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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024845
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】箔押しラベルを備える物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/02 20060101AFI20240216BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240216BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240216BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B32B37/02
B32B3/30
B32B15/08 E
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127773
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】391046562
【氏名又は名称】株式会社倉本産業
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】大西 裕司
(72)【発明者】
【氏名】都築 紅音
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01
4F100AB01E
4F100AB33
4F100AB33E
4F100AK15C
4F100AK25
4F100AK51
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00D
4F100AS00A
4F100AT00C
4F100BA05
4F100BA07
4F100DD01
4F100DD01E
4F100DG10
4F100EJ39
4F100EJ39E
4F100GB32
4F100GB48
4F100GB87
4F100GB87A
4F100JL11
4F100JL11B
4F100JL14
4F100JL14A
4F100JN01
4F100JN01D
4F100JN21
4F100JN21E
4F100YY00A
4F100YY00E
(57)【要約】      (修正有)
【課題】同一面上に光沢面とエンボス面の両方を備える金属箔を含む箔押しラベルを備える物品を製造する方法を提供する。
【解決手段】剥離ライナー、粘着剤11、薄膜フィルム13がこの順で積層されている積層体を形成する工程と、前記薄膜フィルムの上に、第一クリヤ層14を配置する工程と、前記第一クリヤ層の上に金属箔15を配置する工程と、平滑部と凹凸部を有する箔押し版を、前記金属箔に押し付けることにより、金属箔に光沢面31とエンボス面32とを形成する工程と、前記金属箔の上に第二クリヤ層16を配置し、剥離ライナー付箔押しラベルを得る工程と、前記剥離ライナーを前記剥離ライナー付箔押しラベルから剥がし、前記粘着剤が物品5に接触するように、箔押しラベル1を前記物品に貼着する工程とを含む、方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一面上に光沢面とエンボス面の両方を備える金属箔を含む箔押しラベルを備える物品を製造する方法であって、
剥離ライナー、粘着剤、薄膜フィルムがこの順で積層されている積層体を形成する工程と、
前記薄膜フィルムの上に、第一クリヤ層を配置する工程と、
前記第一クリヤ層の上に金属箔を配置する工程と、
平滑部と凹凸部を有する箔押し版を、前記金属箔に押し付けることにより、金属箔に光沢面とエンボス面とを形成する工程と、
前記金属箔の上に第二クリヤ層を配置し、剥離ライナー付箔押しラベルを得る工程と、
前記剥離ライナーを前記剥離ライナー付箔押しラベルから剥がし、前記粘着剤が前記物品に接触するように、箔押しラベルを前記物品に貼着する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記箔押し版を前記金属箔に押し付ける前に、前記剥離ライナーの下に少なくとも1枚のフィルムマットを配置する工程をさらに含み、前記フィルムマットの配置する場所は、少なくとも前記エンボス面に対応する領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エンボス面を縁取るように前記光沢面が配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光沢面の縁取りの幅は、0.05mm以上、0.3mm未満である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記物品は、直径10cm以下の円柱形状を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
薄膜フィルムが、塩化ビニル類の薄膜フィルムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記物品が釣り竿である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
剥離ライナーと、
前記剥離ライナー上に配置される粘着剤と、
前記粘着剤の上に配置される薄膜フィルムと、
前記粘着剤の反対側に前記薄膜フィルムに配置された第一クリヤ層と、
前記第一クリヤ層の上に配置された金属箔であって、光沢面とエンボス面の両方を備える金属箔と、
前記金属箔の上に配置された第二クリヤ層とを含む、剥離ライナー付箔押しラベル。
【請求項9】
前記金属箔の前記エンボス面を縁取るように前記光沢面が配置されている、請求項8に記載の剥離ライナー付箔押しラベル。
【請求項10】
前記光沢面の縁取りの幅は、0.05mm以上、0.3mm未満である、請求項9に記載の剥離ライナー付箔押しラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢面とエンボス面の両方を備える金属箔を含む箔押しラベル、当該箔押しラベルを備える物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外観の優れた物品を得るために、光沢を施した文字、その他の模様などの形状の箔を物品の外面に固着することが行われている。
【0003】
特許文献1には、「10ミクロン程度か、更に薄いPVC樹脂製フィルムに第1模様を印刷によって形成し、該第1模様の上に樹脂クリヤー層を形成し、該クリヤー層の上に金箔等の箔を設けた第2模様を形成したシールを釣竿の外表面に貼着すると共に、該シールの表面から釣竿の表面に透明又は半透明の保護層を形成していることを特徴とする箔模様の形成された釣竿。」が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の釣竿に箔模様を形成するシールは、PVC樹脂フィルム、また、該シールの表面から釣竿の表面に亘って保護層を使用することによって変色や剥離が防止されているため、長期間の保存や使用によっても色や光沢が劣化し難いという特徴を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3248594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、文字、記号、模様など(以下、総称して「文字等」と称する)を金属調の装飾を用いて表現する際に、文字等の中心部分にエンボス加工した金属調の装飾を行い、その中心部分を縁取る縁取り部分は光沢のある金属調の装飾にして、光沢感をかえてコントラストを出すことにより極めてシャープで独特な印象の文字等を表現することができる(以後、本明細書では、このような縁取りをした文字等を「くくり文字」と称する。)。このようなくくり文字を、特許文献1の技術を用いて製作すると、印刷によって形成された第一模様(例えばエンボス加工のような光沢を出すために金属フレークを配合したメタリックインクを印刷して設けた層)と、金箔等の箔を設けた第二模様(例えば、光沢のある金属箔を設けた層)の間にクリヤ層が配置されるため、メタリック印刷層の光沢感(キラキラ感)が弱くなってしまう問題があった。またメタリック印刷層とその上に配置される金属箔の層とでは、積層する際に位置ズレが出てしまう問題があり、これを防ぐために、縁取りの幅を細くすることはできなかった。
【0007】
本発明者は、鋭意研究の結果、模様とそれを縁取る箔部分をクリヤ層を介して積層するのではなく、配置された箔の表面に、平滑部と凹凸部の両方を備えた箔押し版を押し付けることにより、同一の金属箔上に光沢面とエンボス面を形成することができ、くくり文字等を表現する場合にも、文字とその周囲を縁取るアウトライン部分の位置ズレを生じず、縁取りの幅を細くすることができ、シャープなアウトラインを再現し綺麗な模様を形成することができることを見出し、下記の本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は下記の態様を包含する。
[1] 同一面上に光沢面とエンボス面の両方を備える金属箔を含む箔押しラベルを備える物品を製造する方法であって、
剥離ライナー、粘着剤、薄膜フィルムがこの順で積層されている積層体を形成する工程と、
前記薄膜フィルムの上に、第一クリヤ層を配置する工程と、
前記第一クリヤ層の上に金属箔を配置する工程と、
平滑部と凹凸部を有する箔押し版を、前記金属箔に押し付けることにより、金属箔に光沢面とエンボス面とを形成する工程と、
前記金属箔の上に第二クリヤ層を配置し、剥離ライナー付箔押しラベルを得る工程と、
前記剥離ライナーを前記剥離ライナー付箔押しラベルから剥がし、前記粘着剤が前記物品に接触するように、箔押しラベルを前記物品に貼着する工程とを含む、方法。
[2] 前記箔押し版を前記金属箔に押し付ける前に、前記剥離ライナーの下に少なくとも1枚のフィルムマットを配置する工程をさらに含み、前記フィルムマットの配置する場所は、少なくとも前記エンボス面に対応する領域を含む、[1]に記載の方法。
[3] 前記エンボス面を縁取るように前記光沢面が配置されている、[1]に記載の方法。
[4] 前記光沢面の縁取りの幅は、0.05mm以上、0.3mm未満である、[3]に記載の方法。
[5] 前記物品は、直径10cm以下の円柱形状を有する、[1]に記載の方法。
[6] 薄膜フィルムが、塩化ビニル類の薄膜フィルムである、[5]に記載の方法。
[7] 前記物品が釣り竿である、[1]に記載の方法。
[8] 剥離ライナーと、
前記剥離ライナー上に配置される粘着剤と、
前記粘着剤の上に配置される薄膜フィルムと、
前記粘着剤の反対側に前記薄膜フィルムに配置された第一クリヤ層と、
前記第一クリヤ層の上に配置された金属箔であって、光沢面とエンボス面の両方を備える金属箔と、
前記金属箔の上に配置された第二クリヤ層とを含む、剥離ライナー付箔押しラベル。
[9] 前記金属箔の前記エンボス面を縁取るように前記光沢面が配置されている、[8]に記載の剥離ライナー付箔押しラベル。
[10] 前記光沢面の縁取りの幅は、0.05mm以上、0.3mm未満である、[9]に記載の剥離ライナー付箔押しラベル。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下記の効果が発揮される。
すなわち、本発明の箔押しラベルを備えた物品の製造方法では、凹凸部と平滑部の両方を備える箔押し版を用いて金属箔に箔押しをするため、エンボス面と光沢面の両方を有する金属箔を形成することができる。特許文献1のような従来技術では、エンボス加工のような光沢の層(メタリックインク印刷層)と光沢層(金属箔の層)とは、層が異なるため、位置合わせが難しかったが、本発明では、同一金属箔上にエンボス加工した金属調の装飾と、光沢のある金属調の装飾を表現することができ、位置合わせが難しいという問題を解決することができる。
この方法を用いることで、くくり文字等を表現する場合に文字とその周囲を縁取るアウトライン部分に位置ズレは生じず、見当合わせのズレを気にする必要がなくなるため、縁取りの線の太さを0.3mm未満(例えば、0.05mm以上0.3mm未満)にすることができる。さらに文字の角部において、金属箔のひげや潰れによりアウトライン部分が鋭角に出せない現象を起こすことなく鋭角が正確に表現できるため、極めて細くシャープなアウトラインを再現することができる。このような金属光沢のくくり文字で表現された箔押しラベルを備えた物品は、需要者に好印象を与える美麗な模様を備えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、箔押しラベルを備える物品の断面図である。
図2図2は、箔押しラベルを備える物品の製造工程である。
図3図3は、図2に続く箔押しラベルを備える物品の製造工程である。
図4図4は、図3に続く箔押しラベルを備える物品の製造工程である。
図5図5は、図4に続く箔押しラベルを備える物品の製造工程である。
図6図6は、本発明で用いる箔押し版の一例である。
図7図7は、箔押しラベルの一態様である。
図8図8は、箔押しラベルの別の態様である。
図9図9は、箔押しラベルのさらに別の態様である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施する形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
本発明にかかる光沢面とエンボス面の両方を備える金属箔を含む箔押しラベルを備える物品の製造方法を実施するための形態を、図に基づいて説明する。
【0013】
[箔押しラベル]
図1について説明する。箔押しラベル1は、下から、粘着剤11と、塩化ビニル類の薄膜フィルム13と、第一クリヤ層14と、光沢面31とエンボス面32とが形成された金属箔15と、第二クリヤ層16を備えている。図1では、箔押しラベル1を物品5に貼付し、箔押しラベル1の上から表面保護クリヤ層4を積層させている。
【0014】
箔押しラベル1を形成し、その後、物品5に貼付するためには、箔押しラベル1を剥離ライナー12上に形成する(図2参照)。剥離ライナー12は、得られる箔押しラベル1の利用しやすさを高め、粘着剤11を保護するためのものであり、粘着剤11により貼り付けられるものであれば特に限定されるものではない。剥離ライナー12の材料の具体例としては、例えば、クラフト紙、上質紙、グラシン紙や、コート紙、ラミネート紙などの紙類、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステルフィルムや、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムなどの樹脂フィルム類、またはその他材料などにより形成された剥離ライナーを用いることができる。厚さは限定されないが、100μmから250μm程度のものを用いることができ、箔押し工程の際に、光沢面をしっかり形成させながら、光沢面の縁にヒゲ、エンボス面にムラなどの不良を発生させないという観点から、好ましい厚さは120μm以上であり、より好ましくは140μm以上である。上限は、特に限定されないが、取り扱いやすさの観点から220μm以下が好ましい。
【0015】
薄膜フィルム13は、金属箔15を支持する基材であり、箔押しラベル1の構成材料の一つである。材料は特に限定されるものではないが、屋外での使用にも耐えうるように、耐久性、耐候性に優れていることが好ましい。材料の具体例としては、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラートなどの樹脂フィルムまたはその他材料などが挙げられる。箔押しラベル1を、釣り竿などの長さ方向に垂直な断面の半径(曲率半径)が小さい物品に使用する場合は、物品への追従性があり、加工性もある塩化ビニルフィルムを用いることが好ましい。またウレタンフィルムを使用してもよい。
薄膜フィルム13の厚さは特に限定されないが、50μm以下の薄膜が好適に用いられ、例えば、5μm~35μm程度のものが好適に用いられる。図示しないが、この時の薄膜フィルム13の裏に塗布されている粘着剤層は、5~25μm程度であり、粘着剤層の成分は、薄膜フィルム13を物品5に貼着できる材料であれば特に限定されるものではない。
【0016】
第一クリヤ層14とは、薄膜フィルム13と金属箔15との密着性(接着強度)を高める機能を有する。
製造しやすさの観点から原料は液状が好ましく、その場合、シルクスクリーン印刷等の印刷により、薄膜フィルム13上に第一クリヤ層14を形成することができる。
材料はウレタン系樹脂が、汎用性があり好ましく、また、アクリル系樹脂等も使用できる。厚さは特に限定されないが、上記目的が達成できる厚さがあればよく、一般的に3~10μmであり、例えば、5μm程度である。
なお、薄膜フィルム上に色層を設けその上に金属箔15を箔押しする場合には、色層に含まれる顔料等の着色剤や添加物と箔との間で化学変化が生じる場合があり、箔の変色や剥離が生じる場合がある。第一クリヤ層14を設けることで、化学変化の発生を抑え、箔の変色や剥離を防止することができる。
【0017】
金属箔15は、箔押し版を押し付けることで、光沢面とエンボス面を形成することができれば特に限定されるものではないが、蒸着により形成された金属箔を用いるのが好ましく、蒸着する金属としては、例えば、アルミニウム、クロム、錫、インジウム等を用いることができる。金属箔の厚みは特に限定されるものではないが、例えば1~10μm程度のもの、好ましくは4~6μmのものを用いるのが好ましい。また金属箔は色付きのものを用いてもよい。
【0018】
第二クリヤ層16とは、箔押しした金属箔を保護するとともに、箔押しラベル1を物品5に貼り付けたあと、その上に積層する表面保護クリヤ層4と金属箔15との密着性(接着強度)を高めるために用いることができる。また表面保護クリヤ層4をコーティングする際の濡れ性を良くしハジキ等が生じるのを防ぐ機能を有する。第二クリヤ層16の形成方法は、第一クリヤ層14と同じであってよく、例えば、シルクスクリーン印刷などを用いることができる。また、材料についてもウレタン系樹脂、またはアクリル系樹脂等が使用でき、第二クリヤ層16は、第一クリヤ層14と同じ材料でも、異なった材料でも使用することができる。第二クリヤ層16の厚さは特に限定されないが、上記目的が達成できる厚さがあればよく、一般的に3~10μmであり、例えば、5μm程度である。
なお、金属箔15に色付きの金属箔を使用した場合や、金属箔15を箔押しした上から印刷で色層を設ける場合には、顔料等の着色剤や添加物と表面保護クリヤ層4との間に生じる場合がある化学変化を、第二クリヤ層16を設けることで防止し、表面保護クリヤ層の変色や密着不良を防ぐことができる。
また、金属箔15を箔押しした上から印刷で色層を設けずに、薄く着色させた第二クリヤ層16を用いることで、着色された金属箔のように表現することもできる。
【0019】
図1に示すように、必要により表面保護クリヤ層4を備えてもよい。表面保護クリヤ層4を備えることにより、箔押しラベル表面に傷が付くのを防ぐことができ、ラベル表面の耐久性を増すことができる。また箔押しラベルを貼り付けた物品とラベルとの境の段差を目立たなくすることができ、ラベルを貼り付けた物品とラベルが一体化した外観を得ることができるとともに、段差の引っ掛かりがなくなるため、ラベルが端部から剥がれるのを防ぐこともできる。
【0020】
[箔押しラベルを備えた物品の製造方法]
本明細書において、箔押しラベル箔を備えた物品の製造方法とは、同一面上に光沢面31とエンボス面32の両方を備える金属箔15を含む箔押しラベルを備える物品を製造する方法であって、 剥離ライナー12、粘着剤11、薄膜フィルム13がこの順で積層されている積層体を形成する工程と、前記薄膜フィルム13の上に、第一クリヤ層14を配置する工程と、前記第一クリヤ層14の上に金属箔15を配置する工程と、平滑部22と凹凸部23を有する箔押し版を、前記金属箔15に押し付けることにより、金属箔15に光沢面31とエンボス面32とを形成する工程と、前記金属箔15の上に第二クリヤ層16を配置し、剥離ライナー付箔押しラベル1Aを得る工程と、前記剥離ライナー12を前記剥離ライナー付箔押しラベル1Aから剥がし、前記粘着剤11が前記物品に接触するように、箔押しラベル1を前記物品に貼着する工程とを含む、方法、である。
上記製造方法について、図2を用いて説明する。
【0021】
まず、剥離ライナー12を用意し、剥離ライナー12と粘着剤11付き薄膜フィルム13とを貼付し、剥離ライナー12、粘着剤11及び薄膜フィルム13からなる積層体を得る。このとき、剥離ライナー12に粘着剤11をコーティングした上で、薄膜フィルム13を貼り合わせることにより、当該積層体を得てもよい。なお、剥離ライナー12は物品5に貼り付けるときにはがすものである。
次に、薄膜フィルム13の上に、第一クリヤ層14を配置する。当該工程は、図2(a)に示すように、薄膜フィルム13の上に、第一クリヤ層14を印刷によって、剥離ライナー12と粘着剤11と塩化ビニル類の薄膜フィルム13で形成された層全体を被覆するようにのせる。印刷方法は特に限定されるものではなく、液状のクリヤ層の材料をシルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、その他の印刷方法などで印刷する。例えば、シルクスクリーン印刷を用いる場合は、250~300メッシュの印刷版を使用することができる。
【0022】
次に光沢面31とエンボス面32を金属箔15に形成するため、平滑部22と凹凸部23を備える箔押し版21を、金属箔15に押し付ける。当該工程は、図2(b)に示すように第一クリヤ層14の上に金属箔15をのせたあと、金属箔付き積層体を台座6にのせ、箔押し版21の平滑部22と凹凸部23を加熱し、金属箔15に押し付ける。なお、図6に図示するように、箔押し版21において、装飾形成部分全体はそれ以外の部分より凸に出ている。金属箔15の裏にはホットメルト接着剤(図示しない)が塗布されており、金属箔15に加熱された箔押し版21を押し付けることで、第一クリヤ層14に接着することができる。箔押し版21を押し付けたあと残った金属箔15は取り除く。熱と圧力がかからなかった部分は第一クリヤ層14上には転写されず、熱と圧力がかかった部分のみ金属箔15が第一クリヤ層14上に転写される。箔押し版の加熱温度は、80℃~180℃が好ましい。
【0023】
光沢面31とエンボス面32の形成は、箔押し版21を押し付けることにより行うが、一般的に光沢面31の方が転写しやすく、エンボス面32は模様(凹み部分)が転写しにくい傾向がある。これを解消するため、箔押し版21をより強く押し付けてしまうと、今度は光沢面31に不必要な伸びが発生し、シワが生じてきれいな光沢面ができない上、ひげ(転写した部分以外で金属箔が一部残ってしまうもの)の発生や、文字等の角部に潰れが生じ鋭角でなくなるという問題がある。また、箔押し版21は繰り返し使うため平らではなく、また、箔押しをする際の台座6についても、箔押し版を上下に作動させて何度も同じ個所に圧力をかけるために同様に平らではなく、剥離ライナーやその他の材料も平滑性にばらつきがあるため、均一に圧力をかけることが難しい場合が多い。
上記課題を解消するために、箔押し版21を押し当てる前に、剥離ライナー12と台座6との間に少なくとも1枚のフィルムマット24を配置する。これにより、圧力がかかりにくい凹凸部の凹部にも圧力がかかるように調整することができ、光沢面ではきれいな鏡面を形成しつつ、エンボス面では、しっかりとエンボス模様を形成することができる。
フィルムマット24の材料は特に限定されないが、紙、ポリ塩化ビニル、ポリプロプレン、ポリエチレンテレフタラート、合成ゴム、天然ゴム、その他の材料を用いることができる。厚さについては特に限定されないが、10~50μm程度のもの、例えば、25μmのものを1枚以上、好ましくは1枚以上、4枚以下配置することができる。
フィルムマット24を配置することで公差調整が可能となり、箔押し版の平滑部22と凹凸部23に均一に圧力をかけることができようになり、平滑部22では必要以上に圧力がかかることを防ぐことができるため、圧力のかけ過ぎによる金属箔の伸びとそれに伴う金属箔の沈みにより光の反射が不均一になることを防ぐことができる。また光沢面31に生じるシワや、ひげ(転写した部分以外で金属箔が一部残ってしまうもの)、文字等の角部の潰れを出にくくすることができる。圧力がかかりにくい凹凸部23の凹み部分では、金属箔の転写ムラによる光の反射がある場合に相対的にムラの部分が黒く見える現象が起こるがこれを防ぐことができる。
【0024】
箔押し版21は金属箔15と接触する面に平滑部22と凹凸部23を備え、平滑な部分を押し付けた金属箔15の表面は光沢面31を形成し、凹凸部23を押し付けた金属箔15の表面はエンボス面32を形成する。なお、フィルムマット24は、箔押し版21の凹凸部分23を押し付けてエンボスを形成する箇所の直下の対応する場所に配置する。
光沢面31とエンボス面32は同一面上にあり、隙間なく密接に隣り合っていて、図7のような、アウトライン部分を光沢面31、中心部分をエンボス面32としたくくり文字、または図7とは逆に、図8ようにエンボス面32をアウトライン部分にし、光沢面31を中心部分に用いることもできる。また、エンボス面32と光沢面31を配置して、図9のような模様や、その他の模様を表現してもよい。
アウトライン部分の幅(図7のαに相当)は特に限定されず、様々なサイズのアウトライン部分を形成することができるが、本発明では、従来では製造することができない、0.05mm以上、0.3mm未満の幅のアウトライン部分を形成することができる。一般に、くくり文字のような模様のアウトライン部分は、細くできたとしても0.3mm以上と太くなることが多く、太さゆえに文字と文字の間や文字内でアウトライン部分同士がくっつき、需要者に重たい印象を与える。また、太いがゆえに光の加減によりアウトライン部分が黒く見えることがある。アウトライン部分の幅の上限は、より好ましくは0.29mm以下である。
本発明の場合、図7のようにアウトライン部分を0.3mm未満と細く形成することで、アウトライン部分同士が密接せず、またアウトライン部分が細く明るく光って見えることで立体的に見え、需要者にシャープな印象を与えることができる。また文字の先端の角部のアウトライン部分が丸くならず、文字先端の角の鋭角さを表現できる。
エンボス面32に対応する部分は強い圧力をかける必要があるため、フィルムマット24の配置する場所は、少なくともエンボス部の少なくとも一部に対応する場所である。さらに、剥離ライナー12に厚手のものを用いることで、フィルムマット24を挿入する効果、すなわち、きれいに箔押しをする効果を高めることもできる。
また、金属箔15を接着した上から印刷によって色層を設けることもできる。印刷方法は特に限定されるものではないが、インクジェット印刷、シルクスクリーン印刷等、その他の印刷方法が用いられる。
なお、図面では光沢面31とエンボス面32を形成した後の状態をわかりやすく記載したが、光沢面31とエンボス面32は、金属箔15の一部である。
【0025】
金属箔15の上に第二クリヤ16を配置する工程を、図3(b)に図示する。金属箔15の上から、第一クリヤ層14と同様、第二クリヤ層16としての樹脂を、ラベル全体を被覆するように印刷することで、第二クリヤ層16を形成し、剥離ライナー付箔押しラベル1Aを得る(図4(a)参照)。印刷方法は特に限定されるものではなく、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、その他の印刷方法などが用いられる。
【0026】
その次に、剥離ライナー12付箔押しラベル1A(図4(a))から剥離ライナー12を剥がし、粘着剤11が物品5に接触するように、箔押しラベル1を物品5に貼着する。(図4(b))。貼着する物品5は特に限定されず、容器(食品、飲料、化粧品、パーソナルケア組成物、医薬等用)、玩具、家具部品、装飾家庭用品、プラスチックギア、ケーブルタイ、医療用品、学習補助具、ロボット、家電、自動車及び航空機/航空宇宙部品、電子機器、その他のものに用いられるが、直径10cm以下の円柱形状の物品5に貼り付けるためには特に好適であり、特に、薄膜フィルム13として塩化ビニル系の薄膜フィルムを使うと、柔軟性に優れ、はがれにくい。例えば釣り竿、自転車、ラケット、ゴルフクラブなどのスポーツ用品等に貼り付けるのに特に適している。物品に貼り付けた後は、図5のように、表面保護のための表面保護クリヤ層4を塗装し熱硬化により配置し、物品5全体をコーティングするなどしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 箔押しラベル
1A 剥離ライナー付箔押しラベル
11 粘着剤
12 剥離ライナー
13 塩化ビニル類の薄膜フィルム
14 第一クリヤ層
15 金属箔
16 第二クリヤ層
21 箔押し版
22 平滑部
23 凹凸部
24 フィルムマット
31 光沢面
32 エンボス面
4 表面保護クリヤ層
5 物品
6 台座
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9