(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024825
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】一体型インペラの製造方法及び一体型インペラ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20240216BHJP
B23H 1/10 20060101ALI20240216BHJP
B23H 9/10 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F04D29/28 R
B23H1/10 Z
B23H9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127745
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000154794
【氏名又は名称】株式会社放電精密加工研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】前原 隆司
(72)【発明者】
【氏名】小林 久
【テーマコード(参考)】
3C059
3H130
【Fターム(参考)】
3C059AA01
3C059AB01
3C059EC01
3C059HA13
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB46
3H130AC01
3H130BA95C
3H130BA95Z
3H130CB01
3H130CB05
3H130DJ08X
3H130EA02C
3H130ED01C
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加工工程数、加工時間及びコストを削減しながら、高精度で加工することが可能な一体型インペラの製造方法及び一体型インペラを提供する。
【解決手段】底部を形成する第1シュラウド101と、蓋部を形成する第2シュラウド102と、第1シュラウドの中央部分に形成される円筒状のハブ103と、第1シュラウドと第2シュラウドの間に形成され、ハブが形成された内周側の入口111から外周側の出口112に流体が流れる流路110を区分けするブレード104と、を備える一体型インペラ100の製造方法であって、インペラの流路を形成する工程は、ホルダを介して加工機に取り付けられる基部31と、基部から突出する棒状部と、棒状部から屈曲する屈曲部と、を有する内周側流路加工電極30を、内周側の入口から挿入し、予め定めた位置を中心として旋回させ、ブレード間の流路の内周側を加工する内周側流路加工工程を含むことを特徴とする。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部を形成する第1シュラウドと、蓋部を形成する第2シュラウドと、前記第1シュラウドの中央部分に形成される円筒状のハブと、前記第1シュラウドと前記第2シュラウドの間に形成され、前記ハブが形成された内周側の入口から外周側の出口に流体が流れる流路を区分けするブレードと、を備える一体型インペラの製造方法であって、
前記一体型インペラの製造方法は、前記インペラの流路を形成する工程を有し、
前記インペラの流路を形成する工程は、
ホルダを介して加工機に取り付けられる基部と、前記基部から突出する棒状部と、前記棒状部から屈曲する屈曲部と、を有する内周側流路加工電極を、前記内周側の入口から挿入し、予め定めた位置を中心として旋回させ、前記ブレード間の前記流路の前記内周側を加工する内周側流路加工工程を含む
ことを特徴とする一体型インペラの製造方法。
【請求項2】
前記内周側流路加工電極は、
前記流路の前記第1シュラウド側を加工する下段電極と、
前記下段電極とは別体であって、前記流路の前記第2シュラウド側を加工する上段電極と、
を含み、
前記内周側流路加工工程は、
前記ブレード間の前記流路の前記内周側の前記第1シュラウド側を前記下段電極によって加工する内周側下方流路加工工程と、
前記ブレード間の前記流路の前記内周側の前記第2シュラウド側を前記上段電極によって加工する内周側上方流路加工工程と、
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の一体型インペラの製造方法。
【請求項3】
基部と、前記基部から突出する棒状部と、前記棒状部から屈曲して延びる屈曲部と、を有する内周側流路荒加工用電極をさらに備え、
前記下段電極と前記上段電極を使用した前記内周側流路加工工程の前に、前記ブレード間の前記流路の前記内周側を前記内周側流路荒加工用電極によって加工する内周側流路荒加工工程を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の一体型インペラの製造方法。
【請求項4】
前記内周側流路荒加工用電極は、前記基部から前記棒状部及び前記屈曲部の内部を通過し、前記屈曲部の先端部に開口する液孔が形成され、
前記屈曲部の先端部の前記液孔から加工液を噴出する
ことを特徴とする請求項3に記載の一体型インペラの製造方法。
【請求項5】
前記インペラの流路を形成する工程は、
外周側流路加工電極により前記出口から前記ブレード間の流路の内周側までを加工する外周側流路加工工程を有し、
前記外周側流路加工電極は、
ホルダを介して加工機に取り付けられる下段基部と、前記下段基部から突出する下段刃状部と、を有する下段電極と、
前記下段電極とは別体であって、ホルダを介して加工機に取り付けられる上段基部と、前記上段基部から突出する上段刃状部と、を有する上段電極と、
を含み、
前記外周側流路加工工程は、
前記ブレード間の前記流路の前記外周側の前記第1シュラウド側を前記下段電極によって加工する外周側下方流路加工工程と、
前記ブレード間の前記流路の前記外周側の前記第2シュラウド側を前記上段電極によって加工する外周側上方流路加工工程と、
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の一体型インペラの製造方法。
【請求項6】
前記下段電極の前記下段基部は、前記下段刃状部が突出する曲面を有し、前記曲面から反対側の面へ繋がる液孔が形成され、
前記上段電極の前記上段基部は、前記上段刃状部が突出する曲面を有し、前記曲面から反対側の面へ繋がる液孔が形成され、
それぞれ前記曲面の前記液孔から加工液を噴出する
ことを特徴とする請求項5に記載の一体型インペラの製造方法。
【請求項7】
前記下段電極の前記下段基部から前記下段刃状部の内部を通過し、前記下段刃状部の先端部に開口する液孔が形成され、
前記上段電極の前記上段基部から前記上段刃状部の内部を通過し、前記上段刃状部の先端部に開口する液孔が形成され、
それぞれ前記先端部の前記液孔から加工液を噴出する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の一体型インペラの製造方法。
【請求項8】
前記インペラの流路を形成する工程は、
前記流路の前記入口を加工する入口加工工程と、
前記入口下部から前記ブレード間までの流路を加工する下降流路加工工程と、
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の一体型インペラの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の一体型インペラの製造方法により製造される
ことを特徴とする一体型インペラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心式圧縮機等に使用される一体型のインペラを製造する一体型インペラの製造方法及び一体型インペラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、遠心式圧縮機に用いられるインペラは、回転軸に取り付けられるハブと、該ハブと外方に間隔をおいて配置されるシュラウドと、これらハブとシュラウドとを連結する複数のブレードとを有する。そして、ブレードの側面、ハブの流面及びシュラウドの流面で囲まれた部分が、気体等を圧縮するための流路となっている。
【0003】
このような遠心式圧縮機に用いられるインペラの流路は、軸方向及び径方向に対してそれぞれ湾曲する複雑な形状である。したがって、一般的には円盤状の本体部分にブレードとシュラウドを隅肉溶接やグルーブ溶接で固定することにより製造していた。または、本体部分とブレードを一体として機械加工し、そこにシュラウドを溶接することにより製造していた。
【0004】
しかしながら、溶接による固定は溶接欠陥が生じやすく、また、溶接部分が局所的に高温になることで変形が生じやすい。また、腐食性の気体を流路に流す対象にしているインペラが増えており、その場合、溶接部分が早期に腐食する問題があった。さらに、インコネルのような耐食性の高い材料をインペラに使用するケースも増えており、そのような材料の中には溶接が困難で材料が制限される問題があった。
【0005】
このため、溶接を使わないで、放電加工を利用し、一体型のインペラを精度良く製造する方法が提案されてきている(特許文献1及び2参照)。
【0006】
特許文献1に示される放電加工方法は、遠心式圧縮機ロータに関するもので、キャビティとほぼ同じ形状を有する電極を有し、該電極による電気侵食により、ディスク内に流路となる円弧のキャビディを形成するものである。
【0007】
特許文献2に示される方法では、内周側と外周側の両方から流路を形成することと、外周側からの流路の形成を流路のブレードの湾曲面と対応した形状の電極を使った放電加工を用い、かつその電極の湾曲形状と流路のブレードの湾曲形状に一定の不等式を満たすことで、より効率的に精度良く流路を形成可能にする方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-235694号公報
【特許文献2】特開2010-89190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特許文献1及び2と比較して、加工工程数、加工時間及びコストを削減しながら、高精度で加工することが可能な一体型インペラの製造方法及びその方法で製造される一体型インペラを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる一体型インペラの製造方法は、
底部を形成する第1シュラウドと、蓋部を形成する第2シュラウドと、前記第1シュラウドの中央部分に形成される円筒状のハブと、前記第1シュラウドと前記第2シュラウドの間に形成され、前記ハブが形成された内周側の入口から外周側の出口に流体が流れる流路を区分けするブレードと、を備える一体型インペラの製造方法であって、
前記インペラの流路を形成する工程は、
ホルダを介して加工機に取り付けられる基部と、前記基部から突出する突出部と、前記突出部から屈曲する屈曲部と、を有する内周側流路加工電極を、前記内周側の入口から挿入し、予め定めた位置を中心として旋回させ、前記ブレード間の前記流路の前記内周側を加工する内周側流路加工工程を含む
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる一体型インペラ製造方法によれば、加工工程数、加工時間及びコストを削減しながら、高精度で加工することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の方法で製造する一体型インペラを示す。
【
図3】本実施形態の一体型インペラの製造に使用する第1の電極を示す。
【
図4】本実施形態の第1の電極を加工機に取り付けるためのホルダを示す。
【
図5】本実施形態の一体型インペラの製造に使用する第2の電極を示す。
【
図6】本実施形態の一体型インペラの製造に使用する第3の電極を示す。
【
図7】本実施形態の一体型インペラの製造に使用する荒加工用第3の電極を示す。
【
図8】本実施形態の一体型インペラの製造に使用する第4の電極を示す。
【
図9】本実施形態の一体型インペラの製造に使用する荒加工用第4の電極を示す。
【
図10】本実施形態の一体型インペラの製造方法のフローチャートを示す。
【
図11】本実施形態の一体型インペラの第1の電極による加工時の状態を示す。
【
図12】本実施形態の一体型インペラの第2の電極による加工時の断面の状態を示す。
【
図13】本実施形態の一体型インペラを加工している時の第2の電極の動作を示す。
【
図14】本実施形態の一体型インペラの第3の電極による加工時の断面の状態を示す。
【
図15】本実施形態の一体型インペラを加工している時の第3の電極の動作を示す。
【
図16】本実施形態の一体型インペラの第4の電極による加工時の断面の状態を示す。
【
図17】本実施形態の一体型インペラを加工している時の第4の電極の動作を示す。
【
図18】本実施形態の一体型インペラの第4の電極による加工終了時の斜視図を示す。
【
図19】本実施形態の一体型インペラの第4の電極による加工終了時の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施形態の方法で製造する一体型インペラを示す。
図2は、
図1のII-II断面を示す。
【0014】
本実施形態の方法で製造する一体型インペラ100の構造について説明する。
【0015】
一体型インペラ100は、底部を形成する第1シュラウド101と、蓋部を形成する第2シュラウド102と、第1シュラウド101の中心部分に形成されるハブ103と、第1シュラウド101と第2シュラウド102の間に形成される流体が流れる流路110を区分けするブレード104と、を備える。第1シュラウド101、第2シュラウド102、ハブ103及びブレード104は、一つの材料から一体に製造される。
【0016】
図2に示すように、第1シュラウド101は、底面101aが平面状に形成され、全体が円板状の部分である。第1シュラウド101の中央には、中心軸C1を中心とした孔103aが貫通するハブ103が形成される。ハブ103の外周及び第1シュラウド101の底面101aの反対側には、第1面101bが形成される。第1面101bは、径方向において外周から所定の長さまでは底面101aと平行な平面に形成され、その後ハブ103に向かって底面101aから離れるように形成されると好ましい。第1面101bの底面101aから離れる部分は、滑らかな曲面が好ましい。なお、第1面101bは、平面を持たず、外周からハブ103に向かって連続的に底面101aから離れるように形成されてもよい。なお、底面101aと第1面101bは、必ずしも平行な平面に限らない。例えば、底面101aと第1面101bは、平行でない平面、少なくとも1つが平面又は曲面、両方とも曲面でもよい。
【0017】
第2シュラウド102は、第1シュラウド101の第1面101bを覆う円板状の部分である。第2シュラウド102は、径方向において外周からハブ103に向かって底面101aから離れるように外側面102aが形成される。外側面102aの反対側には、第2面102bが形成される。すなわち、第2シュラウド102の第2面102bは、ハブ103の外周から第1シュラウド101に形成される第1面101bに対向して形成される。
【0018】
ハブ103は、第1シュラウド101の中央に形成される円筒状の部分であって、中心に図示しない軸部材が挿入される孔103aが形成される。ハブ103の底面101aとは反対側の面の外周には、壁部103bが形成される。本実施形態では、ハブ103と第1シュラウド101の区切りを2点鎖線の仮想線で示したが、明確に区切る必要はない。例えば、ハブ103の外周は第1シュラウド101の第1面101bに含まれるものとし、ハブ103の底面は第1シュラウド101の底面101aに含まれるものとしてよい。
【0019】
ブレード104は、第1シュラウド101の第1面101bと第2シュラウド102の第2面102bに連結される。ブレード104は、外周側から中心軸C1に向かって湾曲して形成される。湾曲したブレード104の凹側を凹面104aとし、凸側を凸面104bとする。ブレード104は、中心軸C1に向かうにつれて、隣り合うブレード104の間の距離が短くなる。すなわち、ブレード104は、流路105の幅が中心に向かうにつれて細くなるように、流路110を円周方向で区分けする。なお、ブレード104は、ハブ103まで延び、ハブ103と一体に形成してもよい。
【0020】
このように、一体型インペラ100は、第1シュラウド101、第2シュラウド102、ハブ103及びブレード104で囲まれた複数の流路110が形成される。流路110は、第2シュラウド102とハブ103に挟まれて環状に形成された入口111と、第1シュラウド101と第2シュラウド102に挟まれた外周に形成された出口112と、を有する。本実施形態では、8つのブレード104によって8つの流路110が形成される。
【0021】
次に、本実施形態の方法で製造する一体型インペラ100の作動について説明する。
【0022】
本実施形態の一体型インペラ100は、図示しないモータ等の駆動部によって回転される。インペラ100が
図1に示した矢印Aのように回転すると、入口111から流入した空気が
図2に示した矢印Bのように流れ、インペラ100内で加速された後、出口102から排出される。
【0023】
次に、本実施形態の一体型インペラ100の製造方法について説明する。
【0024】
図3は、本実施形態の一体型インペラ100の製造に使用する第1の電極10を示す。
図4は、本実施形態の第1の電極10を加工機に取り付けるためのホルダ16を示す。
【0025】
本実施形態の一体型インペラ100の製造に使用する入口加工電極を構成する第1の電極10は、
図2に示したインペラ100の流路110の入口111付近の第1シュラウド101の第1面101b及び第2シュラウド102の第2面102bを加工する。
【0026】
本実施形態のインペラ100の入口加工は、荒い精度で加工する荒加工と高精度で加工する仕上加工を行う。第1の電極10は、荒加工用と仕上加工用の2種類製作される。荒加工用と仕上加工用の第1の電極10は、同一でもよく、荒加工用を仕上加工用よりも小さく製作してもよい。また、加工時の電極の消耗を考慮して同一の物を複数製作してもよい。
【0027】
第1の電極10は、板状の基部11と、基部11から筒状に突出する筒状部12と、筒状部12の先端に形成されるテーパー部13と、を備える。本実施形態の第1の電極10は1つの部材から形成されるが、複数に分割して形成してもよい。
【0028】
本実施形態の基部11は、中心軸C2に垂直な断面が正方形となる直方体である。基部11の形状は、中心軸C2に垂直な断面が円となる円柱等、他の形状でもよい。本実施形態の基部11は、一つの角の表面11aに、加工機への取り付けの際に位置を確認するための目印11a1が形成される。本実施形態の目印11a1は、他の表面11aよりも凹状に形成されるが、凸状、切欠き等、他の表面と区別がつくものであればよい。目印11a1を形成することで、テーパー部13の切欠き13aが奇数の場合等であっても取付の向きを容易に判別することができる。
【0029】
本実施形態の筒状部12は、中心軸C2を中心として、基部11の表面11aから筒状に延びる。筒状部12の内側の基部11の表面11aには、ホルダ16に取り付けるためのボルト等が差し込まれる複数の孔11a2が形成される。筒状部12の先端には、テーパー部13が形成される。
【0030】
テーパー部13は、
図2に示したインペラ100の流路110の入口111の形状にあわせて形成される。テーパー部13は、先端に向かって薄く形成され、周方向に所定の間隔で切欠き13aが形成される。切欠き13aの形状は、製造するインペラ100の中心軸C1に近いブレード104の端部104cが形成される形状である。切欠き13aの周方向の間隔は、製造するインペラ100の中心軸C1に近いブレード104の端部104cの周方向の間隔である。
【0031】
テーパー部13は、従来の電極の先端部分を残し、底面部分をカットしたような形状であり、従来の電極よりも短く形成される。したがって、従来よりも加工時間を短くすることができる。また、第1の電極10を小型にすることができ、材料費を削減することができる。
【0032】
図4に示すように、第1の電極10は、基部11の裏面11bに設置されるホルダ16によって、図示しない加工機に取り付けられる。ホルダ16は、第1の電極10の水平出し及び平行出し等に使用される。
【0033】
なお、ホルダ16は、設計段階、プログラム作成段階、成型段階、及び、放電加工段階の全てにおいて、他の電極とも基準を共通化する。したがって、電極の交換毎に発生していた精度出し及び位置出しが不要となり、工数が削減されるとともに、品質が向上する。
【0034】
図5は、本実施形態の一体型インペラ100の製造に使用する第2の電極20を示す。
【0035】
下降流路加工電極を構成する第2の電極20は、
図2に示したインペラ100の流路110の入口111付近の第2シュラウド102の第2面102bを加工する。第2の電極20の加工する第2面102bの位置は、第1の電極10が加工する位置よりも出口112に近い部分であって、入口から流入した流体が下降してブレード104間の流路に流入する位置である。
【0036】
本実施形態のインペラ100の下降流路加工は、高精度で加工する仕上加工を行う。第2の電極10は、仕上加工用が製作される。第2の電極10は、加工時の消耗を考慮して同一の物を複数製作してもよい。なお、荒加工用の第2の電極を製作してもよい。
【0037】
本実施形態の一体型インペラ100の製造に使用する第2の電極20は、基部21と、基部21から突出する曲面部22と、を有する。
【0038】
基部21は、直方体形状であって、1つの面がホルダ16に取り付けられ、反対側の面から曲面部22が突出する。曲面部22は、基部21から突出し、製造するインペラ100の流路110の入口111の外周側と同じ曲率で湾曲した板状に形成される。
【0039】
曲面部22は、湾曲した凸方向側に向けて曲がって形成される先端部22aを有する。曲面部22は、
図2に示したインペラ100の流路110の入口111付近の第2シュラウド102の第2面102bの形状にあわせて形成される。先端部22aには、切欠き22bが形成される。切欠き22bの形状は、
図1に示したインペラ100の中心軸C1に近いブレード104の端部104cが嵌まり込む形状である。
【0040】
第2の電極20の曲面部22の幅方向の寸法は、インペラ100の中心軸C1に近いブレード104の端部104cの間隔と同じ又はそれ以上が好ましい。このような寸法の第2電極20を全周に渡ってピッチ移動させながら加工することによって、インペラ100の流路110の入口111付近の第2シュラウド102の第2面102bの全周に第2電極20を隙間なく当てることができ、安定して加工することができる。
【0041】
第2の電極20は、基部21から曲面部22の内部を通過し、先端部22aに開口する液孔20aが形成される。液孔20aを形成し、液孔20aから加工液を噴出することによって、スラッジが堆積することを防ぎ、安定した加工をすることができる。
【0042】
図6は、本実施形態の一体型インペラ100の製造に使用する第3の電極30を示す。
図6(a)は、本実施形態の第3の電極30の下段電極31を示す。
図6(b)は、本実施形態の第3の電極30の上段電極32を示す。
【0043】
内周側流路加工電極を構成する第3の電極30は、
図2に示したインペラ100の流路110のブレード104間のうち内周側(入口111側)を加工する。本実施形態の第3の電極30は、下段電極31と上段電極32の2種類の電極を含む。下段電極31は、流路110の下方側の第1面101bを加工し、上段電極32は、流路110の上方側の第2面102bを加工する。なお、第3の電極30は、ブレード104間の流路110の形状に応じて、2種類に限らず、種類が増減してもよい。
【0044】
下段電極31は、下段基部311と、下段基部311から突出する下段棒状部312と、下段棒状部312から屈曲して延びる下段屈曲部313と、を有する。下段基部311は、直方体形状であって、1つの面がホルダ16に取り付けられ、反対側の面から下段棒状部312が突出する。下段屈曲部313は、下段棒状部312から屈曲して形成される。
【0045】
下段棒状部312から下段屈曲部313への屈曲方向や屈曲角度は、流路110の形状にあわせて形成される。下段屈曲部313は、設置時に上を向いた上面313a、設置時に下を向いた下面313b、凸形状の凸面313c及び凹形状の凹面313dを有する。下面313bは、流路110の第1面101bを加工する。下段屈曲部313の凸面313cは、
図2に示した断面におけるブレード104の凹面104aの形状にあわせて形成され、ブレード104の凹面104aを加工する。下段屈曲部313の凹面313dは、
図2に示した断面におけるブレード104の凸面104bの形状にあわせて形成され、ブレード104の凸面104bを加工する。
【0046】
上段電極32は、上段基部321と、上段基部321から突出する上段棒状部322と、上段棒状部322から屈曲して延びる上段屈曲部323と、を有する。上段基部321は、直方体形状であって、1つの面がホルダ16に取り付けられ、反対側の面から上段棒状部322が突出する。上段屈曲部323は、上段棒状部322から屈曲して形成される。
【0047】
上段棒状部322から上段屈曲部323への屈曲方向や屈曲角度は、流路110の形状にあわせて形成される。上段屈曲部323は、設置時に上を向いた上面323a、設置時に下を向いた下面323b、凸形状の凸面323c及び凹形状の凹面323dを有する。上面323aは、流路110の第2面102bを加工する。上段屈曲部323の凸面323cは、
図2に示した断面におけるブレード104の凹面104aの形状にあわせて形成され、ブレード104の凹面104aを加工する。上段屈曲部323の凹面323dは、
図2に示した断面におけるブレード104の凸面104bの形状にあわせて形成され、ブレード104の凸面104bを加工する。
【0048】
図7は、本実施形態の一体型インペラ100の製造に使用する荒加工用第3の電極300を示す。本実施形態では、下段電極31と上段電極32を使用した仕上げ加工の前に、荒加工を行ってもよい。荒加工用第3の電極300は、基部301と、基部301から突出する棒状部302と、棒状部302から屈曲して延びる屈曲部303と、を有する。
【0049】
屈曲部303の上下面間隔は、流路110のブレード104間の内周側の第1面101bと第2面102bの間隔より小さい寸法である。したがって、ブレード104間の荒加工は、予め定めた位置を中心として1つの荒加工用第3の電極300を旋回させることで行うことができる。
【0050】
荒加工用第3の電極300は、基部301から棒状部302及び屈曲部303の内部を通過し、先端部304に開口する液孔300aが形成される。液孔300aを形成し、液孔300aから加工液を噴出することによって、スラッジが堆積することを防ぎ、安定した加工をすることができる。
【0051】
なお、下段電極31及び上段電極32に液孔を設けてもよい。また、液孔を加工する際に先端部304以外の部分に開口を余儀なくされる場合がある。その場合、先端部304に液孔を開口させた後に、電極と同材質の粉と接着剤により先端部304以外の部分の開口を塞ぐ等を行い、孔の数を調整してもよい。
【0052】
下段電極31、上段電極32及び荒加工用第3の電極300は、加工時の消耗を考慮して同一の物を複数製作してもよい。また、下段電極31と上段電極32は、異なる形状でも、同一の形状でもよい。
【0053】
図8は、本実施形態の一体型インペラ100の製造に使用する第4の電極40を示す。
図8(a)は、本実施形態の第4の電極40の下段電極41を示す。
図8(b)は、本実施形態の第4の電極40の上段電極42を示す。
【0054】
外周側流路加工電極を構成する第4の電極40は、
図2に示したインペラ100の流路110のブレード104間のうち外周側(出口112側)を加工する。本実施形態の第4の電極40は、下段電極41と上段電極42の2種類の電極を含む。下段電極41は、流路110の下方側の第1面101bを加工し、上段電極42は、流路110の上方側の第2面102bを加工する。なお、第4の電極40は、ブレード104間の流路110の形状に応じて、2種類に限らず、種類が増減してもよい。
【0055】
下段電極41は、下段基部411と、下段基部411から突出する下段刃状部412と、を有する。下段基部411は、略直方体形状であって、1つの面がホルダ16に取り付けられる上面として、曲面411aから下段刃状部412が突出する。下段刃状部412が突出する下段基部411の曲面411aの曲率は、製造するインペラ100の外周の曲率にあわせて形成される。したがって、第4の電極40は、加工時にインペラ100の外周との距離を最小とすることができ、下段刃状部412のたわみ強度が向上することにより、加工中の下段刃状部412の先端のたわみを抑制することができ、品質を向上させることができる。
【0056】
下段刃状部412は、刀の刃のような反りを有し、設置時に上を向いた上面412a、設置時に下を向いた下面412b、凹形状の凹面412c、凸形状の凸面412dを有する。下面412bは出口112付近の第1面101bと同じ形状、凹面412cはブレード104の凸側、凸面412dはブレード104の凹側にそれぞれあわせて形成される。
【0057】
下段基部411は、曲面411aから反対側の面へ繋がる液孔41aが形成される。液孔41aは、下段刃状部412の上面付近に形成されると好ましい。この位置に形成されると、液孔41aにより加工液を噴出することができるので、下段刃状部412の上面にスラッジが堆積することを防ぐことができ、安定した加工をすることができる。
【0058】
同様に、下段電極41は、下段基部411から下段刃状部412の内部を通過し、先端部412eに開口する液孔41bが形成される。液孔41bを形成し、液孔41bから加工液を噴出することによって、スラッジが堆積することを防ぎ、安定した加工をすることができる。
【0059】
上段電極42は、上段基部421と、上段基部421から突出する上段刃状部422と、を有する。上段基部421は、略直方体形状であって、1つの面がホルダ16に取り付けられる上面として、曲面421aから上段刃状部422が突出する。上段刃状部422が突出する上段基部421の曲面421aの曲率は、製造するインペラ100の外周の曲率にあわせて形成される。したがって、第4の電極40は、加工時にインペラ100の外周との距離を最小とすることができ、上段刃状部422のたわみ強度が向上することにより、加工中の上段刃状部422の先端のたわみを抑制することができ、品質を向上させることができる。
【0060】
上段刃状部422は、刀の刃のような反りを有し、設置時に上を向いた上面422a、設置時に下を向いた下面422b、凹形状の凹面422c、凸形状の凸面422dを有する。上面422aは出口112付近の第2面102bと同じ形状、凹面422cはブレード104の凸側、凸面422dはブレード104の凹側にそれぞれあわせて形成される。
【0061】
上段基部421は、曲面421aから反対側の面へ繋がる液孔42aが形成される。液孔42aは、上段刃状部422の上面付近に形成されると好ましい。この位置に形成されると、液孔42aにより加工液を噴出することができるので、上段刃状部422の上面にスラッジが堆積することを防ぐことができ、安定した加工をすることができる。
【0062】
同様に、上段電極42は、上段基部421から上段刃状部422の内部を通過し、先端部422eに開口する液孔42bが形成される。液孔42bを形成し、液孔42bから加工液を噴出することによって、スラッジが堆積することを防ぎ、安定した加工をすることができる。
【0063】
図9は、本実施形態の一体型インペラ100の製造に使用する荒加工用第4の電極400を示す。本実施形態では、下段電極41と上段電極42を使用した仕上げ加工の前に、荒加工を行ってもよい。荒加工用第4の電極400は、基部401と、基部401から突出する刃状部402と、を有する。
【0064】
刃状部402の上下面間隔は、流路110の第1面101b及び第2面102bの間隔より小さい。したがって、ブレード104間の加工は、1つの荒加工用第4の電極400を、ブレード104の凸側と凹側とに移動させることで加工する。
【0065】
基部401は、曲面401aから反対側の面へ繋がる液孔400aが形成される。液孔400aは、刃状部402の上面付近に開口されると好ましい。この位置に形成されると、液孔400aにより加工液を噴出することができるので、刃状部402の上面にスラッジが堆積することを防ぐことができ、安定した加工をすることができる。
【0066】
同様に、荒加工用第4の電極400は、基部401から刃状部402の内部を通過し、先端部402eに開口する液孔400bが形成される。液孔400bを形成し、液孔400bから加工液を噴出することによって、スラッジが堆積することを防ぎ、安定した加工をすることができる。
【0067】
下段電極41、上段電極42及び荒加工用第4の電極400は、加工時の消耗を考慮して同一の物を複数製作してもよい。また、下段電極41と上段電極42は、異なる形状でも、同一の形状でもよい。
【0068】
図10は、本実施形態の一体型インペラ100の製造方法のフローチャートを示す。一体型インペラ100の製造前は、円柱状に形成された材料Mの状態である。材料Mは、炭素鋼、ステンレス鋼、チタン等の金属である。なお、円柱は、製作するインペラ100の高さ及び直径と同じ寸法で形成してもよい。予め材料Mには、ハブ103となる中央に、中心軸C1を中心とした孔103aを形成する。
【0069】
本実施形態の一体型インペラ100の製造方法では、まず、ステップ1で、荒加工工程を実行する(ST1)。荒加工工程は、入口荒加工用電極としての荒加工用第1の電極を用いた入口荒加工工程、内周側流路荒加工用電極としての荒加工用第3の電極300を用いた内周側流路荒加工工程、及び、外周側流路荒加工用電極としての荒加工用第4の電極400を用いた外周側流路荒加工工程を有する。荒加工用第1の電極、荒加工用第3の電極300及び荒加工用第4の電極400は、完成寸法よりも小さい寸法が好ましい。なお、下降流路荒加工用電極としての荒加工用の第2の電極を製作し、用いてもよい。また、荒加工工程において、荒加工用電極は、どの順序で用いてもよい。
【0070】
次に、ステップ2で、第1の電極10による入口加工工程を実行する(ST2)。続いて、ステップ3で、第2の電極20による下降流路加工工程を実行する(ST3)。続いて、ステップ4で、第3の電極30による内周側流路加工工程を実行する(ST4)。続いて、ステップ5で、第4の電極40による外周側流路加工工程を実行する(ST5)。次に、ステップ6で、表面加工を実行する(ST6)。
【0071】
なお、ステップ2からステップ6は、順序を変更してもよい。また、ステップ1の荒工程を分けて、ステップ2の入口加工工程、ステップ3の下降流路加工工程、ステップ4の内周側流路加工工程、ステップ5の外周側流路加工工程の前に、それぞれ別々に実行してもよい。例えば、入口荒加工工程の次に入口加工工程を行い、内周側流路荒加工工程の次に内周側流路加工工程を行い、外周側流路荒加工工程の次に外周側流路加工工程を行ってもよい。
【0072】
図11は、本実施形態の一体型インペラ100の第1の電極10による加工時の状態を示す。なお、
図11乃至
図19は、理解を容易にするために、材料Mに対して完成したインペラ100の流路110等も示している。
【0073】
ステップ2の第1の電極10による入口加工工程では、図示しない加工機にホルダ16を介して、第1の電極10を水平に取り付ける。第1の電極10は、材料Mの中心軸C1と第1の電極10の中心軸C2が重なる位置に配置された後、鉛直下方に移動し、材料Mを加工する。
【0074】
このような加工方法によって、第1の電極10は、インペラ100の流路110の入口111付近の第1面101b及び第2面102bとなる部分を加工する。
【0075】
図12は、本実施形態の一体型インペラ100の第2の電極20による加工時の断面の状態を示す。
図13は、本実施形態の一体型インペラ100を加工している時の第2の電極20の動作を示す。
【0076】
ステップ3の第2の電極20による下降流路加工工程は、第1の電極10で加工した入口下部から始める。第2の電極20は、流路110の入口111下部の第2面102bを加工する。第2の電極20の加工する第2面102bの位置は、第1の電極10が加工する位置よりも出口112に近い部分である。
【0077】
第2の電極20の曲面部22の円周方向の円弧長寸法Dは、製造されるインペラ100の中心軸C1に近いブレード104の端部104cの円弧長間隔E以上が好ましい。また、隣の位置を加工する際の
図5に示した切欠き22bの円弧長移動距離Fは、製造されるインペラ100の中心軸C1に近い隣り合うブレード104の端部104cの円弧長間隔Eに等しい。
【0078】
従来、流路110の入口111下部の第2面102bの加工では、第2電極20の移動前後の加工箇所の間に隙間があり、第2面102bに第2電極20による加工箇所と未加工箇所が生じてしまい、不安定な加工になる場合があった。
【0079】
本実施形態では、このような寸法の第2電極20を矢印Gのように、加工後上方に移動させ、円弧長移動距離Fだけ時計回りに移動させ、下方に移動させる。全周に渡ってこのように繰り返し加工することによって、インペラ100の流路110の入口111下部の第2シュラウド102の第2面102bの全周に第2電極20を隙間なく当てることができ、安定して加工することができる。なお、移動方向は、時計回り及び反時計回りのどちらでも良い。
【0080】
図14は、本実施形態の一体型インペラ100の第3の電極30による加工時の断面の状態を示す。
図15は、本実施形態の一体型インペラ100を加工している時の第3の電極30の動作を示す。
【0081】
ステップ4の第3の電極30による内周側流路加工工程は、第1の電極10及び第2の電極20で加工した下方部分から始める。第3の電極30は、流路110のブレード104間のうち内周側(入口111側)を加工する。
【0082】
まず、内周側下方流路加工工程として、第3の電極30の下段電極31を用いて流路110の第1面101bを加工する。下段棒状部312は、インペラ100の流路110の入口111から挿入される。続いて、下段屈曲部313をブレード104間に挿入して加工する。ブレード104間の加工は、予め定めた位置を中心として下段電極31を
図15に示した矢印Hの方向に旋回させることで行うことができる。
【0083】
次に、内周側上方流路加工工程として、第3の電極30の上段電極32を用いて流路110の第2面102bを加工する。上段棒状部322は、インペラ100の流路110の入口111から挿入される。続いて、上段屈曲部323をブレード104間に挿入して加工する。ブレード104間の加工は、予め定めた位置を中心として上段電極32を、下段電極31と同様に、
図15に示した矢印Hの方向に旋回させることで行うことができる。
【0084】
従来、流路110のブレード104間の内周側の加工においては、電極を移動させずに加工していたので、第1面101b及びブレード104の凹面104a側と凸面104b側を加工するための電極、並びに、第2面102b及びブレード104の凹面104a側と凸面104b側を加工するための電極を5種類ずつ全部で10種類使用していた。
【0085】
本実施形態の第3電極30は、下段電極31と上段電極32を有し、それぞれ予め定めた位置を中心として旋回させることができる。したがって、下段電極31と上段電極32の2種類の第3電極30によって流路110のブレード104間の内周側を加工することができ、工数、加工時間、及び、材料費が削減される。
【0086】
図16は、本実施形態の一体型インペラ100の第4の電極40による加工時の断面の状態を示す。
図17は、本実施形態の一体型インペラ100を加工している時の第4の電極40の動作を示す。
【0087】
ステップ5の第4の電極40による外周側流路加工工程は、材料Mの外周から始める。第4の電極40は、流路110のブレード104間のうち外周側(出口112側)を加工する。
【0088】
まず、外周側下方流路加工工程として、第4の電極40の下段電極41を用いて流路110の第1面101bを加工する。下段刃状部412は、インペラ100の流路110の出口112となる位置から挿入される。次に、外周側上方流路加工工程として、第4の電極40の上段電極42を用いて流路110の第2面102bを加工する。上段刃状部422は、インペラ100の流路110の出口112となる位置から挿入される。
【0089】
従来、流路110のブレード104間のうち外周側(出口112側)を加工する電極は、流路110の第1面101bに対してブレード104の凹面104a側と凸面104b側を加工するための2つの電極、及び、流路110の第2面102bに対してブレード104の凹面104a側と凸面104b側を加工するための2つの電極が必要であり、合計4種類の電極が必要であった。また、基部41に曲面411a,421aが形成されていなかったので、電極の刃状部412,422が撓みやすく、加工が不安定であった。
【0090】
本実施形態の第4の電極40は、流路110のブレード104の凹面104a側と凸面104b側の形状を有する。したがって、
図17に示した矢印Jのように、外周に沿って移動することにより、流路110の第1面101b及びブレード104の凹面104a側と凸面104b側を1つの下段電極41で加工できるようになり、流路110の第2面102b及びブレード104の凹面104a側と凸面104b側を1つの上段電極42で加工できるようになる。すなわち、合計2種類の第4の電極40だけで加工を完了することができる。
【0091】
流路110のブレード104の凹面104a側と凸面104b側の電極を分けて用いることがないので、工数、加工時間、及び、材料費を削減することができる。さらに、基部411,421に曲面411a,421aを形成したので、第4の電極40の移動時に曲面411a,421aとインペラ100となる材料Mの隙間を微少にすることができ、安定した状態で加工することができる。
【0092】
図18は、本実施形態の一体型インペラ100の第4の電極40による加工終了時の斜視図を示す。
図19は、本実施形態の一体型インペラ100の第4の電極40による加工終了時の断面図を示す。
【0093】
ステップ6の表面加工は、第4の電極40による加工終了時の材料Mに対して、第2シュラウド102の外側面102aを形成する。第2シュラウド102の外側面102aは、旋盤等で加工される。第2シュラウド102の外側面102aは、外周側から内周側に向かって、第1シュラウド101の底面101aから離れるように形成することが好ましい。
【0094】
その後、機械研磨を実行してもよい。機械研磨工程は、微少な段差を平滑化する。機械研磨は、棒砥石、平砥石又は回転砥石を装着したグラインダ等を用いる。また、研磨粉を使用した手研磨等で平滑化してもよい。
【0095】
また、その後、洗浄工程を実行してもよい。洗浄工程は、機械研磨工程等においてインペラ100に付着した油及び汚れ等を除去する。一般には、市販されているパーツクリーナーを用いればよい。
【0096】
洗浄が不十分だと、この後に実行する研磨工程で均一性を欠く結果となるおそれがある。特に、研磨工程において、化学研磨又は電解研磨等の薬剤を用いて研磨する場合、表面に油及び汚れが付着していると、研磨液のワーク表面への接触が部分的に阻害され、不均一な処理となることがある。
【0097】
なお、研磨工程で電解研磨を行う場合、研磨を行う前に、電流を負荷して液循環を一定時間行うことによって、洗浄工程を兼ねてもよい。また、汚れが少ない場合又は研磨剤を使用して機械的な研磨を行う場合には、洗浄工程を省略してもよい。
【0098】
研磨工程では、洗浄工程後の流路110の表面の研磨を行い、放電加工で生じた変質層の除去及びインペラ100の表面の平滑性の改善を行う。変質層が残っていると、金属疲労の原因となり、インペラ100の寿命が短縮するおそれがある。
【0099】
研磨は、流体研磨、化学研磨及び電解研磨等の方法を用いる。流体研磨は、インペラ100の流路110に対して、特殊な粘土状のものに砥粒を混ぜたメディアを高圧で流し込むことによって、流路110の表面を平滑にする。化学研磨は、研磨しない部分にマスキングをした後、インペラ100を化学研磨液中に一定時間浸けてマスキングしていない部分を平滑にする。化学研磨液は材質にあった市販のものを使用すればよい。
【0100】
電解研磨は、電極を用いてインペラ100を電解研磨液に浸け、インペラ100の側をプラス、電極側をマイナスとして通電することで、流路110の表面の金属を融解させる。電解研磨は加工面に凹凸が存在する場合、凹部は金属イオンによる粘液層の不動態化により凸部と比較して抵抗が大きく反応しにくいため平坦な面となる。したがって、電解研磨は流路110の表面を滑らかにするだけでなく、凹凸を無くし、平らにする効果があるため、一般に良く用いられている。
【0101】
なお、電解研磨は、研磨が不用な部分も研磨されてしまうおそれがある。そこで、流路110に類似した形状の電極を使用してもよい。また、均一に表面を研磨するためには、電解研磨液の表面更新を確実に行う必要があり、加工液の噴き出し、開口部のシール、電解研磨時に発生する水素の円滑な排出等のために、治具の形状は適宜変更してもよい。電解研磨液は材質にあった市販のものを使用すればよく、適用する電気条件や加工時間に依るが、表面粗さとしてRa2μm以下の平滑度を達成することができる。
【0102】
このように加工することで、
図1及び
図2に示す一体型インペラ100が完成する。
【0103】
以上、本実施形態の一体型インペラ100の製造方法は、底部を形成する第1シュラウド101と、蓋部を形成する第2シュラウド102と、第1シュラウド101の中央部分に形成される円筒状のハブ103と、第1シュラウド101と第2シュラウド102の間に形成され、ハブ103が形成された内周側の入口111から外周側の出口112に流体が流れる流路110を区分けするブレード104と、を備える一体型インペラ100の製造方法であって、一体型インペラの製造方法は、インペラ100の流路110を形成する工程を有し、インペラ100の流路110を形成する工程は、ホルダ16を介して加工機に取り付けられる基部31と、基部31から突出する棒状部32aと、棒状部32aから屈曲する屈曲部32bと、を有する内周側流路加工電極30を、内周側の入口111から挿入し、予め定めた位置を中心として旋回させ、ブレード104間の流路110の内周側を加工する工程を含む。したがって、本実施形態の一体型インペラ100の製造方法は、従来技術より加工工程数、加工時間及びコストを削減しながら、高精度で加工することが可能となる。
【0104】
本実施形態の一体型インペラ10の製造方法では、内周側流路加工電極30は、流路110の第1シュラウド101側を加工する下段電極31と、下段電極31とは別体であって、流路110の第2シュラウド102側を加工する上段電極32と、を有し、内周側流路加工工程は、ブレード104間の流路110の内周側の第1シュラウド側を下段電極31によって加工する内周側下方流路加工工程と、ブレード間の流路110の内周側の第2シュラウド側を上段電極32によって加工する内周側上方流路加工工程と、を含む。したがって、本実施形態の一体型インペラ100の製造方法は、従来技術より加工工程数、加工時間及びコストを削減しながら、高精度で加工することが可能となる。
【0105】
本実施形態の一体型インペラ10の製造方法では、基部301と、基部401から突出する棒状部302と、棒状部302から屈曲して延びる屈曲部303と、を有する内周側流路荒加工用電極300をさらに備え、下段電極31と上段電極32を使用した内周側流路加工工程の前に、ブレード104間の流路110の内周側を内周側流路荒加工用電極300によって加工する内周側流路荒加工工程を有する。したがって、本実施形態の一体型インペラ100の製造方法は、より高精度に加工することが可能となる。
【0106】
本実施形態の一体型インペラ10の製造方法では、内周側流路荒加工用電極300は、基部301から棒状部302及び屈曲部303の内部を通過し、屈曲部303の先端部304に開口する液孔300aが形成され、屈曲部303の先端部304の液孔300aから加工液を噴出する。したがって、本実施形態の一体型インペラ100の製造方法は、液孔20aから加工液を噴出することによって、スラッジが堆積することを防ぎ、安定した加工をすることができる。
【0107】
本実施形態の一体型インペラ10の製造方法では、インペラ100の流路110を形成する工程は、外周側流路加工電極40により出口112からブレード104間の流路110の内周側までを加工する外周側流路加工工程を有し、外周側流路加工電極40は、ホルダを介して加工機に取り付けられる下段基部411と、下段基部411から突出する下段刃状部412と、を有する下段電極41と、下段電極41とは別体であって、ホルダを介して加工機に取り付けられる上段基部421と、上段基部421から突出する上段刃状部422と、を有する上段電極42と、を含み、外周側流路加工工程は、ブレード104間の流路110の外周側の第1シュラウド101側を下段電極41によって加工する外周側下方流路加工工程と、ブレード104間の流路110の外周側の第2シュラウド102側を上段電極42によって加工する外周側上方流路加工工程と、を有する。したがって、本実施形態の一体型インペラ100の製造方法は、従来技術より加工工程数、加工時間及びコストを削減しながら、高精度で加工することが可能となる。
【0108】
本実施形態の一体型インペラ10の製造方法では、下段電極41の下段基部411は、下段刃状部412が突出する曲面411aを有し、曲面411aから反対側の面へ繋がる液孔41aが形成され、上段電極42の上段基部421は、上段刃状部422が突出する曲面421aを有し、曲面421aから反対側の面へ繋がる液孔42aが形成され、それぞれ曲面411a,421aの液孔41a,42aから加工液を噴出する。したがって、本実施形態の一体型インペラ100の製造方法は、液孔41a,42aから加工液を噴出することによって、スラッジが堆積することを防ぎ、安定した加工をすることができる。
【0109】
本実施形態の一体型インペラ10の製造方法では、下段電極41の下段基部411から下段刃状部412の内部を通過し、下段刃状部412の先端部412eに開口する液孔41bが形成され、上段電極42の上段基部421から上段刃状部422の内部を通過し、上段刃状部422の先端部422eに開口する液孔42bが形成され、それぞれ先端部412e,422eの液孔41b,42bから加工液を噴出する。したがって、本実施形態の一体型インペラ100の製造方法は、液孔41b,42bから加工液を噴出することによって、スラッジが堆積することを防ぎ、安定した加工をすることができる。
【0110】
本実施形態の一体型インペラ10の製造方法では、インペラ100の流路110を形成する工程は、流路110の入口111を加工する入口加工工程と、入口111からブレード104間までの流路110を加工する下降流路加工工程と、を有する。したがって、本実施形態の一体型インペラ100の製造方法は、より加工工程数、加工時間及びコストを削減しながら、高精度で加工することが可能となる。
【0111】
以上、本実施形態の一体型インペラ10の製造方法をいくつかの実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の組み合わせ又は変形が可能である。
【符号の説明】
【0112】
10…第1の電極(入口加工電極)、
20…第2の電極(下降流路加工電極)、
30…第3の電極(内周側流路加工電極)、
31…下段電極、311…下段基部、312…下段棒状部、313…下段屈曲部、
32…上段電極、321…上段基部、322…上段棒状部、323…上段屈曲部、
300…荒加工用第3の電極(内周側流路荒加工用電極)、301…基部、302…棒状部、303…屈曲部、
40…第4の電極(外周側流路加工電極)、
41…下段電極、411…下段基部、312…下段棒状部、313…下段屈曲部、
42…上段電極、421…上段基部、322…上段棒状部、323…上段屈曲部、
400…荒加工用第4の電極(外周側流路荒加工用電極)、401…基部、402…棒状部、403…屈曲部、
100…一体型インペラ、101…第1シュラウド、102…第2シュラウド、103…ハブ、104…ブレード
110…流路