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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024839
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】調整ツール及び安全スイッチ
(51)【国際特許分類】
   F16P 3/10 20060101AFI20240216BHJP
   G05B 9/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F16P3/10
G05B9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127764
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】叶田 壮兵
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 研史
【テーマコード(参考)】
5H209
【Fターム(参考)】
5H209AA05
5H209GG05
5H209HH04
5H209JJ01
(57)【要約】
【課題】安全スイッチが設置されるときの位置調整を容易にする。
【解決手段】調整ツール1は、スイッチ本体200及びアクチュエータ300を備える安全スイッチ100の位置調整を行うときに用いられる調整ツールであって、前記スイッチ本体に対して前記アクチュエータが所定範囲内にあるときの前記スイッチ本体が有する電磁石201に形成される吸着面と前記アクチュエータが有する磁化部材301に形成された被吸着面との相対位置関係をガイドするために、前記電磁石の位置をガイドするための第一ガイド部と、前記相対位置関係をガイドするために、前記磁化部材の位置をガイドするための第二ガイド部と、前記電磁石の位置をガイドした状態で前記スイッチ本体に装着する第一装着部及び前記磁化部材の位置をガイドした状態で前記アクチュエータに装着する第二装着部の少なくとも一方と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ本体及びアクチュエータを備え、前記スイッチ本体に対して前記アクチュエータが所定範囲内にあることを検出し、検出結果に基づいて安全信号を出力する安全スイッチを設置する際に、前記スイッチ本体が有する電磁石に形成される吸着面と前記アクチュエータが有する磁化部材に形成された被吸着面との位置調整を行うときに用いられる調整ツールであって、
前記スイッチ本体に対して前記アクチュエータが所定範囲内にあるときの前記吸着面と前記被吸着面との相対位置関係をガイドするために、前記電磁石の位置をガイドするための第一ガイド部と、
前記スイッチ本体に対して前記アクチュエータが所定範囲内にあるときの前記吸着面と前記被吸着面との相対位置関係をガイドするために、前記磁化部材の位置をガイドするための第二ガイド部と、
前記電磁石の位置をガイドした状態で前記スイッチ本体に装着する第一装着部及び前記磁化部材の位置をガイドした状態で前記アクチュエータに装着する第二装着部の少なくとも一方と、を備える、調整ツール。
【請求項2】
前記第一ガイド部は、前記吸着面、及び前記吸着面と一定の位置関係にある前記スイッチ本体の部材と、の少なくとも一方に接触可能な第一面を有する、請求項1に記載の調整ツール。
【請求項3】
前記第二ガイド部は、前記被吸着面、及び前記被吸着面と一定の位置関係にある前記アクチュエータの部材と、の少なくとも一方に接触可能な第二面を有する、請求項1に記載の調整ツール。
【請求項4】
前記第一装着部を備え、
前記第二ガイド部は、前記被吸着面を正面視したときの前記アクチュエータの外縁の少なくとも一部に対応する外縁面を含み、
前記被吸着面の外形は前記吸着面の外形より大きく、
前記スイッチ本体に前記調整ツールが前記第一装着部によって装着されることにより、前記電磁石の位置が前記第一ガイド部にガイドされる、請求項1に記載の調整ツール。
【請求項5】
前記第一装着部は、前記吸着面を正面視したときの前記スイッチ本体の外縁の少なくとも一部と接触可能な第一外縁接触面を含む、請求項4に記載の調整ツール。
【請求項6】
前記第一装着部と前記第二装着部とを備え、
前記被吸着面の外形は前記吸着面の外形より大きく、
前記スイッチ本体に前記調整ツールが前記第一装着部によって装着されることにより、前記電磁石の位置が前記第一ガイド部にガイドされ、
前記アクチュエータに前記調整ツールが前記第二装着部によって装着されることにより、前記磁化部材の位置が前記第二ガイド部にガイドされる、請求項1に記載の調整ツール。
【請求項7】
前記第二装着部は、前記被吸着面を正面視したときの前記アクチュエータの外縁の少なくとも一部と接触可能な第二外縁接触面を備える、請求項6に記載の調整ツール。
【請求項8】
前記第一装着部と、
前記スイッチ本体に前記調整ツールが前記第一装着部によって装着されるときに、前記スイッチ本体が前記調整ツールに対して前記第一面と交差する第一軸回りに回転することを抑止する第一回転抑止部と、を備える、請求項1に記載の調整ツール。
【請求項9】
前記第二装着部と、
前記アクチュエータに前記調整ツールが前記第二装着部によって装着されるときに、前記アクチュエータが前記調整ツールに対して前記第二面と交差する第二軸回りに回転することを抑止する第二回転抑止部と、を備える、請求項1に記載の調整ツール。
【請求項10】
前記スイッチ本体と、
前記アクチュエータと、を備え、
前記スイッチ本体と前記アクチュエータとの位置関係が請求項1に記載の調整ツールを用いて調整された、安全スイッチ。
【請求項11】
前記アクチュエータは、
前記アクチュエータを、前記アクチュエータの設置場所に対して固定される固定部と、
前記磁化部材を含み、前記固定部に対して移動可能な可動部と、を有する、請求項10に記載の安全スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁石及び磁化部材を用いたロック機能を有する安全スイッチの位置調整を行うときに用いられる調整ツール、及び、当該調整ツールを用いた位置調整が行われた安全スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等において、プレス装置、作業ロボット等の機械的危険源の周囲である周囲領域は、安全柵等の区画部材によって区画される。周囲領域への人体の侵入可能性がある状態、又は、周囲領域に実際に人体が侵入したことが検出された場合に機械的危険源の稼働が停止することで、機械的危険源から人体を保護することができる。
【0003】
区画部材には、周囲領域に人体が出入りするための開閉部が設けられる。開閉部の典型的な例はドアである。
【0004】
開閉部に安全スイッチが設置される。安全スイッチは、開閉部の開閉状態を検知する検知機能を有する。
【0005】
安全スイッチを含む安全システムは、開閉部が閉状態から開状態になったときに、機械的危険源を停止させる。
【0006】
周囲領域への人体の侵入可能性がない状態、又は、周囲領域に実際に人体が侵入していないことが確認できていて、その状態が維持されている間、安全システムは「安全状態」である。「安全状態」では、安全スイッチから安全信号としてON信号が出力され、機械的危険源が稼働する。
【0007】
そして、「安全状態」から開閉部が開状態になって周囲領域が開放されると、安全システムは「安全状態」ではなくなるため、安全スイッチから安全信号としてOFF信号が出力され、機械的危険源が停止する。
【0008】
なお、安全システムでは、一度安全スイッチから安全信号としてOFF信号が出力されると、その後開閉部が閉状態になっただけでは機械的危険源が再稼働せず、別途リセット信号が入力されることにより機械的危険源が再稼働する。別途リセット信号の入力が必要とされる理由は、一度周囲領域が開放されると、その後開閉部が閉状態になっても、周囲領域への人体の侵入可能性がない状態、又は、周囲領域内に人体が侵入していないことが確認できないためである。
【0009】
安全スイッチの中には、開閉部の開閉状態を検知する検知機能のみならず、開閉部の開放を制限するためのロック機能を有するものもある(例えば特許文献1参照)。作業者が開閉部を誤って閉状態から開状態にすると、機械的危険源が停止するため、工場等の生産効率が悪化する。安全スイッチのロック機能は、作業者が開閉部を誤って閉状態から開状態にすることを抑制できるため、工場等の生産効率向上に資する。
【0010】
上記ロック機能の一例として、電磁石及び磁化部材を用いるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2016-510382号公報(図6B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
電磁石及び磁化部材を用いたロック機能では、開閉部が閉状態であるときに電磁石と磁化部材との位置関係が適切でなければ、開閉部が閉状態であるときに電磁石の吸着面に磁化部材と接触しない非接触箇所が生じ、当該非接触箇所から漏れる磁束が吸着に寄与しないため、電磁石と磁化部材との吸着力が弱まる。
【0013】
したがって、開閉部が閉状態であるときに電磁石と磁化部材との位置関係が適切になるように、電磁石を備えるスイッチ本体の設置位置と磁化部材を備えるアクチュエータの設置位置とが調整されて安全スイッチが設置される。
【0014】
ここで、開閉部が閉状態であるときの電磁石と磁化部材との位置関係が、開閉部の経年位置ずれ等によって安全スイッチの設置後に変化した場合、吸着力が低下するおそれがある。そこで、開閉部の経年位置ずれ等があっても吸着力の低下を抑制できるように、磁化部材の被吸着面を電磁石の吸着面より大きくした構成の安全スイッチが知られている。
【0015】
しかしながら、磁化部材の被吸着面を電磁石の吸着面より大きくした構成では、磁化部材の外形及び電磁石の外形を頼りにして、開閉部が閉状態であるときの電磁石と磁化部材との適切な位置関係を導き出すことが困難になる。
【0016】
また、上述した周囲領域内に安全スイッチが設置される場合、安全スイッチを構成するスイッチ本体及びアクチュエータの少なくとも一方が設置作業者から見え難い場所に設置される傾向がある。安全スイッチを構成するスイッチ本体及びアクチュエータの少なくとも一方が設置作業者から見え難い場所に設置される場合には、たとえ磁化部材の被吸着面の外形と電磁石の吸着面の外形とが同じ形状であっても、磁化部材の外形及び電磁石の外形を頼りにして、開閉部が閉状態であるときの電磁石と磁化部材との適切な位置関係を導き出すことが困難になる。
【0017】
つまり、スイッチ本体及びアクチュエータが直接突き合わされてスイッチ本体の設置位置とアクチュエータの設置位置とが調整される手法では、位置調整が困難になるおそれがあった。
【0018】
本発明は、上記の課題に鑑み、安全スイッチが設置されるときの位置調整を容易にするための調整ツール及び当該調整ツールによって位置調整された安全スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決する調整ツールは、スイッチ本体及びアクチュエータを備え、前記スイッチ本体に対して前記アクチュエータが所定範囲内にあることを検出し、検出結果に基づいて安全信号を出力する安全スイッチを設置する際に、前記スイッチ本体が有する電磁石に形成される吸着面と前記アクチュエータが有する磁化部材に形成された被吸着面との位置調整を行うときに用いられる調整ツールであって、前記スイッチ本体に対して前記アクチュエータが所定範囲内にあるときの前記吸着面と前記被吸着面との相対位置関係をガイドするために、前記電磁石の位置をガイドするための第一ガイド部と、前記スイッチ本体に対して前記アクチュエータが所定範囲内にあるときの前記吸着面と前記被吸着面との相対位置関係をガイドするために、前記磁化部材の位置をガイドするための第二ガイド部と、前記電磁石の位置をガイドした状態で前記スイッチ本体に装着する第一装着部及び前記磁化部材の位置をガイドした状態で前記アクチュエータに装着する第二装着部の少なくとも一方と、を備える。
【0020】
また、上記課題を解決する安全スイッチは、前記スイッチ本体と、前記アクチュエータと、を備え、前記スイッチ本体と前記アクチュエータとの位置関係が上記構成の調整ツールを用いて調整される。
【0021】
なお、その他の特徴、要素、ステップ、利点、及び、特性については、以下に続く発明を実施するための形態及びこれに関する添付の図面によって、さらに明らかとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、安全スイッチが設置されるときの位置調整を容易にするための調整ツール及び当該調整ツールによって位置調整された安全スイッチを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】安全スイッチの適用例を示す図
図2】スイッチ本体の一例を示す斜視図
図3】アクチュエータの一例を示す斜視図
図4】調整ツールの一例を示す正面図
図5】調整ツールの一例を示す背面図
図6】調整ツールの一例を示す後方から見た斜視図
図7】調整ツールの一例を示す前方から見た斜視図
図8】調整ツールをスイッチ本体に装着した場合の斜視図
図9】調整ツールをアクチュエータに装着した場合の斜視図
図10】安全スイッチの機能ブロックを示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
<安全スイッチの適用例>
図1は、安全スイッチの適用例を示す図である。本図では、工作機械等の機械的危険源を包囲したガード400が図示されている。ガード400は、隔離による安全防護の一例であり、本図では隔離壁を備える包囲箱の一部(特に安全スイッチが設けられるドア周辺)が描写されている。ただし、本図の描写はあくまで一例であり、本図の隔離壁を鉄柵などに置き換えて理解することもできる。
【0025】
ガード400は、開閉可能な可動ガードとして両開きのドア401L及び401Rを備える。ドア401L及び401Rは、それぞれ、透明な樹脂製又は強化ガラス製などであってもよい。左側のドア401Lの右上隅には、安全スイッチ100Lが設けられている。右側のドア401Rの左上隅には、安全スイッチ100Rが設けられている。
【0026】
なお、参照番号の数字に続くアルファベットL及びRは、同一または類似した複数の部材を区別するために使用されている。複数の部材に共通する事項が説明される場合には、アルファベットL及びRが省略される。
【0027】
安全スイッチ100Lのスイッチ本体200L、及び、安全スイッチ100Rのスイッチ本体200Rは、それぞれ、ガード400のドア枠402に固定されている。このように、スイッチ本体200は、開閉(移動)が可能なドア401ではなく、固定のドア枠402に設置することが望ましい。
【0028】
一方、安全スイッチ100Lのアクチュエータ300Lは、ドア401Lに固定された支持部材403Lに固定されている。また、安全スイッチ100Rのアクチュエータ300Rは、ドア401Rに固定された支持部材403Rに固定されている。
【0029】
なお、安全スイッチ100は、安全システムに寄与する安全機能として、アクチュエータ300がスイッチ本体200に対して所定の範囲内にあるか否かを検出し、その検出結果を安全信号として出力する。安全信号は、OSSD(Output Signal Switching Device)とも称される。
【0030】
例えば、ガード400のドア401が閉じられたときには、ドア枠402に設けられたスイッチ本体200の検出部(アンテナコイル)に対して、ドア401に設けられたアクチュエータ300のRFID(Radio Frequency Identification)が近接する。このとき、スイッチ本体200は、検出部によりRFIDが識別されたことを以て、アクチュエータ300がスイッチ本体200に対して所定の範囲内にあることを検出して、ドア401が閉じられていることを間接的に検出する。このように、安全スイッチ100は、各自に対応するドア401の開閉状態を検出するように配置されている。
【0031】
ドア401L及び401Rのうち少なくとも一方(本図ではドア401L)が開かれている場合には、ガード400により包囲された機械的危険源の稼働が禁止される状態となる。一方、ドア401L及び401Rの双方がいずれも閉じられている場合には、ガード400により包囲された工作機械の稼働が許可され得る状態(=稼働許可条件の一つを満たした状態)となる。
【0032】
このように、安全スイッチ100は、機械的危険源に対する保護方策のための機器である。特に、安全スイッチ100は、停止による安全防護の類型である。この類型では、危険源の周囲である周囲領域が区画され、当該周囲領域への人体の侵入可能性がある状態、又は、人体が侵入したことを検出したときに、機械的危険源の稼働が停止される。特に、安全スイッチ100を備えた安全システムでは、ドア401が閉じられた状態からドア401が開放された状態になったときに機械的危険源を停止する。
【0033】
すなわち、周囲領域に人体が侵入していないことなどの諸条件が満たされていて、かつその状態がドア401の閉鎖により維持されている間は「安全状態」として、安全スイッチ100からOSSDとしてON信号が出力され、機械的危険源が稼働する。一方、「安全状態」からドア401が移動して、周囲領域が開放されると、安全スイッチ100からOSSDとしてOFF信号が出力されて、機械的危険源が停止する。
【0034】
安全システム全体では、安全スイッチ100から一度OFF信号が出力されると、ドア401自体が閉じ位置に移動しても、機械的危険源が再稼働せず、別途リセット信号が入力されることにより再稼働する。ドア401が一度開放されると、その後にドア401が閉じられたとしても、周囲領域内に人体が侵入していないことを確認できないためである。
【0035】
また、安全スイッチ100は、上記安全機能に加えて、ドア401の開放を制限するためのロック機能を有する。
【0036】
例えば、安全スイッチ100は、アクチュエータ300がスイッチ本体200に対して所定の範囲内にあることを検出してドア401が閉じられていることを間接的に検出している状態で、外部機器から出力されるロック入力を受けたときにスイッチ本体200の電磁石を駆動する。このとき、アクチュエータ300の鉄板が磁化される。その結果、電磁石が鉄板に吸着してドア401の開放が制限される。なお、安全スイッチ100は、当該外部機器から特定の信号が入力されない限り、ドア401のロックを解除しないようにしてもよい。
【0037】
ロック機能を有する安全スイッチ100であれば、作業者が誤ってドア401を開放する度にOSSD出力に基づいて機械的危険源が停止するといった不具合を未然に防止することができる。
【0038】
このように、安全スイッチ100のロック機能は、機械的危険源の円滑な稼働を維持するための補助機能(=非安全機能)として理解され得る。すなわち、安全システムの安全機能は、あくまで安全スイッチ100のOSSD出力により実現される。
【0039】
<安全スイッチの機械的構造及び調整ツールの形状>
図2は、スイッチ本体200の一例を示す斜視図である。図2中のX方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交する。
【0040】
X方向は、安全スイッチ100の配置姿勢、より詳細には安全スイッチ100の一部であるスイッチ本体200の配置姿勢に対応する。具体的には、X軸線方向は吸着面208A及び208Bの法線方向に平行な軸線方向である。X軸線方向の一方であるX方向は、電磁石201に設けられるコイルから吸着面208A及び208Bに向かう方向である。X軸線方向の他方である-X方向は、X方向と反対に向かう方向である。
【0041】
Y方向も、安全スイッチ100の配置姿勢、より詳細には安全スイッチ100の一部であるスイッチ本体200の配置姿勢に対応する。具体的には、Y軸線方向はスイッチ本体200に設けられる取付部204のネジ穴軸方向に沿った軸線方向である。Y軸線方向の一方である-Y方向は、取付部204の非開口側端部から開口側端部に向かう方向である。Y軸線方向の他方であるY方向は、-Y方向と反対に向かう方向である。
【0042】
Z方向も、安全スイッチ100の配置姿勢、より詳細には安全スイッチ100の一部であるスイッチ本体200の配置姿勢に対応する。Z軸線方向は、X軸線方向及びY軸線方向と直交する。Z軸線方向は、Z方向と、Z方向と反対に向かう方向である-Z方向と、を含む。
【0043】
以下、説明の便宜上、X方向を前方向、-X方向を後方向、Y方向を上方向、-Y方向を下方向、Z方向を右方向、-Z方向を左方向するが、この例示は安全スイッチ100の配置姿勢を限定するものではない。図2以外の図に記載されたX方向、Y方向、及びZ方向も図2中のX方向、Y方向、及びZ方向と同様である。
【0044】
スイッチ本体200は、電磁石201と、筐体202と、端子203と、を備える。筐体202は、電磁石201の上方に設けられる。
【0045】
端子203は、筐体202の背面(後面)から後方向に向かって突出する。端子203には、ケーブルのコネクタが接続される。当該ケーブルによって、スイッチ本体200は、外部機器と電気的に接続される。
【0046】
筐体202は、スイッチ本体200に対してアクチュエータ300が所定範囲内にあることを検出する検出部、当該検出部による検出結果に基づいて信号を出力する出力部、駆動信号を電磁石201に供給する制御部等を収納する。
【0047】
電磁石201の上面には、スイッチ本体200をスイッチ本体200の設置場所(例えば図1に示すドア枠402)に固定するための取付部204が形成される。図2に示す例では、取付部204は、上下方向に沿って延びるネジ穴である。また、図2に示す例では、前後方向に沿って2つの取付部204が設けられる。
【0048】
スイッチ本体200は、取付部204によって直接的にスイッチ本体200の設置場所に取り付けられてもよく、図1に示す例のように取付部204によって支持部材に取り付けられて間接的にスイッチ本体200の設置場所に取り付けられてもよい。
【0049】
電磁石201は、円柱形のコア部205と、コア部205の径方向外側に設けられコイルが巻き回されるボビン206と、ボビン206の径方向外側に設けられるヨーク部207と、を備える。コア部205及びヨーク部207はそれぞれ磁性体である。
【0050】
電磁石201は、アクチュエータ300の鉄板301(図3参照)に吸着可能な吸着面208A及び208Bを有する。吸着面208Aは、コア部205の前面である。吸着面208Bは、ヨーク部207の最前面である。吸着面208Aの前後方向位置と吸着面208Bの前後方向位置とは同一である。吸着面208Aは円形であり、吸着面208Bは当該円形よりも径が大きく当該円形と同心である円環状形である。
【0051】
図3は、アクチュエータ300の一例を示す斜視図である。アクチュエータ300は、鉄板301と、筐体302と、取付部303及び304と、を備える。
【0052】
鉄板301は、電磁石201によって磁化される磁化部材である。鉄板301は、筐体302の後方に設けられる。鉄板301の背面(後面)が鉄板301の被吸着面となる。
【0053】
筐体302は、通信部310(図10参照)等を収納する。
【0054】
取付部303及び304は、アクチュエータ300をアクチュエータ300の設置場所(例えば図1に示すドア401)に固定するために用いられる。取付部303及び304はそれぞれ、筐体302の前端部の左右に設けられる。
【0055】
アクチュエータ300は、取付部303及び304によって直接的にアクチュエータ300の設置場所に取り付けられてもよく、図1に示す例のように取付部303及び304によって支持部材403に取り付けられて間接的にアクチュエータ300の設置場所に取り付けられてもよい。
【0056】
筐体302と取付部303及び304とは、アクチュエータ300は、アクチュエータ300の設置場所に対して固定される固定部の一部又は全部である。一方、鉄板301は、上記固定部に対して移動可能な可動部の一部又は全部である。上記可動部は、例えば弾性部材を介して上記固定部に接続される。鉄板301が可動することによって、鉄板301の被吸着面と電磁石201の吸着面208A及び208Bとが接触するときの面接触精度が向上し、電磁石201と鉄板301との吸着力が強まる。
【0057】
次に、調整ツール1の形状について図4図9を参照して説明する。図4は、調整ツール1の一例を示す正面図である。図5は、調整ツール1の一例を示す背面図である。図6は、調整ツール1の一例を示す後方から見た斜視図である。図7は、調整ツール1の一例を示す前方から見た斜視図である。図8は、調整ツール1をスイッチ本体200に装着した場合の斜視図である。図9は、調整ツール1をアクチュエータ300に装着した場合の斜視図である。
【0058】
調整ツール1は、スイッチ本体200及びアクチュエータ300を備える安全スイッチ100の位置調整を行うときに用いられる。
【0059】
調整ツール1は、電磁石201の位置をガイドするための第一ガイド部として、電磁石201の吸着面208A及び208Bに接触可能な第一面2と、スイッチ本体200に調
整ツール1を装着するための第一装着部4と、を備える。また、調整ツール1は、アクチュエータ300の鉄板301の位置をガイドする第二ガイド部として、第一面2に対向し、鉄板301の被吸着面に接触可能な第二面3と、アクチュエータ300に調整ツール1を装着するための第二装着部5と、を備える。
【0060】
第一装着部4によって図8に示すようにスイッチ本体200に調整ツール1が装着されると、調整作業者は、スイッチ本体200とは別に調整ツール1を保持せずにすみ、作業性が向上する。
【0061】
また、第二装着部5によって図9に示すようにアクチュエータ300に調整ツール1が装着されると、調整作業者は、アクチュエータ300とは別に調整ツール1を保持せずにすみ、作業性が向上する。
【0062】
調整ツール1がスイッチ本体200及びアクチュエータ300の少なくとも一方に装着されると作業性が向上するため、調整ツール1は第一装着部4及び第二装着部5のいずれか一方を有さない構成であってもよい。
【0063】
図4図9に示す例の調整ツール1では、第一装着部4によって図8に示すようにスイッチ本体200に調整ツール1が装着されると、調整ツール1の第一面2が電磁石201の吸着面208A及び208Bに接触する。また、図4図9に示す例の調整ツール1では、第二装着部5によって図9に示すようにアクチュエータ300に調整ツール1が装着されると、調整ツール1の第二面3が鉄板301の被吸着面に接触する。
【0064】
なお、図4図9に示す例とは異なり、調整ツール1の第一面2は、電磁石201の吸着面208A及び208Bの代わりに、電磁石201の吸着面208A及び208Bと一定の位置関係にあるスイッチ本体200の部材に接触可能であってもよい。また、図4図9に示す例とは異なり、調整ツール1の第一面2は、電磁石201の吸着面208A及び208Bに加えて、電磁石201の吸着面208A及び208Bと一定の位置関係にあるスイッチ本体200の部材に接触可能であってもよい。
【0065】
また、図4図9に示す例とは異なり、調整ツール1の第二面3は、鉄板301の被吸着面の代わりに、鉄板301の被吸着面と一定の位置関係にあるアクチュエータ300の部材に接触可能であってもよい。また、図4図9に示す例とは異なり、調整ツール1の第二面3は、鉄板301の被吸着面に加えて、鉄板301の被吸着面と一定の位置関係にあるアクチュエータ300の部材に接触可能であってもよい。
【0066】
調整ツール1の第一面2が電磁石201の吸着面208A及び208Bに接触し、且つ、調整ツール1の第二面3が鉄板301の被吸着面に接触している状態において、調整ツール1の形状に基づく位置調整がなされることで、開閉部(例えば図1に示すドア401)が閉状態であるときに近似した状態(電磁石201と鉄板301との間に調整ツール1が挟まる状態)での電磁石201と鉄板301との適切な位置関係を導き出すことが容易になる。調整作業者は、開閉部(例えば図1に示すドア401)が閉状態であるときに近似した状態(電磁石201と鉄板301との間に調整ツール1が挟まる状態)での電磁石201と鉄板301との適切な位置関係が決定すれば、その位置関係を維持しながらスイッチ本体200及びアクチュエータ300をそれぞれの設置場所に固定する。
【0067】
図4図9に示す例の調整ツール1は、鉄板301の位置をガイドする第二ガイド部として、鉄板301の被吸着面を正面視したときのアクチュエータ300の外縁の少なくとも一部に対応する外縁面6を備える。したがって、調整作業者は、視覚又は触覚によって、調整ツール1の外縁面6がアクチュエータ300の外縁に沿うように調整ツール1とア
クチュエータ300との位置関係を決めることができる。したがって、調整ツール1が第二装着部5を有さない構成であっても、外縁面6によって調整ツール1とアクチュエータ300との位置決めが容易になる。一方、調整ツール1とスイッチ本体200との位置関係は第一装着部4によって決まる。したがって、鉄板301の被吸着面の外形が電磁石201の吸着面208A及び208Bの外形より大きい場合でも(図8及び図9参照)、開閉部(例えば図1に示すドア401)が閉状態であるときに近似した状態(電磁石201と鉄板301との間に調整ツール1が挟まる状態)での電磁石201と鉄板301との適切な位置関係を導き出すことが容易になる。
【0068】
なお、図4図9に示す例の調整ツール1では、第一装着部4は、電磁石201の吸着面208A及び208Bを正面視したときのスイッチ本体200の外縁の少なくとも一部と接触可能な第一外縁接触面4Aを備える。第一装着部4が第一外縁接触面4Aを備えることで、スイッチ本体200に調整ツール1を装着することが容易になる。
【0069】
また、図4図9に示す例の調整ツール1では、第二装着部5は、鉄板301の被吸着面を正面視したときのアクチュエータ300の外縁の少なくとも一部と接触可能な第二外縁接触面5Aを備える。第二装着部5が第二外縁接触面5Aを備えることで、アクチュエータ300に調整ツール1を装着することが容易になる。
【0070】
図4図9に示す例の調整ツール1は、電磁石201の位置をガイドする第一ガイド部として、スイッチ本体200に調整ツール1が第一装着部4によって装着されるときに、スイッチ本体200が調整ツール1に対して第一面2と交差する第一軸(前後方向に沿った軸)回りに回転することを抑止する第一回転抑止部7及び8をさらに備える。第一回転抑止部7は、スイッチ本体200が調整ツール1に対して第1回転方向に回転することを抑止する。一方、第一回転抑止部8は、スイッチ本体200が調整ツール1に対して第1回転方向とは逆回転の第2回転方向に回転することを抑止する。
【0071】
図4図9に示す例の調整ツール1は、第二ガイド部として、アクチュエータ300に調整ツール1が前記第二装着部5によって装着されるときに、アクチュエータ300が調整ツール1に対して第二面3と交差する第二軸(前後方向に沿った軸)回りに回転することを抑止する第二回転抑止部9及び10をさらに備える。第二回転抑止部9は、アクチュエータ300が調整ツール1に対して第1回転方向に回転することを抑止する。一方、第二回転抑止部10は、アクチュエータ300が調整ツール1に対して第1回転方向とは逆回転の第2回転方向に回転することを抑止する。
【0072】
第一回転抑止部7及び8と第二回転抑止部9及び10とによって、スイッチ本体200とアクチュエータ300との間における前後方向に沿った軸回りの回転ずれが抑制される。これにより、
スイッチ本体200のアンテナコイル263とアクチュエータ300のアンテナコイル311との位置ずれが抑制され、その結果、スイッチ本体200に対してアクチュエータ300が所定範囲内にあることを検出する検出部の検出精度が向上する。
【0073】
<安全スイッチの電気的構造>
図10は、安全スイッチ100の機能ブロックを示す図である。図10に示す構成例の安全スイッチ100において、スイッチ本体200は、制御回路210と、入出力回路220と、スイッチングデバイス230と、OSSD監視回路240と、電源部250と、通信部260と、表示部270と、電磁石201と、を備える。本図では、スイッチ本体200の構成要素のうちアクチュエータ300の近くに設けられる構成要素がブロックの左側に集約して描写されている。また、スイッチ本体200の構成要素のうちアクチュエータ300の遠くに設けられる構成要素がブロックの右側に集約して描写されている。
【0074】
制御回路210は、第一MCU(Micro Controller Unit)211と第二MCU212を含む。入出力回路220は、第一安全入力部221と、第二安全入力部222と、ロック入力部223と、AUX(auxiliary)出力部224を含む。スイッチングデバイス230は、第一安全出力部231と第二安全出力部232を含む。電源部250は、電源回路251と電源監視回路252を含む。通信部260は、アンテナコイル263を含む。表示部270は、表示灯制御部271と表示灯272を含む。
【0075】
また、図10に示す構成例の安全スイッチ100において、アクチュエータ300は、通信部310と、鉄板301と、を備える。なお、通信部310は、アンテナコイル311と応答回路312を含む。
【0076】
第一MCU211及び第二MCU212は、相互に通信することで相手方を監視する。第一MCU211及び第二MCU212は、アンテナコイル263に接続されている。
【0077】
第一MCU211は、アンテナコイル263を駆動し、アンテナコイル263から無線信号をアクチュエータ300の通信部310(特にアンテナコイル311)に送信する。通信部310は、無線タグ(RF-IDタグ)であってもよい。
【0078】
応答回路312は、アンテナコイル311に発生する誘導電流を電源として動作する。また、応答回路312は、アンテナコイル311により受信された無線信号を復調して情報を取得し、さらにアンテナコイル311を介して無線信号(応答信号)を送信する。
【0079】
第一MCU211及び第二MCU212は、それぞれ、アクチュエータ300のアンテナコイル311から送信された無線信号(応答信号)をアンテナコイル263を介して受信する。
【0080】
第一MCU211は、測定部211aと、復調部211bと、安全判定回路211cと、を含む。また、第二MCU212は、測定部212aと、復調部212bと、安全判定回路212cと、表示制御部212dと、を含む。
【0081】
測定部211a及び212aは、それぞれ、アンテナコイル263を介して受信された無線信号(応答信号)の強度を測定し、その測定結果に基づいてスイッチ本体200のアンテナコイル263とアクチュエータ300のアンテナコイル311とのコイル間距離d(延いては、スイッチ本体200からアクチュエータ300までの距離)を推定する。なお、アンテナコイル263は、スイッチ本体200に対してアクチュエータ300が所定範囲内にあることを検出する検出部として機能する。また、コイル間距離dの代わりに無線信号の強度がそのままアクチュエータ300の位置の検知に使用されてもよい。
【0082】
また、スイッチ本体200に対してアクチュエータ300が所定範囲内にあることを検出する手法は、アンテナコイル263を用いた上記の手法に限定されるものではない。例えば、スイッチ本体200に物理スイッチが設けられており、ドアが閉じられてアクチュエータ300がスイッチ本体200に近付いたときに、アクチュエータ300に設けられた突起部材等により上記の物理スイッチが押されるような検出原理が採用されても構わない。
【0083】
アンテナコイル263は、電磁石201のボビン206に巻き回されるコイルと巻き方向が異なることが望ましい。これにより、アンテナコイル263が電磁石201からの磁力線の影響を受け難くなるため、検出部の検出精度が向上する。
【0084】
復調部211b及び212bは、それぞれ、アンテナコイル263を介して受信された無線信号(応答信号)により搬送されてきた情報を復調し、この情報に基づいてアクチュエータ300を識別する。なお、この情報には、固有の識別情報(ID情報)が含まれていてもよい。
【0085】
第一MCU211の安全判定回路211cは、測定部211aで測定されたコイル間距離dが閾値dth以下であるかどうかを判定し、その判定結果を第二MCU212に送信する。同様に、第二MCU212の安全判定回路212cは、測定部212aで測定されたコイル間距離dが閾値dth以下であるかどうかを判定し、その判定結果を第一MCU211に送信する。そして、安全判定回路211c及び212cは、それぞれ、自己の判定結果と相手方の判定結果とが一致している場合(双方ともコイル間距離dが閾値dth以下であると判定している場合)には、アクチュエータ300がスイッチ本体200に対して所定の範囲内にある状態(ドア閉状態)と判定する。
【0086】
入出力回路220において、第一安全入力部221及び第二安全入力部222は、複数の安全スイッチ100をシリアルにカスケード接続するための入力回路である。例えば、第一安全入力部221及び第二安全入力部222は、それぞれ、上流側に設けられた別の安全スイッチ100の第一安全出力部231及び第二安全出力部232に接続される。
【0087】
第一MCU211は、第一安全入力部221に接続されている。第一MCU211は、第一安全入力部221を通じてON信号が入力されているときに、アクチュエータ300の近接状態(=ドアの開閉状態)と電磁石201のロック状態に基づいて、第一安全出力部231を制御する。一方、第一MCU211は、第一安全入力部221を通じてOFF信号が入力されているときに、アクチュエータ300の近接状態と電磁石201のロック状態に依拠することなく、第一安全出力部231にOFF信号を出力させる。
【0088】
同様に、第二MCU212は、第二安全入力部222に接続されている。第二MCU212は、第二安全入力部222を通じてON信号が入力されているときに、アクチュエータ300の近接状態と電磁石201のロック状態に基づいて、第二安全出力部232を制御する。一方、第二MCU212は、第二安全入力部222を通じてOFF信号が入力されているときに、アクチュエータ300の近接状態と電磁石201のロック状態に依拠することなく、第二安全出力部232にOFF信号を出力させる。
【0089】
これにより、複数の安全スイッチ100をカスケード接続することが可能となる。複数の安全スイッチ100のうちいずれか一つでも安全状態でない場合には、外部機器に対してOFF信号が出力される。従って、例えば、機械的危険源を包囲する鉄柵に対して複数のドアが設けられている場合、全てのドアが安全状態でなければ、機械的危険源は稼働できなくなる。一方、複数の安全スイッチ100の全てが安全状態である場合には、外部機器に対してON信号が出力される。
【0090】
ロック入力部423は、例えば上流側に設けられた別の安全スイッチ100に接続されており、上流向きの通信データ(ロック入力を含む)を送信するとともに、下流向きの通信データ(AUX出力の束データを含む)を受信する。
【0091】
AUX出力部424は、例えば下流側に設けられた別の安全スイッチ100に接続されており、下流向きの通信データ(AUX出力の束データを含む)を送信するとともに、上流向きの通信データ(ロック入力を含む)を受信する。
【0092】
例えば、制御回路210は、ロック入力部223を介して受ける通信データ(=上流側のAUX出力を束ねた通信データ)と安全スイッチ100自身の状態とに基づいて、下流
向きの通信データを生成し、これをAUX出力部224から出力する。
【0093】
第一安全出力部231及び第二安全出力部232は、それぞれ、例えば下流側に設けられた別の安全スイッチ100にOSSD出力(OSSD1_O及びOSSD2_O)を出力する。
【0094】
例えば、制御回路210は、第一安全入力部221及び第二安全入力部222それぞれを介して受けるOSSD入力(OSSD1_I及びOSSD2_I)と、アクチュエータ300の近接状態(=検出部による検出結果)とに基づいて、第一安全出力部231及び第二安全出力部232からそれぞれOSSD出力(OSSD1_O及びOSSD2_O)を出力する。
【0095】
スイッチングデバイス230において、第一安全出力部231及び第二安全出力部232は、例えば、PNP型のトランジスタを用いたオープンコレクタ出力回路として構成され得る。この場合、PNP型のトランジスタがONすると、出力端子には+側電源が接続されるため、ON信号(=ハイレベル)が出力される。一方、PNP型のトランジスタがOFFすると、出力端子はプルダウン抵抗を介して接地されるため、OFF信号(=ローレベル)が出力される。
【0096】
なお、第一安全出力部231及び第二安全出力部232は、それぞれ、NPN型のトランジスタを用いたオープンコレクタ出力回路として構成することもできる。この場合、出力論理レベルが上記とは逆になる。具体的に述べると、ON信号がローレベルとなり、OFF信号がハイレベルとなる。
【0097】
第一安全出力部231及び第二安全出力部232には、それぞれOSSD監視回路240が接続されてもよい。OSSD監視回路240は、第一MCU211及び第二MCU212に接続されている。第一MCU211は、OSSD監視回路240を通じて、第二安全出力部232の動作が正常かどうかを監視する。第二MCU212は、OSSD監視回路240を通じて、第一安全出力部231の動作が正常かどうかを監視する。
【0098】
例えば、第一安全出力部231及び第二安全出力部232は、それぞれ、ON信号を出力するときに定期的に微小時間にわたり出力信号をOFFに遷移させる。OSSD監視回路240は、ON信号の出力期間中に微小時間のOFFを検出できればOSSDを正常と判定し、微小時間のOFFを検出できなければOSSDを正常ではないと判定する。
【0099】
なお、ON信号が継続するケースは、出力端子と+側電源との短絡が原因である。この場合、安全判定回路211c及び212cは、それぞれ、OFF信号を出力させるための制御信号を第一安全出力部231及び第二安全出力部232に出力する。これにより、第一安全出力部231及び第二安全出力部232のうち正常な方がOFF信号を出力する。
【0100】
外部機器は、第一安全出力部231及び第二安全出力部232がともにON信号を出力している期間にだけ、機械的危険源の稼働を許可し得る状態となる。言い換えると、外部機器は、第一安全出力部231及び第二安全出力部232のうち少なくとも一方がOFF信号を出力している期間には、機械的危険源の稼働を許可しない。なお、外部機器は、先述したON信号における微小時間のOFFには反応しないように構成されている。
【0101】
電源部250において、電源回路251は、外部から入力電圧VCC(例えばDC+24V)と接地電圧GND(例えば0V)の供給を受け、所望の出力電圧VREG(例えばDC+10V、+5V又は+3.3V)を生成するDC-DCコンバータである。なお、電源回路251は、スイッチ本体200の各部(=電力を必要とする全ての回路)に電力
を供給する。
【0102】
ところで、入力電圧VCC又は出力電圧VREGが所定の範囲内でない場合、第一MCU211及び第二MCU212などが正常に動作しない可能性がある。そこで、電源監視回路252は、入力電圧VCC及び出力電圧VREGが所定の範囲内かどうかを判定し、判定結果を第一安全出力部231と第二安全出力部232へ出力する。
【0103】
第一安全出力部231及び第二安全出力部232は、それぞれ、電源回路251が正常に動作していないことを示す判定結果を受けると、第一MCU211及び第二MCU212からそれぞれ出力される制御信号に依存することなくOFF信号を出力する。
【0104】
一方、第一安全出力部231及び第二安全出力部232は、それぞれ、電源回路251が正常に動作していることを示す判定結果を受けると、第一MCU211及び第二MCU212からそれぞれ出力される制御信号に依存してON信号又はOFF信号を出力する。
【0105】
表示灯制御部271は、制御回路210(例えば、第二MCU212の表示制御部212d)からの指示に基づき、アクチュエータ300の近接状態(=ドアの開閉状態)と電磁石201のロック/アンロック状態などに応じて、表示灯272を点灯/消灯又は緑色点灯/赤色点灯する。
【0106】
また、表示灯制御部271は、OSSD出力、INPUT信号及びロック状態/アンロック状態などに応じて表示灯272を点灯/消灯又は緑色点灯/赤色点灯する。なお、上記のOSSD出力とは、第一安全出力部231及び第二安全出力部232それぞれの出力信号である。
【0107】
電磁石201は、制御回路210(例えば第二MCU212)から供給される駆動信号(駆動電流)により磁力を発生させる。このとき、スイッチ本体200に近接しているアクチュエータ300の鉄板301(図3参照)が磁化される。その結果、電磁石201と鉄板301との吸着力によりドアロックが実現される。
【0108】
<総括>
以下では、上記で説明した種々の実施形態について総括的に述べる。
【0109】
例えば、本明細書中に開示される調整ツールは、スイッチ本体及びアクチュエータを備え、前記スイッチ本体に対して前記アクチュエータが所定範囲内にあることを検出し、検出結果に基づいて安全信号を出力する安全スイッチを設置する際に、前記スイッチ本体が有する電磁石に形成される吸着面と前記アクチュエータが有する磁化部材に形成された被吸着面との位置調整を行うときに用いられる調整ツールであって、前記スイッチ本体に対して前記アクチュエータが所定範囲内にあるときの前記吸着面と前記被吸着面との相対位置関係をガイドするために、前記電磁石の位置をガイドするための第一ガイド部と、前記スイッチ本体に対して前記アクチュエータが所定範囲内にあるときの前記吸着面と前記被吸着面との相対位置関係をガイドするために、前記磁化部材の位置をガイドするための第二ガイド部と、前記電磁石の位置をガイドした状態で前記スイッチ本体に装着する第一装着部及び前記磁化部材の位置をガイドした状態で前記アクチュエータに装着する第二装着部の少なくとも一方と、を備える構成(第1の構成)である。
【0110】
上記第1の構成である調整ツールにおいて、前記第一ガイド部は、前記吸着面、及び前記吸着面と一定の位置関係にある前記スイッチ本体の部材と、の少なくとも一方に接触可能な第一面を有する構成(第2の構成)であってもよい。
【0111】
上記第1又は第2の構成である調整ツールにおいて、前記第二ガイド部は、前記被吸着面、及び前記被吸着面と一定の位置関係にある前記アクチュエータの部材と、の少なくとも一方に接触可能な第二面を有する構成(第3の構成)であってもよい。
【0112】
上記第1~第3いずれかの構成である調整ツールにおいて、前記第一装着部を備え、前記第二ガイド部は、前記被吸着面を正面視したときの前記アクチュエータの外縁の少なくとも一部に対応する外縁面を含み、前記被吸着面の外形は前記吸着面の外形より大きく、前記スイッチ本体に前記調整ツールが前記第一装着部によって装着されることにより、前記電磁石の位置が前記第一ガイド部にガイドされる構成(第4の構成)であってもよい。
【0113】
上記第4の構成である調整ツールにおいて、前記第一装着部は、前記吸着面を正面視したときの前記スイッチ本体の外縁の少なくとも一部と接触可能な第一外縁接触面を含む構成(第5の構成)であってもよい。
【0114】
上記第1~第5いずれかの構成である調整ツールにおいて、前記第一装着部と前記第二装着部とを備え、前記被吸着面の外形は前記吸着面の外形より大きく、前記スイッチ本体に前記調整ツールが前記第一装着部によって装着されることにより、前記電磁石の位置が前記第一ガイド部にガイドされ、前記アクチュエータに前記調整ツールが前記第二装着部によって装着されることにより、前記磁化部材の位置が前記第二ガイド部にガイドされる構成(第6の構成)であってもよい。
【0115】
上記第6の構成である調整ツールにおいて、前記第二装着部は、前記被吸着面を正面視したときの前記アクチュエータの外縁の少なくとも一部と接触可能な第二外縁接触面を備える構成(第7の構成)であってもよい。
【0116】
上記第1~第7いずれかの構成である調整ツールにおいて、前記第一装着部と、前記スイッチ本体に前記調整ツールが前記第一装着部によって装着されるときに、前記スイッチ本体が前記調整ツールに対して前記第一面と交差する第一軸回りに回転することを抑止する第一回転抑止部と、を備える構成(第8の構成)であってもよい。
【0117】
上記第1~第8いずれかの構成である調整ツールにおいて、前記第二装着部と、前記アクチュエータに前記調整ツールが前記第二装着部によって装着されるときに、前記アクチュエータが前記調整ツールに対して前記第二面と交差する第二軸回りに回転することを抑止する第二回転抑止部と、を備える構成(第9の構成)であってもよい。
【0118】
例えば、本明細書中に開示される安全スイッチは、前記スイッチ本体と、前記アクチュエータと、を備え、前記スイッチ本体と前記アクチュエータとの位置関係が上記第1~第9いずれかの構成である調整ツールを用いて調整された構成(第10の構成)である。
【0119】
上記第10の構成である安全スイッチは、前記アクチュエータは、前記アクチュエータを、前記アクチュエータの設置場所に対して固定される固定部と、前記磁化部材を含み、前記固定部に対して移動可能な可動部と、を有する構成(第11の構成)であってもよい。
【0120】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲により規定されるものであって、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0121】
1 調整ツール
2 第一面
3 第二面
4 第一装着部
4A 第一外縁接触面
5 第二装着部
5A 第二外縁接触面
6 外縁面
7、8 第一回転抑止部
9、10 第二回転抑止部
100、100L、100R 安全スイッチ
200、200L、200R スイッチ本体
201 電磁石
202 筐体
203 端子
204 取付部
205 コア部
206 ボビン
207 ヨーク部
208A、208B 吸着面
210 制御回路
211 第一MCU
211a 測定部
211b 復調部
211c 安全判定回路
212 第二MCU
212a 測定部
212b 復調部
212c 安全判定回路
212d 表示制御部
220 入出力回路
221 第一安全入力部
222 第二安全入力部
223 ロック入力部
224 AUX出力部
230 スイッチングデバイス
231 第一安全出力部
232 第二安全出力部
240 OSSD監視回路
250 電源部
251 電源回路
252 電源監視回路
260 通信部
263 アンテナコイル
270 表示部
271 表示灯制御部
272 表示灯
300、300L、300R アクチュエータ
301 鉄板
302 筐体
303、304 取付部
310 通信部
311 アンテナコイル
312 応答回路
400 ガード
401L、401R ドア
402 ドア枠
403L、403R 支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10