(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024856
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
B23Q3/06 302F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127793
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(72)【発明者】
【氏名】大谷 健太
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016CA04
3C016CC03
3C016CC04
(57)【要約】
【課題】 コンパクトなリリース状態にできるクランプ装置を提供する。
【解決手段】 ハウジング(1)内に設けられるピストン(3)によってピストンロッド(8)が進退される。前記ピストンロッド(8)に対して相対移動する可動部材(17)が当該ピストンロッド(8)に連結される。その可動部材(17)が進出バネ(13)によって上方に付勢される。前記可動部材(17)には、第1リンク部材(20)を介してクランプアーム(24)が回動可能に連結される。そのクランプアーム(24)が、第2リンク部材(22)を介して前記ハウジング(1)に回動可能に連結される。前記接続部材(16)が第3リンク部材(23)を介して前記第2リンク部材(22)に回動可能に連結される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)内に設けられる駆動機構(D)によって先端側に進出されると共に基端側に後退されるピストンロッド(8)と、
前記ピストンロッド(8)に対して軸方向に相対移動可能となるように当該ピストンロッド(8)に連結される可動部材(17)であって、付勢機構(B)によって前記ハウジング(1)、又は、前記ピストンロッド(8)に対して前記先端側に向けて付勢される可動部材(17)と、
前記ピストンロッド(8)に形成される係合部(19a,30a)であって、前記可動部材(17)に形成される係止部(18a,31)に前記先端側に所定の間隔をあけて対面されると共に、当該係止部(18a,31)に前記先端側から当接可能となっている係合部(19a,30a)と、
前記可動部材(17)に回動可能に連結される第1リンク部材(20)と、
前記ハウジング(1)に連結されると共に、前記第1リンク部材(20)が回動する平面と平行した平面で回動可能となっている第2リンク部材(22)と、
前記可動部材(17)に回動可能に連結されると共に、前記第2リンク部材(22)に回動可能に連結される第3リンク部材(23)と、
前記第1リンク部材(20)に回動可能に連結されると共に、前記第2リンク部材(22)に回動可能に連結されるクランプアーム(24)であって、前記ピストンロッド(8)に当接可能となっていると共に、クランプ対象物(26)に当接可能な押圧部(25)を有するクランプアーム(24)と、を備える、
ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
請求項1のクランプ装置において、
前記ピストンロッド(8)に案内部(19)が軸方向に延在するように凹状に形成され、
前記案内部(19)の前記先端側の周壁に前記係合部(19a)が形成され、
前記可動部材(17)から突設される連結部材(18)が前記案内部(19)に前記軸方向に移動可能に挿入され、
前記連結部材(18)に前記係止部(18a)が形成される、ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項3】
請求項1のクランプ装置において、
前記ピストンロッド(8)の外周壁から係合部材(30)が突設され、
前記係合部材(30)に係合部(30a)が形成され、
前記可動部材(17)に係止部(31)が形成される、ことを特徴とするクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワーク、ワークパレット、金型、ツールなどのクランプ対象物をテーブル、ロボットの可動部などに固定するクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプ装置には、従来では、特許文献1(日本国・特開平8-336734号公報)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
上記のクランプ装置では、ハウジング内に設けられるピストンによってピストンロッドが上下方向に移動される。そのピストンロッドの先端部に連結ブロックが固定される。その連結ブロックに第1リンク部材の一端部が垂直平面内で回動可能に連結される。また、ハウジング上に設けられる枢支部に第2リンク部材の一端部が垂直平面内で回動可能に連結される。その第2リンク部材の長手方向の途中部に第3リンク部材の一端部が垂直平面内で回動可能に連結される。その第3リンク部材の他端部が連結ブロックに垂直平面内で回動可能に連結される。上記の第1リンク部材の他端部がクランプアームの左部に回動可能に連結されると共に、第2リンク部材の他端部がクランプアームの長手方向の途中部に回動可能に連結される。そのクランプアームの左部の裏面にピストンロッドの先端面が当接可能となっている。そのクランプ装置をロック駆動させてワークをクランプするときには、クランプ装置に供給される圧油によってピストンとピストンロッドとを介して連結ブロックが上昇されていく。その上昇動作によって第1リンク部材が連結ブロックに対して時計回りの方向に回動していき、また、第2リンク部材が枢支部に対して時計回りの方向に回動されていく。すると、クランプアームが上昇されながら右方に移動されていく。ピストンロッドの上端面がクランプアームの裏面に係合して、ピストンロッドがクランプアームと第2リンク部材の連結部を支点としてクランプアームを当該ワークに押し下げて、テーブル上に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術は次の問題がある。
上記クランプ装置は、当該クランプ装置から遠く離れた位置にあるワークを固定できるようにすることが望まれることがある。この場合、クランプアーム、各リンク部材、ピストンロッドの長さ寸法を長くすることで課題を解決できる。しかしながら、各部材の長さ寸法を長くすると各部材の可動範囲が広くなる。このため、クランプ装置をリリース駆動させる途中でクランプアームがピストンロッドや連結ブロックに接触して、クランプ装置をコンパクトなリリース状態にすることができない。
本発明の目的は、コンパクトなリリース状態にできるクランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、
図1Aから
図3に示すように、クランプ装置を次のように構成した。
ハウジング1内に設けられる駆動機構Dによってピストンロッド8が先端側に進出されると共に基端側に後退される。前記ピストンロッド8に対して軸方向に相対移動可能となっている可動部材17が、当該ピストンロッド8に連結される。その可動部材17が付勢機構Bによって前記ハウジング1、又は、前記ピストンロッド8に対して前記先端側に向けて付勢される。前記ピストンロッド8に係合部19a,30aが形成される。その係合部19a,30aが、前記可動部材17に形成される係止部18a,31に前記先端側に所定の間隔をあけて対面されると共に、当該係止部18a,31に前記先端側から当接可能となっている。前記可動部材17に第1リンク部材20が回動可能に連結される。前記ハウジング1に連結される前記第2リンク部材22が、前記第1リンク部材20が回動する平面と平行した平面で回動可能となっている。前記可動部材17に回動可能に連結される第3リンク部材23が、第2リンク部材22に回動可能に連結される。前記第1リンク部材20に回動可能に連結されるクランプアーム24が、前記第2リンク部材22に回動可能に連結される。そのクランプアーム24は、前記ピストンロッド8に当接可能となっている。また、クランプアーム24は、クランプ対象物26に当接可能な押圧部を有している。
【0006】
本発明は、次の作用効果を奏する。
上記クランプ装置は、付勢機構によって先端側に付勢される可動部材を備え、その可動部材がピストンロッドに対して軸方向に相対移動可能となっている。このため、クランプ装置をロック状態からリリース状態に切り換えるときに、可動部材を先端側位置に置き残した状態で、そのピストンロッドを可動部材より先に下降させることができる。よって、クランプアームが後退動作するときには、クランプアームの可動領域よりも基端側にピストンロッドが退避されていることになる。従って、クランプアームとピストンロッドとが干渉して退避できなくなることが防止される。これにより、干渉を回避できた状態で、ピストンロッドが係合部と係止部とを介して可動部材を付勢機構の先端側への付勢力に抗して基端側に移動させることができる。その結果、本実施形態のクランプ装置を、コンパクトなリリース状態にすることができる。
【0007】
本発明は、下記(1)および(2)の構成を加えることが好ましい。
(1)
図1Aから
図3に示すように、前記ピストンロッド8に案内部19が軸方向に延在するように凹状に形成される。前記案内部19の前記先端側の周壁に前記係合部19aが形成される。前記可動部材17から突設される連結部材18が前記案内部19に前記軸方向に移動可能に挿入される。前記連結部材18に前記係止部18aが形成される。
この場合、クランプ装置をロック状態からリリース状態に切り換える途中で、ピストンロッドが、案内部の係合部と連結部材の係止部とを介して可動部材を付勢機構の先端側への付勢力に抗して基端側に確実に押動する。これにより、ピストンロッドによってクランプアームや可動部材等がハウジングに近づくように基端側に、かつ、クランプ対象物から離れる方向に移動されて、クランプ装置をコンパクトにリリース状態にすることができる。
【0008】
(2)
図4Aから
図6に示すように、前記ピストンロッド8の外周壁から係合部材30が突設される。前記係合部材30に係合部30aが形成される。前記可動部材17に係止部31が形成される。
この場合、クランプ装置をロック状態からリリース状態に切り換える途中で、ピストンロッドが、係合部材の係合部と可動部材の係止部とを介して可動部材を付勢機構の先端側への付勢力に抗して基端側に確実に押動する。これにより、ピストンロッドによってクランプアームや可動部材等がハウジングに近づくように基端側に、かつ、クランプ対象物から離れる方向に移動されて、クランプ装置をコンパクトにリリース状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、本発明の第1実施形態を示し、クランプ装置のリリース状態を示す側面視の断面図である。
図1Bは、上記クランプ装置を示す平面図である。
【
図2】
図2は、上記クランプ装置の動作説明図である。
【
図3】
図3は、上記クランプ装置のロック状態を示す断面図である。
【
図4】
図4Aは、本発明の第2実施形態を示し、クランプ装置のリリース状態を示す側面視の断面図である。
図4Bは、上記クランプ装置を示す平面図である。
【
図5】
図5は、上記クランプ装置の動作説明図である。
【
図6】
図6は、上記クランプ装置のロック状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施形態を
図1Aから
図3によって説明する。
固定台としてのテーブルTにクランプ装置のハウジング1がボルト固定されている。そのハウジング1内にシリンダ孔2が上下方向に形成され、そのシリンダ孔2内にピストン3が保密状で上下方向(軸方向)に移動可能に挿入される。そのピストン3とハウジング1の下壁1aとの間にロック室4が形成され、ピストン3とハウジング1の上壁1bとの間にリリース室5が形成される。上記ハウジング1の胴部1cに圧縮エア(圧力流体)の給排路6が形成され、圧縮エア供給源(圧力流体供給源)からの圧縮エアが給排路6を通ってロック室4に給排される。また、圧縮エアが別の給排路7を通ってリリース室5に給排される。本実施形態のクランプ装置では、ピストン3とロック室4とリリース室5と給排路6,7等によって駆動機構Dが構成されている。
【0011】
上記ピストン3からピストンロッド8が上方に突設され、そのピストンロッド8の上部がハウジング1の上面から上方に突出している。そのピストンロッド8は、基端側から順に形成される大径部8aと小径部8bとを有している。上記ロック室4に供給される圧縮エアがピストン3を介してピストンロッド8を上方(先端側)に進出させると共に、リリース室5に供給される圧縮エアがピストン3を介してピストンロッド8を下方(基端側)に後退させる。
【0012】
上記の大径部8aには、筒状の支持部材9が封止部材10を介して保密状で当該ピストンロッド8の外周面に沿って移動可能に外嵌めされている。その支持部材9が、ハウジング1の上壁1bに形成される挿入孔11に封止部材12を介して保密状に挿入される。また、ピストン3の上面と支持部材9の下面との間に上バネ受け14a(バネ受け14)と進出バネ13と下バネ受け14b(バネ受け14)とが装着され、その進出バネ13がピストン3と支持部材9とを離間させるように付勢している。なお、本実施形態のクランプ装置では、進出バネ13としての圧縮バネとバネ受け14とによって付勢機構Bが構成される。
【0013】
上記支持部材9の上部に接続部材15が一体に形成される(または、別々の部材が一体に連結固定される)。その接続部材15に案内孔16が上下方向(軸方向)に形成され、その案内孔16がピストンロッド8の小径部8bを外嵌めしている。本実施形態のクランプ装置では、支持部材9と接続部材15とによって可動部材17が構成されている。その可動部材17がピストンロッド8の外周面に沿って軸方向に案内される。その支持部材9と接続部材15とが一体に形成されることに代えて、後述する第2実施形態のクランプ装置のように、支持部材9と接続部材15とが別々の部材によって構成されてもよい。また、支持部材9を省略して接続部材15のみによって可動部材17を構成されるようにしてもよい。
【0014】
上記接続部材15の案内孔16に直交する装着孔が形成され、その装着孔に連結ピン(連結部材)18が挿入されている。このため、案内孔16の内周面から連結ピン18が当該案内孔16内に向けて突設される。その連結ピン18が、ピストンロッド8の長手方向の途中部に当該ピストンロッド8の軸方向(上下方向)に向けて形成される長孔(案内部)19に挿入される。このため、接続部材15の連結ピン18が長孔19の内周面に沿って上下方向に案内される。その連結ピン18の上壁に係止部18aが形成され、長孔19の上端壁に係合部19aが形成される。その係合部19aが係止部18aに上方から所定の間隔をあけて対面されると共に当接可能となっている。
【0015】
上記の接続部材15の左部側壁に貫通孔が形成され、その貫通孔にピンが挿入されている。そのピンの両端部のそれぞれが、接続部材15の側壁面から突設されている。そのピンの端部を回転支軸として垂直面内で回動可能となっている2つの第1リンク部材20の一端部20aが、接続部材15を挟むようにピン連結されている。
【0016】
上記ハウジング1の上部から枢支部21が上方に突設され、その枢支部21に2つの第2リンク部材22の一端部22aが当該枢支部21を挟むように垂直面内で回動可能にピン連結される。
【0017】
上記第2リンク部材22の長手方向の途中部22bに第3リンク部材23の一端部23aが垂直面内で回動可能にピン連結される。その第3リンク部材23の他端部23bが接続部材15に垂直面内で回動可能にピン連結される。本実施形態のクランプ装置では、接続部材15の外壁面から外方に突設させた連結ピン18の両端部を、第3リンク部材23の他端部23b側の回転支軸として利用している。なお、このような構成に限られず、他端部23b側の回転支軸を連結ピン18とは別に設けてもよい。
【0018】
上記の第1リンク部材20の他端部20bが、クランプアーム24の左部24aに回動可能にピン連結される。また、第2リンク部材22の他端部22cがクランプアーム24の長手方向の途中部24bに垂直面内で回動可能にピン連結される。
【0019】
上記実施形態のクランプ装置では、クランプアーム24と2つの第1リンク部材20と2つの第2リンク部材22と2つの第3リンク部材23とが、平行する垂直面内で回動可能となっている。
【0020】
上記ピストンロッド8の上端面8cがクランプアーム24の一端部24a側の下面24dに当接可能となっている。また、そのクランプアーム24の他端部24cの下面に押圧部25が形成され、その押圧部25がクランプ対象物としてのワーク26に当接可能となっている。
【0021】
上記のクランプ装置は、
図1Aから
図3に示すように、次のように作動する。
図1Aの初期状態(リリース状態)のクランプ装置では、ロック室4から圧縮エアが排出されると共に、リリース室5に圧縮エアが供給されている。このため、リリース室5の圧縮エアがピストン3を介してピストンロッド8を下限位置に移動させている。そのピストンロッド8が長孔19の係合部19aと連結ピン18の係止部18aとを介して可動部材17を進出バネ13の上方への付勢力とロック室4の圧縮エアの上方への押圧力に抗して下限位置に押動させている。このため、第1リンク部材20と第2リンク部材22と第3リンク部材23とがクランプアーム24をワーク26から左方に離間させ、かつ、高さ方向に、後述するクランプ位置よりも低いアンクランプ位置へ後退させている。
【0022】
上記クランプ装置を
図1Aおよび
図1Bのリリース状態から
図3のロック状態に切り換えるときには、リリース室5から圧縮エアが排出されると共に、ロック室4に圧縮エアが供給される。すると、ロック室4の圧縮エアの圧力に相当する押圧力がピストン3を介してピストンロッド8を上方に移動させていく。このため、ピストンロッド8の係合部19aによる接続部材15の係止部18aの上方への移動制限が解除されて、進出バネ13の付勢力が可動部材17を上方へ移動させていく。すると、可動部材17に対して第1リンク部材20が時計回り方向に移動されていく。このとき、可動部材17が第3リンク部材23を介して第2リンク部材22を押すことにより、その第2リンク部材22が枢支部21に対して時計回り方向に移動されていく。すると、第1リンク部材20と第2リンク部材22が、クランプアーム24をほぼ水平状態に維持しながら、上方および右方へ移動させていく。引き続いて、
図2に示すように、クランプアーム24がロック位置に移動されると、クランプアーム24の押圧部25がワーク26の上面に当接される。このとき、ピストン3が進出バネ13と可動部材17と第1リンク部材20と第2リンク部材22とクランプアーム24を介してワーク26をテーブルTに押す。このため、可動部材17と第1リンク部材20と第2リンク部材22とクランプアーム24とは、ワーク26に受け止められる。その後、可動部材17等を置き残して、ピストン3とピストンロッド8が上昇されていき、ピストンロッド8の上端面8cがクランプアーム24の下面24dに当接される。このため、ピストン3がピストンロッド8とクランプアーム24とを介してワーク26を上方からテーブルTに強力に押圧する。従って、ピストン3及びピストンロッド8の上昇移動が停止される。これにより、クランプ装置が
図1Aおよび
図1Bのリリース状態から
図3のロック状態に切り換えられる。
【0023】
上記クランプ装置を
図3のロック状態から
図1Aおよび
図1Bのリリース状態に切り換えるときには、ロック室4から圧縮エアが排出されると共に、リリース室5に圧縮エアが供給される。すると、リリース室5の圧縮エアがピストン3を介してピストンロッド8を下降させていく。このとき、進出バネ13が可動部材17と第1リンク部材20と第2リンク部材22とを介してクランプアーム24をワーク26の上面を押圧させて、その押圧状態が維持されている。次いで、
図2に示すように、ピストンロッド8の長孔19の係合部19aが可動部材17の連結ピン18上の係止部18aに当接する。すると、ピストンロッド8が係合部19aと連結ピン18の係止部18aを介して可動部材17を進出バネ13の上方への付勢力に抗して下降させていく。引き続いて、可動部材17が、第1リンク部材20を当該可動部材17に対して反時計回り方向へ回動させていく。これにより、可動部材17が第3リンク部材23を介して第2リンク部材22を枢支部21に対して反時計回りの方向に回動させる。すると、クランプアーム24が左方に移動されながら一旦上昇され、その後、左方に移動されながら下降されていく。そのピストン3がハウジング1の下壁1aに受け止められて、停止される。これにより、クランプ装置が
図3のロック状態から
図1Aおよび
図1Bのリリース状態に切り換えられる。
【0024】
上記の実施形態は次の長所を奏する。
上記クランプ装置は、進出バネ13によって上方に付勢される可動部材17を備え、その可動部材17がピストンロッド8に対して上下方向に相対移動可能となっている。このため、クランプ装置をロック状態からリリース状態に切り換えるときに、可動部材17をロック位置(上方位置)に置き残した状態で、そのピストンロッド8を可動部材17より先に下降させることができる。よって、クランプアーム24が後退動作するときには、クランプアーム8の可動領域よりも下方(基端側)にピストンロッド8が退避されていることになる。従って、クランプアーム24とピストンロッド8とが干渉して退避できなくなることが防止される。これにより、そのような干渉を回避できた状態で、ピストンロッド8が長孔19の係合部19aと連結ピン18の係止部18aとを介して可動部材17を進出バネ13の上方の付勢力に抗して下降させることができる。その結果、本実施形態のクランプ装置を、コンパクトなリリース状態にすることができる。
【0025】
図4Aから
図6は、本発明の第2実施形態を示している。この第2実施形態においては、上記の第1実施形態の構成部材と同じ部材(または類似する部材)には原則として同一の参照数字を付けて説明する。
【0026】
この第2実施形態が上記の第1実施形態と異なる点は次の通りである。
本実施形態のクランプ装置の可動部材17は、筒状の支持部材9と、その支持部材9とは別の部材である接続部材15とによって構成されている。その接続部材15の下面に支持部材9の上端面が当接可能となっている。その支持部材9と接続部材15とが別体に形成されることに代えて、第1実施形態のクランプ装置のように一体に形成されてもよい。また、支持部材9を省略して接続部材15のみによって可動部材17を構成されるようにしてもよい。
【0027】
上記の第1実施形態のクランプ装置では、連結ピン18が接続部材15の案内孔16の内周壁から当該案内孔16内に突出されて、その連結ピン18がピストンロッド8の長孔19に挿入されている。これに対して、第2実施形態のクランプ装置では、連結ピン18は備えているが、案内孔16の内周壁から当該案内孔16内に突設されていない。また、ピストンロッド8に長孔19は、設けられていない。本実施形態のクランプ装置では、ピストンロッド8の外周壁から係合部材30が突設され、その係合部材30の下壁に係合部30aが形成される。その係合部30aの下方に所定の間隔をあけて対面する係止部31が、接続部材15の上面に形成される。その係合部30aが係止部31に係合可能となっている。
【0028】
上記クランプ装置を
図4Aおよび
図4Bのリリース状態から
図6のロック状態に切り換える手順は、上記第1実施形態のクランプ装置とほぼ同じである。
【0029】
上記クランプ装置を
図6のロック状態から
図4Aおよび
図4Bのリリース状態に切り換えるときには、ロック室4から圧縮エアが排出されると共に、リリース室5に圧縮エアが供給される。すると、リリース室5の圧縮エアがピストン3を介してピストンロッド8を下降させていく。このとき、進出バネ13が支持部材9と接続部材15と第1リンク部材20と第2リンク部材22とを介してクランプアーム24をワーク26の上面を押圧させて、その押圧状態が維持されている。次いで、
図5に示すように、ピストンロッド8の係合部材30の係合部30aが接続部材15の係止部31に当接する。すると、ピストンロッド8が係合部材30と係止部31を介して接続部材15を進出バネ13の上方への付勢力に抗して下方に押動させていく。引き続いて、接続部材15が、第1リンク部材20と第2リンク部材22と第3リンク部材23を反時計回り方向へ回動させていく。これにより、クランプアーム24が左方に移動されながら一旦上昇され、その後、左方に移動されながら下降されていく。そのピストン3がハウジング1の下壁1aに受け止められて、停止される。これにより、クランプ装置が
図6のロック状態から
図4Aおよび
図4Bのリリース状態に切り換えられる。
【0030】
本実施形態のクランプ装置は、次のような作用効果を奏する。
上記クランプ装置をロック状態からリリース状態に切り換える途中で、ピストンロッド8が係合部材30の係合部30aと係止部31とを介して接続部材15および支持部材9を進出バネ13の上方への付勢力に抗して下方へ押動する。これにより、ピストンロッド8によってクランプアーム24や可動部材17等がハウジング1に近づくように下方、かつ、左方(ワーク26から離れる方向)に移動されて、クランプ装置をコンパクトにリリース状態にすることができる。
【0031】
また、本実施形態のクランプ装置では、第1実施形態のクランプ装置のような長孔19がピストンロッド8に設けられていないので、ピストンロッド8の剛性を高くできる。
【0032】
上記の各実施形態は次のように変更可能である。
圧力流体は、例示した圧縮エアに代えて、他の気体または圧油等の気体であってもよい。
上記の駆動機構Dは、ハウジング1内のシリンダ孔2に挿入されるピストン3と、そのピストンの下側に形成されるロック室4と上側に形成されるリリース室5等から構成される複動式のエアシリンダである。これに代えて、リリース室にリリースバネを備える単動式のエアシリンダであっても、ロック室にロックバネを備える単動式のエアシリンダであってもよい。また、エアシリンダに限られず、油圧シリンダやモータとボールネジ軸など他の駆動機構であって良い。
上記の付勢機構Bは、進出バネ13としての圧縮バネとバネ受け14とによって構成されている。これに限られず、可動部材17の下側に形成された作動室に圧力流体(圧縮エアや圧縮された他の気体や圧油など)が封入され、その作動室の圧縮流体の圧力によって可動部材を上方(先端側)に付勢するように構成してもよい。また、進出バネ13がピストン3と可動部材17との間に装着されることに限られない。この構成に代えて、進出バネ13(付勢機構B)が、ハウジング1の上壁1bと可動部材17との間に装着されるようにしてもよく、ピストンロッド8の外周壁と可動部材17との間に装着されてもよい。
本実施形態のクランプ装置では、
図1Bおよび
図4Bに示すように、第1リンク部材20と、第2リンク部材22と、第3リンク部材23を、それぞれ、2つずつ備えるが、これに限られず、1つまたは3つ以上備えるようにしてもよい。
上記凹状の案内部は、ピストンロッド8に上下方向に延在するように貫通される長孔19に代えて、貫通されないで、底壁を有する溝状に形成されて、上下方向に延在する溝であってもよい。
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1:ハウジング,8:ピストンロッド,17:可動部材,18:連結部材,18a:係止部,19:案内部(長孔),19a:係合部,20:第1リンク部材,22:第2リンク部材,23:第3リンク部材,24:クランプアーム,25:押圧部,26:クランプ対象物(ワーク),30:係合部材,30a:係合部,31:係止部,D:駆動機構,B:付勢機構.