(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024813
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制御装置
(51)【国際特許分類】
B62J 45/414 20200101AFI20240216BHJP
B62J 45/415 20200101ALI20240216BHJP
【FI】
B62J45/414
B62J45/415
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127721
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雅史
(72)【発明者】
【氏名】山口 遼太
(72)【発明者】
【氏名】田河 賢治
(57)【要約】
【課題】走行に応じて人力駆動車がどれだけ傾斜したかを検出できる制御システムを提供する。
【解決手段】人力駆動車用の制御装置100であって、人力駆動車の車両本体10に関する車体情報、および、人力駆動車1に作用する荷重に関する荷重情報の少なくとも1つに基づき、人力駆動車に搭載され、加速度、および、傾斜の少なくとも1つを検出するセンサ50の、ライダーの乗車時の仮想傾斜角度変化を設定する。車体情報、および、荷重情報の少なくとも1つは外部制御装置60から制御装置100に入力されてもよい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車の車体に関する車体情報、および、前記人力駆動車に作用する荷重に関する荷重情報の少なくとも1つに基づき、前記人力駆動車に搭載され、加速度、および、傾斜の少なくとも1つを検出するセンサの、ライダーの乗車時の仮想傾斜角度変化を設定する、制御装置。
【請求項2】
前記車体情報、および、前記荷重情報の少なくとも1つは外部制御装置から前記制御装置に入力される、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記車体情報は、前記人力駆動車のタイヤの気圧、前記人力駆動車のフレームのジオメトリ、前記人力駆動車のサスペンションのロックアウト状態、前記サスペンションのモデル、前記サスペンションの減衰率、および、前記サスペンションのリアサスペンションの有無の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記荷重情報は、前記ライダーの体重、身長、乗車時の姿勢、および、性別の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記サスペンションが前記リアサスペンションを有さず、かつ、フロントサスペンションを有する場合と、前記サスペンションが前記リアサスペンション、および、前記フロントサスペンションを有する場合と、において、同じ情報に基づいて互いに異なる前記仮想傾斜角度変化を設定する、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記仮想傾斜角度変化の設定において、前記センサの傾斜角度に関する初期設定値を増減させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記仮想傾斜角度変化の設定において、前記センサの検出値を増減させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記仮想傾斜角度変化の設定において、前記センサの検出値に対して前記仮想傾斜角度変化が反映された角度に相当する処理データを設定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記外部制御装置は、前記制御装置と無線通信するように構成される電子デバイスを含む、
請求項2に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用の制御装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人力駆動車用の制御装置が知られている。例えば、特許文献1には、人力駆動車の前後方向における傾斜角度を検知する傾斜センサと、検知された傾斜角度に応じてアシスト動力を制御する制御装置と、を備える人力駆動車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライダーが人力駆動車に乗車すると、車体の一部が沈み込むことによって、傾斜センサの検出値が傾斜角度に関する初期設定値からずれる場合がある。傾斜センサの検出値が初期設定値からずれた状態で人力駆動車が走行する場合、走行に応じて人力駆動車がどれだけ傾斜するかを検出し難いという問題がある。
【0005】
本開示の目的は、走行に応じて人力駆動車がどれだけ傾斜するかを検出できる制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、人力駆動車の車体に関する車体情報、および、人力駆動車に作用する荷重に関する荷重情報の少なくとも1つに基づき、人力駆動車に搭載され、加速度、および、傾斜の少なくとも1つを検出するセンサの、ライダーの乗車時の仮想傾斜角度変化を設定する。
第1側面の制御装置によれば、走行に応じて人力駆動車がどれだけ傾斜するかを検出できる。
【0007】
第1側面に従う第2側面の制御装置において、車体情報、および、荷重情報の少なくとも1つは外部制御装置から制御装置に入力される。
第2側面の制御装置によれば、車体情報、および、荷重情報の少なくとも1つの入力を容易化できる。
【0008】
第1側面に従う第3側面の制御装置において、車体情報は、人力駆動車のタイヤの気圧、人力駆動車のフレームのジオメトリ、人力駆動車のサスペンションのロックアウト状態、サスペンションのモデル、サスペンションの減衰率、および、サスペンションのリアサスペンションの有無の少なくとも1つを含む。
第3側面の制御装置によれば、車体情報が人力駆動車の傾斜角度に対して比較的大きな影響を与えるパラメータを含むため、設定される仮想傾斜角度変化を実際の傾斜角度の変化に近づけ易くできる。
【0009】
第1側面に従う第4側面の制御装置において、荷重情報は、ライダーの体重、身長、乗車時の姿勢、および、性別の少なくとも1つを含む。
第4側面の制御装置によれば、荷重情報が人力駆動車の傾斜角度に対して比較的大きな影響を与えるパラメータを含むため、設定される仮想傾斜角度変化を実際の傾斜角度の変化に近づけ易くできる。
【0010】
第3側面に従う第5側面の制御装置において、制御装置は、サスペンションがリアサスペンションを有さず、かつ、フロントサスペンションを有する場合と、サスペンションが前記リアサスペンション、および、フロントサスペンションを有する場合と、において、同じ情報に基づいて互いに異なる仮想傾斜角度変化を設定する。
第5側面の制御装置によれば、リアサスペンションの有無による傾斜角度変化の差異を低減できる。
【0011】
第1側面に従う第6側面の制御装置において、制御装置は、仮想傾斜角度変化の設定において、センサの傾斜角度に関する初期設定値を増減させる。
第6側面の制御装置によれば、ライダーの乗車によって生じるセンサの検出値の初期設定値からのズレを緩和できる。
【0012】
第1側面に従う第7側面の制御装置において、制御装置は、仮想傾斜角度変化の設定において、センサの検出値を増減させる。
第7側面の制御装置によれば、ライダーの乗車によって生じるセンサの検出値の初期設定値からのズレを緩和できる。
【0013】
第1側面に従う第8側面の制御装置において、制御装置は、仮想傾斜角度変化の設定において、センサの検出値に対して仮想傾斜角度変化が反映された角度に相当する処理データを設定する。
第8側面の制御装置によれば、ライダーの乗車によって生じるセンサの検出値の初期設定値からのズレを緩和できる。
【0014】
第2側面に従う第9側面の制御装置において、外部制御装置は、制御装置と無線通信するように構成される電子デバイスを含む。
第9側面の制御装置によれば、無線通信によって車体情報、および、荷重情報の少なくとも1つを制御装置に入力できるので、車体情報、および、荷重情報の少なくとも1つの入力を容易化できる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の制御装置によれば、走行に応じて人力駆動車がどれだけ傾斜するかを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る制御装置を含む人力駆動車を示す側面図。
【
図2】第1実施形態に係る制御装置の一例を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態の変形例に係る制御装置の一例を示すブロック図。
【
図4】第1実施形態における制御フローを示すフローチャート。
【
図5】第2実施形態に係る制御装置の一例を示すブロック図。
【
図6】第3実施形態における制御フローを示すフローチャート。
【
図7】第4実施形態における制御フローを示すフローチャート。
【
図8】(a)ライダーの体重と車体の傾斜角の関係を示すグラフ。(b)走行距離と、サスペンションのロックアウトの有無による傾斜角の差と、の関係を示すグラフ。
【
図9】(a)校正値を実際のズレの1/2とする場合の、人力駆動車の傾斜角と傾斜角の頻度との関係を示すグラフ。(b)校正値を実際のズレと同じとする場合の、人力駆動車の傾斜角と傾斜角の頻度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る人力駆動車用の制御装置100、および、制御装置100を含む人力駆動車1が説明される。人力駆動車用の制御装置100、および、制御装置100を含む人力駆動車1の説明には、主として
図1、および、
図2が用いられる。人力駆動車1は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車1は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、ハンドバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車1が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車1は、例えば1輪車、および、2輪以上の車輪を有する乗り物を含む。人力駆動車1は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車1は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するE-bikeを含む。E-bikeは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車1は自転車として説明される。
【0018】
人力駆動車1は、車両本体10、前輪12、後輪14、ハンドルバー16、サドル18、および、駆動機構20を備える。以下の説明において、前後、左右、および、上下の各方向を表す用語は、ライダーが人力駆動車1のサドル18に着座している状態における方向を基準として用いられる。
【0019】
車両本体10は、フレーム10A、および、フロントフォーク10Bを備える。前輪12は、前輪車軸12Aを介して、フロントフォーク10Bの端部に回転可能に支持される。後輪14は、後輪車軸14Aを介して、フレーム10Aのリアエンドに回転可能に支持される。ハンドルバー16は、前輪12の進行方向を変更できるように、フレーム10Aに支持される。
【0020】
駆動機構20は、チェーンドライブ、ベルトドライブ、または、シャフトドライブによって人力駆動力を後輪14へ伝達する。
図1においては、チェーンドライブの駆動機構20を例示している。駆動機構20は、クランク22、フロントスプロケット24A、リアスプロケット24B、チェーン26、および、一対のペダル28,28を含む。駆動機構20は、更に、チェーン26を安定的に保持するためのチェーンデバイス、あるいは、チェーンテンショナを備えてもよい。
【0021】
クランク22は、右クランク22A、左クランク22B、および、クランク軸22Cを含む。クランク軸22Cは、フレーム10Aに回転可能に支持される。右クランク22A、および、左クランク22Bは、それぞれクランク軸22Cに連結される。一対のペダル28,28の一方は右クランク22Aに回転可能に支持され、他方は左クランク22Bに回転可能に支持される。
【0022】
フロントスプロケット24Aは、クランク軸22Cに連結されており、クランク軸22Cと一体的に回転する。フロントスプロケット24Aは、一例では、外径が異なる複数のスプロケットから構成されるスプロケット組立体である。フロントスプロケット24Aが複数のスプロケットを備える場合、複数のフロントスプロケットの外径は、クランク軸22Cの回転軸心と平行な方向において、車両本体10の中心面から外側に向かって大きくなる。
【0023】
リアスプロケット24Bは、後輪14のハブに回転可能に支持される。リアスプロケット24Bは、一例では、外径が異なる複数のスプロケットから構成されるスプロケット組立体である。リアスプロケット24Bが複数のスプロケットを備える場合、複数のフロントスプロケットの外径は、クランク軸22Cの回転軸心と平行な方向において、車両本体10の中心面から外側に向かって小さくなる。
【0024】
チェーン26は、フロントスプロケット24A、および、リアスプロケット24Bに巻き掛けられる。ペダル28,28に加えられる人力駆動力によってクランク22が前転すると、フロントスプロケット24Aがクランク22と共に前転する。フロントスプロケット24Aの回転は、チェーン26を介してリアスプロケット24Bに伝達し、後輪14を回転させる。
【0025】
人力駆動車1は、コンポーネント30を含む。コンポーネント30は、報知装置31、照明装置32、ブレーキ装置33、変速装置34、サスペンション装置35、駆動補助装置38、および、アジャスタブルシートポスト39の少なくとも1つを含む。人力駆動車1は、更に、コンポーネント30の少なくとも1つの制御状態を切り替える操作装置44、および、コンポーネント30に対して電力を供給するバッテリユニット46を含む。
【0026】
報知装置31は、ライダーに対して各種の情報を報知する。報知装置31は、例えばハンドルバー16に設けられる。報知装置31は、一例では、液晶表示パネル等を備える表示装置であり、外部から入力される制御信号に基づき、文字、図形、および、記号の少なくとも1つの情報を表示する。報知装置31は、他の例では、スピーカ等を備える音声出力装置であり、外部から入力される制御信号に基づき音声を出力する。報知装置31は、音声に限らず、警告音などの音を出力する構成、あるいは、振動を発生させる構成であってもよい。報知装置31は、独立した装置である必要はなく、制御装置100に搭載される装置であってもよい。
【0027】
照明装置32は、人力駆動車1の進行方向を照明する。照明装置32は、例えばフロントフォーク10Bに設けられる。照明装置32は、他の例では、ハンドルバー16に設けられる。照明装置32は、外部から入力される制御信号に従って、点灯、点滅、または、消灯するように構成される。
【0028】
ブレーキ装置33は、前輪12のホイールに制動力を付与する。ブレーキ装置33は、電動駆動ユニット33A、キャリパ33B、および、ブレーキ操作装置33Cを備える。電動駆動ユニット33Aは、キャリパ33Bを作動させる電動モータと、電動モータを駆動する駆動回路とを含む。キャリパ33Bは、前輪12のホイールに接触可能なブレーキパッドを含む。ブレーキ操作装置33Cは、例えばハンドルバー16に設けられ、ブレーキを掛けるライダーの操作を受付ける。ブレーキ装置33の電動駆動ユニット33Aは、ブレーキ操作装置33Cの操作に応じて電動モータを駆動し、キャリパ33Bを作動させることによってブレーキパッドを前輪12のホイールに接触させ、前輪12の回転力を減衰させる。ブレーキ装置33は、制動力が異なる複数の制御状態にて動作するように構成されてもよい。
【0029】
ブレーキ装置33は、ディスクブレーキであってもよい。ディスクブレーキでは、例えば、電動モータによって流体を制御してブレーキパッドを移動させ、ブレーキパッドをロータに押し当てることによって、前輪12、または、後輪14の回転力を減衰させる。ディスクブレーキは、電動モータによって直接的にブレーキパッドを移動させ、ブレーキパッドをロータに押し当てることによって、前輪12、または、後輪14の回転力を減衰させる構成であってもよい。
【0030】
ブレーキ装置33は、後輪14に対しても設けられる。前後のブレーキ装置33において、ブレーキ操作装置33Cを共用してもよい。前後のブレーキ装置33において、ブレーキ操作装置33Cをそれぞれ設けてもよい。後輪14に対して設けられるブレーキ装置33の構成は、前輪12のブレーキ装置33と同様であるため、その説明を省略する。
【0031】
変速装置34は、人力駆動車1の変速比を切り替える装置である。変速装置34は、操作装置44の操作に応じて出力される制御信号に基づき、その動作が制御される電動駆動ユニット34Aを備える。電動駆動ユニット34Aは、駆動回路、および、電動モータを含む。変速装置34は、電動駆動ユニット34Aが備える電動モータを駆動することによって、チェーン26が巻き掛けられるスプロケットを変更し、人力駆動車1の変速比を切り替える。
【0032】
変速装置34の一例は外装変速機である。より詳細には、変速装置34は、リアディレーラである。変速装置34がリアディレーラである場合、リアスプロケット24Bは、外径が異なる複数のスプロケットを含む。電動駆動ユニット34Aの駆動回路は、シフトアップを指示する制御信号を操作装置44から受信する場合、例えば、チェーン26が巻き掛けられるスプロケットをトップ側からロー側へ変更するように電動モータを駆動する。電動駆動ユニット34Aの駆動回路は、シフトダウンを指示する制御信号を操作装置44から受信する場合、例えば、チェーン26が巻き掛けられるスプロケットをロー側からトップ側へ変更するように電動モータを駆動する。
【0033】
変速装置34は、フロントディレーラであってもよい。変速装置34がフロントディレーラである場合、フロントスプロケット24Aは、外径が異なる複数のスプロケットを含む。変速装置34として、フロントディレーラ、および、リアディレーラの双方を設けてもよい。変速装置34は内装変速機であってもよい。変速装置34が内装変速機である場合、変速装置34は例えば後輪14のハブに設けられ、リアスプロケット24Bに入力された回転を変速して後輪14に伝達する。変速装置34は、外装変速機、または、内装変速機に限らず、無段変速機であってもよい。
【0034】
サスペンション装置35は、フロントフォーク10Bに設けられ、前輪12に加えられた衝撃を減衰するフロントサスペンション36を含む。サスペンション装置35は、後輪14に加えられた衝撃を減衰するリアサスペンション37を含んでもよい。サスペンション装置35は、操作装置44の操作に応じて出力される制御信号に基づき、その動作が制御される電動駆動ユニット35Aを備える。電動駆動ユニット35Aは、駆動回路、および、電動モータを含む。サスペンション装置35は、動作パラメータとして、減衰率、ストローク量、および、ロックアウト状態を設定することによって制御される。サスペンション装置35は、緩衝性が異なる複数の制御状態にて動作するように構成されてもよい。
【0035】
駆動補助装置38は、人力駆動を補助するための装置であり、駆動機構20に対して設けられる。駆動補助装置38は、外部から入力される制御信号に基づき、その動作が制御される電動駆動ユニット38Aを備える。電動駆動ユニット38Aは、駆動回路、および、電動モータを含み、駆動回路が電動モータを駆動することによって人力駆動を補助する。電動駆動ユニット38Aは、操作装置44の操作に応じて出力される制御信号に基づき、その動作が制御されてもよい。駆動補助装置38は、人力駆動を補助する補助力が異なる複数の制御状態にて動作可能である。駆動補助装置38における制御状態はアシストレベルともいう。駆動補助装置38は、例えばクランク22に作用する人力駆動力に応じて、アシストレベルを変更する。アシストレベルは、例えば4段階である場合、強アシストレベル、中アシストレベル、弱アシストレベル、および、ゼロアシストレベルを含む。ゼロアシストレベルでは、駆動補助装置38によるアシストは行われない。
【0036】
アジャスタブルシートポスト39は、フレーム10Aに取り付けられる。アジャスタブルシートポスト39は、操作装置44の操作に応じて出力される制御信号に基づき、その動作が制御される電動駆動ユニット39Aを備える。電動駆動ユニット39Aは、サドル18をフレーム10Aに対して上昇、および、下降させる電動アクチュエータと、電動アクチュエータを駆動する駆動回路とを含む。アジャスタブルシートポスト39は、フレーム10Aに対するサドル18の支持位置が設定されることによって制御される。
【0037】
操作装置44は、例えばハンドルバー16に設けられる。操作装置44は、ライダーの指によって操作される操作スイッチ44A,44Bを備える。操作スイッチ44A,44Bは、報知装置31、照明装置32、ブレーキ装置33、変速装置34、サスペンション装置35、駆動補助装置38、および、アジャスタブルシートポスト39の少なくとも1つの制御状態を切り替えるためのスイッチである。
【0038】
人力駆動車1に搭載される操作装置44の数は1つである必要はなく、複数であってもよい。
図1に示される例では、操作装置44が2つの操作スイッチ44A,44Bを備える構成としたが、1つ、または、3つ以上の操作スイッチを備える構成であってもよい。操作装置44は、スイッチを備える構成に限定されず、操作レバー、または、操作ダイヤル等を備える構成であってもよい。
【0039】
操作装置44は、操作スイッチ44A、または、操作スイッチ44Bの操作によって、後述する車体情報、および、荷重情報を制御装置100に入力できるように、制御装置100に接続される。操作装置44は、操作スイッチ44A、または、操作スイッチ44Bの操作に応じた制御信号を制御対象のコンポーネント30へ送信できるように、各コンポーネント30に接続される。一例では、操作装置44は、通信線、または、PLC(Power Line Communication)が可能な電線によって制御対象のコンポーネント30に接続される。他の例では、操作装置44は、無線通信が可能な無線通信ユニットによって制御対象のコンポーネント30に接続される。
【0040】
本実施形態においては、人力駆動車1は、前述のコンポーネント30の少なくとも1つに電力を供給するバッテリユニット46を含む。バッテリユニット46は、バッテリ46A、および、バッテリホルダ46Bを含む。バッテリ46Aは、1、または、複数のバッテリセルを含む蓄電池である。バッテリホルダ46Bは、人力駆動車1のフレーム10Aに固定される。バッテリ46Aは、バッテリホルダ46Bに着脱可能である。バッテリ46Aは、報知装置31、照明装置32、ブレーキ装置33、変速装置34、サスペンション装置35、駆動補助装置38、および、アジャスタブルシートポスト39にそれぞれ電気的に接続される。
【0041】
人力駆動車1は、加速度、および、傾斜の少なくとも1つを検出するセンサ50を含む。本実施形態においては、センサ50は、傾斜センサ51である。
図3に示される変形例のように、センサ50は、加速度センサ52であってもよい。センサ50は、他の例では、傾斜センサ51、および、加速度センサ52の両方を含んでもよい。
【0042】
傾斜センサ51は、人力駆動車1の傾斜角度に応じた信号を出力する。傾斜センサ51が検出する傾斜角度は、例えば、人力駆動車1の左右方向に沿うピッチ軸まわりの回転角度である。傾斜センサ51は、一例として、ピッチ角度の角速度を検出するセンサを含み、ピッチ軸まわりの角速度を積分した値をピッチ角度として算出する。傾斜センサ51は、人力駆動車1の前後方向に沿うロール軸まわりの回転角度、および、人力駆動車1の上下方向に沿うヨー軸まわりの回転速度を併せて計測する構成であってもよい。
【0043】
加速度センサ52は、人力駆動車1の加速度に応じた信号を出力する。加速度センサ52は、人力駆動車1のヨー角度、ロール角度、および、ピッチ角度の少なくとも1つを検出可能に構成される。好ましくは、加速度センサ52は、人力駆動車1のヨー角度、ロール角度、および、ピッチ角度のすべてを検出可能に構成される。
【0044】
人力駆動車1は、更に、荷重センサ53、および、姿勢センサ54を含んでもよい。荷重センサ53は、人力駆動車1に作用する荷重に応じた信号を出力する。荷重センサ53の一例は、歪みゲージ式のロードセルである。荷重センサ53は、前輪車軸12A、後輪車軸14A、ハンドルバー16、サドル18、および、各ペダル28の少なくとも1つに設けられる。本実施形態においては、荷重センサ53は、サドル18、および、各ペダル28に設けられる。
【0045】
姿勢センサ54は、ライダーの姿勢に応じた信号を出力する。姿勢センサ54の一例は圧電センサであり、ライダーの体重が掛かる人力駆動車1の複数箇所に設けられる。例えば、姿勢センサ54は、ハンドルバー16が備えるグリップ、サドル18の表面、および、各ペダル28等の1、または、複数箇所に設けられる。本実施形態においては、姿勢センサ54は、サドル18に設けられる。姿勢センサ54は、ライダーに装着されるウェアラブル端末が備えるモーションセンサであってもよい。姿勢センサ54は、荷重センサ53の少なくとも1つと共通化されてもよい。
【0046】
人力駆動車1は、制御装置100を含む。制御装置100は、一例では、人力駆動車1に設けられるサイクルコンピュータなどの専用端末である。制御装置100は、他の例では、人力駆動車1のライダーが所持するスマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末などの汎用端末である。制御装置100は、人力駆動車1の車体に関する車体情報、および、人力駆動車1に作用する荷重に関する荷重情報の少なくとも1つとに基づき、人力駆動車1に搭載され、加速度、および、傾斜の少なくとも1つを検出するセンサ50の、ライダーの乗車時の仮想傾斜角度変化を設定する。以下では、センサ50は傾斜センサ51とする。
【0047】
傾斜センサ51には、検出する傾斜角度の基準として、傾斜角度に関する初期設定値が定められている。傾斜センサ51の傾斜角度に関する初期設定値は、人力駆動車1が平坦な路面に置かれ、かつ、ライダーが人力駆動車1に乗車していない状態において、「0」に設定される。ライダーが人力駆動車1に乗車すると、人力駆動車1の車両本体10の一部が沈み込むことによって、傾斜センサ51の検出値が初期設定値からずれる場合がある。
図1に示されるように、前後方向においてサドル18が前輪12よりも後輪14に近い位置に設けられる場合、前輪12よりも後輪14が沈み込み易い。
【0048】
傾斜センサ51の検出値が初期設定値からずれることによって、走行に応じて人力駆動車1がどれだけ傾斜するかを検出し難い。本実施形態に係る制御装置100は、人力駆動車1にライダーが乗車した状態の傾斜センサ51の初期設定値を0に近づけるため、ライダーの乗車時の仮想傾斜角度変化を設定する。仮想傾斜角度変化は、ライダーの乗車によって生じる、人力駆動車1の傾斜角度の予測変化量を意味する。制御装置100は、設定した仮想傾斜角度変化に基づいて、傾斜センサ51の初期設定値を校正する。
【0049】
仮想傾斜角度変化の設定に用いられる車体情報は、人力駆動車1のタイヤの気圧、人力駆動車1のフレーム10Aのジオメトリ、人力駆動車1のサスペンション装置35のロックアウト状態、サスペンション装置35のモデル、サスペンション装置35の減衰率、および、サスペンション装置35のリアサスペンション37の有無の少なくとも1つを含む。車体情報は、操作装置44を介して、制御装置100に入力される。
【0050】
人力駆動車1のタイヤの気圧は、前輪12の気圧、および、後輪14の気圧の少なくとも1つを含む。タイヤの気圧は、例えば、設計値、または、事前に計測された計測値から取得される。
【0051】
人力駆動車1のフレーム10Aのジオメトリ、および、サスペンション装置35のリアサスペンション37の有無は、例えば、人力駆動車1の設計データから取得される。サスペンション装置35のモデルは、例えば、サスペンション装置35の型番を含み、例えば、人力駆動車1の設計データから取得される。サスペンション装置35の減衰率は、例えば、設計値、または、事前に計測された計測値から取得される。
【0052】
仮想傾斜角度変化の推定に用いられる荷重情報は、ライダーの体重、身長、乗車時の姿勢、および、性別の少なくとも1つを含む。荷重情報は、操作装置44を介して、制御装置100に入力される。
【0053】
荷重情報は、前輪車軸12A、後輪車軸14A、ハンドルバー16、サドル18、クランク22、および、各ペダル28の少なくとも1つに作用する荷重に関する情報を含んでもよい。荷重情報は、ライダーの過去の乗車時における荷重センサ53の出力に基づき取得されてもよい。
【0054】
制御装置100の構成が説明される。制御装置100の構成の説明には、
図2が用いられる。
図2は、第1実施形態に係る制御装置100の内部構成を示すブロック図である。制御装置100は、記憶部102、および、制御部104を備える。
【0055】
記憶部102は、各種の制御プログラム、および、各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。各種の制御プログラムには、仮想傾斜角度変化を設定する際に用いられる制御プログラムが含まれる。各種の制御処理に用いられる情報には、仮想傾斜角度変化を設定する制御処理に用いられる情報が含まれる。記憶部102は、例えば不揮発性メモリ、および、揮発性メモリを含む。
【0056】
制御部104は、コンポーネント30に関する制御を実行するように構成される。制御部104は、予め定められた制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)、または、MPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部104は、1、または、複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。制御部104は、記憶部102と電気的に接続される。
【0057】
仮想傾斜角度変化の設定手順が説明される。仮想傾斜角度変化の設定手順の説明には、
図4が用いられる。
図4は、仮想傾斜角度変化の設定手順を説明するフローチャートである。
【0058】
ステップS1において、制御装置100の制御部104は、人力駆動車1の車体情報、および、荷重情報を取得する。制御部104は、操作装置44を介して、車体情報、および、荷重情報を取得してもよく、記憶部102に記憶されている情報から車体情報、および、荷重情報を取得してもよい。
【0059】
例えば、車体情報のうち、フレーム10Aのジオメトリ、サスペンション装置35の減衰率、および、リアサスペンション37の有無は、人力駆動車1のメーカによって事前に入力されてもよい。車体情報のうち、タイヤの気圧は、エアゲージによって測定された値を使用できる。エアゲージの測定値は、ライダーによって入力されてもよい。人力駆動車1にエアゲージが搭載され、エアゲージの測定値が制御部104に送信されるようにしてもよい。車体情報のうち、サスペンション装置35のロックアウト状態は、ライダーによって入力されてもよい。他の例では、サスペンション装置35のロックアウトを検知するセンサが人力駆動車1に搭載され、ロックアウトを検知するセンサの検知結果が制御部104に送信されるようにしてもよい。
【0060】
例えば、荷重情報のうち、ライダーの体重、身長、および、性別は、ライダーによって入力されてもよい。荷重情報のうち、ライダーの乗車時の姿勢は、ライダーによって入力されてもよい。ライダーは、走行するコースに応じて、乗車時の姿勢を前荷重、または、後荷重に設定することができる。他の例では、ライダーの乗車時の姿勢は、記憶部102に記憶されている姿勢センサ54の過去の検出値を用いてもよい。制御部104は、ステップS1の処理を実行した後、ステップS2に移行する。
【0061】
ステップS2において、制御部104は、仮想傾斜角度変化を設定する。制御部104は、ステップS101において取得した車体情報、および、荷重情報と、記憶部102に記憶されたデータとに基づいて、仮想傾斜角度変化を設定する。
【0062】
記憶部102には、車体情報、および、荷重情報の少なくとも1つに基づいて、仮想傾斜角度変化を設定するためのデータが記憶される。仮想傾斜角度変化を設定するためのデータは、仮想傾斜角度変化を算出するための関数を含む。制御部104は、ステップS1において取得した車体情報、および、荷重情報の少なくとも1つと、記憶部102に記憶されたデータとを用いて、仮想傾斜角度変化を設定する。本実施形態においては、仮想傾斜角度変化は、車両本体10が前下がりとなる場合にはプラス、車両本体10が後下がりとなる場合にはマイナスで表される。以下、傾斜角度は傾斜角[%]として表されることもある。傾斜角[%]は、水平面に対する人力駆動車1の傾きの度合いによって表される。
【0063】
記憶部102に記憶される仮想傾斜角度変化を設定するためのデータは、車体情報、および、荷重情報と、人力駆動車1の傾斜角度と、の関係に基づいて定められる。以下、荷重情報がライダーの体重を含む場合について説明される。
図8(a)に示されるように、ライダーの体重が重いほど傾斜角[%]も比例して増加する。記憶部102には、例えば、
図8(a)に示されるような荷重情報と傾斜角との関係を表す関数が記憶されている。制御部104は、関数に、ライダーの体重を含む荷重情報を当てはめることによって、仮想傾斜角度変化を算出する。
【0064】
他の例では、記憶部102には、ライダーの体重が予め定める範囲ごとに区切られ、各範囲に対して仮想傾斜角度変化を示す1つの値が割り当てられたデータが記憶される。制御部104は、記憶部102に記憶されるデータを参照して、入力されたライダーの体重に該当する値を仮想傾斜角度変化に設定する。
【0065】
以下、車体情報がサスペンション装置35のロックアウト状態を含む場合について説明される。
図8(b)に示されるグラフおいて、横軸は、人力駆動車1の走行距離を示し、縦軸は、フロントサスペンション36がロックアウトされていないときの傾斜角[%]の実測値から、フロントサスペンション36がロックアウトされているときの傾斜角[%]の実測値が減算された値を示している。
図8(b)に示されるように、サスペンション装置35がロックアウトしているときとロックアウトしていないときとでは、人力駆動車1の傾斜角度は異なる。具体的には、フロントサスペンション36がロックアウトしていないときには車両本体10の前側部分が沈み込み易い。一方、フロントサスペンション36がロックアウトしているときには車両本体10の前側部分が沈み込み難い。制御部104は、一例では、フロントサスペンション36がロックアウトしているときの仮想傾斜角度変化を、フロントサスペンション36がロックアウトしていないときの仮想傾斜角度変化よりもマイナス側の値に設定する。
【0066】
以下、車体情報がリアサスペンション37の有無を含む場合について説明される。制御装置100は、サスペンション装置35がリアサスペンション37を有さず、かつ、フロントサスペンション36を有する場合と、サスペンション装置35がリアサスペンション37、および、フロントサスペンション36を有する場合と、において、同じ情報に基づいて互いに異なる仮想傾斜角度変化を設定する。仮想傾斜角度変化の設定のための同じ情報は、制御装置100に入力される車体情報、および、荷重情報のうち、リアサスペンション37の有無以外の情報である。制御部104は、一例では、サスペンション装置35がリアサスペンション37、および、フロントサスペンション36を有する場合の仮想傾斜角度変化を、サスペンション装置35がリアサスペンション37を有さず、かつ、フロントサスペンション36を有する場合の仮想傾斜角度変化よりもマイナス側の値に設定する。制御部104は、ステップS2の処理を実行した後、ステップS3に移行する。
【0067】
ステップS3において、制御装置100は、仮想傾斜角度変化の設定において、センサ50の傾斜角度に関する初期設定値を増減させる。具体的には、制御部104は、ステップS2において設定した仮想傾斜角度変化に基づいて、傾斜センサ51の初期設定値を増減させる。制御部104は、ステップS2において設定した仮想傾斜角度変化の分だけ傾斜センサ51の初期設定値を増減させることによって、傾斜センサ51の校正を行う。一例では、傾斜センサ51の校正前の初期設定値は0[%]である。
【0068】
例えば、ステップS2において設定した仮想傾斜角度が+2[%]の場合、ライダーの乗車によって、傾斜センサ51の出力が+2[%]となると予測される。人力駆動車1が走行する場合に、走行に応じて人力駆動車1がどれだけ傾斜したかを検出できるようにするため、制御部104は、傾斜センサ51の初期設定値から2[%]を差し引くことによって、初期設定値を-2[%]とする。一方、例えば、ステップS2において設定した仮想傾斜角度が-2[%]の場合、ライダーの乗車によって、傾斜センサ51の出力が-2[%]となると予測される。人力駆動車1が走行する場合に、走行に応じて人力駆動車1がどれだけ傾斜したかを検出できるようにするため、制御部104は、傾斜センサ51の初期設定値に2[%]を加算することによって、初期設定値を+2[%]とする。制御部104は、ステップS3の処理を実行した後、ステップS4に移行する。
【0069】
ステップS4において、制御部104は、傾斜センサ51の検出値を取得する。ライダーが乗車した場合、制御部104は、人力駆動車1の走行時における傾斜センサ51の検出値を取得できる。傾斜センサ51の検出値は、ステップS3における傾斜センサ51の初期設定値の増減が反映された値となる。傾斜センサ51の検出値に初期設定値の増減が反映されることにより、例えば人力駆動車1が平地の舗装路を走行する場合を基準とした人力駆動車1の傾斜角度を検出できる。制御部104は、ステップS4の処理を実行した後、ステップS5に移行する。
【0070】
ステップS5において、制御部104は、ステップS4において取得した傾斜センサ51の検出値に基づいて、コンポーネント30の制御信号を生成する。制御部104は、ステップS5の処理を実行した後、ステップS6に移行する。ステップS6において、制御部104は、ステップS5において生成した制御信号を制御対象のコンポーネント30へ出力し、制御対象のコンポーネント30を制御する。
【0071】
例えば、制御対象のコンポーネント30が報知装置31である場合、報知装置31は、制御部104から出力される制御信号に基づき、人力駆動車1の傾斜角度を報知する。制御部104は、報知装置31から傾斜角度を報知することによって、ライダーに傾斜角度を報知できる。
【0072】
例えば、制御対象のコンポーネント30が照明装置32である場合、制御部104は、傾斜角度が予め設定された領域に存在しない場合、照明装置32を点滅させる制御を行うことによってライダーに警告してもよい。例えば、制御対象のコンポーネント30がブレーキ装置33の場合、制御部104は、傾斜角度に応じて、ブレーキ装置33の制動力を変更する制御を実行できる。
【0073】
例えば、制御対象のコンポーネント30が変速装置34である場合、制御部104は、傾斜角度に応じて、変速装置34の変速比を変更する制御を実行できる。例えば、制御対象のコンポーネント30がサスペンション装置35である場合、制御部104は、傾斜角度に応じて、サスペンション装置35による緩衝性を変更する制御を実行できる。
【0074】
例えば、制御対象のコンポーネント30が駆動補助装置38である場合、制御部104は、傾斜角度に応じて、駆動補助装置38によるアシストレベルを変更する制御を実行できる。例えば、制御対象のコンポーネント30がアジャスタブルシートポスト39である場合、制御部104は、サドル18の高さ位置を変更するアジャスタブルシートポスト39の動作を制御してもよい。制御部104は、ステップS6の処理を行った後、
図4に示される制御フローを終了する。
【0075】
本実施形態に係る制御装置100は、車体情報、および、荷重情報の少なくとも1つに基づいて仮想傾斜角度変化を設定し、仮想傾斜角度変化に基づいてセンサ50を校正するため、ライダーの乗車に伴う車両本体10の沈み込みによって生じるセンサ50の検出値の初期設定値からのズレを緩和できる。センサ50の検出値の初期設定値からのズレの緩和によって、走行に応じて人力駆動車1がどれだけ傾斜したかを検出できる。更に、制御装置100は、車体情報、および、荷重情報の少なくとも1つに基づいて仮想傾斜角度変化を設定し、仮想傾斜角度変化に基づいてセンサ50を校正するため、ライダーの乗車の有無にかかわらず、センサ50を校正できる。
【0076】
(第2実施形態)
第2実施形態の人力駆動車用の制御装置100、および、制御装置100を含む人力駆動車1が説明される。第2実施形態の制御装置100、および、制御装置100を含む人力駆動車1の説明には、
図5が用いられる。第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号が付され、重複する説明が省略される。
【0077】
本実施形態では、制御装置100は、通信部106を含む。通信部106は、有線、または、無線によって、外部制御装置60と通信するように構成される。外部制御装置60は、人力駆動車1のメーカが有する装置、人力駆動車1の部品のメーカが有する装置、または、ライダーが有する装置であってもよい。外部制御装置60は、制御装置100の外部の装置であればよく、人力駆動車1に備え付けられた入力装置であってもよい。外部制御装置60は、制御装置100と無線通信するように構成される電子デバイス61を含む。電子デバイス61は、例えば、人力駆動車1のライダーが所持するスマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末などの汎用端末である。ライダーは、外部制御装置60の電子デバイス61を用いて、車体情報、および、荷重情報を入力できる。ライダーによる入力によって、車体情報、および、荷重情報の少なくとも1つは外部制御装置60から制御装置100に入力される。
【0078】
制御装置100は、車体情報、および、荷重情報を外部制御装置60を介して入力できるように構成されることによって、ライダーは、人力駆動車1から離れた場所にいるときであっても、車体情報、および、荷重情報を入力できる。ライダーは、人力駆動車1から離れた場所にいるときに車体情報、および、荷重情報を入力することによって、人力駆動車1が置いてある場所に来てすぐに人力駆動車1に乗車できる。制御装置100は、制御装置100と無線通信するように構成される電子デバイス61を介して、車体情報、および、荷重情報を入力できるように構成されることによって、電子デバイス61が制御装置100に有線によって接続された状態で車体情報、および、荷重情報を入力する必要がないため、任意のタイミングで車体情報、および、荷重情報を入力できる。
【0079】
(第3実施形態)
第3実施形態の人力駆動車用の制御装置100、および、制御装置100を含む人力駆動車1が説明される。第3実施形態の制御装置100、および、制御装置100を含む人力駆動車1の説明には、
図6が用いられる。第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号が付され、重複する説明が省略される。
【0080】
第3実施形態における仮想傾斜角度変化の設定手順について説明される。
図6は、仮想傾斜角度変化の設定手順を説明するフローチャートである。第3実施形態に係る
図6のフローチャートが第1実施形態に係る
図4のフローチャートと異なる点は、ステップS3、および、S4に代えてステップS3-1、および、S4-1が実行される点である。ステップS1、S2、S5、および、S6の説明は省略される。
【0081】
ステップS3-1において、制御部104は、傾斜センサ51の検出値を取得する。ライダーが乗車した場合、制御部104は、人力駆動車1の走行時における傾斜センサ51の検出値を取得できる。制御部104は、ステップS3-1の処理を実行した後、ステップS4-1に移行する。
【0082】
ステップS4-1において、制御装置100は、仮想傾斜角度変化の設定において、センサの検出値を増減させる。具体的には、制御部104は、ステップS2において設定した仮想傾斜角度変化に基づいて、傾斜センサ51の検出値を増減させる。制御部104は、ステップS2において設定した仮想傾斜角度変化の分だけ傾斜センサ51の検出値を増減させることによって、傾斜センサ51を校正することにより、ライダーの乗車時の車両本体10の沈み込みの影響を緩和できる。
【0083】
(第4実施形態)
第4実施形態の人力駆動車用の制御装置100、および、制御装置100を含む人力駆動車1が説明される。第4実施形態の制御装置100、および、制御装置100を含む人力駆動車1の説明には、
図7が用いられる。第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号が付され、重複する説明が省略される。
【0084】
第4実施形態における仮想傾斜角度変化の設定手順について説明される。
図7は、仮想傾斜角度変化の設定手順を説明するフローチャートである。第4実施形態に係る
図7のフローチャートが第1実施形態に係る
図5のフローチャートと異なる点は、ステップS3、S4,および、S5に代えてステップS3-2、および、S5-2が実行される点である。ステップS1、および、S2の説明は省略される。
【0085】
ステップS3-2において、制御装置100は、仮想傾斜角度変化の設定において、センサの検出値に対して仮想傾斜角度変化が反映された角度に相当する処理データを設定する。具体的には、制御部104は、傾斜センサ51の初期設定値、または、検出値を増減させるのではなく、ステップS2において設定した仮想傾斜角度変化、および、傾斜センサ51からの信号に基づいて、コンポーネント30の制御のための処理データを設定する。処理データは、後述のステップS5-2においてコンポーネント30の制御信号を生成可能な形式によって作成される。例えば、記憶部102に、人力駆動車1の傾斜角度が予め定める範囲ごとに区切られ、各区分に例えばa、b、および、c等のアルファベットが割り振られたデータが記憶される。制御部104は、傾斜センサ51によって検出された傾斜角度、および、ステップS2において設定した仮想傾斜角度変化に基づいて、一の区分に割り当てられた処理データを設定してもよい。制御部104は、ステップS3-2の処理を行った後、ステップS5-1に移行する。
【0086】
ステップS5-2において、制御部104は、ステップS3-2において設定した処理データに基づいて、コンポーネント30の制御信号を生成する。制御部104は、ステップS5-2の処理を行った後、ステップS6に移行する。ステップS6において、制御部104は、ステップS5-2において生成した制御信号を制御対象のコンポーネント30へ出力し、制御対象のコンポーネント30を制御する。
【0087】
(変形例)
各実施形態に関する説明は、本発明が取り得る形態の例示であり、本発明を制限することを意図していない。本発明は、例えば以下に示す各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わされた形態を取り得る。
【0088】
例えば、各実施形態における人力駆動車1の構成は一例であり、人力駆動車1は、各実施形態において示されない各種装置を含んでいてもよく、各実施形態において示す各種装置のうち一部を含まない構成としてもよい。
【0089】
各実施形態において例示される構成は、相互に矛盾しない範囲において互いに組み合わせられてもよい。各実施形態において例示されるフローチャートの処理内容、および、処理順序は一例であり、本発明の範囲内において適宜処理内容、および、処理順序を変更できる。
【0090】
各実施形態において例示される構成は、相互に矛盾しない範囲において互いに組み合わせられてもよい。各実施形態において例示されるフローチャートの処理内容、および、処理順序は一例であり、本発明の範囲内において適宜処理内容、および、処理順序を変更できる。
【0091】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」、または、「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」、または、「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【0092】
図4に示されるステップS3において、制御部104は、ステップS2において設定した仮想傾斜角度変化の分だけ傾斜センサ51の初期設定値を増減させることによって、傾斜センサ51を校正するようにしたが、ステップS3における増減値は仮想傾斜角度変化自体でなくてもよい。ステップS3における増減値は、例えば、ステップS2において設定した仮想傾斜角度変化の1/2程度としてもよい。
【0093】
図9(a)、および、
図9(b)に示されるグラフにおいて、横軸は人力駆動車1の傾斜角[%]を示し、縦軸はセンサ50において値が検出される頻度を示している。
図9(b)に示されるように、ライダー乗車前における人力駆動車1の傾斜角が-2[%]が頻度が最も多く、仮想傾斜角度変化が-2[%]に設定されたと仮定される。仮想傾斜角度変化が-2[%]に設定された場合、制御部104が、ステップS3において傾斜センサ51の初期設定値を2[%]増加させると、フロントサスペンション36がロックアウトされていないときには、傾斜センサ51の初期設定値は0[%]に近くなるが、逆にフロントサスペンション36がロックアウトされているときには、傾斜センサ51の初期設定値は+2[%]となり、逆効果となってしまう。
【0094】
フロントサスペンション36のロックアウト時を考慮し、仮想傾斜角度変化が-2[%]に設定された場合、制御部104は、ステップS3において傾斜センサ51の初期設定値を、例えば、仮想傾斜角度変化の1/2である1[%]だけ増加させてもよい。
図9(a)に示されるように、フロントサスペンション36がロックアウトされていないときには、傾斜センサ51の初期設定値は-1[%]、フロントサスペンション36がロックアウトされているときには、傾斜センサ51の初期設定値は0[%]となり、フロントサスペンション36のロックアウトの有無による傾斜センサ51の初期設定値のズレを低減できる。かかる構成とする場合では、サスペンション装置35のロックアウト状態を、ライダーが入力する手間を省略できる。
【0095】
人力駆動車1の傾斜角度を検出するセンサ50は、傾斜センサ51に限定されず、
図3に示されるように、加速度センサ52であってもよい。センサ50が加速度センサ52である場合、制御装置100は、仮想傾斜角度変化に基づいて、加速度センサ52を校正できる。
【0096】
各実施形態において人力駆動車1は、センサ50が制御装置100に人力駆動車1の傾斜角度を出力するように構成されるが、傾斜角度はセンサ50からの出力に基づいて制御装置100によって算出されてもよい。傾斜角度がセンサ50からの出力に基づいて制御装置100によって算出される場合、制御装置100は、センサ50からの出力に基づいて算出される傾斜角度を仮想傾斜角度変化の分だけ増減させ、増減後の傾斜角度に基づいてコンポーネント30の制御信号を生成してもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…人力駆動車、10A…フレーム、35…サスペンション装置、36…フロントサスペンション、37…リアサスペンション、51…傾斜センサ、52…加速度センサ、60…外部制御装置、61…電子デバイス、100…制御装置
【手続補正書】
【提出日】2023-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
変速装置34の一例は外装変速機である。より詳細には、変速装置34は、リアディレーラである。変速装置34がリアディレーラである場合、リアスプロケット24Bは、外径が異なる複数のスプロケットを含む。電動駆動ユニット34Aの駆動回路は、シフトアップを指示する制御信号を操作装置44から受信する場合、例えば、チェーン26が巻き掛けられるスプロケットをロー側からトップ側へ変更するように電動モータを駆動する。電動駆動ユニット34Aの駆動回路は、シフトダウンを指示する制御信号を操作装置44から受信する場合、例えば、チェーン26が巻き掛けられるスプロケットをトップ側からロー側へ変更するように電動モータを駆動する。