(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024805
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240216BHJP
C08L 3/00 20060101ALI20240216BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240216BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20240216BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20240216BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20240216BHJP
C08L 25/08 20060101ALI20240216BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20240216BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEP
C08L3/00 ZBP
C08L101/00
C08K5/103
C08L23/04
C08L23/10
C08L25/08
C08J3/20 Z CEZ
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127707
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】山田 知夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 太平
(72)【発明者】
【氏名】岩間 光平
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F070AA03
4F070AA12
4F070AA13
4F070AA18
4F070AB02
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4F071AA18
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4F071AE20
4F071AH05
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4J002AB011
4J002AB041
4J002BB032
4J002BB092
4J002BB122
4J002BC032
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4J002BN062
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4J200BA15
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4J200BA38
4J200CA03
4J200DA17
4J200DA18
4J200EA07
4J200EA09
4J200EA10
4J200EA11
4J200EA23
(57)【要約】
【課題】
廃棄の際、簡単に潰すことができ、元の状態に戻りにくいという減容化を実現できる包装容器を提供することができる。
【解決手段】
本発明の成形体は、バイオマス材料と、熱可塑性樹脂と、添加剤と、を含有する成形体であって、載置面積よりも大きな平滑面を有する2つの平板の間隔を40mmに設定し、当該平板の間に10cm×10cmの前記成形体を二つ折りにして載置し、前記2つの平板の間隔が2.5mmになるまで圧縮し、2.5mmになった時点で、前記成形体にかけていた荷重を解除し、荷重を解除してから1分経過後に前記二つ折りにされた成形体の開き角度が100°以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス材料と、
熱可塑性樹脂と、
添加剤と、
を含有する成形体であって、
載置面積よりも大きな平滑面を有する2つの平板の間隔を40mmに設定し、当該平板の間に10cm×10cmの前記成形体を二つ折りにして載置し、前記2つの平板の間隔が2.5mmになるまで圧縮し、2.5mmになった時点で、前記成形体にかけていた荷重を解除し、荷重を解除してから1分経過後に前記二つ折りにされた成形体の開き角度が100°以下である、成形体。
【請求項2】
前記成形体は、シート又はフィルムである、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記バイオマス材料は澱粉である、請求項1に記載の成形体。
【請求項4】
前記澱粉の含有量は、前記成形体の質量に対して4質量%以上95質量%以下である、請求項3に記載の成形体。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂の含有量は、前記成形体の質量に対して3質量%以上95質量%以下である、請求項1に記載の成形体。
【請求項6】
前記添加剤は低融点添加剤である、請求項1に記載の成形体。
【請求項7】
前記添加剤はグリセリン脂肪酸エステルである、請求項1に記載の成形体。
【請求項8】
前記グリセリン脂肪酸エステルの含有量は、前記成形体の質量に対して0.1質量%以上5質量%以下である、請求項7に記載の成形体。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂及び酸変性ポリエチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の成形体。
【請求項10】
前記成形体表面を観察した際、210mm×297mmの視野面積当たり、長径が100μm以上の粒状物の個数が10個以下であり、当該粒状物は、赤外吸収スペクトルにおいて、前記澱粉由来の吸収ピークを有し、且つヨウ素染色されないものである、請求項1に記載の成形体。
【請求項11】
バイオマス材料と、
熱可塑性樹脂と、
添加剤と、
を含有する成形体であって、
載置面積よりも大きな平滑面を有する2つの平板の間隔を40mmに設定し、当該平板の間に10cm×10cmの前記成形体を二つ折りにして載置し、前記2つの平板のうちいずれか一方の平板に荷重をかけて移動させることにより前記成形体を圧縮し、前記平板の移動量(圧縮移動量)が35mmになった時点における前記荷重値が50N以下である、成形体。
【請求項12】
前記成形体は、シート又はフィルムである、請求項11に記載の成形体。
【請求項13】
前記バイオマス材料は澱粉である、請求項11に記載の成形体。
【請求項14】
前記澱粉の含有量は、前記成形体の質量に対して4質量%以上95質量%以下である、請求項13に記載の成形体。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂の含有量は、前記成形体の質量に対して3質量%以上95質量%以下である、請求項11に記載の成形体。
【請求項16】
前記添加剤は低融点添加剤である、請求項11に記載の成形体。
【請求項17】
前記添加剤はグリセリン脂肪酸エステルである、請求項11に記載の成形体。
【請求項18】
前記グリセリン脂肪酸エステルの含有量は、前記成形体の質量に対して0.1質量%以上5質量%以下である、請求項17に記載の成形体。
【請求項19】
前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂及び酸変性ポリエチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項11に記載の成形体。
【請求項20】
前記成形体表面を観察した際、210mm×297mmの視野面積当たり、長径が100μm以上の粒状物の個数が10個以下であり、当該粒状物は、赤外吸収スペクトルにおいて、前記澱粉由来の吸収ピークを有し、且つヨウ素染色されないものである、請求項11に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、精肉、鮮魚、野菜などの生鮮食料品、または弁当、総菜、冷凍食品、菓子類、麺類などの加工食品などを収容するトレーは、成形が行いやすいこと、大量生産が可能なこと、製造コストが小さいことなどから、石油資源等を原料とするプラスチック製トレーが大量に使用されている。これらのプラスチック製トレーとしては、例えば、発泡スチロールトレー、ポリプロピレン製トレー、ポリエチレンテレフタレート製トレー、ポリ塩化ビニル製トレーなどが広く使用されている。
【0003】
しかしながら、近年、温室効果ガスによる地球温暖化や石油資源の枯渇が地球規模で長期的に取り組む重要な課題となっている。さらに、従来から石油系のプラスチック製トレーが廃棄された際、自然環境では分解、崩壊し難く、長期にわたり自然の中に残存し、自然環境を汚染することが問題となっていた。
【0004】
今日、プラスチック成形品の原材料として石油の代替材料となり、温暖化に影響しない、あるいは自然環境の中で比較的速やかに崩壊し、自然環境に優しい新たな材料として、天然素材が着目されている。特に、近年大きく進歩したバイオ技術を天然素材に適用して得られたバイオマス材料をトレーの材料として使用することが検討されている。
【0005】
トレーは、通常、収容されている生鮮食料品や加工食品を取り出した後に廃棄されるため、環境低減やコスト削減などの観点からトレーの薄肉化及び軽量化が求められている。また、トレーには、ゴミの運搬及び収納の観点から廃棄する際の減容化が求められている。
【0006】
一方、トレーには生鮮食料品や加工食品などを収容しても変形せず、また多段に積み重ねられても潰れない程度の強度が求められている。そこで、従来、側壁や角部に凸条もしくはリブを形成することにより、高さ方向の強度を向上させて、トレー全体の薄肉化を図ったトレーが提案されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-290728号公報
【特許文献2】特開2009-18866号公報
【特許文献3】特開2011-73725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
澱粉、セルロース等のバイオマス材料を使用して、生鮮食料品や加工食品などを収容しても変形せず、また多段に積み重ねられても潰れない程度の強度を有するトレーを成形した場合、収容されている生鮮食料品や加工食品を取り出した後に廃棄のため、トレーを潰そうとしても、潰しにくく、また、潰すことができても元の状態に戻りやすいという課題がある。
【0009】
本技術は、自然環境の中で比較的速やかに崩壊し、自然環境に優しいバイオマス材料を含有し、生鮮食料品や加工食品などを収容しても変形せず、また多段に積み重ねられても潰れない程度の強度を有し、かつ、廃棄の際、簡単に潰すことができ、元の状態に戻りにくいという減容化を実現できる包装容器に好適に使用される成形体を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本技術は、バイオマス材料と、熱可塑性樹脂と、添加剤と、を含有する成形体であって、載置面積よりも大きな平滑面を有する2つの平板の間隔を40mmに設定し、当該平板の間に10cm×10cmの前記成形体を二つ折りにして載置し、前記2つの平板の間隔が2.5mmになるまで圧縮し、2.5mmになった時点で、前記成形体にかけていた荷重を解除し、荷重を解除してから1分経過後に前記二つ折りにされた成形体の開き角度が100°以下である、成形体を提供する。
また、本技術は、バイオマス材料と、熱可塑性樹脂と、添加剤と、を含有する成形体であって、載置面積よりも大きな平滑面を有する2つの平板の間隔を40mmに設定し、当該平板の間に10cm×10cmの前記成形体を二つ折りにして載置し、前記2つの平板のうちいずれか一方の平板に荷重をかけて移動させることにより前記成形体を圧縮し、前記平板の移動量(圧縮移動量)が35mmになった時点における前記荷重値が50N以下である、成形体を提供する。
前記成形体は、シート又はフィルムでありうる。
前記バイオマス材料は澱粉でありうる。
前記澱粉の含有量は、前記成形体の質量に対して4質量%以上95質量%以下でありうる。
前記熱可塑性樹脂の含有量は、前記成形体の質量に対して3質量%以上95質量%以下でありうる。
前記添加剤は低融点添加剤でありうる。
前記添加剤はグリセリン脂肪酸エステルでありうる。
前記グリセリン脂肪酸エステルの含有量は、前記成形体の質量に対して0.1質量%以上5質量%以下でありうる。
前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂及び酸変性ポリエチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1つでありうる。
前記成形体において、当該成形体表面を観察した際、210mm×297mmの視野面積当たり、長径が100μm以上の粒状物の個数が10個以下であり、当該粒状物は、赤外吸収スペクトルにおいて、前記澱粉由来の吸収ピークを有し、且つヨウ素染色されないものでありうる。
【発明の効果】
【0011】
本技術により、自然環境の中で比較的速やかに崩壊し、自然環境に優しいバイオマス材料を含有し、生鮮食料品や加工食品などを収容しても変形せず、また多段に積み重ねられても潰れない程度の強度を有し、かつ、廃棄の際、簡単に潰すことができ、元の状態に戻りにくいという減容化を実現できる包装容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る包装容器に使用する成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】第1の実施形態に係る包装容器に使用する成形体の製造方法で使用される製造装置の一例を示す摸式図である。
【
図3】
図3に示す製造装置が有する加熱撹拌機の一例を示す摸式図である。
【
図4】第1の実施形態に係る包装容器に使用する成形体の製造方法で使用される押出機の一例を示す摸式図である。
【
図5】第1の実施形態に係る包装容器に使用する澱粉含有熱可塑性樹脂組成物に関する押出圧力差ΔPを測定する際に使用する昇圧試験機の一例を示す摸式図である。
【
図6】ヨウ素染色前の粒状物の光学顕微鏡写真である。
【
図7】ヨウ素染色後の粒状物の光学顕微鏡写真である。
【
図8】バイオマス材料冷却工程を含む成形体の製造方法の例を示すフローチャートである。
【
図9】バイオマス材料冷却工程を含む成形体の製造方法で使用される製造装置の一例を示す摸式図である。
【
図10】積層体である成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図11】積層体である成形体の製造方法で使用される多層共押出成形機の一例を示す摸式図である。
【
図12】圧縮試験に使用する試料Sを示す摸式図である。
【
図13】圧縮装置に試料Sを載置し、荷重をかける前の斜視図である。
【
図14】圧縮処理終了後の試料Sを示す斜視図である。
【
図15】圧縮処理後の試料Sの開き角度αを示す摸式図である。
【
図16】圧縮処理後の試料Sの開き角度αを示す摸式図である。
【
図17】「3.の(1)包装容器の構成」で述べた包装容器の斜視図である。
【
図18】「3.の(1)包装容器の構成」で述べた包装容器の平面図である。
【
図19】「3.の(1)包装容器の構成」で述べた包装容器の底面図である。
【
図20】「3.の(1)包装容器の構成」で述べた包装容器の正面図である。
【
図21】「3.の(1)包装容器の構成」で述べた包装容器の側面図である。
【
図24】「3.の(2)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の斜視図である。
【
図25】「3.の(2)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の平面図である。
【
図26】「3.の(2)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の底面図である。
【
図27】「3.の(2)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の正面図である。
【
図28】「3.の(2)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の側面図である。
【
図31】「3.の(3)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の斜視図である。
【
図32】「3.の(3)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の平面図である。
【
図33】「3.の(3)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の底面図である。
【
図34】「3.の(3)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の正面図である。
【
図35】「3.の(3)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の側面図である。
【
図38】「3.の(4)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の斜視図である。
【
図39】「3.の(4)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の平面図である。
【
図40】「3.の(4)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の底面図である。
【
図41】「3.の(4)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の正面図である。
【
図42】「3.の(4)包装容器の他の構成」で述べた包装容器の側面図である。
【
図45】圧縮移動量と荷重値の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、本技術の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
【0014】
本技術について、以下の順序で説明を行う。
1.第1の実施形態(成形体の例)
(1)成形体の構成
(2)成形体の製造方法
(3)物性
2.第2の実施形態(成形体の他の例)
(1)成形体の構成
(2)成形体の製造方法
(3)物性
3.第3の実施形態(成形体の使用例)
(1)包装容器の構成
(2)包装容器の他の構成
(3)包装容器の他の構成
(4)包装容器の他の構成
4.実施例
【0015】
1.第1の実施形態(成形体の例)
【0016】
(1)成形体の構成
【0017】
成形体は、バイオマス材料と、熱可塑性樹脂と、添加剤と、を含有する。以下、成形体の構成について説明する。
【0018】
[バイオマス材料]
【0019】
バイオマス材料について以下に説明する。
【0020】
前記バイオマス材料は、好ましくは植物由来のバイオマス材料であり、より具体的には澱粉材料、及びセルロース材料を挙げることができる。前記澱粉材料、及び前記セルロース材料は、廃棄物系バイオマス、未利用バイオマス、又は資源穀物に分類されるものであってよい。また、バイオマス材料として、動物由来のものであってもよく、例えば、卵殻を挙げることができる。
【0021】
前記澱粉材料として、生澱粉を用いることができ、例えば、地下系澱粉の澱粉及び地上系澱粉の澱粉を挙げることができる。地下系澱粉は、地下で蓄積された澱粉であり、例えば、地下茎又は根などに蓄積された澱粉をいう。地下系澱粉として、例えば、タピオカ澱粉(キャッサバ澱粉)、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、クズ澱粉、及びワラビ澱粉を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0022】
地上系澱粉は、地上で蓄積された澱粉であり、例えば、種子などに蓄積された澱粉をいう。地上系澱粉として、例えば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉、ドングリ澱粉及び米澱粉を挙げることができるがこれらに限定されない。なお、澱粉材料としては、好ましくは地上系澱粉が用いられる。
【0023】
前記澱粉材料は、澱粉の変性物(すなわち変性澱粉)、特には地上系澱粉の変性物であってもよい。このような変性物として、化学的に修飾された化学的変性澱粉が挙げられる。化学的変性澱粉として、例えば、アセト酢酸エステル化澱粉、酢酸エステル化澱粉、ヒドロキシメチルエーテル化澱粉、ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉、カルボキシメチルエーテル化澱粉、アリルエーテル化澱粉、メチルエーテル化澱粉、コハク酸エステル化澱粉、キサントゲン酢酸エステル化澱粉、硝酸エステル化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、リン酸架橋澱粉、ホルムアルデヒド架橋澱粉、アクロレイン架橋澱粉、エピクロルヒドリン架橋澱粉等が挙げられる。
【0024】
なお、澱粉材料がトウモロコシ澱粉である場合、その粒子径が好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上である。粒子径の上限値は、特に限定されないが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下である。
【0025】
なお、澱粉材料がタピオカ澱粉である場合、その粒子径が好ましくは2μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上である。粒子径の上限値は、特に限定されないが、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは25μm以下である。
【0026】
なお、澱粉材料が馬鈴薯澱粉である場合、その粒子径が好ましくは2μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、さらに好ましくは30μm以上である。粒子径の上限値は、特に限定されないが、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下である。
【0027】
また、澱粉材料は、好ましくは平衡水分を含むものであってよい。平衡水分の量は、例えば、澱粉材料質量に対して、好ましくは10質量%~15質量%であり、より好ましくは10質量%~14質量%であり、さらに好ましくは10質量%~13質量%であり、さらにより好ましくは11質量%~13質量%でありうる。なお、熱可塑性樹脂と配合する際には、澱粉の水分率は好ましくは3%以下であってよい。
【0028】
セルロース材料として、紙、紙パルプ、綿、又は布の粉砕物を挙げることができる。
【0029】
セルロース材料の粒子サイズD50(メジアン径)は、例えば、15μm~150μmであり、特には好ましくは20μm~100μmでありうる。粒子サイズD50は、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD-3100、株式会社島津製作所)を用いた湿式測定により決定される。セルロース材料が、上記数値範囲内の粒子サイズを有することにより、熱可塑性樹脂に含まれるセルロース材料の分散性を向上させることに貢献しうる。
【0030】
セルロース材料を構成するセルロース繊維のうち、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、セルロース材料を構成する全セルロース繊維の数の65%~100%、好ましくは70%~100%、より好ましくは80%~100%、さらにより好ましくは85%~100%を占める。セルロース繊維の数に関する上記割合は、セルロース材料の全セルロース繊維数のうちの、0μm~9.8μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合(以下、「第一の割合」という)と0μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合(以下、「第二の割合」という)とを、前記レーザ回折式粒度分布測定装置を用いた湿式測定により決定し、前記第二の割合から前記第一の割合を差し引くことによって求められる。前記数値範囲「0μm~9.8μm」及び「0μm~110.6μm」はいずれも、前記湿式測定において、前記レーザ回折式粒度分布測定装置に対して入力される数値範囲である。
【0031】
この実施形態において、特に好ましくは、セルロース材料を構成するセルロース繊維のうち、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、セルロース材料を構成する全セルロース繊維の数の0%~30%、好ましくは0%~25%、より好ましくは0%~20%、さらにより好ましくは0%~15%を占める。セルロース繊維の数に関する上記割合は、セルロース材料における全セルロース繊維数のうちの、0μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合(上記「第二の割合」である)と0μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合(以下、「第三の割合」という)とを、前記レーザ回折式粒度分布測定装置を用いた湿式測定により決定し、前記第三の割合から前記第二の割合を差し引くことによって求められる。前記数値範囲「0μm~110.6μm」及び「0μm~998.4μm」はいずれも、前記湿式測定において、前記レーザ回折式粒度分布測定装置に対して入力される数値範囲である。
【0032】
上記粒子サイズ分布を有するセルロース材料は、例えば、パルプを酸などの化学薬品により処理を行うことで製造されうる。上記粒子サイズ分布を有するセルロース材料として、例えば、KCフロックW400(日本製紙株式会社)を挙げることができる。
上記粒子サイズ分布を有するセルロース粉末を用いることによって、成形体を製造する場合により良い成形性がもたらされる。
【0033】
特には、セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の80%~100%、さらにより好ましくは85%~100%を占めることによって、熱可塑性樹脂を成形に付して得られる成形体における破れ又は穴の発生を防ぐことができる。成形体の破れ又は穴の発生を防ぐために、特に好ましくは、セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の0%~20%、さらにより好ましくは0%~15%を占める。
【0034】
また、他の実施態様において、セルロース粉末は、100メッシュパスが90%以上である粒度を有していてもよい。この実施態様において、より好ましくは、セルロース粉末が、100メッシュパスが90%以上である粒度を有し、かつ、セルロース粉末の見掛け比重が0.30g/ml~0.40g/mlでありうる。
【0035】
前記粒度は、標準篩い法により測定され、具体的には以下のとおりに測定される。すなわち、試料10gを100メッシュの標準ふるいに入れ、受皿及び蓋を当該標準ふるいにセットし、そして、ロータップ型振とう機で40分間振とうする。そして、試料質量(10g)及び篩い残分の質量から、以下の式により、粒度が求められる。
粒度(%)=[(試料質量(g)-篩い残分(g))/試料質量(g)]×100
【0036】
前記見掛け比重は、以下のとおりに測定される。すなわち、試料10gを天秤で精秤し、50mlメスシリンダーに入れる。当該試料が飛び散らないようにして当該メスシリンダーの底をゴムシートが敷かれた台の上にあてて叩く。当該叩く作業を、試料がこれ以上詰まらなくなるまで続ける。当該叩く作業の後に、試料の表面を平らにし、その目盛り(容積、ml)を読む。そして、以下の式で見かけ比重が求められる。
見掛け比重(g/ml)=試料(10g)/容積(ml)
【0037】
上記粒度(又は上記粒度及び上記見掛比重)を有するセルロース粉末は、例えば、パルプを機械的に粉砕(例えば、ジェットミル粉砕)することによって製造されうる。上記粒度(又は上記粒度及び上記見掛比重)を有するセルロース粉末として、例えば、KCフロック100GKを挙げることができる。
【0038】
なお、バイオマス材料と一緒に添加剤が配合されてもよい。このような添加剤として、熱可塑性樹脂の溶融温度より低い融点温度を有し、比較的低温度で溶融する低融点添加剤を用いてもよい。このような低融点添加剤として、好ましくは100℃以下で溶融するもの、より好ましくは60~100℃で溶融するものである。このような低融点添加剤として、常温で液体、又は固体のエステル化合物が好ましく用いられる。具体的には、低融点添加剤として、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、アセチル化モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、中鎖脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、特殊脂肪酸エステル、高級アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。好ましくは、グリセリン系脂肪酸エステル等が用いられる。低融点添加剤は、比較的低温度で溶融し、粘性を有し、バイオマス材料粉体に絡み粘着させるように機能しうる。
【0039】
低融点添加剤は、バイオマス材料100質量部当たり、例えば、好ましくは0.1質量部~5質量部、より好ましくは0.1質量部~3質量部の含有割合で、配合してもよい。
【0040】
[熱可塑性樹脂]
【0041】
熱可塑性樹脂について以下に説明する。
【0042】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、若しくはポリエステル系樹脂、又は、これらの樹脂の混合物であってもよい。また、熱可塑性樹脂は、ポリスチレン系樹脂であってもよい。また、当該熱可塑性樹脂は、生分解性を低下させないため生分解性材料を含んでいてもよい。
【0043】
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えば、α-オレフィン類)を主要なモノマーとする重合により得られる高分子である。ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン(PE)樹脂若しくはポリプロピレン(PP)樹脂又はこれらの組合せであってもよい。
【0044】
ポリエチレン樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE: Low DensityPolyethylene)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE: High DensityPolyethylene)、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE:Very LowDensity Polyethylene)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear LowDensity Polyethylene)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)等のエチレン共重合体、又は超高分子量ポリエチレン樹脂(UHMW-PE: Ultra HighMolecular Weight-Polyethylene)又はこれらの組合せであってもよい。
【0045】
ポリオレフィン系樹脂は、好ましくはバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂(例えば、バイオマス由来ポリエチレン樹脂など)であってよく、例えば、バイオマスポリエチレン樹脂でありうる。バイオマスポリエチレン樹脂は、例えば、LDPE、LLDPE、又はHDPEでありうる。これによりCO2排出量を削減することができる。
【0046】
ポリオレフィン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて製造されたポリオレフィン系樹脂であってもよい。すなわち、熱可塑性樹脂は、例えば、メタロセン触媒系のポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂であってよく、又は、これらの組合せであってもよい。
ポリスチレン系樹脂は、メタロセン触媒系のポリスチレン系樹脂であってよい。
【0047】
ポリエステル系樹脂は、エステル結合によりモノマーが重合した高分子である。ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、若しくはポリカーボネート樹脂(PC)、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂(PBAT)、ポリブチレンサクシネート樹脂(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(PHA)、又はこれらのうち2以上を組み合わせたものであってもよい。
【0048】
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系モノマーが重合した高分子である。ポリスチレン系樹脂は、例えば、ポリスチレン樹脂、ゴム強化ポリスチレン樹脂(耐衝撃性ポリスチレン樹脂、HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、メタクリル酸エステル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体、並びにアクリロニトリル・エチレンプロピレン・スチレン共重合体等又はこれらのうち2以上を組み合わせたものであってもよい。
【0049】
本実施形態において、熱可塑性樹脂の種類は、例えば、包装容器の用途に応じて当業者により適宜選択されてよく、加工温度が低い熱可塑性樹脂が好ましい。例えば、食料品包装用容器に使用されるシートの場合、熱可塑性樹脂は、例えば、好ましくはポリオレフィン系樹脂であり、より好ましくはポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂であり、さらに好ましくはポリプロピレン樹脂でありうる。
【0050】
本実施形態において、熱可塑性樹脂の融点は、好ましくは170℃以下であり、より好ましくは165℃以下でありうる。より低い融点を有する熱可塑性樹脂を採用することによって、成形時の温度を低くすることができる。また、熱可塑性樹脂の融点は、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは95℃以上でありうる。
【0051】
熱可塑性樹脂としては、ペレット状の粒状物が用いられてもよい。熱可塑性樹脂の含有割合は、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物の質量に対して、好ましくは3質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上93質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以上90質量%以下である。
【0052】
前記生分解性材料として、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリルアミドなどの親水性高分子材料、各種アクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンなどのエマルジョン、脂肪族ポリエステル系樹脂であるカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート・バリレート共重合体などを挙げることができる。
【0053】
(2)成形体の製造方法
【0054】
成形体の製造方法について以下に説明する。前記成形体の製造方法は、外部に発熱部を備えた容器内に未乾燥バイオマス材料を収容し、前記発熱部によって前記容器内における容器内表面を加熱しながら、前記バイオマス材料を乾燥させ、前記容器内部における容器内表面に前記バイオマス材料が付着することを防ぐバイオマス材料乾燥工程と、前記バイオマス材料乾燥工程で乾燥させられたバイオマス材料と熱可塑性樹脂とを混合して、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物を調製する樹脂組成物調製工程と、前記樹脂組成物調製工程で調製された前記バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物を成形して成形体を得る成形工程と、を含みうる。
図1は、成形体の製造方法を示すフローチャートである。
図2は、第1の実施形態に係る包装容器に使用する成形体の製造方法で使用する製造装置の一例を示す摸式図である。
【0055】
図1に示すように、成形体の製造方法は、バイオマス材料乾燥工程(S1)、樹脂組成物調製工程(S2)及び成形工程(S3)を含みうる。
図2に示すように製造装置100は、加熱撹拌機101と押出機102とを有しうる。以下、各工程について説明する。
【0056】
[バイオマス材料乾燥工程(S1)]
【0057】
バイオマス材料乾燥工程(S1)において、バイオマス材料が容器内に収容される。バイオマス材料が収容される容器は、容器内部を加熱する発熱部を外部に備えている。このような容器として、例えば、ステンレス鋼、鋼製の円筒状容器の周りに加熱ジャケットを有する加熱撹拌機が挙げられる。このような加熱撹拌機として、例えば、
図3に示す加熱撹拌機101を用いることができる。加熱撹拌機101は、バイオマス材料をその内部に収容する収容部110の外周が加熱ジャケット111によって被覆されている。
図3に示すように収容部110内には、攪拌翼112が設けられている。加熱ジャケット111内は、オイル、熱水又は加熱蒸気等の熱媒が充填されており、加熱ジャケット111は発熱部として機能しうる。加熱ジャケット111は容器内の壁表面、蓋部表面、底部表面等の内表面を加熱することにより前記容器内の収容部110を加熱する。加熱ジャケット111は、容器内の内表面において加熱が不十分な箇所が存在しないように容器内の内表面を加熱する。このように容器内の内表面において加熱が不十分な箇所が存在しないようにすることにより、加熱により蒸発したバイオマス材料中の水分が加熱不十分な箇所と接触して結露することが抑制される。加熱撹拌機内面に結露することを抑制することによって、澱粉等のバイオマス材料が糊化して加熱撹拌機内表面に付着することを防止できる容器の収容部110に収容されたバイオマス材料は、加熱された収容部110内で乾燥させられる。なお、バイオマス材料の乾燥に際しては、
図3に示される攪拌翼112を使用してバイオマス材料を常時動かし続けることによって澱粉等のバイオマス材料の糊化を防ぎ、また、乾燥効率を向上できる。攪拌翼112の形状は、プロペラ翼、パドル翼、傾斜パドル翼、タービン翼、スクリュー翼、アンカー翼、リボン翼、大型格子翼などの任意の形状のものから選択され得る。このような加熱撹拌機を外部加熱ジャケット式ミキサーともいう。
【0058】
本工程において、バイオマス材料を効率よく乾燥させる観点から、前記容器内の温度は、好ましくは120℃以上であり、より好ましくは135℃以上であり、さらに好ましくは150℃以上である。また、バイオマス材料が熱劣化することを抑制する観点から、前記容器内の温度は、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは190℃以下であり、さらに好ましくは180℃以下である。
【0059】
攪拌は、攪拌翼112の回転数を好ましくは500~2000rpmに設定し、より好ましくは750~1750rpmに設定し、さらに好ましくは1000~1500rpmに設定してもよい。
【0060】
本工程において、前記バイオマス材料を乾燥させる時間は、限定されないが、乾燥効率の観点から、バイオマス材料の量に応じて適宜設定されうる。例えば、好ましくは10~30分、より好ましくは15~30分、さらに好ましくは15~25分であってよい。
【0061】
本工程において、バイオマス材料が収容される容器内部の容器内表面に前記バイオマス材料が付着することが防がれる。容器内でバイオマス材料が加熱されると、バイオマス材料中に含まれる水分が蒸発する。蒸発した水分は、容器内部の壁面表面、蓋内表面、底面表面等の容器内表面において加熱による温度上昇が不十分な箇所と接触して結露が発生する。容器内に収容されたバイオマス材料が結露の発生した容器内表面に付着すると、バイオマス材料が水分の存在下で加熱される。例えば、バイオマス材料が澱粉の場合、加熱下に澱粉の分子鎖中に水分が入り込むことで分子構造が緩み膨潤化(α化)して、いわゆる「白粒」と称される粒状物が発生する。「白粒」は、赤外吸収スペクトルにおいて、澱粉由来の吸収ピークを有する。このような吸収ピークとしてOH結合由来のピークが挙げられ、3000~3500cm-1の範囲にピークが存在する。また、「白粒」はヨウ素染色により着色しない。通常、澱粉粒子は、長径が10~20μmであるのに対し、「白粒」と称される粒状物は、長径が100~200μmであり、未糊化澱粉粒子よりも大きいものである。なお、未糊化澱粉とは、加熱前または加熱乾燥処理が施されても糊化していない澱粉のことをいう。このような「白粒」は、シート又はフィルムの押出成形時にメッシュ詰まりや白粒のシート混入を引き起こし、茶変色の原因となり、また、成形時に、得られる成形体の穴あきの原因となる。本工程では、外部に備えられた発熱部によって前記容器内部を加熱し、容器内表面において温度上昇が不十分な箇所が存在しないようにすることにより、結露の発生を抑制し、容器内のバイオマス材料が容器内表面に付着することを防止する。このようにバイオマス材料が容器内表面に付着することを防止することにより白粒発生を抑制でき、品質に優れた成形体を効率よく製造することが可能となる。また、容器内において攪拌処理によりバイオマス材料が一カ所に滞留しないようにすることもバイオマス材料が容器内表面に付着することを抑制するために好ましい。
【0062】
上記は、外部加熱ジャケット式ミキサーを用いるものであるが、バイオマス材料乾燥工程(S1)において、加熱ジャケット式真空乾燥機を用いてもよい。この乾燥機は、外部加熱ジャケットを備え、容器内に攪拌翼が設けられているのが好ましく、容器内を真空にすることにより、バイオマス材料を乾燥させることができる。
【0063】
加熱ジャケット式真空乾燥機を用いる場合、バイオマス材料を効率よく乾燥させる観点から、前記容器内の温度は、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは115℃以上であり、さらに好ましくは130℃以上である。また、バイオマス材料が熱劣化することを抑制する観点から、前記容器内の温度は、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは185℃以下であり、さらに好ましくは170℃以下である。
【0064】
容器内の真空度は、好ましくは5kPa~30kPaに設定し、より好ましくは5kPa~25kPaに設定し、さらに好ましくは5kPa~20kPaに設定する。
【0065】
本工程において、前記バイオマス材料を乾燥させる時間は、限定されないが、乾燥効率の観点から、バイオマス材料の量に応じて適宜設定されうる。例えば、好ましくは30~90分であり、より好ましくは40~80分であり、さらに好ましくは50~70分である。本工程において、バイオマス材料の水分率を好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下となるように乾燥してもよい。
【0066】
[樹脂組成物調製工程(S2)]
【0067】
樹脂組成物調製工程(S2)において、前記乾燥工程(S1)で乾燥させられたバイオマス材料と熱可塑性樹脂とを混合して、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物を調製する。
【0068】
本工程において、乾燥されたバイオマス材料と熱可塑性樹脂とを混合するに際しては、例えば、乾燥されたバイオマス材料と熱可塑性樹脂とを、単純に乾燥状態で混合して、粉末状のバイオマス材料とペレット状の熱可塑性樹脂との混合物であるバイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物を調製してもよく、また、乾燥された前記バイオマス材料と熱可塑性樹脂を、同時に、
図4に示す押出機102にフィーダーを介して投入し、回転数、攪拌時間及び温度などの制御を行い、加熱混練することによりバイオマス材料と熱可塑性樹脂を均一に混練、混合して、押出機102内に存在する溶融混練した状態のバイオマス材料と熱可塑性樹脂の混合物をバイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物としてもよい。さらに、溶融混練した状態のバイオマス材料と熱可塑性樹脂の混合物を押出機102から押出し、冷却してペレット化したものをバイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物としてもよい。このような押出機102として、一軸押出機、二軸押出機を用いることができる。また、バイオマス材料と熱可塑性樹脂を押出機102に投入する際、同時に添加剤を投入してもよく、このような添加剤として、例えば、低融点添加剤、高融点添加剤が挙げられる。また、バイオマス材料、熱可塑性樹脂、添加剤のそれぞれを個別にフィーダーを介して所定の配合量で投入してもよい。
【0069】
前記バイオマス材料と前記熱可塑性樹脂等を押出機102中で混合するに際し、材料の劣化、退色を抑制する観点から加熱加工温度(シリンダ温度)を、好ましくは熱可塑性樹脂が溶融する温度以下、又は高融点添加剤の融点以上の温度に設定し、混合してもよい。例えば、加熱加工温度(シリンダ温度)を100~190℃に設定してもよい。
【0070】
本工程において、バイオマス材料の含有割合は、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物の質量に対して、好ましくは4質量%以上95質量%以下、より好ましくは6質量%以上93質量%以下、さらに好ましくは8質量%以上90質量%以下である。
【0071】
本工程に配合される添加剤として、前記バイオマス材料乾燥工程(S1)で用いられる熱可塑性樹脂の溶融温度より低い融点温度を有し、比較的低温度で溶融する低融点添加剤を用いてもよい。
【0072】
本工程において、低融点添加剤は、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物の質量に対して、例えば、好ましくは0.1質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%の含有割合で、樹脂組成物に含まれうる。
【0073】
また、樹脂組成物には、低融点添加剤よりも高い融点を有する高融点添加剤が含まれていてもよい。このような高融点添加剤は、低融点添加剤よりも高い融点を有し、その融点が、好ましくは100~150℃の範囲にあり、低融点添加剤よりも先に固化し、熱可塑性樹脂の溶融温度よりも低い融点を有するものであってよい。このような高融点添加剤として、脂肪酸金属塩、炭化水素系、高級アルコール系、脂肪族アミド系、脂肪酸エステルなどが挙げられ、具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム等が用いられる。
【0074】
高融点添加剤は、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物の質量に対して、例えば、好ましくは0.1質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の含有割合で、樹脂組成物に含まれうる。
【0075】
その他の添加剤として、バイオマス材料と熱可塑性樹脂との親和性を向上させるため相溶化剤を用いることができる。相溶化剤は、熱可塑性樹脂の種類に応じて選択されてよい。このような相溶化剤として、例えば、酸変性ポリオレフィン、酸変性ナイロン、酸変性ポリスチレン、酸変性EVA、酸変性エチレン共重合ポリマー、酸変性アクリレート、アクリル酸変性EVA、及び変性エチレンアクリレートなどを挙げることができる。
【0076】
熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、相溶化剤は好ましくは酸変性ポリオレフィンであり、特には無水カルボン酸変性ポリオレフィン又はオレフィン系のコモノマーでありうる。
【0077】
当該無水カルボン酸変性ポリオレフィンを構成する無水カルボン酸は、好ましくは無水マレイン酸でありうる。相溶化剤は、例えば、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン樹脂であり、より特には無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、及び無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体からなる群から選ばれる1つ又は2以上の組合せであってよい。相溶化剤には、ゴム成分が分散されていてもよい。
【0078】
相溶化剤は、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物の質量に対して、例えば、0.1質量%~10質量%、より好ましくは1.0質量%~5.0質量%の含有割合で、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物に含まれうる。
【0079】
その他の添加剤として、着色剤を用いることができる。
【0080】
着色剤は、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物に着色を施すために用いられうる。着色剤として、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、染料、及び顔料を挙げることができる。
【0081】
また、前記他の成分として、例えば、酸化防止剤、架橋剤、紫外線吸収剤、発泡剤及び耐衝撃剤などが用いられてもよい。これら添加剤として、市販のものが用いられてもよい。
【0082】
本工程において得られるバイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物として澱粉含有熱可塑性樹脂組成物を使用してもよい。このような澱粉含有熱可塑性樹脂組成物は、澱粉と、熱可塑性樹脂と、を含有し、下記測定方法による押出開始圧力Pstartと押出終了圧力Pendの押出圧力差ΔP(ΔP=Pend-Pstart)が好ましくは10bar以下であり、より好ましくは8bar以下であってよく、さらに好ましくは6bar以下であってよい。
【0083】
[押出圧力差の測定方法]
【0084】
(1)澱粉含有熱可塑性樹脂組成物を105℃、1時間乾燥する。
(2)200メッシュ(目開き0.077mm(公称))のメッシュが設置され、200℃に設定され、押出圧力のモニタリングが可能な押出機を用いて、ベースの前記熱可塑性樹脂の押出を行い、押出圧力が平衡状態(直近5分間の圧力変化が±0.5%以下になった状態)になった後に、前記押出圧力のモニタリングが可能な押出機を設定温度200℃で用いて、前記澱粉含有熱可塑性樹脂組成物500gの押出を開始する。
(3)ベースの前記熱可塑性樹脂の押出圧力が平衡状態(直近5分間の圧力変化が±0.5%以下になった状態)になった時点の押出開始圧力Pstartを測定する。
(4)前記澱粉含有熱可塑性樹脂組成物500gを全て押出した後にベースの前記熱可塑性樹脂に切り替えを行い、押出圧力が平衡状態(直近5分間の圧力変化が±0.5%以下になった状態)になった際の押出終了圧力Pendを測定する。
(5)押出圧力差ΔPを下記式より算出する。
押出圧力差ΔP=Pend-Pstart
【0085】
以下、澱粉含有熱可塑性樹脂組成物の押出圧力差ΔPの測定方法について、より詳細に説明する。
【0086】
[澱粉含有熱可塑性樹脂組成物の押出圧力差ΔP]
【0087】
澱粉含有熱可塑性樹脂組成物の押出圧力差ΔPとは、ベースの熱可塑性樹脂の押出圧力が平衡状態(直近5分間の圧力変化が±0.5%以下になった状態)になった時点の押出開始圧力Pstartと平衡状態(直近5分間の圧力変化が±0.5%以下になった状態)になった押出終了圧力Pendとの圧力差を表す指標をいう。単位は、barで表す。換言すれば、澱粉含有熱可塑性樹脂組成物に含まれる前述の白粒等の異物や分散不良物の存在を示す指標として使用されうる。この数値が低いほど、メッシュ詰まりが発生せず、白粒等の異物や分散不良物が少ないことを意味する。
【0088】
本実施形態に従う澱粉含有熱可塑性樹脂組成物において、押出圧力差ΔPは、昇圧試験機「LFT44-GP」(ラボテック社製)を使用して測定され得る。
【0089】
本実施形態においては、押出圧力差ΔPは、以下の手順で測定される。
図5は、本実施形態に係る澱粉含有熱可塑性樹脂組成物に関する押出圧力差ΔPを測定する際に使用する昇圧試験機の一例を示す摸式図である。
図5に示す昇圧試験機40は、単軸スクリュー押出機43、ギアポンプ42と、メッシュ41とを備える。昇圧試験機40において、ギアポンプ入口側圧力P1と、ギアポンプ出口側圧力P2が測定され得る。押出圧力差ΔPの測定に際し、ギアポンプ42の回転数が30RPMで一定となるように設定し、ギアポンプ入口側圧力P1を50barに設定し、P1が50barを維持するように単軸スクリュー押出機43の回転数を連動制御させるようにし、ギアポンプ出口側圧力P2の値を測定する。押出圧力差ΔPの測定は、例えば、以下の手順で行われる。
【0090】
(1)澱粉含有熱可塑性樹脂組成物を105℃、1時間で水分率2%以下となるように乾燥する。
(2)
図5に示す、200メッシュ(目開き0.077mm(公称))のメッシュ41が設置され、押出圧力のモニタリングが可能な昇圧試験機40を用いて、ベースの前記熱可塑性樹脂の押出を行い、昇圧試験機40のギアポンプ出口側圧力P2において押出圧力が平衡状態(直近5分間の圧力変化が±0.5%以下になった状態)になった後に、前記押出圧力のモニタリングが可能な昇圧試験機40を設定温度200℃で用いて、前記澱粉含有熱可塑性樹脂組成物500gの押出を開始する。
(3)
図5に示す昇圧試験機40のギアポンプ出口側圧力P2において押出圧力が平衡状態(直近5分間の圧力変化が±0.5%以下になった状態)になった時点の押出開始圧力P
startを測定する。
(4)澱粉含有熱可塑性樹脂組成物500gを全て昇圧試験機40から押出した後にベースとなる熱可塑性樹脂に切り替えを行い、ギアポンプ出口側圧力P2において圧力が平衡状態(直近5分間の圧力変化が±0.5%以下になった状態)になった際の押出終了圧力P
endを測定する。
(5)押出圧力差ΔPを下記式より算出する。
押出圧力差ΔP=P
end-P
start
【0091】
また、成形時に押出機のメッシュが詰まり、圧力上昇による茶変色や成形時に穴あきが発生することを防止する観点から、澱粉含有熱可塑性樹脂組成物は、澱粉と、熱可塑性樹脂と、を含有し、素材表面を観察した際、210mm×297mmの視野面積当たり、長径が100μm以上の粒状物の個数が好ましく10個以下であり、より好ましくは5個以下、さらに好ましくは0個であってよい。本実施形態では、前記粒状物の長径は、好ましくは90μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは70μm以下であってよい。粒状物の長径の測定方法について以下に説明する。
【0092】
[長径の測定方法]
【0093】
本実施形態において、粒状物の長径は、例えば、実体顕微鏡を用いて測定される。実体顕微鏡として、「ECLIPSE LV100」(株式会社ニコン製)を用いることができ、視野内のスケールで粒状物の長径を実測してもよい。その他、顕微鏡から取得した画像を画像ソフトウェアで画像処理し、長径を測定してもよい。
【0094】
前記粒状物は、赤外吸収スペクトルにおいて、澱粉由来の吸収ピークを有する。澱粉由来の吸収ピークとして、OH結合由来のピークが挙げられ、3000~3500cm-1の範囲に吸収ピークが存在する。赤外吸収スペクトルの測定方法について以下に説明する。
【0095】
[赤外吸収スペクトル]
【0096】
本実施形態において、粒状物の赤外吸収スペクトルは、顕微赤外分光分析法(顕微FT-IR)により測定される。顕微赤外分光分析法により赤外吸収スペクトルを測定する際、顕微赤外分光光度計を用いることができる。このような顕微赤外分光光度計として、例えば、「IRT-5000」(日本分光株式会社製)を用いることができる。赤外吸収スペクトルの測定は、例えば、以下の手順に従って行われる。
(1)サンプルから測定対象となる粒状物の部分を切り出す。
(2)切り出した粒状物をKBr片に挟み込んでクランプし、測定検体を作製する。
(3)作製した測定検体を顕微赤外分光光度計の測定部にセットし、測定を行う。
【0097】
また、粒状物はヨウ素染色により着色しない。澱粉含有熱可塑性樹脂組成物において、前記粒状物は、前記1.(2)で説明した「白粒」に相当する。澱粉中には、アミロースとアミロペクチンが共存している。澱粉がヨウ素染色されると、アミロースの螺旋構造内部にヨウ素原子が入り込み、青紫色に発色する。一方、熱により澱粉が変性(α化、糊化、膨潤化)した場合、ヨウ素原子の入り込みが発生しないため、青紫色に発色しない。前記粒状物は、熱により変性し、ヨウ素染色されない、澱粉であると推測される。
【0098】
図6は、ヨウ素染色前の粒状物の光学顕微鏡写真である。
図7は、ヨウ素染色後の粒状物の光学顕微鏡写真である。
図6、
図7において、丸で囲った部分に粒状物が存在する。
図7に示されるように、
図6に示される白色部分は、ヨウ素染色によっても発色せず、白色を維持していることが分かる。このように粒状物は、ヨウ素染色されないものである。なお、本実施形態において、粒状物とは、粒状を呈するもののほか、各種形状、各種断面のものが包含され得る。粒状物の形状として、例えば、球形、楕円球形、円柱形、角柱形円板状、角板状等が挙げられる。
【0099】
粒状物のヨウ素染色について以下に説明する。
【0100】
[ヨウ素染色]
【0101】
本実施形態において、ヨウ素染色は以下の手順で行われる。
(1)サンプル中に存在する目視により確認できる粒状物のうち、実体顕微鏡で長径が100μmを超える粉状物付近を切り出してサンプルとする。
(2)市販のうがい薬(製品名「コサジン・ガーグルTY」、大洋製薬社製、有効ヨウ素濃度0.7g/100mL)にサンプルを5分間浸漬する。
(3)サンプルを取り出し、流水で洗浄して、うがい薬を洗い落とす。
(4)光学顕微鏡にて観察する。
【0102】
[成形工程(S3)]
【0103】
本工程において、前記樹脂組成物調製工程(S2)で調製された前記バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物を成形して成形体を得る。例えば、前記樹脂組成物調製工程(S2)において押出機102中でバイオマス材料と熱可塑性樹脂等を十分加熱し、混合してバイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物を調製した後、前記バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物を成形機へ移送し、当該成形機を用いてバイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物を成形してフィルム又はシート等の成形体を形成する。なお、フィルム又はシートを成形することを、成膜といい、フィルム又はシートを成形する工程を成膜工程ともいう。フィルム又はシートを成形する際の温度を、好ましくは熱可塑性樹脂の溶融温度以上に設定してもよく、例えば、150~220℃に設定し、成形圧力を適宜設定してもよい。
【0104】
フィルム又はシートの成膜に際しては、成膜工程において、Tダイ押出機、カレンダー成形機、インフレーション成形機等の各種成膜機を用いることができる。成膜機により、例えば、フィルム状又はシート状に成形されたバイオマス材料含有成形体は、成膜された後、直ちに、引取りロールの温度を適宜設定し、所定の厚さに成形したフィルム又はシートを冷却し、原反ロールとして引取り、巻き取ってもよい。なお、フィルムとは厚みの薄い膜状のものをいい、フィルムの厚みは、例えば、200μm未満でありうる。また、フィルムやシート以外の成形体を成形するに際しては、ブロー成形機、射出成形機(インジェクション成形機)、熱成形機、異形押出成形機を用いてもよい。当該ブロー成形機によって、例えば、ボトル容器が成形されうる。射出成形機によって、例えば、ボトルキャップ又は容器が製造されうる。異形押出成形機によって、例えば、プラダンボールが成形されうる。
【0105】
前記成形体の製造方法において、さらに、前記バイオマス材料乾燥工程で乾燥させられた前記バイオマス材料を冷却するバイオマス材料冷却工程を含んでいてもよい。
図8は、バイオマス材料冷却工程を含む成形体の製造方法の例を示すフローチャートである。
図9は、
図8に示される成形体の製造方法で使用する製造装置の一例を示す摸式図である。
【0106】
図8に示すように、バイオマス材料冷却工程を含む成形体の製造方法の例は、バイオマス材料乾燥工程(S1)、バイオマス材料冷却工程(S4)、樹脂組成物調製工程(S2)及び成形工程(S3)を含みうる。なお、バイオマス材料乾燥工程(S1)、樹脂組成物調製工程(S2)及び成形工程(S3)は、前記成形体の製造方法の例と同じ工程であるので説明は省略する。以下、バイオマス材料冷却工程(S4)について説明する。
【0107】
[バイオマス材料冷却工程(S4)]
【0108】
図8に示すように、バイオマス材料冷却工程(S4)を、バイオマス材料乾燥工程(S1)と樹脂組成物調製工程(S2)との間に設けてもよい。本工程は、例えば、
図9に示す製造装置200を用いて実現され得る。製造装置200は、加熱撹拌機201と、冷却撹拌機202と、押出機203と、を有しうる。なお、押出機203としては、
図4に示す押出機102を用いてもよい。
【0109】
図9に示す加熱撹拌機201内でバイオマス材料と熱可塑性樹脂とが加熱攪拌される。加熱撹拌機201内でバイオマス材料と熱可塑性樹脂と低融点添加剤とが加熱攪拌されてもよい。その後、バイオマス材料と熱可塑性樹脂等との混合物は、冷却撹拌機202に移され、低融点添加剤の溶融温度以上であって、その溶融温度近傍まで冷却撹拌機202中で攪拌されながら冷却されてもよい。なお、バイオマス材料と熱可塑性樹脂等との混合物を攪拌せずに冷却してもよい。
【0110】
成形体は、前記のとおり、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物のみから成形された単層のものに加えて、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物とは異なる種類の樹脂組成物を多層押出成形して、異なる種類の樹脂層同士が積層された積層体であってもよい。このような積層体である成形体の製造方法の例について以下に説明する。
【0111】
積層体である成形体の製造方法の例は、外部に発熱部を備えた容器内にバイオマス材料を収容し、前記発熱部によって前記容器内を加熱しながら、攪拌して、前記バイオマス材料を乾燥させるバイオマス材料乾燥工程と、前記バイオマス材料乾燥工程で乾燥させられたバイオマス材料と熱可塑性樹脂とを混合して、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物を調製する樹脂組成物調製工程と、前記樹脂組成物調製工程で調製された前記バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物と、当該バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物とは異なる種類の樹脂組成物を多層押出成形して、異なる種類の樹脂層同士が積層された積層体を得る多層押出成形工程と、を含みうる。
【0112】
図10は、積層体である成形体の製造方法を示すフローチャートである。
図11は、積層体である成形体の製造方法で用いる多層共押出成形機の一例を示す摸式図である。
【0113】
図10に示すように、積層体である成形体の製造方法は、バイオマス材料乾燥工程(S1)、樹脂組成物調製工程(S2)及び多層押出成形工程(S5)を含みうる。なお、バイオマス材料乾燥工程(S1)、及び樹脂組成物調製工程(S2)は、第1の実施形態と同じ工程であるので説明は省略する。また、バイオマス材料乾燥工程(S1)と樹脂組成物調製工程(S2)との間に前記したバイオマス材料冷却工程(S4)が設けられてもよい。以下、多層押出成形工程(S5)について説明する。
【0114】
[多層押出成形工程(S5)]
【0115】
多層押出成形工程(S5)においては、バイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物とは異なる種類の樹脂組成物を押出し、異なる種類の樹脂層同士が積層されるように成形して積層体を得る。積層体は、例えば、
図11に示す多層共押出成形機300を用いて得ることができる。多層共押出成形機300は、A層用押出機301と、B層用押出機302と、C層用押出機303と、フィードブロック304と、ダイス305とを有しうる。多層共押出成形機300により、バイオマス材料を含有するB層を中層とし、A層とC層とを表層とする、A層とB層とC層とが積層された三層構造シート306が共押出しされる。B層用押出機302は、前記樹脂組成物調製工程(S2)で調製されたバイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物を押出し、A層用押出機301とC層用押出機303のそれぞれは、B層用押出機302から押出されるバイオマス材料含有熱可塑性樹脂組成物とは異なる種類の熱可塑性樹脂組成物を押出す。
【0116】
(3)物性
【0117】
本実施形態に係る成形体の物性について以下に説明する。以下、本実施形態に係る成形体の物性として開き角度について説明する。開き角度は、本実施形態に係る成形体を使用した包装容器等の「つぶしやすさ」を表す特性をいう。すなわち、開き角度は、包装容器等をつぶした際、つぶしやすく、且つ、つぶされた形が保持されやすさを表すための特性である。開き角度が小さいほどつぶしやすく、つぶされた形が保持され、大きく減容化を達成することが可能となる。
【0118】
[開き角度]
【0119】
本実施形態に係る成形体を二つ折りにした状態で圧縮し、圧縮後における成形体の開き角度αを求めた。
【0120】
図12は圧縮試験に使用するシート状成形体から切り出した10cm×10cmの試料シートSを示す図である。
図13は、荷重をかける前の圧縮試験機の可動プレートUPと固定プレートLPの間の初期間隔を40mmとして、10cm×10cmの試料シートSを二つ折にして可動プレートUPと固定プレートLPの間に挟み込んで載置した様子を示す摸式図である。可動プレートUPは、電動機(図示しない)によって進退可能に保持させられている。
【0121】
電動機を制御し、固定プレートLP、試料Sに対して可動プレートUPを作動させ、試料シートSを任意且つ所望の圧力で継続的に加圧処理し、
図14に示されるように固定プレートLPと可動プレートUPの間の間隔が2.5mmになるまで加圧する。加圧処理終了後、固定プレートLPと可動プレートUPの間隔を広げて、試料シートSを取り出し、荷重を解除してから1分経過後に試料シートSの開き角度αを測定する。
【0122】
図15、及び
図16は、試料シートSの開き角度αを示す摸式図である。
図15に示される試料シートSは、
図16に示される試料シートSよりも開き角度αが小さく、包装容器等に成型した場合により簡単に潰すことができ、元の状態に戻りにくいものである。開き角度αは、例えば圧縮後のシート試料Sを写真撮影し、撮影写真を分度器等で実測して求めることができる。また、試料シートSの断面を見る方向の画像に関し画像ソフトを用いて、二値化を行い、二つ折にされた試料シートSの表面に挟まれる角度αを測定して求めてもよい。本実施形態に係る成形体の開き角度は100°以下であり、好ましくは90°以下であり、より好ましくは80°以下であり、さらに好ましくは70°以下である。
【0123】
2.第2の実施形態(成形体の他の例)
【0124】
(1)成形体の構成
【0125】
上記1.の「(1)成形体の構成」において述べた成形体の構成に関する説明の全てが、第2の実施形態についても当てはまる。したがって、第2の実施形態に係る成形体の構成についての説明は省略する。
【0126】
(2)成形体の製造方法
【0127】
上記1.の「(2)成形体の製造方法」において述べた成形体の製造方法に関する説明の全てが、第2の実施形態についても当てはまる。したがって、第2の実施形態に係る成形体の製造方法についての説明は省略する。
【0128】
(3)物性
【0129】
本実施形態に係る成形体の物性について以下に説明する。以下、本実施形態に係る成形体の物性として所定圧縮移動量における荷重値について説明する。所定圧縮移動量における荷重値とは、本実施形態に係る成形体を使用した包装容器等の「つぶしやすさ」を表す特性をいう。すなわち、所定圧縮移動量における荷重値は、包装容器等をつぶした際、つぶしやすく、且つ、つぶされた形が保持されやすさを表すための特性である。荷重値が小さいほどつぶしやすく、つぶされた形が保持され、大きく減容化を達成することが可能となる。
【0130】
[所定圧縮移動量における荷重値]
【0131】
第1の実施形態に係る成形体の開き角度の測定と同様に、本実施形態に係る成形体を二つ折りにした状態で圧縮し、所定圧縮移動量における荷重値を求めた。
【0132】
以下、所定圧縮移動量における荷重値について説明する。第1の実施形態に係る成形体の開き角度を求めた際に使用した試料シートS及び圧縮試験機を使用する。第1の実施形態と同じように圧縮試験機を使用して試料シートSに圧縮試験を行う。圧縮試験機の可動プレートUPの移動量(圧縮移動量)が35mmとなった時点における荷重値を測定する。移動量(圧縮移動量)が35mmとなった時点における荷重値が小さいほど包装容器等に成型した場合により簡単に潰すことができ、元の状態に戻りにくいものである。本実施形態に係る成形体は、厚みが0.55mmの場合、圧縮移動量(圧縮移動量)が35mmとなった時点における荷重値が50N以下であり、好ましくは、45N以下であり、より好ましくし40N以下であり、さらに好ましくは35N以下である。また、本実施形態に係る成形体は、厚みが0.45mmの場合、圧縮移動量(圧縮移動量)が35mmとなった時点における荷重値が好ましくは30N以下であり、好ましくは、25N以下であり、より好ましくし23N以下であり、さらに好ましくは20N以下である。
【0133】
3.第3の実施形態(成形体の使用例)
【0134】
(1)包装容器の構成
【0135】
第1の実施形態に係る成形体又は第2の実施形態に係る成形体を使用して本実施形態に係る包装容器を得ることができる。以下、本実施形態に係る包装容器の構成について、図面を参照して説明する。
なお、本明細書においては、「食品等が載置される面が上方を向くように水平面上に置いた対象物(例えば、包装容器等)に対して垂直の方向」を「厚さ方向」といい、この「厚さ方向に直交する平面内の任意の方向」を「平面方向」という。また、「食品等が載置される面が上方を向くように水平面上に置いた対象物(例えば、包装容器等)を垂直方向の上方側から厚さ方向に見ること」を「平面視」という。さらに、包装容器の厚さ方向において相対する2つの面のうち、食品等が載置される一方の面を「内側表面」といい、その反対側の他方の面を「外側表面」という。
【0136】
図17~
図23に示されるように、容器本体10は、平面視正方形の底部11と、底部11の周縁部から所定の傾斜角で立設された4つの側壁部12A、側壁部12B、側壁部12C、側壁部12Dとを備える。側壁部12Aと、側壁部12Bは互いに対向し、側壁部12Cと、側壁部12Dは互いに対向する。側壁部12Aの側端部分と側壁部12Cの側端部分によってコーナー部15Aが形成される。コーナー部15Aの内側表面は、側壁部12Aの内側表面において最もコーナー部15Aに近接する凸条14Aと、側壁部12Cの内側表面において最もコーナー部15Aに近接する凸条14Aとによって挟まれている。側壁部12Cの側端部分と側壁部12Bの側端部分によってコーナー部15Bが形成される。コーナー部15Bの内側表面は、側壁部12Cの内側表面において最もコーナー部15Bに近接する凸条14Aと、側壁部12Bの内側表面において最もコーナー部15Bに近接する凸条14Aとによって挟まれている。側壁部12Bの側端部分と側壁部12Dの側端部分によってコーナー部15Cが形成される。コーナー部15Cの内側表面は、側壁部12Bの内側表面において最もコーナー部15Cに近接する凸条14Aと、側壁部12Dの内側表面において最もコーナー部15Cに近接する凸条14Aとによって挟まれている。側壁部12Dの側端部分と側壁部12Aの側端部分によってコーナー部15Dが形成される。コーナー部15Dの内側表面は、側壁部12Dの内側表面において最もコーナー部15Dに近接する凸条14Aと、側壁部12Aの内側表面において最もコーナー部15Dに近接する凸条14Aとによって挟まれている。容器本体10は、上端に開口部17が形成され、底部11と、側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dとで囲まれた内部空間が収容部19とされている。
【0137】
図17及び
図18に示されるように、側壁部12A、側壁部12B、側壁部12C、側壁部12Dの端部(厚さ方向において底部11とは反対側に位置する端部)において、平面方向の外方側に向かって延びるフランジ部13A、フランジ部13B、フランジ部13C、フランジ部13Dが形成されている。なお、フランジ部13Aは、コーナー部15Aとコーナー部15Dに挟まれており、フランジ部13Bは、コーナー部15Bとコーナー部15Cに挟まれており、フランジ部13Cは、コーナー部15Aとコーナー部15Bに挟まれており、フランジ部13Dは、コーナー部15Cとコーナー部15Dに挟まれている。なお、コーナー部15Aの上端においてはフランジ部13Aとフランジ部13Cは重なりあい、コーナー部15Bの上端においてはフランジ部13Cとフランジ部13Bは重なりあい、コーナー部15Cの上端においてはフランジ部13Bとフランジ部13Dは重なりあい、コーナー部15Dの上端においてはフランジ部13Dとフランジ部13Aは重なりあっている。
【0138】
図17及び
図18に示されるように、フランジ部13A、フランジ部13B、フランジ部13C、フランジ部13Dは開口部17を周回する。容器本体10の収容部19に食品等を収容した後、収容部19の内部空間を密封するように、シール用フィルム(図示しない)がフランジ部13A、13B、13C、13Dの上面に接合される。シール用フィルムは、特に制限されないが、好ましくは塩化ビニル樹脂等から形成されたラップフィルムであってもよい。シール用フィルムと各フランジ部13A、13B、13C、13Dとの接合手段は、特に制限されないが、ヒートシール等により行われてもよい。また、シール用フィルムによる収容部19の内部空間の密封に際し、収容部19の内部空間が密封されるのであればシール用フィルムが容器本体10の外側表面を覆う範囲は制限されない。例えば、シール用フィルムがフランジ部13A、13B、13C、13Dの上面に接しつつ、容器本体10の底部11の外側表面まで覆うように容器本体10を覆い包んでもよく、また、底部11の外側表面まで覆っていなくても、側壁部12の外側表面の一部分を覆っていてもよく、さらに、シール用フィルムがフランジ部13A、13B、13C、13Dによって囲まれる範囲である開口部17のみを覆っていてもよい。
【0139】
図17、
図18及び
図22に示されるように、側壁部12Aの内側表面と、側壁部12Bの内側表面には、底部11からフランジ部13A、フランジ部13Bのそれぞれの端部に向かって上下方向に延びる複数の凸条14Aが形成されている。また、
図22に示されるように、側壁部12Aの内側表面と、側壁部12Bの内側表面には、底部11からフランジ部13A、フランジ部13Bのそれぞれの端部に向かって上下方向に延び、長さH
11がそれぞれ側壁部12A、側壁部12Bの長さH
01の1/4~3/4である複数の凸条14Bが形成されている。凸条14Aと凸条14Bは、容器本体10の上下方向に延びる凸状のものであり、補強部として機能しうる。側壁部12Aの内側表面において、コーナー部15Aからコーナー部15Dに向かって、凸条14Aと隣接する凸条14Aとの間隔、凸条14Aと隣接する凸条14Bとの間隔、及び凸条14Bと隣接する凸条14Aとの間隔は均等である。同様に側壁部12Bの内側表面において、コーナー部15Bからコーナー部15Cに向かって、凸条14Aと隣接する凸条14Aとの間隔、凸条14Aと隣接する凸条14Bとの間隔、及び凸条14Bと隣接する凸条14Aとの間隔は均等である。
【0140】
図17及び
図18に示されるように、側壁部12Aの内側表面において、凸条14Aと隣接する凸条14Aとの間、凸条14Aと隣接する凸条14Bとの間に形成され、側壁部12Aの内側表面に対して凹形をなし、底部11からフランジ部13Aの端部に向かって上下方向に延びる凹条18Aが形成されている。
図18に示されるように、底部11において、凹条18Aは、側壁部12Aの内側表面から側壁部12Bの内側表面に向かって、側壁部12Aに形成された凹条18Aと同じ幅で所定の長さH
12で形成されている。
【0141】
図17及び
図18に示されるように、側壁部12Bの内側表面において、凸条14Aと隣接する凸条14Aとの間、凸条14Aと隣接する凸条14Bとの間に形成され、側壁部12Bの内側表面に対して凹形をなし、底部11からフランジ部13Bの端部に向かって上下方向に延びる凹条18Aが形成されている。
図18に示されるように、底部11において、凹条18Aは、側壁部12Bの内側表面から側壁部12Aの内側表面に向かって、側壁部12Bに形成された凹条18Aと同じ幅で所定の長さH
12で形成されている。
【0142】
図17及び
図18に示されるように、長さH
01である側壁部12Cの内側表面と、長さH
01である側壁部12Dの内側表面には、底部11からフランジ部13C、フランジ部13Dのそれぞれの端部に向かって上下方向に延びる複数の凸条14Aが形成されている。
【0143】
図17、
図18及び
図23に示されるように、側壁部12Cの内側表面において、凸条14Aと隣接する凸条14Aとの間に形成され、側壁部12Cの内側表面に対して凹形をなし、底部11からフランジ部13Cの端部に向かって上下方向に延びる凹条18Aが形成されている。
図18に示されるように、底部11において、凹条18Aは、側壁部12Cの内側表面から側壁部12Dの内側表面に向かって、側壁部12Cに形成された凹条18Aと同じ幅で所定の長さH
12で形成されている。
【0144】
図17及び
図18に示されるように、側壁部12Dの内側表面において、凸条14Aと隣接する凸条14Aとの間に形成され、側壁部12Dの内側表面に対して凹形をなし、底部11からフランジ部13Dの端部に向かって上下方向に延びる凹条18Aが形成されている。
図18に示されるように、底部11において、凹条18Aは、側壁部12Dの内側表面から側壁部12Cの内側表面に向かって、側壁部12Dに形成された凹条18Aと同じ幅で所定の長さH
12で形成されている。
【0145】
底部11において、コーナー部15Aのコーナー部15D側に隣接する凸条14Aには、コーナー部15Aとコーナー部15D側の凹条18Aとを連通する溝部16が形成されている。コーナー部15Bのコーナー部15A側に隣接する凸条14Aには、コーナー部15Bとコーナー部15A側の凹条18Aとを連通する溝部16が形成されている。コーナー部15Cのコーナー部15B側に隣接する凸条14Aには、コーナー部15Cとコーナー部15B側の凹条18Aとを連通する溝部16が形成されている。コーナー部15Dのコーナー部15C側に隣接する凸条14Aには、コーナー部15Dとコーナー部15C側の凹条18Aとを連通する溝部16が形成されている。なお、溝部16は、複数設けられていてもよい。
【0146】
容器本体10の大きさは、収容される食品等内容物の大きさや数量等に応じて適宜設定される。側壁部12A、12B、12C、12Dの厚みは、食品等内容物の重量を考慮して適宜決定される。なお、側壁部12A、12B、12C、12Dの厚みとは、側壁部12の内側表面の基準面(側壁部12A、12B、12C、12Dの内側表面において凹条18Aが設けられていないと仮想される場合の仮想表面をいう)と、凸条14Aの突端までの距離をいう。
底部11の厚みは、側壁部12A、12B、12C、12Dの厚みと同様である。底部11の厚みと側壁部12A、12B、12C、12Dの厚みは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0147】
図18に示されるように、容器本体10の底部11の上面11aには、凹条18Aが形成された場所を除いて、全面にわたって、上方に向かって所定の高さで突出したリブ状凸部20と、リブ状凸部20によってハニカム状に画した平面視六角形の凹部21が形成されている。リブ状凸部20により、容器本体10同士が積み重ねられた際、容器本体10の底部11の上面11aと、積み重ねられた容器本体10の底部11の下面11bとの間に空間を生じさせることができ、上面11aと下面11bとの密着(ブロックキング)を防止することができる。リブ状凸部20は、断面が丸みのある形状、例えば、断面が半円形又は角を丸く面取りした四角形等の所定高さの丸みのあるものであってよい。このようなリブ状凸部20により、ハニカム状に画した平面視六角形の多数の凹部21が多数形成されてハニカム構造となしている。このように多数の凹部21によるハニカム構造となすことにより、容器本体10同士が積み重ねられた際、容器本体10の底部11の上面11aと、積み重ねられた容器本体10の底部11の下面11bとの間に空間を生じさせることができ、上面11aと下面11bとの密着(ブロックキング)を防止することができる。なお、リブ状凸部20に溝部16が設けられて当該リブ状凸部20を介して隣接する平面視六角形の凹部21同士が連通するようにされていてもよい。このような溝部16は複数個所設けられていてもよい。
【0148】
また、容器本体10の底部11の下面11bについても、周縁部を除いて、前記上面11aのリブ状凸部20及び多数の凹部21により形成されたハニカム構造となしていてもよい。前記ハニカム構造における凹部21の深さは適宜設定され得るが、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下がさらに好ましい。
【0149】
(2)包装容器の他の構成
【0150】
本実施形態に係る包装容器は、上記3.の「(1)包装容器の構成」において述べた包装容器よりも深さがより浅いものである以外は上記3.の「(1)包装容器の構成」において述べた包装容器と同様の構成を有する。上記3.の「(1)包装容器の構成」において述べた包装容器の構成に関する説明が、本実施形態についても当てはまる。したがって、本実施形態に係る包装容器の構成についての説明は、上記3.の「(1)包装容器の構成」において述べた包装容器と相違する点以外は省略する。
図24~
図30に示される本実施形態において上記3.の「(1)包装容器の構成」において述べた包装容器と同様の箇所には同一の符号を付す。本実施形態に係る包装容器の容器本体は、側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dのそれぞれの長さが第1の実施形態に係る包装容器における側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dのそれぞれの長さよりも短いこと以外は、上記3.の「(1)包装容器の構成」において述べた包装容器の容器本体10と同じである。以下で、本実施形態に係る包装容器の容器本体10について、上記3.の「(1)包装容器の構成」において述べた包装容器の容器本体と相違する点について説明する。
【0151】
図24~
図30に示されるように、本実施形態に係る包装容器は、側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dのそれぞれの長さH
02が、上記3.の「(1)包装容器の構成」において述べた包装容器の側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dのそれぞれの長さH
01よりも短い点以外は、上記3.の「(1)包装容器の構成」において述べた包装容器と同一の構成を有するものである。より詳細には、側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dのそれぞれの長さH
02が、第1の実施形態に係る包装容器の側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dのそれぞれの長さH
01の好ましくは90%以下の長さであってもよく、より好ましくは70%以下の長さであってもよく、さらに好ましくは50%以下の長さであってもよく、さらにより好ましくは30%以下の長さであってもよい。
【0152】
図24、
図25及び
図29に示されるように、側壁部12Aの内側表面と、側壁部12Bの内側表面には、底部11からフランジ部13A、フランジ部13Bのそれぞれの端部に向かって上下方向に延びる複数の凸条14Aが形成されている。また、
図29に示されるように、側壁部12Aの内側表面と、側壁部12Bの内側表面には、底部11からフランジ部13A、フランジ部13Bのそれぞれの端部に向かって上下方向に延び、長さH
22がそれぞれ側壁部12A、側壁部12Bの長さH
02の1/4~3/4である複数の凸条14Bが形成されている。凸条14Aと凸条14Bは、容器本体10の上下方向に延びる凸状のものであり、補強部として機能しうる。側壁部12Aの内側表面において、コーナー部15Aからコーナー部15Dに向かって、凸条14Aと隣接する凸条14Aとの間隔、凸条14Aと隣接する凸条14Bとの間隔、及び凸条14Bと隣接する凸条14Aとの間隔は均等である。同様に側壁部12Bの内側表面において、コーナー部15Bからコーナー部15Cに向かって、凸条14Aと隣接する凸条14Aとの間隔、凸条14Aと隣接する凸条14Bとの間隔、及び凸条14Bと隣接する凸条14Aとの間隔は均等である。
【0153】
図24及び
図25に示されるように、側壁部12Cの内側表面と、側壁部12Dの内側表面には、底部11からフランジ部13C、フランジ部13Dのそれぞれの端部に向かって上下方向に延びる複数の凸条14Aが形成されている。
【0154】
図24、
図25及び
図30に示されるように、側壁部12Cの内側表面において、凸条14Aと隣接する凸条14Aとの間に形成され、側壁部12Cの内側表面に対して凹形をなし、底部11からフランジ部13Cの端部に向かって上下方向に延びる凹条18Aが形成されている。
図25に示されるように、底部11において、凹条18Aは、側壁部12Cの内側表面から側壁部12Dの内側表面に向かって、側壁部12Cに形成された凹条18Aと同じ幅で所定の長さH
12で形成されている。
【0155】
図24、
図25及び
図30に示されるように、側壁部12Dの内側表面において、凸条14Aと隣接する凸条14Aとの間に形成され、側壁部12Dの内側表面に対して凹形をなし、底部11からフランジ部13Dの端部に向かって上下方向に延びる凹条18Aが形成されている。
図25に示されるように、底部11において、凹条18Aは、側壁部12Dの内側表面から側壁部12Cの内側表面に向かって、側壁部12Dに形成された凹条18Aと同じ幅で所定の長さH
12で形成されている。
【0156】
(3)包装容器の他の構成
【0157】
本実施形態に係る包装容器は、底部が平面視長方形である点以外は上記3.の「(1)包装容器の構成」において述べた包装容器と同様の構成のものである。上記3.の「(1)包装容器の構成」において述べた包装容器の構成に関する説明が、本実施形態についても当てはまる。したがって、本実施形態に係る包装容器の構成についての説明は、上記3.の「(1)包装容器の構成」において述べた包装容器と相違する点以外は省略する。
【0158】
なお、
図31~
図37に示される本実施形態に係る包装容器において上記3.の「(1)包装容器の構成」において述べた包装容器と同様の箇所には同一の符号を付す。本実施形態に係る包装容器の容器本体は、
図31~
図37に示されるように、容器本体10は、平面視長方形の底部11と、底部11の周縁部から所定の傾斜角で立設され、それぞれの長さがH
03である4つの側壁部12A、側壁部12B、側壁部12C、側壁部12Dとを備える。側壁部12Aと、側壁部12Bは互いに対向し、側壁部12Cと、側壁部12Dは互いに対向する。側壁部12Aの側端部分と側壁部12Cの側端部分によってコーナー部15Aが形成される。コーナー部15Aの内側表面は、側壁部12Aの内側表面において最もコーナー部15Aに近接する凸条14Aと、側壁部12Cの内側表面において最もコーナー部15Aに近接する凸条14Aとによって挟まれている。側壁部12Cの側端部分と側壁部12Bの側端部分によってコーナー部15Bが形成される。コーナー部15Bの内側表面は、側壁部12Cの内側表面において最もコーナー部15Bに近接する凸条14Aと、側壁部12Bの内側表面において最もコーナー部15Bに近接する凸条14Aとによって挟まれている。側壁部12Bの側端部分と側壁部12Dの側端部分によってコーナー部15Cが形成される。コーナー部15Cの内側表面は、側壁部12Bの内側表面において最もコーナー部15Cに近接する凸条14Aと、側壁部12Dの内側表面において最もコーナー部15Cに近接する凸条14Aとによって挟まれている。側壁部12Dの側端部分と側壁部12Aの側端部分によってコーナー部15Dが形成される。コーナー部15Dの内側表面は、側壁部12Dの内側表面において最もコーナー部15Dに近接する凸条14Aと、側壁部12Aの内側表面において最もコーナー部15Dに近接する凸条14Aとによって挟まれている。容器本体10は、上端に開口部17が形成され、底部11と、側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dとで囲まれた内部空間が収容部19とされている。
【0159】
図31及び
図32に示されるように、側壁部12A、側壁部12B、側壁部12C、側壁部12Dの端部(厚さ方向において底部11とは反対側に位置する端部)において、平面方向の外方側に向かって延びるフランジ部13A、フランジ部13B、フランジ部13C、フランジ部13Dが形成されている。なお、フランジ部13Aは、コーナー部15Aとコーナー部15Dに挟まれており、フランジ部13Bは、コーナー部15Bとコーナー部15Cに挟まれており、フランジ部13Cは、コーナー部15Aとコーナー部15Bに挟まれており、フランジ部13Dは、コーナー部15Cとコーナー部15Dに挟まれている。なお、コーナー部15Aの上端においてはフランジ部13Aとフランジ部13Cは重なりあい、コーナー部15Bの上端においてはフランジ部13Cとフランジ部13Bは重なりあい、コーナー部15Cの上端においてはフランジ部13Bとフランジ部13Dは重なりあい、コーナー部15Dの上端においてはフランジ部13Dとフランジ部13Aは重なりあっている。
【0160】
図31及び
図32に示されるように、フランジ部13A、フランジ部13B、フランジ部13C、フランジ部13Dは開口部17を周回する。容器本体10の収容部19に食品等を収容した後、収容部19の内部空間を密封するように、シール用フィルム(図示しない)がフランジ部13A、13B、13C、13Dの上面に接合される。シール用フィルムは、特に制限されないが、好ましくは塩化ビニル樹脂等から形成されたラップフィルムであってもよい。シール用フィルムと各フランジ部13A、13B、13C、13Dとの接合手段は、特に制限されないが、ヒートシール等により行われてもよい。また、シール用フィルムによる収容部19の内部空間の密封に際し、収容部19の内部空間が密封されるのであればシール用フィルムが容器本体10の外側表面を覆う範囲は制限されない。例えば、シール用フィルムがフランジ部13A、13B、13C、13Dの上面に接しつつ、容器本体10の底部11の外側表面まで覆うように容器本体10を覆い包んでもよく、また、底部11の外側表面まで覆っていなくても、側壁部12の外側表面の一部分を覆っていてもよく、さらに、シール用フィルムがフランジ部13A、13B、13C、13Dによって囲まれる範囲である開口部17のみを覆っていてもよい。
【0161】
図31及び
図32に示されるように、側壁部12Aの内側表面と、側壁部12Bの内側表面と、側壁部12Cの内側表面と、側壁部12Dの内側表面のそれぞれには、底部11からフランジ部13A、フランジ部13B、フランジ部13C、フランジ部13Dのそれぞれの端部に向かって上下方向に延びる複数の凸条14Aが形成されている。凸条14Aは、容器本体10の上下方向に延びる凸状のものであり、補強部として機能しうる。側壁部12Aの内側表面、側壁部12Bの内側表面、側壁部12Cの内側表面、及び側壁部12Dの内側表面のそれぞれにおいて、隣接する凸条14A同士の間隔は均等である。
【0162】
図31及び
図32に示されるように、側壁部12Aの内側表面において、隣接する凸条14A同士の間に形成され、側壁部12Aの内側表面に対して凹形をなし、底部11からフランジ部13Aの端部に向かって上下方向に延びる凹条18Aが形成されている。
図32に示されるように、底部11において、凹条18Aは、側壁部12Aの内側表面から側壁部12Bの内側表面に向かって、側壁部12Aに形成された凹条18Aと同じ幅で所定の長さH
32で形成されている。
【0163】
図31及び
図32に示されるように、側壁部12Bの内側表面において、隣接する凸条14A同士の間に形成され、側壁部12Bの内側表面に対して凹形をなし、底部11からフランジ部13Bの端部に向かって上下方向に延びる凹条18Aが形成されている。
図32に示されるように、底部11において、凹条18Aは、側壁部12Bの内側表面から側壁部12Aの内側表面に向かって、側壁部12Bに形成された凹条18Aと同じ幅で所定の長さH
32で形成されている。
【0164】
図31及び
図32に示されるように、側壁部12Cの内側表面において、隣接する凸条14A同士の間に形成され、側壁部12Cの内側表面に対して凹形をなし、底部11からフランジ部13Cの端部に向かって上下方向に延びる凹条18Aが形成されている。
図32に示されるように、底部11において、凹条18Aは、側壁部12Cの内側表面から側壁部12Dの内側表面に向かって、側壁部12Cに形成された凹条18Aと同じ幅で所定の長さH
32で形成されている。
【0165】
図31及び
図32に示されるように、側壁部12Dの内側表面において、隣接する凸条14A同士の間に形成され、側壁部12Dの内側表面に対して凹形をなし、底部11からフランジ部13Dの端部に向かって上下方向に延びる凹条18Aが形成されている。
図32に示されるように、底部11において、凹条18Aは、側壁部12Dの内側表面から側壁部12Cの内側表面に向かって、側壁部12Dに形成された凹条18Aと同じ幅で所定の長さH
32で形成されている。
【0166】
図32に示すように、底部11において、コーナー部15Aのコーナー部15B側に近接する凸条14Aに隣接する凸条14Aには、コーナー部15Aに近接する凹条18Aと当該凹条18Aのコーナー部15B側に隣接する凹条18Aとを連通する溝部16が形成されている。コーナー部15Bのコーナー部15C側に近接する凸条14Aに隣接する凸条14Aには、コーナー部15Bに近接する凹条18Aと当該凹条18Aのコーナー部15C側に隣接する凹条18Aとを連通する溝部16が形成されている。コーナー部15Cのコーナー部15D側に近接する凸条14Aに隣接する凸条14Aには、コーナー部15Cに近接する凹条18Aと当該凹条18Aのコーナー部15D側に隣接する凹条18Aとを連通する溝部16が形成されている。コーナー部15Dのコーナー部15A側に近接する凸条14Aに隣接する凸条14Aには、コーナー部15Dに近接する凹条18Aと当該凹条18Aのコーナー部15A側に隣接する凹条18Aとを連通する溝部16が形成されている。なお、溝部16は複数設けられていてもよい。
【0167】
図32に示されるように、容器本体10の底部11の上面11aには、凹条18Aが形成された場所を除いて、全面にわたって、上方に向かって所定の高さで突出したリブ状凸部20と、リブ状凸部20によってハニカム状に画した平面視六角形の凹部21が形成されている。リブ状凸部20により、容器本体10同士が積み重ねられた際、容器本体10の底部11の上面11aと、積み重ねられた容器本体10の底部11の下面11bとの間に空間を生じさせることができ、上面11aと下面11bとの密着(ブロックキング)を防止することができる。リブ状凸部20は、断面が丸みのある形状、例えば、断面が半円形又は角を丸く面取りした四角形等の所定高さの丸みのあるものであってよい。このようなリブ状凸部20により、ハニカム状に画した平面視六角形の多数の凹部21が多数形成されてハニカム構造となしている。このように多数の凹部21によるハニカム構造となすことにより、容器本体10同士が積み重ねられた際、容器本体10の底部11の上面11aと、積み重ねられた容器本体10の底部11の下面11bとの間に空間を生じさせることができ、上面11aと下面11bとの密着(ブロックキング)を防止することができる。なお、リブ状凸部20に溝部16が設けられて当該リブ状凸部20を介して隣接する平面視六角形の凹部21同士が連通するようにされていてもよい。このような溝部16は複数個所設けられていてもよい。
【0168】
また、容器本体10の底部11の下面11bについても、周縁部を除いて、前記上面11aのリブ状凸部20及び多数の凹部21により形成されたハニカム構造となしていてもよい。前記ハニカム構造における凹部21の深さは適宜設定され得るが、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下がさらに好ましい。
【0169】
(4)包装容器の他の構成
【0170】
本実施形態に係る包装容器は、上記3.の「(3)包装容器の他の構成」において述べた包装容器よりも深さがより浅いものである以外は上記3.の「(3)包装容器の他の構成」において述べた包装容器と同様の構成を有する。上記3.の「(3)包装容器の他の構成」において述べた包装容器の構成に関する説明が、本実施形態についても当てはまる。したがって、本実施形態に係る包装容器の構成についての説明は、上記3.の「(3)包装容器の他の構成」において述べた包装容器と相違する点以外は省略する。
なお、
図38~
図44に示される本実施形態に係る包装容器において上記3.の「(3)包装容器の他の構成」において述べた包装容器と同様の箇所には同一の符号を付す。本実施形態に係る包装容器の容器本体は、側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dのそれぞれの長さH
04が第3の実施形態に係る包装容器における側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dのそれぞれの長さH
03よりも短いこと以外は、上記3.の「(3)包装容器の他の構成」において述べた包装容器の容器本体10と同じである。以下で、本実施形態に係る包装容器の容器本体10について、上記3.の「(3)包装容器の他の構成」において述べた包装容器の容器本体と相違する点について説明する。
【0171】
図38~
図44に示されるように、本実施形態に係る包装容器は、側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dのそれぞれの長さH
04が、第3の実施形態に係る包装容器の側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dのそれぞれの長さH
03よりも短い点以外は、上記3.の「(3)包装容器の他の構成」において述べた包装容器と同一の構成を有するものである。より詳細には、側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dのそれぞれの長さH
04が、第3の実施形態に係る包装容器の側壁部12Aと、側壁部12Bと、側壁部12Cと、側壁部12Dのそれぞれの長さH
03の好ましくは90%以下の長さであってもよく、より好ましくは70%以下の長さであってもよく、さらに好ましくは50%以下の長さであってもよく、さらにより好ましくは30%以下の長さであってもよい。
【0172】
4.実施例
【0173】
以下、実施例に基づいて本発明を、さらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明の範囲は、これらの実施例のみに限定されるものでない。実施例中、用いる評価方法は上記1.(3)物性及び上記2.(3)物性で説明した方法のとおりである。
【0174】
(実施例1)
【0175】
図9に示す装置200の加熱撹拌機201(外部加熱ジャケット式ミキサー、株式会社カワタ)内で、各成分の合計100質量部(乾燥前トウモロコシ澱粉比率)に対して、初期水分率が14%のトウモロコシ澱粉(昭和産業株式会社製)57質量部と、グリセリン脂肪酸エステル0.6質量部とを混合し、加熱ジャケット温度150℃にて20分乾燥を行った。乾燥後のトウモロコシ澱粉の水分率は2%であり、乾燥時間が短く、加熱撹拌機201は処理能力が高いものであった。前記混合により得られたトウモロコシ澱粉と低融点添加剤との混合物を、
図9に示す装置の冷却撹拌機202内に移し、混合物の材料温度が20~40℃となるまで、5~15分間冷却した。その後、冷却された、トウモロコシ澱粉と低融点添加剤との混合物と、ポリプロピレン(商品名:CS356M、サンアロマー株式会社製)19.2質量部と、ポリプロピレン(商品名:FH1016、住友化学社製)10.1質量部と、ステアリン酸亜鉛1質量部と、ステアリン酸マグネシウム3質量部と、スチレン系熱可塑性エラストマー(商品名:セプトン(登録商標)4033、クラレ社製)3質量部と、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン樹脂(商品名:フサボンド(登録商標)N493、デュポン社製)3.1質量部と、白色顔料3質量部とを、二軸押出機(株式会社池貝 PCM30、スクリュー径:30φ)を用いてコンパウンドし、ペレットを得た。得られたペレットを
図11に示す多層共押出成形機300(LAB TECHエンジニアリング社製)のB層用押出機302にホッパー(図示しない)を介して供給した。
【0176】
また、
図11に示す多層共押出成形機300(LAB TECHエンジニアリング社製)のA層用押出機301にホッパー(図示しない)を介してポリプロピレン樹脂組成物(商品名:EG6D、日本ポリプロ株式会社製)と、C層用押出機303にホッパー(図示しない)を介してポリプロピレン樹脂組成物(商品名:EG6D、日本ポリプロ株式会社製)を供給し、A層用押出機、B層用押出機、C層用押出機のそれぞれに供給された樹脂組成物を共押出して、B層を中層とする三層構造の多層シートを得た。
【0177】
なお、A層用押出機301(型番:LE25-30/C(LAB TECHエンジニアリング社製)、L/D:30、φ:250mm)、B層用押出機302(型番:LE25-30/C(LAB TECHエンジニアリング社製)、L/D:30、φ:250mm)、及びC層用押出機303(型番:LE25-30/C(LAB TECHエンジニアリング社製)、L/D:30、φ:250mm)のシリンダ温度とアダプタ温度をそれぞれ200℃に設定した。また、B層用押出機302のスクリュー速度を90RPMとし、A層用押出機301とC層用押出機303それぞれのスクリュー速度を20RPMとした。
【0178】
前記多層押出成形によって、厚み0.55mmのシート(以下、「実施例1の澱粉含有シート」ともいう)を得た。A層の厚みは35μmであり、B層の厚みは480μmであり、C層の厚みは35μmであった。
【0179】
さらに、
図12に示されるように、得られた多層シートから10cm×10cmの試料シートを切り出した。切り出された試料シートを圧縮し、圧縮後の試料シートの開き角度を求めた。
【0180】
最初に、
図13に示されるように、圧縮装置(東洋精機製作所社製、ストログラフVE20D)の固定プレートLPと可動プレートUPとの間に試料シートSを二つ折りにして挟みこんで載置した。初期間隔は40mmとした。可動プレートUPを、固定プレートLPの方向に進め、試料シートSに対して継続的に加圧処理し、固定プレートLPと可動プレートUPの間の間隔が2.5mmになるまで加圧した。加圧処理終了後、固定プレートLPと可動プレートUPの間隔を広げて、試料シートSを取り出し、荷重を解除してから1分経過後に、
図15に示されるように、試料シートSの開き角度αを測定した。
【0181】
開き角度αは以下のとおりであった。
水準N1:65°
水準N2:75°
水準N3:70°
算術平均:70°
【0182】
(比較例1)
【0183】
実施例1の澱粉含有シートを使用する代わりに、ポリプロピレン(商品名:FH1016、住友化学社製)のみからなるシートを使用して実施例1と同様に試料シートSを得た。実施例1と同様に得られた試料シートSを圧縮し、圧縮後における試料シートSの開き角度αを求めた。
【0184】
開き角度αは以下のとおりであった。
水準N1:118°
水準N2:115°
水準N3:115°
算術平均:116°
【0185】
実施例1及び比較例1から、以下のことが分かる。
【0186】
実施例1の試料シートSと比較例1の試料シートSとを比べると、実施例1の試料シートSは、比較例1の試料シートSよりも開き角度αが小さく、つぶれた後も、形状が保持されて減容化できることが示された。
【0187】
(実施例2)
【0188】
実施例1と同じ試料シートSを使用し、同じ圧縮装置により加圧処理を行った。圧縮移動量と圧縮装置の荷重値の関係を測定した。
図45は圧縮移動量と荷重値の関係を示す図である。
図45より圧縮移動量が35mmとなった時点における荷重値を求めた。
【0189】
図45に示されるように、圧縮移動量が35mmとなった時点における荷重値は以下のとおりであった。
水準N1:19.6N
水準N2:21.9N
算術平均:20.8N
【0190】
(比較例2)
【0191】
比較例1と同じ試料シートSを使用し、同じ圧縮装置により加圧処理を行った。実施例2と同様に圧縮移動量と圧縮装置の荷重値の関係を測定した。
図45は圧縮移動量と荷重値の関係を示す図である。
図45より圧縮移動量が35mmとなった時点における荷重値を求めた。
【0192】
図45に示されるように、圧縮移動量が35mmとなった時点における荷重値は以下のとおりであった。
水準N1:52.9N
水準N2:54.6N
算術平均:53.8N
【0193】
実施例2及び比較例2から、以下のことが分かる。
【0194】
実施例2の試料シートSと比較例2の試料シートSとを比べると、実施例2の試料シートSは、比較例2の試料シートSよりも圧縮移動量が35mm時点における荷重値が小さく、つぶれた後も、形状が保持されて減容化できることが示された。
【0195】
(実施例3)
【0196】
前記多層押出成形によって、厚みを0.45mmのシート(以下、「実施例3の澱粉含有シート」ともいう)とする点以外は実施例1と同じ方法で試料シートSを得た。A層の厚みは35μmであり、B層の厚みは380μmであり、C層の厚みは35μmであった。
【0197】
実施例1と同様に得られた試料シートSを圧縮し、圧縮後における試料シートSの開き角度αを求めた。
【0198】
開き角度αは以下のとおりであった。
水準N1:70°
水準N2:70°
水準N3:65°
算術平均:68°
【0199】
(実施例4)
【0200】
実施例3と同じ試料シートSを使用し、同じ圧縮装置により加圧処理を行った。圧縮移動量と圧縮装置の荷重値の関係を測定した。実施例2と同様に圧縮移動量が35mmとなった時点における荷重値を求めた。
【0201】
圧縮移動量が35mmとなった時点における荷重値は以下のとおりであった。
水準N1:16.6N
水準N2:15.2N
算術平均:15.9N
【0202】
また、上述の実施形態及び実施例の構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等は、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0203】
また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階における数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階における数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0204】
10 容器本体
11 底部
12A 側壁部
12B 側壁部
12C 側壁部
12D 側壁部
13A フランジ部
13B フランジ部
13C フランジ部
13D フランジ部
14A 凸条
14B 凸条
15A コーナー部
15B コーナー部
15C コーナー部
15D コーナー部
16 溝部
17 開口部
18A 凹条
19 周遊部
20 リブ状凸部
21 凹部
40 昇圧試験機
41 メッシュ
42 ギアポンプ
43 単軸スクリュー押出機
101 加熱撹拌機
110 収容部
111 加熱ジャケット
112 攪拌翼
102 押出機
200 製造装置
201 加熱撹拌機
202 冷却撹拌機
203 押出機
300 多層共押出成形機
301 A層用押出機
302 B層用押出機
303 C層用押出機
304 フィードブロック
305 ダイス