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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024857
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】避雷同軸コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/48 20110101AFI20240216BHJP
   H01R 13/6474 20110101ALI20240216BHJP
   H01R 13/533 20060101ALI20240216BHJP
   H02H 9/04 20060101ALI20240216BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01R24/48
H01R13/6474
H01R13/533 B
H02H9/04 C
H02H7/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127794
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000123354
【氏名又は名称】音羽電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 康彦
(72)【発明者】
【氏名】今井 健太郎
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
5E223
5G013
5G053
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA08
5E021FB11
5E021FC13
5E021FC23
5E021FC32
5E021MA09
5E021MA16
5E087EE08
5E087GG12
5E087JJ05
5E087RR02
5E087RR25
5E087RR34
5E223AB60
5E223AC23
5E223AC25
5E223BA01
5E223CA13
5E223CA21
5E223CC09
5E223FA01
5E223FA12
5E223FA13
5E223GA08
5E223GA72
5G013AA11
5G013BA02
5G013DA11
5G053AA10
5G053CA04
(57)【要約】
【課題】はんだ付け不要でコンデンサを中心導体に介在させることのできる避雷同軸コネクタを提供する。
【解決手段】避雷同軸コネクタ10は、同軸ケーブルに接続され、内部にアレスタ素子11を有し、筒状の第1、第2の各外部導体50、60と、同軸ケーブルと接続し、同軸に配置される棒状の第1、第2の各中心導体20、30と、記第1、第2の各中心導体20、30を支持する絶縁体41~44と、第1、第2の各中心導体20、30の少なくともいずれか一方の中心導体を他方の中心導体に向けて付勢する弾性体12と、第1、第2の各中心導体20、30の間に配置され、第1、第2の各電極13a、13bを有するコンデンサ13と、を備え、弾性体12の付勢力により、前記コンデンサ13の前記第1、第2の各電極13a、13bが前記第1、第2の各中心導体20、30と当接する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸ケーブルに接続され、内部にアレスタ素子を有する避雷同軸コネクタであって、
筒状の第1、第2の各外部導体と、
前記同軸ケーブルと接続され、同軸に配置される棒状の第1、第2の各中心導体と、
前記第1、第2の各中心導体を第1、第2の各外部導体内に支持する絶縁体と、
第1、第2の各中心導体の少なくとも一方を他方の中心導体に向けて付勢する弾性体と、
前記第1、第2の各中心導体の間に配置され、第1、第2の各電極を有するコンデンサと、を備え、
前記第1、第2の各中心導体の少なくとも一方は軸方向に沿って移動自由に絶縁体に支持され、
第1、第2の各中心導体の少なくとも一方が他方に向けて付勢されることで、前記コンデンサの前記第1、第2の各電極が前記第1、第2の各中心導体と当接する、避雷同軸コネクタ。
【請求項2】
前記コンデンサの前記第1、第2の各電極は、軸方向の両端側に位置し、軸に直交する面に沿う平坦面を含む、請求項1に記載の避雷同軸コネクタ。
【請求項3】
前記コンデンサは、前記絶縁体に形成された中空部内に、軸方向に沿って移動自由に保持される、請求項1に記載の避雷同軸コネクタ。
【請求項4】
前記コンデンサの前記第1、第2の各電極の少なくとも一方と当接する前記第1、第2の各中心導体の少なくとも一方の端面の面積は、前記第1、第2の各中心導体の少なくとも一方の他の部分の断面積よりも大きい、請求項1に記載の避雷同軸コネクタ。
【請求項5】
前記弾性体は、中空部を有するバネであり、
前記中空部に前記第1、第2の中心導体の少なくとも一方が貫通する、請求項1に記載の避雷同軸コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルに接続され、内部にアレスタ素子を有する避雷同軸コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、避雷同軸コネクタとして、例えば、特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1に記載のコネクタは、伝送されてきた直流成分をカットし、かつ、別の直流成分を注入するようにした、直流成分カット・インジェクション(遮断・注入)機能を備えている。この種の避雷同軸コネクタにおいては、絶縁基板の表面にマイクロストリップ線路によって中心導体等を形成する回路配線が形成され、この回路配線にはんだ付けにより、アレスタ素子、直流成分カット用のチップコンデンサ等が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3079493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発明においては、コンデンサを基板にはんだ付けしなければならず、手間がかかり、また作業者のはんだ付けの技量などによって周波数特性などの電気的特性にばらつきがでるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記した課題に着目してなされたものであり、はんだ付け不要でコンデンサを中心導体に介在させる避雷同軸コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0007】
項1:同軸ケーブルに接続され、内部にアレスタ素子を有する避雷同軸コネクタであって、
筒状の第1、第2の各外部導体と、
前記同軸ケーブルと接続され、同軸に配置される棒状の第1、第2の各中心導体と、
前記第1、第2の各中心導体を第1、第2の各外部導体内に支持する絶縁体と、
第1、第2の各中心導体の少なくとも一方を他方の中心導体に向けて付勢する弾性体と、
前記第1、第2の各中心導体の間に配置され、第1、第2の各電極を有するコンデンサと、を備え、
前記第1、第2の各中心導体の少なくとも一方は軸方向に沿って移動自由に絶縁体に支持され、
第1、第2の各中心導体の少なくとも一方が他方に向けて付勢されることで、前記コンデンサの前記第1、第2の各電極が前記第1、第2の各中心導体と当接する、避雷同軸コネクタ。
【0008】
項2:前記コンデンサの前記第1、第2の各電極は、軸方向の両端側に位置し、軸に直交する面に沿う平坦面を含む、項1に記載の避雷同軸コネクタ。
【0009】
項3:前記コンデンサは、前記絶縁体に形成された中空部内に、軸方向に沿って移動自由に保持される、項1または2に記載の避雷同軸コネクタ。
【0010】
項4:前記コンデンサの前記第1、第2の各電極の少なくとも一方と当接する前記第1、第2の各中心導体の少なくとも一方の端面の面積は、前記第1、第2の各中心導体の少なくとも一方の他の部分の断面積よりも大きい、項1から3のいずれか1項に記載の避雷同軸コネクタ。
【0011】
項5:前記弾性体は、中空部を有するバネであり、
前記中空部に前記第1、第2の中心導体の少なくとも一方が貫通する、項1から4のいずれか1項に記載の避雷同軸コネクタ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、はんだ付けなしにコンデンサを中心導体に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る避雷同軸コネクタの中心軸に沿う断面図である。
図2図1のA-A線から見た断面図である。
図3】第2の絶縁体の開いた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(全体構成)
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。本発明の避雷同軸コネクタ10は、同軸ケーブル(図示せず)に接続され、内部にアレスタ素子11を有する。アレスタ素子11は、落雷による雷サージなどの過電圧に対して瞬時に高抵抗から低抵抗となり、サージ電流を接地側に流すと共に雷サージの電圧を抑制するものである。避雷同軸コネクタ10は、筒状の第1、第2の各外部導体50、60と、同軸ケーブルの中心導体と接続され同軸に配置される棒状の第1、第2の各中心導体20、30と、第1、第2の各中心導体20、30を第1、第2の外部導体60の内部に支持する第1~第4の各絶縁体41~44と、第1、第2の各中心導体20、30の少なくとも一方の中心導体20または30を他方の中心導体30または20に向けて付勢する弾性体であるコイルバネ12と、第1、第2の各中心導体20、30の間に配置され、第1、第2の各電極13a、13bを有するコンデンサ13とを備える。第1、第2の各外部導体50、60、第1、第2の各中心導体20、30、第1~第4の各絶縁体41~44はその長さ方向はまた軸方向が中心軸Cに沿うように同軸に配置される。
【0015】
以下の説明では、特に指定しない限り、図1において、避雷同軸コネクタ10の中心軸Cに沿って、第1の外部導体50側を一方側または左側、第2の外部導体60側を他方側または右側という。また、断面形状とは中心軸Cに直交する面の形状をいう。中心軸Cに沿う方向を軸方向ともいう。
【0016】
(第1、第2の各外部導体50、60)
第1の外部導体50は、内部の断面形状が円形の中空であり、右側から左側に向けて、第1大径部51と、第1中径部52と、第1小径部53と、第1ケーブル挿入部54とが連続して設けられている。第1大径部51の内周面にはネジ51aが形成されており、ネジ51aが第2の外部導体60の外周面に形成されたネジ61aと螺合することで、第1、第2の各外部導体50、60が連結される。第1大径部51の左端には、第1中径部52との内径の差による段差面50aが形成されている。第1中径部52は第1大径部51よりも内径が小さく形成され、第1中径部52の左端には、第1小径部53との内径の差による段差面50bが形成されている。第1中径部52には第1の絶縁体41が収容される。第1小径部53は第1中径部52よりも内径が小さく形成されている。第1ケーブル挿入部54は第1小径部53よりも内径が大きく、左側に向けて内径が大きくなるように形成されている。第1の外部導体50を構成する材料は、例えば、SUS(ステンレス鋼)、黄銅等であるが、これに限定されない。
【0017】
第2の外部導体60は、内部の断面形状が円形の中空であり、左側から右側に向けて、第2大径部61と、第2中径部62と、第2小径部63と、第2ケーブル挿入部64とが連続して形成されている。第2大径部61は、外周面の左端部に第2の外部導体60と螺合するネジ61aが形成されている。第2大径部61は、第1大径部51よりも軸方向の長さが長く設定されており、第2、第3の各絶縁体42、43が収容される。第2大径部61の周壁には、アレスタ素子11が嵌め込まれる貫通孔61bが形成され、貫通孔61bの外側の開口には、アレスタ素子11が嵌め込まれた状態で貫通孔61bの開口を塞ぐための蓋部61cが取り付けられている。第2大径部61の右端には、第2中径部62との内径の差による段差面60aが形成されている。
【0018】
第2中径部62は第2大径部61よりも内径が小さく、第4の絶縁体44が収容される。第2中径部62の右端には、第2小径部63との内径の差による段差面60bが形成されている。第2小径部63は第2中径部62よりも内径が小さく形成されている。第2ケーブル挿入部64は第2小径部63よりも内径が大きく、右側に向けて内径が大きくなるように形成されている。第2の外部導体60の構成する材料は、例えば、SUS(ステンレス鋼)、黄銅等であるが、これに限定されない。
【0019】
(第1、第2の各中心導体20、30)
(第1の中心導体20)
第1の中心導体20は、第2の外部導体60、第1の外部導体50の内部に中心軸Cに沿って位置する棒状部材である。第1の中心導体20は既知の素材、加工方法により形成され、本実施形態では、素材として例えばベリリウム銅、リン青銅等が用いられ、切削加工により所定の形状に加工される。第1の中心導体20の右端部には、断面形状が円形であって、外径が第1の中心導体20の他の部分よりも大きいコンタクト部21が形成されている。コンタクト部21は、コンデンサ13を第1、第2の各中心導体20、30の間に介在させることにより生じる避雷同軸コネクタ10の電気的特性の低下を防ぐために設けられている。電気的特性の低下とは、接触抵抗の増加、特定インピーダンスの変動、また、接触抵抗の増加や特定インピーダンスの変動による電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)の低下等の現象を含む。
【0020】
コンタクト部21の右側の端面21aはコンデンサ13の第1電極13aと当接し、これにより第1の中心導体20とコンデンサ13の第1電極13aとは電気的に接続される。コンタクト部21の外径は、コンデンサ13との接触抵抗を小さくする観点から、第2の外部導体60の第2大径部61の内径以下であって、できるだけ大きく設定されることが好ましい。コンタクト部21の外径は、少なくともコンデンサ13の第1電極13aと当接するコンタクト部21の端面21aの面積がコンデンサ13の第1電極13aの面積よりも大きくなり、第1電極13aの全面と接触することが可能な径に設定される。コンタクト部21の軸方向の長さ(以下、単に「長さ」ともいう。)は、避雷同軸コネクタ10が所定の特定ピンピーダンス(例えば、50Ω)を保ち、電圧定在波比(VSWR)の低下を防ぐ観点から所定の長さに設定される。
【0021】
コンタクト部21の外径は、以下の観点により設定されてもよい。コンタクト部21を設けずにコンデンサ13を第1、第2の各中心導体20、30の間に介在させた場合、コンデンサ13およびコンデンサ13を保持する第3の絶縁体43の特性インピーダンスが高くなる。コンデンサ13およびコンデンサ13を保持する第3の絶縁体43の等価中心導体を考えたときに等価中心導体の外径が小さくなるためである。このため、外径の大きいコンタクト部21を設けて低インピーダンスとし、避雷同軸コネクタ10全体として特性インピーダンスが所定値となるように調整する。避雷同軸コネクタ10の特性インピーダンスが50Ωの場合、コンタクト部21の外径と第2の外部導体60の第2大径部61の内径(第3の絶縁体43の外径)との比率は1:1.5以上、1:2.33以下が好ましい。本実施形態では、コンタクト部21の外径を8mm、第2の外部導体60の第2大径部61の内径を14mmとし、前記比率を1:1.75としている。
【0022】
第1の中心導体20のコンタクト部21の左側には、第1の部分22、第1の部分22よりも外径の大きい第2の部分23、第1の部分22よりも外径の小さい第3の部分24、第2の部分23と外径が同じ第4の部分25、第1の部分22と外径が同じ第5の部分26が連続して形成されている。また、第3の部分24に隣り合う第2の部分23および第4の部分25の一部分には、アレスタ素子11の電極が第1の中心導体20と接触するための平坦な切り欠き面23a、25aが形成されている。第5の部分26の先端部には、同軸ケーブルの中心導体(図示せず)と連結するためのスリット27が設けられている。
【0023】
第1、第2の各外部導体50、60が嵌め合わされた状態で、第1の部分22全体および第2の部分23の右側は第2の絶縁体42に保持され、第5の部分26の右側は第1の絶縁体41に保持される。これにより、第1~第4の部分22~25は第2の外部導体60の第2大径部61内に延在し、第5の部分26は第1の外部導体50の第1中径部52内、第1小径部53内、第1ケーブル挿入部54内に延在する。第5の部分26のスリット27は第1ケーブル挿入部54内に位置する。
【0024】
(第2の中心導体30)
第2の中心導体30は、第2の外部導体60内に中心軸Cに沿って位置する棒状部材である。第2の中心導体30は既知の素材、加工方法により形成され、本実施形態では、素材として例えばベリリウム銅、リン青銅黄銅が用いられ、切削加工により所定の形状に加工される。第2の中心導体30は、左側部分31と、左側部分31よりも外径の大きい中央部分32と、左側部分31と外径が同じ右側部分33とを備える。左側部分31の左端面31aはコンデンサ13の第2電極13bと当接する。左端面31aの面積はコンデンサ13の第2電極13bの面積と同じか、小さく設定されている。右側部分33の先端部には、同軸ケーブルの中心導体(図示せず)と連結するためのスリット34が設けられている。
【0025】
第1、第2の各外部導体50、60が嵌め合わされた状態で、左側部分31は第3の絶縁体43に保持されて第2の外部導体60の第2大径部61内に延在する。中央部分32は第2の外部導体60の第2中径部62内に延在し、右側部分33は第4の絶縁体44に保持されて第2の外部導体60の第2中径部62内、第2小径部63内、第2ケーブル挿入部64内に延在する。右側部分33のスリット34は第2ケーブル挿入部64内に位置する。
【0026】
(コンデンサ13)
コンデンサ13は、雷サージによりアレスタ素子11が低抵抗となったときに生じる直流電流が第2の中心導体30へ流れるのを遮断するものである。コンデンサ13は第3の絶縁体43に支持され、本実施形態においては、略直方体を有する。コンデンサ13の第1、第2の各電極13a、13bは軸方向の両端側に位置し、軸方向に直交する面に沿う互いに平行な平坦面である。本実施形態ではコンデンサ13はセラミックチップコンデンサであるが、これに限定されず、第1、第2の各電極13a、13bが第1、第2の各中心導体20、30と当接可能な形状を有していればよい。例えば、コンデンサ13は、面実装用積層コンデンサなど互いに平行な電極を両端に有する一般的なプリント基板取付用のリード無しコンデンサであってもよく、貫通コンデンサであってもよい。
【0027】
(第1~第4の各絶縁体41~44)
(第1の絶縁体41)
第1~第4の各絶縁体41~44は、円筒形状であって、内部に断面形状が円形の中空部を有している。第1~第4の各絶縁体41~44は、素材として例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの樹脂材料が用いられるが、セラミックが用いられてもよい。
【0028】
第1の絶縁体41の中空部41aの内径は、第1の中心導体20の第5の部分26の外径と略同じであり、第5の部分26が挿入可能な大きさに設定されている。第1の絶縁体41の右端面41bの中空部41aの周りには環状の突出部41cが形成されており、突出部41cは、第1の中心導体20の第5の部分26と第4の部分25との外径の差による段差面20aに当接する。第1の絶縁体41の外径は、第1の外部導体50の第1中径部52の内径と略同じである。第1の絶縁体41の突出部41cを除く長さは第1中径部52の長さと等しい。第1の絶縁体41は、第1中径部52の内面と第1の絶縁体41の外周面との間に生じる摩擦力により、第1の外部導体50の第1中径部52に保持されている。第1の絶縁体41および第1の中心導体20にコイルバネ12による付勢力が加わったときに、第1中径部52の段差面50bに第1の絶縁体41の左端面41dが当接して、第1の絶縁体41および第1の中心導体20の移動が規制される。
【0029】
(第2の絶縁体42)
第2の絶縁体42の中空部は、第1中空部42aと、第1中空部42aと同軸であって第1中空部42aの右側に位置し第1中空部42aよりも内径が小さい第2中空部42bとを備えている。第1中空部42aの内径は、第1の中心導体20の第2の部分23の外径と略同じであり、第1中空部42aには第2の部分23の右側部分が支持される。第2中空部42bの内径は第1の中心導体20の第1の部分22の外径と略同じ、第2中空部42bの長さは第1の部分22の長さと略同じであり、第2中空部42bには第1の部分22が支持される。第2の絶縁体42の外径は、第2の外部導体60の第2大径部61の内径と略同じであり、第2の絶縁体42は、第2の外部導体60の第2大径部61の内面と第2の絶縁体42の外周面との間に生じる摩擦力により、第2大径部61の軸方向の中間位置に保持される。第1中空部42aおよび第2中空部42bの横には貫通孔42dが形成されている。
【0030】
第2の絶縁体42は、内部に第1中空部42aおよび第2中空部42bが形成された円筒状部材を、軸方向に沿い中心軸Cおよび貫通孔42dの中心軸を含む平面で分割した一対の半割体42A、42Bから構成されている。図3に示すように、各半割体42A、42Bは外周面の端部同士が軸方向に沿ってヒンジ42cを介して開閉自由に連結されている。半割体42Aは断面が半円状の柱状であり、半割体42Bと対向する面42fの中央に軸方向に沿って断面が半円状の溝42g、42hが形成されている。また、ヒンジ42cと溝42g、42hとの間に断面が半円状の溝42iが形成されている。半割体42Bは半割体42Aと対称の形状を有しており、対応する構成には対応する符号を振って説明を省略する。一対の半割体42A、42Bが閉じられて対向する面42f、42f同士が合わされたときに、溝42g、42gにより第1中空部42aが形成され、溝42h、42hにより第2中空部42bが形成され、溝42i、42iにより貫通孔42dが形成される。図3においては、各半割体42A、42Bがわずかに開いた状態を示している。第2の絶縁体42の半割体42A、42Bが開閉することで、第1の中心導体20の第1の部分22と第2の部分23を第1中空部42a、第2中空部42bにそれぞれ配置させることができる。
【0031】
(第3の絶縁体43)
第3の絶縁体43の中空部は、第1中空部43aと、第1中空部43aの右側に第1中空部43aよりも内径が小さい第2中空部43bとを備えている。第1中空部43aにはコンデンサ13が支持される。第1中空部43aの内径は、図2に示すように、断面において矩形状のコンデンサ13の対角線の長さと略同じである。コンデンサ13の4つの角部13cが第1中空部43aの内面と当接し、この内面とコンデンサ13の角部13cとの間の摩擦力により、コンデンサ13は、第1中空部43a内に軸方向に移動自由に保持される。コンデンサ13は第1中空部43aの左側の開口から挿入され、コンデンサ13の第2電極13bが第1中空部43aと第2中空部43bとの内径の差により生じる段差面43cに当接することで挿入が規制される。第1中空部43aの長さはコンデンサ13の長さよりも僅かに短く、コンデンサ13が第1中空部43aに嵌め込まれた状態で、コンデンサ13の第1電極13aは第3の絶縁体43の左端面43dから左側に突出している。
【0032】
第2中空部43bの内径は、第2の中心導体30の左側部分31の外径と略同じであり、第2の中心導体30の左側部分31は、第2中空部43b内に軸方向に移動自由に支持されている。コイルバネ12の付勢力により第2の中心導体30は第1の中心導体20に向けて付勢され、これにより左側部分31の左端面31aがコンデンサ13の第2電極13bと当接し、これによりコンデンサ13の第2電極13bと第2の中心導体30とが電気的に接続される。第2中空部43bの長さは、左側部分31の長さよりもわずかに短く設定されている。これにより、第2の中心導体30の左側部分31と中央部分32との外径の差により生じる段差面30aが第3の絶縁体43の右端面43eに当接するまで第2の中心導体30は左方向に移動可能である。
【0033】
第3の絶縁体43の外径は、第2の外部導体60の第2大径部61の内径と略同じであり、第3の絶縁体43は、第2の外部導体60の第2大径部61の内面と第2の絶縁体42の外周面との間に生じる摩擦力により、第2大径部61の右側に保持されている。第3の絶縁体43は、その右端面43eと第2大径部61の段差面60aとの間にわずかに隙間Sがある状態に位置している。なお、第3の絶縁体43の右端面43eが段差面60aに当接してもよい。
【0034】
(第4の絶縁体44)
第4の絶縁体44の中空部は、第1中空部44aと、第1中空部44aの右側に第1中空部44aよりも内径が小さい第2中空部44bを備えている。第1中空部44aには弾性体を構成するコイルバネ12が収容されている。コイルバネ12は中空部を有し、中空部に第2の中心導体30の右側部分33が貫通している。コイルバネ12の右端側にはOリング14が配置される。コイルバネ12は、右端が第1中空部44aと第2中空部44bとの内径の差により生じる段差面44dにOリング14を介して当接し、左端が、第2の中心導体30の中央部分32と右側部分33との径の差により生じる段差面30bに当接して、第2の中心導体30に左方向に向かう力を与えている。第1中空部44aの長さは、コイルバネ12が最も圧縮された時の長さとOリング14の厚みとの合計の長さよりも僅かに短く設定されている。
【0035】
第2中空部44bの内径は、第2の中心導体30の右側部分33の外径と略同じであり、第2の中心導体30の右側部分33を中心軸C方向に沿って移動自由に支持している。
【0036】
第4の絶縁体44の外径は、第2の外部導体60の第2中径部62の内径と略同じであり、第4の絶縁体44は、第2の外部導体60の第2中径部62の内面と第4の絶縁体44の外周面との間に生じる摩擦力により、第2中径部62に保持される。第4の絶縁体44は、第2中径部62の段差面60bに第4の絶縁体44の右端面44cが当接するように配置される。
【0037】
(組立の手順)
避雷同軸ケーブルの組立手順について説明する。まず、第1の中心導体20に第1の絶縁体41および第2の絶縁体42を取り付ける。次に、第3の絶縁体43の第1中空部43aにコンデンサ13を嵌め込み、第2中空部43bに第2の中心導体30の左側部分31を挿入する。そして、第2の中心導体30の右側部分33にコイルバネ12とOリング14を挿入し、第4の絶縁体44を第1中空部44aから挿入して、第1中空部44a内にコイルバネ12とOリング14とを位置させる。コイルバネ12は中央部分32と右側部分33との外径の差異により生じる段差面30bと、Oリング14との間に位置する。
【0038】
第1の絶縁体41および第2の絶縁体42が装着された第1の中心導体20を、第1の絶縁体41が第1の外部導体50の第1中径部52の段差面50bに当接するまで挿入して、第1の外部導体50内に配置する。第3の絶縁体43および第4の絶縁体44が装着された第2の中心導体30を、第4の絶縁体44が第2の外部導体60の第2中径部62の段差面60bに当接するまで挿入して、第2の外部導体60内に配置する。
【0039】
そして、第1の外部導体50の内周面のネジ51aと第2の外部導体60の外周面のネジ61aとを螺合させて、第1の外部導体50と第2の外部導体60とを連結する。第1、第2の各外部導体50、60の嵌め合いにより、コイルバネ12は第2の中心導体30を右方向に押圧する。これにより、第1の中心導体20のコンタクト部21はコンデンサ13の第1電極13aに当接し、第2の中心導体30の左側部分31はコンデンサ13の第2電極13bに当接し、コンデンサ13と第1、第2の各中心導体20、30が電気的に接続される。
【0040】
第2の外部導体60の貫通孔61bにアレスタ素子11を嵌め込み、蓋部61cにより開口を覆う。アレスタ素子11は第1の中心導体20の切り欠き面23a、25aに当接して、第1の中心導体20と電気的に接続する。
【0041】
本実施形態によれば、第1の外部導体50と第2の外部導体60との内部に第1~第4の絶縁体41~44に支持されたコンデンサ13と第1、第2の各中心導体20、30とを収容し、第1の外部導体50と第2の外部導体60とを嵌め合わせることで、避雷同軸ケーブル10が組み立てられる。このような簡単な動作で第1の中心導体20と第2の中心導体30との間にコンデンサ13を介在させて電気的に接続することができ、はんだ付けの手間が不要で、組立が容易である。また、作業者のはんだ付けの技量などによって電気的特性にばらつきがでることがない。さらに、はんだ付けに要する時間が不要となり、コンデンサ13を取り付けるための基板が不要となり、コストを削減できる。
【0042】
また、第2の中心導体30は弾性体であるコイルバネ12により第1の中心導体20に向けて付勢され、第1の中心導体20と第2の中心導体30との間にコンデンサ13が介在している。このため、コンデンサ13の第1、第2の各電極13a、13bと第1、第2の各中心導体20、30とを確実に当接させることができ、コンデンサ13の第1電極と第1、第2の各中心導体20、30との電気的接続が保たれる。
【0043】
本実施形態では、コンデンサ13としてセラミックチップコンデンサを用いている。セラミックチップコンデンサは市場で販売されている容量の種類が多いため、避雷同軸コネクタ10の電気的特性を保つために適切な容量のコンデンサ13を選択することができる。
【0044】
コンデンサ13の第1電極13aと当接するコンタクト部21の端面21aはコンデンサ13の第1電極13aの面積よりも大きく、かつ第1の中心導体20の他の部分の断面積よりも大きく設定されているため、コンデンサ13との接触抵抗をできるだけ小さくすることができ、電気的特性の低下を防ぐことができる。
【0045】
また、コンタクト部21の中心軸Cに沿う長さを所定の長さに設定することで、避雷同軸コネクタ10の電圧定在波比(VSWR)が低下せず、電気的特性の低下を防ぐことができる。
【0046】
さらに、コイルバネ12の中空部に第2の中心導体30を貫通させることで、第2の中心導体30とコイルバネ12とを連続して並べる場合に比べてインダクタンスが小さくなり、電気的特性の低下を防ぐことができる。
【0047】
また、本実施形態では、第4の絶縁体44の第1中空部44aの段差面44dに当接するようにOリング14が配置され、コイルバネ12自体がコンデンサ13に向けて押圧されている。このため、第2の中心導体30がコンデンサ13から離れる方向に引かれてコイルバネ12が最も縮んだ状態となった場合であっても、第2中心導体を確実にコンデンサ13の第2電極13bに当接させることができる。
【0048】
本実施形態の避雷同軸コネクタ10は、従来技術のようにコンデンサ13等が取り付けられた基板を備える場合に比べて軽量になる。このため、同軸ケーブルに避雷同軸コネクタ10を接続する際に、架体等に固定することなく架空とすることができる。特に、避雷同軸コネクタ10に防水構造を施すことで屋外の架空の同軸ケーブルにも接続可能となる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。本実施形態では、弾性体であるコイルバネ12の中空部に第2の中心導体30が貫通し、第2の中心導体30を第1の中心導体20に向けて付勢しているが、コイルバネ12の中空部に第1の中心導体20が貫通し、第1の中心導体20を第2の中心導体30に向けて付勢してもよい。また、第1の中心導体20、第2の中心導体30の両方にコイルバネ12が設けられ、互いに向けて付勢されていてもよい。
【0050】
また、本実施形態では第1の中心導体20にコンタクト部21が形成されているが、コンタクト部21は第2の中心導体30に形成されていてもよく、第1の中心導体20、第2の中心導体30の両方に設けられていてもよい。
【0051】
実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。本明細書にて、「略同じ」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略同じ」とは、実質的に「同じ」であることを意味し、厳密に「同じ」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。また、本明細書において「端部」及び「端」等のように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端部」とは、「端」を含む一定の範囲を持つ部分を意味する。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【符号の説明】
【0052】
10 避雷同軸コネクタ
11 アレスタ素子
12 弾性体(コイルバネ)
13 コンデンサ
13a、13b 第1、第2の各電極
14 Oリング
20、30 第1、第2の各中心導体
41~44 第1~第4の各絶縁体
図1
図2
図3