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特開2024-24868情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024868
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/095 20120101AFI20240216BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240216BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240216BHJP
【FI】
B60W30/095
G08G1/16 C
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127810
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】馬場 一郎
(72)【発明者】
【氏名】安井 裕司
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA15
3D241BA50
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE04
3D241DB01Z
3D241DC33Z
3D241DC35Z
3D241DC41Z
3D241DC50Z
5H181AA01
5H181AA05
5H181AA27
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF05
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
5H301AA03
5H301AA10
5H301CC03
5H301CC06
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG14
5H301GG16
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】撮像画像に基づく走路の認識精度に過度に依存することなく、移動体の走行軌道を適切に生成すること。
【解決手段】移動体の軌道生成を行う情報処理装置であって、前記移動体の周囲の走行環境を認識する認識部と、認識された前記走行環境内に位置する物標の周囲に設定されるリスク値を算出するリスク算出部と、前記移動体の走行軌道であって、複数の軌道点を並べた走行軌道を生成する軌道生成部と、を備え、前記軌道生成部は、繰り返し処理を実行するものであり、今回の処理タイミングよりも前の処理タイミングにおいて生成された前回の走行軌道を基準線とし、前記リスク値に基づいて、前記基準線を構成する前記複数の軌道点のそれぞれを、前記基準線の法線方向にオフセットすることによって今回の走行軌道を生成する、情報処理装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の軌道生成を行う情報処理装置であって、
前記移動体の周囲の走行環境を認識する認識部と、
認識された前記走行環境内に位置する物標の周囲に設定されるリスク値を算出するリスク算出部と、
前記移動体の走行軌道であって、複数の軌道点を並べた走行軌道を生成する軌道生成部と、を備え、
前記軌道生成部は、繰り返し処理を実行するものであり、今回の処理タイミングよりも前の処理タイミングにおいて生成された前回の走行軌道を基準線とし、前記リスク値に基づいて、前記基準線を構成する前記複数の軌道点のそれぞれを、前記基準線の法線方向にオフセットすることによって今回の走行軌道を生成する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記軌道生成部は、前記基準線を構成する前記複数の軌道点のそれぞれを、前記基準線の法線方向であって前記リスク値が小さくなる方向にオフセットすることによって前記今回の走行軌道を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記物標は、前記移動体が走行可能な領域の境界線、又は前記移動体と接触する可能性のある物体を含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記軌道生成部は、前記移動体が所定速度以下で走行している場合に、前記走行軌道を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記軌道生成部は、前記認識部が、前記移動体の走路上に所定幅以下の幅員を認識した場合に、前記走行軌道を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
生成された前記走行軌道に沿って前記移動体を走行させる走行制御部をさらに備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが、
移動体の軌道生成を行うために、
前記移動体の周囲の走行環境を認識し、
認識された前記走行環境内に位置する物標の周囲に設定されるリスク値を算出し、
前記移動体の走行軌道であって、複数の軌道点を並べた走行軌道を生成し、
繰り返し処理を実行するものであり、今回の処理タイミングよりも前の処理タイミングにおいて生成された前回の走行軌道を基準線とし、前記リスク値に基づいて、前記基準線を構成する前記複数の軌道点のそれぞれを、前記基準線の法線方向にオフセットすることによって今回の走行軌道を生成する、
情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
移動体の軌道生成を行うために、
前記移動体の周囲の走行環境を認識させ、
認識された前記走行環境内に位置する物標の周囲に設定されるリスク値を算出させ、
前記移動体の走行軌道であって、複数の軌道点を並べた走行軌道を生成させ、
繰り返し処理を実行するものであり、今回の処理タイミングよりも前の処理タイミングにおいて生成された前回の走行軌道を基準線とし、前記リスク値に基づいて、前記基準線を構成する前記複数の軌道点のそれぞれを、前記基準線の法線方向にオフセットすることによって今回の走行軌道を生成させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体が走行する経路の走行軌道を生成する技術が知られている。例えば、特許文献1には、自車両が走行する経路の幅に応じて、自車両の走行軌道および速度を決定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/116265号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、移動体の走行軌道を生成するに当たり、車載カメラによって撮像された画像における走路の認識精度に依存する傾向があった。例えば、従来技術では、撮像画像に基づいて走路の両側の区画線を認識し、認識された区画線の中心線を導出することによって走行軌道を生成する場合があるが、例えば、移動体が、クランクやS字カーブを走行する場合には、これら両側の区画線の認識精度が十分ではなく、走行軌道を生成することができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、撮像画像に基づく走路の認識精度に過度に依存することなく、移動体の走行軌道を適切に生成することができる情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る情報処理装置は、移動体の軌道生成を行う情報処理装置であって、前記移動体の周囲の走行環境を認識する認識部と、認識された前記走行環境内に位置する物標の周囲に設定されるリスク値を算出するリスク算出部と、前記移動体の走行軌道であって、複数の軌道点を並べた走行軌道を生成する軌道生成部と、を備え、前記軌道生成部は、繰り返し処理を実行するものであり、今回の処理タイミングよりも前の処理タイミングにおいて生成された前回の走行軌道を基準線とし、前記リスク値に基づいて、前記基準線を構成する前記複数の軌道点のそれぞれを、前記基準線の法線方向にオフセットすることによって今回の走行軌道を生成するものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記軌道生成部は、前記基準線を構成する前記複数の軌道点のそれぞれを、前記基準線の法線方向であって前記リスク値が小さくなる方向にオフセットすることによって前記今回の走行軌道を生成するものである。
【0008】
(3):上記(1)の態様において、前記物標は、前記移動体が走行可能な領域の境界線、又は前記移動体と接触する可能性のある物体を含むものである。
【0009】
(4):上記(1)の態様において、前記軌道生成部は、前記移動体が所定速度以下で走行している場合に、前記走行軌道を生成するものである。
【0010】
(5):上記(3)の態様において、前記軌道生成部は、前記認識部が、前記移動体の走路上に所定幅以下の幅員を認識した場合に、前記走行軌道を生成するものである。
【0011】
(6):上記(1)から(5)の態様において、前記情報処理装置は、生成された前記走行軌道に沿って前記移動体を走行させる走行制御部をさらに備えるものである。
【0012】
(7):この発明の別の態様に係る情報処理方法は、コンピュータが、移動体の軌道生成を行うために、前記移動体の周囲の走行環境を認識し、認識された前記走行環境内に位置する物標の周囲に設定されるリスク値を算出し、前記移動体の走行軌道であって、複数の軌道点を並べた走行軌道を生成し、繰り返し処理を実行するものであり、今回の処理タイミングよりも前の処理タイミングにおいて生成された前回の走行軌道を基準線とし、前記リスク値に基づいて、前記基準線を構成する前記複数の軌道点のそれぞれを、前記基準線の法線方向にオフセットすることによって今回の走行軌道を生成するものである。
【0013】
(8):この発明の別の態様に係るプログラムは、コンピュータに、移動体の軌道生成を行うために、前記移動体の周囲の走行環境を認識させ、認識された前記走行環境内に位置する物標の周囲に設定されるリスク値を算出させ、前記移動体の走行軌道であって、複数の軌道点を並べた走行軌道を生成させ、繰り返し処理を実行するものであり、今回の処理タイミングよりも前の処理タイミングにおいて生成された前回の走行軌道を基準線とし、前記リスク値に基づいて、前記基準線を構成する前記複数の軌道点のそれぞれを、前記基準線の法線方向にオフセットすることによって今回の走行軌道を生成させるものである。
【発明の効果】
【0014】
(1)~(8)の態様によれば、撮像画像に基づく走路の認識精度に過度に依存することなく、移動体の走行軌道を適切に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システムの構成図である。
図2】第1制御部および第2制御部の機能構成図である。
図3】第1目標軌道生成部142が目標軌道を生成する方法を説明するための図である。
図4】第2目標軌道生成部148が目標軌道を生成する方法を説明するための図である。
図5】第2目標軌道生成部148が目標軌道を生成する方法を説明するための別の図である。
図6】実施形態に係る車両制御装置によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】リスク算出部146と第2目標軌道生成部148とによって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】実施形態に係る目標軌道生成のシミュレーションの実行結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムの実施形態について説明する。以下の説明において、移動体の代表例として車両を挙げるが、移動体は車両に限らず、マイクロモビリティやロボット(車輪を有するもの、多足歩行するものなどを含む)など、自律移動するあらゆる移動体に適用可能である。
【0017】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システムの構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0018】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0019】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0020】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0021】
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0022】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0023】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0024】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0025】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0026】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0027】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0028】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0029】
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
【0030】
自動運転制御装置100は、車両制御装置の一例である。自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160とを備える。第1制御部120と第2制御部160は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0031】
図2は、第1制御部および第2制御部の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0032】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物標の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物標とは、静止している物体と、移動している物体との双方を含むものである。物標の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。
【0033】
本実施形態において、認識部130は、カメラ10によって撮像された、自車両Mの周辺状況を表す画像に少なくとも基づいて、自車両Mが走行可能な領域の境界線(例えば、道路区画線、路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなど)や、自車両Mが接触する可能性のある物体(例えば、歩行者や他車両など)を認識するものとする。認識部130は、左右の道路区画線を、例えば、複数の点群データとして認識し、左右の道路区画線を構成する点群の間の距離を算出することによって、幅員を認識する。
【0034】
行動計画生成部140は、例えば、第1目標軌道生成部142と、切替判定部144と、リスク算出部146と、第2目標軌道生成部148とを備える。第1目標軌道生成部142、切替判定部144、リスク算出部146、第2目標軌道生成部148のうち一部または全部は、認識部130に含まれてもよい。第2目標軌道生成部148は、「軌道生成部」の一例である。切替判定部144と、リスク算出部146と、第2目標軌道生成部148とを合わせたものが「情報処理装置」の一例である。また、「情報処理装置」は第2制御部160を含んでもよく、その場合、「情報処理装置」は「車両制御装置」となる。
【0035】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。行動計画生成部140は、自車両Mの状態や、認識部130によって認識された周辺状況に応じて、第1目標軌道生成部142又は第2目標軌道生成部148を用いて目標軌道を生成する。この詳細については後述する。
【0036】
目標軌道は、例えば、自車両Mの代表点(例えば、前端部中央、重心、後輪軸中心など)が到達すべき地点(軌道点)を道路長手方向に関して所定距離ごと(例えば数[m]程度ごと)に順に並べた(連ねた)ものとして表現される。目標軌道には、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が付与される。軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0037】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0038】
第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0039】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0040】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0041】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0042】
[目標軌道の生成]
以下、目標軌道の生成手法について、より詳細に説明する。
【0043】
第1目標軌道生成部142は、車両センサ40によって検知された自車両Mの車速が所定速度以上であり、かつ認識部130によって認識された自車両Mの走路の幅員が所定幅以上である場合に、自車両Mの目標軌道を生成する。これらの条件は一例であり、例えば、第1目標軌道生成部142は、これらの条件のうちのいずれか一方が成立する場合に、自車両Mの目標軌道を生成してもよい。また、例えば、第1目標軌道生成部142は、認識部130によって、自車両Mの進行方向上に特定種類の走路(クランクやS字カーブなど)が認識されなかった場合に、自車両Mの目標軌道を生成してもよい。
【0044】
図3は、第1目標軌道生成部142が目標軌道を生成する方法を説明するための図である。図3において、符号LLおよびRLは、それぞれ認識部130によって認識された左側道路区画線および右側道路区画線を示し、符号LLPおよびRLPはそれぞれ左側道路区画線LLおよび右側道路区画線RLを構成する点群を示し、符号PおよびBはそれぞれ自車両Mの走行車線L1に存在する歩行者およびバイクを示す。図3に示す通り、左側道路区画線LLを構成する点群LLPと、右側道路区画線RLを構成する点群RLPは、それぞれ左側道路区画線LLの始点LLP(1)および右側道路区画線RLの始点RLP(1)から所定間隔で配置されるものである。
【0045】
第1目標軌道生成部142は、まず、左側道路区画線LLの点群RLPを構成する各点LLP(k)と、右側道路区画線RLの点群RLPを構成する各点RLP(k)とを始点からの順序に基づいて対応付け(ペアリング)、その中心点CLP(k)を算出する。第1目標軌道生成部142は、算出した中心点CLP(k)を接続することによって、目標軌道を生成するための基準となる中心線CL(基準線)を得る。
【0046】
次に、第1目標軌道生成部142は、認識部130により認識された物標に近いほど否定的な値になる指標値(リスク値)を、基準線CLを構成する点CLP(k)ごとに導出する。図3において、色が濃い部分は、リスク値が大きいことを表し、色が薄い部分は、リスク値が小さいことを表している。本実施形態では、値がプラスであることが「否定的」、ゼロに近いことが「肯定的」であるものとするが、この関係は逆でもよい。例えば、図3の場合、認識部130により認識された物標の1つであるバイクに近い点CLP(4)は、他の点CLP(k)に比して、より高いリスク値が算出されることとなる。
【0047】
第1目標軌道生成部142は、基準線CLを構成する点CLP(k)ごとにリスク値を算出すると、算出されたリスク値の総和(又は、算出されたリスク値のうちの最大値)が閾値以上である場合には、リスク値の総和が当該閾値未満となるように、基準線CLを修正する。より具体的には、第1目標軌道生成部142は、基準線CLを構成する点CLP(k)を、基準線CLの法線方向にオフセットすることによって基準線CLを修正し、再度、リスク値を算出する。第1目標軌道生成部142は、算出されたリスク値の総和が閾値未満となった時点で得られた修正基準線CLを目標軌道TJ1として設定する。
【0048】
なお、算出されたリスク値の総和が閾値未満となるオフセット量を探索するために、第1目標軌道生成部142は、ランダム変数を用いた確率的な勾配法の一種である同時摂動最適化(SPSA:Simultaneous Perturbation Stochastic Approximation)を用いても良い。また、図3の状況とは異なり、点CLP(k)を接続することによって得られる基準線CLは折れ線であることも考えられるが、その場合、法線方向は一意に定まらないため、第1目標軌道生成部142は、例えば、最小二乗法を用いて、折れ線に曲線をフィッティングし、フィッティングされた曲線の法線方向に基づいて、点CLP(k)をオフセットしても良い。また、例えば、折れ線を構成する線分がなす角度の二分の一を法線方向として定義しても良い。
【0049】
このように、第1目標軌道生成部142は、認識部130により認識された左側道路区画線LLおよび右側道路区画線RLの点群の各点LLP(k)およびRLP(k)をペアリングし、中心点CLP(k)を算出し、算出された中心点CLP(k)を接続して基準線CLを取得し、自車両Mの周辺のリスク値に基づいて基準線CLを修正することによって、目標軌道TJ1を得る。
【0050】
しかしながら、このような手法による目標軌道の生成は、事前に左側道路区画線LLおよび右側道路区画線RLの各点をペアリングすることが必要とされ、カメラ10によって撮像された画像に基づく走路の認識に高い精度が求められる。しかしながら、例えば、クランクやS字カーブなど道路構造が急激に変化する走路領域(換言すると、低速走行領域)や、幅員が狭い走路領域では、上述した手法の実行に必要な認識精度が得られず、その結果、目標軌道が得られない場合がある。
【0051】
このような事情を背景にして、切替判定部144は、車両センサ40の出力に基づいて、自車両Mが走行中、自車両Mの車速が所定速度以下であるか、又は、認識部130により認識された幅員に基づいて、自車両Mの走路上に所定幅以下の幅員を認識したか否かを判定する。切替判定部144は、自車両Mが走行中、自車両Mの車速が所定速度以下であるか、又は、認識部130により認識された幅員に基づいて、自車両Mの走路上に所定幅以下の幅員を認識したと判定した場合、第1目標軌道生成部142に代えて、第2目標軌道生成部148に目標軌道を生成させる。
【0052】
図4は、第2目標軌道生成部148が目標軌道を生成する方法を説明するための図である。図4において、符号TJ2は第2目標軌道生成部148によって生成される目標軌道を示し、符号TJ2Pは、目標軌道TJ2を構成する軌道点を示し、符号RRは、少なくともカメラ10によって撮像された撮像画像に基づいて認識部130により認識された自車両Mの走行環境の認識範囲を示す。図4における目標軌道TJ2(t-1)は、今回生成する目標軌道TJ2(t)の一サイクル前に生成された目標軌道を表す。
【0053】
まず、第2目標軌道生成部148は、今回の目標軌道TJ2(t)を生成するに当たり、前回のサイクルで生成された目標軌道TJ2(t-1)を基準線として設定する。第2目標軌道生成部148が目標軌道を生成する初回である場合には、前回の目標軌道TJ2(t-1)として、第1目標軌道生成部142が生成した目標軌道TJ1(t-1)を用いてもよいし、初回のタイミングのみ、第1目標軌道生成部142と同様の手法で目標軌道を生成しても良い。
【0054】
リスク算出部146は、第2目標軌道生成部148によって設定された基準線上の各軌道点TJ2P(t-1)の法線方向に設定され、かつ認識範囲RRに存在する物標のリスク値を算出する。リスク値の算出方法は、図3を用いて説明した第1目標軌道生成部142の手法と同様であり、認識された物標に近いほど大きな値(否定的な値)として算出される。第2目標軌道生成部148は、リスク算出部146によって算出されたリスク値に基づいて、各軌道点TJ2P(t-1)をリスク値が小さくなる方向にオフセットすることによって、今回の目標軌道TJ2(t)を生成する。
【0055】
第2目標軌道生成部148は、生成した今回の目標軌道TJ2(t)を次回の基準線として設定して、同様に次回の目標軌道TJ2(t+1)を生成する。第2目標軌道生成部148は、上記の目標軌道生成処理を、切替判定部144によって自車両Mの車速が所定速度以上、かつ走路の幅員が所定幅以上であると判定されるまで繰り返し実行する。切替判定部144は、自車両Mの車速が所定速度以上、かつ走路の幅員が所定幅以上と判定した場合、目標軌道生成処理を第1目標軌道生成部142に実行させる。
【0056】
図5は、第2目標軌道生成部148が目標軌道を生成する方法を説明するための別の図である。図5において、今回の目標軌道TJ2(t)は、基準線TJ2(t-1)の各点TJ2P(t-1)を、リスク値が小さくなるように法線方向にオフセットすることによって得られるものである。図5から分かる通り、基準点TJ2P(t-1)は、右側道路区画線RLよりも左側道路区画線LLに近接している。そのため、リスク算出部146は、基準点TJ2P(t-1)の法線方向に関して、右側よりも左側のリスク値を大きく算出し、第2目標軌道生成部148は、基準点TJ2P(t-1)を右側にオフセットして今回の軌道点TJ2P(t)を得る。なお、図5において、点線TLは、自車両Mの旋回角を定義するための曲線を表す。曲線TLは、目標軌道TJ2P(t)の点TJ2P(t)のうち、自車両M側の数個の軌道点に沿った円弧として定義されるものである。第2制御部160は、自車両Mを曲線TLに沿って旋回させる。
【0057】
以上の通り、第1目標軌道生成部142と異なり、第2目標軌道生成部148は、左側道路区画線LLの各点LLP(k)と、右側道路区画線RLの各点RLP(k)とをペアリングすることなく、前回の目標軌道TJ2(t-1)を基準線として用いて今回の目標軌道TJ2(t)を生成する。すなわち、クランクやS字カーブのように、両側の道路区画線を等しい精度で認識することが困難な走路においても、第2目標軌道生成部148は、今回の目標軌道TJ2(t)を生成することができる。これにより、撮像画像に基づく走路の認識精度に過度に依存することなく、移動体の走行軌道を適切に生成することができる。
【0058】
なお、上記の説明では、第2目標軌道生成部148は、基準線TJ2(t-1)を1回オフセットする場合について説明しているが、本発明はそのような構成に限定されない。例えば、第2目標軌道生成部148は、基準線TJ2(t-1)をオフセットすることによって得られた今回の目標軌道TJ2(t)上にある各軌道点のリスク値を算出し、算出されたリスク値の総和(又は、算出されたリスク値のうちの最大値)が閾値以上となる場合には、閾値未満に到達するまで、今回の目標軌道TJ2(t)を再度オフセットしてもよい。
【0059】
図6は、実施形態に係る車両制御装置によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートの処理は、自車両Mが走行中、所定サイクルで繰り返し実行されるものである。
【0060】
まず、切替判定部144は、自車両Mの車速が所定速度以下、又は進行方向上に所定幅以下の幅員を認識したか否かを判定する(ステップS100)。自車両Mの車速が所定速度以下、又は進行方向上に所定幅以下の幅員を認識していないと判定された場合、第1目標軌道生成部142が目標軌道を生成する(ステップS102)。
【0061】
一方、自車両Mの車速が所定速度以下、又は進行方向上に所定幅以下の幅員を認識したと判定された場合、第2目標軌道生成部148が目標軌道を生成する(ステップS104)。次に、第2制御部160は、生成された目標軌道に沿って、自車両Mを走行させる(ステップS106)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0062】
図7は、リスク算出部146と第2目標軌道生成部148とによって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートの処理は、図6のフローチャートのステップS104において実行されるものである。
【0063】
まず、第2目標軌道生成部148は、前回サイクルで生成された走行軌道を取得して、基準線として設定する(ステップS200)。次に、リスク算出部146は、設定された基準線を構成する軌道点ごとに、基準線の法線方向のリスク値を算出する(ステップS202)。
【0064】
次に、第2目標軌道生成部148は、基準線の法線方向であって、算出されたリスク値が小さくなる方向に各軌道点をオフセットする(ステップS204)。第2目標軌道生成部148は、オフセットされた基準線を今回の走行軌道として設定する(ステップS206)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0065】
なお本出願の発明者は、本発明の動作についてシミュレーションを行った。図8は、実施形態に係る目標軌道生成のシミュレーションの実行結果を示す図である。図8は、第2目標軌道生成部148の機能を実装した移動体M1がS字カーブを走行する様子を表している。図示するように、第1目標軌道生成部142による目標軌道生成では左右の道路区画線の各点をペアリングすることが困難であるS字カーブにおいても、第2目標軌道生成部148の機能を実装した移動体M1は、スムーズに走行可能であることが分かった。
【0066】
以上の通り説明した本実施形態によれば、今回の処理タイミングよりも前の処理タイミングにおいて生成された前回の走行軌道を基準線とし、認識された走行環境内に位置する物標の周囲に設定されるリスク値に基づいて、基準線を構成する複数の軌道点のそれぞれを、基準線の法線方向にオフセットすることによって今回の走行軌道を生成する。これにより、撮像画像に基づく走路の認識精度に過度に依存することなく、移動体の走行軌道を適切に生成することができる。
【0067】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
移動体の軌道生成を行うために、
前記移動体の周囲の走行環境を認識し、
認識された前記走行環境内に位置する物標の周囲に設定されるリスク値を算出し、
前記移動体の走行軌道であって、複数の軌道点を並べた走行軌道を生成し、
繰り返し処理を実行するものであり、今回の処理タイミングよりも前の処理タイミングにおいて生成された前回の走行軌道を基準線とし、前記リスク値に基づいて、前記基準線を構成する前記複数の軌道点のそれぞれを、前記基準線の法線方向にオフセットすることによって今回の走行軌道を生成する、
ように構成されている、情報処理装置。
【0068】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0069】
10 カメラ
100 自動運転制御装置
120 第1制御部
130 認識部
140 行動計画生成部
142 第1目標軌道生成部
144 切替判定部
146 リスク算出部
148 第2目標軌道生成部
160 第2制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8