(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024847
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】冷却塔および冷却塔の運転方法
(51)【国際特許分類】
F28F 27/00 20060101AFI20240216BHJP
F28C 1/04 20060101ALI20240216BHJP
F28F 25/04 20060101ALI20240216BHJP
F28G 3/04 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
F28F27/00 501D
F28C1/04
F28F25/04
F28G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127775
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】沖田 智之
(57)【要約】
【課題】冷却塔の充填材への散水を均一にし、冷却効率の低下を防止することができる冷却塔およびその運転方法を提供する。
【解決手段】冷却塔の上部水槽内の水位を測定し、管理する手段と、上部水槽内の清掃を自動で制御する手段とを備えた冷却塔とし、水位測定値を設定値と比較し、設定値が外れた時間が設定経過時間を超えた場合に、上部水槽底部を自動清掃することによって、冷却塔からの充填材への散水を均一化する冷却塔の運転方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水を汲み上げる揚水ポンプと、
該揚水ポンプに連結し前記冷却水を分配する分岐配管と、
分配された前記冷却水を貯水する複数の上部水槽と、
該上部水槽の下部に多段に配置され、前記冷却水を気液接触にて冷却する充填材と、
該充填材の下部に設置された冷却水貯水槽と、
を有する冷却塔であって、
前記複数の上部水槽は、各々に水位測定手段を備え、
前記分岐配管は、自動分配弁を有し、該自動分配弁の開度制御手段を備える
ことを特徴とする冷却塔。
【請求項2】
前記自動分配弁の開度制御手段は、前記水位測定手段の水位測定値に基づき、複数の上部水槽間の水位測定値の差が小さくなるように、前記自動分配弁の開度を制御する手段であることを特徴とする請求項1に記載の冷却塔。
【請求項3】
前記複数の上部水槽は、各々に底部清掃手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の冷却塔。
【請求項4】
前記底部清掃手段は、前記複数の上部水槽の水位のうち、少なくとも一つの水位が、設定経過時間連続して、水位設定値を超えた場合に、清掃を実行する作動指示制御手段を有することを特徴とする請求項3に記載の冷却塔。
【請求項5】
前記底部清掃手段は、前記複数の上部水槽間の水位の差が、設定経過時間連続して、水位差設定値を超えた場合に、清掃を実行する作動指示制御手段を有することを特徴とする請求項3に記載の冷却塔。
【請求項6】
冷却水を汲み上げ、分岐配管で分配して、複数の上部水槽に貯水した後、前記上部水槽の下部に多段に配置された複数の充填材に、前記貯水された冷却水を散水するとともに、送入した空気を通過させて、前記冷却水を気液接触にて冷却し、冷却水貯水槽に貯水する冷却塔の運転方法において、
前記上部水槽の各々の水位を測定し、該水位測定値に基づいて前記分岐配管に備えた自動分配弁の開度を制御することを特徴とする冷却塔の運転方法。
【請求項7】
前記自動分配弁の開度は、前記複数の上部水槽間の水位測定値の差が小さくなるように制御することを特徴とする請求項6に記載の冷却塔の運転方法。
【請求項8】
前記複数の上部水槽は、各々に底部清掃手段を備え、前記水位測定値に基づいて前記上部水槽の底部を清掃することを特徴とする請求項6に記載の冷却塔の運転方法。
【請求項9】
前記上部水槽底部の清掃は、前記複数の上部水槽の水位のうち、少なくとも一つの水位が、設定経過時間連続して、水位設定値を超えた場合に、清掃を実行することを特徴とする請求項8に記載の冷却塔の運転方法。
【請求項10】
前記上部水槽底部の清掃は、前記複数の上部水槽間の水位の差が、設定経過時間連続して、水位差設定値を超えた場合に、清掃を実行することを特徴とする請求項8に記載の冷却塔の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔および冷却塔の運転方法に関し、特に、冷却塔の上部水槽間の水位を制御する自動分配弁開度制御手段および上部水槽の底部清掃手段を有する冷却塔に関する。
【背景技術】
【0002】
工場、ビルなどのコンプレッサー、冷凍機で発生した廃熱は、熱交換器を介して冷却水などで冷却されている。熱交換器を通って熱交換が行われ温度上昇した冷却水は、冷却塔内部の充填材を通過して空気と接触することにより放熱し、冷却された後、再度熱交換器に送水され、冷却水として利用される。
【0003】
しかしながら、そのような形で循環を繰り返していると、いずれ冷却塔内部の充填材や冷却水を貯水するための水槽内に塵埃や有機物などが付着することにより、熱交換効率が低下してしまう。このような低下を防止するために、冷却塔の充填材を洗浄することが実施されている。
【0004】
従来、冷却塔の充填材を洗浄する技術としては、例えば、特許文献1には、充填材の表面にノズルで高圧水を吹き付けて付着物を剥離する技術が開示されている。また、特許文献2には、貯水槽内の冷却水の温度を測定し、充填材の洗浄時期を判断し、充填材に向けて予め対向配置されたノズルから高圧水を充填材に吹き付けて洗浄する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-349693号公報
【特許文献2】特開2013-83415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1および2に記載の従来の方法では、充填材の水流れの不均一は解消されても、充填材への散水を行う上部水槽に塵埃や有機物の堆積があった場合には、上部水槽から充填材への散水の不均一は解消されない。そのため、冷却効率の低下が解消しきれないという問題があった。
【0007】
本発明は、前記の問題点に着目してなされたものであって、冷却塔の充填材への散水を均一にし、冷却効率の低下を防止することができる冷却塔およびその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述の目的を達成するため、鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
本発明は、冷却塔の上部水槽に水位測定手段であるレベル計を備え、上部水槽の水位を測定し、各水槽の水位差を算出することにより、各水槽へ冷却水を分配し供給するための自動分配弁の開度を制御することで、各水槽の水位を管理できることを見出した。
【0009】
また、水位の設定値の範囲を外れた場合や、所定の時間を経過しても各水槽間の水位差が解消されない場合に、水位の設定値を外れた上部水槽に対し、その水槽底部を自動で清掃する手段を設けることにより、前記課題を解決することができるとの知見を得た。
【0010】
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものであって、本発明の要旨は、次のとおりである。
〔1〕冷却水を汲み上げる揚水ポンプと、
該揚水ポンプに連結し前記冷却水を分配する分岐配管と、
分配された前記冷却水を貯水する複数の上部水槽と、
該上部水槽の下部に多段に配置され、前記冷却水を気液接触にて冷却する充填材と、
該充填材の下部に設置された冷却水貯水槽と、
を有する冷却塔であって、
前記複数の上部水槽は、各々に水位測定手段を備え、
前記分岐配管は、自動分配弁を有し、該自動分配弁の開度制御手段を備える
ことを特徴とする冷却塔。
〔2〕前記〔1〕において、前記自動分配弁の開度制御手段は、前記水位測定手段の水位測定値に基づき、複数の上部水槽間の水位測定値の差が小さくなるように、前記自動分配弁の開度を制御する手段であることを特徴とする冷却塔。
〔3〕前記〔1〕において、前記複数の上部水槽は、各々に底部清掃手段(底部清掃用ブラシ)を備えることを特徴とする冷却塔。
〔4〕前記〔3〕において、前記底部清掃手段は、前記複数の上部水槽の水位のうち、少なくとも一つの水位が、設定経過時間連続して、水位設定値を超えた場合に、清掃を実行する作動指示制御手段を有することを特徴とする冷却塔。
〔5〕前記〔3〕において、前記底部清掃手段は、前記複数の上部水槽間の水位の差が、設定経過時間連続して、水位差設定値を超えた場合に、清掃を実行する作動指示制御手段を有することを特徴とする冷却塔。
〔6〕冷却水を汲み上げ、分岐配管で分配して、複数の上部水槽に貯水した後、前記上部水槽の下部に多段に配置された複数の充填材に、前記貯水された冷却水を散水するとともに、送入した空気を通過させて、前記冷却水を気液接触にて冷却し、冷却水貯水槽に貯水する冷却塔の運転方法において、
前記上部水槽の各々の水位を測定し、該水位測定値に基づいて前記分岐配管に備えた自動分配弁の開度を制御することを特徴とする冷却塔の運転方法。
〔7〕前記〔6〕において、前記自動分配弁の開度は、前記複数の上部水槽間の水位測定値の差が小さくなるように制御することを特徴とする冷却塔の運転方法。
〔8〕前記〔6〕において、前記複数の上部水槽は、各々に底部清掃手段を備え、前記水位測定値に基づいて前記上部水槽の底部を清掃することを特徴とする冷却塔の運転方法。
〔9〕前記〔8〕において、前記上部水槽底部の清掃は、前記複数の上部水槽の水位のうち、少なくとも一つの水位が、設定経過時間連続して、水位設定値を超えた場合に、清掃を実行することを特徴とする冷却塔の運転方法。
〔10〕前記〔8〕において、前記上部水槽底部の清掃は、前記複数の上部水槽間の水位の差が、設定経過時間連続して、水位差設定値を超えた場合に、清掃を実行することを特徴とする冷却塔の運転方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、上部水槽の水位および各槽の水位差によって自動分配弁の開度を制御することができる。また、予め設定した水位の適正範囲を外れた場合やある設定時間を経過しても各水槽間の水位差が解消されない場合に、設定値を外れた上部水槽に対し、上部水槽の底部を自動で清掃することができる。これにより、上部水槽の底部の堆積物が除去され、散水される冷却水の片流れ(偏流)による冷却効率低下を防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る冷却塔の一実施形態を説明する断面模式図である。
【
図2】本発明に係る冷却塔の一実施形態を説明する平面模式図である。
【
図3】本発明に係る冷却塔の運転方法を説明する運転フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る冷却塔および冷却塔の運転方法、運転フローチャートの代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表わされた各部材の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0014】
[冷却塔]
本発明に係る冷却塔の一実施態様を、
図1および
図2に基づいて説明するが、ここでは、一例として、工場循環水の冷却塔について説明する。
【0015】
冷却塔は、工場内を循環して戻ってきた冷却水(循環水)を回収し、工場内の熱交換器で使用された後の温度上昇した冷却水を、気液接触によって再冷却し、再度工場内で冷却用に使用するための循環用冷却水の冷却設備である。
【0016】
図1および
図2に示すように、冷却塔1の左右には、図示していない筐体に充填された充填材2(充填材が充填された筐体を「充填材ユニット」ともいうが、以下、単に「充填材」という。)が多段に複数組設置されている。この充填材2の形状は、例えば、波板状や網目状のものを用いる。
【0017】
多段に設置された充填材2の上部には、前述の工場内を循環して戻ってきた冷却水Wを貯水するための上部水槽4が設けられている。この上部水槽4の底には、多数の穴が開いており、その穴から冷却水Wを水槽下部にある充填材2に散水する。
【0018】
また、冷却塔上部中央にある送風用のファン9は、充填材2の内部に空気を送入し、排出するために設けられている。送入された空気が、各充填材2の内部を整流となって均等に通過するために、左右の多段の充填材2の外側には、空気を吸い込む吸気用のルーバー12を設け、充填材2の空気の出側には、空気を整流とするための整流板であるエリミネータ3が設けられている。上部から散水される冷却水Wは、充填材2の内部で整流となった空気と気液接触により熱交換されて、冷却される。
【0019】
さらに、本発明に係る冷却塔1は、工場内で使用され循環して戻ってきた冷却水Wを汲み上げる揚水ポンプ8と、揚水ポンプ8に連結し冷却水Wを分配する分岐配管10とを有している。また、上記の充填材2の下部には、冷却された冷却水Wを貯水するための貯水槽11が設置されている。
【0020】
次に、本発明に係る冷却塔の特徴は、上記の複数の上部水槽4の各槽に、水位測定手段であるレベル計5を備えており、分岐配管10には、自動分配弁6を備えている。また、自動分配弁6の開度制御手段を有している。
【0021】
レベル計5は、上部水槽4内の水位を測定するものであり、その種類としては、非接触式の電波式や超音波式のものや、接触式のフロート式、ガイドロープ式、圧力式、静電容量式および差圧式のものなどがあり、いずれのものでも使用できる。例えば、株式会社ノーケン製のガイドパルス式レベル計などが用いられる。水位の測定は、前述の散水の開始から終了までの間、継続して行われており、各槽の水位測定値は、図示していない制御装置に継続的に送信されている。
【0022】
自動分配弁6は、冷却水Wを上部水槽4に注水する際に、図示していない制御装置からの信号に基づいて、上部水槽4への注水量を適量に分配供給するために、弁の開度を自動で調整することができる開閉制御手段を有している開閉弁である。
【0023】
ここで、開閉制御手段とは、各水槽の水位の測定値から水槽間の水位の差、すなわち、水位のバラツキに応じて、自動分配弁の開度を調整するための指示を出す制御装置である。具体的には、フィードバック制御の一つであり、比例制御(P制御)に積分制御(I制御)と微分制御(D制御)を加えた制御方式であるPID制御などが用いられる。
【0024】
さらに、各上部水槽4の底部には、底部清掃手段である底部清掃ブラシ7を備えている。この底部清掃ブラシ7は、上部水槽4の底部に堆積する塵埃や汚泥、有機物などを洗浄し、除去するためのものである。ブラシの構造としては、例えば、上部水槽4の底部の一方の端から他方の端へ回転しながら移動する回転ブラシなどを用いることが好ましいが、この構造に限定されるものではなく、上記の堆積物を除去できるものであれば良い。
【0025】
[冷却塔の運転方法]
次に、冷却塔の運転方法について、
図3の運転フローチャートに基づき説明する。
まず、運転方法の手順は、次のとおりである。
(1)工場内で使用され循環して戻ってきた冷却水Wを揚水ポンプ8で汲み上げる。
(2)その冷却水Wを分岐配管10で分配して供給し、複数の上部水槽4に貯水する。
(3)貯水した後、上部水槽4の下部に多段に配置された複数の充填材2に、貯水された冷却水Wを散水する。
(4)散水するとともに、空気を送入して充填材2内を通過させて、冷却水Wを気液接触にて冷却する。
(5)冷却した冷却水Wを貯水槽11に貯水する。
そして、本発明に係る冷却塔の運転方法の特徴は、
(6)上部水槽4の各々の水位を測定し、その水位測定値に基づいて、分岐配管10に備えられた自動分配弁6の開度を制御する。その自動分配弁6の開度は、上記の複数の上部水槽4間の水位測定値の差が小さくなるように制御する。
(7)前記複数の上部水槽4は、各々に底部清掃ブラシ7を備えており、上記の水位測定値に基づいて上部水槽4の底部を清掃する。
【0026】
ここで、上部水槽4底部の清掃は、複数の上部水槽4の水位のうち、少なくとも一つの水位が、設定経過時間連続して、水位設定値を超えた場合に、清掃を実行する。さらに、複数の上部水槽4間の水位の差が、設定経過時間連続して、水位差設定値を超えた場合に、清掃を実行する、というものである。
【0027】
[運転フローチャート]
以上の運転方法を、
図3に示す運転フローチャートにより詳しく説明する。なお、
図3中の<>は、ステップを示す。
【0028】
最初のステップ<1>は、「自動分配弁を設定開度に調整し、上部水槽から散水を開始」する。ここで、「設定開度」とは、散水開始当初は、自動分配弁の開度の初期設定値であり、散水後は、後述するステップ<6>において、水位測定値に基づき自動分配弁の開度を調整するように指示された開度の設定値である。
【0029】
ステップ<2>で、散水が開始されると、上部水槽4の内部の水位をレベル計5により測定する。
【0030】
各上部水槽4の水位は、継続して常時測定されており、ステップ<3>において、予め設定した水位の設定範囲内にあるかどうかを判定する。なお、以下の説明では、上部水槽4の高さが200mmの場合を例にとり、水位の設定範囲を70~130mmとした場合について説明する。つまり、ステップ<3>では、各上部水槽4の水位測定値が、設定範囲内(70~130mm)にあるかどうか判定する。この水位測定値が70mm未満かまたは130mm超の場合は、設定範囲内でないので、ステップ<3>の判定がNoとなり、ステップ<4>に移る。
【0031】
このステップ<4>では、設定範囲(130mm)を超えた(設定上限より大)かどうかを判定する。水位測定値が設定範囲超え(130mm超)の場合(Yes)には、ステップ<5>に移り、その設定範囲超えの経過時間を計測する。
【0032】
水位測定値が設定範囲超えでない場合(No)は、すなわち、水位測定値が70mm未満に相当する場合であって、その場合には、水位が上がらないことを意味している。その理由としては、冷却水の注水量が少ないことが原因であると考えられる。そこで、水流を増やすために、該当する上部水槽4の自動分配弁6の開度を開けるように、開度設定の指示を出すためのステップ<6>「自動分配弁の開度を開側に設定」に移り、その後ステップ<1>に戻るようになっている。
【0033】
上述のステップ<5>で、設定範囲超えの経過時間の計測を行い、ステップ<7>で、その経過時間が、例えば1時間という設定時間を経過したかどうかを判定する。このステップ<7>で設定経過時間(1時間)を超えて、水位設定値(130mm)超えが継続した場合(Yes)には、上部水槽4内の底部に堆積した異物等により水流れが悪くなり、さらに悪くなるとオーバーフローなどの不具合の発生も予想される。この場合には、ステップ<8>の「設定経過時間を超えた水槽に対し、水槽底部の自動清掃を行う」という指示を発信する。
【0034】
前述のステップ<3>で、各上部水槽4の水位設定値が設定範囲内(70~130mm)にある場合と、前述のステップ<7>で、設定範囲超えの経過時間が設定経過時間(1時間)を超えない場合には、ステップ<9>の「各水槽の水位差を算出」に移る。ここで、各水槽の水位差とは、ステップ<2>で測定した各水槽の水位測定値から算出した各水槽間の水位の差のことである。この水位差についても予め設定しておく。水位差の設定値としては、40~50mmの範囲の中から適宜設定すればよく、例えば、50mmと設定する。
【0035】
ステップ<10>において、各水槽間の水位差を常時監視し、水位差設定値である50mmを超えたかどうかを判定する。算出された水位差が、設定値の50mm以内であれば、各水槽の水量、水流に問題はないので、最後のステップ<15>の散水を終了するかどうかの判定に移る。算出された水位差が、設定値の50mmを超えた場合には、前述したステップ<5>と同様に、水位差設定値超えの経過時間を計測するステップ<11>に移る。
【0036】
このステップ<11>で、水位差設定値超えの経過時間の計測を行い、ステップ<12>で、その経過時間として、30分~2時間の範囲の中から適宜設定すればよく、例えば、1時間と設定し、その設定時間を経過したかどうかを判定する。
【0037】
このステップ<12>で設定経過時間(1時間)を超えて、水位差設定値(50mm)超えが継続した場合については、ある水槽の水位が大きくなっているケースと、逆に水位が小さくなっているケースが想定される。そこで、ステップ<13>として、「設定経過時間を超えた水槽が水位の設定範囲より大きいか?」について判定する。
【0038】
このステップ<13>において、水位が大きくなった場合(Yes)は、水槽内の底部に堆積した異物等を除去するために、ステップ<14>の「水位の設定範囲を超えた水槽に対し、水槽底部の自動清掃を行う」という指示を発信する。このステップ<14>は、前述したステップ<8>と同様の内容である。
【0039】
また、ある水槽の水位が小さくなっている場合(No)は、前述したステップ<4>と同様に、水位が上がらないことを意味しているので、水流を増やすために、該当する上部水槽4の自動分配弁6の開度を開けるように、開度設定の指示を出すためのステップ<6>「自動分配弁の開度を開側に設定」に移り、その後ステップ<1>に戻るようになっている。
【0040】
最後に、ステップ<15>で「散水を終了するか?」の判定を行い、散水を継続する場合は、Noとなり、最初のステップ<1>に戻り、散水を終了する場合には、Yesとなり、運転方法の工程を終了する。終了するかどうかの判定は、例えば、冷却水使用工場の操業に連動して決まるものである。
【0041】
また、上述した水位設定値、水位差設定値、設定経過時間についても、冷却塔の構造や処理する冷却水の量などにより、適宜設定されるものである。
【実施例0042】
図1および
図2に示す本発明に係る冷却塔を用いて、冷却水の冷却を行うとともに、各上部水槽ごとの水位をレベル計にて測定し、その水位測定値および各水槽間の水位の差に基づいて、水槽の水位を管理した。
【0043】
上部水槽の水位を70~130mmと設定し、各水槽間の水位差を50mm以内と設定し、水位設定値と水位差設定値の範囲内になるように自動分配弁の開度を制御した。
【0044】
また、水位設定値を超えて外れた経過時間が1時間以上継続した場合、あるいは、水位差設定値が外れた経過時間が1時間以上継続した場合に、上部水槽底部の自動清掃ブラシを起動して底部を清掃した。
【0045】
その結果、上部水槽からの冷却水のオーバーフローなどの異常は全く発生することがなくなり、水の片流れ(偏流)による冷却効率低下を防ぐことができた。