(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024776
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】タッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物およびタッチパネル用電極保護膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20240216BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240216BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20240216BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G03F7/027 512
G03F7/027 502
G06F3/041 460
G06F3/041 495
G06F3/041 660
H05K3/28 C
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127650
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】入澤 宗利
(72)【発明者】
【氏名】南 佳苗
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 隆
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
5E314
【Fターム(参考)】
2H197AA01
2H197AA04
2H197CA03
2H197CA05
2H197CE01
2H197CE10
2H197DB06
2H197HA04
2H197HA10
2H197JA21
2H225AC32
2H225AC36
2H225AC58
2H225AD06
2H225AM23P
2H225AM32P
2H225AN39P
2H225CA14
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
5E314AA27
5E314AA31
5E314AA32
5E314AA33
5E314BB01
5E314BB11
5E314CC15
5E314EE03
5E314FF01
5E314GG01
5E314GG11
(57)【要約】
【課題】耐汗性と、金属基材およびITO基材に対する密着性のバランスに優れたタッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物およびタッチパネル用電極保護膜の形成方法を提供することである。
【解決手段】(A)カルボキシ基を有するポリマーと、(B)光重合開始剤と、(C)特定の化合物と、(D)前記特定の化合物以外の重合性モノマーを含有することを特徴とするタッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物、および該感光性樹脂組成物を用いたタッチパネル用電極保護膜の形成方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシ基を有するポリマーと、(B)光重合開始剤と、(C)一般式(i)で示される化合物と、(D)一般式(i)で示される化合物以外の重合性モノマーを含有することを特徴とするタッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(i)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、nは1~10の整数を表す。)
【請求項2】
タッチパネル用電極基材の電極を有する面に、前記請求項1に記載のタッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂層を貼り付け、該感光性樹脂層に対して像様に露光を行い、非露光部をアルカリ現像液によって除去して該基材上に開口部を有した保護膜を形成することを特徴とするタッチパネル用電極保護膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物、および該感光性樹脂組成物を用いたタッチパネル用電極保護膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、ノートPC、OA機器、医療機器、あるいはカーナビゲーションシステム等の電子機器においては、これらのディスプレイに入力手段としてタッチパネルセンサーが広く用いられている。
【0003】
タッチパネルセンサーには、位置検出の方法により光学方式、超音波方式、抵抗膜方式、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等があり、上記したディスプレイ用途においては抵抗膜方式と投影型静電容量方式が好適に利用されている。抵抗膜方式のタッチパネルセンサーは、支持体上に光透過性導電層を有する光透過性電極を2枚利用し、これら光透過性電極を、ドットスペーサーを介して対向配置した構造を有しており、タッチパネルセンサーの1点に力を加えることにより光透過性導電層同士が接触し、各光透過性導電層に印加された電圧をもう一方の光透過性導電層を通して測定することで、力の加えられた位置の検出を行うものである。一方、投影型静電容量方式のタッチパネルセンサーは、2層の光透過性導電層を有する光透過性電極を1枚、または1層の光透過性導電層を有する光透過性電極を2枚利用し、指等を接近させた際の光透過性導電層間の静電容量変化を検出し、指を接近させた位置の検出を行うものである。後者は可動部分がないため耐久性に優れる他、多点同時検出ができることから、スマートフォンやタブレットPC等で、とりわけ広く利用されている。
【0004】
投影型静電容量方式のタッチパネルセンサーにおいては、支持体上に光透過性導電層をパターニングすることで得られた複数のセンサーからなるセンサー部を配することで、多点同時検出や移動点の検出を可能にしている。このセンサー部が検出した静電容量の変化を電気信号として外部に取り出すため、光透過性電極が有する全てのセンサーと、外部に電気信号を取り出すために設けられる複数の端子からなる端子部との間には、これらを電気的に接続する複数の周辺配線からなる周辺配線部が設けられる。通常、前述した光透過性導電層はディスプレイ上に位置し、周辺配線部や端子部はディスプレイの外、いわゆる額縁部に位置する。従来技術においては、光透過性導電層はインジウム-錫酸化物(ITO)導電膜により形成されるのが一般的であり、周辺配線部や端子部は、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属により形成されるのが一般的である。
【0005】
このようなタッチパネルセンサーは、指先が接触する際に水分や塩分などの腐食成分が付着すると、光透明性導電層や金属配線が腐食して、電気抵抗の増加や断線する問題があった。そのような光透明性導電層や金属配線の腐食を防ぐために、タッチパネルセンサーに硬化した感光性樹脂層を保護膜として有する投影型タッチパネルセンサーが開示されている(例えば特許文献1、2)
【0006】
また、タッチパネルの製造工程においては、タッチパネルが湾曲したり、搬送ロールと接触したりして負荷がかかることがある。特に、タッチパネル用電極基材としてフレキシブル性を有する樹脂フィルム基材を用いたタッチパネルセンサーにおいては、該タッチパネルセンサーの湾曲に伴い保護膜への負荷も大きくなり、剥がれや亀裂が生じる場合がある。タッチパネル上に保護膜を形成する製造工程の一例として、感光性樹脂層を基材上にラミネート、露光、現像、後露光および/または加熱処理の順で行う方法が挙げられる。後露光および/または加熱処理の工程を経た後では保護膜の密着性も向上するが、現像後の膜は密着性や膜強度が弱く、前述した製造工程での負荷に耐えきれず現像後の保護膜の亀裂や基材からの剥離がしばしば問題となる場合があった。そのため、ITO基材、金属基材と密着性が高く湾曲に耐えることが可能な保護膜が求められている。例えば、特開2019-207321号公報(特許文献3)には、現像後の露光後膜の導体基材との密着性および膜強度が良好な感光性樹脂組成物として、(A)特定の酸性基を有するアルカリ可溶性重合体、(B)特定の光重合性化合物および(C)光重合性開始剤を含有する感光性樹脂組成物が記載されている。しかしながら、上記した水分や塩分などの腐食成分に対する耐性、いわゆる耐汗性と、金属基材およびITO基材に対する密着性のバランスに優れた保護膜を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2013/84883号パンフレット
【特許文献2】特開2018-77490号公報
【特許文献3】特開2019-207321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、耐汗性と、金属基材およびITO基材に対する密着性のバランスに優れたタッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物およびタッチパネル用電極保護膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、以下の発明によって達成される。
【0010】
(1)(A)カルボキシ基を有するポリマーと、(B)光重合開始剤と、(C)一般式(i)で示される化合物と、(D)一般式(i)で示される化合物以外の重合性モノマーを含有することを特徴とするタッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物。
【0011】
【0012】
一般式(i)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、nは1~10の整数を表す。
【0013】
(2)タッチパネル用電極基材の電極を有する面に、上記(1)に記載のタッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂層を貼り付け、該感光性樹脂層に対して像様に露光を行い、非露光部をアルカリ現像液によって除去して該基材上に開口部を有した保護膜を形成することを特徴とするタッチパネル用電極保護膜の形成方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、耐汗性と、金属基材およびITO基材に対する密着性のバランスに優れたタッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物およびタッチパネル用電極保護膜の形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のタッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物、および該感光性樹脂組成物を用いたタッチパネル用電極保護膜の形成方法について詳細に説明する。
【0016】
本発明のタッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物が含有する(A)カルボキシ基を有するポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂等の有機高分子化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その中でも、アルカリ現像液への溶解性の観点から、(メタ)アクリル系樹脂を用いることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和カルボン酸を共重合させた(メタ)アクリル系重合体であればよい。また、該重合体には、その他の共重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーを共重合させてもよい。
【0017】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
上記エチレン性不飽和カルボン酸として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸が好適に用いられ、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸や、それらのハーフエステルを用いることもできる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。
【0019】
上記その他の共重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-エトキシスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ビニル-n-ブチルエーテル等が挙げられる。
【0020】
(A)カルボキシ基を有するポリマーに(メタ)アクリロイル基を有していてもよい。例えば、カルボキシ基または水酸基に、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等を付加させたものが挙げられる。それらの製品としては、例えば、Z200M、Z230AA、Z250、Z251、Z254F、Z300、Z320(以上、サイクロマー(登録商標)P、ダイセル・オルネクス株式会社製)、CCR-1291H、CCR―1235、ZAR―1035、ZAR-2000、ZFR-1401H、ZFR-1491H、ZCR-1569H、ZCR-1601H、ZCR-1797H、ZCR-1798H、UXE-3000、UXE-3024(以上、KAYARAD(登録商標)、日本化薬株式会社製)、MAP-4050、MAP-7000、RA―4101(以上ART CURE(登録商標)、根上工業株式会社製)等が挙げられる。
【0021】
(A)カルボキシ基を有するポリマーの酸価は、アルカリ現像速度、露光感度、感光性樹脂層の柔らかさ、感光性樹脂層と基材の密着性、耐汗性などに影響する。(A)カルボキシ基を有するポリマーの酸価は、30~300mgKOH/gであることが好ましく、50~200mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が30mgKOH/g未満では、アルカリ現像時間が長くなる傾向があり、一方、300mgKOH/gを超えると、耐汗性が悪くなる場合がある。酸価はJIS K2501:2003に準拠して測定した値である。
【0022】
また、(A)カルボキシ基を有するポリマーの質量平均分子量は、5,000~150,000であることが好ましく、10,000~100,000であることがより好ましい。(A)カルボキシ基を有するポリマーの質量平均分子量が5,000未満では、硬化前の感光性樹脂組成物をフィルム状態に形成することが困難になる場合がある。一方、(A)カルボキシ基を有するポリマーの質量平均分子量が150,000を超えると、アルカリ現像液に対する溶解性が悪化する傾向がある。
【0023】
本発明に係わる(B)光重合開始剤(以下、成分(B)と表記する場合がある)としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(o-ベンゾイルオキシム)]に代表されるオキシムエステル;ベンゾフェノン、N,N,N′,N′-テトラメチル-4,4′-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N,N′,N′-テトラエチル-4,4′-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4′-ジメチルアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9′-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用される。
【0024】
本発明のタッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物は、(C)一般式(i)で示される化合物を含有する。
【0025】
【0026】
一般式(i)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、nは1~10の整数を表す。
【0027】
一般式(i)で示される化合物は、カプロラクトン骨格を有する単官能の(メタ)アクリレートモノマーであり、具体的には2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)のカプロラクトン付加物、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)のカプロラクトン付加物等が挙げられる。一般式(i)で示される化合物は、市販されており、例えばプラクセルFM1(HEMAのカプロラクトン1モル付加物)、プラクセルFM1D(HEMAのカプロラクトン1モル付加物)、プラクセルFM2D(HEMAのカプロラクトン2モル付加物)、プラクセルFM3(HEMAのカプロラクトン3モル付加物)、プラクセルFM3X(HEMAのカプロラクトン3モル付加物)、プラクセルFM4(HEMAのカプロラクトン4モル付加物)、プラクセルFM5(HEMAのカプロラクトン5モル付加物)、プラクセルFA1(HEAのカプロラクトン1モル付加物)、プラクセルFA1DDM(HEAのカプロラクトン1モル付加物)、プラクセルFA2D(HEAのカプロラクトン2モル付加物)、プラクセルFA5(HEAのカプロラクトン5モル付加物)、プラクセルFA10L(HEAのカプロラクトン10モル付加物)等(以上、株式会社ダイセル製)を例示することができる。
【0028】
これらの中でも、耐汗性、密着性のバランスの観点から、n=1~5が好ましい。一般式(i)で示される化合物は単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0029】
本発明のタッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物は、(D)一般式(i)で示される化合物以外の重合性モノマーを含有する。一般式(i)で示される化合物以外の重合性モノマーとしては、1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物、2つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物等が挙げられる。
【0030】
(D)一般式(i)で示される化合物以外の重合性モノマーで、1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(オキシエチレン基が1以上)、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(オキシエチレン基数が2~30)、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(オキシエチレン基数が2~30)、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(オキシプロピレン基数が2~30)、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(オキシプロピレン基数が2~30)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
また、(D)一般式(i)で示される化合物以外の重合性モノマーで、2つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、多価のアルコールに2つの(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基数が2~30)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(オキシプロピレン基数が2~30)、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート(オキシテトラメチレン基数が2~20)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基数が2~30)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート(オキシプロピレン基数が2~40)、ビスフェノールAのエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基およびオキシプロピレン基の和が2~40)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエステル)フェニル]フルオレン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
また、(D)一般式(i)で示される化合物以外の重合性モノマーで、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、多価のアルコールに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。また、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
本発明に係わる感光性樹脂層には、必要に応じて、上記成分(A)~(D)以外の成分を含有させてもよい。このような成分としては、溶剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(染料、顔料)、減色材、熱発色防止剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、撥水剤および撥油剤等が挙げられ、各々成分(A)~(D)の総量に対して0.01~20質量%程度含有することができる。これらの成分は1種を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
本発明における感光性樹脂層において、成分(A)の含有量は、成分(A)、(B)、(C)および(D)の総量に対して50~70質量%であることが好ましく、54~66質量%であることがより好ましい。成分(A)の含有量が50質量%未満では、露光前の感光性樹脂層の粘着性が高く、ラミネートが困難となる場合がある。成分(A)の含有量が70質量%を超えると、耐汗性が低下する場合がある。
【0035】
成分(B)の含有量は、成分(A)、(B)、(C)および(D)の総量に対して0.05~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましい。成分(B)の含有量が0.05質量%未満では、光重合性が不十分となりアルカリ現像で感光性樹脂層が膨潤して表面が粗くなる場合がある。一方、5質量%を超えると、感光性樹脂層の色味が濃くなり、タッチパネルの視認性が損なわれる場合がある。
【0036】
成分(C)の含有量は、成分(A)、(B)、(C)および(D)の総量に対して2~25質量%であることが好ましく、5~18質量%であることがより好ましい。成分(C)の含有量が2質量%未満では、感光性樹脂層とタッチパネル用電極基材との密着性が不十分となる場合がある。一方、25質量%を超えると、耐汗性が悪化する傾向にある。
【0037】
成分(D)の含有量は、成分(A)、(B)、(C)および(D)の総量に対して20~35質量%であることが好ましく、24~31質量%であることがより好ましい。成分(D)の含有量が20質量%未満では、耐汗性が悪化する傾向にある。一方、35質量%を超えると、感光性樹脂層とタッチパネル用電極基材との密着性が不十分となる場合がある。
【0038】
本発明に係わるタッチパネル用電極基材としては、プラスチック、ガラス、ゴム、セラミックス等が好ましく用いられる。これら基材は全光線透過率が60%以上であるものが好ましい。プラスチックの中でも、フレキシブル性を有する樹脂フィルムは、取扱い性が優れている点で好適に用いられる。基材として使用される樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50~300μmの樹脂フィルムが挙げられる。基材には易接着層など公知の層が設けられていても良い。基材上にはセンサー部、配線部、端子部等を構成する金属パターンが形成されている。本発明においてタッチパネル用電極のパターンを形成する金属としては、特にITO、銅からなることが好ましい。
【0039】
本発明に係わる感光性樹脂層は、支持体上に上述した各成分を含有するタッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物塗工液を塗工、乾燥することで形成することができる。さらに、感光性樹脂層の上にカバーフィルムを有する積層体とし、感光性樹脂層をタッチパネル用電極基材へ貼り付ける際は、該カバーフィルムを剥離してから、露出した感光性樹脂層の面を該基材へ貼り付けて使用することもできる。支持体としては、活性光線を透過させる透明フィルムが好ましい。該透明フィルムの全光線透過率は60%以上が好ましく、ヘーズ値は10%以下が好ましい。また、支持体の厚みは、薄い方が光の屈折が少ないので好ましく、厚い方が塗工安定性に優れるため好ましいが、5~50μmが好ましい。このようなフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のフィルムが挙げられる。カバーフィルムとしては、未硬化又は硬化した感光性樹脂層を剥離できればよく、離型性の高い樹脂のフィルムが用いられる。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン等の離型剤が塗工されたポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
【0040】
感光性樹脂層の厚みは、2~20μmであることが好ましく、4~15μmであることがより好ましい。感光性樹脂層が厚すぎると、解像性の低下、コスト高等の問題が発生しやすくなる。逆に薄すぎると、密着性、耐汗性が低下する場合がある。
【0041】
タッチパネル用電極基材へ感光性樹脂層を貼り付ける方法としては、ラミネータ等を用いて、感光性樹脂層を加熱しながらタッチパネル用電極基材に圧着することにより積層する方法等が挙げられる。この際、感光性樹脂層の加熱温度は70~130℃とすることが好ましく、圧着圧力は0.1~1.0MPaとすることが好ましいが、これらの条件には特に制限はない。また、上記のように感光性樹脂層を70~130℃に加熱すれば、予めタッチパネル用電極基材を予熱処理することは必要ではないが、密着性をさらに向上させるために、タッチパネル用電極基材の予熱処理を行うこともできる。
【0042】
このようにしてタッチパネル用電極基材上に感光性樹脂層を形成した後に、貼り付けた感光性樹脂層に対してマスク材を介して露光を行い、所定箇所に光硬化部を形成する。露光の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等、紫外線を有効に放射するものを用いることができる。紫外線の照射量および照射時間は、感光性樹脂層に応じて適切に設定できる。露光方法としては、例えば、マスクパターンを密着させて露光する接触露光法、マスクパターンをドライフィルムに密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法などが挙げられる。
【0043】
非露光部をアルカリ現像液によって除去する方法は、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方式により現像して除去する方法を例示することができる。アルカリ現像液としては、安全かつ安定であり、操作性が良好なものが用いられ、例えば、20~50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(0.5~2.0質量%水溶液)等が用いられる。
【0044】
本発明のタッチパネル用電極保護膜の形成方法では、現像後の保護膜に熱処理を行ってもよい。熱処理によって、保護膜と電極基材の密着性を向上させる効果および保護膜の耐汗性を向上させる効果が得られる。熱処理の温度は80℃以上が好ましく、時間は5分以上が好ましい。また、熱処理前に保護膜の熱による変形を防ぐことを目的として、紫外線等の活性光線照射処理を実施してもよい。
【実施例0045】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1~12、比較例1~2)
表1に示す各成分の配合比率となるように、タッチパネル保護膜用感光性樹脂組成物塗工液を作製した。表1における各成分配合量の単位は、質量部を表す。作製した塗工液を、ワイヤーバーを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(16μm厚、全光線透過率88%、ヘーズ値2%)上に塗工し、100℃で5分間乾燥し、PETフィルムの片面上に感光性樹脂層(乾燥膜厚:9μm)を設け、該感光性樹脂層の上にカバーフィルムとしてポリプロピレンフィルム(25μm厚)を貼合して、PETフィルム上に感光性樹脂層とカバーフィルムをこの順に有する実施例1~12および比較例1~2の積層体を得た。
【0047】
【0048】
表1において、各成分は以下の通りである。
<(A)カルボキシ基を有するポリマー>
(A-1):メチルメタクリレート/n-ブチルアクリレート/メタクリル酸を質量比65/25/10で共重合させた共重合樹脂の35質量%溶液、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル、質量平均分子量Mw30000、酸価65mgKOH/g)
(A-2):メチルメタクリレート/n-ブチルアクリレート/メタクリル酸を質量比67/20/13で共重合させた共重合樹脂の35質量%溶液、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル、質量平均分子量Mw50000、酸価84mgKOH/g)
【0049】
<(B)光重合開始剤>
(B-1):1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(o-ベンゾイルオキシム)](イルガキュア(登録商標)OXE01、BASFジャパン株式会社製)
【0050】
<(C)一般式(i)で示される化合物>
(C-1):プラクセルFM1(株式会社ダイセル製)(n=1)
(C-2):プラクセルFA1(株式会社ダイセル製)(n=1)
(C-3):プラクセルFM3(株式会社ダイセル製)(n=3)
(C-4):プラクセルFM5(株式会社ダイセル製)(n=5)
(C-5):プラクセルFA10L(株式会社ダイセル製)(n=10)
<(D)一般式(i)で示される化合物以外の重合性モノマー>
(D-1):1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(NKエステルHD-N、新中村化学工業株式会社製)
(D-2):ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサメタクリレート(KAYARAD DPCA-20、日本化薬株式会社製)
【0051】
<熱処理前ITO基材および熱処理後ITO基材の作製>
ポリ環状オレフィン樹脂基材上にITO層が積層されたITO基材(サイズ10cm×10cm)のITO層面に、実施例および比較例の積層体のカバーフィルムを剥離して露出した感光性樹脂層面を貼り付けた。次に、PETフィルム側から感光性樹脂層に対して一辺1cmの四角形パターンを有するフォトマスクを介して紫外線露光した。続いて、PETフィルムを剥離し、30℃の1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液にてアルカリ現像を実施し、非露光部の感光性樹脂層を除去した。ここまでの工程を実施したものを、熱硬化されていない感光性樹脂層で形成された保護膜を有する熱処理前のITO基材とした。
【0052】
次に、150℃30分の熱処理を行い、熱硬化された感光性樹脂層で形成された保護膜を有する熱処理後のITO基材とした。
【0053】
<熱処理前ITO/銅基材および熱処理後ITO/銅基材の作製>
上述した熱処理前ITO基材および熱処理後ITO基材の作製において、ポリ環状オレフィン樹脂基材上にITO層が積層されたITO基材を、ポリ環状オレフィン樹脂基材上にITO層および銅層がこの順に積層されたITO/銅基材(サイズ10cm×10cm)に変更し、銅層面に実施例および比較例の積層体のカバーフィルムを剥離して露出した感光性樹脂層面を貼り付けた以外は同様にして、熱硬化されていない感熱性樹脂層で形成された保護膜を有する熱処理前のITO/銅基材、および熱硬化された感光性樹脂層で形成された保護膜を有する熱処理後のITO/銅基材を得た。
【0054】
<密着性の評価>
上記のように作製した熱処理前のITO基材と熱処理後のITO基材、並びに熱処理前のITO/銅基材と熱処理後のITO/銅基材の保護膜が形成された領域について、JIS K5400-8.5(JIS D0202)に準じた碁盤目付着性試験法を実施し、保護膜の密着性を評価した。碁盤目個中の剥離個数を数え、下記評価基準にて評価した。結果を表2に示す。実用可能レベルはAおよびBである。
<密着性評価基準>
A:碁盤目の剥離個数が0個。
B:碁盤目の剥離個数が全体の0%を超えて5%以下。
C:碁盤目の剥離個数が全体の5%を超えて15%以下。
D:碁盤目の剥離個数が全体の15%を超えて35%以下。
E:碁盤目の剥離個数が全体の35%を超える。
【0055】
【0056】
<耐汗性の評価>
100質量部の純水に対して、5質量部の塩化ナトリウム、5質量部のりん酸水素二ナトリウム・12水和物および2.1質量部の99%酢酸を混合した人工汗液を作製した。次に上記熱処理後のITO/銅基材の保護膜上に、該人工汗液をスポイトで20か所に滴下し、室温で乾燥させた。次に、乾燥させた該ITO/銅基材を60℃95%RHの雰囲気下で100時間保存し、銅表面の変色具合を観察した。結果を表2に示す。実用可能レベルはAおよびBである。また、本発明においては、硬化した保護膜を有する熱処理後のITO/銅基材の耐汗性評価がAまたはBの場合、硬化した保護膜を有する熱処理後のITO基材の耐汗性についても実用可能レベルとした。
<耐汗性評価基準>
A:銅表面に変色が認められない。
B:銅表面に黒い変色が1カ所認められる。
C:銅表面に黒い変色が2~5カ所認められる。
D;銅表面に黒い変色が6~20カ所認められる。
【0057】
表2の結果から、本発明によって、耐汗性と、銅基材およびITO基材に対する密着性のバランスに優れたタッチパネル用保護膜を形成できることが判る。