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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024852
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】食品の加熱調理装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/16 20060101AFI20240216BHJP
   A47J 27/14 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A47J27/16 F
A47J27/14 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127787
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】714004734
【氏名又は名称】テーブルマーク株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593196609
【氏名又は名称】株式会社 オノモリ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】中村 清次郎
(72)【発明者】
【氏名】小野森 一寛
(72)【発明者】
【氏名】大根田 浩之
【テーマコード(参考)】
4B054
【Fターム(参考)】
4B054AA02
4B054AB03
4B054AC02
4B054AC17
4B054BA02
4B054BA05
4B054CG01
4B054CG10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた食味を有する食品を効率よく加熱調理できる装置を提供する
【解決手段】水蒸気を充満させることのできる容体1と、当該容体内に配置された、容体内の水蒸気を加熱し当該水蒸気で食品原料を加熱する間接加熱手段3と、当該容体内に配置された、前記食品原料を直接加熱する直接加熱手段5-1、5-2と、を備える、加熱調理装置100。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を充満させることのできる容体と、
当該容体内に配置された、容体内の水蒸気を加熱し当該水蒸気で食品原料を加熱する間接加熱手段と、
当該容体内に配置された、前記食品原料を直接加熱する直接加熱手段と、
を備える、加熱調理装置。
【請求項2】
前記食品原料が、澱粉質含有食品原料である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記食品原料が、粒状または麺状である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置が、前記容体内で前記食品原料を移送する移送手段を備え、
当該移送手段が、前記食品原料を、まず前記容体の鉛直方向上部に移送し、その後、前記容体の底部に移送する、
請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記移送手段が、
前記食品原料を、ある位置Aからほぼ水平に位置Bに移送し、その後、位置Bから鉛直下方向に位置Cに移送する、というプロセスを、1回または複数回繰り返す機能を有する、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記食品原料の導入口近傍に、前記直接加熱手段を備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項7】
前記直接加熱手段が、以下から選択される:
1)伝導伝熱による加熱手段
2)輻射伝熱による加熱手段
3)凝縮潜熱による加熱手段
4)これらの2種以上の組合せ
請求項1または2に記載の装置。
【請求項8】
前記凝縮潜熱による加熱手段が、前記食品原料に水蒸気を直接噴射する加熱手段である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記間接加熱手段が熱交換器である請求項1または2に記載の装置。
【請求項10】
炊飯装置である、請求項1または2のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
請求項1または2に記載の装置を用いる、前記食品原料を加熱調理する方法であって、
前記容体内に水蒸気を充満させる工程、
前記食品原料を水蒸気が充満された前記容体内に導入する工程、および
前記直接加熱手段および間接加熱手段を用いて、前記食品原料を加熱する工程、
を備える加熱調理方法。
【請求項12】
殺菌工程をさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1または2に記載の装置にて調理された食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品の加熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パックご飯などの炊飯においては、一定温度条件下で、蒸煮処理を行う方法が広く使用されている。例えば特許文献1には、米を搬送する搬送装置を備えたチャンバと、前記チャンバ内に過熱水蒸気を供給する過熱水蒸気供給装置と、前記チャンバから排出された水蒸気との熱交換により温水を製造する熱交換器と、前記熱交換器により製造された温水を、前記チャンバ内の米に散水する散水手段とを備え、前記熱交換器は、熱交換のための水を流す冷却管と、当該冷却管と前記水蒸気を接触させる冷却搭と、当該冷却搭の塔頂部開口上方に設置された排気ファンを有する連続式炊飯装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6474558号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炊飯された米飯の風味および食感は、温度、圧力などを変えることにより、改良できることが知られており、家庭用の炊飯器などでは実用化されている。しかし、大量生産に対応するには、装置などが大掛かりになり、工業的に実用可能な規模においてその炊飯特性を改善する方法は提案されていなかった。また、容器内に浸漬米を入れ、その容器のまま殺菌、注水、炊飯、包装する方法でパックご飯を製造する場合、多段式のゴンドラ等に積載した容器を、蒸気で充満した装置内に一定時間滞留させることにより炊飯を行うことが一般的であった。この場合、ゴンドラの部位によって温度差が生じるので、食味を合わせるために必要以上の蒸気を供給しなくてはならなかった。このため炊飯工程において、大量の蒸気など、多くのエネルギーが必要であった。特許文献1の装置は、省エネルギー化を達成できるとされるが、食味等にかかる記載はない。よって、優れた食味を有する食品を効率よく加熱調理できる装置が望まれていたが、未だこのような装置は達成されていない。かかる事情に鑑み、本発明は、優れた食味を有する食品を効率よく加熱調理できる装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、間接加熱手段と直接加熱手段を備える装置によって前記課題が解決できることを見出した。すなわち、前記課題は、以下の本発明によって解決される。
【0006】
態様1
水蒸気を充満させることのできる容体と、
当該容体内に配置された、容体内の水蒸気を加熱し当該水蒸気で食品原料を加熱する間接加熱手段と、
当該容体内に配置された、前記食品原料を直接加熱する直接加熱手段と、
を備える、加熱調理装置。
態様2
前記食品原料が、澱粉質含有食品原料である、態様1に記載の装置。
態様3
前記食品原料が、粒状または麺状である、態様1または2に記載の装置。
態様4
前記装置が、前記容体内で前記食品原料を移送する移送手段を備え、
当該移送手段が、前記食品原料を、まず前記容体の鉛直方向上部に移送し、その後、前記容体の底部に移送する、
態様1~3のいずれかに記載の装置。
態様5
前記移送手段が、
前記食品原料を、ある位置Aからほぼ水平に位置Bに移送し、その後、位置Bから鉛直下方向に位置Cに移送する、というプロセスを、1回または複数回繰り返す機能を有する、
態様4に記載の装置。
態様6
前記食品原料の導入口近傍に、前記直接加熱手段を備える、態様1~5のいずれかに記載の装置。
態様7
前記直接加熱手段が、以下から選択される:
1)伝導伝熱による加熱手段
2)輻射伝熱による加熱手段
3)凝縮潜熱による加熱手段
4)これらの2種以上の組合せ
態様1~6のいずれかに記載の装置。
態様8
前記凝縮潜熱による加熱手段が、前記食品原料に水蒸気を直接噴射する加熱手段である、態様7に記載の装置。
態様9
前記間接加熱手段が熱交換器である態様1~8のいずれかに記載の装置。
態様10
炊飯装置である、態様1~9のいずれかに記載の装置。
態様11
態様1~10のいずれかに記載の装置を用いる、前記食品原料を加熱調理する方法であって、
前記容体内に水蒸気を充満させる工程、
前記食品原料を水蒸気が充満された前記容体内に導入する工程、および
前記直接加熱手段および間接加熱手段を用いて、前記食品原料を加熱する工程、
を備える加熱調理方法。
態様12
殺菌工程をさらに備える、態様11に記載の方法。
態様13
態様1~10のいずれかに記載の装置にて調理された食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって優れた食味を有する食品を効率よく加熱調理できる装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の加熱調理装置の概要を示す図
図2】実施例1におけるプラスチックトレイ中の水の温度変化を示す図
図3】ゴンドラ移送の一態様を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」はその端値であるXおよびYを含む。
【0010】
1.加熱調理装置
加熱調理装置は、水蒸気を充満させることのできる容体と、当該容体内に配置された、容体内の水蒸気を加熱する間接加熱手段と、当該容体内に配置された、前記食品原料を直接加熱する直接加熱手段と、を備える。以下、図を参照しながら当該装置を説明する。図1は加熱調理装置の概要図であり、図中、100は加熱調理装置、1は容体、3は間接加熱手段、5-1および5-2は直接加熱手段、5’は水蒸気供給手段、7は移送手段、9は排気管、10は食品原料を搭載するゴンドラである。後述するとおり、5-1および5-2は水蒸気供給手段を兼ねることもできるし、5’は直接加熱手段を兼ねることもできる。ゴンドラ10近傍の矢印は、ゴンドラ10の移送方向を示す。
【0011】
(1)容体
容体1は、装置における容器である。そのサイズは調理する食品原料の量に依存する。容体1は、一態様において、200g入りのパックご飯を、数個~数十個程度収納できるゴンドラ10を複数個から数百個設置し、連続的に加熱処理できる大きさである。容体1は水蒸気を充満させることができる必要がある。水蒸気を充満させるとは、一態様において、容体1内に水蒸気を満たすことによって容体1内の温度を80℃以上とし、かつ相対湿度を70%以上とできることをいう。そのため、容体1は密閉されるか、密閉に近い状態とされることが好ましい。
【0012】
容体1を構成する材料は限定されないが、例えばステンレスなどの金属材料や、繊維強化プラスチックなどが挙げられる。
【0013】
容体1は、食品原料を出し入れするための導入口を有する。導入口には蓋などを設けることができ、加熱調理時水蒸気を充満できるように密閉もしくは密閉に近い状態とできることが好ましい。加熱調理装置100は、容体1内に水蒸気を供給する水蒸気供給手段5’を備える。水蒸気供給手段5’は、例えば水蒸気を流すことのできるパイプであって周面に水蒸気排出孔を有するパイプであってよい。水蒸気供給手段5’は、容体1内に水蒸気を供給する目的だけのために設置することができるが、水蒸気を食品原料に直接噴射することにより、凝縮伝熱(潜熱)による直接加熱を行って水蒸気を効率的に使用することが可能である。すなわち、水蒸気供給手段5’は直接加熱手段としての機能を備えていてもよい。
【0014】
容体1の形状は限定されないが、天井と側壁と底部を有する略直方体とすることができる。底部には、ドレンを回収できるための溝が設けてあってもよい。
【0015】
容体1は、加熱効率の観点から、食品原料が内壁に沿って、水平に(図1の紙面左右方向)移動し、かつ鉛直(図1の紙面上下方向)に移動できる形状であることが好ましい。
【0016】
(2)直接加熱手段
直接加熱手段とは、食品原料を直接的に加熱する手段である。当該手段は、好ましくは1)伝導伝熱による加熱手段、2)輻射伝熱による加熱手段、3)凝縮潜熱による加熱手段、4)これらの2種以上の組合せから選択される。
【0017】
1)伝導伝熱による加熱手段
当該手段としては、例えば、ヒーターやバーナー等が挙げられる。これらは、炎等を直接対象に接触させることによって、熱を直接対象物に与えることができる。
【0018】
2)輻射伝熱による加熱手段
当該手段としては、例えば遠赤外線、マイクロ波、高周波の照射等が挙げられる。これらは、高周波等の電波を照射することで物質の分子を振動させて、その摩擦熱で対象物の温度を上昇させる。
【0019】
3)凝縮伝熱(潜熱)による加熱手段
当該手段としては、物質の相転移による潜熱を利用する手段が挙げられる。具体的には、水蒸気を用いた加熱手段が挙げられる。対象物に水蒸気を当てると一瞬のうちに相転移が生じる。すなわち飽和蒸気が飽和水へと変化し、その一瞬に保有している潜熱が放出され、この放出される潜熱によって対象物が加熱される。
【0020】
これらの中でも、速やかに食品原料を加熱できる点から、凝縮伝熱(潜熱)による加熱手段が好ましく、水蒸気を食品原料に直接噴射する水蒸気噴射手段がより好ましい。図中、直接加熱手段5から延びる矢印は、水蒸気の流れを示す。
【0021】
直接加熱手段5-1は、図1に示すとおり、容体1内の食品原料の導入口付近に、食品原料を直接加熱できるように設けられることが好ましい。加熱調理工程の初期の段階で、食品原料を直接加熱すると、食品原料が澱粉を含む場合、α化が早期に進行して優れた食感または食味を達成できるからである。また図1に示す態様においては、その後の工程において食品原料に水蒸気をさらに噴射できるように、直接加熱手段5-2を設けることが可能である。この場合、直接加熱手段5-2は、水蒸気供給手段5’を兼ねることもできる。このように直接加熱手段5-2を容体上部に配置すると製品に直接水蒸気を噴射する量を調整しつつ、容体内を効率的に均一に水蒸気で充満できるという効果が奏される。また、工程における食品原料への加熱条件を調整するために、この水蒸気の噴射のタイミングや、向き等を調整することが可能である。
【0022】
(3)間接加熱手段
間接加熱手段3は、容体1内の水蒸気を加熱し、この水蒸気が食品原料を加熱する、すなわち食品原料を間接的に加熱する。間接加熱手段3は限定されないが、好ましくは熱交換器である。熱交換器とは温度が高い物体から温度が低い物体に効率よく熱を伝導させる装置である。具体的に間接加熱手段3としては加熱流体を流すことのできるパイプが好ましい。当該加熱流体は、水蒸気であることが好ましい。この場合、パイプ内の内圧は好ましくは0.05~1MPa、より好ましくは0.1~0.5MPa、さらに好ましくは0.2~0.4MPa程度である。
【0023】
(4)移送手段
移送手段とは、食品原料を移送する手段である。移送手段は限定されないが、ゴンドラ、ラックなどに収納して移送してもよく、チェーンコンベアや、ベルトコンベアーのような移動可能なベルト状手段であってよい。
【0024】
移送方法も限定されないが、食品原料を、容体1の鉛直方向上部に移送し、その後、容体1の底部に移送することが好ましい。容体1内においては、鉛直上部の方が高温であるため、このように食品原料を移送すると、加熱調理工程の初期段階から食品原料を十分に加熱することができる。食品原料を、容体1の鉛直方向上部に移送し、容体1の天井に沿って水平に移送し、そして底部に移送することもできる。水蒸気で充満された容体1内を水平に移送することによって、食品原料を均一に加熱することができ、食品原料のばらつきを防ぐことができる。また、移送手段は、容体1内において、まず、食品原料を鉛直方向上部に移送した後に、その移送された位置からほぼ水平に移送し、その後、前記容体の底部方向に移送する、というプロセスを1回または複数回繰り返す機能を有することが好ましい。具体的に当該プロセスにおいては、図3に示すように、食品原料をある位置Aからほぼ水平方向に位置Bまで移送し、次いで鉛直下方向に位置Cまで食品原料を移送する。このプロセスは2~10回実施されることが好ましく、2回実施されることがより好ましい。水蒸気は容体内で水平方向に従って蓄積されることから、水平移動中、食品原料は同様の濃度の水蒸気にさらされることになり、同様の条件で継続的に加熱することが可能であり、食品原料を均一に加熱できる、加熱時間を調整できる、装置の省スペース化を達成できる等の効果が奏される。なお、位置Bは、位置AからX方向に平行な直線上に存在してもよいし、位置Aに対し、Z方向(XおよびYに垂直な方向)手前(紙面表方向)に位置していてもよいしZ方向奥(紙面奥裏方向)に位置していてもよい。さらに食品原料を、位置Aから位置Bおよび位置Cを通るようにらせん状に移送することできる。
【0025】
(5)食品原料
食品原料とは、調理されることによって喫食可能になる食品の原料である。食品原料は限定されないが、澱粉質含有食品原料であることが好ましい。澱粉を含む食品原料を本発明の調理加熱装置で加熱調理すると、早い段階で澱粉をα化できるので、食感および食味を高めることができる。
【0026】
食品原料の形状については特に限定されないが、粒状または、麺帯、麺線などの麺状であることが好ましい。食品原料がこの形状であると、水蒸気が粒同士の間または麺同士の間に入りやすく、加熱効率が向上する。
【0027】
粒状食品原料の例には、米類、豆類、麦類、雑穀類、トウモロコシ等が含まれる。米類の例には、うるち米、もち米、玄米等が、豆類の例には、小豆、大豆等、麦類の例には小麦、大麦、ライ麦、エン麦等、雑穀類にはヒエ、アワ、キビ等が含まれる。当該、米類、豆類、麦類、雑穀類、トウモロコシ等は、洗浄した後、一定の時間水に漬けて吸水させておくことが好ましい。このような処理を施すことで、加熱調理時間を短縮できる。特に吸水させた米類を食品原料として用いると、米の表面が速やかにα化されるので、米の形状が崩れにくくなるという利点がある。このときの吸水量は、当該分野で通常採用されている量とすればよい。食品原料として米類、豆類、麦類、雑穀類、トウモロコシ等の混合物も使用できる。食品原料が米類である場合、前記加熱調理装置は炊飯装置でもある。
【0028】
麺状食品原料の例には、ラーメン、そば、うどんおよびスパゲッティ等の麺類、餃子の皮、点心の皮などの麺帯等が含まれる。
【0029】
食品原料は後述する容器に充填され、当該容器ごと容体1内に装入されることが好ましい。食品原料の容器への充填量は、前記食品原料の種類や、製造される調理済み食品の用途によって異なる。例えば、前記食品原料として吸水させたうるち米を用いる場合、その充填量を80~300gとすると、1人前に適した量の無菌包装米飯を製造できるので好ましい。
【0030】
容器は、食品原料を充填するための開口部を有する。その形状は、食品原料を充填しやすい等の理由から略直方体が好ましい。容器の大きさは、充填する前記食品原料の種類や、製造される無菌包装食品の用途によって異なる。例えば、前記食品原料として吸水させたうるち米を80~150g用いて無菌包装食品を製造する場合は、縦110~160mm、横160~220mm、高さ10~60mmの大きさが好ましい。容器は110℃以上の耐熱性を有することが好ましい。
【0031】
また、図に示すとおり容器はゴンドラに搭載されてもよい。ゴンドラの大きさは限定されないが、当該容器を数個~数百個程度搭載できる大きさであることが好ましい。
【0032】
2.製造方法
前記加熱調理装置を用いた加熱調理方法は、少なくとも前記容体内に水蒸気を充満させる工程1、および前記食品原料を飽和水蒸気が充満された前記容体内に導入する工程2、を備えることが好ましい。
(1)工程1
水蒸気は、前述の水蒸気供給手段または水蒸気噴射手段を用いて充満させることができる。充満の程度は前述のとおりである。水蒸気が満たされた状態での対流によって、食品原料を加熱することができる。
【0033】
(2)工程2
食品原料は、前述のとおり容器に充填されて容体1内に導入されることが好ましく、当該容器がゴンドラに搭載された状態で容体1内に導入されることがより好ましい。導入には、前述の移送手段7を用いることが好ましい。
【0034】
(3)加熱調理工程
好ましい態様において、食品原料はゴンドラ10に搭載され、容体1内に導入され、鉛直上方へ移送されるとともに直接加熱手段5-1から直接水蒸気を噴射されて加熱される。次いで、ゴンドラ10は天井に沿って水平方向(紙面右方向)へ移送される。この際、直接加熱手段5-2から噴射された水蒸気は容体を加熱する。容体上部からの水蒸気による直接加熱と間接加熱手段3で加熱された水蒸気によって、食品原料はさらに加熱される。次いで、ゴンドラ10を鉛直下方向に移送する。この間も、食品原料は間接加熱手段3で加熱された水蒸気によって加熱される。そして、ゴンドラ10は底部に沿って水平方向(紙面左方向)に移送され、開口部より容体1の外へ移送される。前述のとおり、このプロセスは複数回繰り返すことができる。加熱調理工程の時間は限定されないが、一態様において10~30分程度である。
【0035】
(4)殺菌工程
加熱調理方法は食品として有効な加熱殺菌工程をさらに備えることが好ましい。殺菌工程は、前記加熱調理装置を用いずに、公知の装置を用いて実施することができる。食品として有効な加熱のための温度および時間とは、殺菌強度の指標とされるF値が4以上、好ましく4.5以上、より好ましくは10以上に達するような温度および時間である。F値は、殺菌強度F値を定義する下記式において、基準温度Tr=121.1℃、Z値=10とした場合のF値である(清水潮、横山理雄著、「レトルト食品の理論と実践」p60~68、幸書房、1986年)。
【0036】
【数1】
F:殺菌強度
tT:加熱時間(分)
T:容器内温度(℃)
Tr:基準温度(℃)
Z:死滅速度がどの程度温度に依存するかを示すパラメータ
【0037】
3.食品
本加熱調理装置を用いることによって、従来よりもさらに強い加熱条件を用いつつ、その加工条件を調整することが可能であるので、その調整された工程で調理された食品は、優れた食感と食味を備える。当該食品は、常温食品、冷凍食品など、多くの食品で使用することが可能であるが、殺菌済密封食品であることが特に好ましい。殺菌済密封食品は、そのまま、あるいは加熱することにより喫食できる。パックご飯の場合には、その喫食に適した温度に温めるためにから電子レンジで容器ごと加熱して喫食することが好ましい。
【実施例0038】
[実施例1]
(1)装置
図1に示すような炊飯装置100を準備した。当該装置は、天井、側板、およびドレン水を集めることのできる底板を備える箱型の容体を備える。当該装置は、容体(炊飯室)の外から、容体の内壁に沿って容体内部を周回する搬送手段7(コンベアチェーン)を有する。コンベアチェーンには、ゴンドラ10を等間隔に取り付けた。1つのゴンドラ10には、以下に説明する方法で準備した米と炊き水を入れた容器を4個収納した。
【0039】
(2)米
1)コシヒカリ精米を100g計量した。
2)洗米後、所定の量の水を加えて20℃で70分浸漬した。
3)浸漬米98gをプラスチックトレイ(商品名:ラミコンカップ、東罐興業株式会社製、寸法:29mm×118mm×179mm)に充填した。
4)特許6047320号に開示された加圧加熱殺菌機を用いて、所定の条件において前記浸漬米に対して加圧加熱殺菌を行った。加圧加熱殺菌機において温度を140℃、最高圧力0.3MPaに設定して殺菌処理を行った。
5)20~25℃の水75gを前記プラスチックトレイに加えた。
6)前記浸漬米と水が充填されたプラスチックトレイをゴンドラ10に搭載した。
7)前記装置を用いて、次節に示す条件で炊飯を行った。
8)炊飯後にプラスチックトレイをシール材で密封し、蒸らし工程を経て、炊飯米を得た。
【0040】
(3)炊飯条件
前記の炊飯装置100の容体内に、水蒸気供給手段5’を用いて飽和水蒸気を充満させた。容体内の温度は108℃であった。次いで、ゴンドラ10を導入口から当該装置の容体1内に導入し、容体1内を図1に示すように移送し、以下の条件で炊飯を行った。
試験1:炊飯時間15分、直接加熱手段5-1をOFF、下段の間接加熱手段3のみをON、パイプ内圧0.25MPa
試験2:炊飯時間15分、直接加熱手段5-1をON、下段の間接加熱手段3のみをON、パイプ内圧0.25MPa
試験3:炊飯時間18分、直接加熱手段5-1をON、下段の間接加熱手段3のみをON、パイプ内圧0.25MPa
試験4:炊飯時間20分、直接加熱手段5-1をON、下段の間接加熱手段3のみをON、パイプ内圧0.25MPa
試験5:炊飯時間15分、直接加熱手段5-1をON、下段の間接加熱手段3のみをON、パイプ内圧0.30Mpa
試験1~5においては、前記加熱殺処理の処理時間を6秒とした。
試験6:加圧加熱殺菌を4秒とした以外は、試験2と同じ条件
試験7:加圧加熱殺菌8秒とした以外は、試験2と同じ条件
水蒸気量は対象物に十分に噴射できる量とし、本試験ではすべて同じ量に固定して行った。
条件の詳細を表1に示した。
【0041】
(4)評価
得られた炊飯米のシール材を一部剥がし、容器ごと家庭用電子レンジにて600W×2分間加熱した。レンジ加熱終了から2~5分までの間に、専ら米飯の製造に従事している3名のパネラーが試食し、官能評価を行った。評価基準を表2に、官能評価の結果を表3に示した。また無線データロガー(Madgetech社製)を用いて測定した前記プラスチックトレイ中の水の温度変化を図2に示した。
【0042】
[比較例1]
実施例1と同じ方法で浸漬米と水が充填されたプラスチックトレイを準備した。炊飯装置100の容体1内に当該プラスチックトレイを装入し、容体1の導入口を閉じ密閉した。密閉された容体1内に水蒸気を導入して容体1内を加圧状態に保ち、30分間加熱して炊飯を行った。炊飯終了後、プラスチックトレイを取り出した。次いでプラスチックトレイを、シール材を用いて密封し、蒸らし工程を経て、炊飯米を得た。このようにして得た炊飯米について実施例1と同じ方法で評価を行った。結果を表3に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
図2に示すとおり、水80gの温度データから、直接蒸気ONの場合(試験2)は昇温速度が速く、最高温度は99.5℃程度と高い値を示した。それに対し直接蒸気OFFの場合(試験1)では昇温速度が遅く、かつ最高温度が96℃程度と上がりきらなかった。また、試験3においては加熱時間が長いことから、900秒後においても高温が維持されており、試験5においては移管内圧力を0.30MPaに上げたものの温度データにおいては大きな違いは見られなかった。
【0047】
初期に直接蒸気OFF(試験1)とすると、炊飯での昇温が遅くかつ温度が上がりきらず(96℃程度)、十分に炊飯されていない(十分な加熱を得られず糊化していない)状態だった。直接蒸気ON(試験2)は炊き不足感はなく、十分な加熱能力があることが明らかになった。粒もしっかりしており、炊飯状態は良好であった。初期の直接蒸気噴射により速やかな昇温、炊飯が可能であることが明らかになった。
【0048】
炊飯時間を15分以上とすることにより、良好な炊飯特性が得られることが明らかになった(試験2)。そのため、炊飯時間をさらに長くした場合の米飯品質の変化を検証した。その結果、炊飯時間を長くすることにより、得られた米飯は柔らかく、粘りが増える傾向にあり、ほぐれは悪くなっていた。(試験2,3,4)。
【0049】
試験2と5の比較から、間接加熱手段3(パイプ)内の水蒸気圧力を高くすることにより、パイプ内の飽和水蒸気の温度を変化させることができた。パイプ内の水蒸気圧力を高くすると、炊飯米の硬さは変わらず、粘り、ほぐれが向上し、粒感がわずかに下がった。
【0050】
炊飯工程の前に行った加圧加熱殺菌工程は、粒の粘りおよび粒感へ影響を与えることが分かった。今回サンプルでは加熱時間の長い(8秒)サンプルの方が粘りおよび粒感が強いことが明らかになった。
【0051】
(考察)
以上から、装置内の蒸気の循環、間接加熱の設置を組み合わせることによって、米飯の品質などを調整することが可能であることが示唆された。具体的に従来装置では炊飯に30分程要していたが、本装置では15分程度に短縮された。また、炊飯時間の短縮(従来法では30分)、蒸気の適切な使用により、エネルギー使用量の削減が示唆された。
【0052】
[実施例2]殺菌工程を有さない条件での炊飯
次に、殺菌工程を有さず、直接浸漬米を本発明の装置によって炊飯することを検討した。具体的に、以下のようにして、炊飯米を製造した。
1)コシヒカリ精米を100g計量した。
2)洗米後、所定の量の水を加えて20℃で70分浸漬した。
3)浸漬米98gをプラスチック容器(商品名:ラミコンカップ、東罐興業株式会社製、寸法:29mm×118mm×179mm)に充填した。
4)20~25℃の水75gをプラスチック容器に充填した。
6)浸漬米と水が充填されたプラスチックトレイをゴンドラ10に搭載し、実施例1と同じ方法で容体1内を移送した。
7)以下の条件で炊飯を行った。
炊飯時間:30分間
蒸気圧:0.30MPa
直接加熱手段:ON
間接加熱手段:上、中、下ともON
蒸気使用量:7500g(15分間の総量)
8)炊飯後にプラスチック容器にシールをして密封し、蒸らし工程を経て、炊飯米を得た。
【0053】
[比較例2]
容体1内に蒸気を満たし、浸漬米を30分間蒸煮することで炊飯を行った。本例では、前記装置を従来の装置として用い、容体1内を加温し、蒸気を満たした後に、浸漬米100gが充填されたプラスチックトレイを容体1内に装入した。その後、プラスチックトレイに炊き水75gを添加し、容体1の導入口を閉じ、そのまま30分間、蒸煮庫内で米を加熱した。このようにして炊飯米を製造し、取り出した。
【0054】
比較例2で得た炊飯米は、表面がべちゃついており、粒が柔らかい食感であったが、十分に加熱されており、良好に喫食することができた。一方、実施例2で得た炊飯米では、粒感が残っており、ほぐれが良いご飯が得られた。食感は粒自体が比較的硬めの状態であり、外観も米粒がはっきりしていた。本発明の装置は従来の装置に比べて米飯表面の加熱温度が異なる。そのため、米の表面の澱粉の状態も異なるので、前記の差が生じたと推察される。以上、本発明の炊飯装置は、加圧加熱殺菌工程がない状態でも、十分に炊飯を行い、良好な米飯が得られることが明らかになった。また、加熱温度が異なることから従来の蒸煮することによる炊飯とは違った物性のご飯を製造できる可能性があることが示唆された。
【符号の説明】
【0055】
100 加熱調理装置
1 容体
3 間接加熱手段
5-1 導入口付近の直接加熱手段(水蒸気供給手段を兼ねることも可)
5-2 加工工程中の直接加熱手段(水蒸気供給手段を兼ねることも可)
5’ 水蒸気供給手段(直接加熱手段を兼ねることも可)
7 移送手段
9 排気管
10 ゴンドラ
図1
図2
図3