(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002474
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】水系着色用組成物、着色方法、顔料分散液、及び金属顔料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20231228BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20231228BHJP
【FI】
C09D17/00
C09D11/037
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101665
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】中谷 光伸
(72)【発明者】
【氏名】蛭間 敬
(72)【発明者】
【氏名】塚田 健太
【テーマコード(参考)】
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
4J037AA24
4J037CB22
4J037EE28
4J037FF09
4J037FF23
4J037FF25
4J039BA06
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA33
4J039EA38
4J039EA44
4J039GA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐水性、光沢度、及び分散性に優れる水系着色用組成物等を提供する。
【解決手段】金属顔料と、水と、有機溶剤と、を含有する水系着色用組成物であって、金属顔料は、第1の表面処理剤と、第2の表面処理剤と、により表面処理されたものであり、第1の表面処理剤は、式(1)で表されるホスホン酸系化合物又は式(2)で表されるリン酸系化合物を含み、第2の表面処理剤は、式(3)で表されるホスホン酸系化合物又は式(4)で表されるリン酸系化合物を含み、第1の表面処理剤におけるR1又はR2の炭素数は、第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数より多い、水系着色用組成物。(R1)PO(OH)2(1)
(R2O)aPO(OH)3-a(2)
(R3)PO(OH)2(3)
(R4O)bPO(OH)3-b(4)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属顔料と、水と、有機溶剤と、を含有する水系着色用組成物であって、
前記金属顔料は、第1の表面処理剤と、第2の表面処理剤と、により表面処理されたものであり、
前記第1の表面処理剤は、下記式(1)で表されるホスホン酸系化合物又は式(2)で表されるリン酸系化合物を含み、
前記第2の表面処理剤は、下記式(3)で表されるホスホン酸系化合物又は式(4)で表されるリン酸系化合物を含み、
(R1)PO(OH)2 (1)
(式(1)中、R1は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基である。)
(R2O)aPO(OH)3-a (2)
(式(2)中、R2は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基であり、aは1又は2の整数である。)
(R3)PO(OH)2 (3)
(式(3)中、R3は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基である。)
(R4O)bPO(OH)3-b (4)
(式(4)中、R4は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基であり、bは1又は2の整数である。)
前記第1の表面処理剤におけるR1又はR2の炭素数は、前記第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数より多い、
水系着色用組成物。
【請求項2】
前記第1の表面処理剤におけるR1又はR2の炭素数と、前記第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数との差は、4以上14以下である、
請求項1に記載の水系着色用組成物。
【請求項3】
前記第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数は、11以下である、
請求項1に記載の水系着色用組成物。
【請求項4】
前記水の含有量は、前記水系着色用組成物の総量に対し、50質量%以上90質量%以下である、
請求項1に記載の水系着色用組成物。
【請求項5】
前記有機溶剤の含有量は、前記水系着色用組成物の総量に対し、10質量%以上60質量%以下である、
請求項1に記載の水系着色用組成物。
【請求項6】
前記金属顔料の含有量は、前記水系着色用組成物の総量に対し、0.5質量%以上20質量%以下である、
請求項1に記載の水系着色用組成物。
【請求項7】
塗料組成物又はインク組成物である、
請求項1に記載の水系着色用組成物。
【請求項8】
前記金属顔料はアルミニウム又はアルミニウム合金からなる、
請求項1に記載の水系着色用組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の水系着色用組成物を、被着色体に付着させる工程を有する、
着色方法。
【請求項10】
金属顔料と、水と、有機溶剤と、を含有する顔料分散液であって、
前記金属顔料は、第1の表面処理剤と、第2の表面処理剤と、により表面処理されたものであり、
前記第1の表面処理剤は、下記式(1)で表されるホスホン酸系化合物又は式(2)で表されるリン酸系化合物を含み、
前記第2の表面処理剤は、下記式(3)で表されるホスホン酸系化合物又は式(4)で表されるリン酸系化合物を含み、
(R1)PO(OH)2 (1)
(式(1)中、R1は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基である。)
(R2O)aPO(OH)3-a (2)
(式(2)中、R2は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基であり、aは1又は2の整数である。)
(R3)PO(OH)2 (3)
(式(3)中、R3は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基である。)
(R4O)bPO(OH)3-b (4)
(式(4)中、R4は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基であり、bは1又は2の整数である。)
前記第1の表面処理剤におけるR1又はR2の炭素数は、前記第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数より多い、
顔料分散液。
【請求項11】
金属顔料を、第1の表面処理剤で表面処理する第1の表面処理工程と、
前記第1の表面処理剤で表面処理した前記金属顔料を、第2の表面処理剤で表面処理する第2の表面処理工程と、を有し、
前記第1の表面処理剤は、下記式(1)で表されるホスホン酸系化合物又は式(2)で表されるリン酸系化合物を含み、
前記第2の表面処理剤は、下記式(3)で表されるホスホン酸系化合物又は式(4)で表されるリン酸系化合物を含み、
(R1)PO(OH)2 (1)
(式(1)中、R1は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基である。)
(R2O)aPO(OH)3-a (2)
(式(2)中、R2はそれぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基であり、aは1又は2の整数である。)
(R3)PO(OH)2 (3)
(式(3)中、R3は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基である。)
(R4O)bPO(OH)3-b (4)
(式(4)中、R4はそれぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基であり、bは1又は2の整数である。)
前記第1の表面処理剤におけるR1又はR2の炭素数は、前記第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数より多い、
金属顔料の製造方法。
【請求項12】
前記第1の表面処理工程において、溶剤系媒体中で、前記第1の表面処理剤による表面処理を行う、
請求項11に記載の金属顔料の製造方法。
【請求項13】
前記第2の表面処理工程において、水系媒体中で、前記第2の表面処理剤による表面処理を行う、
請求項11に記載の金属顔料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系着色用組成物、着色方法、顔料分散液、及び金属顔料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属光沢感を有する物品を製造するためにアルミニウムなどの金属顔料を含有するインクや塗料などの組成物が開発されている。また、近年は地球環境面及び取扱いの容易さなどの観点から、組成物の開発において有機溶媒を主溶媒とする非水性組成物よりも水を主溶媒とする水性組成物が志向されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水系媒体中での耐水性および分散安定性が良好な卑金属顔料を提供することを目的として、水性インク組成物用の卑金属顔料であって、上記卑金属顔料がフッ素系化合物によって表面処理されたものであり、所定のゼータ電位を有する、卑金属顔料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のようにフッ素系化合物による表面処理によって、耐水性や分散性の向上が見込まれる。しかしながら、水系インク中で用いる金属顔料は、より一層の耐水性や分散性、あるいは分散安定性の向上が望まれる。また、当然ながら、光沢度の向上も求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水系着色用組成物は、金属顔料と、水と、有機溶剤と、を含有し、上記金属顔料は、第1の表面処理剤と、第2の表面処理剤と、により表面処理されたものであり、
上記第1の表面処理剤は、下記式(1)で表されるホスホン酸系化合物又は式(2)で表されるリン酸系化合物を含み、上記第2の表面処理剤は、下記式(3)で表されるホスホン酸系化合物又は式(4)で表されるリン酸系化合物を含み、上記第1の表面処理剤におけるR1又はR2の炭素数は、上記第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数より多い。
(R1)PO(OH)2 (1)
(式(1)中、R1は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基である。)
(R2O)aPO(OH)3-a (2)
(式(2)中、R2は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基であり、aは1又は2の整数である。)
(R3)PO(OH)2 (3)
(式(3)中、R3は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基である。)
(R4O)bPO(OH)3-b (4)
(式(4)中、R4は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基であり、bは1又は2の整数である。)
【0007】
本発明の着色方法は、上記の水系着色用組成物を含む着色用組成物を、被着色体に付着させる工程を有する。
【0008】
本発明の顔料分散液は、金属顔料と、水と、有機溶剤と、を含有し、上記金属顔料は、第1の表面処理剤と、第2の表面処理剤と、により表面処理されたものであり、上記第1の表面処理剤は、下記式(1)で表されるホスホン酸系化合物又は式(2)で表されるリン酸系化合物を含み、上記第2の表面処理剤は、下記式(3)で表されるホスホン酸系化合物又は式(4)で表されるリン酸系化合物を含み、上記第1の表面処理剤におけるR1又はR2の炭素数は、上記第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数より多い。
(R1)PO(OH)2 (1)
(式(1)中、R1は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基である。)
(R2O)aPO(OH)3-a (2)
(式(2)中、R2は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基であり、aは1又は2の整数である。)
(R3)PO(OH)2 (3)
(式(3)中、R3は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基である。)
(R4O)bPO(OH)3-b (4)
(式(4)中、R4は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基であり、bは1又は2の整数である。)
【0009】
本発明の金属顔料の製造方法は、金属顔料を、第1の表面処理剤で表面処理する第1の表面処理工程と、上記第1の表面処理剤で表面処理した上記金属顔料を、第2の表面処理剤で表面処理する第2の表面処理工程と、を有し、上記第1の表面処理剤は、下記式(1)で表されるホスホン酸系化合物又は式(2)で表されるリン酸系化合物を含み、
上記第2の表面処理剤は、下記式(3)で表されるホスホン酸系化合物又は式(4)で表されるリン酸系化合物を含み、上記第1の表面処理剤におけるR1又はR2の炭素数は、上記第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数より多い。
(R1)PO(OH)2 (1)
(式(1)中、R1は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基である。)
(R2O)aPO(OH)3-a (2)
(式(2)中、R2はそれぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基であり、aは1又は2の整数である。)
(R3)PO(OH)2 (3)
(式(3)中、R3は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基である。)
(R4O)bPO(OH)3-b (4)
(式(4)中、R4はそれぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基であり、bは1又は2の整数である。)
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の着色方法で用いる着色装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0012】
1.水系着色用組成物
本実施形態に係る水系着色用組成物(以下、単に「着色用組成物」ともいう。)は、金属顔料と、水と、有機溶剤と、を含有し、上記金属顔料は、第1の表面処理剤と、第2の表面処理剤と、により表面処理されたものであり、
上記第1の表面処理剤は、下記式(1)で表されるホスホン酸系化合物又は式(2)で表されるリン酸系化合物を含み、上記第2の表面処理剤は、下記式(3)で表されるホスホン酸系化合物又は式(4)で表されるリン酸系化合物を含み、上記第1の表面処理剤におけるR1又はR2の炭素数は、上記第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数より多い。
(R1)PO(OH)2 (1)
(式(1)中、R1は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基である。)
(R2O)aPO(OH)3-a (2)
(式(2)中、R2は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基であり、aは1又は2の整数である。)
(R3)PO(OH)2 (3)
(式(3)中、R3は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基である。)
(R4O)bPO(OH)3-b (4)
(式(4)中、R4は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基であり、bは1又は2の整数である。)
【0013】
従来、金属顔料を含有する着色用組成物において、耐水性等を向上させることを目的として、フッ素系表面処理剤などの表面処理剤により表面処理した金属顔料を含む着色用組成物が検討されてきた。しかしながら、耐水性の向上にはさらなる検討の余地があった。
【0014】
また、光沢をさらに向上させることを目的として、鱗片状(平板状)で、厚みが薄い金属顔料が開発されている。このように、金属顔料のそれぞれの粒子の表面積が大きくて厚みが薄いほど、同一の質量あたりの金属顔料の表面積が大きく、鱗片状の金属顔料の面方向が被着色体の面方向により平行になるように配向しやすく、鱗片状の金属顔料が光沢度のある層を形成することで、得られる着色物の光沢度が優れる。なお、このように配向することを「リーフィング」ともいう。
【0015】
しかしながら、このような鱗片状の金属顔料は、得られる着色物の光沢は向上する一方で、凝集しやすく、分散性が低下しやすい傾向にある。さらに、凝集することによって、期待するような光沢度が得られないこともある。
【0016】
そこで、表面処理剤により表面処理をして凝集を抑え分散性を向上させることが検討されている。一般に、短鎖アルキル基などを有する表面処理剤(以下、「短鎖表面処理剤」ともいう)よりも長鎖アルキル基などを有する表面処理剤(以下、「長鎖表面処理剤」ともいう)により表面処理をしたほうが耐水性に優れる金属顔料が得られると考えられる。しかし、長鎖表面処理剤により表面処理をしても耐水性が十分とは言えなかった。
【0017】
この点について、本発明者らはより一層の耐水性向上を目的として鋭意検討した。その結果、長鎖表面処理剤で表面処理をした時には金属顔料表面に水分子が接近することを長鎖アルキル基が抑制できるものの、金属顔料に結合している複数の長鎖表面処理剤の隙間には、長鎖表面処理剤が入り込みにくくなるため、長鎖表面処理剤の表面処理量としては粗くになりやすいことが分かってきた。
【0018】
そこで、本実施形態においては、長鎖表面処理剤に相当する第1の表面処理剤と、短鎖表面処理剤に相当する第2の表面処理剤と、により金属顔料を表面処理する。これにより、長鎖表面処理剤の隙間を短鎖表面処理剤でさらに表面処理することが可能となる。そのため、耐水性と分散性のより一層の向上を図ることができる。また、ひいては、光沢度の向上をも図ることができる。
【0019】
なお、本実施形態において、水系の組成物とは、組成物における水の含有量が、溶媒成分全体に対して20質量%以上である組成物を意味する。本実施形態における耐水性とは、金属顔料を水性塗料や水性インキ中に配合する等して水分と接触させた場合に、ガスの発生を抑制する作用をいう。また、着色用組成物とは、インクジェットインクや塗料組成物など、それ自体を着色方法に用いることのできる組成物をいう。
【0020】
以下、本実施形態に係る水系着色用組成物、着色方法、顔料分散液、及び金属顔料の製造方法等について詳説する。
【0021】
1.1.金属顔料
本実施形態の金属顔料は、表面処理剤により表面処理されたものである。本実施形態の金属顔料と表面処理剤の関係については、特に限定されないが、例えば、表面処理剤により表面修飾されることで、金属顔料の表面の-OH基等と表面処理剤の官能基とが反応することにより、金属粒子と上記表面処理剤とが化学的に結合していてもよい。
【0022】
金属顔料は、特に限定されないが、例えば、金属顔料全体が金属材料で構成されたものであってもよく、非金属材料で構成された基部と、当該基部の表面を被覆する金属材料で構成された被膜とを有するものであってもよい。なお、非金属材料で構成された基部としては、例えば、鱗片状の樹脂であり、その表面全体が金属材料で被覆されていてもよい。
【0023】
金属顔料の含有量は、着色用組成物が顔料分散液であるか、塗料組成物であるか、インク組成物であるかなどの用途により、適宜調整することができる。それらの各種用途における一例として、金属顔料の含有量は、着色用組成物の総量に対して、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましく、1.0質量%以上10質量%以下であることがより更に好ましい。金属顔料の含有量が上記範囲内であることにより、分散性、光沢度、及び耐水性に優れる傾向にある。
【0024】
1.1.1.構成材料
金属顔料を構成する金属種としては、特に限定されないが、例えば、単体としての金属や各種合金等を用いることができる。そのような金属種としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、銀、亜鉛、インジウム、チタン、鉄、及び銅が挙げられる。このなかでも卑金属を含む金属顔料が好ましく、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む金属顔料がより好ましく、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属顔料が更に好ましい。それにより、各種金属材料の中でも特に光沢感に優れる傾向にある。また、アルミニウム又はアルミニウム合金は他種金属材料に対して比較的低比重であることから、分散性に優れる傾向にある。さらに、金属顔料を含む着色用組成物を用いて製造される着色物の生産コストの上昇を抑制する点においても優れる。なお、金属顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
1.1.2.粒子の形状
金属顔料の形状としては、特に限定されないが、例えば、鱗片状(平板状)、球状、紡錘形状、針状等、いかなる形状のものであってもよい。その中でも、好ましくは鱗片状であり、より好ましくは金属顔料が鱗片状かつその厚みが薄いものである。金属顔料が鱗片状であると、被着色体上において、粒子の広い面が被着色体の表面に沿って配置されることにより、得られる着色物の光沢度が一層向上する傾向にある。
【0026】
なお、本実施形態において鱗片状とは、平板状、湾曲板状等のように、所定の角度から観察した際、例えば、平面視した際の面積が、当該観察方向と直交する角度から観察した際の面積よりも大きい形状のことをいう。
【0027】
観察に基づき金属顔料粒子の物性値を測定する方法としては、特に限定されないが、例えば、AFM法(原子間力顕微鏡法)に基づいて観察を行ってもよい。平均厚さを測定する場合などに用いることができる。原子間力顕微鏡としては、特に限定されず、例えば、NanoNavi E-Sweep(SIIナノテクノロジー社製)を用いることができる。
【0028】
1.1.3.体積平均粒子径
着色用組成物における金属顔料の体積平均粒子径D50は、大きいほど光沢に優れる傾向にあり、小さいほど分散性に優れる傾向にあるが、着色用組成物の用途からその好ましい範囲を規定してもよい。着色用組成物における金属顔料の体積平均粒子径D50は、好ましくは0.10μm以上15μm以下であり、より好ましくは0.20μm以上12μm以下であり、更に好ましくは0.30μm以上9.0μm以下である。金属顔料の体積平均粒子径D50が上記範囲内にあることで、光沢度、分散性、及び/又は耐水性に優れる傾向にある。
【0029】
また、同様の観点から、着色用組成物をインクジェットインク組成物やその成分として用いる場合の金属顔料の体積平均粒子径D50は、好ましくは1.0μm以下であり、より好ましくは100nm以上1.0μm以下であり、より好ましくは200nm以上800nm以下であり、更に好ましくは300nm以上600nm以下であってもよい。
【0030】
さらに、塗料やその成分として好適に用いる観点からは、金属顔料の体積平均粒子径D50は、好ましくは3.0μm以上15μm以下であり、より好ましくは5.0μm以上12μm以下であり、更に好ましくは7.0μm以上9.0μm以下であってもよい。
【0031】
本実施形態の体積平均粒子径D50とは、粒子分散液をレーザー回折・散乱法を用いて測定された体積分布のメジアン径のことを指し、多数個の測定結果を大きさ毎の存在比率の累積として表した場合に、累積でちょうど中央値の50%を示す粒子のサイズである。金属粒子が鱗片状をなすものである場合、体積平均粒子径は、金属粒子を球状換算した際の形状、大きさに基づいて求められるものとする。
【0032】
1.1.4.金属顔料の調製
金属顔料を調製する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、シート状基材の一方の面に蒸着法を用いて金属膜を形成し、その後シート状基材から金属膜を剥離および粉砕することにより、鱗片状の金属顔料を得ることができる。この蒸着法によれば、膜厚のバラツキが少なく、かつ、表面の平坦性が高い鱗片状の金属顔料を得ることができ、金属顔料が本来有する金属光沢度などをより効果的に発現させることができる。なお、薄膜の厚さが鱗片状の金属顔料の厚さとなる。また、このようにして得られた金属顔料は、必要に応じて分級し、その粒度分布を任意に調整してもよい。さらに、上記の蒸着法に代えて、イオンプレーティングまたはスパッタリング法を用いてもよい。
【0033】
また、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属顔料を調製する場合は、その光沢感等を一層効果的に表現させる観点から、気相成長法により形成された膜を用いて、粉砕することで調製すると好ましい。なお、このような方法は、比較的薄い金属顔料を調製する際にも用いることができる。
【0034】
上記蒸着法で用いるシート状基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックフィルムを用いることができる。また、シート状基材の成膜面には、あらかじめ剥離性を良くするためにシリコーンオイルなどの離型剤を塗布しておいてもよく、剥離用樹脂層を形成しておいてもよい。剥離用樹脂層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、変性ナイロン樹脂などが挙げられる。
【0035】
金属膜の剥離および粉砕は、例えば有機溶剤中において膜に超音波を照射したり、ホモジナイザーなどで撹拌したりして外力を加えることにより行われる。その際に用いる有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;n-ヘプタン、n-オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、p-ジオキサンなどのエーテル系化合物;プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリルなどの極性有機溶媒を好適に用いることができる。このような有機溶剤を用いることにより、金属顔料の不本意な酸化などを防止しつつ、各粒子間での大きさ、形状、特性のばらつきを小さくすることができる。
【0036】
1.2.表面処理剤
本実施形態の金属顔料は、第1の表面処理剤と、第2の表面処理剤と、により表面処理されたものを用いる。本実施形態の第1の表面処理剤は、下記式(1)で表されるホスホン酸系化合物又は式(2)で表されるリン酸系化合物を含み、第2の表面処理剤は、下記式(3)で表されるホスホン酸系化合物又は式(4)で表されるリン酸系化合物を含み、第1の表面処理剤におけるR1又はR2の炭素数は、第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数より多い。
(R1)PO(OH)2 (1)
(式(1)中、R1は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基である。)
(R2O)aPO(OH)3-a (2)
(式(2)中、R2は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基であり、aは1又は2の整数である。)
(R3)PO(OH)2 (3)
(式(3)中、R3は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基である。)
(R4O)bPO(OH)3-b (4)
(式(4)中、R4は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基であり、bは1又は2の整数である。)
【0037】
上記一般式(1)及び一般式(3)で表される化合物(置換又は非置換アルキルのホスホン酸)は、ホスホン酸が有する水素原子が(R1-)基及び(R3-)基で置換された化合物である。このような化合物は、アルキル部位による立体障害が少ないため、金属粒子表面の長鎖表面処理剤で表面処理されていない箇所に配置されやすく、金属顔料の分散安定性や光沢を良好にすることができる。
【0038】
上記一般式(2)及び一般式(4)で表される化合物は、リン酸が有する3個の水酸基の1個又は2個が置換又は非置換のアルキル基でエステル化された化合物である。
【0039】
一般式(2)及び一般式(4)で表される化合物は、aが1である場合、置換又は非置換のアルキルのジエステル体(ジ体)であり、aが2である場合、置換又は非置換のアルキルのモノエステル体(モノ体)である。一般式(2)及び一般式(4)で表される化合物は、aが1である場合(ジ体)は、置換又は非置換のアルキル部位が2つ存在することによる立体障害により、水分子が金属粒子の表面に近づくことを防ぐ効果が高まり、金属顔料をより耐水性に優れたものとできる傾向がある。なお、以下「モノエステル体」を「モノ体」ということがあり、「ジエステル体」を「ジ体」ということがある。
【0040】
上記式(1)及び(2)中、R1及びR2は、それぞれ、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基であり、上記式(3)及び(4)中、R3及びR4は、それぞれ、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基である。炭化水素基は、分岐鎖型、直鎖型、環状のいずれであってもよく、飽和結合又は不飽和結合を含んでもよい。炭素数12以上の炭化水素基とは、12個以上の炭素原子が連続して結合した骨格を有する炭化水素基である。また、ここでいうR1
、R2、R3、及びR4の炭素数は、置換基の炭素数を含まない。
【0041】
R1、R2、R3、若しくはR4における置換基の種類としては、特に限定されず、例えば、ハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、オキシアルキレン基等が挙げられる。より具体的には、R1、R2、R3、若しくはR4は、後述する炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されたパーフルオロ基であってもよい。R1、R2、R3、若しくはR4はそれぞれ、そのような置換基により、炭化水素基が有する水素原子の一部が置換されていてもよいが、R1、R2、R3、若しくはR4が有する置換基の数は、それぞれ、1以下であってもよく、置換基を有しなくてもよい。置換基を有する場合には、置換基が結合するR1、R2、R3、若しくはR4の位置は、P又はOからみて最も離れた位置にある炭素原子に結合していることが、金属顔料の分散安定性が優れる傾向にありより好ましい。
【0042】
オキシアルキレン基は、アルキレンオキシド単位を1個以上有しており、2個以上有していてもよい。特に、複数のアルキレンオキシド単位を有しており、これらが繰り返されている構造を有するものであってもよい。アルキレンオキシド単位の繰り返し数は、10以下であるのが好ましく、4以下であるのがより好ましい。下限は1以上であり、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。アルキレンオキシド単位におけるアルキレンの炭素数は1以上4以下であるのが好ましい。
【0043】
また、R1、R2、R3、若しくはR4としては、炭素間に2重結合、又は3重合結合を有しない飽和炭化水素基であってもよく、炭素間に2重結合又は3重合結合を有する不飽和炭化水素基であってもよい。また、上記の炭化水素基は、炭素骨格が芳香環構造を有する芳香族炭化水素基であってもよく、鎖状または環状の脂肪族炭化水素基などであってもよい。その中でも、R1、R2、R3、若しくはR4は、好ましくは鎖状の脂肪族炭化水素基である。また、鎖状の脂肪族炭化水素基は、分岐鎖型及び直鎖型を含むが、好ましくは直鎖型である。
【0044】
1.2.1.第1の表面処理剤
第1の表面処理剤は、上記式(1)で表されるホスホン酸系化合物又は上記式(2)で表されるリン酸系化合物を含む。金属顔料の耐水性を向上させる観点から、第1の表面処理剤として上記式(1)で表されるホスホン酸系化合物を用いることが好ましい。
【0045】
式(1)において、炭化水素基であるR1における何れかの炭素原子が式(1)のリン原子に直接結合しており、該酸素原子がPのリン原子に直接結合しているが、R1においてリン原子に直接結合している原子は、好ましくはR1の分子鎖末端の炭素原子である。
同様に、式(2)においては、炭化水素基であるR2における何れかの炭素原子が式(2)の(R2O)における酸素原子に直接結合しており、該酸素原子がPのリン原子に直接結合しているが、R2における該酸素原子に直接結合している原子は、好ましくはR2の分子鎖末端の炭素原子である。
【0046】
式(1)又は式(2)において、R1又はR2の炭素数は、それぞれ独立して、12以上であり、好ましくは12以上32以下であり、より好ましくは15以上30以下であり、更に好ましくは16以上22以下であり、より更に好ましくは16以上20以下である。このようにすることで、着色用組成物の分散安定性及び耐水性がより良好となる。
【0047】
式(1)又は式(2)において、R1又はR2の具体例としては、特に限定されないが、例えば、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、n-ドコシル基、n-テトラコシル基等が挙げられる。耐水性、分散性、及び光沢度に優れる観点からは、n-ドデシル基、n-オクタデシル基、又はn-ドコシル基であることが好ましい。
【0048】
式(1)で表されるホスホン酸系化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ドデシルホスホン酸、トリデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ペンタデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、ヘプタデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、ノナデシルホスホン酸、イコシルホスホン酸、ヘンイコシルホスホン酸、ドコシルホスホン酸等が挙げられる。また、耐水性、分散性、及び光沢度に優れる観点からは、式(1)で表されるホスホン酸系化合物として、ドコシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、及び/又はドデシルホスホン酸を用いることが好ましく、オクタデシルホスホン酸、又はドデシルホスホン酸を用いることがより好ましく、オクタデシルホスホン酸を用いるとより更に好ましい。
【0049】
式(2)で表されるリン酸系化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ドデシルリン酸、トリデシルリン酸、テトラデシルリン酸、ペンタデシルリン酸、ヘキサデシルリン酸、ヘプタデシルリン酸、オクタデシルリン酸、ノナデシルリン酸、イコシルリン酸、ジデシルリン酸、ジウンデシルリン酸、ジドデシルリン酸、ジトリデシルリン酸、ジテトラデシルリン酸、ジペンタデシルリン酸、ジヘキサデシルリン酸、ジヘプタデシルリン酸、ジオクタデシルリン酸、ジノナデシルリン酸、ジイコシルリン酸等が挙げられる。また、耐水性、分散性、及び光沢度に優れる観点からは、式(2)で表されるリン酸系化合物として、オクタデシルリン酸が好ましい。
【0050】
第1の表面処理剤の含有量は、着色用組成物に含まれる金属顔料の総量に対し、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、12質量%以上48質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上45質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより更に好ましい。第1の表面処理剤の含有量が、10質量%以上であることにより、耐水性に優れる傾向にあり、50質量%以下であることにより、分散性及び光沢度に優れる傾向にある。
【0051】
また、第1の表面処理剤の含有量は、着色用組成物の総量に対し、0.05質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上2.5質量%以下であることがより好ましく、0.15質量%以上2.0質量%以下であることが更に好ましく、0.20質量%以上1.0質量%以下であることがより更に好ましい。第1の表面処理剤の含有量が、着色用組成物の総量に対し、0.05質量%以上であることにより、耐水性に優れる傾向にあり、3.0質量%以下であることにより、分散性及び光沢度に優れる傾向にある。
【0052】
1.2.2.第2の表面処理剤
第2の表面処理剤は、上記式(3)で表されるホスホン酸系化合物又は上記式(4)で表されるリン酸系化合物を含む。
【0053】
第1の表面処理剤におけるR1又はR2の炭素数と、第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数との差は、4以上14以下であることが好ましい。R1若しくはR2とR3若しくはR4との炭素数の差が上記範囲内であることにより、耐水性、光沢度、及び分散性が一層向上する傾向にある。同様の観点から、R1若しくはR2とR3若しくはR4との炭素数の差は、5以上12以下であることがより好ましく、6以上10以下であることが更に好ましい。
【0054】
式(3)において、炭化水素基であるR3における何れかの炭素原子が式(3)のリン原子に直接結合しており、該酸素原子がPのリン原子に直接結合しているが、R3においてリン原子に直接結合している原子は、好ましくはR3の分子鎖末端の炭素原子である。
同様に、式(4)において、炭化水素基であるR4における何れかの炭素原子が式(4)の(R4O)における酸素原子に直接結合しており、該酸素原子がPのリン原子に直接結合しているが、R4における該酸素原子に直接結合している原子は、好ましくはR4の分子鎖末端の炭素原子である。
【0055】
式(3)又は式(4)において、R3又はR4の炭素数は、それぞれ独立して、4以上であり、4以上30以下であってもよい。耐水性、分散性、及び光沢度に優れる観点からは、R3又はR4の炭素数は、4以上18以下であることが好ましく、4以上12以下であることがより好ましく、4以上11以下であることが更に好ましく、4以上8以下であることがより更に好ましい。
【0056】
式(3)又は式(4)において、R3又はR4の具体例としては、特に限定されないが、例えば、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、n-テトラコシル基等が挙げられる。耐水性、分散性、及び光沢度に優れる観点からは、n-ブチル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、又はn-オクタデシル基であることが好ましく、n-ブチル基、n-オクチル基、又はn-ドデシル基であることがより好ましい。
【0057】
式(3)で表されるホスホン酸系化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ノニルホスホン酸、デシルホスホン酸、ウンデシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、トリデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ペンタデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、ヘプタデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、ノナデシルホスホン酸、イコシルホスホン酸、ヘンイコシルホスホン酸、ドコシルホスホン酸等が挙げられる。また、耐水性、分散性、及び光沢度に優れる観点からは、式(3)で表されるホスホン酸系化合物として、ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、又はオクタデシルホスホン酸を用いることが好ましく、ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、又はドデシルホスホン酸を用いることがより好ましい。
【0058】
式(4)で表されるリン酸系化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ブチルリン酸、ペンチルリン酸、ヘキシルリン酸、オクチルリン酸、ノニルリン酸、デシルリン酸、ウンデシルリン酸、ドデシルリン酸、トリデシルリン酸、テトラデシルリン酸、ペンタデシルリン酸、ヘキサデシルリン酸、ヘプタデシルリン酸、オクタデシルリン酸、ノナデシルリン酸、イコシルリン酸、ジデシルリン酸、ジウンデシルリン酸、ジドデシルリン酸、ジトリデシルリン酸、ジテトラデシルリン酸、ジペンタデシルリン酸、ジヘキサデシルリン酸、ジヘプタデシルリン酸、ジオクタデシルリン酸、ジノナデシルリン酸、ジイコシルリン酸等が挙げられる。また、耐水性、分散性、及び光沢度に優れる観点からは、式(4)で表されるリン酸系化合物として、ブチルリン酸、オクチルリン酸、又はドデシルリン酸を用いることが好ましい。
【0059】
第2の表面処理剤の含有量は、着色用組成物に含まれる金属顔料の総量に対し、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、12質量%以上48質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上45質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより更に好ましい。第2の表面処理剤の含有量が、10質量%以上であることにより、耐水性に優れる傾向にあり、50質量%以下であることにより、分散性及び光沢度に優れる傾向にある。
【0060】
また、第2の表面処理剤の含有量は、着色用組成物の総量に対し、0.05質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上2.5質量%以下であることがより好ましく、0.15質量%以上2.0質量%以下であることが更に好ましく、0.20質量%以上1.0質量%以下であることがより更に好ましい。第2の表面処理剤の含有量が、着色用組成物の総量に対し、0.05質量%以上であることにより、耐水性に優れる傾向にあり、3.0質量%以下であることにより、分散性及び光沢度に優れる傾向にある。
【0061】
なお、本実施形態に係る着色用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、上記第1の表面処理剤及び第2の表面処理剤以外の表面処理剤を含むものであってもよい。このような表面処理剤としては、例えば、フッ素系化合物が挙げられる。フッ素系化合物としては、フッ素と、リン、硫黄、窒素から選ばれる1種以上と、を構成元素として含む化合物を好ましく用いることができ、具体的にはフッ素系ホスホン酸、フッ素系カルボン酸、フッ素系スルホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。
【0062】
1.3.水
本実施形態の着色用組成物は、水を含む水系着色用組成物である。水系着用組成物は、着色用組成物の主要な溶媒成分として少なくとも水を含む着色用組成物である。
【0063】
水の含有量は、着色用組成物がインクジェットインクであるか顔料分散液であるかなどの用途によって、適宜調整することができる。それら各種用途における一例として、水の含有量は、着色用組成物の総量に対して、30質量%以上98質量%以下であることが好ましく、40質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上90質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、耐水性、光沢度、及び分散性に優れる傾向にある。
【0064】
1.4.有機溶剤
本実施形態の着色用組成物は、水溶性の有機溶剤を含む。そのような有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物、ケトン類、エステル類や、プロピレンカーボネート、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、アセトニトリル等を用いてもよい。
【0065】
これらの中でも、有機溶剤としてアルコール類を用いることが好ましい。アルコール類を用いることにより、上述の表面処理剤との相乗的効果として、得られる組成物の耐水性、分散性、及び光沢度が一層向上する傾向にある。なお、有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
アルコール類の有機溶剤として、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、1-ブタノール(n-ブタノール)、2-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、及びtert-ペンタノール等のモノアルコール系化合物;1,2-ヘキサンジオール、へキシレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のグリコール系化合物;2-フェノキシエタノール、フェノキシジグリコール、(メトキシフェノキシ)エタノール、メチルフェノキシエタノール、ビス(β-ヒドロキシエチル)ヒドロキノンエーテル、ノニルフェノール、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ナフトール、及び、フルフリルアルコール等の芳香族アルコール系化合物;グリセリンなどの多価アルコール系化合物等が挙げられる。
【0067】
これらの中でも、着色用組成物に含まれる有機溶剤として、グリコール系化合物、及び/又は芳香族アルコール系化合物を含むことが好ましく、グリコール系化合物を含むことがより好ましい。このような有機溶剤を用いることで、上述の表面処理剤との相乗的効果として、得られる組成物の分散性及び耐水性、並びに着色物の光沢度が一層向上する傾向にある。さらに、同様の観点から、1,2-ヘキサンジオール、及び2-フェノキシエタノールを含むことがより好ましい。
【0068】
また、上記のほかにも、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類、アルコキシアルキルアミド類などが有機溶剤として含まれていてもよい。
【0069】
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、等のグリコールジエステル類が挙げられる。
【0070】
アルキレングリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又はジエーテルであればよく、アルキルエーテルが好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、及び、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0071】
なお、上記のアルキレングリコールは、モノエーテルよりも、ジエーテルのほうが、インク組成物中の樹脂を溶解又は膨潤させやすい傾向があり、摩擦堅牢性をより向上できる点で好ましい。
【0072】
環状エステル類としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、β-ヘキサノラクトン、γ-ヘキサノラクトン、δ-ヘキサノラクトン、β-ヘプタノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、δ-ヘプタノラクトン、ε-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-オクタノラクトン、δ-ノナラクトン、ε-ノナラクトン、ε-デカノラクトン等の環状エステル類(ラクトン類)、並びに、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1~4のアルキル基によって置換された化合物を挙げることができる。
【0073】
アルコキシアルキルアミド類としては、例えば、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、等を例示することができる。
【0074】
環状アミド類としては、ラクタム類が挙げられ、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-プロピル-2-ピロリドン、1-ブチル-2-ピロリドン、等のピロリドン類などが挙げられる。これらは樹脂の皮膜化を促進させる点で好ましく、特に2-ピロリドンがより好ましい。
【0075】
有機溶剤の含有量は、着色用組成物の用途によって、適宜調整することができる。各種用途における一例として、有機溶剤の含有量は、着色用組成物の総量に対して、10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、15質量%以上55質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上50質量%以下であることが更に好ましく、25質量%以上45質量%以下であることがより更に好ましく、30質量%以上40質量%以下であることが特に好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、耐水性、光沢度、及び分散性に優れる傾向にある。
【0076】
1.5.その他の成分
本実施形態の着色用組成物は、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、分散剤、樹脂、その他の成分が挙げられる。
【0077】
1.6.用途
本実施形態の着色用組成物の用途としては、特に限定されないが、塗料組成物やインク組成物としての使用に適しているため、そのようなものとして用いると好ましい。インク組成物はインクジェットインク組成物であってもよい。また、着色用組成物は、顔料分散液の原料として用いることもできる。
【0078】
2.顔料分散液
本実施形態において、顔料分散液とは、塗料組成物の調製に用いる顔料分散液であってもよいし、インク組成物の調製に用いる顔料分散液であってもよい。
【0079】
本実施形態の顔料分散液は、金属顔料と、水と、有機溶剤と、を含有する顔料分散液であって、上記金属顔料は、第1の表面処理剤と、第2の表面処理剤と、により表面処理されたものであり、上記第1の表面処理剤は、下記式(1)で表されるホスホン酸系化合物又は式(2)で表されるリン酸系化合物を含み、上記第2の表面処理剤は、下記式(3)で表されるホスホン酸系化合物又は式(4)で表されるリン酸系化合物を含み、上記第1の表面処理剤におけるR1又はR2の炭素数は、上記第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数より多い。
(R1)PO(OH)2 (1)
(式(1)中、R1は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基である。)
(R2O)aPO(OH)3-a (2)
(式(2)中、R2は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基であり、aは1又は2の整数である。)
(R3)PO(OH)2 (3)
(式(3)中、R3は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基である。)
(R4O)bPO(OH)3-b (4)
(式(4)中、R4は、それぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基であり、bは1又は2の整数である。)
【0080】
顔料分散液に含まれる金属顔料、水、有機溶剤、及び金属顔料を表面処理する表面処理剤は上述した材料や化合物を、上述した使用量、使用方法により用いることができる。
【0081】
本実施形態の顔料分散液において、上述したもの以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、着色用組成物で例示したその他の成分等が挙げられ、適宜必要に応じて添加することができる。
【0082】
3.金属顔料の製造方法
本実施形態の金属顔料の製造方法は、金属顔料を、第1の表面処理剤で表面処理する第1の表面処理工程と、第1の表面処理剤で表面処理した金属顔料を、第2の表面処理剤で表面処理する第2の表面処理工程と、を有し、第1の表面処理剤は、下記式(1)で表されるホスホン酸系化合物又は式(2)で表されるリン酸系化合物を含み、第2の表面処理剤は、下記式(3)で表されるホスホン酸系化合物又は式(4)で表されるリン酸系化合物を含む。
(R1)PO(OH)2 (1)
(式(1)中、R1は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基である。)
(R2O)aPO(OH)3-a (2)
(式(2)中、R2はそれぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数12以上の炭化水素基であり、aは1又は2の整数である。)
(R3)PO(OH)2 (3)
(式(3)中、R3は、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基である。)
(R4O)bPO(OH)3-b (4)
(式(4)中、R4はそれぞれ独立して、水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数4以上の炭化水素基であり、bは1又は2の整数である。)
【0083】
本実施形態の金属顔料の製造方法は、第1の表面処理工程を行った後、第1の表面処理剤よりアルキル鎖が短い(すなわち、アルキル鎖の炭素数が少ない)表面処理剤を用いて第2の表面処理工程を行う。これにより、表面処理剤が吸着されていない金属表面の面積がより少なくなり、金属顔料の耐水性を向上させることができる。その結果、金属顔料を含む着色用組成物の光沢度及び分散性も向上すると推察されるが、要因はこれに限定されない。
【0084】
金属顔料を表面処理する場合、公知の表面処理方法を用いてもよい。例えば、金属顔料が有機溶剤中に分散した分散液に表面処理剤を添加して、超音波を照射することにより、金属顔料表面に表面処理剤を結合させることができる。この際、用いる表面処理剤の添加量は上述した量を適宜添加すればよい。
【0085】
さらに、上記表面処理剤は、金属顔料の表面に直接処理するものであってもよいが、あらかじめ酸又は塩基による前処理をした金属顔料に対して表面処理剤による処理を行ってもよい。これにより、金属顔料表面に、表面処理剤による化学的な修飾をより確実に行うことができ、上述したような本発明による効果をより効果的に発現させることができる。また、酸又は塩基による処理をすることで金属顔料の酸化被膜を除去することができ、これにより光沢度を向上することができる。
【0086】
前処理に用いる酸としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、ホウ酸、酢酸、炭酸、蟻酸、安息香酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、亜硫酸、次亜硫酸、亜硝酸、次亜硝酸、亜リン酸、次亜リン酸等のプロトン酸が挙げられる。一方、前処理に用いる塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0087】
3.1.第1の表面処理工程
第1の表面処理工程において、溶剤系媒体中で表面処理を行うことが好ましい。溶剤系媒体中で第1の表面処理工程を行うことで、耐水性、光沢度、及び分散性が向上する傾向にある。なお、本実施形態において溶剤系媒体とは、金属顔料の表面処理を行う際に用いる媒体のうち、有機溶剤を含む媒体をいう。溶剤系媒体としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
そのような溶剤系媒体としては、特に限定されないが、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。この中でも、耐水性、光沢度、及び分散性を向上させる観点からは、ジエチレングリコールジエチルエーテル中において表面処理を行うことが好ましい。
【0089】
3.2.第2の表面処理工程
第2の表面処理工程において、水系媒体中で表面処理を行うことが好ましい。水系媒体中で第2の表面処理工程を行うことで、金属顔料の表面において第2の表面処理剤が吸着しやすくし、耐水性を向上させる傾向にある。
【0090】
水系媒体としては、特に限定されないが、例えば、上述した水溶性有機溶剤、水等を用いることができ、金属顔料を含まないこと以外は上記水系着色用組成物と同組成であるインク水と同様のものを用いると好ましい。
【0091】
金属顔料の製造方法において、用いる金属顔料及び表面処理剤は、上述した材料や化合物を用いることができる。
【0092】
4.着色方法
本実施形態の着色方法は、上述の着色用組成物を、被着色体に付着させる工程を備えるインクジェット法による印刷であってもよいし、スプレーや刷毛、バーコーター等を用いて塗料を被着色体に付着させる塗装であってもよい。
【0093】
本実施形態の着色用組成物を塗料組成物として用いる場合において、塗料組成物を被着色体に塗布する方法としては、例えば、ハケ塗り法、スプレー法、ディッピング法、フローコート法、及びスピンコート法等が挙げられる。また、付着工程の後に、加熱乾燥工程を備えていてもよい。加熱乾燥工程では、上記着色用組成物を塗布した被着色体を加熱乾燥する。
【0094】
さらに、着色用組成物をインク組成物の原料として用いる場合において、インク組成物を被着色体に塗布する方法としては、例えば、インクジェットヘッドからインク組成物を吐出するインクジェット法が挙げられる。より具体的には、インクジェットヘッド内に設けられた圧力発生手段を駆動させて、インクジェットヘッドの圧力発生室内に充填されたインクをノズルから吐出させる。付着工程において用いるインクジェットヘッドとしては、ライン方式により着色を行うラインヘッドと、シリアル方式により着色を行うシリアルヘッドが挙げられる。
【0095】
5.着色装置
以下、本実施形態の着色用組成物をインクジェットインク組成物に用いる場合における、インクジェット着色に用いることができる着色装置の一例について詳説する。
【0096】
そのようなインクジェット着色装置は、インクジェットインクを被着色体に対して吐出するノズルを有するインクジェットヘッドと、被着色体を搬送する搬送手段と、を備える。インクジェットヘッドは、インクが供給される圧力室と、インクを吐出するノズルと、を備える。また、搬送手段は、着色装置内に設けられた搬送ローラーや搬送ベルトから構成される。
【0097】
以下、本実施形態に係る着色装置の一例について、
図1を参照して説明する。なお、
図1において示すX-Y-Z座標系はX方向が被着色体の長さ方向、Y方向が着色装置内の搬送経路における被着色体の幅方向、Z方向が装置高さ方向を示している。
【0098】
着色装置10は一例として、高速及び高密度の印刷が可能なライン型インクジェットプリンタである。着色装置10は、用紙等の被着色体Pを収納する給送部12と、搬送部14と、ベルト搬送部16と、着色部18と、「排出部」としてのFd(フェイスダウン)排出部20と、「載置部」としてのFd(フェイスダウン)載置部22と、「反転搬送機構」としての反転経路部24と、Fu(フェイスアップ)排出部26と、Fu(フェイスアップ)載置部28とを備えている。
【0099】
給送部12は、着色装置10において装置下部に配置されている。給送部12は、被着色体Pを収納する給送トレイ30と、該給送トレイ30に収納された被着色体Pを搬送経路11に送り出す給送ローラー32とを備えている。
【0100】
給送トレイ30に収納された被着色体Pは、給送ローラー32により搬送経路11に沿って搬送部14に給送される。搬送部14は、搬送駆動ローラー34と搬送従動ローラー36とを備えている。搬送駆動ローラー34は、図示しない駆動源により回転駆動される。搬送部14において、被着色体Pは、搬送駆動ローラー34と搬送従動ローラー36との間に狭持(ニップ)されて搬送経路11の下流側に位置するベルト搬送部16へと搬送される。
【0101】
ベルト搬送部16は、搬送経路11において上流側に位置する第1ローラー38と、下流側に位置する第2ローラー40と、第1ローラー38及び第2ローラー40に回転移動可能に取り付けられた無端ベルト42と、第1ローラー38と第2ローラー40との間において無端ベルト42の上側区間42aを支持する支持体44とを備える。
【0102】
無端ベルト42は、図示しない駆動源により駆動された第1ローラー38または第2ローラー40により上側区間42aにおいて+X方向から-X方向に移動するように駆動される。このため、搬送部14から搬送された被着色体Pは、ベルト搬送部16においてさらに搬送経路11の下流側に搬送される。
【0103】
着色部18は、ライン型のインクジェットヘッド48と、該インクジェットヘッド48を保持するヘッドホルダー46とを備えている。尚、該着色部18は、Y軸方向に往復移動するキャリッジにインクジェットヘッドが設けられたシリアル型のものであってもよい。インクジェットヘッド48は、支持体44に支持された無端ベルト42の上側区間42aと対向するように配置されている。インクジェットヘッド48は、無端ベルト42の上側区間42aにおいて被着色体Pが搬送される際、被着色体Pに向けてインクを吐出し、着色を実行する。被着色体Pは、着色が行われつつベルト搬送部16により搬送経路11の下流側に搬送される。
【0104】
なお、「ライン型のインクジェットヘッド」とは、被着色体Pの搬送方向と交差する方向に形成されたノズルの領域が、被着色体Pの交差方向全体をカバー可能なように設けられ、ヘッド又は被着色体Pの一方を固定し他方を移動させて画像を形成する着色装置に用いられるヘッドである。なお、ラインヘッドの交差する方向のノズルの領域は、着色装置が対応している全ての被着色体Pの交差方向全体をカバー可能でなくてもよい。
【0105】
また、ベルト搬送部16の搬送経路11の下流側には、第1分岐部50が設けられている。第1分岐部50は、被着色体PをFd排出部20またはFu排出部26へ搬送する搬送経路11と、被着色体Pの着色面を反転させて再度被着色体Pを着色部18に搬送する反転経路部24の反転経路52とに切り替え可能に構成されている。尚、第1分岐部50により反転経路52に切り替えられて搬送される被着色体Pは、反転経路52における搬送過程において着色面が反転され、最初の着色面と反対側の面がインクジェットヘッド48と対向するように着色部18に再度搬送される。
【0106】
搬送経路11に沿って第1分岐部50の下流側には、さらに第2分岐部54が設けられている。第2分岐部54は、被着色体PをFd排出部20へ向けて搬送し、または被着色体PをFu排出部26へ向けて搬送するように被着色体Pの搬送方向を切り替え可能に構成されている。
【0107】
第2分岐部54においてFd排出部20へ向けて搬送される被着色体Pは、Fd排出部20から排出され、Fd載置部22に載置される。このとき、被着色体Pの着色面は、Fd載置部22に対向するように載置される。また、第2分岐部54においてFu排出部26へ向けて搬送される被着色体Pは、Fu排出部26から排出され、Fu載置部28に載置される。このとき、被着色体Pの着色面は、Fu載置部28と反対側に向くように載置される。
【0108】
なお、上記では、ライン型のインクジェットヘッドを用いる場合の例について説明したが、本実施形態に係る着色装置は、シリアル型のインクジェットヘッドを用いるプリンタ(シリアルプリンタ)であってもよい。シリアルプリンタでは、被着色体を搬送方向に搬送させつつ、インクジェットヘッドを当該搬送方向と交差する方向に移動させることにより、印刷が行われる。
【0109】
6.被着色体
本実施形態で用いる被着色体としては、特に限定されないが、例えば、用途に合わせて吸収性又は非吸収性の被着色体を用いてもよい。
【0110】
吸収性被着色体としては、特に限定されないが、例えば、インクジェットインクの浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)から、インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。
【0111】
非吸収性被着色体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック類のフィルムやプレート;鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート;又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート;紙製の基材にポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック類のフィルムを接着(コーティング)した被着色体等が挙げられる。
【実施例0112】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0113】
1.着色用組成物の調製
20μmのPET基材上にアセトンにより可溶化させた離型樹脂をロールコーターによりコーティングすることで離型層を形成した。離型層付PET基材を、5m/sの速度でアルミニウム真空蒸着機に搬送し、減圧下においてアルミニウム層を15nmの膜厚で形成した。作製したアルミニウム/離型樹脂/PET基材をテトラヒドロフラン槽内に浸漬し、40kHzの超音波を照射することで、アルミニウム顔料をPET基材から剥離し、アルミニウム顔料の剥離液を得た。次いで、遠心分離機にてテトラヒドロフランを除去後、ジエチレングリコールジエチルエーテルを適当量添加してアルミニウム濃度5質量%のアルミニウム粒子懸濁液を得た。
【0114】
アルミニウム顔料懸濁液(5%、ジエチレングリコールジエチルエーテル)を循環型の高出力超音波粉砕機(20kHz)で粉砕し、目的の平均粒子径になるまで粉砕を行うことで、0.5μm以下のインクジェット可能な粒子径のアルミニウム顔料懸濁液を得た。
【0115】
前述した粉砕工程後に、40kHzの超音波照射のもと55℃1時間、熱処理を行うことで、凝集を解して一次粒子までアルミニウム顔料を分散した。一次粒子まで分散したアルミニウム顔料懸濁液に対し第1の表面処理剤を添加し、28kHz超音波照射下にて55℃3時間熱処理した。
【0116】
得られたアルミニウム分散液に遠心分離を行い、アルミニウム分散液の溶媒を表1~3に記載のインク水に置換することでインク組成物を調製した。ここで、第2の表面処理剤を加えて同様に熱処理することで、最終的に表面処理された金属顔料を含むインク組成物を得た。なお、表面処理後の表面処理されたアルミニウム顔料の分散液から除去した溶媒を分析したところ、何れの例も表面処理剤は含まれていなかった。このことから、表中の各例における表面処理剤は、組成物に含まれる金属粒子に付着していると推測する。
【0117】
なお、表中の各例に示す各成分の数値は特段記載のない限り、着色用組成物の総量に対する質量%を表す。また、表中における金属顔料の数値は、固形分の質量%を表す。また、表中、各例において最も長い炭化水素基を有する表面処理剤が第1表面処理剤であり、その次に長い炭化水素基を有する表面処理剤を第2表面処理剤である。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
表1~3で使用した略号や製品成分の詳細は以下のとおりである。
【0122】
<表面処理剤>
・ドコシル(C22H45)ホスホン酸(東京化成工業株式会社製)
・オクタデシル(C18H37)ホスホン酸(東京化成工業株式会社製)
・オクタデシル(C18H37)リン酸(東京化成工業株式会社製)
・ドデシル(C12H25)ホスホン酸(東京化成工業株式会社製)
・ドデシル(C12H25)リン酸(東京化成工業株式会社製)
・オクチル(C8H17)ホスホン酸(東京化成工業株式会社製)
・オクチル(C8H17)リン酸(東京化成工業株式会社製)
・ブチル(C4H9)ホスホン酸(東京化成工業株式会社製)
・ブチル(C4H9)リン酸(東京化成工業株式会社製)
・エチル(C2H5)ホスホン酸(東京化成工業株式会社製)
・エチル(C2H5)リン酸(東京化成工業株式会社製)
・FHP(パーフルオロヘキシルホスホン酸、ユニマテック社製)
<有機溶剤>
・1,2-Hexanediol(C6H14O2)
・2-PhenoxyEthanol(C8H10O2)
【0123】
2.評価方法
2.1.粒子径等
金属顔料の体積平均粒子径(D50)は、マイクロトラックMT-3300(マイクロトラック・ベル社製、レーザー回析・散乱式粒子径分布測定装置)を用いて測定した。なお、いずれの金属顔料も鱗片状であった。
【0124】
2.2.耐水性
上記により得られた着色用組成物をアルミパックに10cc封入した。そのアルミパックを70℃恒温下にて6日間貯蔵した。着色用組成物を上記アルミパックに封入する前、及び封入して上記条件下に貯蔵後の組成物の単位・質量あたりの発生ガス量を求め、以下の評価基準により耐水性を評価した。耐水性の評価結果を表1~3に示す。
(評価基準)
A:発生ガス量が0.1ml/g未満
B:発生ガス量が0.1ml/g以上0.15ml/g未満
C:発生ガス量が0.15ml/g以上0.19ml/g未満
D:発生ガス量が0.19ml/g以上1.0ml/g未満
E:発生ガス量が1.0ml/g以上
【0125】
2.3.光沢度
インクジェットプリンタ(SC-S80650、セイコーエプソン社製)の改造機を用い、インクジェットヘッドに各例の着色用組成物を充填し、最適な吐出が行えるようにインクジェットヘッドの駆動波形を最適化した上で、各例の着色物を作成した。インクジェットヘッドのノズル列のノズル密度は360npi、360ノズルとなるようにした。被着色体として、ポリ塩化ビニル製のフィルム(Mactac社製、Mactac5829R)を用いた。着色を行う際の、着色パターンにおけるインク付着量は5mg/inch2、着色解像度1440×1440dpiとなるようにした。
【0126】
こうして得た着色物の着色部部分を、光沢度計であるMINOLTA MULTI GLOSS 268を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、以下の評価基準に従い評価した。この値が大きいほど金属光沢感が優れている傾向にある。光沢度の評価結果を表1~3に示す。
(評価基準)
A:光沢度が400以上
B:光沢度が350以上400未満
C:光沢度が300以上350未満
D:光沢度が250以上300未満
E:光沢度が250未満
【0127】
2.4.分散性
上記着色用組成物の製造過程で得られた20kHzの超音波処理済みのジエチレングリコールジエチルエーテルを含む金属顔料の5質量%懸濁液を一部取り出し、これに、非水系媒体においては良好な分散性を示す分散剤であるエスリームAD-374M(日油社製)を加えて、金属粒子を分散させて分散液とした状態で、マイクロトラックMT-3300(マイクロトラック・ベル社製、レーザー回析・散乱式粒子径分布測定装置)を用いて、当該分散液に含まれる金属粒子の体積平均粒子径D50を測定し、この値を基準値とした。
【0128】
次いで、上記着色用組成物をガラス容器に100mL入れ密封し、室温で1ヵ月間放置した。放置した容器を10回振ってから、これらの着色用組成物について、上記の装置を用いて金属顔料の体積平均粒子径D50を測定した。恒温槽に入れる前の上記基準値からのD50の増加率を求め、以下の評価基準により分散性を評価した。体積平均粒子径D50の増加率が小さいほど、金属顔料は、分散性に優れる傾向にある。分散性の評価結果を表1~3に示す。
(評価基準)
A:インク中の粒子径(D50)が粉砕粒子径の110%未満である
B:インク中の粒子径(D50)が粉砕粒子径の110%以上150%未満である
C:インク中の粒子径(D50)が粉砕粒子径の150%以上200%未満である
D:インク中の粒子径(D50)が粉砕粒子径の200%以上500%未満である
E:インク中の粒子径(D50)が粉砕粒子径の500%以上である
【0129】
3.評価結果
表1~3に、各例で用いたインクの組成、並びに評価結果を示した。表1~3から、金属顔料と、水と、有機溶剤と、を含有する水系着色用組成物であり、金属顔料が、第1の表面処理剤と、第2の表面処理剤と、により表面処理されたものであり、第1の表面処理剤は、式(1)で表されるホスホン酸系化合物又は式(2)で表されるリン酸系化合物を含み、第2の表面処理剤は、式(3)で表されるホスホン酸系化合物又は式(4)で表されるリン酸系化合物を含み、第1の表面処理剤におけるR1又はR2の炭素数は、第2の表面処理剤におけるR3又はR4の炭素数より多い水系着色用組成物が、耐水性、光沢度、及び分散性に優れることが分かる。
10…着色装置、11…搬送経路、12…給送部、14…搬送部、16…ベルト搬送部、18…着色部、20…Fd排出部、22…Fd載置部、24…反転経路部、26…Fu排出部、28…Fu載置部、30…給送トレイ、32…給送ローラー、34…搬送駆動ローラー、36…搬送従動ローラー、38…第1ローラー、40…第2ローラー、42…無端ベルト、42a…無端ベルトの上側区間、44…支持体、46…ヘッドホルダー、48…インクジェットヘッド、50…第1分岐部、52…反転経路、54…第2分岐部、56…排出ローラー対、64…排出駆動ローラー、68…駆動軸、76…載置面、78…凸状部、80…第1付勢部材、82…第2付勢部材、84、86…支持軸、P…被着色体。