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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024853
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】生体情報表示装置および生体情報表示方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20240216BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A61B5/02 C
A61B5/0245 100D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127788
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 喜晴
(72)【発明者】
【氏名】須郷 義広
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 紗也香
(72)【発明者】
【氏名】酒井 智之
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA08
4C017AA14
4C017AC16
4C017AC27
4C017BC11
4C017BD02
4C017FF05
(57)【要約】
【課題】被験者の状態をより正確に監視することができる生体情報表示装置および生体情報表示方法を提供する。
【解決手段】生体情報表示装置Mは、被験者の心拍数を取得する心拍数取得部12と、被験者の呼吸数を取得する呼吸数取得部41と、被験者の循環動態パラメータを算出し、所定期間に算出した複数の循環動態パラメータに基づいて、循環動態パラメータの呼吸性変動を算出する循環動態算出部17と、当該呼吸性変動を表示部71に出力する制御を行う表示制御部72とを備え、循環動態算出部17は、心拍数および呼吸数を用いて1回分の呼吸周期に含まれる拍数である1呼吸中拍数を算出し、表示制御部72は、所定期間の長さの設定画面であって、1呼吸中拍数を含む設定画面を表示部71に出力する制御を行い、循環動態算出部17は、設定画面における設定内容に基づいて所定期間の長さを設定し、設定後の所定期間における呼吸性変動を算出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の心拍数を取得する心拍数取得部と、
前記被験者の呼吸数を取得する呼吸数取得部と、
前記被験者の循環動態パラメータを算出し、所定期間に算出した複数の前記循環動態パラメータに基づいて、前記循環動態パラメータの呼吸性変動を算出する循環動態算出部と、
前記呼吸性変動を表示部に出力する制御を行う表示制御部と、を備え、
前記循環動態算出部は、さらに、前記心拍数および前記呼吸数を用いて1回分の呼吸周期に含まれる拍数である1呼吸中拍数を算出し、
前記表示制御部は、さらに、前記所定期間の長さを設定するための設定画面であって、前記1呼吸中拍数を含む前記設定画面を前記表示部に出力する制御を行い、
前記循環動態算出部は、前記設定画面において設定された内容を示す設定情報を取得し、取得した前記設定情報に基づいて前記所定期間の長さを設定し、設定後の前記所定期間における前記呼吸性変動を算出する、生体情報表示装置。
【請求項2】
前記所定期間の長さは、1または複数回分の呼吸周期の長さであり、
前記表示制御部は、前記設定画面において、前記所定期間に含まれる呼吸周期の数を設定可能に表示する制御を行い、
前記循環動態算出部は、前記被験者の呼吸の開始タイミングおよび終了タイミングの少なくともいずれか一方に基づいて検出された呼吸周期、ならびに前記設定画面において設定された呼吸周期の数に基づいて、前記所定期間の長さを設定する、請求項1に記載の生体情報表示装置。
【請求項3】
前記呼吸数取得部は、さらに、前記被験者の呼気における二酸化炭素の濃度を検出する検出機からの検出結果に基づいて、前記被験者の呼吸の開始タイミングおよび終了タイミングの少なくともいずれか一方を判断する、請求項2に記載の生体情報表示装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、さらに、前記設定画面において、前記所定期間の長さの自動変更を設定可能に表示する制御を行い、
前記循環動態算出部は、前記設定画面において前記所定期間の長さの自動変更が設定された場合であり、かつ前記所定期間に算出した前記循環動態パラメータのデータ数が閾値未満である場合、前記所定期間を長く設定する、請求項1または請求項2に記載の生体情報表示装置。
【請求項5】
前記所定期間の長さは、1または複数回分の呼吸周期の長さであり、
前記循環動態算出部は、前記所定期間の長さの自動変更を行う場合、前記データ数が前記閾値以上になるまで前記所定期間に含まれる呼吸周期の数を増やし、前記被験者の呼吸の開始タイミングおよび終了タイミングの少なくともいずれか一方に基づいて検出された呼吸周期、ならびに前記所定期間に含まれる呼吸周期の数に基づいて、前記所定期間の長さを設定する、請求項4に記載の生体情報表示装置。
【請求項6】
前記循環動態算出部は、前記所定期間に算出した前記循環動態パラメータのデータ数が閾値未満である場合、前記呼吸性変動の算出を行わない、請求項1または請求項2に記載の生体情報表示装置。
【請求項7】
被験者の心拍数を取得するステップと、
前記被験者の呼吸数を取得するステップと、
前記心拍数および前記呼吸数を用いて1回分の呼吸周期に含まれる拍数である1呼吸中拍数を算出するステップと、
前記被験者の循環動態パラメータを算出するステップと、
所定期間の長さを設定するための設定画面であって、前記1呼吸中拍数を含む前記設定画面を表示部に出力する制御を行うステップと、
前記設定画面において設定された内容に基づいて前記所定期間の長さを設定するステップと、
設定された前記所定期間に算出された複数の前記循環動態パラメータに基づいて、前記循環動態パラメータの呼吸性変動を算出するステップと、
前記呼吸性変動を前記表示部に出力する制御を行うステップとを含む、生体情報表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体情報表示装置および生体情報表示方法に関するものである。
【0002】
従来、被験者へ輸液の投与などの処置を行う場合、当該被験者の状態を確認するための有用なパラメータとして、当該被験者の一回拍出量の呼吸性変動(以下、「SVV(Stroke Volume Variation)」とも称する。)、または脈圧の呼吸性変動(以下、「PPV(Pulse Pressure Variation)」とも称する。)など循環動態に関するパラメータ(以下、「循環動態パラメータ」と称する)の変化が用いられる。
【0003】
具体的には、呼吸によって胸腔内の圧力が変動すると、血液が押し出されて一回拍出量や脈圧が変動する。循環血液量が少ない状態ではSVVやPPVの変動が大きくなるため、SVVやPPVの値が大きいことは循環血液量が不足していることを示す。また、特許文献1ではSVVを解析する装置におけるアーチファクト除去方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-55961号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Daniel De Backer,Fabio Silvio Taccone,Roland Holsten,Fayssal Ibrahimi,Jean-Louis Vincent、“Influence of Respiratory Rate on Stroke Volume Variation in Mechanically Ventilated Patients”、2009年5月発行、Anesthesiology,V 110,No5 p.1092-1097
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載の装置では、1回分の呼吸周期におけるSVVを算出する。しかしながら、1回分の呼吸周期に含まれる拍数が少ない場合があり、このような場合には、SVVの算出に用いられる一回拍出量のデータ数が十分ではないため、被験者の状態をより正確に監視することのできる技術が望まれる。
【0007】
本開示は、被験者の状態をより正確に監視することができる生体情報表示装置および生体情報表示方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係わる生体情報表示装置は、
被験者の心拍数を取得する心拍数取得部と、
前記被験者の呼吸数を取得する呼吸数取得部と、
前記被験者の循環動態パラメータを算出し、所定期間に算出した複数の前記循環動態パラメータに基づいて、前記循環動態パラメータの呼吸性変動を算出する循環動態算出部と、
前記呼吸性変動を表示部に出力する制御を行う表示制御部と、を備え、
前記循環動態算出部は、さらに、前記心拍数および前記呼吸数を用いて1回分の呼吸周期に含まれる拍数である1呼吸中拍数を算出し、
前記表示制御部は、さらに、前記所定期間の長さを設定するための設定画面であって、前記1呼吸中拍数を含む前記設定画面を前記表示部に出力する制御を行い、
前記循環動態算出部は、前記設定画面において設定された内容を示す設定情報を取得し、取得した前記設定情報に基づいて前記所定期間の長さを設定し、設定後の前記所定期間における前記呼吸性変動を算出する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、被験者の状態をより正確に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の一態様に係る生体情報処理装置の構成を示す図である。
図2図2は、図1に示す生体情報処理装置の一例であるモニタ装置を用いた測定形態の一例を示す図である。
図3図3は、図1に示す循環動態算出部の構成を示す図である。
図4図4は、図1に示す表示部に表示される画面の一例を示す図である。
図5図5は、図4に示す設定画面において設定される周期数に応じて、呼吸性変動の算出に用いられる使用データ数が変化することを説明するための図である。
図6図6は、図3に示す期間設定部による所定期間の長さの変更が作業者の手動によって行われる状態を説明するための図である。
図7図7は、図3に示す期間設定部による所定期間の長さの変更が自動的に行われる状態を説明するための図である。
図8図8は、図3に示す期間設定部による所定期間の長さの変更が自動的に行われる状態を説明するための図である。
図9図9は、図3に示す期間設定部による所定期間の長さの変更が自動的に行われる状態を説明するための図である。
図10図10は、本開示の実施の形態に係る生体情報処理装置による、循環動態パラメータの呼吸性変動の算出および表示が行われる際の動作の流れの概要を説明するためのフローチャートである。
図11図11は、図1に示す循環動態算出部が手動モードで動作する場合における動作の流れを説明するためのフローチャートである。
図12図12は、図1に示す循環動態算出部が自動モードで動作する場合における動作の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る生体情報表示装置および生体情報表示方法の実施形態の一例を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
[生体情報処理装置の構成]
図1は、本開示の一態様に係る生体情報処理装置(生体情報表示装置)Mの構成を示す図である。図2は、図1に示す生体情報処理装置Mの一例であるモニタ装置M1を用いた測定形態の一例を示す図である。
【0013】
生体情報処理装置Mは、被験者の循環動態に関する循環動態パラメータの算出および表示制御などを行う表示装置1と、心臓の収縮期および拡張期における血圧を測定する血圧測定装置2と、呼吸測定装置4と、受付部6と、心電図電極31と、光電脈波検出センサ32と、測定データ送信器65、表示部71とを備える。
【0014】
血圧測定装置2は、非観血式血圧(Non Invasive Blood Pressure,NIBP)測定方法によって被験者の血圧を測定する装置であり、カフ21と、排気弁22と、加圧ポンプ23と、圧力センサ24と、カフ圧検出部25と、A/D変換器26とを含む。具体的には、血圧測定装置2は、図2に示すように、カフ21を被験者の上腕部に装着して血圧の測定を行う。
【0015】
カフ21は、排気弁22の開閉によって、その内部が大気に対し開放または閉塞される。排気弁22は、表示装置1から出力される制御信号に基づいて開閉される。また、カフ21には加圧ポンプ23から空気が供給される。空気の供給は表示装置1から出力される制御信号に基づいて制御される。
【0016】
また、カフ21には圧力センサ24が接続されており、圧力センサ24のセンサ出力がカフ圧検出部25によって検出される。カフ圧検出部25からのセンサ出力は、A/D変換器26によってディジタル信号に変換された後、表示装置1の脈圧取得部11に入力される。
【0017】
心電図電極31は、図2に示すように、被験者の胸部に装着され、心電図のR波発生時点を時間間隔の基準点として測定する。また、心電図電極31は、測定データ送信器65と電気的に接続されている。心電図電極31による測定データは、測定データ送信器65に入力され、測定データ送信器65から、図1に示す表示装置1における時間間隔検出部36へ無線送信される。
【0018】
光電脈波検出センサ32は、図2に示すように、指など被験者の末梢部に装着し、例えば、脈波を測定する。心電図電極31から得られた測定データおよび光電脈波検出センサ32から得られた脈波により、脈波伝播時間(Pulse Wave Transit Time,PWTT)が得られる。光電脈波検出センサ32は、測定データ送信器65と電気的に接続されている。光電脈波検出センサ32による測定データは、測定データ送信器65に入力され、測定データ送信器65から、図1に示す表示装置1における脈波検出部33へ無線送信される。
【0019】
呼吸測定装置4は、被験者の呼吸を連続的に測定する。呼吸測定装置4によって測定された測定データは、表示装置1の呼吸数取得部41に入力される。
【0020】
受付部6は、作業者の入力操作を受け付けると共に、当該入力操作に対応する指示信号を生成する。受付部6は、例えば、後述する表示部71に重ねて配置されたタッチパネル、表示装置1の筐体に設けられた操作ボタン、または図示しない入出力インターフェース(例えば、USBインターフェース等)に接続されたマウスもしくはキーボード等である。受付部6によって生成された指示信号は、表示装置1に入力される。
【0021】
[表示装置の構成]
表示装置1は、脈波検出部33と、A/D変換器34と、時間間隔検出部36と、算出部70と、表示制御部72と、受信部74とを備える。算出部70は、脈圧取得部11と、心拍数取得部12と、脈波伝播時間取得部13と、脈波伝播時間呼吸性変動取得部14と、脈波振幅取得部15と、脈波振幅呼吸性変動取得部16と、循環動態算出部17と、固有係数算出部18と、記憶部19と、呼吸数取得部41とを含む。
【0022】
時間間隔検出部36は、心電図電極31から測定データ送信器65を介して受信した測定データに基づいて心電図波形を取得する。また、時間間隔検出部36は、測定データをディジタル信号に変換して、算出部70の心拍数取得部12および脈波伝播時間取得部13へ出力する。
【0023】
脈波検出部33は、光電脈波検出センサ32から測定データ送信器65を介して受信した測定データに基づいて、光電脈波の末梢部の波形を取得する。そして、脈波検出部33は、当該測定データをA/D変換器34へ出力する。A/D変換器34は、当該測定データをディジタル信号に変換して、算出部70の脈波伝播時間取得部13および脈波振幅取得部15へ出力する。
【0024】
脈圧取得部11は、血圧測定装置2によって測定された血圧データに基づいて、被験者の脈圧(Pulse Pressure,PP)を測定する。脈圧PPは、例えば、収縮期(最高)血圧値と拡張期(最低)血圧値との差から算出される。測定された脈圧PPは、固有係数算出部18に入力される。また、脈圧取得部11は、例えば、脈圧PPと現在時刻とを対応づけて記憶部19に保存する。
【0025】
心拍数取得部12は、時間間隔検出部36によって測定された基準点(R波発生時点)に基づいて1分間の拍動の数(心拍数:Heart Rate,HR)を算出する。算出された心拍数HRは、循環動態算出部17に入力される。
【0026】
脈波伝播時間取得部13は、時間間隔検出部36によって測定された基準点(R波発生時点)と、光電脈波検出センサ32によって検出された末梢部の波形とに基づいて、心電図のR波から末梢のSpO脈波までの到達時間である脈波伝播時間PWTTを算出する。そして、脈波伝播時間取得部13は、算出した脈波伝播時間PWTTを、循環動態算出部17および脈波伝播時間呼吸性変動取得部14へ出力する。
【0027】
呼吸数取得部41は、呼吸測定装置4によって測定された呼吸データに基づいて、被験者の呼吸周期を検出する。例えば、呼吸測定装置4は、呼気中における二酸化炭素の濃度を検出する検出機である。呼吸数取得部41は、呼吸測定装置4による検出結果に基づいて、被験者の呼吸の開始タイミングおよび終了タイミングの少なくともいずれか一方を特定する。そして、呼吸数取得部41は、特定したこれらのタイミングに基づいて、被験者の呼吸周期を検出する。
【0028】
また、呼吸数取得部41は、呼吸データに基づいて、被験者の1分間当たりの呼吸数(Respiration Rate,RR)を検出する。そして、呼吸数取得部41は、検出した呼吸周期および呼吸数RRを、脈波伝播時間呼吸性変動取得部14、脈波振幅呼吸性変動取得部16および循環動態算出部17に入力する。例えば、呼吸数取得部41は、呼吸周期の通知として、呼吸周期の開始タイミングおよび終了タイミングの少なくともいずれか一方を通知する。
【0029】
なお、呼吸測定装置4は、呼気中における二酸化炭素の濃度を検出する装置に限らず、インピーダンス変化を用いて被験者の呼吸を測定する装置であってもよいし、麻酔器から出力される麻酔ガスを測定する装置などであってもよい。
【0030】
また、生体情報処理装置Mは、呼吸測定装置4を備えない構成であってもよい。この場合、生体情報処理装置Mは、例えば、1回分の呼吸周期の長さを20秒などの固定値として、呼吸周期の開始タイミングおよび終了タイミングの少なくともいずれか一方を決定する。
【0031】
脈波伝播時間呼吸性変動取得部14は、脈波伝播時間取得部13により算出された脈波伝播時間PWTTと、呼吸数取得部41によって検出された呼吸周期とに基づいて、脈波伝播時間PWTTの呼吸性変動を測定する。測定された脈波伝播時間PWTTの呼吸性変動を示す測定データは、固有係数算出部18に入力される。
【0032】
脈波振幅取得部15は、脈波検出部33により取得された末梢部の波形から脈波の振幅を測定する。測定された脈波振幅は、脈波振幅呼吸性変動取得部16に入力される。
【0033】
脈波振幅呼吸性変動取得部16は、脈波振幅取得部15によって測定された脈波振幅と、呼吸数取得部41によって検出された呼吸周期とに基づいて、脈波振幅の呼吸性変動(Pulse Amplitude Variation,PAV)を測定する。測定された脈波振幅の呼吸性変動PAVは、固有係数算出部18に入力される。
【0034】
固有係数算出部18は、脈圧取得部11によって測定された脈圧PPと、脈波伝播時間呼吸性変動取得部14によって測定された脈波伝播時間PWTTの呼吸性変動と、脈波振幅呼吸性変動取得部16によって測定された脈波振幅の呼吸性変動PAVとに基づいて、被験者固有の係数を算出する。算出された係数は、例えば、後述する係数K,α,βであり、循環動態算出部17に入力される。
【0035】
[循環動態算出部の構成]
(循環動態パラメータの呼吸性変動の算出)
図3は、図1に示す循環動態算出部17の構成を示す図である。図3に示すように、循環動態算出部17は、パラメータ算出部81と、HR/RR算出部82と、期間設定部83と、変動率算出部84とを含む。
【0036】
パラメータ算出部81は、心拍数取得部12によって算出された心拍数HRと、脈波伝播時間取得部13によって測定された脈波伝播時間PWTTと、固有係数算出部18によって算出された係数K,α,βとに基づいて、被験者の循環動態パラメータを算出する。パラメータ算出部81は、循環動態パラメータとして、例えば、心臓の収縮期に大動脈に流入した血液の流量(一回拍出量:Stroke Volume,SV)を算出する。
【0037】
一回拍出量SVと脈波伝播時間PWTTとの間には、式1に示すような相関がある。式1において、K,α,βは被験者固有の係数である。
SV=K*(α*PWTT+β)・・・(式1)
【0038】
パラメータ算出部81は、固有係数算出部18によって算出された係数K,α,βを式1に代入する。また、パラメータ算出部81は、例えば、脈波伝播時間取得部13から受けた脈波伝播時間PWTTを、式1のPWTTに代入する。これにより、パラメータ算出部81は、一回拍出量SVを算出することができる。パラメータ算出部81により算出された一回拍出量SVを、以下「一回拍出量esSV」と称する。
【0039】
パラメータ算出部81は、例えば、一回拍出量esSVの算出を定期的に行い、算出した一回拍出量esSVと算出タイミングとを対応づけて、図1に示す記憶部19に保存する。
【0040】
変動率算出部84は、例えば、呼吸数取得部41により新たに検出された呼吸周期の入力を受けると、当該呼吸周期に基づいて、所定期間における循環動態パラメータの呼吸性変動を算出する。所定期間は、直近の1または複数回分の呼吸周期の長さである。
【0041】
ここでは、所定期間は、呼吸数取得部41により検出された直近の1回分の呼吸周期であるとする。この場合、変動率算出部84は、記憶部19に保存されている複数の一回拍出量esSVのうち、直近の1回分の呼吸周期に算出された複数の一回拍出量esSVを読み出す。
【0042】
そして、変動率算出部84は、読み出した一回拍出量esSVのうちの最大値esSVmax、および読み出した一回拍出量esSVのうちの最小値esSVminを特定する。そして、変動率算出部84は、最大値esSVmaxおよび最小値esSVminを用いることにより、一回拍出量esSVの呼吸性変動(Stroke Volume Variation,SVV)を、以下の式2のように算出することができる。変動率算出部84は、算出した呼吸性変動SVVを記憶部19に保存する。
SVV=2*(esSVmax-esSVmin)/(esSVmax+esSVmin)・・・(式2)
【0043】
変動率算出部84は、一回拍出量esSVの呼吸性変動SVVの代わりに、所定期間における循環動態パラメータの呼吸性変動として、図1に示す脈圧取得部11により測定された脈圧PPの呼吸性変動(Pulse Pressure Variation,PPV)を算出してもよい。
【0044】
例えば、変動率算出部84は、呼吸数取得部41により新たに検出された呼吸周期の入力を受けると、記憶部19に保存されている複数の脈圧PPのうち、直近の1回分の呼吸周期に測定された複数の脈圧PPを読み出す。
【0045】
そして、変動率算出部84は、読み出した脈圧PPのうちの最大値PPmax、および読み出した脈圧PPのうちの最小値PPminを特定する。そして、変動率算出部84は、最大値PPmaxおよび最小値PPminを用いることにより、脈圧PPの呼吸性変動PPVを、以下の式3のように算出することができる。変動率算出部84は、算出した呼吸性変動PPVを記憶部19に保存する。
PPV=2*(PPmax-PPmin)/(PPmax+PPmin)・・・(式3)
【0046】
(呼吸性変動の表示)
表示制御部72は、変動率算出部84により算出された循環動態パラメータおよび循環動態パラメータの呼吸性変動を、モニタ等である表示部71に出力する制御を行う。これにより、表示部71には、循環動態パラメータおよび循環動態パラメータの呼吸性変動を含む画面が表示される。
【0047】
図4は、図1に示す表示部71に表示される画面の一例を示す図である。図4に示すように、表示部71に表示される画面には、被験者の最新の心拍数HR、血圧値、非侵襲連続推定心拍出量esCCOおよび一回拍出量esSVなどが表示される。また、当該画面には、後述するように、循環動態パラメータに関する設定を行うための領域Rが含まれる。領域Rは、例えば、画面に表示される図示しないメニューボタンが作業者により選択された場合に、表示される。
【0048】
表示制御部72は、例えば定期的に記憶部19を参照し、最新の循環動態パラメータが画面に表示されるように制御する。図4に示す例では、最新の循環動態パラメータの一例として、非侵襲連続推定心拍出量esCCOの値「3.73」、および一回拍出量esSVの値「47」が表示されている。
【0049】
また、表示制御部72は、例えば定期的に記憶部19を参照し、最新の循環動態パラメータの呼吸性変動が画面に表示されるように制御する。図4に示す例では、矢印Aに示すように、最新の循環動態パラメータの呼吸性変動の一例として、呼吸性変動SVVの値「3.1」が表示されている。
【0050】
(所定期間の設定)
ここで、所定期間が直近の1回分の呼吸周期である場合、当該所定期間に含まれる拍数が少ない場合があり、このような場合には、呼吸性変動の算出に用いられる循環動態パラメータのデータ数(以下、「使用データ数」と称する)が十分ではないという問題がある。
【0051】
具体的には、非特許文献1には、循環動態パラメータの呼吸性変動を検出する条件として、心拍数HRを呼吸数RRで除した値(HR/RR)が3.6より大きいことが記載されている。HR/RRの値は、1回分の呼吸周期に含まれる心拍数に相当する。以下、HR/RRを「1呼吸中拍数」とも称する。一般的に、健康な成人では、心拍数HRが約80であり、呼吸数RRが約12であり、1呼吸中拍数HR/RRが約6.7である。
【0052】
心拍数HRが小さい、または呼吸数RRが大きいことにより、1呼吸中拍数HR/RRが3.6以下である場合、1回分の呼吸周期において算出された循環動態パラメータのデータ数、すなわち使用データ数が不十分である。このため、図3に示す循環動態算出部17は、呼吸性変動SVV,PPVの算出に用いられる所定期間の長さを変更することができる。
【0053】
(a)設定画面の表示
図4に示すように、領域Rには、複数のタブTbが含まれる。これら複数のタブTbには、例えば、循環動態パラメータに関する表示を選択するためのタブTb1、および所定期間の設定画面の表示を選択するためのタブTb2が含まれる。タブTb1には、例えば「esCCO」の文字が付されている。タブTb2には、例えば「esSVV設定」の文字が付されている。図4では、作業者が、タブTb1を選択し、さらに、タブTb2を選択する入力操作を、図1に示す受付部6に対して行った場合に表示される画面を示している。
【0054】
受付部6は、上記のような入力操作が行われると、当該入力操作の内容を示す指示信号を表示装置1の受信部74へ出力する。受信部74は、受付部6から出力された当該指示信号を受信すると、当該指示信号を表示制御部72へ出力する。表示制御部72は、受信部74から出力された当該指示信号を受けると、図4に示すような設定画面が領域Rに表示されるように制御する。
【0055】
設定画面には、所定期間の長さを手動で変更することを選択するための選択ボタンB11、所定期間の長さの自動変更を選択するための選択ボタンB12、所定期間に含まれる呼吸周期の数(以下、単に「周期数」とも称する)が表示されるウィンドウW1、1呼吸中拍数HR/RRの値が表示されるウィンドウW2、周期数の増加を選択するための選択ボタンB21、および周期数の減少を選択するための選択ボタンB22が含まれる。
【0056】
図3に示すHR/RR算出部82は、心拍数取得部12によって算出された心拍数HR、および呼吸数取得部41によって検出された呼吸数RRを用いて、例えば定期的に、1呼吸中拍数HR/RRを算出する。そして、HR/RR算出部82は、算出した1呼吸中拍数HR/RRを記憶部19に保存する。表示制御部72は、記憶部19に保存されている最新の1呼吸中拍数HR/RRをウィンドウW2に表示する制御を行う。
【0057】
作業者は、選択ボタンB11および選択ボタンB12のいずれか一方を選択することができる。作業者が選択ボタンB11および選択ボタンB12のいずれも選択していない状態においては、選択ボタンB11が自動的に選択されている。すなわち、このような状態では、循環動態算出部17は、後述する手動モードで動作し、作業者による操作を受けない状態においては所定期間の長さの変更を行わない。
【0058】
また、作業者は、選択ボタンB21および選択ボタンB22を選択することができる。例えば、作業者が、選択ボタンB21を選択する操作を行ったとする。この場合、図1に示す受付部6は、当該操作の内容を示す指示信号(設定情報)を受信部74へ出力する。受信部74は、受付部6から出力された当該指示信号を受信すると、当該指示信号を表示制御部72および算出部70へ出力する。表示制御部72は、受信部74から出力された当該指示信号を受けると、ウィンドウW1に表示される数字を1つ増加させる。
【0059】
算出部70のうち、図3に示す期間設定部83は、呼吸数取得部41により検出された呼吸周期、および設定画面において設定された周期数に基づいて、所定期間の長さを設定する。より詳細には、期間設定部83は、選択ボタンB21が選択された旨の指示信号を受信部74から受けると、当該指示信号に基づいて周期数を1つ増加させて、増加後の周期数の期間が所定期間となるように、所定期間の長さを再設定する。そして、期間設定部83は、再設定した所定期間を変動率算出部84に通知する。
【0060】
また、例えば、作業者が選択ボタンB22を選択する操作を受付部6に対して行ったとする。この場合、受付部6は、当該操作の内容を示す指示信号を受信部74へ出力する。受信部74は、受付部6から出力された当該指示信号を受信すると、当該指示信号を表示制御部72および算出部70へ出力する。表示制御部72は、受信部74から出力された当該指示信号を受けると、ウィンドウW1に表示される数字を1つ減少させる。
【0061】
算出部70のうちの期間設定部83は、選択ボタンB22が選択された旨の指示信号を受信部74から受けると、当該指示信号に基づいて周期数を1つ減少させて、減少後の周期数の期間が所定期間となるように、所定期間の長さを再設定する。そして、期間設定部83は、再設定した所定期間を変動率算出部84に通知する。
【0062】
変動率算出部84は、期間設定部83から通知された所定期間に基づいて、当該所定期間に算出された複数の循環動態パラメータを用いて、循環動態パラメータの呼吸性変動SVV,PPVを算出する。
【0063】
図5は、図4に示す設定画面において設定される周期数に応じて、呼吸性変動SVV,PPVの算出に用いられる使用データ数が変化することを説明するための図である。図5では、図1に示す呼吸測定装置4によって測定された測定データに基づく呼吸波形をグラフG1で示し、図1に示す心電図電極31による測定データに基づく心電図波形をグラフG2で示している。
【0064】
グラフG1に示す呼吸波形およびグラフG2に示す心電図波形が得られた状態においては、所定期間に含まれる周期数が「1」である場合、当該所定期間に含まれる拍数は「3」となる。また、所定期間に含まれる周期数が「2」である場合、当該所定期間に含まれる拍数は「5」となる。このように、周期数が増加するほど、拍数が増加し、呼吸性変動SVV,PPVの算出に用いられる使用データ数が増加する。
【0065】
(b)手動モード
図6は、図3に示す期間設定部83による所定期間の長さの変更が作業者の手動によって行われる状態を説明するための図である。ここでは、循環動態パラメータの呼吸性変動として、一回拍出量esSVの呼吸性変動SVVが算出および表示される場合について説明する。
【0066】
図6では、図4と同様に、領域Rに設定画面が表示されている。また、設定画面において、選択ボタンB11が選択されているとする。この場合、循環動態算出部17は、手動モードで動作する。
【0067】
図6に示すように、ウィンドウW1には「1」が表示され、ウィンドウW2には「1.8」が表示されているとする。以下の説明において、1呼吸中拍数HR/RRの閾値を「3.6」とする。この場合、1呼吸中拍数HR/RR「1.8」は、閾値未満である。
【0068】
表示制御部72は、1呼吸中拍数HR/RRが閾値未満である場合、例えば、画面において、ウィンドウW2の縁の色が赤で表示されるなど、1呼吸中拍数HR/RRが閾値未満であることが作業者に認識されやすくなるように制御する。
【0069】
変動率算出部84は、呼吸数取得部41により呼吸周期の通知を新たに受けると、直近の1回分の呼吸周期に算出された複数の一回拍出量esSVを読み出す。上記のように、1呼吸中拍数HR/RRが閾値未満である場合、変動率算出部84によって読み出される使用データ数も閾値未満となる。このような場合、変動率算出部84は、呼吸性変動SVVの算出を行わず、例えば、エラーであることを示すエラー値を記憶部19に保存する。
【0070】
表示制御部72は、記憶部19に保存されている最新の循環動態パラメータの呼吸性変動として、エラー値を読み出す。そして、表示制御部72は、例えば、図6の矢印Aに示すように、循環動態パラメータの呼吸性変動SVVが算出不可であることを示す「---」が画面に表示されるように制御する。
【0071】
このような状態において、作業者が選択ボタンB21を選択する操作を行ったとする。この場合、ウィンドウW1に表示される数は「1」から「2」に変更される。期間設定部83は、周期数を「1」から「2」に増加させ、増加後の周期数「2」を用いて所定期間を設定する。そして、期間設定部83は、設定した所定期間を変動率算出部84に通知する。
【0072】
変動率算出部84は、期間設定部83からの所定期間の通知を受けると、当該所定期間に算出された複数の一回拍出量esSVを読み出す。そして、変動率算出部84は、読み出した一回拍出量esSVのデータ数、すなわち使用データ数が閾値以上である場合、これら複数の一回拍出量esSVを用いて呼吸性変動SVVを算出する。これにより、画面には、呼吸性変動SVVが表示されることになる。
【0073】
なお、変動率算出部84は、使用データ数が依然として閾値未満である場合、呼吸性変動SVVの算出ができないとして、例えばエラー値を記憶部19に保存する。この場合、画面では呼吸性変動SVVが算出不可であることを示す表示が継続される。
【0074】
(c)自動モード
図7から図9は、図3に示す期間設定部83による所定期間の長さの変更が自動的に行われる状態を説明するための図である。図7から図9では、設定画面において、作業者により選択ボタンB12が選択された場合における画面を示している。
【0075】
図1に示す受付部6は、上記のような入力操作が行われると、当該入力操作の内容を示す指示信号を表示装置1の受信部74へ出力する。受信部74は、受付部6から出力された当該指示信号を受信すると、当該指示信号を算出部70へ出力する。
【0076】
算出部70における循環動態算出部17は、選択ボタンB12が選択されたことを示す指示信号を受けるまでの間は、上述した手動モードで動作する。一方、循環動態算出部17は、当該指示信号を受けた場合には、自動モードで動作する。
【0077】
より詳細には、期間設定部83は、使用データ数が閾値以上となるまで、所定期間が長くなるように周期数を増加させる。具体的には、図7に示すように、ウィンドウW2に表示される1呼吸中拍数HR/RRが「1.8」であるとする。この場合、変動率算出部84は、図6に示す場合と同様に、使用データ数が閾値未満であることを期間設定部83に通知する。
【0078】
期間設定部83は、使用データ数が閾値未満であることの通知を受けると、周期数を1つ増加させて所定期間を再設定し、再設定後の所定期間を変動率算出部84および表示制御部72に通知する。また、期間設定部83は、増加後の周期数を表示制御部72に通知する。
【0079】
表示制御部72は、期間設定部83からの周期数の通知を受けると、通知された周期数がウィンドウW1に表示されるように制御する。具体的には、表示制御部72は、図7においてウィンドウW1に表示されていた「1」を、図8に示すように、「2」に変更する制御を行う。
【0080】
変動率算出部84は、期間設定部83からの所定期間の通知を受けると、通知された所定期間に算出された複数の一回拍出量esSVを読み出して、呼吸性変動SVVの算出を試みる。
【0081】
ここでは、変動率算出部84によって読み出された2回分の呼吸周期に含まれる使用データ数が依然として閾値未満であるとする。この場合、図8の矢印Aに示すように、画面では呼吸性変動SVVが算出不可であることを示す表示が継続される。また、変動率算出部84は、使用データ数が閾値未満であることを期間設定部83に再び通知する。
【0082】
期間設定部83は、使用データ数が閾値未満であることの通知を再び受けると、周期数を1つ増加させて所定期間を再設定し、再設定後の所定期間を変動率算出部84および表示制御部72に通知する。また、期間設定部83は、増加後の周期数を表示制御部72に通知する。
【0083】
表示制御部72は、期間設定部83からの周期数の通知を受けると、図8においてウィンドウW1に表示されていた「2」を、図9に示すように、「3」に変更する制御を行う。
【0084】
変動率算出部84は、期間設定部83からの所定期間の通知を受けると、通知された所定期間に算出された複数の一回拍出量esSVを読み出して、呼吸性変動SVVの算出を試みる。ここでは、変動率算出部84によって読み出された3回分の呼吸周期に含まれる使用データ数が閾値以上であり、呼吸性変動SVVが算出されたとする。この場合、図9の矢印Aに示すように、画面には呼吸性変動SVVの値、例えば「3.1」が表示される。また、この場合、例えば、ウィンドウW2の縁の赤色が消える。
【0085】
[動作の流れ]
(全体動作の概要)
図10は、本開示の実施の形態に係る生体情報処理装置Mによる、循環動態パラメータの呼吸性変動の算出および表示が行われる際の動作の流れの概要を説明するためのフローチャートである。ここでは、循環動態パラメータの呼吸性変動として、一回拍出量esSVの呼吸性変動SVVが算出および表示される場合について説明する。
【0086】
図10を参照して、まず、作業者が生体情報処理装置Mを起動させると、算出部70における各取得部が測定等を行う。具体的には、心拍数取得部12は、心拍数HRを算出し(ステップS11)、呼吸数取得部41は、呼吸周期および呼吸数RRを検出する(ステップS12)。
【0087】
次に、循環動態算出部17におけるHR/RR算出部82は、ステップS11において算出された心拍数HR、およびステップS12において検出された呼吸数RRを用いて、1呼吸中拍数HR/RRを算出する。そして、HR/RR算出部82は、算出した1呼吸中拍数HR/RRを記憶部19に保存する(ステップS13)。
【0088】
次に、循環動態算出部17におけるパラメータ算出部81は、ステップS11において算出された心拍数HRなどに基づいて、一回拍出量esSVを算出し、算出した一回拍出量esSVを記憶部19に保存する(ステップS14)。
【0089】
次に、作業者により、例えば、画面に含まれるメニューボタンが選択されて領域Rが表示された後、さらに、領域Rにおいて、設定画面の表示を選択するためのタブTb2が選択される操作が行われたとする。この場合、表示制御部72は、図4に示すような設定画面が表示部71に表示されるように制御する(ステップS15)。
【0090】
次に、循環動態算出部17は、作業者による選択ボタンB12を選択する操作が行われたことを示す指示信号を受けたか否かを確認する(ステップS16)。そして、循環動態算出部17は、当該操作の内容を示す指示信号を受けていない場合(ステップS16において「NO」)、手動モードで動作する(ステップS17)。
【0091】
一方、循環動態算出部17は、作業者による選択ボタンB12を選択する操作が行われたことを示す指示信号を受けた場合には(ステップS16において「YES」)、自動モードで動作する(ステップS18)。
【0092】
(手動モードにおける動作の流れ)
図11は、図1に示す循環動態算出部17が手動モードで動作する場合における動作の流れを説明するためのフローチャートである。
【0093】
図11を参照して、まず、変動率算出部84は、呼吸数取得部41により検出された呼吸周期の通知を新たに受けると、通知された呼吸周期に基づいて、所定期間に算出された複数の一回拍出量esSVを読み出す。ここでの所定期間は、直近の1回分の呼吸周期に相当する(ステップS21)。
【0094】
次に、変動率算出部84は、読み出した一回拍出量esSVの数、すなわち使用データ数が閾値以上であるか否かを確認することにより、呼吸性変動SVVを算出可能であるか否かを判断する(ステップS22)。
【0095】
そして、変動率算出部84は、使用データ数が閾値以上である場合、呼吸性変動SVVを算出可能であると判断し(ステップS22において「YES」)、呼吸性変動SVVを算出する。そして、表示制御部72は、変動率算出部84により算出された呼吸性変動SVVを画面に表示する制御を行う(ステップS23)。
【0096】
一方、変動率算出部84は、使用データ数が閾値未満である場合、呼吸性変動SVVを算出不可であると判断し(ステップS22において「NO」)、呼吸性変動SVVとしてエラー値を出力する。そして、表示制御部72は、例えば、循環動態パラメータの呼吸性変動が算出不可であることを示す「---」が画面に表示されるように制御する(ステップS24)。
【0097】
次に、期間設定部83は、作業者による選択ボタンB21または選択ボタンB22を選択する操作が行われたことを示す指示信号を受けたか否かを確認する(ステップS25)。そして、期間設定部83は、当該操作の内容を示す指示信号を受けていない場合(ステップS25において「NO」)、所定期間の変更を行わず、ステップS21以降の動作が再び行われる。
【0098】
一方、期間設定部83は、作業者による選択ボタンB21または選択ボタンB22を選択する操作が行われたことを示す指示信号を受けた場合(ステップS25において「YES)、当該指示信号に基づいて、所定期間に含まれる呼吸周期の数である周期数を変更し、所定期間を再設定する(ステップS26)。そして、再設定後の所定期間に算出された一回拍出量esSVが読み出され(ステップS21)、ステップS22以降の動作が再び行われる。
【0099】
(自動モードにおける動作の流れ)
図12は、図1に示す循環動態算出部17が自動モードで動作する場合における動作の流れを説明するためのフローチャートである。
【0100】
図12に示すステップS31からステップS33までの動作は、図11に示すステップS21からステップS23までの動作と同様であるため、ここでの詳細な説明は繰り返さない。呼吸性変動SVVの算出および表示(ステップS33)が行われると、ステップS31以降の動作が再び行われる。
【0101】
ステップS32において、変動率算出部84は、使用データ数が閾値未満である場合、呼吸性変動SVVを算出不可であると判断する(ステップS32において「NO」)。この場合、変動率算出部84は、使用データ数が閾値未満であることを期間設定部83に通知する(ステップS34)。
【0102】
次に、期間設定部83は、変動率算出部84からの上記内容の通知を受けると、周期数を1つ増加させ、所定期間を再設定する(ステップS35)。そして、再設定後の所定期間に算出された一回拍出量esSVが読み出され(ステップS31)、ステップS32以降の動作が再び行われる。
【0103】
なお、循環動態算出部17は、手動モードおよび自動モードのいずれのモードで動作する場合においても、例えば、呼期数を増加させたタイミングから所定の時間が経過した場合、周期数を「1」に戻す。これにより、周期数が増加し続けることを防ぐことができる。また、周期数の上限値は、例えば「8」である。
【0104】
上記のように、本開示の一態様に係る生体情報処理装置Mでは、心拍数取得部12は、被験者の心拍数HRを取得する。呼吸数取得部41は、当該被験者の呼吸数RRを取得する。循環動態算出部17は、当該被験者の循環動態パラメータを算出し、所定期間に算出した複数の循環動態パラメータに基づいて、循環動態パラメータの呼吸性変動SVV,PPVを算出する。表示制御部72は、算出された呼吸性変動SVV,PPVを表示部71に出力する制御を行う。また、循環動態算出部17は、さらに、心拍数HRおよび呼吸数RRを用いて1回分の呼吸周期に含まれる拍数である1呼吸中拍数HR/RRを算出する。そして、表示制御部72は、さらに、所定期間の長さを設定するための設定画面であって、1呼吸中拍数HR/RRを含む設定画面を表示部71に出力する制御を行う。そして、循環動態算出部17は、設定画面において設定された内容を示す設定情報を取得し、取得した設定情報に基づいて所定期間の長さを設定し、設定後の所定期間における呼吸性変動SVV,PPVを算出する。
【0105】
このような構成により、例えば、作業者は、表示部71に表示される1呼吸中拍数HR/RRを確認することで、呼吸性変動SVV,PPVの算出に用いられる循環動態パラメータのデータ数、すなわち所定期間に算出された循環動態パラメータのデータ数が十分であるか否かを判断することができる。そして、作業者は、当該データ数が十分ではないと判断した場合、設定画面において、データ数が増えるように所定期間を長く設定することができる。これにより、十分なデータ数を用いて循環動態パラメータの呼吸性変動SVV,PPVを算出することができるため、被験者の状態をより正確に監視することができる。
【0106】
また、本開示の別の態様に係る生体情報処理装置Mにおいて、所定期間の長さは、1または複数回分の呼吸周期の長さである。表示制御部72は、設定画面において、所定期間に含まれる呼吸周期の数を設定可能に表示する制御を行う。そして、循環動態算出部17は、被験者の呼吸の開始タイミングおよび終了タイミングの少なくともいずれか一方に基づいて検出された呼吸周期、ならびに設定画面において設定された呼吸周期の数に基づいて、所定期間の長さを設定する。このように、設定画面において呼吸周期の数を設定可能である構成により、作業者において、所定期間の長さを容易に変更することができる。
【0107】
また、本開示の別の態様に係る生体情報処理装置Mでは、呼吸数取得部41は、さらに、被験者の呼気における二酸化炭素の濃度を検出する呼吸測定装置4からの検出結果に基づいて、当該被験者の呼吸の開始タイミングおよび終了タイミングの少なくともいずれか一方を判断する。
【0108】
一般的に、心拍出量計の多くは一回拍出量SVの呼吸性変動SVVを測定する機能を有しているが、その多くは心拍出量およびその関連パラメータの測定に特化した機器であるため、呼吸周期の測定機能は有しておらず、呼吸周期を固定値としている。これに対して、本発明に係る生体情報処理装置Mでは、上記のような構成により、呼吸周期をより正確に判断することができるため、循環動態パラメータの呼吸性変動SVV,PPVをより正確に算出することができる。
【0109】
また、本開示の別の態様に係る生体情報処理装置Mでは、表示制御部72は、さらに、設定画面において、所定期間の長さの自動変更を設定可能に表示する制御を行う。循環動態算出部17は、設定画面において所定期間の長さの自動変更が設定された場合であり、かつ所定期間に算出した循環動態パラメータの使用データ数が閾値未満である場合、所定期間を長く設定する。このように、所定期間に算出された循環動態パラメータの使用データ数に応じて、当該所定期間の長さが自動的に変更される構成により、作業者の手間を軽減させることができる。
【0110】
また、本開示の別の態様に係る生体情報処理装置Mでは、循環動態算出部17は、所定期間の長さの自動変更を行う場合、使用データ数が閾値以上になるまで所定期間に含まれる呼吸周期の数を増やし、被験者の呼吸の開始タイミングおよび終了タイミングの少なくともいずれか一方に基づいて検出された呼吸周期、ならびに所定期間に含まれる呼吸周期の数に基づいて、所定期間の長さを設定する。
【0111】
このように、所定期間に算出された循環動態パラメータのデータ数が閾値未満である場合には、所定期間に含まれる呼吸周期の数を増やし、当該データ数が閾値以上となった場合には、所定期間に含まれる呼吸周期の数の増加を終了する構成により、循環動態パラメータの呼吸性変動SVV,PPVの算出に用いられるデータ数を適切な数にすることができる。
【0112】
また、本開示の別の態様に係る生体情報処理装置Mでは、循環動態算出部17は、所定期間に算出した循環動態パラメータのデータ数が閾値未満である場合、呼吸性変動SVV,PPVの算出を行わない。このような構成により、精度の低い呼吸性変動SVV,PPVが算出および表示されることを避けることができるため、作業者において、被験者の生体情報をより正確に監視することができる。
【0113】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本願の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではない。本実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本願の技術的範囲は、特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0114】
M:生体情報処理装置(生体情報表示装置)、1:表示装置、2:血圧測定装置、4:呼吸測定装置、6:受付部、11:脈圧取得部、12:心拍数取得部、13:脈波伝播時間取得部、14:脈波伝播時間呼吸性変動取得部、15:脈波振幅取得部、16:脈波振幅呼吸性変動取得部、17:循環動態算出部、18:固有係数算出部、19:記憶部、41:呼吸数取得部、71:表示部、72:表示制御部、74:受信部、81:パラメータ算出部、82:HR/RR算出部、83:期間設定部、84:変動率算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12