(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024788
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】表皮材取付具
(51)【国際特許分類】
B68G 7/052 20060101AFI20240216BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B68G7/052 A
A47C31/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127670
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】南部 円香
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝欣
(72)【発明者】
【氏名】張 万里
(72)【発明者】
【氏名】湊 強志
(57)【要約】
【課題】係止部材との係合を確実に行いつつ、係止部材との係合状態を保持できる表皮材取付具を提供する。
【解決手段】表皮材取付具5は、クッション材2の溝21内に設置される基部51と、溝21の開口に向かって基部51に立設され、かつ、溝21の幅方向に互いに対向する第1支持部52Aおよび第2支持部52Bと、第1支持部52Aおよび第2支持部52Bのそれぞれから互いに近接する方向に突出し、係止部材4に係合する第1突片53Aおよび第2突片53Bと、溝21の開口側に向かって基部51に立設され、かつ、溝21の幅方向に互いに対向する第1フレーム部54Aおよび第2フレーム部54Bと、を備え、第1フレーム部54Aおよび第2フレーム部54Bのそれぞれは、係止部材4を第1突片53Aと第2突片53Bとの間の隙間に案内するガイド部544を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席のクッション材(2)に形成された溝(21)内に設置されると共に、表皮材(3)に取り付けられた係止部材(4)に係止される表皮材取付具(5)であり、
前記クッション材(2)の前記溝(21)内に設置される基部(51)と、
前記基部(51)から前記溝(21)の開口に向かって立設され、前記溝(21)の幅方向に互いに対向する第1支持部(52A)および第2支持部(52B)と、
前記第1支持部(52A)および前記第2支持部(52B)のそれぞれから互いに近接する方向に突出し、前記係止部材(4)に係合する第1突片(53A)および第2突片(53B)と、
前記基部(51)から前記溝(21)の開口側に向かって立設され、前記溝(21)の幅方向に互いに対向し、前記係止部材(4)を前記第1突片(53A)と前記第2突片(53B)との間の隙間(G)に案内する第1フレーム部(54A)および第2フレーム部(54B)と、を備え、
前記第1フレーム部(54A)および前記第2フレーム部(54B)のそれぞれは、前記溝の開口側から加わる荷重により、前記第1支持部(52A)および前記第2支持部(52B)から独立して弾性変形可能である、表皮材取付具。
【請求項2】
前記第1フレーム部(54A)および前記第2フレーム部(54B)のそれぞれは、
前記基部(51)に立設される一対の脚部(541)と、
前記一対の脚部(541)の各先端部を連結する連結部(542)と、を備える、請求項1に記載の表皮材取付具。
【請求項3】
前記第1支持部(52A)は、前記第1フレーム部(54A)における前記一対の脚部(541)の間に配置され、
前記第2支持部(52B)は、前記第2フレーム部(54B)における前記一対の脚部(541)の間に配置される、請求項2に記載の表皮材取付具。
【請求項4】
前記第1支持部(52A)は、前記第1フレーム部(54A)における前記一対の脚部(541)および前記連結部(542)のそれぞれとの間で連続する隙間(SA)を形成し、
前記第2支持部(52B)は、前記第2フレーム部(54B)における前記一対の脚部(541)および前記連結部(542)のそれぞれとの間で連続する隙間(SB)を形成する、請求項2または請求項3に記載の表皮材取付具。
【請求項5】
前記第1フレーム部(54A)および前記第2フレーム部(54B)における前記一対の脚部(541)のそれぞれは、互いに対向する側および前記溝(21)の開口側に面するように、前記溝(21)の深さ方向に対して傾斜するガイド面(544P)を有する、請求項2に記載の表皮材取付具。
【請求項6】
前記第1突片(53A)は、無荷重状態の前記第1フレーム部(54A)の前記ガイド面(544P)と同一平面上に配置される補助ガイド面(53P)を有し、
前記第2突片(53B)は、無荷重状態の前記第2フレーム部(54B)の前記ガイド面(544P)と同一平面上に配置される補助ガイド面(53P)を有する、請求項5に記載の表皮材取付具。
【請求項7】
前記第1支持部(52A)は、無荷重状態の前記第1フレーム部(54A)の前記ガイド面(544P)と同一平面上に配置される中間ガイド部(522)を有し、
前記第2支持部(52B)は、無荷重状態の前記第2フレーム部(54B)の前記ガイド面(544P)と同一平面上に配置される中間ガイド部(522)を有する、請求項5または請求項6に記載の表皮材取付具。
【請求項8】
前記第1フレーム部(54A)および前記第2フレーム部(54B)のそれぞれは、
前記基部(51)から延びる立ち上がり部(543)と、
前記立ち上がり部(543)から前記溝(21)の深さ方向に対して傾斜する方向に延び、前記係止部材(4)を前記隙間(G)に案内するガイド部(544)と、
前記ガイド部(544)から前記溝(21)の幅方向外側に向かって延び、前記クッション材(2)に固定される固定部(545)と、を有する、請求項1に記載の表皮材取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮材をクッション材に取り付ける表皮材取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、座席や椅子などでは、座面や背当てなど人体に触れる部分にクッション材を設置し、その表面を表皮材で被覆したものが多用されており、表皮材をクッション材に取り付ける手段としての表皮材取付具が知られている。
例えば、特許文献1の表皮材取付具(クリップ)は、クッション材の溝に設置されており、表皮材に取り付けられた係止部材(サスペンダー)に係合することで、表皮材をクッション材に取り付けることができる。この表皮材取付具は、互いに対向する一対の突片を備えており、係止部材は、当該一対の突片の間に挿入されることで表皮材取付具に係合される。また、一対の突片のそれぞれは、係止部材を案内するガイド面を有しているため、係止部材の傾きや位置ずれが生じても係止部材を一対の突片の間に挿入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の表皮材取付具では、座席の使用時など、座面からクッション材に押圧が加わった場合、当該押圧が一対の突片における各ガイド面に伝わることで、表皮材取付具が弾性変形し、一対の突片の間の隙間が広がることがある。これにより、特許文献1の表皮材取付具では、係止部材との係合状態が解除され易いという問題がある。
【0005】
本発明は、係止部材との係合を確実に行いつつ、係止部材との係合状態を保持できる表皮材取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1態様)
本発明の第1態様に係る表皮材取付具は、座席のクッション材に形成された溝内に設置されると共に、表皮材に取り付けられた係止部材に係止される表皮材取付具であり、前記クッション材の前記溝内に設置される基部と、前記基部から前記溝の開口に向かって立設され、前記溝の幅方向に互いに対向する第1支持部および第2支持部と、前記第1支持部および前記第2支持部のそれぞれから互いに近接する方向に突出し、前記係止部材に係合する第1突片および第2突片と、前記基部から前記溝の開口側に向かって立設され、前記溝の幅方向に互いに対向し、前記係止部材を前記第1突片と前記第2突片との間の隙間に案内する第1フレーム部および第2フレーム部と、を備え、前記第1フレーム部および前記第2フレーム部のそれぞれは、前記溝の開口側から加わる荷重により、前記第1支持部および前記第2支持部から独立して弾性変形可能である。
このような構成では、第1フレーム部および第2フレーム部が係止部材を第1突片と第2突片との間の隙間に案内することができる。その結果、表皮材取付具と係止部材との係合を確実に行うことができる。
また、第1フレーム部および第2フレーム部のそれぞれは、第1突片を支持する第1支持部と、第2突片を支持する第2支持部とに対して、独立的に弾性変形可能である。このため、座席の使用時など、座面からクッション材に加わった押圧が第1フレーム部または第2フレーム部に伝わった場合には、第1支持部および第2支持部が弾性変形せず、第1フレーム部および第2フレーム部が弾性変形する。よって、第1支持部に設けられた第1突片と第2支持部に設けられた第2突片との間の隙間が広がることを抑制できる。その結果、表皮材取付具と係止部材との係合状態を保持できる。
【0007】
(第2態様)
本発明の第1態様に係る表皮材取付具において、前記第1フレーム部および前記第2フレーム部のそれぞれは、前記基部に立設される一対の脚部と、前記一対の脚部の各先端部を連結する連結部と、を備え、前記連結部は、前記ガイド部を形成することが好ましい。
このような構成では、第1フレーム部および第2フレーム部と、第1支持部および第2支持部とを、互いに干渉しないように近接配置できる。これにより、表皮材取付具の幅を抑制できる。
【0008】
(第3態様)
本発明の第2態様に係る表皮材取付具において、前記第1支持部は、前記第1フレーム部における前記一対の脚部の間に配置され、前記第2支持部は、前記第2フレーム部における前記一対の脚部の間に配置されることが好ましい。
このような構成では、表皮材取付具の幅をより好適に抑制できる。
【0009】
(第4態様)
本発明の第2態様または第3態様に係る表皮材取付具において、前記第1支持部は、前記第1フレーム部における前記一対の脚部および前記連結部のそれぞれとの間で連続する隙間を形成し、前記第2支持部は、前記第2フレーム部における前記一対の脚部および前記連結部のそれぞれとの間で連続する隙間を形成することが好ましい。
このような構成によれば、第1フレーム部および第2フレーム部は、より好適に独立して弾性変形可能である。
【0010】
(第5態様)
本発明の第1態様から第4態様のいずれかに係る表皮材取付具において、前記第1フレーム部および前記第2フレーム部における前記一対の脚部のそれぞれは、互いに対向する側および前記溝の開口側に面するように、前記溝の深さ方向に対して傾斜しているガイド面を有することが好ましい。
このような構成では、係止部材をクッション材の溝に挿入する際、係止部材を第1突片と第2突片との間の隙間に好適に案内することができる。
【0011】
(第6態様)
本発明の第5態様に係る表皮材取付具において、前記第1突片は、無荷重状態の前記第1フレーム部の前記ガイド面と同一平面上に配置される補助ガイド面を有し、前記第2突片は、無荷重状態の前記第2フレーム部の前記ガイド面と同一平面上に配置される補助ガイド面を有することが好ましい。
このような構成では、係止部材をクッション材の溝に挿入する際、係止部材を第1突片と第2突片との間の隙間に好適に案内することができる。
なお、「無荷重状態」とは、クッション材に対する外部の荷重(例えば着座者の荷重)が加わらない状態であればよい。
【0012】
(第7態様)
本発明の第5態様または第6態様に係る表皮材取付具において、前記第1支持部は、無荷重状態の前記第1フレーム部の前記ガイド面と同一平面上に配置される中間ガイド部を有し、前記第2支持部は、無荷重状態の前記第2フレーム部の前記ガイド面と同一平面上に配置される中間ガイド部を有することが好ましい。
このような構成では、係止部材をクッション材の溝に挿入する際、係止部材を第1突片と第2突片との間の隙間に好適に案内することができる。
【0013】
(第8態様)
本発明の第1態様から第7態様のいずれかに係る表皮材取付具において、前記第1フレーム部および前記第2フレーム部のそれぞれは、前記基部から延びる立ち上がり部と、前記立ち上がり部から前記溝の深さ方向に対して傾斜する方向に延び、前記係止部材を前記隙間に案内するガイド部と、前記ガイド部から前記溝の幅方向外側に向かって延び、前記クッション材に固定される固定部と、を有することが好ましい。
このような構成では、クッション材に対する固定強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表皮材取付具をクッション材に設置した状態を示す断面図。
【
図5】前記実施形態の表皮材取付具を用いた表皮材取付方法を説明する図であって、表皮材取付具に挿入する前の係止部材の様子を示す図。
【
図6】前記実施形態の表皮材取付具を用いた表皮材取付方法を説明する図であって、係止部材が表皮材取付具に挿入される様子を示す図。
【
図7】前記実施形態の表皮材取付具の動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る表皮材取付具5は、車両用座席などを構成するクッション材2に対して表皮材3を取り付ける表皮材取付構造1を構成する。すなわち、表皮材取付構造1は、表皮材3に取り付けられる係止部材4と、クッション材2の溝21に設置される表皮材取付具5とによって構成され、係止部材4を表皮材取付具5に係止させることにより、表皮材3をクッション材2に取り付けることができる。
【0016】
クッション材2は、座席の形状に成形された発泡ポリウレタン等の合成樹脂ウレタンフォーム材である。クッション材2には、表皮材取付構造1が配置される溝21が形成されている。溝21は、互いに対向する第1側壁面211および第2側壁面212を有しており、クッション材2の上下方向の一方側に開口を形成しつつ、クッション材2の表面の任意の方向に沿って延びている。
表皮材3は、クッション材2の表面を覆うシートであり、例えば合成樹脂織物シートである。表皮材3の端縁部31は、係止部材4に対して取り付けられる。
【0017】
以下、表皮材取付構造1の構成の説明では、係止部材4が表皮材取付具5に係止された状態を基準としてXYZの3軸方向を用いる(
図1参照)。例えば、表皮材取付構造1の長さ方向をX方向とし、表皮材取付構造1の左右方向をY方向とし、表皮材取付構造1の上下方向をZ方向とする。なお、表皮材取付構造1により表皮材3がクッション材2に設置された状態(
図1参照)では、X方向がクッション材2の溝21の長さ方向に対応し、Y方向が溝21の幅方向に対応し、Z方向が溝21の深さ方向に対応する。また、説明の便宜上、Z方向の一方側(上方)に向かう方向を+Z方向とし、Z方向の他方側(下方)に向かう方向を-Z方向とし、溝21は、クッション材2において+Z方向に開口するものとする。
【0018】
係止部材4は、表皮材3の端縁部31に吊り下げられるいわゆるサスペンダーである。具体的には、係止部材4は、表皮材3の端縁部31が取り付けられる取付部41と、取付部41の-Z側の先端に設けられた挿入部42と、を備える。
【0019】
取付部41は、挿入部42と一体成形された樹脂などであってもよいし、挿入部42に対してインサート成形された不織布等のテープ部材などであってもよい。この取付部41は、表皮材3に対して縫製などの手段により取り付けられる。
【0020】
挿入部42は、例えばポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂による成形品であり、取付部41から-Z側に突出する錨形状を有している。この挿入部42は、+Z方向を向く一対の被係合面421と、-Z方向を向く一対の傾斜面422とを有する。一対の被係合面421は、取付部41からY方向の両側に延びている。一対の傾斜面422は、-Z方向に向かうほど挿入部42のY方向寸法が小さくなるように、Z方向に対して傾斜している。
【0021】
なお、係止部材4は、X方向に沿って連続形成されており、係止部材4のX方向における長さ寸法は適宜設定される。例えば、係止部材4のX方向寸法は、後述する表皮材取付具5のX方向寸法よりも長いことが好ましい。
【0022】
表皮材取付具5は、例えばポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂による成形品である。この表皮材取付具5の構成について、
図1~
図4を参照して説明する。
表皮材取付具5は、
図2に示すように、基部51と、+Z側に向かって基部51に立設され、Y方向に対向する第1支持部52Aおよび第2支持部52Bと、第1支持部52Aおよび第2支持部52Bのそれぞれから互いに近接する方向(Y方向内側)に突出する第1突片53Aおよび第2突片53Bと、+Z側に向かって基部51に立設され、Y方向に対向する第1フレーム部54Aおよび第2フレーム部54Bと、を備える。
【0023】
なお、本実施形態の表皮材取付具5は、Y方向中心におけるXZ面に対して対称な形状を有する。以下の表皮材取付具5の説明では、第1支持部52Aおよび第2支持部52Bを支持部52A,52Bと称し、第1突片53Aおよび第2突片53Bを突片53A,53Bと称し、第1フレーム部54Aおよび第2フレーム部54Bをフレーム部54A,54Bと称する場合がある。
また、
図4は、表皮材取付具5のY方向一方側の構成(第1支持部52A、第1突片53A、第1フレーム部54A)を示すものであるが、表皮材取付具5のY方向他方側の構成(第2支持部52B、第2突片53B、第2フレーム部54B)も同様に示される。
【0024】
基部51は、例えばプレート形状を有している。なお、本実施形態では、基部51は、クッション材2の溝21の底部に単に載置されている。ただし、基部51は、溝21の幅方向よりもY方向に長く延設されることで、クッション材2に埋設されてもよい。
【0025】
支持部52A,52Bのそれぞれは、
図2,
図4に示すように、互いの間にY方向の隙間を挟んで基部51に立設される一対の脚部521と、一対の脚部521の各先端部を連結する中間ガイド部522と、を備える。
ここで、支持部52A,52Bのそれぞれにおいて、一対の脚部521におけるZ方向の任意の位置(例えば突片53A,53Bの間の隙間Gよりも+Z側)には、X方向に沿った折り曲がり部52Fが形成されている。支持部52A,52Bは、折り曲がり部52FでY方向外側に向かうように折れ曲がっている。これにより、支持部52A,52Bの各中間ガイド部522は、Y方向内側および+Z側に面する中間ガイド面522Pを有する。
【0026】
第1突片53Aは、第1支持部52Aの中間ガイド部522から+Y方向に突出しており、第2突片53Bは、第2支持部52Bの中間ガイド部522から-Y方向に突出している。これら突片53A,53Bは、互いの間にY方向の隙間Gを挟んでいる。また、突片53A,53Bは、Y方向内側および+Z側に面する補助ガイド面53Pを有する。
【0027】
フレーム部54A,54Bのそれぞれは、
図2,
図4に示すように、互いの間にY方向の隙間を挟んで基部51に立設される一対の脚部541と、一対の脚部541の各先端部を連結する連結部542と、を備える。また、フレーム部54A,54Bのそれぞれには、一対の脚部541および連結部542に囲われる内側空間が形成される。
【0028】
第1フレーム部54Aの一対の脚部541の間(すなわち第1フレーム部54Aの内側空間)には、第1支持部52Aが配置される。これにより、第1支持部52Aは、第1フレーム部54Aにおける一対の脚部541および連結部542のそれぞれとの間で連続する隙間SAを形成する。第1フレーム部54Aは、第1支持部52Aとの間に形成される隙間SAにより、第1支持部52Aとは独立してY方向の弾性変形可能である。
【0029】
同様に、第2フレーム部54Bの一対の脚部541の間(すなわち第2フレーム部54Bの内側空間)には、第2支持部52Bが配置される。これにより、第2支持部52Bは、第2フレーム部54Bにおける一対の脚部541および連結部542のそれぞれとの間で連続する隙間SBを形成する。第2フレーム部54Bは、第2支持部52Bとの間に形成される隙間SBにより、第2支持部52Bとは独立してY方向の弾性変形可能である。
【0030】
ここで、フレーム部54A,54Bのそれぞれにおいて、一対の脚部541におけるZ方向の任意の位置(例えば突片53A,53Bの間の隙間Gよりも+Z側であって、折り曲がり部52Fと同位置)には、X方向に沿った折り曲がり部541Fが形成されている。また、連結部542における任意位置には、X方向に沿った折り曲がり部542Fが形成されている。
【0031】
フレーム部54A,54Bは、2か所の折り曲がり部541F,542FでY方向外側に向かうように折れ曲がっている。これにより、フレーム部54A,54Bのうち、折り曲がり部541Fよりも-Z側の部分は、基部51から+Z方向に延びる立ち上がり部543を構成し、2か所の折り曲がり部541F,542Fの間の部分は、Z方向に対して傾斜しているガイド部544を構成し、折り曲がり部542FよりもY方向外側の部分は、XY面に沿って配置される固定部545を構成する。
【0032】
ガイド部544は、突片53A,53Bの間の隙間Gよりも+Z側に配置される。また、ガイド部544は、Y方向内側および+Z側に面するガイド面544Pを有する。なお、本実施形態において、第1フレーム部54Aのガイド面544Pは、第1フレーム部54Aの一対の脚部541の+Z側の一部領域から連結部542のY方向内側の一部領域にかけて形成されている。同様に、第2フレーム部54Bのガイド面544Pは、第2フレーム部54Bの一対の脚部541の+Z側の一部領域から連結部542のY方向内側の一部領域にかけて形成されている。
固定部545は、クッション材2の第1側壁面211または第2側壁面212に差し込まれた状態に配置され、クッション材2に固定される。また、固定部545のうち、-Z側に面する裏面には、
図3に示すように、クッション材2との密着度を向上させるための複数の凸部546が設けられている。
【0033】
以上に説明した表皮材取付具5は、係止部材4を案内する面として、フレーム部54A,54Bのガイド面544P、支持部52A,52Bの中間ガイド面522P、および、突片53A,53Bの補助ガイド面53Pを有する。
【0034】
具体的には、第1支持部52Aの中間ガイド面522Pは、第1フレーム部54Aのガイド面544Pと第1突片53Aの補助ガイド面53Pとの間に配置されている。また、ガイド面544Pおよび中間ガイド面522Pは、補助ガイド面53Pよりも+Z側に配置されている。第1フレーム部54Aのガイド面544P、第1支持部52Aの中間ガイド面522P、および、第1突片53Aの補助ガイド面53Pは、互いに同一平面上に配置されている。
【0035】
同様に、第2支持部52Bの中間ガイド面522Pは、第2フレーム部54Bのガイド面544Pと第2突片53Bの補助ガイド面53Pとの間に配置されている。また、ガイド面544Pおよび中間ガイド面522Pは、補助ガイド面53Pよりも+Z側に配置されている。第2フレーム部54Bのガイド面544P、第2支持部52Bの中間ガイド面522P、および、第2突片53Bの補助ガイド面53Pは、互いに同一平面上に配置されている。
【0036】
(表皮材取付方法)
本実施形態の表皮材取付具5を用いた表皮材3の取り付け方法について、
図5,
図6をさらに参照して説明する。なお、
図5,
図6では、図の簡略化のため、表皮材3の図示を省略し、クッション材2の溝21の基本的な輪郭を2点鎖線で示している。
【0037】
まず、作業者は、表皮材3が装着された係止部材4と、溝21内に表皮材取付具5が設置されたクッション材2とを準備し、クッション材2を覆うように表皮材3を配置する。そして、任意の押圧手段により、係止部材4をクッション材2の溝21に挿入し、この係止部材4に対して-Z方向の押圧を加える。
【0038】
係止部材4が溝21に挿入される際、
図5に示すように、係止部材4の姿勢がZ方向に対して傾いたり、係止部材4の位置が表皮材取付具5のY方向中心から位置ずれしたりすることがある。このような場合、係止部材4の挿入部42が、表皮材取付具5における各ガイド面(すなわち、フレーム部54A,54Bのガイド面544P、支持部52A,52Bの中間ガイド面522P、および、突片53A,53Bの補助ガイド面53P)のいずれか1以上に押し当ることで、表皮材取付具5のY方向中心、すなわち突片53A,53B間の隙間Gに向かって案内される。これにより、係止部材4の挿入部42は、表皮材取付具5の突片53A,53B間の隙間Gに挿入される。
【0039】
係止部材4の挿入部42が表皮材取付具5の突片53A,53B間の隙間Gに挿入される際、
図6に示すように、挿入部42の各傾斜面422が突片53A,53Bに押し当ることで、支持部52A,52BがY方向外側に弾性変形し、突片53A,53B間の隙間が広がる。挿入部42が突片53A,53Bを乗り越えると、
図1に示すように、支持部52A,52Bが元の形状に戻り、挿入部42の各被係合面421が突片53A,53Bに係合する。これにより、係止部材4は、表皮材取付具5に保持される。
以上により、表皮材取付具5は、表皮材3をクッション材2に取り付けることができる。
【0040】
(本実施形態の効果)
本実施形態における表皮材取付具5は、上述したように、フレーム部54A,54Bが係止部材4を突片53A,53Bの間の隙間Gに案内することができる。その結果、本実施形態における表皮材取付具5は、係止部材4との係合を確実に行うことができる。
また、フレーム部54A,54Bは、突片53A,53Bを支持する支持部52A,52Bとは独立的に弾性変形可能である。このため、
図7に示すように、座席の使用時など、座面からクッション材2に加わった押圧Fが各ガイド面544Pに伝わった場合、支持部52A,52Bは弾性変形せず、フレーム部54A,54Bが弾性変形する。よって、支持部52A,52Bに設けられた突片53A,53Bの間の隙間が広がることを抑制できる。その結果、本実施形態における表皮材取付具5は、係止部材4との係合状態を保持できる。
【0041】
本実施形態において、フレーム部54A,54Bのそれぞれは、基部51に立設される一対の脚部541と、一対の脚部541の各先端部を連結する連結部542と、を備え、連結部542は、ガイド面544Pを形成する。このような構成では、フレーム部54A,54Bと、支持部52A,52Bとを、互いに干渉しないようにしたまま、互いに近接配置できる。これにより、表皮材取付具5の幅を抑制できる。
【0042】
本実施形態において、第1支持部52Aは、第1フレーム部54Aにおける一対の脚部541の間に配置され、第2支持部52Bは、第2フレーム部54Bにおける一対の脚部541の間に配置される。これにより、表皮材取付具5の幅をより好適に抑制できる。
【0043】
本実施形態において、第1支持部52Aは、第1フレーム部54Aにおける一対の脚部541および連結部542のそれぞれとの間で連続する隙間SAを形成し、第2支持部52Bは、第2フレーム部54Bにおける一対の脚部541および連結部542のそれぞれとの間で連続する隙間SBを形成する。このような構成によれば、フレーム部54A,54Bは、支持部52A,52Bから好適に独立して弾性変形可能である。
【0044】
本実施形態において、フレーム部54A,54Bは、Y方向内側および+Z側に面するようにZ方向に対して傾斜しているガイド面544Pを有する。このため、係止部材4をクッション材2の溝21に挿入する際、係止部材4を突片53A,53B間の隙間Gに好適に案内することができる。
【0045】
本実施形態において、突片53A,53Bのそれぞれは、無荷重状態の第1フレーム部54A(または第2フレーム部54B)のガイド面544Pと同一平面上に配置される補助ガイド面53Pを有する。このため、係止部材4をクッション材2の溝21に挿入する際、係止部材4を突片53A,53B間の隙間Gに好適に案内することができる。
【0046】
本実施形態において、第1支持部52Aおよび第2支持部52Bのそれぞれは、無荷重状態の第1フレーム部54A(または第2フレーム部54B)のガイド面544Pと同一平面上に配置される中間ガイド面522Pを有する。このような構成によれば、係止部材4をクッション材2の溝21に挿入する際、係止部材4を突片53A,53B間の隙間Gに好適に案内することができる。
【0047】
本実施形態において、フレーム部54A,54Bのそれぞれは、基部51から延びる立ち上がり部543と、立ち上がり部543からZ方向に対して傾斜する方向に延び、係止部材4を隙間Gに案内するガイド部544と、ガイド部544から溝21のY方向外側に向かって延び、クッション材2に固定される固定部545と、を有する。このような構成によれば、クッション材2に対する固定強度が向上する。
【0048】
(変形例)
前記実施形態において、支持部52A,52Bおよびフレーム部54A,54Bは、それぞれ一対の脚部521,541を有するように構成されるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、支持部52A,52Bは、一対の脚部521の替わりとしてプレート状の脚部を有し、このような脚部から突片53A,53Bが突出してもよい。
また、フレーム部54A,54Bは、一対の脚部521の替わりとしてプレート状の脚部を有してもよい。この場合、フレーム部54A,54Bは、支持部52A,52BよりもY方向外側に配置されることで、支持部52A,52Bとの間に隙間を形成する。これにより、フレーム部54A,54Bは、支持部52A,52Bとは独立して弾性変形可能である。
【0049】
前記実施形態において、支持部52A,52Bのそれぞれは、中間ガイド面522Pを有さなくてもよい。同様に、突片53A,53Bのそれぞれは、補助ガイド面53Pを有さなくてもよい。すなわち、前記実施形態の表皮材取付具5では、少なくともフレーム部54A,54Bが係止部材4を案内する機能を有すればよい。
【0050】
前記実施形態において、フレーム部54A,54Bは、クッション材2に差し込まれる固定部545を有するが、本発明はこれに限定されない。例えば、基部51がクッション材2の溝21の底部に埋設されている場合には、フレーム部54A,54Bがクッション材2に固定されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…表皮材取付構造、2…クッション材、21…溝、211…第1側壁面、212…第2側壁面、3…表皮材、31…端縁部、4…係止部材、41…取付部、42…挿入部、421…被係合面、422…傾斜面、5…表皮材取付具、51…基部、521…脚部、522…中間ガイド部、522P…中間ガイド面、52A…第1支持部、52B…第2支持部、52F…折り曲がり部、53A…第1突片、53B…第2突片、53P…補助ガイド面、541…脚部、541F…折り曲がり部、542…連結部、542F…折り曲がり部、543…立ち上がり部、544…ガイド部、544P…ガイド面、545…固定部、546…凸部、54A…第1フレーム部、54B…第2フレーム部、6…表皮材、F…押圧、SA,SB…隙間。