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特開2024-24855膜分離セル、分離膜分析システムおよび膜分離システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024855
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】膜分離セル、分離膜分析システムおよび膜分離システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/00 20060101AFI20240216BHJP
   B01D 65/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B01D63/00
B01D65/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127791
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高田 明広
(72)【発明者】
【氏名】兼重 麗弥
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA41
4D006JA25A
4D006JA25C
4D006JA30A
4D006JA30C
4D006JA51Z
4D006KE30P
4D006LA10
4D006PA01
4D006PB03
4D006PB08
(57)【要約】
【課題】分離膜の状態を容易にかつ正確に測定する。
【解決手段】分離膜103を収容する筐体101,102と、筐体101に設けられ、外部からの液体が流入する流入口と、流入口から流入された液体のうち、分離膜103を透過しない液体が流出する第1の流出口と、流入口から流入された液体のうち、分離膜103を透過した液体が流出する第2の流出口と、外部から分離膜103を視認できるように設けられた孔部と、孔部に接する透明部材からなる窓部と、外部から窓部を介して分離膜103の状態を測定するセンサを筐体101に取り付けるための取付部と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜を収容する筐体と、
前記筐体に設けられ、外部からの液体が流入する流入口と、
前記流入口から流入された液体のうち、前記分離膜を透過しない液体が流出する第1の流出口と、
前記流入口から流入された液体のうち、前記分離膜を透過した液体が流出する第2の流出口と、
外部から前記分離膜を視認できるように設けられた孔部と、
前記孔部に接する透明部材からなる窓部と、
外部から前記窓部を介して前記分離膜の状態を測定するセンサを前記筐体に取り付けるための取付部と、を有する膜分離セル。
【請求項2】
請求項1に記載の膜分離セルであって、
前記筐体は、前記分離膜を挟持するように第1の筐体と第2の筐体とを有し、
前記第1の筐体は、
前記流入口と、
前記第1の流出口と、
前記孔部と、
前記窓部とを有し、
前記第2の筐体は、
前記第2の流出口を有する膜分離セル。
【請求項3】
請求項2に記載の膜分離セルであって、
前記取付部は、前記第1の筐体に前記センサが嵌合される凹み部を有する膜分離セル。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の膜分離セルであって、
前記取付部は、磁力または粘着力により前記センサを固定する膜分離セル。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の膜分離セルであって、
前記孔部は、前記窓部の厚み方向と直交する方向における大きさが該窓部よりも小さく、
前記窓部は、外周にゴム製の部材を取り付けられて前記孔部に前記分離膜側から保持されている膜分離セル。
【請求項6】
請求項1または請求項3に記載の膜分離セルであって、
前記筐体は、金属から形成される膜分離セル。
【請求項7】
分離膜を収容する筐体を有する膜分離セルと、前記分離膜の状態を測定するセンサとを有し、
前記膜分離セルは、
前記筐体に設けられ、外部からの液体が流入する流入口と、
前記流入口から流入された液体のうち、前記分離膜を透過しない液体が流出する第1の流出口と、
前記流入口から流入された液体のうち、前記分離膜を透過した液体が流出する第2の流出口と、
外部から前記分離膜を視認できるように設けられた孔部と、
前記孔部に接する透明部材からなる窓部と、
外部から前記窓部を介して前記分離膜の状態を測定するセンサを前記筐体に取り付けるための取付部と、を有し、
前記センサは、前記取付部に嵌合し、前記膜分離セルの外部から前記窓部を介して前記分離膜の状態を測定する分離膜分析システム。
【請求項8】
外部から供給された液体を、第1の分離膜を用いて透過液と濃縮液とに分離する分離膜装置と、それぞれが金属部材からなる第1の筐体および第2の分離膜が充填された第2の筐体から構成された膜分離セルと、前記第2の分離膜の状態を測定するセンサとを有し、
前記第1の筐体は、
孔部と、
前記液体または前記濃縮液が流入する流入口と、
前記流入口から流入された液体のうち、前記第2の分離膜を透過しない液体が流出する第1の流出口と、
前記孔部に着脱可能に取り付けられ、透明部材からなる窓部と、
外部から前記窓部を介して前記センサを当該第1の筐体に取り付けるための取付部とを有し、
前記第2の筐体は、
前記流入口から流入された液体のうち、前記第2の分離膜を透過した液体が流出する第2の流出口を有し、
前記孔部は、当該孔部に対する前記窓部の位置を固定する構造を持ち、
前記センサは、前記取付部に嵌合し、前記膜分離セルの外部から前記窓部を介して前記分離膜の状態を測定する膜分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離セル、分離膜分析システムおよび膜分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
河川水、地下水、回収水、海水などのスケール成分を含んでいる、もしくは有機物によるファウリングやバイオファウリングが起こる可能性のある水を被処理水とし、分離膜、特に逆浸透膜を用いて被処理水を処理する水処理装置では、被処理水を分離膜に通水させることで、被処理水に含まれる物質が分離膜に付着していき、結果として分離膜の閉塞が生じてしまう。分離膜の閉塞は、当該水処理装置の透水性能の低下に結びつくため、閉塞が進行すると、継続的な運転が困難となり、運転を停止して薬品による洗浄操作などが必要となる。しかし、閉塞が著しい場合、洗浄を行っても透水性能が十分に回復せず、分離膜の交換が必要になる場合がある。そのため、閉塞の進行を防止するため、分離膜の状態を監視することは、継続的に分離膜を用いて造水する上で極めて重要な事項である。そこで、分離膜を用いて被処理水を処理する逆浸透膜モジュールの供給側と濃縮側とのそれぞれに分離膜を設け、その分離膜に供給液を供給して状態を監視することで、逆浸透膜モジュールの分離膜面の状態を判定する技術が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-253953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術においては、逆浸透膜モジュールの供給側と濃縮側とのそれぞれに設けられた分離膜を具備する膜分離手段は、分離膜面の状態を外部から観察できるように透明部材から形成されている。そのため、分離膜面の状態を分光センサ等の光センサを用いて測定すると、光センサの光検出部に外光が入り込んだり、分析光が散乱したりして、正確な分離膜面の状態を測定することが困難となってしまう。さらに、膜分離手段の透明部分に傷や白化が生じた場合、膜分離手段全体を交換しなければならない。このように、上述した技術では、分離膜の状態を容易にかつ正確に測定することが困難であるという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、分離膜の状態を容易にかつ正確に測定することができる膜分離セル、分離膜分析システムおよび膜分離システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の膜分離セルは、
分離膜を収容する筐体と、
前記筐体に設けられ、外部からの液体が流入する流入口と、
前記流入口から流入された液体のうち、前記分離膜を透過しない液体が流出する第1の流出口と、
前記流入口から流入された液体のうち、前記分離膜を透過した液体が流出する第2の流出口と、
外部から前記分離膜を視認できるように設けられた孔部と、
前記孔部に接する透明部材からなる窓部と、
外部から前記窓部を介して前記分離膜の状態を測定するセンサを前記筐体に取り付けるための取付部と、を有する。
【0007】
また、本発明の分離膜分析システムは、
分離膜を収容する筐体を有する膜分離セルと、前記分離膜の状態を測定するセンサとを有し、
前記膜分離セルは、
前記筐体に設けられ、外部からの液体が流入する流入口と、
前記流入口から流入された液体のうち、前記分離膜を透過しない液体が流出する第1の流出口と、
前記流入口から流入された液体のうち、前記分離膜を透過した液体が流出する第2の流出口と、
外部から前記分離膜を視認できるように設けられた孔部と、
前記孔部に接する透明部材からなる窓部と、
外部から前記窓部を介して前記分離膜の状態を測定するセンサを前記筐体に取り付けるための取付部と、を有し、
前記センサは、前記取付部に嵌合し、前記膜分離セルの外部から前記窓部を介して前記分離膜の状態を測定する。
【0008】
また、本発明の膜分離システムは、
外部から供給された液体を、第1の分離膜を用いて透過液と濃縮液とに分離する分離膜装置と、それぞれが金属部材からなる第1の筐体および第2の分離膜が充填された第2の筐体から構成された膜分離セルと、前記第2の分離膜の状態を測定するセンサとを有し、
前記第1の筐体は、
孔部と、
前記液体または前記濃縮液が流入する流入口と、
前記流入口から流入された液体のうち、前記第2の分離膜を透過しない液体が流出する第1の流出口と、
前記孔部に着脱可能に取り付けられ、透明部材からなる窓部と、
外部から前記窓部を介して前記センサを当該第1の筐体に取り付けるための取付部とを有し、
前記第2の筐体は、
前記流入口から流入された液体のうち、前記第2の分離膜を透過した液体が流出する第2の流出口を有し、
前記孔部は、当該孔部に対する前記窓部の位置を固定する構造を持ち、
前記センサは、前記取付部に嵌合し、前記膜分離セルの外部から前記窓部を介して前記分離膜の状態を測定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、分離膜の状態を容易にかつ正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の膜分離セルの実施の一形態を示す図である。
図2図1に示した膜分離セルの具体的な構造の一例を示す図である。
図3図2に示した第1の筐体の具体的な構造の一例を示す図である。
図4図3に示した第1の筐体のB-Bにおける断面図である。
図5】窓部の外周にゴム製の部材を取り付けた形態の一例を示す図である。
図6】Oリングが取り付けられる窓部とOリングとの構造の一例を示す図である。
図7図2に示した第2の筐体の具体的な構造の一例を示す図である。
図8図1に示した膜分離セルを適用した膜分離システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の膜分離セルの実施の一形態を示す図である。図1に示した形態は、本発明の膜分離セルが用いられた分離膜分析システムの一例である。図1に示した分離膜分析システムは、膜分離セル100と、センサ200とを有する。
【0013】
膜分離セル100は、2つの筐体から構成され、外部から供給された供給液を、分離膜を用いて透過液と濃縮液とを排出する。膜分離セル100の具体的な構造については、後述する。
【0014】
センサ200は、膜分離セル100に取り付けられる。センサ200は、膜分離セル100の外部から膜分離セル100の内部に充填されている分離膜の状態を測定する。例えば、センサ200は分光センサでも良く、光を発する光源と検出部を備えており、光源から分離膜面へ照射された光の反射強度や吸光度を検出部で測定する。本実施形態で用いるセンサは波長を検出できる検出部を備えているものであれば、その種類に特に制限はなく、光の種類としては、赤外光でも可視光でも良いが、可視光を用いるものが望ましい。ここで、日本産業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)の規格番号JIS B 7079:2015の定義によれば、可視光とは、380~780nmの範囲の波長を有する電磁波である。例えば、検出部は、波長が400~700nmの可視光領域の波長光の反射強度または吸光度を測定すれば良く、より望ましくは波長が420~550nmの可視光領域の波長光の反射強度または吸光度を測定すれば良い。また、センサ200は、分離膜を所定のタイミングで撮像するカメラ等の画像センサでも良い。センサ200がカメラである場合、センサ200は分離膜の画像をあらかじめ設定された時間間隔以下の時間間隔で撮像するカメラ(例えば、動画撮像用カメラ)でも良い。センサ200は、測定した結果を他の装置へ送信する。送信されてきた結果を受信した装置は、受信した画像の画素情報から、画像解析を行う。例えば、膜面の色などを数値化し、数値化した値を出力する。このとき、センサ200は、測定した結果を送信できるものであれば、有線と無線とのいずれを用いても良いが、他の装置の設置場所の自由度が高くなることから、無線を用いる方が望ましい。また、この他の装置は、測定した結果を解析する情報処理装置である。情報処理装置における解析内容は、例えば、センサ200が測定した分離膜面の反射強度や吸光度の変化に基づいて、分離膜の膜面の閉塞状態を判定するものでも良く、特に規定しない。なお、センサ200が測定した分離膜面の反射強度や吸光度の変化に基づいて分離膜の膜面の閉塞状態を判定する処理を、センサ200自身が行っても良い。
【0015】
図2は、図1に示した膜分離セル100の具体的な構造の一例を示す図である。図1に示した膜分離セル100は図2に示すように、筐体101(第1の筐体)と筐体102(第2の筐体)とが組み合わされて構成されている。筐体101および筐体102それぞれは、外光や分析光の散乱を抑制するため、不透明な部材であれば良く、機械的強度の観点から、金属部材であることが好ましい。筐体101および筐体102それぞれは、加工の容易性や、耐食性、入手性を考慮し、SUS316またはSUS304から形成されるものが好ましい。筐体101および筐体102それぞれは、チタンや、スーパー二相系ステンレス、SUS316L、SUS316、SUS304、真鍮等から形成されるものでも良い。筐体102には分離膜103が充填されている。筐体101と筐体102とは、分離膜103を挟持するように図2に示した矢印の向きに組み合わされ、ネジ等を用いて互いに固定される。筐体102に分離膜103が充填(収容)されており、図示していないが、筐体102には分離膜103以外に、スペーサー、Oリングなどを充填しても良い。
【0016】
図3は、図2に示した筐体101の具体的な構造の一例を示す図である。図2に示した筐体101は図3の上図に示すように、流入口104と流出口105とを有する。流入口104は、外部からの供給液である液体が流入する。流出口105は、流入口104から流入された液体のうち、筐体102に充填された分離膜103を透過しなかった液体(濃縮液)が流出する第1の流出口である。図3の下図は、図3の上図に示した筐体101をAの方向から見た図である。流入口104および流出口105はそれぞれ、筐体101の内部でAの方向に面した向きへ屈折した流路につながっている。この流路はAの方向の面にて開口している。筐体101には窓部106が設けられている。なお、図3には、流入口104と流出口105とがそれぞれ1つである場合を例に挙げて示したが、その数は1つに限定しない。
【0017】
図4は、図3に示した筐体101のB-Bにおける断面図である。図4に示すように筐体101は、窓部106と、孔部107と、取付部108とを有する。なお、図4において、図3に示した流入口104および流出口105の断面の図示は省略する。
【0018】
孔部107は、筐体101と筐体102とが組み合わさった膜分離セル100の外部から、膜分離セル100の内部の分離膜103の状態を測定(視認)できるように、筐体101にあけられた開口部である。孔部107は、孔部107に対する窓部106の位置を固定する構造を持つ。この窓部106の位置を固定するための構造は図4に示すように、孔部107の開口部分の大きさを窓部106の厚み方向と直交する方向における大きさよりも小さなものとし、窓部106を流入口104から流入した液体の内部からの圧力を用いて固定する構造でも良い。
【0019】
窓部106は、孔部107に着脱可能に取り付けられ、透明部材からなる。窓部106は、分離膜の状態を監視し易くするため、透明度が高く、光透過率が高いアクリル樹脂(PMMA)から形成されるものが好ましい。窓部106は、透明のものであって、透明塩化ビニールや、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、シリコーン樹脂、ガラスから形成されるものでも良い。窓部106と筐体101との隙間が生じないように、例えば、それらの間にパッキン等のゴム製の部材を取り付けても良く、パッキン等のゴム製の部材は窓部106の外周(例えば、窓部106の側面に外周にわたって設けられた溝部分)に設けることがより好ましい。
【0020】
図5は、窓部106の外周にゴム製の部材を取り付けた形態の一例を示す図である。図5の上図は、図4に示した断面図において、窓部106の外周にゴム製の部材であるOリング110が取り付けられた様子の一例を示す。また、図5の下図は、Oリング110が取り付けられた筐体101を図5の上図のCの方向から見た様子の一例を示す。図5に示すように、窓部106の外周にゴム製の部材を取り付けることで、窓部106と筐体101との隙間が密封され、かつ分離膜103から窓部106までの間隔が水圧によるゴム製の部材の圧縮の影響を受けずに保持されるため、窓部106の位置が変化してセンサ200の測定精度が変化することを避けることができ、ゴム製の部材のグリップ力で水圧が掛かっていないときに、窓部106が分離膜103の方向へ脱落しないように保持できる。
【0021】
図6は、Oリング110が取り付けられる窓部106とOリング110との構造の一例を示す図である。図6に示すように、窓部106の側面には外周にわたって、Oリング110を取り付けるための溝112が設けられている。Oリング110は、窓部106に設けられた溝112に取り付けられる。
【0022】
窓部106は、窓部106の分離膜103側の面が分離膜103の窓部106側の面と対向するように取り付けられている。窓部106のサイズは、強度の観点からできるだけ小さなものが好ましく、例えば、直径40mm以下が好ましい。また、窓部106の厚みは、厚いほど強度を高くすることができるが、透明度や光透過率が低下する。強度と透明度、光透過率のバランスを考慮すると、窓部106の厚みは20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。窓部106の水圧に対する補強、外光の影響を軽減するため、孔部107の直径は窓部106の直径に対して2/3以下であることが好ましく、1/2であることがより好ましい。孔部107の深さは10~20mmの範囲が好ましい。孔部107の深さが10mm未満である場合、孔部107の機械的強度が不十分となり、筐体101が破損するおそれがある。また、孔部107の深さが20mmを超えると、分析精度が低下するおそれがある。
【0023】
取付部108は、図1に示したセンサ200を筐体101に取り付けるための構造を持つ。取付部108は、筐体101とセンサ200とを密着させる構造を持つ。密着させる方法は特に限定しないが、磁石や粘着剤を用いても良い(磁力や粘着力によるものでも良い)。着脱の容易性を考慮すると、磁石を用いるものが好ましい。取付部108は、センサ200と嵌合する凹んだ形状の凹み部109を具備しても良い。磁石は筐体101の取付部108に具備されていても良いし、センサ200に具備されていても良いし、筐体101とセンサ200との両方に具備されていても良い。凹み部109は、センサ200が測定対象である分離膜103により近づくことができるように、筐体101の外面から凹んだ形状になっている。センサ200と測定対象である分離膜103との距離が近づくことで、測定精度が向上しつつ、凹み部109以外の筐体101の厚みを厚くできることで、筐体101の機械的強度を高くすることができる。
【0024】
図7は、図2に示した筐体102の具体的な構造の一例を示す図である。図2に示した筐体102は図7の上図に示すように、分離膜103が充填されている。また、図2に示した筐体102は図7の上図に示すように、2つの流出口111を有する。流出口111は、図3に示した流入口104から流入された液体のうち、分離膜103を透過した液体(透過液)が流出する第2の流出口である。図7の下図は、図7の上図に示した筐体102をCの方向から見た図である。2つの流出口111はそれぞれ、筐体102の内部でCの方向に面した向きへ屈折した流路につながっている。この流路はCの方向の面にて開口している。流出口111が設けられる位置は、筐体102の長辺側に限定せず、筐体102の短辺側や下部でも良い。なお、図7には、流出口111が2つである場合を例に挙げて示したが、その数は2つに限定しない。
【0025】
図8は、図1に示した膜分離セル100を適用した膜分離システムの一例を示す図である。図8に示した膜分離システムは、分離膜装置300と、膜分離セル100と、センサ200とを有する。膜分離セル100とセンサ200とのそれぞれは、図1に示したものと同じものである。分離膜装置300は、被処理水に対して所定の水処理を行う水処理システムの構成要素の1つであり、供給された被処理水(供給液)を単数、もしくは複数の分離膜を有する膜モジュール(第1の分離膜)を用いてろ過する装置である。分離膜装置300は、供給された供給液のうち、第1の分離膜を透過した透過液と、第1の分離膜を透過しなかった濃縮液とを排出する。センサ200が膜分離セル100中の分離膜103(第2の分離膜)の膜面の状態を検知する。センサ200が膜面の閉塞などを検知した際、適切なタイミングで分離膜装置300の洗浄・運転条件の調整・薬品添加などを行うことで、運転圧力上昇を抑えることができる。分離膜装置300に具備された第1の分離膜と、膜分離セル100に充填された第2の分離膜とのそれぞれは、MF、UF、NF、ROのいずれでも良いが、エネルギーコストの増大を抑制するという観点から、運転圧力が高いROであることが好ましい。また、第1の分離膜と第2の分離膜とは必ずしも互いに同じ分離膜である必要はないが、分離膜装置300の閉塞挙動の再現性を高めるため、分離膜装置300に具備された分離膜と同じ分離膜とすることが望ましい。こうすることで、膜分離セル100とセンサ200とから構成される分離膜分析システムは、分離膜装置300に具備された第1の分離膜の状態を測定するモニタの役割を果たす。このように、分離膜装置300を具備する水処理システムにおいて、分離膜装置300に供給される被処理水を、膜分離セル100にも供給し、膜分離セル100内に具備された分離膜103の状態を測定する。これにより、水処理システムの処理経路上に設けられた分離膜装置300に逆浸透膜の状態を測定するための装置を設けることなく、その状態を測定することができる。図示していないが、分離膜装置300の濃縮液を膜分離セル100の被処理水として用いても良く、分離膜装置300に供給される供給液、並びに、排出される透過液および濃縮液が複数ある場合は、それぞれの液に対して、膜分離セル100を設けても良い。
【0026】
このように、本形態においては、筐体101から窓部106を取り外し可能な構造とすることで、窓部106に傷や白化等の異常が生じた場合、容易に交換することができる。また、筐体101,102の部材を金属部材とし、窓部106のサイズを極力小さくすることで、RO用途に適した耐圧性能を発揮することができ、例えば、0.8MPa以上の水圧で運転可能となる。また、膜分離セル100を構成する部材のうち、窓部106以外の部材を光不透過性部材である金属部材とすることで、センサ200の散光によるノイズを軽減し、測定精度を向上することができる。また、膜分離セル100とセンサ200とが互いに密着する構造とすることで、外光の影響および測定箇所の位置ずれを防止することができ、測定精度を向上することができる。また、窓部106の面を筐体101,102内部の液体からの加圧方向に対して垂直方向に配置することで、水圧による窓部106の位置ずれを防止することができ、測定精度を向上することができる。また、孔部107が、孔部107に対する窓部106の位置を固定する構造を持ち、内部からの水圧で窓部106を抑えることで、窓部106の厚みを薄くすることができる。さらに、センサ200を取り付けるための凹み部109を設けることで、センサ200と分離膜103との間の距離を短くすることができ、測定精度を向上することができる。センサ200は、測定の対象物との距離が短いほど正確な測定値を得ることができる。窓部106の厚みを薄くすることで、センサ200と測定の対象物との間の距離を短くすることができ、より正確に測定が可能になる。対象とする液体は特に限定しないが、例えば、海水、半導体工場の除害系排水、食品工場の排水、飲料工場の排水などが挙げられる。
【符号の説明】
【0027】
100 膜分離セル
101,102 筐体
103 分離膜
104 流入口
105,111 流出口
106 窓部
107 孔部
108 取付部
109 凹み部
110 Oリング
112 溝
200 センサ
300 分離膜装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8