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  • 特開-複合仮撚糸及びそれを含む織編物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024786
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】複合仮撚糸及びそれを含む織編物
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/28 20060101AFI20240216BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20240216BHJP
   D03D 15/49 20210101ALI20240216BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20240216BHJP
   D03D 15/587 20210101ALI20240216BHJP
   D03D 15/44 20210101ALI20240216BHJP
   D03D 15/20 20210101ALI20240216BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
D02G3/28
D04B1/16
D03D15/49
D03D15/47
D03D15/587
D03D15/44
D03D15/20 100
D01F6/62 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127666
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 香太郎
【テーマコード(参考)】
4L002
4L035
4L036
4L048
【Fターム(参考)】
4L002AA07
4L002AB02
4L002AB04
4L002AB05
4L002AC00
4L002AC05
4L002AC06
4L002BA01
4L002DA01
4L002DA04
4L002EA00
4L002EA08
4L002FA01
4L035FF08
4L035JJ05
4L036MA05
4L036MA33
4L036MA37
4L036MA39
4L036PA14
4L036PA18
4L036PA42
4L036PA46
4L036UA01
4L036UA07
4L036UA12
4L048AA30
4L048AA34
4L048AA48
4L048AA49
4L048AA56
4L048AB07
4L048AB08
4L048AB09
4L048AB11
4L048AB18
4L048AB20
4L048AB21
4L048AC01
4L048AC06
4L048AC09
4L048AC10
4L048AC18
4L048BA01
4L048CA00
4L048CA15
4L048CA16
4L048DA01
4L048EB05
(57)【要約】
【課題】
混繊後も濃染部と淡染部がこなれず、織編物に用いて染色することでやわらかく、ソフトな表面感のある、優れた風合いと従来の仮撚糸では得られなかったグラデーション効果に優れたカスリ調外観を兼ね備えた複合仮撚糸及び織編物を提供する。
【解決手段】
少なくとも2本の熱可塑性マルチフィラメント糸条を含む、開繊部を有する複合仮撚糸であって、前記熱可塑性マルチフィラメント糸条の少なくとも1本は解撚部と非解撚部とを有し、前記複合仮撚糸における前記開繊部30個の長さが1mm以上25mm未満であるものが1個以上15個以下であり、25mm以上50mm未満であるものが1個以上15個以下であり、50mm以上であるものが1個以上10個以下である、複合仮撚糸およびそれを含む織編物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本の熱可塑性マルチフィラメント糸条を含む、開繊部を有する複合仮撚糸であって、前記熱可塑性マルチフィラメント糸条の少なくとも1本は解撚部と非解撚部とを有し、前記複合仮撚糸における前記開繊部30個の長さが1mm以上25mm未満であるものが1個以上15個以下であり、25mm以上50mm未満であるものが1個以上15個以下であり、50mm以上であるものが1個以上10個以下である、複合仮撚糸。
【請求項2】
前記解撚部と非解撚部とを有する熱可塑性マルチフィラメント糸条の少なくとも1本において、前記非解撚部の一部が融着している請求項1に記載の複合仮撚糸。
【請求項3】
前記非解撚部の長さが2~20mmである請求項1または2に記載の複合仮撚糸。
【請求項4】
前記熱可塑性マルチフィラメント糸条の少なくとも1本が、カチオン可染ポリエステルマルチフィラメント糸条である請求項1または2に記載の複合仮撚糸。
【請求項5】
前記熱可塑性マルチフィラメント糸条が酸化チタンを含み、前記酸化チタンの濃度が前記熱可塑性マルチフィラメント糸条に対し0.2~5.0質量%である、請求項1または2に記載の複合仮撚糸。
【請求項6】
0.1g/dtexの荷重下における交絡の個数が2個/m以上、45個/m以下であり、0.5g/dtexの荷重下における交絡の個数が30個/m以下である、請求項1または2に記載の複合仮撚糸。
【請求項7】
請求項1または2に記載の複合仮撚糸を含む織編物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合仮撚糸及びそれを含む織編物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複合仮撚糸は、衣料分野で幅広く用いられており、ソフトでシャリ感のある風合い、また自然調の杢外観に近づけるべく様々な提案がなされている。
【0003】
例えば、ポリエステル太細糸からなるマルチフィラメント糸を用い、部分融着仮撚加工によって、強撚糸様の風合いと淡い絣様の外観とを併せて具備するポリエステル部分融着仮撚加工糸の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、製編織して染色すれば、杢調柄効果と嵩高性及びシャリ感のあるスパン調風合を有する布帛となるポリエステル部分融着糸が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、ソフトな風合いやストレッチ性を損なわず、抗スナッギング性に優れた編地を提供するため、2種以上の仮撚捲縮加工糸で構成した、低トルク、インターレース加工糸が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-222743号公報
【特許文献2】特許平11-200167号公報
【特許文献3】特許第5155162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のポリエステル太細糸からなるマルチフィラメント糸を融着することにより、長手方向に非解撚部と解撚部が存在する特許文献1に記載のポリエステル部分融着仮撚加工糸は、バラツキがなく糸長に対する濃染部と淡染部とが均一かつ単調な外観となり、高度なグラデーション効果に優れたカスリ調外観を得ることができなかった。
【0008】
また、特許文献2に記載の、繊維軸方向に太細斑を有するマルチフィラメント捲縮糸は、太部と細部とが交互にランダムなピッチで形成し,融着部を有するが、濃染部と淡染部が単調な外観となり、高度なグラデーション効果に優れたカスリ調外観を得ることができなかった。
【0009】
本発明者らの知見によると、上記2つの例で外観が単調になるのは、いずれも1本のマルチフィラメント糸であることに起因していることがわかった。
【0010】
一方、2種以上の仮撚捲縮加工糸で構成され、インターレース加工を施された交絡糸である特許文献3の提案は、2種以上の糸であるため外観は複雑化するものの、2種の糸の交絡部と短い非交絡部が交互にほぼ同間隔で存在し、また複合後の糸長手方向に対する濃染部と淡染部との周期が短くなるため、交絡が集中する箇所では霜降り調の外観となり、高度なグラデーション効果に優れたカスリ調外観、麻調のシャリ感を得ることができなかった。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決しようとするものであって、麻調のシャリ感、やわらかく、ソフトな表面タッチ感のある、優れた風合いと、グラデーション効果に優れたカスリ調外観を兼ね備えた複合仮撚糸及びそれを含む織編物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討した結果、2本の熱可塑性マルチフィラメント糸条を、特定の開繊部の長さとすることで、優れた風合いと表面感を付与することができることを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明は上記課題を解決するために、次の構成を有する。
(1)少なくとも2本の熱可塑性マルチフィラメント糸条を含む、開繊部を有する複合仮撚糸であって、前記熱可塑性マルチフィラメント糸条の少なくとも1本は解撚部と非解撚部を有し、前記複合仮撚糸における前記開繊部30個の長さが1mm以上25mm未満であるものが1個以上15個以下であり、25mm以上50mm未満であるものが1個以上15個以下であり、50mm以上であるものが1個以上10個以下である、複合仮撚糸。
(2)前記解撚部と非解撚部とを有する熱可塑性マルチフィラメント糸条の少なくとも1本において、前記非解撚部の一部が融着している上記(1)に記載の複合仮撚糸。
(3)前記非解撚部の長さが2~20mmである上記(1)または(2)に記載の複合仮撚糸。
(4)前記熱可塑性マルチフィラメント糸条の少なくとも1本が、カチオン可染ポリエステルマルチフィラメント糸条である上記(1)~(3)のいずれかに記載の複合仮撚糸。
(5)前記熱可塑性マルチフィラメント糸条が酸化チタンを含み、前記酸化チタンの濃度が前記熱可塑性マルチフィラメント糸条に対し0.2~5.0質量%である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の複合仮撚糸。
(6)0.1g/dtexの荷重下における交絡の個数が2個/m以上、45個/m以下であり、0.5g/dtexの荷重下における交絡の個数が30個/m以下である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の複合仮撚糸。
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載の複合仮撚糸を含む織編物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シャリ感や、やわらかく、ソフトな表面タッチ感のある優れた風合いと、グラデーション効果に優れたカスリ調外観を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の複合仮撚糸の好ましい製造方法の一態様を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の複合仮撚糸は、少なくとも2本の熱可塑性マルチフィラメント糸条を含む。熱可塑性マルチフィラメント糸条またはそれ以外の糸を含む3本以上であってもよい。熱可塑性マルチフィラメント糸条としては、熱可塑性合成繊維が好ましい。熱可塑性マルチフィラメント糸条を構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイドなどのポリマーおよびそれらの共重合体の1種または複数の混合物が挙げられる。表面タッチのソフト感が向上する点で、共重合体を少なくとも一部に用いることは、本発明の好ましい態様である。
【0016】
本発明において少なくとも2本の熱可塑性マルチフィラメント糸条としては、上記のポリマーが同一のものであってもよいが、カスリ調外観を強調させるために、同一ポリマーであっても染色性の異なる熱可塑性マルチフィラメント糸条の複合加工糸の組み合わせが好ましく、異種ポリマーの組み合わせがより好ましい。また、熱可塑性マルチフィラメント糸条の少なくとも1本が、カチオン染料可染性マルチフィラメント糸条であることがさらに好ましい(以下「カチオン染料可染性」を「カチオン可染」と称する場合もある。また、実質的にカチオン染料に対する染色性を有しない「カチオン染料非可染性」を単に「カチオン非可染」と称する場合もある)。カチオン可染とすることで、カスリ調外観が得られやすくなることに加え、表面タッチのソフト感が向上するため好ましい。ここで染色性が異なるとは、少なくとも一種の繊維が染色可能な染色条件で染色したときに、繊維種間で色差が発現することをいう。また、カチオン染料可染性マルチフィラメント糸条とは、カチオン染料による染色が可能な糸条をいう。
【0017】
これらの熱可塑性マルチフィラメント糸条には、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。本発明においては、特に酸化チタンを含むことが、表面タッチ感の点で好ましい。酸化チタンの濃度は、それを含むマルチフィラメント糸条に対し0.2~5.0質量%であることが好ましく、0.2~3.0質量%であることがより好ましい。酸化チタン濃度の比率を0.2質量%以上とすることにより、糸表面の突起が増加し、生地にした際のタッチ感がより向上する。逆に、酸化チタン濃度の比率を5.0質量%以下とすることで、糸表面の突起を適度に制御し、ソフトな表面タッチ感を得られやすい。また、製糸性や製造工程においてガイド、ローラーの摩耗性等トラブルを抑制しやすい。
【0018】
繊維の横断面形状は、真円断面に加えて、扁平断面、三角形、四角形、六角形、八角形などの多角形断面、一部に凹凸部を持ったダルマ断面、Y型断面、星型断面等の様々な断面形状をとることができる。
【0019】
本発明で好ましく用いられるカチオン可染ポリエステルマルチフィラメント糸条を構成するポリマーとしては、特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレートにスルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分などを共重合した、共重合ポリエチレンテレフタレートなどのカチオン可染ポリエチレンテレフタレートを好ましく用いることができる。スルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分は通常用いられるものを使用してよい。具体的には、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジエチルエステル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジグリコールエステル、5-リチウムスルホイソフタル酸、5-リチウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル、5-リチウムスルホイソフタル酸ジエチルエステル、5-リチウムスルホイソフタル酸ジグリコールエステル等が挙げられ、これらの混合物であっても差し支えないが、染色性の改善効果と入手の容易さから5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジグリコールエステルが好ましい。
【0020】
本発明の複合仮撚糸は、少なくとも2本の熱可塑性マルチフィラメント糸条を含むが、少なくとも1本がカチオン可染ポリエステルマルチフィラメント糸条であることが好ましく、またそれがカチオン可染ポリエチレンテレフタレート糸条であることがより好ましい。また、カチオン可染ポリエステルマルチフィラメント糸条は、後述するように非解撚部の一部が融着していることが好ましい。少なくとも1本のカチオン非可染ポリエステルマルチフィラメント糸条と、少なくとも1本の解撚部と非解撚部を有し非解撚部の一部が融着しているカチオン可染ポリエステルマルチフィラメント糸条とを含むことにより、よりいっそうやわらかく、ソフトな表面タッチのある風合いと長い周期で濃染から淡染に色彩が変化し、より自然なグラデーション効果を兼ね備えた複合仮撚糸及びそれを含む織編物が得ることができ、本発明の好ましい態様である。
【0021】
本発明の複合仮撚糸は開繊部を有する。本発明において開繊部は、ある交絡とその隣の交絡との間の開繊した部分を意味し、開繊部の長さとは交絡間隔を測定することで得ることができる。一般に複合仮撚糸において交絡は一定間隔となる。しかし本発明の複合仮撚糸は、複合仮撚糸中の開繊部30個の長さ、すなわち交絡間隔を測定したとき、1mm以上25mm未満である開繊部が1個以上15個以下であり、25mm以上50mm未満である開繊部が1個以上15個以下であり、50mm以上である開繊部が1個以上10個以下である。このようにすることで染色等によりカスリ調外観を得ることができる。開繊部の長さが1mm以上25mm未満、25mm以上50mm未満、50mm以上のいずれかである開繊部の個数が1個未満であると、カスリ調外観は得られず、単調な外観となる。また、混繊性が低下し、織編物製造時の工程通過性の悪化や品質不良が懸念される。また、開繊部の長さが1mm以上25mm未満、25mm以上50mm未満の開繊部の個数が15個を超える場合、あるいは、開繊部の長さが50mm以上の開繊部の個数が10個を超えると、安定した工程通過性や品質が得られるが、霜降り調の外観となりカスリ調の外観が得られない。好ましい開繊部の個数は、開繊部の長さが1mm以上25mm未満である開繊部の個数が1個以上10個以下であり、かつ25mm以上50mm未満である開繊部の個数が1個以上10個以下であり、かつ50mm以上である開繊部の個数が1個以上10個以下である。複合仮撚糸中の開繊部30個の長さ測定については、以下のようにして求めることができる。まず、無作為に採取した加工糸の一端をクランプに固定し垂直に垂らし、1mの他端に初荷重(0.002g/dtex)をかけて2分間静置する。荷重が床についてしまった場合は、測定から除外する。目視にて交絡点を確認し交絡点の中心にマーカーでマークを付ける。隣り合う交絡点(マーク)で挟まれる領域を開繊部とし、交絡点間の長さを開繊部の長さとする。固定された一端から開繊部の個数(個)と、長さ(mm)を測定し、これを開繊部30個分行う。開繊部の長さを本発明の範囲とするための製造方法は特に限定されないが、例えば後述する製造方法が挙げられる。
【0022】
本発明の複合仮撚糸は、0.1g/dtexの荷重下における交絡の個数が2個/m以上、45個/m以下、かつ0.5g/dtexの荷重下における交絡の個数が30個/m以下であることが好ましい。0.1g/dtexの荷重下における交絡の個数が10個/m以上、30個/m以下であることがより好ましい。また、0.5g/dtexの荷重下における交絡の個数が20個/m以下であることがより好ましい。0.5g/dtexの荷重下における交絡の個数の下限は特に限定されず、0個/mでもよい。0.1g/dtexの荷重下における交絡数を2個/m以上とすることで混繊性が向上し、織編物製造時の工程通過性の向上や品質向上が期待できる。また、交絡個数を45個/m以下とすることで、安定した工程通過性や品質を保ちつつ、霜降り調の外観とは異なるカスリ調の外観が容易に得ることができる。一方、0.5g/dtexの荷重下における交絡の個数を30個/m以下とすることで、よりいっそうやわらかく、ソフトな表面タッチのある風合いと長い周期で濃染から淡染に色彩が変化し、より自然なグラデーション効果を兼ね備えた複合糸を得ることができる。本発明において交絡の個数は、実施例に記載の方法で求めることができる。上記のような軽度の交絡を有する複合仮撚糸は、本発明の効果をより顕著に発現するため、好ましい態様である。交絡が軽度であるため、ある程度の荷重をかけると、交絡がほどける部分が生じる。
【0023】
本発明の複合仮撚糸において、熱可塑性マルチフィラメント糸条の少なくとも1本は解撚部と非解撚部を有する。本発明でいう解撚部とは仮撚方向と反対方向の撚を有する部分(例えば、オーバー解撚部)であり、また非解撚部とは仮撚方向の撚を有する部分である。また、非解撚部を有する熱可塑性マルチフィラメント糸条の少なくとも1本において、非解撚部の一部が融着していることが好ましい。融着していることで、麻調のシャリ感が得られやすい。シャリ感と上記したカスリ調の外観とが相まって、より優れた素材とすることができる。融着している部分は、少なくとも1つの非解撚部に有することが好ましいが、非解撚部の個数で50%以上に融着を有することがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。また、複合仮撚糸において、少なくとも1本の熱可塑性マルチフィラメント糸条は非解撚部において融着しており、少なくとも1本の熱可塑性マルチフィラメント糸条は融着していない態様は、カスリ調外観が強調されやすく、本発明において好ましい態様である。特に、少なくとも1本が解撚部と非解撚部を有し、非解撚部の一部が融着しているカチオン可染ポリエステルマルチフィラメント糸条であることが好ましく、またそれがカチオン可染ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸条であることがより好ましい。さらに、少なくとも1本のカチオン非可染ポリエステルマルチフィラメント糸条、特にポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸条も含まれることが好ましい。
【0024】
本発明の複合仮撚糸において、非解撚部を有する熱可塑性マルチフィラメント糸条における非解撚部の長さは2~20mmであることが好ましい。非解撚部の長さが2mm以上であることで、特に優れたシャリ感が得られ、より好ましいグラデーション効果に優れたカスリ調外観を得ることができる。本発明において非解撚部測定については、以下のようにして求めることができる。染色、仕上げ加工を経た織編物の経方向または緯方向から複合仮撚糸30cmを1本採取し、複合仮撚糸の一端をクランプに固定し垂直に垂らし、他端に初荷重(0.002g/dtex)をかけて2分間静置する。荷重が床についてしまった場合は、測定から除外する。目視にて非解撚部を確認し、固定された一端から順に存在する非解撚部の長さ(mm)を測定し、非解撚部10個の長さを測定し平均長さを求める。解撚部と非解撚部を有する熱可塑性マルチフィラメント糸条が2本以上ある場合は、それぞれについて測定する。本発明においては、少なくとも1本の熱可塑性マルチフィラメント糸条において、上記範囲となることが好ましい。なお、製編織等を行う前の、いわゆる複合仮撚糸の前駆体を用いて評価することもできるが、その場合は、荷重をかけずに98℃の熱水で30分処理し、処理後の複合仮撚糸から30cmの試料1本を採取し、評価するものとする。複合仮撚糸が潜在捲縮性の繊維を含む場合、製編織、染色、仕上げ加工を経て織編物等に製品化される過程における熱処理で捲縮が顕在化し、製品としては、捲縮を有するので、これも捲縮形態のあるマルチフィラメント糸条として扱うことが適切である。従って、複合仮撚糸の場合は、模擬的に熱水による処理を行い、捲縮を顕在化させ、捲縮形態のあるマルチフィラメント糸条として評価する。
【0025】
本発明の複合仮撚糸は、染色されたときに比較的濃色に染色される濃染部と比較的淡色に染色される淡染部とが明瞭に表れる。また、織編物に用いることでやわらかく、ソフトな表面タッチ感のある、優れた風合いが得られる。結果として、グラデーション効果に優れたカスリ調外観を得ることができる。さらにカチオン可染マルチフィラメント糸条とカチオン非可染マルチフィラメント糸条のように染色性の異なる2種類以上の熱可塑性マルチフィラメント糸条を用いて複合仮撚糸とし、製編織し、染色すると、よりいっそうグラデーション効果に優れ、自然なカスリ調外観が得られるため、好ましい態様である。
【0026】
本発明の織編物は、本発明の複合仮撚糸を含む。本発明の複合仮撚糸を含む量は特に限定されないが、織編物の30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0027】
また、本発明の好ましい態様として、少なくとも1本の熱可塑性マルチフィラメント糸条が非解撚部を有し、その一部が融着している複合仮撚糸の織編物中に占める割合は、織編物全体のうち60質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、100質量%すなわち織地部を構成する経糸および/または緯糸の全て、あるいは編地部を構成する編糸の全てに用いることが、優れたグラデーション効果を発揮する点でさらに好ましい。所望の意匠性を得るために、適宜他の繊維と併用することもできる。
【0028】
上記織編物を構成する組織については特に限定されない。織物の場合、その組織は使用される用途によって平組織、綾組織、朱子組織やそれらの変化組織などいずれであっても構わない。編物の場合、その組織は使用される用途によって丸編地の天竺組織、インターロック組織、スムース組織、経編み地のハーフ組織、サテン組織、ジャカード組織やそれらの変化組織などいずれであっても構わない。
【0029】
本発明の織編物は減量加工等の風合い調整を目的とした加工、起毛加工やカレンダー加工などの物理加工、撥水加工や吸水加工、帯電防止加工などの機能加工、などを施すことができる。
【0030】
次に、本発明の複合仮撚糸の製造方法の一例について説明する。
【0031】
初めに、本発明の複合仮撚糸の好ましい製造方法の一態様を説明する概念図である図1を用いて説明する。まず、第一の原糸1はガイド3を通り、第一フィードローラー5で送り出され、第一ヒーター7を通り、第一仮撚具9を介して第三フィードローラー11との間で延伸仮撚熱セットを行う。第二の原糸2も同様に加工され、ガイド4を通り第二フィードローラー6で送り出され、第二ヒーター8を通り、第二仮撚具10を介して第四フィードローラー12との間で延伸仮撚熱セットを行う。加工した2本の糸条は仮撚処理が施された後、交絡ノズル13に供給され、交絡混繊処理が施された後、第五フィードローラー14によって複合仮撚糸15として送り出され、巻取りローラー16で巻き取られる。以下、個々の工程について詳述する。
【0032】
まず複合仮撚糸の原糸となる2本以上の熱可塑性マルチフィラメント高配向未延伸糸をそれぞれ加熱装置にて別々に延伸し、ついで延伸倍率1.1倍以上で仮撚加工と交絡混繊加工を一連で行なうことが好ましい。具体的にカチオン可染ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸条とカチオン染料に不染(非可染)性で分散染料に可染性のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸条を例にとって説明する。カチオン可染ポリエチレンテレフタレート高配向未延伸糸とポリエチレンテレフタレート高配向未延伸糸を、それぞれ加熱装置にて別々に延伸することが好ましい。ここでいう高配向未延伸糸とは、紡糸速度が2000~4500m/min、その複屈折率△nが0.015~0.080の範囲のレベルのものが好ましい。これらを別々に延伸することで、それぞれの糸質にあった延伸倍率を選択できるので、交絡間隔の制御が容易となり、本発明の複合仮撚糸の好ましい製造方法となる。また、延伸温度は、それぞれの糸条に応じて異ならせても良い。特に融着を形成させる場合、適した温度に調整できる。
【0033】
延伸仮撚加工の延伸倍率は、1.1倍以上1.9倍以下であることが好ましい。本発明において非開繊部の一部が融着している熱可塑性マルチフィラメント糸条とする場合、仮撚融着加工により得ることが好ましい。この場合の延伸倍率は、1.1倍以上1.6倍以下であることが好ましい。延伸倍率が1.1倍以上であることで糸速によらず加工が安定し、糸切れが抑制され好ましい。1.6倍以下であることで、延伸によって融着部が好ましい状態に保たれ、特に優れた麻調のシャリ感が得られるので好ましい。
【0034】
仮撚装置は、ピンタイプ、あるいは3軸外接摩擦タイプやベルトニップタイプなどいずれでも良いが、高速加工が可能な3軸外接摩擦タイプやベルトニップタイプが好ましい。また、2つの糸条を収束させるために交絡を付与することが必要である。
【0035】
延伸されたそれぞれの糸条は、ついで合糸する。合糸は仮撚部の前にローラーを用いて引き揃えてから行なっても良い。本発明の複合仮撚糸を製造する際、開繊部の長さ、すなわち交絡間隔を本発明の範囲に制御することが重要である。一般に交絡混繊方法としては、乱流ノズルを用いたタスラン混繊方法やインターレースノズルを用いたインターレース混繊方法が知られている。乱流ノズルを用いたタスラン混繊方法ではノズル内で乱流を発生させ過供給させ弛んだ糸条に個々に旋回力を与えるため、それぞれ近傍の糸条に絡み付き微細なループが生まれる。そのため、繊維軸方向に少なくとも2本の熱可塑性マルチフィラメント糸条を用いてタスラン混繊を行っても糸条全体が絡み合い、微細なループが生まれるため本発明で目的とするカスリ調外観を得ることは困難である。また、一般的なインターレースノズルを用いたインターレース混繊方法では、交絡部が単糸が絡まって収束するため、短い長さで一定間隔に交絡部が生まれるため、やはり本発明で目的とするカスリ調外観を得ることが困難である。通常、インターレースノズルは走行糸に対して垂直方向となる1方向から噴流を加えるので、走行糸はインターレースノズルを通過する時、弦振動的挙動を取る。糸が噴流を横切る時に糸は開繊し単糸がランダムに挙動するため、その両端で交絡が生じる。弦振動は一定の周期で振動するため開繊部と交絡部の長さは大きく変わらず短くなる。
【0036】
つまり、従来から一般に知られる混繊方法では、本発明で目的とするグラデーション効果に優れるカスリ調外観を得るのが困難になる。本発明においては、例えば走行糸に対して垂直方向に2方向から噴流を加えるノズル(以下、「特殊インターレースノズル」と称する場合がある)を用い、さらに糸条をノズル出口に送り出すと共に糸条の通行方向を変えるガイドによって、糸条が推進流体から抜ける際に供給され弛んだ糸の側面を流体がすり抜けて単糸を軽度に一部の交絡間隔を長く絡ませることで、本発明の複合仮撚糸を得ることができる。交絡間隔を長くすることで糸の浮き沈みが出来、カスリ調が得られやすくなる。交絡間隔が短いと、糸の長手方向で浮き沈みがなく、カスリ調が得られにくい。
【0037】
本発明の複合仮撚糸を製造する際において好ましく用いられる上記のような特殊インターレースノズルとしては、特に限定されないが、例えば日本ヘバライン株式会社製のKF-JET等を例示することができる。もちろん、上記のようなノズルに限定されるものではないが、一定の周期にならないように噴流を制御できるインターレースノズルであることが好ましい。
【0038】
一般にインターレース混繊方法は、噴射圧力を0.05~0.5MPとする。一方、本発明においては、少なくとも2本の熱可塑性マルチフィラメント糸条を混繊する際の特殊インターレースノズル噴流圧力を0.1MPa以上0.3MPa以下とすることが好ましい。0.1MPa以上とすることで、少なくとも2本の熱可塑性マルチフィラメント糸条の混繊性が向上して交絡が強くなり、得られる織編物の品位が向上する。0.3MPa以下とすることで、得られる織編物の杢感が細かくなる。より好ましい範囲は、0.15MPa以上0.25MPa以下である。
【0039】
また、少なくとも2本の熱可塑性マルチフィラメント糸条を混繊する際の各糸条と特殊インターレースノズル間のフィード率としては、0.5%以上4.0%以下が好ましい。0.5%以上とすることで、少なくとも2本の熱可塑性マルチフィラメント糸条の混繊性が向上して交絡が強くなり、得られる織編物の品位が向上する。4.0%以下とすることで、ノズル噴流に対してフィード率が高くなり、少なくとも2本の熱可塑性マルチフィラメント糸条がノズル前後で弛み、バタつきを減らして糸切れやノズル前後のガイドと擦過してノズル・ガイド汚れを抑制できる。より好ましい範囲は、0.8%以上3.0%以下である。
【0040】
複合仮撚糸の撚方向については、S方向、Z方向の何れでも良いが、織編物のシボ品位を向上させるためには、複合仮撚糸において、熱可塑性マルチフィラメント糸条の少なくとも1本をS方向、もう1本をZ方向とすることが好ましい。
【0041】
上記したように、複合仮撚糸の交絡の数を、0.1g/dtexの荷重下における交絡の個数が2個/m以上、45個/m以下であり、かつ0.5g/dtexの荷重下における交絡の個数が0個/m以上、30個/m以下であるように、交絡度を制御することが好ましい。なかでも0.1g/dtexの荷重下における交絡の個数が10個/m以上、30個/m以下であり、かつ0.5g/dtexの荷重下における交絡の個数が0個/m以上、20個/m以下であることが好ましい。このように交絡度を制御する方法としては、特殊インターレーズノズルを用いて、噴射圧力やフィード率を調整することが好ましい。
【実施例0042】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。また、本文中または実施例に記載の各物性値は以下の測定方法によるものである。
【0043】
[高配向未延伸糸、複合仮撚糸の繊度]
糸条を検尺機(円周1.125m)で80回巻取り輪状にし、天秤で小数点以下第4位まで重量を測定した。この作業を10回繰り返し、10回の重量の平均値をPとして次の式より糸条の繊度を算出した。
・糸条の繊度(dtex)=P×100×1.11。
【0044】
[複合仮撚糸の引張り強さ、伸び率]
JIS L1013化学繊維フィラメント糸試験方法(2010)に準じて測定した。
【0045】
つかみ間隔は200mm、引張り速度は200mm/分として、引張り試験機(株式会社島津製作所製)で荷重-伸長曲線を求め、破断時の荷重値を初期繊度で割り、それを引張強さとし、破断時の伸びを初期試料長で割り、伸び率とした。
【0046】
[熱水収縮率]
糸条を検尺機(円周1.125m)で10回巻取り輪状にし、1.11dtex当たり1/30gの荷重をかけて長さXを求め、続けてフリーの状態で沸騰水中に30分間浸漬した後自然乾燥し、再び1.11dtex当たり1/30gの荷重をかけて長さYを求め、次の式で算出した。熱可塑性マルチフィラメント糸条の繊度を測定する際は、両糸を混繊する前に別で巻取り、巻き取った糸を用いて測定を実施した。
・熱水収縮率(%)=〔(X-Y)/X〕×100。
【0047】
[複合仮撚糸の開繊部30個の長さ]
無作為に採取した複合仮撚糸の一端を床から1.2mの高さのクランプに固定し垂直に垂らし、1mの他端に初荷重(0.002g/dtex)をかけて2分間静置した。荷重が床についてしまった場合は、測定から除外した。目視にて交絡点を確認し交絡点の中心にマーカーでマークを付けた。固定された一端から開繊部の個数(個)と、交絡点間の長さ(mm)を測定し、開繊部30個の交絡間隔を測定した。この作業を10回繰り返し、10回の交絡間隔の平均個数を算出した。
【0048】
[非解撚部の長さ、融着の有無]
染色、仕上げ加工を経た織編物の経方向または緯方向から複合仮撚糸30cmを1本採取し、複合仮撚糸の一端をクランプに固定し垂直に垂らし、他端に初荷重(0.002g/dtex)をかけて2分間静置した。荷重が床についてしまった場合は、測定から除外した。複合仮撚糸に含まれる熱可塑性マルチフィラメント糸条について、目視にて非解撚部、融着部を確認し、固定された一端から順に存在する非解撚部の長さ(mm)を測定し、非解撚部10個の長さを測定し平均長さを求めた。解撚部と非解撚部を有する熱可塑性マルチフィラメント糸条が2本以上ある場合は、それぞれについて測定し平均値とした。なお、複合仮撚糸を用いて評価する場合は、荷重をかけずに98℃の熱水で30分処理し、処理後の複合仮撚糸から30cmの試料1本を採取し、評価するものとする。
【0049】
[杢感の程度]
布帛の杢感の程度について、目視によって熟練者10名により、次の3段階判定法で評価した。◎、○を合格とした。
◎:カスリ調の杢感を有しグラデーション効果が強い。
〇:カスリ調の杢感を有しグラデーション効果がある。
×:霜降り調の杢感を有しグラデーション効果が弱い。
【0050】
[風合い]
ソフト感の評価については、熟練者10名により、次の4段階判定法で評価した。◎、○を合格とした。
◎:手で触った際のソフト感を特に強く感じる風合い。
○:手で触った際のソフト感を感じる風合い。
△:手で触った際のソフト感を少し感じる風合い。
×:手で触った際のソフト感を感じない風合い。
【0051】
[実施例1]
紡糸速度2100m/minで製造した130デシテックス36フィラメントの5-ナトリウムイソフタル酸を2.0%モル共重合したポリエチレンテレフタレートのマルチフィラメント高配向未延伸糸(複屈折率Δn:0.018)(カチオン可染マルチフィラメント糸条)(原糸A)と、紡糸速度2500m/minで製造した130デシテックス36フィラメントのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント高配向未延伸糸(複屈折率Δn:0.036)(カチオン非可染マルチフィラメント糸条)(原糸B)とを用い、図1の製造工程に従って表1の条件で延伸仮撚加工を行い、各糸条(原糸A由来の糸条を糸条A、原糸B由来の糸条を糸条Bとする)に特殊インターレースノズル(日本ヘバライン株式会社製のKF-JET)で交絡混繊加工を施して、複合仮撚糸を得た。
【0052】
得られた複合仮撚糸の0.1g/dtexの荷重下の交絡の個数は42個/mであり、0.5g/dtexの荷重下の交絡の個数は24個/mとなった。開繊部30個において交絡間隔が1mm以上25mm未満である開繊部の個数が15個であり、かつ25mm以上50mm未満である開繊部の個数が10個であり、かつ50mm以上である開繊部の個数が5個となった。引張強さは2.03cN/dtex、伸び率は28.8%、総繊度は184.6dtex、熱水収縮率は4.8%、となった。得られた複合仮撚糸の糸条Aには非解撚部に融着を有するものであった。
【0053】
得られた複合仮撚糸を経糸および緯糸に用いて、経密度が82本/2.54cm、緯密度が72本/2.54cmとして平織物を作製し、次いで、得られた織物に、常法に従い液流リラックス処理を施し、続いて乾燥し中間セットを施した。中間セット条件は、温度170℃で実施した。その後、得られた織物を、カチオン染料である“カチロン”ブルーGRLH200%(日成化成株式会社製)を用いて、100℃の温度で30分間染色し、常法に従い仕上げセットを施した。仕上げセット条件は温度160℃で実施した。
【0054】
杢感を評価した結果、得られた平織物は、カスリ調の杢感を有し、グラデーション効果が強い表面感となり目的とする杢感が得られた。
【0055】
[実施例2]
紡糸速度2100m/minで製造した130デシテックス72フィラメントの5-ナトリウムイソフタル酸を2.0モル%共重合したポリエチレンテレフタレートのマルチフィラメント高配向未延伸糸(複屈折率Δn:0.017)(カチオン可染マルチフィラメント糸条)(原糸C)と、紡糸速度3300m/minで製造した90デシテックス48フィラメントのポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートのサイドバイドサイド複合繊維からなるマルチフィラメント高配向未延伸糸(複屈折率Δn:0.042)(原糸D)を用い、図1の製造工程に従って表1の条件で延伸仮撚加工を行い、各糸条(原糸C由来の糸条を糸条C、原糸D由来の糸条を糸条Dとする)に特殊インターレースノズル(日本ヘバライン株式会社製のKF-JET)で交絡混繊加工を施して、複合仮撚糸を得た。
【0056】
得られた複合仮撚糸の0.1g/dtexの荷重下の交絡個数は26個/mであり、0.5g/dtexの荷重下の交絡個数は12個/mとなった。開繊部30個において交絡間隔1mm以上25mm未満である開繊部が12個であり、かつ25mm以上50mm未満である開繊部が10個であり、かつ50mm以上である開繊部が8個となった。引張強さは2.02cN/dtex、伸び率は29.6%、総繊度は150.5dtex、熱水収縮率は4.3%となった。得られた複合仮撚糸の糸条Cは非解撚部に融着を有するものであった。
【0057】
得られた複合仮撚糸を混率100%で28Gの丸編機を用いてウエール42本/2.54cm、コース73本/2.54cmとして天竺組織の丸編地を作製した。
【0058】
次いで、得られた丸編地に、常法に従い液流リラックス処理を施し、続いて乾燥し中間セットを施した。中間セット条件は、温度170℃で実施した。その後、得られた丸編地を、カチオン染料“カチロン”ブルーGRLH200%(日成化成株式会社製)を用いて、100℃の温度で30分間染色し、常法に従い乾燥を施した。
【0059】
得られた丸編地はカスリ調の杢感を有し、グラデーション効果がある表面感となり目的とする杢感が得られた。
【0060】
[実施例3]
紡糸速度2100m/minで製造した90デシテックス36フィラメントの5-ナトリウムイソフタル酸を2.0%モル共重合したポリエチレンテレフタレートのマルチフィラメント高配向未延伸糸(複屈折率Δn:0.016)(カチオン可染マルチフィラメント糸条)(原糸E)と、実施例2で用いた原糸Dを用い、図1の製造工程に従って表1の条件で延伸仮撚加工を行い、各糸条(原糸E由来の糸条を糸条E、原糸D由来の糸条を糸条Dとする)に特殊インターレースノズル(日本ヘバライン株式会社製KF-JET)で交絡混繊加工を施して、複合仮撚糸を得た。
【0061】
得られた複合仮撚糸の0.1g/dtexの荷重下の交絡個数は13個/mであり、0.5g/dtexの荷重下の交絡個数は6個/mとなった。開繊部30個において交絡間隔1mm以上25mm未満である開繊部の個数が10個であり、かつ25mm以上50mm未満である開繊部の個数が10個であり、かつ50mm以上である開繊部の個数が10個となった。引張強さは2.06cN/dtex、伸び率は28.6%、総繊度は120.4dtex、熱水収縮率は5.0%となった。得られた複合仮撚糸の糸条Eは繊維軸方向に融着部を有するものであった。
【0062】
得られた複合仮撚糸を混率100%で28Gの丸編機を用いてウエール48本/2.54cm、コース75本/2.54cmとして天竺組織の丸編地を作製した。
【0063】
次いで、得られた丸編地に、常法に従い液流リラックス処理を施し、続いて乾燥し中間セットを施した。中間セット条件は、温度170℃で実施した。その後、得られた丸編地を、カチオン染料“カチロン”ブルーGRLH200%(日成化成株式会社製)を用いて、100℃の温度で30分間染色し、常法に従い乾燥を施した。
【0064】
得られた丸編地は、カスリ調の杢感を有し、グラデーション効果がある表面感となり目的とする杢感が得られた。
【0065】
[比較例1]
実施例1で用いた原糸Aと原糸Bを用い、図1の製造工程に従い、表1の条件で仮撚加工を行い、各糸条(原糸A由来の糸条を糸条A1、原糸B由来の糸条を糸条B1とする)に、インターレースノズルとして、糸条の走行方向に対し横方向となる一方向から空気の噴流を吹き付け、糸状が噴流を横切るタイプの通常の従来型インターレースノズルを用いて交絡混繊加工を施して、複合仮撚糸を得た。
【0066】
得られた複合仮撚糸の0.1g/dtexの荷重下の交絡個数は108個/mであり、0.5g/dtexの荷重下の交絡個数は100個/mとなった。開繊部30個において交絡間隔1mm以上25mm未満である開繊部が30個であり、かつ25mm以上50mm未満である開繊部が0個であり、かつ50mm以上である開繊部が0個となった。引張り強さは2.01cN/dtex、伸び率は28.4%、総繊度は183.6dtex、熱水収縮率は4.6%となった。得られた複合仮撚糸の糸条A1は非解撚部に融着部を有するものであった。
【0067】
得られた混繊糸を経糸および緯糸に用いて、経密度が82本/2.54cm、緯密度が72本/2.54cmとして平織物を作製し、実施例1と同様の条件で加工工程を通した。
【0068】
得られた平織物は、霜降り調の杢感を有しグラデーション効果が弱い表面感となり目的とする杢感が得られなかった。
【0069】
[比較例2]
実施例2で用いた原糸Cと原糸Dを用いて、図1の製造工程に従って表1の条件で延伸仮撚加工を行い、各糸条(原糸C由来の糸条を糸条C1、原糸D由来の糸条を糸条D1とする)に、比較例1で用いたのと同じインターレースノズルで交絡混繊加工を施して、複合仮撚糸を得た。
【0070】
得られた複合仮撚糸の0.1g/dtexの荷重下の交絡個数は104個/mであり、0.5g/dtexの荷重下の交絡個数は101個/mとなった。開繊部30個において交絡間隔1mm以上~25mm未満である開繊部の個数が30個であり、かつ25mm以上~50mm未満である開繊部の個数が0個であり、かつ50mm以上である開繊部の個数が0個となった。引張り強さは2.01cN/dtex、伸び率は29.9%、総繊度は150.4dtex、熱水収縮率は4.7%となった。得られた複合仮撚糸の糸条C1は非解撚部に融着部を有するものであった。
【0071】
得られた複合仮撚糸を混率100%で28Gの丸編機を用いてウエール42本/2.54cm、コース73本/2.54cmとして天竺組織の丸編地を作製し、実施例2と同様の条件で加工工程を通した。
【0072】
得られた丸編地は霜降り調の杢感を有しグラデーション効果が弱い表面感となり目的とする杢感が得られなかった。
【0073】
[比較例3]
実施例3で用いた原糸Eと、原糸Dを用いて、図1の製造工程に従って表1の条件で延伸仮撚加工を行い、各糸条(原糸E由来の糸条を糸条E1、原糸D由来の糸条を糸条D1とする)に、タスランノズルで混繊加工を施して、複合仮撚糸を得た。
【0074】
得られた複合仮撚糸は、タスランノズルにより、糸条全体が絡み合い、微細ループが形成されており、交絡個数、開繊部個数、交絡間隔の測定ができなかった。引張り強さは2.02cN/dtex、伸び率は28.1%、総繊度は120.1dtex、熱水収縮率は5.0%となった。得られた複合仮撚糸の糸条E1は非解撚部に融着部を有するものであった。
【0075】
得られた複合仮撚糸を混率100%で28Gの丸編機を用いてウエール48本/2.54cm、コース75本/2.54cmとして天竺組織の丸編地を作製し、実施例2と同様の条件で加工工程を通した。
【0076】
得られた編地糸はタスランノズルにより、糸条全体が絡み合い、微細ループが形成されており、交絡個数、開繊部個数、交絡間隔の測定ができなかった。得られた丸編地は、霜降り調の杢感を有しグラデーション効果が弱い表面感となり目的とする杢感が得られなかった。
【0077】
[比較例4]
実施例1で用いた原糸Aと原糸Bを用い、図1の製造工程に従って表1の条件で仮撚延伸加工を行い、各糸条(原糸A由来の糸条を糸条A2、原糸B由来の糸条を糸条B2とする)に特殊インターレースノズル(日本ヘバライン株式会社製、KF-JET)で交絡混繊加工を施して、SZ複合仮撚糸を得た。
【0078】
得られた複合仮撚糸の0.1g/dtexの荷重下の交絡個数は55個/mであり、0.5g/dtexの荷重下の交絡個数は38個/mとなった。開繊部30個において交絡間隔1mm以上25mm未満である開繊部の個数が23個であり、かつ25mm以上50mm未満である開繊部の個数が7個であり、かつ50mm以上である開繊部の個数が0個となった。引張り強さは2.05cN/dtex、伸び率は28.3%、総繊度は184.0dtex、熱水収縮率は4.6%となった。得られた複合仮撚糸の糸条A2は繊維軸方向に融着部を有するものであった。
【0079】
得られた複合仮撚糸を経糸および緯糸に用いて、経密度が82本/2.54cm、緯密度が72本/2.54cmとして平織物を作製し、実施例1と同様の条件で加工工程を通した。
【0080】
得られた平織物は、霜降り調の杢感を有しグラデーション効果が弱い表面感となり目的とする杢感が得られなかった。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【符号の説明】
【0083】
1:第一の原糸
2:第二の原糸
3:ガイド
4:ガイド
5:第一フィードローラー
6:第二フィードローラー
7:第一ヒーター
8:第二ヒーター
9:第一仮撚具
10:第二仮撚具
11:第三フィードローラー
12:第四フィードローラー
13:交絡ノズル
14:第五フィードローラー
15:複合仮撚糸
16:巻取ローラー
図1