(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024784
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】操作パネル
(51)【国際特許分類】
H01H 36/00 20060101AFI20240216BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240216BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01H36/00 J
G06F3/041 500
G06F3/044 124
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127663
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薛 銘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】村上 亮
(72)【発明者】
【氏名】岡部 夏希
(72)【発明者】
【氏名】太齋 友磨
【テーマコード(参考)】
5G046
【Fターム(参考)】
5G046AA02
5G046AB02
5G046AC21
5G046AD02
(57)【要約】
【課題】指の大きさ又は指の触れ方に影響されず、指の接触開始点の取得精度の向上を可能とする。
【解決手段】操作パネル2は、パネル部材3と、パネル部材3に設けられ、使用者によって押圧操作されるスイッチ部としてのスイッチ4と、を備える。操作パネル2は、使用者の指Fとスイッチ4との位置関係に応じて変化する静電容量を検出するセンサ部としてのタッチ位置センサ6と、タッチ位置センサ6で検出した静電容量が入力される制御部としてのコントローラCと、を備える。コントローラCは、入力される静電容量の変化波形50に現れる変曲点56に基づいて使用者の指Fがスイッチ4に接触した接触開始点を決定する。そして、コントローラCは、接触開始点から静電容量が更に増加して所定値を超えた場合にスイッチ4が操作されている操作状態であると判定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作パネルであって、
パネル部材と、
前記パネル部材に設けられ、使用者によって押圧操作されるスイッチ部と、
使用者の指と前記スイッチ部との位置関係に応じて変化する静電容量を検出するセンサ部と、
前記センサ部で検出した静電容量が入力される制御部と、を備え、
前記制御部は、
入力される静電容量の変化波形に現れる変曲点に基づいて使用者の指が前記スイッチ部に接触した接触開始点を決定し、
前記接触開始点から静電容量が更に増加して所定値を超えた場合に前記スイッチ部が操作されている操作状態であると判定する、
操作パネル。
【請求項2】
請求項1に記載された操作パネルであって、
前記制御部は、入力される静電容量の変化量を時間で一階微分した値が減少に転じた場合に前記変曲点が現れたと判定する、
操作パネル。
【請求項3】
請求項1に記載された操作パネルであって、
前記制御部は、入力される静電容量の変化量を時間で一階微分した値が正の値であって、前記変化量を時間で二階微分した値が0以下の場合に前記変曲点が現れたと判定する、
操作パネル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された操作パネルであって、
前記所定値は、前記接触開始点で得られる静電容量に所定係数を乗算することによって設定される、
操作パネル。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された操作パネルであって、
前記制御部は、入力される静電容量から使用者の指と前記スイッチ部との接触面積を演算し、前記接触面積が所定閾値を超えた場合に静電容量が前記所定値を超えたと判定する、
操作パネル。
【請求項6】
請求項5に記載された操作パネルであって、
前記所定閾値は、前記接触開始点で得られる前記接触面積に所定係数を乗算することによって設定される、
操作パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、人が指で対象箇所を押す場合、年齢又は性別に関係なく、指先の力に伴って、指と対象箇所との接触面積が指数関数的に変化することが記載されている。これにより、指と対象箇所との接触面積は、指が所定の力を発揮するまで所定の倍率で増加し、接触面積が所定の倍率で増加することは、五本の指のいずれにおいても同様であるとされている。
【0003】
そこで、本願の発明者は、接触面積の増加率から使用者の操作パネルのスイッチ部の操作状態を判断しようと考え、指がスイッチ部に接触した接触開始点の接触面積を基準値とし、接触面積が基準値の所定倍になった場合に操作状態であると判断する方法を案出した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】川合悟・小林久幸・中村秀夫著 「指先の力発揮に伴う皮膚接触面積の変化」 帝塚山短期大学紀要 人文・社会科学編・自然科学編31 213_a-204_a,1994-03-01
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、指とスイッチ部との接触面積は、スイッチ部を操作する指の大きさ又は指のどの部分で操作するか等の触れ方によって大きく異なる。このため、指とスイッチ部との接触面積に基づいて、指の接触開始点を正確に特定することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、指の大きさ又は指の触れ方に影響されず、指の接触開始点の取得精度の向上を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の操作パネルは、パネル部材と、前記パネル部材に設けられ、使用者によって押圧操作されるスイッチ部と、使用者の指と前記スイッチ部との位置関係に応じて変化する静電容量を検出するセンサ部と、前記センサ部で検出した静電容量が入力される制御部と、を備え、前記制御部は、入力される静電容量の変化波形に現れる変曲点に基づいて使用者の指が前記スイッチ部に接触した接触開始点を決定し、前記接触開始点から静電容量が更に増加して所定値を超えた場合に前記スイッチ部が操作されている操作状態であると判定する。
【発明の効果】
【0008】
上記態様において、使用者の指とスイッチ部との位置関係に応じて変化する静電容量は、指がスイッチ部から離れている間は、指からスイッチ部までの距離に反比例して変化する。このため、指がスイッチ部に近づくに従って静電容量の増加率が大きくなる。
【0009】
一方、使用者の指とスイッチ部との位置関係に応じて変化する静電容量は、指がスイッチ部に接触している間は、指とスイッチ部との接触面積に比例して変化する。また、指とスイッチ部との接触面積は、スイッチ部を押す指の押圧力に比例して大きくなる。
【0010】
このため、センサ部から制御部に入力される静電容量の変化波形には、指がスイッチ部に近づくまで領域と、指がスイッチ部に接触してスイッチ部に押圧力を加える領域との間に変曲点が生ずる。
【0011】
そこで、制御部は、静電容量の変化波形に現れる変曲点に基づいて使用者の指がスイッチ部に接触した接触開始点を決定する。このため、操作する指の大きさ又は指の触れ方に影響されることなく、指の接触開始点の取得精度の向上が可能となる。
【0012】
そして、制御部は、操作する指の大きさ又は指の触れ方の影響を受けずに決定された接触開始点を基準とするとともに、この接触開始点から静電容量が更に増加して所定値を超えた場合にスイッチ部が操作されている操作状態であると判定する。このため、正確性に欠ける接触開始点の静電容量を基準値とし、この基準値からの静電容量の増加量に基づいてスイッチ部が操作されたと判定する場合と比較して、指の大きさや触れ方に関わらず、スイッチ部の操作を正確に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る操作パネルが適用される車両用内装部品の構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、タッチ位置センサの構成について説明する断面図である。
【
図4】
図4は、指でスイッチ部を操作する際の静電容量の変化と、一階微分波形と、二階微分波形とを示す図である。
【
図5】
図5は、スイッチ判定制御に関するフローチャートである。
【
図6】
図6は、変形例に係る操作パネルのスイッチ判定制御に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る操作パネル2、及び操作パネル2が適用される車両用内装部品としてのインストルメントパネル1について説明する。
【0015】
まず、
図1を参照して、インストルメントパネル1について説明する。
図1は、インストルメントパネル1の構成を示す斜視図である。
【0016】
図1に示すように、インストルメントパネル1は、操作パネル2を有する。インストルメントパネル1は、車両の車室内に設けられる。インストルメントパネル1は、運転席の正面を含む車室の前方に設けられる。インストルメントパネル1には、自動車の情報を示す計器類(図示省略)が配置される。
【0017】
次に、
図2から
図3を参照して、操作パネル2について説明する。
【0018】
図2は、操作パネル2の分解斜視図である。
図3は、タッチ位置センサ6の構成について説明する断面図である。
【0019】
図2に示すように、操作パネル2は、パネル部材3と、センサモジュール5と、本体部8と、を備える。
【0020】
パネル部材3は、少なくとも一部が曲面状である自由曲面状に形成される。パネル部材3は、車両の車室内に露出する。パネル部材3は、スイッチ部としてのスイッチ4を有する。
【0021】
スイッチ4は、パネル部材3の一部として設けられる。スイッチ4は、使用者によって押圧操作される。スイッチ4は、空調装置(エアコンディショナ)を操作するための第1スイッチ4a~第10スイッチ4jを有する。
【0022】
第1スイッチ4aと第2スイッチ4bと第9スイッチ4iと第10スイッチ4jとは、空調装置の温度を調節するためのスイッチである。第3スイッチ4cは、リアデフォッガのON/OFFを切り換えるためのスイッチである。第4スイッチ4dは、フロントデフロスタのON/OFFを切り換えるためのスイッチである。第5スイッチ4eと第6スイッチ4fとは、空調装置の風量を調節するためのスイッチである。第7スイッチ4gは、オートモードのON/OFFを切り換えるためのスイッチである。第8スイッチ4hは、内外気の切り換えをするためのスイッチである。
【0023】
図2に示すように、センサモジュール5は、センサシート5aと、タッチ位置センサ6と、を有する。
【0024】
図3に示すように、センサシート5aは、制御部としての基板部11(コントローラC)に接続される。センサシート5aは、タッチ位置センサ6と基板部11とを電気的に接続する。
【0025】
制御部を構成するコントローラCは、プロセッサとしてのCPUで構成される。コントローラCは、例えば基板部11に設けられたメモリ(図示省略)から読み出したプログラムに従って動作することで、後述するスイッチ判定制御を行う。
【0026】
タッチ位置センサ6は、パネル部材3の裏面に臨んで、センサシート5a上に設けられる。タッチ位置センサ6は、各スイッチ4に対応して設けられる。タッチ位置センサ6は、各スイッチ4に使用者の指Fが触れたことを検知する。即ち、第1~第10スイッチ4a~4jに対応する位置には、第1~第10タッチ位置センサ6a~6jが各々設けられる。
【0027】
図3に示すように、タッチ位置センサ6は、パネル部材3の裏面に、各スイッチ4に対応して設けられる。タッチ位置センサ6は、静電容量式近接センサである。タッチ位置センサ6は、センサシート5a上に配置された板状の電極40を有する。
【0028】
タッチ位置センサ6は、例えば10[ms]の周期で、静電容量(静電容量値)を測定する。タッチ位置センサ6は、使用者の指Fとスイッチ部であるスイッチ4との位置関係に応じて変化する静電容量を検出する。
【0029】
使用者の指Fがスイッチ4に近づくと、使用者の指Fからスイッチ4までの距離に応じてタッチ位置センサ6によって測定される静電容量が変化する。また、使用者の指Fがスイッチ4に接触した状態では、使用者の指Fの接触面積に応じてタッチ位置センサ6によって測定される静電容量が変化する。
【0030】
タッチ位置センサ6によって検出された静電容量は、コントローラC(基板部11)に電気信号として送信される。コントローラC(基板部11)は、タッチ位置センサ6から送信された電気信号に基づいて、使用者の指Fがどのスイッチ4に触れたかを判定する。
【0031】
図2に示すように、本体部8は、ベース部9と、照明部10と、基板部11と、ケース部12と、振動発生デバイスとしての一対のソレノイド13と、を有する。
【0032】
ベース部9は、車体に取り付けられる。ベース部9には、照明部10を埋め込むための複数の貫通孔が形成される。
【0033】
照明部10は、光を通す透明な部材である。照明部10は、第1~第10スイッチ4a~4jの各々に対応して複数設けられる。照明部10は、第1~第10スイッチ4a~4jを裏面から照射する光を透過させる。
【0034】
基板部11は、ベース部9とケース部12との間に設けられる。基板部11には、タッチ位置センサ6からの電気信号が入力される。基板部11は、コントローラCに、入力された電気信号に応じた電気信号を出力する。基板部11には、照明部10を各々照射する複数の発光部(図示省略)が実装される。発光部は、例えばLED(発光ダイオード)によって構成される。
【0035】
ケース部12は、ベース部9の裏側に挿入されるとともに、車体に取り付けられる。ケース部12は、ソレノイド13の一端を保持する。
【0036】
図2に示すように、ソレノイド13は、パネル部材3の裏面側に配置される。ソレノイド13は、スイッチ4が操作された際に、パネル部材3を振動させることによって、使用者の指Fに触感を発生させる。ソレノイド13は、コイル(図示省略)と可動鉄心(図示省略)と、を有する。
【0037】
ソレノイド13は、コイルに通電されると、可動鉄心をパネル部材3に向けて変位させる。一方、ソレノイド13は、コイルへの通電が停止されると、可動鉄心をパネル部材3から離間させる。これにより、ソレノイド13は、パネル部材3に振動を発生させる。
【0038】
ソレノイド13の一端はケース部12によって保持される。よって、可動鉄心の変位によって発生する振動を、パネル部材3に確実に伝達することができる。
【0039】
このように構成された操作パネル2では、使用者の指Fとスイッチ4との位置関係に応じて、タッチ位置センサ6によって測定される静電容量が変化する。コントローラCは、この静電容量の変化に基づき、スイッチ4が操作状態であるか、非操作状態であるかを判定する。
【0040】
次に、
図4を参照して、使用者の指F及びスイッチ4の位置関係と、タッチ位置センサ6で検出される静電容量との関係について説明する。
図4は、指Fでスイッチ部であるスイッチ4を操作する際の静電容量の変化と、一階微分波形60と、二階微分波形62とを示す図である。
【0041】
図4に示すように、タッチ位置センサ6で検出される静電容量は、次の(式1)で示される。
【0042】
静電容量=ε(S/d) ・・・ (式1)
【0043】
この(式1)において、εは、タッチ位置センサ6を覆うパネル部材3の誘電率を示す。Sは、使用者の指Fとパネル部材3のスイッチ4との接触面積を示す。dは、使用者の指Fからパネル部材3のスイッチ4に設けられたタッチ位置センサ6の電極40までの距離(以下:指Fからスイッチ4までの距離dとして説明する)を示す。
【0044】
指Fがスイッチ4から離れている状態において、静電容量は、指Fからスイッチ4までの距離dに反比例して変化する。このため、静電容量は、指Fがスイッチ4に近づくに従って大きくなるとともに増加率が増大する。
【0045】
一方、指Fがスイッチ4に接触した状態において、静電容量は、指Fとスイッチ4との接触面積Sに比例して変化する。指Fとスイッチ4との接触面積Sは、スイッチ4を押す力で指Fがつぶれることによって大きくなる。この接触面積Sは、スイッチ4を押す指Fの押圧力に比例して大きくなる。
【0046】
使用者が指Fでスイッチ4を押す動作において、時間的に変化する静電容量の変化波形50には、指Fがスイッチ4に接触する直前までの領域52と、スイッチ4に接触した指Fでスイッチ4に押圧力を加える領域54との間に変曲点56が生ずる。
【0047】
また、
図4には、変化波形50に対応する一階微分波形60と二階微分波形62とが示されている。一階微分波形60は、タッチ位置センサ6で検出される静電容量の変化量を時間で一階微分した値の変化を示す。二階微分波形62は、タッチ位置センサ6で検出される静電容量の変化量を時間で二階微分した値の変化を示す。
【0048】
一階微分波形60は、変化波形50の変曲点56において極大となり、変曲点56を境として減少に転じる。このため、タッチ位置センサ6で検出される静電容量の変化量を時間で一階微分した値が減少に転じた場合に変曲点56が現れたと判定することができる。
【0049】
また、二階微分波形62は、一階微分波形60の極大値又は極小値で「0」となる。このため、タッチ位置センサ6で検出される静電容量の変化量を時間で一階微分した値が正の値であって、静電容量の変化量を時間で二階微分した値が「0」以下の場合に変曲点56が現れたと判定することができる。
【0050】
ここで、変化波形50は、タッチ位置センサ6によって所定の周期(例えば10[ms]の周期)で測定された静電容量の測定値に基づいて求められる関数(式)で表される。この関数を得る際に用いられる手法としては、例えば、最小二乗法、測定値の平均化、又は差分スキームが挙げられる。
【0051】
次に、
図5に示すフローチャートを参照して、スイッチ4の操作状態の判定に係る制御(以下では、「スイッチ判定制御」ともいう。)について説明する。
図5は、スイッチ判定制御に関するフローチャートである。
【0052】
始めに、フローチャートで使用される記号について説明する。
【0053】
Tnは、タッチ位置センサ6によって所定の周期で測定された静電容量に基づいて演算されたDiff値である。
【0054】
Diff値は「Diff値=Rawcount値 - Baseline値」の関係を有する。
【0055】
Rawcount値は、タッチ位置センサ6から得られる静電容量(静電容量値)を示す。Rawcount値は、指Fがスイッチ4に接触して静電容量が増えるに従って大きくなる値である。Baseline値は、指Fがスイッチ4に接触していない場合のRawcount値の平均値を示す。Baseline値は、Diff値を取得するための基準値となる。
【0056】
Tnは、所定の周期(例えば10[ms]の周期)で変化する。フローチャートの各ステップに示されたTnは、当該ステップが実行される際に測定された静電容量に基づいて演算されたDiff値を示す。
【0057】
tnは、タッチ位置センサ6から静電容量を周期的に取得するサイクルタイミングを示す。Tn’は、Diff値Tnの変化量を時間で一階微分した値を示す。Tn”は、Diff値Tnの変化量を時間で二階微分した値を示す。
【0058】
次に、スイッチ判定制御について説明する。
【0059】
コントローラCは、メモリから読み込んだスイッチ判定プログラムに従って動作すると、メインルーチンからスイッチ判定制御処理を呼び出してスイッチ判定制御処理を実行する。
【0060】
スイッチ判定制御処理において、コントローラCは、Diff値Tnの変化量を時間で一階微分した値Tn’(tn)と、Diff値Tnの変化量を時間で二階微分した値Tn”(tn)とを演算する(ステップS10)。
【0061】
具体的に説明すると、コントローラCは、所定期間での時間(tn-tn-1)内に得られた静電容量の変化量{Tn(tn)-Tn(tn-1)}を、時間(tn-tn-1)で除算して、Diff値Tnの変化量を時間で一階微分した値Tn’(tn)を求める。
【0062】
また、コントローラCは、一階微分して得た値Tn’(tn)の変化量{Tn’(tn)-Tn’(tn-1)}を、時間(tn-tn-1)で除算して、Diff値Tnの変化量を時間で二階微分した値Tn”(tn)を求める。
【0063】
そして、コントローラCは、変化波形50を一階微分した値Tn’(tn)が「0」よりも大きいか否かを判断する(ステップS12)。ステップS12において、一階微分した値Tn’(tn)が「0」以下と判断した場合、コントローラCは、一階微分した値Tn’(tn)が「0」を超えるまでステップS10及びステップS12を繰り返す。なお、コントローラCは、この間も新たなTn,Tn’,Tn”を常に読み込んでいる。
【0064】
ステップS12において、一階微分して得た値Tn’(tn)が「0」を超えている場合、静電容量が増加しており、指Fがスイッチ4に近づいている。このため、コントローラCは、二階微分して得た値Tn”(tn)が「0」以下か否かを判断する(ステップS14)。
【0065】
ステップS14において、二階微分して得た値Tn”(tn)が「0」を超えている場合、コントローラCは、二階微分して得た値Tn”(tn)が「0」以下になるまで、ステップS10からステップS14を繰り返す。なお、この間も同様に、コントローラCは、新たなTn,Tn’,Tn”を常に読み込んでいる。
【0066】
ステップS14において、二階微分して得た値Tn”(tn)が「0」以下と判断した場合、二階微分波形62は「0」を通過しており、変化波形50に変曲点56が現れたと判定することができる。この変曲点56に基づいて指Fがスイッチ4に接触したと判断できるので、この点を接触開始点として決定する。
【0067】
このように、コントローラCは、変化波形50の値を示すDiff値Tnの時間的な変化から変曲点56を求め、この変曲点56に基づいて使用者の指Fがスイッチ4に接触した接触開始点を決定する。
【0068】
ここで、本実施形態では、二階微分して得た値Tn”(tn)と比較する比較値が「0」の場合について説明するが、本実施形態は、比較値を「0」に限定するものではない。例えば、二階微分して得た値Tn”(tn)と比較する比較値は、一定の幅を有するようにしてもよい。また、比較値は、「0」よりも正側又は負側に所定量ずらした値であってもよい。
【0069】
そして、コントローラCは、接触開始点の最新のDiff値Tnを基準値T1とし(ステップS16)、この基準値T1に所定係数αを乗算してオン閾値Tonを設定する(ステップS18)。基準値T1に乗算する所定係数αは、例えば、1.4が挙げられる。
【0070】
次に、コントローラCは、最新のDiff値Tnがオン閾値Tonを超えるまで待機する(ステップS20)。なお、この間も同様に、コントローラCは、新たなTn,Tn’,Tn”を常に読み込んでいる。ステップS20において、最新のDiff値Tnがオン閾値Tonを超えた場合、コントローラCは、スイッチ4が操作状態であると判定して(ステップS22)、メインルーチンに戻る。なお、スイッチ4が操作状態である旨は、例えばメモリに確保された操作状態フラグに記憶され、他のルーチンで利用される。
【0071】
これにより、コントローラCは、接触開始点から静電容量が更に増加して所定値であるオン閾値Tonを超えた場合、スイッチ4の押圧力が所定値を超えおり、スイッチ4が操作されている操作状態であると判定する。
【0072】
なお、本実施形態では、指Fでスイッチ4を押す際の押圧力が、一例として4.5Nに達した際に操作状態と判断している。
【0073】
ここで、指Fの腹、側面、又は指先のどの部位でスイッチ4を押した場合であっても、Diff値Tnが接触開始点のDiff値Tnの1.4倍以上になったとき、スイッチ4の押圧力が4.5N以上になることが知られている。このため、ステップS18において、基準値T1に乗算する所定係数αは、1.4以上とすることが望ましい。
【0074】
(作用及び効果)
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0075】
操作パネル2は、パネル部材3と、パネル部材3に設けられ、使用者によって押圧操作されるスイッチ部としてのスイッチ4と、を備える。操作パネル2は、使用者の指Fとスイッチ4との位置関係に応じて変化する静電容量を検出するセンサ部としてのタッチ位置センサ6と、タッチ位置センサ6で検出した静電容量(Diff値Tn)が入力される制御部としてのコントローラCと、を備える。コントローラCは、入力される静電容量(Diff値Tn)の変化波形50に現れる変曲点56に基づいて使用者の指Fがスイッチ4に接触した接触開始点を決定する。そして、コントローラCは、接触開始点から静電容量(Diff値Tn)が更に増加して所定値(オン閾値Ton)を超えた場合にスイッチ4が操作されている操作状態であると判定する。
【0076】
この構成の操作パネル2において、タッチ位置センサ6からコントローラCに入力される静電容量の変化波形50には、指Fがスイッチ4に近づくまで領域52と、指Fがスイッチ4に接触してスイッチ4に押圧力を加える領域54との間に変曲点56が生ずる。
【0077】
このため、コントローラCは、変化波形50の値を示すDiff値Tnの時間的な変化から変曲点56を求め、この変曲点56に基づいて使用者の指Fがスイッチ4に接触した接触開始点を決定する。これにより、操作する指Fの大きさ又は指Fの触れ方に影響されることなく、指Fの接触開始点の取得精度の向上が可能となる。
【0078】
また、コントローラCは、操作する指Fの大きさ又は指Fの触れ方の影響を受けることなく、決定された接触開始点の静電容量に応じたDiff値Tnを基準値とする。そして、コントローラCは、この基準値のDiff値Tnが更に増加して所定値としてのオン閾値Tonを超えた場合にスイッチ4が操作されている操作状態であると判定する。
【0079】
このため、正確性に欠ける接触開始点の静電容量を基準値とし、この基準値からの静電容量の増加量に基づいてスイッチ4が操作されたと判定する場合と比較して、指Fの大きさや触れ方に関わらず、スイッチ4の操作を正確に検出することが可能となる。
【0080】
操作パネル2において、制御部としてのコントローラCは、入力される静電容量(Diff値Tn)の変化量を時間で一階微分した値が正の値であって、変化量を時間で二階微分した値が「0」以下の場合に変曲点56が現れたと判定する。
【0081】
この構成によれば、静電容量(Diff値Tn)の変化量を時間で一階微分して得た値及び二階微分して得た値を用いることで、変化波形50に現れる変曲点56の特定が可能となる。これにより、コントローラCの演算処理による変曲点56の判定が容易となる。
【0082】
操作パネル2において、所定値としてのオン閾値Tonは、接触開始点で得られる静電容量に所定係数αを乗算することによって設定される。
【0083】
この構成によれば、所定値としてのオン閾値Tonを簡単に演算することができ、制御の負荷が大きくなることを抑制できる。
【0084】
また、スイッチ4の操作状態を判定するためのオン閾値Tonは、接触開始点で得られる静電容量(Diff値Tn)に基づいて算出される。これにより、指Fの大きさや触れ方によって変動し得る接触開始点の静電容量に基づいて、オン閾値Tonを定めることができるので、オン閾値Tonを固定値とする場合と比較して、指Fの大きさや触れ方に応じた適切なオン閾値Tonの設定が可能となる。
【0085】
なお、本実施形態では、静電容量の大きさに応じた最新のDiff値Tnに基づいてスイッチ4の操作状態を判定する場合について説明したが、本実施形態は、これに限定されるものでない。例えば、静電容量と相関関係があり、静電容量の大きさに応じて変化する指Fとスイッチ4との接触面積に基づいて操作状態を判定してもよい。
【0086】
具体的に説明すると、コントローラCは、前述のステップS16で取得した最新のDiff値Tnから使用者の指Fとスイッチ4との接触面積を演算し、演算した接触面積を基準値T1とする。なお、Diff値Tnから接触面積を求めるための演算式は、予め実験などによって求めるものとする。
【0087】
そして、コントローラCは、この基準値T1に所定係数αを乗算して所定閾値であるオン閾値Tonを設定する(ステップS18)。そして、コントローラCは、最新のDiff値Tnに基づいて演算した接触面積がオン閾値Tonを超えた場合に(ステップS20)、スイッチ4が操作状態であると判定する(ステップS22)。
【0088】
この操作パネル2において、制御部としてのコントローラCは、入力される静電容量から使用者の指Fとスイッチ部としてのスイッチ4との接触面積を演算する。そして、コントローラCは、接触面積が所定閾値としてのオン閾値Tonを超えた場合に静電容量(Diff値Tn)が所定値を超えたと判定する。
【0089】
このような構成においても、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【0090】
この操作パネル2において、所定閾値としてのオン閾値Tonは、接触開始点で得られる接触面積に所定係数αを乗算することによって設定される。
【0091】
この構成によれば、所定閾値としてのオン閾値Tonを簡単に演算することができ、制御の負荷が大きくなることを抑制できる。
【0092】
また、スイッチ4の操作状態を判定するためのオン閾値Tonは、接触開始点で得られる接触面積に基づいて算出される。これにより、指Fの大きさや触れ方によって変動し得る接触開始点の接触面積に基づいて、オン閾値Tonを定めることができるので、オン閾値Tonを固定値とする場合と比較して、指Fの大きさや触れ方に応じた適切なオン閾値Tonの設定が可能となる。
【0093】
<変形例>
図6は、変形例に係る操作パネルのスイッチ判定制御に関するフローチャートである。
【0094】
変形例に係る操作パネル2は、前述した実施形態と比較して、制御部であるコントローラCが実行するスイッチ判定制御処理が異なるので、ここでは前述したスイッチ判定制御処理と異なる部分を中心に説明する。
【0095】
コントローラCは、スイッチ判定制御処理を実行すると、入力される静電容量(Diff値Tn)の変化量を時間で一階微分した値Tn’(tn)を、前述と同様の方法で演算する(ステップSB10)。
【0096】
そして、コントローラCは、直近の一階微分して得た値Tn’(tn)からその直前に一階微分して得た値Tn’(tn-1)を減算した減算値が「0」よりも小さいか否かを判断する(ステップSB12)。ステップSB12において、減算値が「0」以上の場合、減算値が「0」よりも小さくなるまで、ステップSB10及びステップSB12を繰り返す。なお、この間も同様に、コントローラCは、新たなTn,Tn’,Tn”を常に読み込んでいる。
【0097】
ステップSB12において、減算値が「0」よりも小さい場合、一階微分して得た値が減少に転じており、変化波形50に変曲点56が現れたと判定することができる。この変曲点56に基づいて指Fがスイッチ4に接触したと判断できるので、この点を接触開始点として決定する。
【0098】
このように、コントローラCは、変化波形50の値を示すDiff値Tnの時間的な変化から変曲点56を求め、この変曲点56に基づいて使用者の指Fがスイッチ4に接触した接触開始点を決定する。
【0099】
そして、コントローラCは、接触開始点の最新のDiff値Tnを基準値T1とし(ステップB14)、この基準値T1に所定係数αを乗算してオン閾値Tonを設定する(ステップSB16)。
【0100】
次に、コントローラCは、最新のDiff値Tnがオン閾値Tonを超えるまで待機する(ステップSB18)。ステップSB18において、最新のDiff値Tnがオン閾値Tonを超えた場合、コントローラCは、スイッチ4が操作状態であると判定して(ステップSB20)、メインルーチンに戻る。これにより、コントローラCは、接触開始点から静電容量(Diff値Tn)が更に増加して所定値であるオン閾値Tonを超えた場合にスイッチ4が操作されている操作状態であると判定する。
【0101】
(作用及び効果)
操作パネル2において、制御部としてのコントローラCは、入力される静電容量(Diff値Tn)の変化量を時間で一階微分した値が減少に転じた場合に変曲点56が現れたと判定する。
【0102】
この構成によれば、入力される静電容量(Diff値Tn)の変化量を時間で一階微分した値を用いることで、変化波形50に変曲点56が現れたと判定することができ、指Fがスイッチ4に接触した接触開始点を特定することができる。
【0103】
このため、入力される静電容量(Diff値Tn)の変化量を時間で一階微分して得た値と二階微分して得た値とを用いて接触開始点を特定する場合と比較して、演算処理を簡素化するとともに、演算速度の向上が可能となる。
【0104】
なお、本実施形態では、静電容量の大きさに応じた最新のDiff値Tnに基づいてスイッチ4の操作状態を判定する場合について説明したが、本実施形態は、これに限定されるものでない。例えば、静電量と相関関係があり、静電容量の大きさに応じて変化する指Fとスイッチ4との接触面積に基づいて操作状態を判定してもよい。
【0105】
具体的に説明すると、コントローラCは、前述のステップSB14で取得した最新のDiff値Tnから使用者の指Fとスイッチ4との接触面積を演算し、演算した接触面積を基準値T1とする。なお、Diff値Tnから接触面積を求めるための演算式は、予め実験などによって求めるものとする。
【0106】
そして、コントローラCは、この基準値T1に所定係数αを乗算して所定閾値であるオン閾値Tonを設定する(ステップSB16)。
【0107】
次に、コントローラCは、最新のDiff値Tnから演算した接触面積がオン閾値Tonを超えた場合に(ステップSB18)、スイッチ4が操作状態であると判定する(ステップSB20)。
【0108】
この操作パネル2において、制御部としてのコントローラCは、入力される静電容量から使用者の指Fとスイッチ部としてのスイッチ4との接触面積を演算し、接触面積が所定閾値を超えた場合に静電容量が所定値を超えたと判定する。
【0109】
このような構成においても、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0111】
上記実施形態では、スイッチ4を空調装置の操作のためのスイッチとする例を示した。しかしながら、スイッチ4としては、カーオーディオの操作のためのスイッチとしてもよいし、その他の操作のためのスイッチとしてもよい。
【0112】
上記実施形態では、スイッチ4を10個設ける例を示した。しかしながら、スイッチ4の数は、この態様に限定されない。
【0113】
上記実施形態では、本発明をインストルメントパネル1に設けられた操作パネル2に適用する例を示した。しかしながら、本発明は、コンソールやアームレストに設けられた入力装置に適用できる。また、本発明は、各種装置に設けられた操作パネルに適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
2 操作パネル
3 パネル部材
4 スイッチ(スイッチ部)
6 タッチ位置センサ(センサ部)
11 基板部(コントローラC、制御部)
50 変化波形
56 変曲点
60 一階微分波形
62 二階微分波形
F 指