと接続可能である。本実施形態においてコンピューターPCは、プロジェクターPの共振特性を測定するための共振特性測定モードで使用される。制振モードにおいてコンピューターPCは使用されない。共振特性測定モードにおいて、物理量センサー2は、アクチュエーターによってプロジェクターPを加振し、プロジェクターPにおいて発生した振動をコンピューターPCで取得することで共振特性を測定する(詳細は後述)。
【0012】
コンピューターPCは、物理量センサー2の出力信号に基づいて各種の演算処理を実施可能なコンピューターであれば良く、可搬型であってもよいし、据置型であっても良い。また、端末の形態も限定されず、タブレット型等であっても良いしスマートフォン等であっても良い。本実施形態において、コンピューターPCは、物理量センサー2に接続される外部装置の一例である。
【0013】
本実施形態において物理量センサー2は、回路装置10と、センサー素子20と、を備えている。物理量センサー2は、アクチュエーター40に接続されている。また、物理量センサー2は、端子1aを介してコンピューターPCと接続される。本実施形態においてアクチュエーター40は、VCM(Voice Coil Motor)であるが、アクチュエーター40はVCMに限定されない。
【0014】
本実施形態においてセンサー素子20は、ジャイロセンサー素子である。センサー素子20としては、種々の態様のジャイロセンサーを採用可能である。例えば、所定軸まわりの角速度を検出する「面外検出型」のセンサー等をセンサー素子20として採用可能である。センサー素子20は、センサー素子20に作用した角速度ωを示す検出信号を出力する。
【0015】
回路装置10は、センサー素子20を駆動するための信号を生成する機能と、センサー素子20からの検出信号に基づいてアクチュエーター40を駆動する機能と、有する。この回路装置10は、
図2に示すように、駆動回路31と、信号出力回路32と、クロック生成回路33と、メモリー34と、インターフェース回路35と、を備える。また、信号出力回路32は、検出回路320(角速度検出回路)と、AD変換回路321と、プロセッサー322と、DA変換回路323と、を備えている。
【0016】
駆動回路31は、図示しないが、例えば、発振回路と、自動利得制御回路と、を備え、発振回路で生成した駆動信号を自動利得制御回路で利得調整してセンサー素子20の駆動信号電極に入力することで、センサー素子20を振動させる。
【0017】
検出回路320は、同期検波回路である検波回路320aを含む。さらに、検出回路320は、検波回路320aの他に、例えば、電流電圧変換アンプと、ACアンプと、90度位相シフターと、を備える(不図示)。そして、検出回路320においては、センサー素子20が出力した検出信号を電流電圧変換アンプで電流信号から電圧信号に変換し、ACアンプで増幅する。増幅された信号は、検波回路320aに入力される。また、検波回路320aには、駆動回路31から駆動信号が90度位相シフターを介して入力される。そして、検波回路320aは、駆動信号を基準信号として同期検波することで、検出信号から角速度情報を抽出して検波信号として出力する。このように、検出回路320は、センサー素子20からの検出信号に基づいて、角速度を検出する。
【0018】
AD変換回路321は、検波回路320aから出力された検波信号(角速度情報)をアナログ信号からデジタル信号に変換して出力する。
【0019】
プロセッサー322は、センサー素子20の検出信号から抽出された検波信号に基づいて、アクチュエーター40を駆動するためのアクチュエーター駆動信号を生成する処理を行う回路である。本実施形態においてプロセッサー322は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーと、ROM(Read only memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリーとを含んで構成され、メモリーに記憶されたプログラムをプロセッサーが適宜実行することで、各種機能を実現する。
【0020】
DA変換回路323は、プロセッサー322から出力されたアクチュエーター駆動信号をデジタル信号からアナログ信号に変換して出力する。
【0021】
クロック生成回路33は、図示しない水晶発振器等の発振器からの信号に基づいて、回路装置10内の各部の動作用のクロック信号を生成する。そして、回路装置10内の各部は、このクロック信号に同期して動作を行う。
【0022】
メモリー34は、例えば、書き換え可能なメモリーであり、アクチュエーター40の制御情報が記憶される。メモリー34に記憶される情報の書き換えは、コンピューターPCによって、端子1aを通じて行うことが可能となっている。ここで、制御情報とは、プロセッサー322がアクチュエーター40を駆動制御する際に用いられる各種情報である。制御情報には、例えば、プロジェクターPの共振特性が含まれる。他にも、制御の目標値、制御条件、制御プログラム等が含まれて良い。プロセッサー322は、メモリー34に記憶されている情報を読み込んで利用(共振特性に基づく信号処理等)することが可能となっている。
【0023】
インターフェース回路35は、制振ボックス1と接続されるコンピューターPCとの間でデータ通信を行うための回路である。インターフェース回路35は、例えば、I2C(Inter-Integrated Circuit)バスに対応したインターフェース回路であってもよいし、SPI(Serial Peripheral Interface)バスに対応したインターフェース回路であってもよい。
【0024】
制振ボックス1の内部では、センサー素子20によって検出される所定軸周りの角速度の方向と、アクチュエーター40が駆動されることによってプロジェクターPに誘起される所定軸周りの角速度の方向と、が一致するように、センサー素子20とアクチュエーター40とが配置される。検出される角速度の方向と、誘起される角速度の方向とは、完全一致でなくてもよく、少なくとも一部で一致していれば良い。
【0025】
制振する方向は複数の方向であっても良い。この場合、センサー素子20において複数の方向の角速度が検出可能であり、各方向の角速度成分を低減するように複数の方向に駆動するアクチュエーター40が用いられる。いずれにしても、センサー素子20によって検出された角速度を減衰させるようにアクチュエーター40が駆動されると、プロジェクターPを制振することができる。
【0026】
プロジェクターPの周囲から天井C等などを介してプロジェクターPに伝達され、発生する振動は、一般に、複数の周波数成分の振動が重畳された振動である。このため、当該振動に対応した角速度を示すセンサー素子20の検出信号にも複数の周波数成分の振動に対応した、複数の周波数成分の角速度が含まれる。従って、センサー素子20から出力される検出信号が示す角速度は、一般に非常に複雑である。
【0027】
一方、プロジェクターPにおいて低減すべき振動の周波数は、特定の周波数の振動であることが多い。例えば、特定の周波数において振動の振幅が他の周波数より大きくなり、プロジェクターPによってスクリーンに投影した映像において視認される場合がある。また、人間の目で視認され得る振動の周波数は特定の範囲の周波数帯域に限定される。これらの特定の周波数または特定の周波数帯域において減衰させるべき周波数は、プロジェクターPの共振周波数に一致する。このため、共振周波数の振動を低減させれば、比較的単純な制御で、高い効果の制振を行うことができる。そして、このような制御であれば、アクチュエーター40の動作によって、プロジェクターPにおいて発生した振動を、実際に、低減させることが可能になる。
【0028】
そこで、本実施形態においては、プロジェクターPの共振特性を測定し、測定された共振周波数の振動を低減させる構成が採用されている。具体的には、コンピューターPCからの所定の指示が行われると、インターフェース回路35を介してプロセッサー322が当該指示を受け付ける。プロセッサー322は、当該指示に応じて、共振特性測定モードで動作する。
【0029】
<共振特性測定モード>
共振特性測定モードにおいて、プロセッサー322は、電子機器であるプロジェクターPの共振特性を測定するためのアクチュエーター駆動信号を出力する。当該共振特性を測定するためのアクチュエーター駆動信号は、アクチュエーター40を試験的に振動させるための信号である。
【0030】
本実施形態において、共振特性を測定するためのアクチュエーター駆動信号は、第1~第n(nは1以上の整数)の周波数を有する第1~第nの交流信号である。交流信号は、振幅が変動する信号であれば良いが、本実施形態においては、正弦波である。すなわち、本実施形態においてプロセッサー322は、複数の周波数の正弦波のそれぞれをアクチュエーター駆動信号として出力する。
【0031】
図3は、プロセッサー322の構成を示すブロック図である。プロセッサー322は、正弦波出力部322aを備えている。正弦波出力部322aは、メモリー34に記憶された値を参照し、特定の周波数であり、既定の振幅である正弦波を生成し、DA変換回路323に対して出力する。正弦波を出力するための構成は、種々の手法を採用可能であり、例えば、以下の式で特定される値を時系列で出力することにより、正弦波のデジタル信号を出力可能である。
S
0=0
S
N+1=S
N+sin(N+1)-sin(N)
ここで、Nは、時系列で出力される信号の順番を示す整数であり、0以上の整数値である。sin(N+1)-sin(N)によって算出される値が1周期分特定され、メモリー34に保持される。プロセッサー322は、当該メモリー34に記憶された値に基づいて、正弦波を示すデジタル信号を出力することが可能である。また、信号の出力間隔を変化させることによって周波数を変化させることができる。
【0032】
DA変換回路323は、当該正弦波をデジタル信号からアナログ信号に変換し、アクチュエーター40に出力する。この結果、アクチュエーター40は、特定の周波数の正弦波に対する応答として駆動し、特定の周波数の正弦波でプロジェクターPを加振する。この際、正弦波出力部322aは、正弦波の周波数、振幅、位相を示す情報をインターフェース回路35に出力する。インターフェース回路35は、当該周波数、振幅、位相を示す情報をコンピューターPCに対して出力する。この結果、コンピューターPCは、アクチュエーター40によって加振されている振動の周波数、振幅、位相を特定することができる。正弦波出力部322aは、正弦波の周波数を順次切り替え、第1~第nの周波数の正弦波を出力する。この結果、プロジェクターPは、第1~第nの周波数で加振される。
【0033】
第1~第nの周波数は、制振対象の周波数が含まれるように予め決められていれば良く、例えば、0Hz~200Hzや0Hz~80Hzなどの既定の範囲で、予め決められた周波数ステップで周波数を変化させる構成等を採用可能である。
【0034】
以上のようにしてアクチュエーター駆動信号によってプロジェクターPが加振された場合に、プロジェクターPにおいて実際に発生する振動が測定されることによって共振特性が特定される。振動は各種の態様で測定されて良いが、本実施形態においては、センサー素子20の検出信号に基づいて測定が行われる。すなわち、アクチュエーター駆動信号によってアクチュエーター40が駆動し、プロジェクターPが加振されると、センサー素子20は、当該振動に応じた角速度を示す検出信号を出力する。
【0035】
従って、センサー素子20は、第1~第nのそれぞれの周波数の正弦波によって発生したプロジェクターPの振動に対応する第1~第nの検出信号を出力する。検出信号が出力されると、検出回路320,AD変換回路321による信号処理を経て、角速度を示すデジタル信号がプロセッサー322に入力される。
【0036】
プロセッサー322は、共振特性測定モードにおいて、当該デジタル信号をインターフェース回路35に対して出力する。インターフェース回路35は、当該デジタル信号をコンピューターPCに対して出力する。この結果、コンピューターPCにおいては、プロジェクターPにおいて、実際に発生した振動(角速度)を示す情報を取得することができる。コンピューターPCは、当該情報に基づいて、プロジェクターPにおいて実際に発生した振動の周波数、振幅、位相を取得する。
【0037】
コンピューターPCは、図示しないCPU,RAM,ROM等を備え、各種のプログラムを実行することができる。本実施形態においてコンピューターPCは、共振特性の測定プログラムを実行することができる。当該プログラムが実行されている状態において、コンピューターPCは、上述のようにしてアクチュエーター40を駆動する際に用いられた正弦波の周波数、振幅、位相を取得する。また、コンピューターPCは、プロジェクターPにおいて実際に発生した振動の周波数、振幅、位相を取得する。
【0038】
コンピューターPCは、取得した情報に基づいて周波数毎に振幅、位相を比較することによって共振特性を取得する。コンピューターPCは、加振した振幅を基準とし、測定された振幅との比をゲインとして取得する処理を周波数毎に実施する。
図4は、このようにして得られたゲインの例を示している。プロジェクターPの振動がスクリーンに投影された画像が揺れていると認識される周波数は、比較的小さい周波数帯域であり、例えば、80Hz以下や60Hz以下の帯域である。
【0039】
そこで、コンピューターPCは、当該周波数帯域でゲインが閾値以上(例えば、-35dB以上)になる周波数を共振周波数として取得する。すなわち、コンピューターPCにおいては、第1~第nの周波数の正弦波によって加振された結果から、ゲインが閾値以上になる第1~第kの共振周波数を特定する(kは1以上n以下の整数)。
図4においては、共振周波数として第1の周波数f
1~第3の周波数f
3が取得された例(k=3)を示している。むろん、共振周波数として取得される値の数は3個に限定されず、より多くても良いし、少なくても良い。なお、本実施形態においては、共振周波数の取得の際に、位相は考慮されないが、位相に基づいて共振周波数が特定される構成であっても良い。
【0040】
以上のようにして、取得された共振周波数を示す情報は、共振特性としてコンピューターPCの図示しない記憶媒体に記憶される。共振特性が取得されると、コンピューターPCは、インターフェース回路35を介して当該共振特性を物理量センサー2に出力する。インターフェース回路35が当該共振特性を取得すると、当該共振特性に対応した情報がメモリー34に記録される。
【0041】
<制振モード>
共振特性測定モードにおいて測定された共振特性に対応した情報がメモリー34に記録されると、制振モードにおいて、当該共振特性が示す振動を低減させるための制御を行うことが可能である。すなわち、制振モードは、共振特性測定モードにおいて測定された共振特性に基づいて、プロジェクターPの振動を低減するためのアクチュエーター駆動信号を出力するモードである。
【0042】
制振モードにおいて、センサー素子20は、プロジェクターPの周囲から天井C等などを介して伝達されることによって、プロジェクターPにおいて発生する振動を検出する。センサー素子20から当該振動を示す角速度の検出信号が出力されると、検出回路320、AD変換回路321を経て検波信号のデジタル信号がプロセッサー322に出力される。
【0043】
プロセッサー322は、当該デジタル信号が示す振動のうち、共振特性が示す共振周波数を中心周波数とする振動を低減させるためのアクチュエーター駆動信号を生成する。
図4においては、このようなアクチュエーター駆動信号の生成を行うための構成も示されている。具体的には、プロセッサー322は、IIR(Infinite impulse response)フィルター322b、ゲイン部322c、PWM部322dを備えている。
【0044】
IIRフィルターは、デジタル信号に対して各種の処理を行うフィルターである。IIRフィルターは、公知の構成によって実現可能であり、例えば、
図5に示す構成によって実現可能である。
図5に示す例において、遅延部3221,3222は入力信号に単位遅延を与えて出力する。信号調整部3223~3227は、入力信号に係数を乗じて出力する。信号調整部3223~3227の係数は、
図5において信号調整部3223~3227のそれぞれに示されたa1~b2である。加算部S1~S4は、
図5に示された入力信号に図示された符号を付与して加算し、出力する。
【0045】
従って、
図5に示す例であれば、加算部S1は、IIRフィルターに入力された信号と、フィードバックされた信号を負の信号にした信号を加算し、出力する。出力された信号は、遅延部3221,3222によって遅延を受ける。遅延部3221による遅延を受けた信号は、信号調整部3223,3226、遅延部3222に入力される。遅延部3222による遅延を受けた信号は、信号調整部3224,3227に入力される。
【0046】
信号調整部3223,3224に入力された信号には、係数a1,a2が乗じられ、加算部S2によって加算された後に、加算部S1に入力する。信号調整部3226,3227に入力された信号には、係数b1,b2が乗じられ、加算部S4によって加算された後に、加算部S3に入力する。加算部S3は、加算部S1の出力に対して、信号調整部3225によって係数b0が乗じられた信号が入力される。加算部S3は、入力された両信号の和を出力する。
【0047】
IIRフィルターにおいては、これらの係数を調整することにより、低減対象の周波数帯域内の任意の周波数を中心周波数としたバンドパスフィルターとして機能する。また、IIRフィルターにおいては、これらの係数を調整することにより、位相を調整する位相調整フィルターとして機能する。
【0048】
本実施形態においては、IIRフィルター322bにおいて、以上のようなフィルターが合計7個形成されている。具体的には、プロセッサー322は、高周波/低周波除去フィルター322b1,f1通過フィルター322b2,f2通過フィルター322b3,f3通過フィルター322b4,f1位相調整フィルター322b5,f2位相調整フィルター322b6,f3位相調整フィルター322b7として機能する。
【0049】
以上の構成において、プロセッサー322は、各フィルターの信号調整部3223~3227の係数を調整することが可能である。具体的には、高周波/低周波除去フィルター322b1は、人間が視認不可能な周波数として、予め決められた第1の閾値以下の周波数である低周波の信号と、第2の閾値以上の周波数である高周波の信号と、を除外するフィルターである。このような信号の除去を行うための係数を示すパラメーターは予め特定され、メモリー34に記憶されている。プロセッサー322は、当該メモリー34に記憶されたパラメーターに基づいて、高周波/低周波除去フィルター322b1を制御する。この結果、高周波/低周波除去フィルター322b1は、予め決められた周波数帯域内の周波数の信号を除去し、残りの周波数の信号を通過させる。
【0050】
高周波/低周波除去フィルター322b1から出力された信号は、f1通過フィルター322b2,f2通過フィルター322b3,f3通過フィルター322b4のそれぞれに入力される。f1通過フィルター322b2,f2通過フィルター322b3,f3通過フィルター322b4のそれぞれは、第1の周波数f1~第3の周波数f3のそれぞれを中心周波数とした所定幅の帯域内の信号を通過させるバンドパスフィルターである。ここで、第1の周波数f1~第3の周波数f3は、アクチュエーター40に対して出力された第1~第nの正弦波と、第1~第nの正弦波に応じてセンサー素子20から出力された検出信号と、の振幅に基づいて特定された、プロジェクターPの共振周波数である。
【0051】
メモリー34には、当該共振特性を中心周波数とした所定幅の帯域の信号を通過させるための係数を示すパラメーターが記憶されている。プロセッサー322は、当該メモリー34に記憶されたパラメーターに基づいて、f1通過フィルター322b2,f2通過フィルター322b3,f3通過フィルター322b4を制御する。この結果、f1通過フィルター322b2,f2通過フィルター322b3,f3通過フィルター322b4のそれぞれは、第1の周波数f1~第3の周波数f3のそれぞれを中心周波数とした所定幅のフィルター透過信号を出力する。
【0052】
f1通過フィルター322b2,f2通過フィルター322b3,f3通過フィルター322b4のそれぞれから出力されたフィルター透過信号は、f1位相調整フィルター322b5,f2位相調整フィルター322b6,f3位相調整フィルター322b7のそれぞれに入力される。f1位相調整フィルター322b5,f2位相調整フィルター322b6,f3位相調整フィルター322b7のそれぞれは、入力されたフィルター信号に対して位相調整を行って位相調整後信号を生成するフィルターである。
【0053】
本実施形態において、位相調整は、位相反転である。当該位相調整は、アクチュエーター40によって誘起される振動によってプロジェクターPの振動が抑制されるように実施されればよく、この意味においては、位相調整後に生じる位相のずれが厳密に180°でなくてもよい。メモリー34には、フィルター透過信号のそれぞれにおける位相を反転させるためのパラメーターが記憶されている。プロセッサー322は、当該メモリー34に記憶されたパラメーターに基づいて、第1の周波数f1~第3の周波数f3のそれぞれを中心周波数とするフィルター透過信号において位相が反転するように、f1位相調整フィルター322b5,f2位相調整フィルター322b6,f3位相調整フィルター322b7のそれぞれにおける信号調整部3223~3227を制御する。
【0054】
f1位相調整フィルター322b5,f2位相調整フィルター322b6,f3位相調整フィルター322b7から出力された位相調整後信号は、加算部Sによって合成され、IIRフィルター322bから出力される。IIRフィルター322bから出力された信号はゲイン部322cに入力される。ゲイン部322cは、比例制御を行うための処理部であり、入力値に比例する出力値を出力する。ここでは、種々の制御が行われて良く、例えば、P制御や、PI制御、PD制御、PID制御等が行われてもよい。
【0055】
ゲイン部322cの出力信号は、PWM部322dに入力される。PWM部322dは、入力された信号に対してパルス幅変調を行う。すなわち、PWM部322dは、アクチュエーター駆動信号としてのデジタル信号を出力する。当該デジタル信号は、DA変換回路323によってアナログ信号に変換されることにより、アクチュエーター40を駆動するアクチュエーター駆動信号になる。
【0056】
以上の構成によれば、センサー素子20が検出する複雑な検出信号から、プロジェクターPの共振特性に応じた共振周波数の振動を抽出し、アクチュエーター駆動信号とすることができる。そして、当該アクチュエーター駆動信号によれば、プロジェクターPに発生した主な振動成分、すなわち、共振周波数の振動を低減させることができる。このため、プロジェクターPの振動を効果的に低減させることができる。共振特性は、共振特性測定モードにおいて、測定されるため、プロジェクターPの設置環境等に応じて変化し得る共振特性に応じてプロジェクターPを制振することができる。
【0057】
また、共振特性測定モードにおいては、センサー素子20が出力する検出信号をコンピューターPCで取得することによって、共振特性を測定することができる。共振特性を測定するために、センサー素子20と別個の測定装置がプロジェクターPに対して接するように取り付けられると、共振特性が変動し得る。本実施形態においては、センサー素子20と別個の測定装置を接するように取り付ける必要がなく、コンピューターPCは、ケーブルのみを介して接続されている。そして、実際の制振の際にもプロジェクターPに取り付けられている制振ボックス1を用いて共振特性を測定することができる。従って、プロジェクターPの運用時の共振特性に近い共振特性を正確に測定することが可能である。
【0058】
さらに、共振特性測定モードにおいてプロセッサー322は、正弦波によってプロジェクターPを加振するため、プロセッサー322は、容易に複数の周波数でプロジェクターPを加振することができる。
【0059】
さらに、制振モードにおいてプロセッサー322は、共振特性が示す共振周波数を中心周波数としたバンドパスフィルターによってフィルター透過信号を生成し、当該フィルター透過信号に基づいて、アクチュエーター駆動信号を生成する。従って、振動として観測される全ての周波数の信号に基づいてアクチュエーター駆動信号を生成する構成と比較して、単純な制御でプロジェクターPを効果的に制振することができる。
【0060】
さらに、制振モードにおいてプロセッサー322は、フィルター透過信号に対して位相調整した位相調整後信号に基づいて、プロジェクターPを制振するためのアクチュエーター駆動信号を生成する。この構成によれば、簡易な構成によってプロジェクターPを制振するためのアクチュエーター駆動信号を生成することができる。また、位相の反転処理によって位相調整誤信号を生成する構成によれば、簡易な処理により、プロジェクターPを制振するためのアクチュエーター駆動信号を生成することができる。
【0061】
さらに、本実施形態においては、メモリー34に記憶された共振特性に対応した情報(パラメーター)に基づいてプロジェクターPを制振可能であり、当該共振特性は書き換え可能である。従って、個々のプロジェクターPの共振特性の変化に応じて、共振特性を書き換えることにより、どのような共振特性のプロジェクターPであっても効果的に制振することが可能である。また、共振特性測定モードによって共振特性を測定することにより、プロジェクターPの実際の共振特性を特定することが可能である。このため、プロジェクターPの実際の共振特性に応じた制振を行うことが可能である。
【0062】
さらに、本実施形態においては、共振特性測定モードにおいて、外部装置であるコンピューターPCを用いて共振特性を取得し、メモリー34に記憶させることができる。このため、制振ボックス1内に共振特性を取得するための演算部等を設ける必要がなく、制振ボックス1が備える各回路を簡易な構成にすることができる。
【0063】
さらに、本実施形態においては、IIRフィルターを用いてフィルター透過信号や位相調整後信号を生成する。このため、簡易な構成によって各信号を生成することができる。また、共振特性の変化に応じて、容易にフィルター特性を変化させることが可能である。
【0064】
<他の実施形態>
上述の実施形態は発明の一実施例である。従って、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。例えば、コンピューターPCは、物理量センサー2から取得した情報を、さらに外部のサーバーに送信し、サーバーにおいて共振特性が取得されても良い。
図6は、このような構成の例を示す図である。制振ボックス1は上述の実施形態と同様の構成であって良い。コンピューターPCは、ネットワークNTに接続されており、ネットワークNTに接続されたサーバーSVと通信可能である。
【0065】
そして、コンピューターPCは、物理量センサー2から、プロジェクターPを加振するアクチュエーター駆動信号としての正弦波の周波数、振幅、位相を取得する。また、コンピューターPCは、物理量センサー2から、センサー素子20によって検出されたプロジェクターPの振動の周波数、振幅、位相を取得する。コンピューターPCは、これらの情報をサーバーSVに対して送信する。サーバーSVは、これらの情報を取得し、周波数毎の振幅の比であるゲインに基づいて、共振周波数を取得する。
【0066】
サーバーSVは、当該共振周波数をコンピューターPCに送信し、コンピューターPCは、これらの情報を取得し、物理量センサー2が備えるメモリー34に記憶させる。以上の構成によれば、複数の場所で利用される制振ボックス1から取得された情報をサーバーSVで集中的に解析することが可能である。このため、複数の制振ボックス1からの情報を収集し、各制振ボックス1が取り付けられたプロジェクターPの共振特性を取得するサービスを提供する態様を実現することができる。
【0067】
さらに、上述の実施形態において、プロセッサー322が出力する正弦波の振幅は、既定の振幅に固定されていたが、可変であっても良い。例えば、ユーザーの指示等に応じて可変であっても良いし、プロジェクターP等の電子機器の重量や大きさ等に応じて可変であっても良い。さらに、共振特性は、位相を含めて特定されても良い。
【0068】
さらに、プロジェクターP等の電子機器と、コンピューターPCと、の接続態様は有線接続であっても良いし、無線接続であっても良い。後者であれば、接続による共振特性の変化を非常に小さくすることができる。さらに、IIRフィルター322bの構成は、
図5に示す構成に限定されず、例えば、次数は他の値であっても良い。
【0069】
さらに、電子機器の取り付け先は天井に限定されず、支柱や壁、台等に取り付けられてもよい。さらに、電子機器はプロジェクターPに限定されず、他にも種々の電子機器に対して制振ボックス1が取り付けられてもよい。例えば、天井や支柱、壁等に取り付けられる防犯カメラや、監視カメラ等が制振の対象であっても良いし、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等が制振の対象であっても良い。また、撮影を行う電子機器に限らず、他の電子機器、例えば、ロボット等の、あらゆる機器が制振の対象となって良い。
【0070】
さらに、物理量センサーは、制振ボックスによって電子機器に取り付けられる態様以外にも、種々の態様で電子機器に取り付けられてよい。例えば、アクチュエーターと物理量センサーとが電子機器の筐体内に内包される態様等であっても良い。
【0071】
物理量センサーは、アクチュエーターを備えた電子機器に取り付けられるセンサーであり、当該物理量センサーの検出信号が制振に利用可能であれば良い。このため、物理量センサーは、上述の実施形態のようなジャイロセンサーに限定されず、加速度センサーや速度センサー、慣性センサー等であっても良い。また、物理量センサーは、電子機器に取り付けられるセンサーであり、取り付け方法は限定されない。例えば、粘着性のある材料によって取り付けられてもよいし、締結手段等によって取り付けられてもよいし、係合する部分によって取り付けられてもよい。また、物理量センサーは、電子機器に対して着脱可能であっても良いし、一旦取り付けられた後に取り外し困難になっても良い。
【0072】
アクチュエーターは、駆動部分を有し、電子機器に加速度等の物理量を作用させることにより、電子機器が振動するなど、物理的に動作するように形成された装置であれば良い。従って、アクチュエーターは、上述のVCM以外にも種々の装置を採用可能である。例えば、ステッピングモーター、DCモーター、ACモーター等の各種のモーターや、ソレノイドアクチュエーターなど、電磁石によって物体が動作する機構であっても良く、種々の装置をアクチュエーターとして採用可能である。
【0073】
アクチュエーターは、少なくとも、物理量センサーを動作させる際に、電子機器に備えられていれば良い。従って、上述の実施形態のように、制振ボックス1が電子機器であるプロジェクターPに取り付けられることにより、電子機器がアクチュエーターを備えるように構成されてても良いし、物理量センサーと異なる方法でアクチュエーターが電子機器に取り付けられてもよい。例えば、アクチュエーターが、物理量センサーと別個に電子機器に取り付けられることによって、電子機器がアクチュエーターを備えるように構成されていても良い。また、電子機器の製造段階で、電子機器がアクチュエーターを内蔵するように構成されていても良い。
【0074】
物理量センサーは、少なくとも、物理量センサーを動作させる際に、電子機器に備えられていれば良い。従って、物理量センサーを電子機器に取り付けるタイミングも任意である。電子機器の製造段階で、物理量センサーが電子機器に取り付けられてもよいし、アクチュエーターと別個のタイミングで物理量センサーが電子機器に取り付けられてもよい。
【0075】
センサー素子は、物理量に対応する検出信号を出力することができればよく、検出信号は、物理量自体を示していても良いし、検出信号に対して所定の処理を行うことで物理量が特定される構成であっても良い。いずれにしても、検出信号は、電子機器に作用する物理量を示すため、電子機器の振動を示している。
【0076】
回路装置は、検出信号に基づいて、アクチュエーターを駆動するアクチュエーター駆動信号を出力することができればよい。すなわち、回路装置は、検出信号に基づいてアクチュエーターを駆動することができればよい。アクチュエーター駆動信号は、上述の実施形態のようにアクチュエーターに受け渡される信号であっても良いし、アクチュエーターを駆動するための回路を備える場合に、当該回路に受け渡される信号であっても良い。
【0077】
回路装置は、少なくとも共振特性測定モードと、制振モードと、を有していれば良く、他のモードを有していても良い。共振特性測定モードは、電子機器を振動させて電子機器の共振特性を測定するためのアクチュエーター駆動信号を出力することができればよい。すなわち、共振特性測定モードにおいては電子機器を加振するためのアクチュエーター駆動信号を出力する。電子機器の大きさや素材、設置環境等が異なれば、電子機器の共振特性が異なるが、電子機器を加振することができれば、加振に対する応答を測定することにより、共振特性を測定することができる。
【0078】
共振特性は、電子機器が共振する周波数の特性であり、既定の基準を超える振幅の振動が発生し得る周波数帯域を少なくとも示していればよい。制振されるべき周波数帯域が限定されているのであれば、制振されるべき所定の周波数帯域内で、例えば、既定の基準を超える振幅の振動が生じ得る周波数が示されていてもよい。既定の基準は、種々の基準であって良く、例えば、振幅に対する閾値であっても良いし、加振に対する振幅のゲインに対する閾値であっても良いし、他の周波数と比較して相対的に大きい振幅を抽出するための基準であっても良い。
【0079】
制振モードは、共振特性測定モードにおいて測定された共振特性に基づいて、電子機器の振動を低減するためのアクチュエーター駆動信号を出力することができればよい。すなわち、制振モードにおいては、少なくとも共振周波数において電子機器を制振するためのアクチュエーター駆動信号を出力する。共振特性が測定済であれば、当該共振特性に基づいて、制振すべき振動が明らかになり、電子機器を効果的に制振することができる。
【0080】
メモリーは、電子機器の共振特性を記憶することができればよい。すなわち、メモリーに記憶された共振特性の内容が変更されることにより、制振のためにアクチュエーターを駆動するためのアクチュエーター駆動信号の内容が変更されるように構成されていれば良い。共振特性を示す情報のフォーマットは種々の態様であって良い。
【0081】
信号出力回路は、検出信号が示す電子機器の振動に含まれる、共振特性に対応した振動が低減するようにアクチュエーターを駆動するアクチュエーター駆動信号を出力することができればよい。すなわち、信号出力回路は、検出信号と、メモリーに記憶された共振特性に基づいて、アクチュエーターを駆動する。この際、アクチュエーターが駆動されない場合と比較して、共振特性に対応した振動が低減するようにアクチュエーターが駆動される。従って、アクチュエーターは、共振特性が示す周波数の振動が低減されても良いし、共振特性が示す周波数の振動と、他の周波数の振動とが低減されても良い。
【0082】
共振特性は、電子機器が共振する周波数の特性であり、既定の基準を超える振幅の振動が発生し得る周波数帯域を少なくとも示していればよい。制振されるべき周波数帯域が限定されているのであれば、制振されるべき所定の周波数帯域内で、例えば、既定の基準を超える振幅の振動が生じ得る周波数が示されていてもよい。既定の基準は、種々の基準であって良く、例えば、振幅に対する閾値であっても良いし、加振に対する振幅のゲインに対する閾値であっても良いし、他の周波数と比較して相対的に大きい振幅を抽出するための基準であっても良い。
【0083】
アクチュエーター駆動信号は、上述の実施形態のようにアクチュエーターに受け渡される信号であっても良いし、アクチュエーターを駆動するための回路を備える場合に、当該回路に受け渡される信号であっても良い。
【0084】
インターフェース回路は、外部信号に応じてメモリーに記憶された共振特性を書き換え可能に構成されていればよい。すなわち、任意のタイミングでメモリーに記憶された共振特性を書き換えることが可能に構成され、この結果、電子機器の設置後など、制振すべき共振特性を任意のタイミングで変更できるように構成されていれば良い。メモリーに記憶された情報を書き換えるための規格は、種々の規格であって良い。
【符号の説明】
【0085】
1…制振ボックス、1a…端子、2…物理量センサー、10…回路装置、20…センサー素子、31…駆動回路、32…信号出力回路、33…クロック生成回路、34…メモリー、35…インターフェース回路、40…アクチュエーター、320…検出回路、320a…検波回路、321…AD変換回路、322…プロセッサー、322a…正弦波出力部、322b…IIRフィルター、322b1…低周波除去フィルター、322b2…f1通過フィルター、322b3…f2通過フィルター、322b4…f3通過フィルター、322b5…f1位相調整フィルター、322b6…f2位相調整フィルター、322b7…f3位相調整フィルター、322c…ゲイン部、322d…PWM部、323…DA変換回路、3221,3222…遅延部、3223~3227…信号調整部、C…天井、NT…ネットワーク、P…プロジェクター、PC…コンピューター、SV…サーバー