(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024878
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】安全スイッチ
(51)【国際特許分類】
F16P 3/08 20060101AFI20240216BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20240216BHJP
E05F 7/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F16P3/08
E05B47/00 L
E05F7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127826
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 研史
(72)【発明者】
【氏名】友師 悟
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 寛士
(57)【要約】
【課題】作業者の邪魔になるのを抑制する。
【解決手段】安全スイッチ(100)は、電磁石(130)を備えたスイッチ本体(104)と、電磁石(130)に吸着されるアクチュエータ(104)とを有する。スイッチ本体(104)は、安全スイッチ(100)を制御する駆動制御部と安全制御部を有し、この駆動制御部と安全制御部は筐体(Hg)に包囲されている。筐体(Hg)は、スイッチ本体(102)の電磁石(130)の背面側に配置され、筐体(Hg)によって、駆動制御部と安全制御部とを収容する収容部(132)が形成されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着面が形成された磁化部材を有するアクチュエータがスイッチ本体に対して相対移動可能に設置される安全スイッチであって、
前記アクチュエータが前記スイッチ本体に対して所定範囲にあることを検出する検出部と、
前記アクチュエータの被吸着面に対応する吸着面が前面側に形成される電磁石と、
前記アクチュエータの相対移動をロックするためのロック信号を受けるロック入力部と、
前記ロック入力部が受ける前記ロック信号に基づいて前記吸着面と前記被吸着面とが吸着するように前記電磁石を駆動する駆動制御部と、
前記検出部の検出に基づく安全信号を生成する安全制御部と、
前記電磁石の背面側に、前記駆動制御部と前記安全制御部とを収容する収容部を形成する筐体とを備える、安全スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の安全スイッチにおいて、
前記駆動制御部と前記安全制御部とが実装された一または複数の制御基板を備える、安全スイッチ。
【請求項3】
請求項1に記載の安全スイッチにおいて、
前記電磁石は、背面側で前記筐体と接続する、安全スイッチ。
【請求項4】
請求項1に記載の安全スイッチにおいて、
前記スイッチ本体は、前記電磁石の背面側に、前記検出部による検出結果を示す表示部を更に有する、安全スイッチ。
【請求項5】
請求項4に記載の安全スイッチにおいて、
前記スイッチ本体は、該スイッチ本体を設置箇所に取り付けるための取付部を更に備え、
前記表示部は、前記スイッチ本体の前記取付部が位置する面の反対側から視認可能な位置に設けられる、安全スイッチ
【請求項6】
請求項4に記載の安全スイッチにおいて、
前記スイッチ本体の背面にコネクタ連結部が設けられる、安全スイッチ。
【請求項7】
請求項4に記載の安全スイッチにおいて、
前記表示部が、前方に向けて傾斜する、安全スイッチ。
【請求項8】
請求項1に記載の安全スイッチにおいて、
前記電磁石の吸着面は、前記アクチュエータの被吸着面よりも小さく、
前記検出部は、前記アクチュエータに設けられるアクチュエータコイルとの間で無線信号をやり取りするアンテナコイルを有し、
前記電磁石の前記吸着面と、前記吸着面と接触する前記アクチュエータの被吸着面とが対向して前記吸着面と前記被吸着面とが接触する第一状態において、前記アクチュエータコイルと対向する位置に前記アンテナコイルが設けられる、安全スイッチ。
【請求項9】
請求項8に記載の安全スイッチにおいて、
前記電磁石には、前記アンテナコイルが設けられる位置の近傍に当該電磁石が駆動されることによる前記アンテナコイルへの影響を低減するための突出部が設けられる、安全スイッチ。
【請求項10】
請求項8に記載の安全スイッチにおいて、
前記第一状態において前記突出部と前記被吸着面とがギャップを介して対向する、安全スイッチ。
【請求項11】
請求項1に記載の安全スイッチにおいて、
前記駆動制御部は、前記検出部による検出結果と前記ロック入力部が受ける前記ロック信号とに基づいて前記吸着面と前記被吸着面とが吸着するように前記電磁石を駆動する、安全スイッチ。
【請求項12】
請求項1に記載の安全スイッチにおいて、
前記電磁石に、前記スイッチ本体を設置箇所に取り付けるための取付部が形成される、安全スイッチ。
【請求項13】
請求項1に記載の安全スイッチにおいて、
前記電磁石に接続される金属部材を備え、
前記金属部材に、前記スイッチ本体を設置箇所に取り付けるための取付部が形成される、安全スイッチ。
【請求項14】
被吸着面が形成された磁化部材を有するアクチュエータがスイッチ本体に対して相対移動可能に設置される安全スイッチであって、
前記アクチュエータが前記スイッチ本体に対して所定範囲にあることを検出する検出部と、
前記アクチュエータの被吸着面に対応する吸着面が前面側に形成される電磁石と、
前記アクチュエータの相対移動をロックするためのロック信号を受けるロック入力部と、
前記ロック入力部が受ける前記ロック信号に基づいて前記吸着面と前記被吸着面とが吸着するように前記電磁石を駆動する駆動制御部と、
前記電磁石の背面に設けられる接続部を介して接続され、前記駆動制御部と前記安全制御部とを収容する収容部を形成する筐体と、を備え、
前記吸着面が前記スイッチ本体の前面を構成し、
前記吸着面と接触する前記アクチュエータの前記磁化部材とが対向して前記吸着面と前記磁化部材の被吸着面とが接触する第1状態において、前記吸着面と直交する方向の前記磁化部材と前記安全スイッチとの合計長さが前記吸着面の直径よりも大きいことを特徴とする安全スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は安全スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
装置が稼働する環境において、人体が稼働している装置に対して自由に接触可能な状態では、装置によって人体に危害が及ぶ虞がある。装置が稼働する環境においては、稼働している装置により人体に危害が及ばないようにするために、換言すれば、安全状態を実現するために、防護柵や区画パネルにより当該装置が稼働する稼働領域を区画する。稼働領域を区画することにより安全状態を実現する一の方法は、稼働領域を防護柵などの固定部分で区画することで人体が稼働領域に入らないようにする、すなわち、稼働領域を人体が存在する領域から隔離する方法である。他の方法は、稼働領域を区画し、かつ、装置の稼働を制限可能な区画システムを構築する方法である。区画システムにおいては、稼働領域を防護柵等の固定部分で区画しつつ、その上で、作業者が稼働領域にアクセスできるように、区画の一部に開口と、この開口を開け閉めする可動部分と、を設置する区画、すなわち、作業者が稼働領域に入ることを許容する区画がなされる。区画システムでは、可動部分を監視し、その監視結果に応じて当該稼働領域で稼働する装置を、人体に危害を及ぼさないように制御するように、制御系統が構築される。このような区画システムにおいては、可動部分が設置される開口の領域に、可動部分の開閉を監視する安全スイッチが設置される。
【0003】
安全スイッチは、区画固定部分に配置されるスイッチ本体と、区画の可動部分を構成する開閉ドアに配置されるアクチュエータとから構成される。安全スイッチは、稼働領域を安全状態に維持するための機能として、可動部分であるドアが開放されたことを検出して出力し、区画システム全体では安全スイッチからの出力に応じて稼働領域内の装置を、人体に危害が及ばない状態に制御する。安全スイッチからの出力に応じて、例えば、稼働領域内の装置を停止させる、装置の作動速度を低下させる等のシステム構成にすることで、当該装置が稼働する環境の安全対策がなされる。
【0004】
安全スイッチの一種として、ロックピン機構付き安全スイッチが特許文献1に開示されている。ロックピン機構付き安全スイッチは、区画固定部分に設置されたアクチュエータボルトと、ドアに設置されたスイッチ本体とを有し、スイッチ本体にロックピンが設けられている。アクチュエータボルトとスイッチ本体とは、ドアを閉じたときに、互いに対向する相対的な位置に配置される。ロックピン機構において、アクチュエータボルトにロックピンが機械的に係合することによりアクチュエータボルトとロックピンとが物理的に一体となるロック状態が形成される。ロックピン機構付き安全スイッチは、ロックピン機構付き安全スイッチがロック状態であることを検出できるように検出機構が設けられ、少なくともロック状態でないときにロック状態でないことを示す出力をする。ドアを閉じて、そして、ロックピン機構をロック状態にすることで、閉じた状態の開閉ドアは、区画の固定部分と一体化した状態で固定される。逆に、アクチュエータボルトからロックピンを離脱させることによりアンロック状態が形成され、ドアを開けることができる。
【0005】
特許文献2は、安全スイッチの他の種類である電磁ロック機構付き安全スイッチを開示している。すなわち、電磁ロック機構付き安全スイッチは、電磁石と、これに吸着されるアクチュエータ磁化部材とを有している。可動部分を構成するドアにアクチュエータ磁化部材が設置され、他方、防護柵などの区画固定部分に、電磁石を含むスイッチ本体が設置される。電磁石を駆動してアクチュエータ磁化部材を電磁石が吸着することによりドアロック状態が形成される。安全スイッチは表示部を備えている。表示部は稼働領域の安全状態を表示する。
【0006】
特許文献2の電磁ロック機構付き安全スイッチは、「ドアが閉じた」信号を以て作業者が、稼働領域内が安全つまり稼働領域内に人が居ないと誤認して機械を再起動することを防ぐために、作業者が操作する施錠レバーを有している、この施錠レバーによって、作業者が、何らかの方法で稼働領域が安全に保たれていることを確認したうえで施錠レバーを操作することで、その時点から「ドアが閉じている」信号が出力されている間は安全であると判断できる。ひとたびドアが開くと、その後「ドアが閉じている」信号が出力されても安全かどうかは不明な状態になる。
【0007】
特許文献2は、また、ドアの開け閉めを監視するために、監視センサと監視アクチュエータとで構成されたモジュールを開示している。監視アクチュエータは開閉ドアに設置され、他方、監視センサは区画固定部分に設置される。可動部分であるドアの開け閉めに伴って監視アクチュエータが監視センサに離反又は接近することで、監視センサは、「ドアが開いた」という第1状態信号又は「ドアが閉じた」という第2状態信号を含むドア信号を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-183541号公報
【特許文献2】特表2016-510382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した通り、安全スイッチが用いられる安全対策においては、主に作業などの目的で人体が出入りする開口付近に、安全スイッチが設置される。このため、安全スイッチは作業者にとって邪魔な存在である。例えば安全スイッチを稼働領域の外部の区画固定部分に配置する場合には、安全スイッチの表示部を稼働領域の外部にいる作業者が確認し易いという利点があるが、開閉ドアの位置に関わらず、安全スイッチが区画固定部分から外部に突出した存在となるため、作業者にとって邪魔な存在となる。逆に、安全スイッチを稼働領域の内部に配置した場合、安全スイッチが区画固定部分から外部に突出することによる作業性の低下は解消されるが、開閉ドアを開放した時の作業性を低下させる。より詳細には、安全スイッチを稼働領域の内部に配置する場合、区画の可動部分としてのドアが閉じた時に、開閉ドアに配置されるアクチュエータの近くにスイッチ本体が配置される必要がある。このため、スイッチ本体は、ドアが開放されたときにドア開口として機能する領域を占有するような位置に配置される。このため、スイッチ本体を含む安全スイッチは可動部分が配置されるドア開口の領域を狭める要因となるため、可動部分が開放されたとき、すなわち、ドア開口を通じた作業を行うときに安全スイッチが邪魔になってしまう可能性がある。また、安全スイッチを稼働領域の内部に配置した場合、開口の領域に安全スイッチが位置するため、例えば開閉ドアのうち開口と対応する領域が透明もしくは半透明の部材で構成されていて、作業者が外部から稼働領域を覗き見るとき、作業者にとってスイッチ本体が見え難くなってしまう虞がある。
【0010】
本発明の目的は、作業者の邪魔になるのを抑制することのできる電磁ロック機構付きの安全スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
被吸着面が形成された磁化部材を有するアクチュエータがスイッチ本体に対して相対移動可能に設置される安全スイッチであって、
前記アクチュエータが前記スイッチ本体に対して所定範囲にあることを検出する検出部と、
前記アクチュエータの被吸着面に対応する吸着面が前面側に形成される電磁石と、
前記アクチュエータの相対移動をロックするためのロック信号を受けるロック入力部と、
前記ロック入力部が受ける前記ロック信号に基づいて前記吸着面と前記被吸着面とが吸着するように前記電磁石を駆動する駆動制御部と、
前記検出部の検出に基づく安全信号を生成する安全制御部と、
前記電磁石の背面側に、前記駆動制御部と前記安全制御部とを収容する収容部を形成する筐体とを備える、安全スイッチを提供することにより達成される。
【0012】
本発明によれば、電磁石に対して、吸着面と反対側に基板収容部が位置しているため、区画可動部分が設置される開口の領域を狭める要因となるスイッチ本体の存在を小さくすることができる。また、区画の外側つまり外部から覗き見たときにスイッチ本体が小さく見える。すなわち、稼働領域の内部に位置するスイッチ本体の基板収容部が、吸着面が外部から見たときに吸着面から遠ざかる位置に位置しているため、作業者が外部から稼働領域を覗き見たときにスイッチ本体が小型に見える。
【0013】
本発明の作用効果、他の目的は、以下の本発明の好ましい実施態様の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例の安全スイッチを設置した防護柵、開閉ドアの正面図である。安全スイッチは電磁ロック機構付き安全スイッチで構成される。
【
図2】
図1のII-II線に沿って切断した断面図である。
【
図3】本発明を適用可能なボックス状の装置を説明するための図である。
【
図4】実施例の安全スイッチの一つの構成要素であるアクチュエータの斜視図である。
【
図5】実施例の安全スイッチの他の構成要素であるスイッチ本体を斜め前方且つ斜め上方から見た斜視図である。
【
図8】
図5に図示のスイッチ本体の中心線に沿って切断した縦断面図である。
【
図9】
図5に図示のスイッチ本体から筐体を取り除いた図である。
【
図10】
図5に図示のスイッチ本体の電磁石と筐体とを分離して斜め後方から見た説明図である。
【
図11】防護柵のドア開口枠と開閉ドアのドアフレームに設置した安全スイッチを開閉ドアの外側から見た斜視図である。
【
図12】実施例の安全スイッチの表示部の配置に関する作用効果を説明するための図である。
【
図13】実施例に含まれるスイッチ本体の電気的な構成を説明するためのブロック図である。
【
図16】表示の表示態様を具体的に説明するための図である。
【
図17】表示部の好ましい配置位置を説明するための図である。
【
図18】電磁石に鉄片が密着しているか否かを判定する方法を説明するための図である。
【
図19】実施例の安全スイッチのアクチュエータの縦断面図である。
【
図20】
図19に図示のアクチュエータに含まれる圧縮コイルバネに関する図であり、(I)は平面図、(II)は無負荷状態での圧縮コイルバネの側面図、(III)は圧縮力を付与して押し潰した状態の圧縮コイルバネの側面図である。
【
図21】実施例の安全スイッチにおいて、吸着面の向きと被吸着面の向きとを整合させる過程を説明するための図であり、(I)はドアが開いたときのアクチュエータの待機状態を示し、(II)はドアを閉じる過程で、アクチュエータが電磁石に接近したときに、永久磁石の吸引力の下で被吸着面が吸着面に向けて前進する状態を示し、(III)は永久磁石の吸引力の下で、被吸着面が吸着面に密着した状態を示す。
【
図22】
図20に図示のアクチュエータの状態変化を説明するための図であり、(I)は被吸着面つまり鉄片が退却位置に位置した図であり、(II)は鉄片が進出位置に位置した図であり、(III)は鉄片が進出位置にあり且つ電磁石の吸着面と平行状態を確立するために傾いた状態にある図である。
【
図23】実施例に含まれるスイッチ本体において、ヨーク部分の円筒外面の一部に径方向外方に突出する突出部を設けることにより磁束の漏れを抑えた部位にセンサ側コイルを配置する技術的意味を説明するための図であり、吸着面を覗き見る方向からスイッチ本体を見た底面図である。
【
図24】
図23のXXIV-XXIV線に沿って切断したセンサ本体の断面図である。//他の寸法と同じようにギャップGpを説明してください。
図24以外の図(例えば
図5、
図6、
図23)で図示されても何を示しているのかわからないです。
【
図25】比較例のスイッチ本体において、円形の吸着面を備えた円筒状のスイッチ本体から漏れた磁束によってセンサ側コイルが悪影響を受けることを説明するための図であり、吸着面を覗き見る方向から比較例のスイッチ本体を見た底面図である。
【
図26】
図25のXXVI-XXVI線に沿って切断した比較例のセンサ本体の断面図である。
【
図27】ドア開口枠に設置するスイッチ本体の設置構造を模式的に表現した図である。
【
図28】スイッチ本体の設置構造の第1変形例を説明するための
図27に対応した模式図である。
【
図29】スイッチ本体の設置構造の第2変形例を説明するための
図27に対応した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0015】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
図1は、区画システム1としての、実施例の電磁ロック機構付き安全スイッチを設置した開閉ドア及び防護柵の説明図である。
図2は、
図1のII-II線に沿って切断した断面図である。図中、参照符号PFは防護柵を示し、参照符号PDは開閉ドアを示す。
図1は、区画システム1により区画される稼働領域Sの外から、区画システム1を見たときの説明図である。区画システム1は、区画固定部分としての防護柵PFと、区画固定部分に対して移動可能な可動部分を構成するドアPDと、安全スイッチ100と、から構成される。区画システム1は、安全スイッチ100が出力する安全関連出力に基づいて、稼働領域Sの内部の装置の稼働を制限することで、稼働領域Sを安全な状態に維持する。本実施例において、安全スイッチ100は稼働領域S内に配置される。防護柵PFは、装置が稼働する稼働領域Sを区画する区画システム1の区画固定部分を構成する。区画固定部分に対して可動部分を構成するドアPDが設置される開口は、ドア開口枠2で形成されている。
図1を参照して、可動部分を構成するドアPDの一側には、上下に離間した複数のヒンジ4が設けられ、この複数のヒンジ4を介してドア開口枠2の垂直枠部2aに取り付けられている。すなわち、ドアPDは片開き式ドアである。
【0016】
図1、
図2を参照して、ドアPDは、ドアフレーム6と、ドアフレーム6に包囲された透明ボード8とで構成されている。ドアPDは、その一側に上記ヒンジ4が取り付けられ、他側にドア操作部10が取り付けられている(
図1)。ドア操作部10を操作することにより、ドア開口枠2と係脱するドアラッチ(図示せず)が開放されてドアPDを開くことができる。
【0017】
図2は、ドアPDが閉じた状態を示し、ドアPDを構成するドアフレーム6がドアストッパ110に接触し、位置決めされている。
図2において、防護柵PFと開閉ドアPDとにより区画される稼働領域Sは、
図2の紙面上において、防護柵PFとドアPDより右側に位置する領域である。閉じた状態のドアPDに関連して安全スイッチ100が稼働領域S側に配置されている。ドアPDが閉じた状態で安全スイッチ100がドアPDに対して稼働領域S側に位置するように配置されることにより、安全スイッチ100が稼働領域Sの内部に配置される。
図2を参照して、安全スイッチ100はスイッチ本体102とアクチュエータ104とで構成されている。スイッチ本体102は、ドア開口枠2の上方水平枠部2bの稼働領域S側の面に、第1ブラケット106を介して固定されている。スイッチ本体102は吸着面130aを有する電磁石130を備える。ドアPDが閉じた状態において、吸着面130aがドアPDと対向するように、換言すれば、稼働領域Sの外部に向くように、スイッチ本体102がドア開口枠に設置される。なお、
図2には、互いに直交する3つの方向を示す矢印X,Y,Zが図示されているが、後述するように、安全スイッチ100の配置姿勢に対応している。
【0018】
実施例の安全スイッチ100のスイッチ本体102は、後に
図7などを参照して説明するように、電磁石130(
図8)と基板収容部132とを含み、基板収容部132には基板Cb(1)、Cb(2)(
図8、
図9)が収容されている。
【0019】
他方、アクチュエータ104はドアフレーム6の稼働領域S側の面に配置され、具体的には、第2ブラケット108を介して、ドアフレーム6の上辺フレーム部分6aに固定されている(
図2)。ドア開口枠2、ドアフレーム6は、共に、周知の構造である閉じた矩形の横断面を有するが、変形例として、コ字状断面又はL字状断面の形状を有していてもよい。
【0020】
ドアPDは特許文献2に記載の開閉ドアに関連している。他方、
図3は、作業システムを収容したボックス状の装置500を示す。
図3において、3台の装置500が横並びに配置されている。各装置500のボックス502には、その内部に設置された装置504に作業者が手でアクセスできるように、ドアPDの一例としての観音開きの開閉ドア506が取り付けられている。開閉ドア506に関連して、ボックス状の装置500に安全スイッチ100を設置することができる。
【0021】
以下、典型例として、
図1、
図2に開示のドアPDに適用した実施例に基づいて本発明の実施例を説明する。
図4は、安全スイッチ100に含まれるアクチュエータ104の実質的な正面図であり、アクチュエータ104の正面形状を説明するための図である。アクチュエータ104は、磁化部材である鉄片120を主体として構成され、プラスチック成型品122、アクチュエータ通信部124、取付金具126を備えている。鉄片120は正面視円形であり、正面に、吸着面130aと吸着する被吸着面120aを有する。鉄片120の直径を参照符号D1で示す。鉄片120はプラスチック成型品122に取り付けられる。鉄片120の周囲はプラスチック成形品122で覆われており、このプラスチック成形品122に覆い隠された態様で、アクチュエータ通信部124が配置されている。取付金具126は、プラスチック成型品122に対して鉄片120と反対側に設けられ、
図4の紙面上の左右に延びる形状を有する。取付金具126には、アクチュエータ104の正面から見える部分に、当該取付金具を締結するためのネジが挿通される一対の取付孔が設けられる。この一対の取付金具126が第2ブラケット108に締結され、アクチュエータ104は、第2ブラケット108を介してドアPDに固定される(
図2)。ドアPDが閉じた状態で、アクチュエータ104とスイッチ本体102の相対的な位置関係は、アクチュエータ104はドアフレーム6の稼働領域S側の面に位置する。すなわち、ドアPDが閉じた状態において、鉄片120の被吸着面120aが稼働領域Sに向いた状態となるように、アクチュエータ104がドアフレーム6に設置される。他方、スイッチ本体102は稼働領域Sの内部に位置する。なお、本実施例にでは、アクチュエータ104は第2ブラケット108を介してドアPDに固定されるが、取付金具126が直接ドアフレーム6に締結され、アクチュエータ104がドアPDに固定される構成であっても良い。
【0022】
図2に図示の配置例に基づいてアクチュエータ104をドアPDに固定するときの配置例について具体的に説明する。アクチュエータ104は、前述したように、ドアフレーム6の上辺フレーム部分6aに固定される。本実施例では、アクチュエータ104の一対の取付金具126が横方向つまり上辺フレーム部分6aの長手方向に取付孔が並ぶようにして取付金具126が固定される。この設置例において、
図4の参照符号Haはアクチュエータ104に含まれる正面視円形の鉄片120の高さを示す。アクチュエータ104は、
図2に設置例では、高さHaの方向が上辺フレーム6aの幅Wdfの方向に整合した状態でドアフレーム6に固定される。アクチュエータ104の高さHaは、矩形断面のドアフレーム6の平均的な幅Wdfと等しいか又は小さい(
図2)。ドアフレーム6に設置したアクチュエータ104は、その一部がドアフレーム6の内側つまり透明ボード8の部位まで突出していてもよいが、この突出量は、極力小さい方が望ましい。これにより、アクチュエータ104の存在が作業の邪魔になるのを低減することができる。
【0023】
本実施の安全スイッチ100において、スイッチ本体102の電磁石130とアクチュエータ104の鉄片120とは電磁ロック機構として機能する。そして、前述したように、安全スイッチの電磁ロック機構は、歴史的に、ロックピン機構の技術的思想を踏襲して開発されている。実施例の電磁ロック機構付き安全スイッチ100の設計思想を説明する。一般論として、安全スイッチの役割を検討してみると、稼働する装置が配置される稼働領域において、この稼働領域を安全な環境に維持させる、という本来的な要求はドアの開閉を検出する機能で実現され、ドアロック機能に要求される役割は、稼働領域において装置を稼働させ続けること、である。したがって、ドアロック機能は、稼働領域において装置を稼働させ続けることを実現できれば足りるということができる。換言すれば、安全スイッチのドアロック機能に求められる基本事項は、装置の稼働中に開閉ドアの不用意な開放を阻止することである。これは、開閉ドアが不用意に開放されると、稼働領域を安全な環境に維持するための安全スイッチの機能により、稼働領域において装置の稼働が制限されるからである。すなわち、稼働領域S(
図2)又はボックス502(
図3)内の装置の運転が、ドアPD、506の不用意な開放によって中断されてしまうのを防止するのが、安全スイッチに求められるドアロック機能の本質的な役割である、ということができる。
【0024】
従来、安全スイッチのドアロック機能は、稼働領域を安全な環境に維持させることにも寄与できるように設計されている。このため、電磁ロック機構にも、比較的強い操作力でもドアが開放されない程度に強い磁力の電磁石が採用されていた。しかしながら、ドアロック機能の役割を、安全な環境に維持させることではなく、装置を稼働させ続けること、とする観点に立脚すると、電磁ロック機構付き安全スイッチに採用する電磁石の磁力の程度は、従来と同じであってもよいが、これよりも磁力を弱くしてもよい。作業者がドアPDを開ける操作を行う際に、ドアPDを開けるのに必要とされる操作力に関し、少なくとも「貴方は、今、ドアPDを開ける操作を行っているが、貴方の意思通りであるか?」と作業員に問いかけることができる操作力を求めることで、開閉ドアの不用意な開放を阻止できる。ドアPDを開けるのに、作業者の意思を確認できる一定の操作力を電磁石によって求めれば、これ以上の操作力を求めなくても、ドアPDの不用意な開放を阻止できる。
【0025】
したがって、任意であるが、電磁石130の磁力の程度に関し、従来よりも弱くして、例えば、ドアPDがドアノブなどの操作部を備えている場合に、ドアノブを回転させる操作力がドアノブに加わるとドアラッチが解除されるが、少なくともドアラッチを解除する操作力よりも強い磁力の電磁石130が用いられる。これにより、作業者に、ドアPDを開放させるのを思いとどまらせることができ、不用意なドアPDの開放を阻止できる。そして、ドアPDの不用意な開放に伴って発生する、装置の予期しない運転中断を回避することができる。
【0026】
図5を参照して、スイッチ本体102は、スイッチ本体102を区画システム1の固定部分であるドア開口枠2に固定するための取付部としてのネジ穴130cを有している。より詳細には、電磁石130は、吸着面130aの中心から外に向かう方向に沿って突出する突出部130bを有し、突出部130bにネジ穴130cが設けられている。
図2に図示の配置例で説明すれば、スイッチ本体102は、断面L字状の第1ブラケット106を介してドア開口枠2の上方水平枠部2bに固定される(
図2)。
図2の配置例で説明すれば、突出部130bは電磁石130の上部に突出して位置し、突出部130bの平らな頂面が取付面を構成し、取付面にネジ穴130cが設けられている。この取付面は電磁石130の側面に形成してもよい。
【0027】
例えば、
図5には、互いに直交する3つの方向を示す矢印X、Y、Zが図示されている。矢印X、Y、Zに示される方向はいずれも安全スイッチ100の配置姿勢に対応し、矢印X、Y、Zに示される方向をそれぞれX軸線方向、Y軸線方向、Z軸線方向と呼ぶ。Y軸線方向は、電磁石130の吸着面130aの法線方向を示す。Z軸線方向は、Y軸線方向と直交し且つ吸着面130aと平行な且つ吸着面130aの中心に対して突出部130bが突出する方向を示す。X軸線方向は、吸着面130aと平行な且つZ軸線と直交する方向を示す。本実施例の安全スイッチ100は、
図2に示すように、閉じた状態のドアPDに対して吸着面130aが対向するように配置されるため、閉じた状態のドアPDの法線方向はY軸線方向に一致する。また、本実施例の安全スイッチ100は、吸着面130aの中心に対して突出部130bが突出する方向が、閉じた状態のドアPDの上辺フレーム部分6aの延伸方向や、ドア開口枠2の上辺水平枠部2bの延伸方向に直交するように配置される。このため、本実施例においては、上辺フレーム部分6aの延伸方向や、上辺水平枠部2bの延伸方向はX軸線方向に一致し、また、ドアPDに対して稼働領域S側に向かう方向、すなわち稼働領域Sの奥行方向はY軸線方向に一致する。なお、以降の説明では、Y軸方向において、閉じた状態のドアPDから吸着面130aに向かう方向を「後方」、反対に向かう方向を「前方」、Z軸方向において、吸着面130aから突出部130bに向かう方向を「上方」、反対に向かう方向を「下方」と呼ぶ場合がある。
【0028】
図5ないし
図10はスイッチ本体102に関する図である。
図5は、スイッチ本体102の斜視図である。
図6は正面図である。
図7は側面図である。
図7から最も良く分かるように、スイッチ本体102はY軸線方向に延びる略筒状の形状を有する。スイッチ本体102は、Y軸線方向において前方側の一端面を構成する吸着面130aを含む電磁石130を有している。吸着面130aはスイッチ本体102の前端面の主体を構成している。具体的には、スイッチ本体102の一端面は吸着面130aで構成されている。吸着面130aは、前述したように、ドアPDを閉じたときに、ドアPDと対向する。
【0029】
図5に示すようにスイッチ本体102は、基板を収容する基板収容部132を含む筐体Hgと、アクチュエータ104の検出結果に基づき安全スイッチ100から出力される安全関連出力に対応する表示をする表示部142と、を備える。電磁石130には背面側、すなわちY軸線方向において吸着面130aと反対側に接続部が形成され、当該接続部により電磁石130と筐体Hgとが接続される。基板収容部132は、Y軸線方向において、電磁石130の吸着面130aと反対側に位置する。換言すれば基板収容部132は、電磁石130の後方、もしくは電磁石130の背面側に位置する。このため、電磁石130のX軸線方向の寸法及びZ軸線方向の寸法に対して、スイッチ本体102全体のX軸線方向の寸法やZ軸線方向の寸法が大きくなりにくい。また、表示部142は、筐体HgのうちY軸線方向において電磁石130に対して吸着面130aと反対側に位置する。スイッチ本体102は、X軸線方向の寸法とZ軸線方向の寸法とのいずれよりも、Y軸線方向の寸法が大きい形状である。このため、同様の容量を必要とする他のスイッチ本体と比較して、前方から見たときに、ドア開口枠2に形成される開口に占める面積が小さくなりやすい。
【0030】
図6は、スイッチ本体102を前方から見た正面図である。
図6の紙面法線方向は、Y軸線方向に平行である。上述したように、基板収容部132は電磁石130の後方に位置する。このため、スイッチ本体102を前方から見ると、
図6から分かるように、基板収容部132を有する筐体Hgの大部分が、電磁石130に隠される。したがって、筐体Hgを設けることによる、前方から見たときのスイッチ本体102が占める面積の増大量が抑えられる。本実施例においては、前方から見たときに、吸着面130aが占める面積に対して筐体Hgの占める面積の比率が小さい。
【0031】
図6に示すように、前方から見たときに筐体Hgが占める領域は、吸着面130aの中心に対してネジ穴130cが設けられる側に位置する領域が、吸着面130aの中心に対してネジ穴130cが設けられるのと反対側に位置する領域より大きい。換言すれば、正面視において、筐体Hgの大部分は、吸着面130aの中心に対して上方に位置する。ネジ穴130cによりスイッチ本体102が固定されるとき、吸着面130aのX軸方向最大寸法部分と、スイッチ本体102が取り付けられるドア開口枠2との間にデッドスペースが生じる。当該デッドスペースが筐体Hgを設ける領域に活用されることにより、ドア開口枠2を介しての作業性が低下しにくい。したがって、筐体Hgが、正面視において筐体Hgが占める領域が吸着面130aの中心に対してネジ穴130cが設けられる側に多くなるように構成されることにより、スイッチ本体102が配置されたドア開口枠2を介しての作業の作業性が確保される。
【0032】
図7はスイッチ本体102の側面図である。スイッチ本体102は、電磁石130に関して、吸着面130aとは反対側に基板収容部132を有している(
図8)。前述したように、参照符号Hgは、基板収容部132の筐体を示す。基板収容部132のうち、Y軸線方向において吸着面130aが位置するのと反対側、すなわち後方の端面134にコネクタ連結部144が設けられる(
図7、
図8)。後端面134は、スイッチ本体102における、吸着面130aが位置するのと反対側の端面でもある。コネクタ連結部144はY軸線方向に沿って吸着面130から遠ざかる方向に延びている。基板収容部132の端面134にコネクタ連結部144を設けることにより、コネクタ連結部144に接続されるケーブルの配置に関し、ケーブルをスイッチ本体102の周りに位置させる必要はない。また、基板収容部132の後端面134にコネクタ連結部144に配置されるため、コネクタ連結部144に接続されるケーブルのうち、少なくともコネクタ連結部144の近傍の部分は、スイッチ本体102より後方に位置する。このため、ケーブルにより、前方からの表示部142の視認性が低下する虞が低減する。また、コネクタ連結部144に接続されるケーブルを、スイッチ本体102より後方に引き回す、ネジ穴130cがある上方に引き回すなどすることにより、ドア開口枠2により形成される開口近傍にケーブルを位置させない引き回しが可能になるため、ドア開口枠2を介しての作業の作業性が低下し難い。
【0033】
図8は、Z軸線方向に沿って切断したスイッチ本体102の縦断面図である。
図9は、基板収容部132に配置された2つの基板Cb(1)、基板Cb(2)の配置を説明するための図である。
図9は、筐体Hgを取り外して収容部132を露出させた状態のスイッチ本体102を斜め前方から見た斜視図である。
図10は、電磁石130と筐体Hgの分解斜視図であり、スイッチ本体102を後方から見た図である。
【0034】
図9を参照して、特に限定するものではないが、後に説明する電磁石130のヨーク部分Yk(
図24)の一部を隆起させた形状にすることで、この隆起形状部で突出部130bが構成されている。
図2に図示の配置例では、突出部130bが上に位置するように取り付けられているが、取付部103bが横に位置するようにスイッチ本体102を取り付けることも可能である。
【0035】
突出部130bは、
図5、
図8から分かるように、前後つまりY軸線方向に離間した2つのねじ穴130cを有し、この2つのねじ穴130cに螺合するネジScを使って断面L字状の第1ブラケット106に固定される(
図2)。
【0036】
図8、
図9を参照して、基板収容部132には、第1基板Cb(1)と第2基板Cb(2)が収容され、第1基板Cb(1)と第2基板Cb(2)は直交した状態で配設されている。具体的には第1基板Cb(1)は、その板面がY軸線方向に沿った姿勢で配置され、第2基板Cb(2)は、その板面がZ軸線方向に沿った姿勢で配置されている。第2基板Cb(2)は、第1基板Cb(1)の後端部において、
図8に図示の状態において、好ましくは第1基板Cb(1)から垂下する状態で配置されている。
【0037】
上述の通り、スイッチ本体102は、少なくとも、スイッチ本体102により出力される安全関連出力に対応する表示をする表示部142(
図2、
図5、
図7)を有している。表示部142は、スイッチ本体102の、取付部としてのネジ穴130cが位置する面の反対側から視認可能な位置に設けられている。つまり、突出部130bの頂面で形成される取付面が存在しない側から視認可能な位置に設けられている。ドア開口枠2にスイッチ本体102が固定されるとき、ネジ穴130cはドア開口枠2に形成される開口から外側に向かうように配置されて固定される。このため、ネジ穴130cが設けられる面と反対側の面は開口の内側に向かうように配置される。
図2の例では、スイッチ本体102はドア開口枠2のうち上辺水平枠部2bに固定されるため、開口から外側に向かう方向は上方である。そして、上辺水平枠部2bにおいて、開口の内側は下方であるため、表示部142が設けられる面は、下方に面する。本実施例では、開口を形成するドア開口枠2のうち上辺水平枠部2bに固定されるが、ドア開口枠2のうちヒンジ4が設けられる側と反対側の枠部(
図1紙面上における右側の枠部)にスイッチ本体102が固定される場合は、表示部142は、
図1紙面上の左方に位置する。このようにネジ穴130cと反対側に表示部142を設けることにより、ドア開口枠2のうち、スイッチ本体102が取り付けられる枠部と反対側、すなわち、開口の内側に表示部142が面する。透明ボード8を有するドアPDの外側から稼働領域Sを覗き込む場合、透明ボード8が開口の内側に位置するため、開口の内側からスイッチ本体102を視認することになる。このため、ドア開口枠2に固定されたときに開口の内側に表示部142が位置するようにすることで、表示部142の視認性が向上する。
【0038】
第2基板Cb(2)はコネクタ連結部144に接続され、この第2基板Cb(2)には、下部の前面に色違いの複数の表示灯150(
図8)、具体的には複数のLED素子が実装されている。複数の表示灯(LED素子)150は、表示部142の光源を構成する。稼働領域Sに設置したスイッチ本体102を外部から視認可能な面に配置された表示部142は、周知のように、スイッチ本体102の動作状態を識別可能な色で表示する機能を有している。
【0039】
図8を参照して、基板収容部132において、板面が前後つまりY軸線方向に沿って延びる第1基板Cb(1)と、板面がZ軸線方向に沿って延びる第2基板Cb(2)とによって限定的な照明空間Lsが形成されている。そして、この限定された照明空間Lsに向けて、第2基板Cb(2)に実装されたLED150の光が出射され、その結果、表示部142の一部を構成し且つ基板収容部132の筐体Hgの一部を構成する光透過性材料を通じて表示される。勿論、光源を構成するLED150を第1基板Cb(1)に設けてもよい。
【0040】
ドアPDを通じた表示部142の視認性を
図11、
図12を参照して説明する。
図11は、外部からドアPDを通じてスイッチ本体102を覗き見た図である。
図12は、表示部142の視認性を説明するために作成した模式図である。図中、参照符号Eyは作業者の目である。
【0041】
図12において、参照符号142-1は、スイッチ本体102の吸着面130aの近位に位置する表示部を示す。すなわち、吸着面130aと表示部142-1との間のY軸線方向の距離D-1が相対的に小さい。参照符号142-2は、吸着面130eの遠位に位置する表示部を示す。吸着面130aと表示部142―2との間のY軸線方向の距離D-2が相対的に大きい。
図12から理解できるように、表示部142は、任意であるが、吸着面130aの近位に配置するよりも遠位に配置させた方が、外部からドアPDを通じて表示部142を見たときの視認性が良いことが分かる。好ましくは、表示部142は、スイッチ本体102のY軸線方向の全長L(
図5)の半分の長さの中間ラインImdよりも後方に配置させるのがよい。すなわち、吸着面130aからY軸線方向に中間ラインImdよりも離れた位置に表示部142を配置するのがよい。
【0042】
図7から分かるように、表示部142の外表面は、湾曲した断面形状を有し、そして、スイッチ本体102の両側のZ軸線方向中間部分まで延びている。これにより、取付面を除く三方側から表示部142を視認することができる。また、表示部142は、Y軸線方向において吸着面130a側に向けて先細りに傾斜した形状を有している。換言すれば、表示部142は、ドアPDにおいて稼働領域Sの外側である前方に向けて傾斜した面を有する。表示部142を吸着面130a側に先細りの形状にすることで、作業者にとって表示部142が見やすくなる。
【0043】
基板収容部132の筐体Hgはプラスチック成形品で構成されている。筐体Hgの一部は吸着面130aの方向に延びて電磁石130の突出部130bの一部を包囲する形状を有している。筐体Hgは突出部130bの頂面と実質的に同じ高さレベルの平らな頂面を有している(
図5)。
【0044】
第1基板Cb(1)の本体Cb(本体)には、電磁石130の駆動信号を生成する制御回路、電源回路、アクチュエータ104との通信回路などが搭載される。他方、第2基板Cb(2)には、表示灯制御回路などが搭載される。
【0045】
図9を参照して、基板収容部132において、Y軸線方向に沿って板面が延びる第1基板Cb(1)は、基板収容部132に位置し且つ制御回路などが搭載された本体Cb(本体)から吸着面130aの近傍までY軸線方向に延びる細長い左右一対の基板延長部Cb(1ex)を有している。一対の基板延長部Cb(1ex)はX軸線方向において突出部130bを挟んでその両側に位置している。一対の基板延長部Cb(1ex)を突出部130bの両側に位置させる構成により、基板延長部Cb(1ex)の存在によってスイッチ本体102のZ軸線方向の高さ寸法が増大するのを防止することができる。また、基板延長部Cb(1ex)は、その一部が、Z軸線方向視において、電磁石130と重なる位置に配置される。このため、基板延長部Cb(1ex)の存在によってスイッチ本体102のZ軸線方向及びX軸線方向の寸法の増大を低減することができる。
【0046】
一対の基板延長部Cb(1ex)において、一方の基板延長部Cb(1ex)には、その先端部にセンサ側コイル(アンテナコイル)152が搭載されている(
図9)。センサ側コイル152は、アクチュエータ104がスイッチ本体102に対して所定範囲にあることを検出する検出部を構成する。一方の基板延長部Cb(1ex)の先端部にセンサ側コイル152を搭載することにより、Y軸線方向においてセンサ側コイル152を吸着面130aの近くまで位置させることができる。その結果、センサ側コイル152の検知能力を高めることができる。このセンサ側コイル152は、周知のように、前述したアクチュエータ104のアクチュエータ通信部124に対応して配置される。このとき、センサ側コイル152によるアクチュエータ通信部124の検知のために、センサ側コイル152は金属ではなくプラスチックからなる筐体Hgで覆われる。このため、スイッチ本体102は、アクチュエータ102に対向する面に、吸着面130a以外に筐体Hgの一部が存在する。本実施例では、上述したように、この筐体Hgの一部をデッドスペースに配置することによって、スイッチ本体102が配置されるドア開口枠2を介しての作業性を維持することができる。
【0047】
例えばドアPDを閉じる過程において、ドアPDの閉じ動作に連動してアクチュエータ104の鉄片120は、
図17を参照して、スイッチ本体102の吸着面130aに接近し、次いで鉄片120はスイッチ本体102の吸着面130aと重なり合う。鉄片120(被吸着面120a)の直径D1(
図4)が吸着面130aの直径D2よりも大きな値となるように設計される。鉄片120が正規の状態でスイッチ本体102に重なり合った状態、つまり鉄片120の中心O1と吸着面130aの中心O2が整合した正規の状態に基づいて、吸着面130aの外縁が鉄片120の被吸着面120a内に位置するように、吸着面130aの直径D2に対して鉄片120の直径D1が設定される。これにより、スイッチ本体102及び/又はアクチュエータ104が、許容可能な相対変位したとしても、スイッチ本体102はアクチュエータ104を所定の吸着力で固定することができる。
【0048】
ドアPDが閉じた状態、すなわち、センサ側コイル152がアクチュエータ通信部を検知すると、稼働領域S(
図2)に設置された装置を制御する制御装置(例えばPLC)に安全関連出力を出力する。センサ側コイル152に関連したRFID検出回路(図示せず)は、第1基板Cb(1)の基板延長部Cb(1ex)に実装され、電磁石130はセンサ側コイル(アンテナコイル)152からの信号に基づいて制御される。
【0049】
図13はスイッチ本体102の電気的な構成を説明するためのブロック図である。スイッチ本体102の制御回路200は、第一MCU202と第二MCU204を含む。第一MCU202と第二MCU204は相互に通信することで相手方を監視している。
【0050】
第一MCU202は送信回路206に接続されている。送信回路206はセンサ側コイル(アンテナコイル)152に接続されている。センサ側コイル152は受信回路208に接続されている。受信回路208は、第一MCU202と第二MCU204との両方に接続されている。センサ側コイル152はアクチュエータ通信部124が備えるコイルとの間で無線信号をやり取りするために制御される。第一MCU202は、送信回路206を介してセンサ側コイル152を駆動して、センサ側コイル152から無線信号をアクチュエータ通信部124に供給する。アクチュエータ通信部124は少なくともコイルと回路とを有し、
図4に示すように、プラスチック成型品122に覆われる部分にコイルが位置するように配置される。第一MCU202と第二MCU204は、アクチュエータ通信部124からの無線信号をセンサ側コイル152及び受信回路208を介して受信する。RFID152は、センサ側コイル152と応答回路を有している。アクチュエータ通信部124は無線タグ(RF-IDタグ)であってもよい。応答回路はセンサ側コイル152に発生する誘導電流を電源として動作する。応答回路はセンサ側コイル152により受信された無線信号を復調して情報を取得し、さらにセンサ側コイル152を介して無線信号(応答信号)を送信する。
【0051】
図14、
図15を参照して、第一MCU202の測定部210aと第二MCU204の測定部210bは、それぞれ、センサ側コイル152と受信回路208を介して受信されたアクチュエータ通信部124からの無線信号の強度を測定し、無線信号の強度に基づきスイッチ本体102とアクチュエータ104との距離d(
図17)を推定する。第一MCU202の安全判定回路214aと第二MCU204の安全判定回路214bとはそれぞれ、推定された距離dが閾値以下であること、すなわち、アクチュエータ104がスイッチ本体102に対して所定範囲にあるかどうかを判定する。換言すれば、少なくとも、センサ側コイル152と、受信回路208と、第一MCU202もしくは第二MCU204と、により、アクチュエータ104がスイッチ本体102に対して所定範囲にあることを検出する検出部が実現される。なお、距離dの代わりに無線信号の強度をそのままアクチュエータ104の位置の検知に使用してもよい。第一MCU202の復調部212aと第二MCU204の復調部212bは、それぞれ、センサ側コイル152と受信回路208を介して受信されたアクチュエータ通信部124からの無線信号により搬送されてきた情報を復調し、この情報に基づきアクチュエータ104を識別する。この情報には、固有の識別情報が含まれていてもよい。
【0052】
第一MCU202の安全判定回路214aは、測定部210aによる測定と復調部212aによる識別とに基づいて、推定された距離dが閾値以下であること、およびアクチュエータ104が所定のアクチュエータとして識別されること、との二つの条件が満たされるかどうかを判定し、判定結果を第二MCU204に送信する。より詳細には、判定結果は、両方の条件が満たされるか、少なくともいずれか一方の条件が満たされないか、の二種がある。同様に、第二MCU204の安全判定回路214bは、測定部210bの測定と復調部212bによる識別とに基づいて、推定された距離dが閾値以下であることおよびアクチュエータ104が所定のアクチュエータとして識別されること、との二つの条件が満たされるかどうかを判定し、判定結果を第一MCU202に送信する。第一MCU202の安全判定回路214aは、自己の判定結果と第二MCUの判定結果とが一致している場合に所定のアクチュエータとして識別されるアクチュエータ104がスイッチ本体102に対して所定範囲にある状態、すなわち、ドアPDが閉じた状態であると判定する安全関連出力を出力する。同様に、第二MCU204の安全判定回路214bは、自己の判定結果と第一MCUの判定結果とが一致している場合に、所定のアクチュエータとして識別されるアクチュエータ104がスイッチ本体102に対して所定範囲にある状態、すなわち、ドアPDが閉じた状態であるであると判定する。なお、本実施例においては、後述するように、入力回路220を介して入力される信号に係る条件も満たされたときに、第一MCU202および第二MCU204がOSSD(Output Signal Switching Device(出力信号切換デバイス))を介して安全関連出力を出力するが、受信回路208を介して受信される無線信号と、第一MCU202と第二MCU204の互いの判定結果に基づいて安全関連出力を出力しても良い。また、本実施例においては、センサ側コイル152により検出される無線信号に基づいて、スイッチ本体102及びアクチュエータ104の距離dの推定と、アクチュエータ104の識別とがなされるが、距離dの推定のみがなされて、安全判定回路214a、214bがアクチュエータ104の識別に係る判定をせずに、距離dが閾値以下であるかどうかの判定結果を他方の安全判定回路に出力する構成であっても良い。
【0053】
図13に戻って、入力回路220は第一安全入力部222、第二安全入力部224、およびロック入力部226を有している。第一安全入力部222と第二安全入力部224と、には、安全関連出力を出力可能な他の機器が接続される。すなわち、第一安全入力部222と第二安全入力部224はスイッチ本体102と他の機器とをデイジーチェーン接続するための入力回路である。たとえば、第一安全入力部222と第二安全入力部224とは、第一安全入力部222に他の機器の安全関連出力を出力するための端子の一つが接続され、第二安全入力部224に当該他の機器の安全関連出力を出力するための端子のもう一つが接続される。
【0054】
ロック入力部226は安全PLCや安全制御機器などの外部制御機器に接続されており、外部制御機器が出力するロック機構を制御するためのロック信号を受け付けて、入力信号を第二MCU204に出力する。第二MCU204はロック入力部226を介して入力された信号がON信号であるかどうかを判定する。第二MCU204は、ロック入力部226を介して入力されるロック信号に基づいて、電磁石130を駆動して、電磁石130をアクチュエータ104の鉄片120に吸着させることができる。すなわち、ロック入力部226を介して入力される信号に応じて、ドアPDが磁力によりロックされる。なお、第二MCU204は、ロック入力部226を介して入力される信号がON信号であるときに、電磁石130を駆動しても良いし、ロック入力部226を介して入力される信号がON信号であることに加えて他の条件が満たされたと判定されたときに電磁石を駆動しても良い。例えば、上述した、安全判定回路214a、214bの判定が、電磁石130を駆動させる条件とされてもよい。この場合、所定のアクチュエータ104がスイッチ本体102に対して所定範囲にある状態であると判定されたときに電磁石130が駆動されるため、外部制御機器が出力するロック信号によって、ドアPDが閉じた状態を維持することの確実性が向上する。
【0055】
制御回路200はスイッチングデバイス230として、第一OSSD230aと、第二OSSD230bと、を備える。第一MCU202と第二MCU204と、はそれぞれ安全信号を生成し、第一MCU202は、安全信号として第一OSSD230aを介して安全関連出力を出力し、第二MCU204は、安全信号として第二OSSD230bを介して安全関連出力を出力する。なお、第一OSSD230aおよび第二OSSD230bを介して安全関連出力が出力される外部機器と、ロック入力部226を介して入力されるロック信号を出力する外部制御機器と、は、同じ機器であってもよいし、異なる機器であってもよいが、いずれも、区画システム1を構成する。
【0056】
第一OSSD230aおよび第二OSSD230bは、たとえば、PNP型のトランジスタにより構成される。PNP型のトランジスタがONすると、出力端子には+側電源が接続されるため、ON信号が出力される。一方、PNP型のトランジスタがOFFすると、出力端子はプルダウン抵抗を介して接地されるため、OFF信号が出力される。
【0057】
第一OSSD230aおよび第二OSSD230bにはそれぞれOSSD監視回路232が接続されてもよい。OSSD監視回路232は第一MCU202と第二MCU204に接続されている。第一MCU202は、OSSD監視回路232を通じて、第二OSSD230bの動作が正常かどうかを監視する。第二MCU204は、OSSD監視回路232を通じて、第一OSSD230aの動作が正常かどうかを監視する。たとえば、第一OSSD230aと第二OSSD230bはそれぞれ、ON信号を出力するときに定期的に微小時間にわたり出力信号をOFFに遷移させる。OSSD監視回路232はON信号の出力期間中に微小時間のOFFを検出できればOSSDを正常と判定し、微小時間のOFFを検出できなければOSSDを正常ではないと判定する。
【0058】
なお、OSSD監視回路232が微小時間のOFFが検出できず、ON信号が継続するケースは、例えば、出力端子と+側電源との短絡が原因である。この場合、安全判定回路214a、214bはそれぞれOFF信号を出力させるための制御信号を第一OSSD230aと第二OSSD230bとに出力する。これにより、第一OSSD230aと第二OSSD230bとのうち正常に動作する物はOFF信号を出力する。なお、OSSD監視回路232の監視のための、安全関連出力のOFFへの遷移は、安全関連出力が出力される外部機器が、当該OFFに反応しない程度に微小な時間に設定されている。
【0059】
電源回路240は、外部からDC+24Vと0Vの供給を受け、DC+10V、+5Vや+3.3Vなどの直流電圧を生成するDC-DCコンバータである。電源回路240は制御回路200、センサ側コイル152、表示部142など、電力を必要とするすべての回路に電力を供給する。ところで、外部電源からの供給電圧や電源回路240から出力される電圧が所定の範囲内でない場合、制御回路200などが正常に動作しない可能性がある。そこで、電源監視回路242は、外部電源からの供給電圧が所定の範囲内であるかどうかを判定するとともに、電源回路240から出力される電圧が所定の範囲内かどうかを判定し、判定結果を第一OSSD230aと第二OSSD230bへ出力する。第一OSSD230aと第二OSSD230bは、それぞれ、電源回路240が正常に動作していないことを示す判定結果を入力されると、制御回路200から出力される制御信号に依存することなく、安全関連出力をOFFにする。第一OSSD230aと第二OSSD230bは、それぞれ、電源回路240が正常に動作していることを示す判定結果を入力されると、制御回路200から出力される制御信号に依存して、安全関連出力を出力する。
【0060】
制御回路200は、表示部142を制御する表示灯制御部252を備え、第二MCU204が有する表示灯制御部252は、少なくとも第二OSSD230bを介しての安全関連出力に応じた表示状態信号を表示灯制御部252に供給する。
図16を参照して、安全関連出力のON/OFFと、第1MCU202及び第二MCU204での判定結果との関係性を説明する。
【0061】
図16の「表示灯」の列は、表示制御部252に供給される表示状態信号に基づいて制御される表示部142の発光パターンを示す。「状態」の列は「OSSD」と、「安全入力」「ロック制御入力」「アクチュエータ」とに細分化される。「OSSD」の列は、スイッチングデバイス230としての第一OSSD230aと第二OSSD230bとを介して外部の制御装置に出力される安全関連出力がONであるかOFFであるかを示す。また、「安全入力」「ロック制御入力」「アクチュエータ」の各列は、スイッチングデバイス230を介して出力される安全関連出力をON/OFFのいずれにするかを決定するときに用いられる判定項目を示す。列「安全入力」は、第一安全入力部222及び第二安全入力部224を介して入力される安全関連出力がONであるかOFFであるか、を示す。列「ロック制御入力」は、外部の制御機器からロック入力部226を介して入力されるロック信号がONであるかOFFであるかを示す。列「アクチュエータ」は、センサ側コイル152と受信回路208とを介して受信される無線信号に基づいて所定のアクチュエータと識別されるアクチュエータ104が、スイッチ本体102に対して所定範囲にあることが検出されたか否か、を示す。
【0062】
図16に示すように、本実施例において、スイッチングデバイス230を介して出力される安全関連出力がONとなるのは、第一安全入力部222及び第二安全入力部224を介して入力される安全関連出力がON、かつ、ロック入力部226を介して入力されるロック信号がON、かつ、アクチュエータ104が検出された、ときである。このとき、表示部142の発光パターンは、緑色での点灯である。また、アクチュエータ104が検出されないときは、第一安全入力部222及び第二安全入力部224を介して入力される安全関連出力やロック信号に関わらず、スイッチングデバイス230を介して出力される安全関連出力はOFFになり、表示部142の発光パターンは、赤色の点灯である。本実施例の安全スイッチ100は、稼働領域Sを安全な環境に維持するために、スイッチ本体102に対してアクチュエータ104が所定範囲にあるかを検出する。アクチュエータ104が検出されないときは、ドアPDが閉じた状態でなく、稼働領域Sが安全な環境として維持されていないことになるため、他の信号の入力状態に関わらず、スイッチングデバイス230を介して出力される安全関連出力はOFFになる。
【0063】
本実施例の安全スイッチ100は、アクチュエータ104の検出以外にも、各種信号の入力状態を参照して、スイッチングデバイス230を介して出力される安全関連出力をONにするかOFFにするかを決定する。このとき、アクチュエータ104の検出と比較して、第一安全入力部222及び第二安全入力部224を介して入力される安全関連出力やロック信号がどのような状態であるかを、作業者は把握しにくい。より詳細には、アクチュエータ104が検出されるか否かは、ドアPDが閉じた状態であるか否かと一定の関連性があるため、アクチュエータ104が検出されず、スイッチ本体102からスイッチングデバイス230を介して出力される安全関連出力がOFFとなっている場合に、作業者はその原因を特定しやすい。これに対して、第一安全入力部222及び第二安全入力部224を介して入力される安全関連出力やロック信号に関しては、作業者は、これらに対応するケーブルが接続されているか否か、等は外観で確認できるものの、当該ケーブルを介して供給される信号がどのようになっているかは、外観からは把握しにくい。このため、本実施例においては、各種信号の入力状態に起因して、スイッチングデバイス230を介して出力される安全関連出力がOFFであるときは、各種信号の入力状態に応じて表示部142の発光パターンを変更することによって、作業者が、スイッチ本体102からスイッチングデバイス230を介して出力される安全関連出力がOFFである理由を特定しやすいようにしている。
【0064】
なお、本実施例においては、安全関連出力を出力可能な他の機器が、第一安全入力部222と第二安全入力部224とに接続されるため、
図16における「安全入力」列によって、スイッチ本体102により出力される安全関連出力や、表示部142の発光パターンが変わるが、当該他の機器が接続されない場合は、「ロック制御入力」列と「アクチュエータ」列とに応じて、スイッチ本体102により出力される安全関連出力や表示部142の発光パターンが決定されても良い。この場合、「ロック制御入力」列が「ON」かつ、「アクチュエータ」列が「Detected」である場合に、スイッチ本体102により出力される安全関連出力がONになり、表示部142の発光パターンが緑の点灯となる。また、この場合、
図16に示す、表示部142の発光パターンが「橙」もしくは「橙点滅」であるケースは存在しない。
【0065】
上述したように、第一MCU202の測定部210aと第二MCU204の測定部210bとは、センサ側コイル152(
図9)を介して受信するアクチュエータ通信部(RFID)124(
図4)からの無線信号を測定して、アクチュエータ104とスイッチ本体102との距離dを推定する。これに加えて、第一MCU202と第二MCU204とは、吸着面130aと被吸着面120aとの間の距離d2が閾値以下であり、かつ、ロック入力部226を介して入力されるロック信号がONであれば、第二MCU204は電磁石130を駆動して鉄片120を吸着させる。
【0066】
図18を参照して、距離d2が閾値以下であるかどうかの判定を具体的に説明する。第二MCU204は電磁石130に検査用の電流を供給し、このときに電磁石130に流れる電流を監視する。
図18の(I)は検査用電流の矩形波を示す。この検査用の電流の値は、ドアPDが閉じた状態を維持する、すなわち、安全スイッチ100のロック状態を形成するために電磁石130に供給するロック用の電流の値よりも小さい。仮に、ロック用の電流の値と同じ値の電流を検査用として採用すると、ロック信号がONでなくても、ドアPDが閉じた状態を維持できる程度の吸着力で電磁石130が鉄片120を吸着するため、ドアPDを開く動作に支障が生じ、作業者の作業性が低下する。このことから、検査用の電流の値を、ロック用の電流の値より小さい値、特に、電磁石130が殆ど吸着力を発揮しない程度の微弱な値に設定することにより、作業者の作業性を維持することができる。
【0067】
図18の(II)は、電磁石130と鉄片120とが密着していない状態、すなわち吸着面130aと被吸着面120aとの間の距離d2が閾値より大きい状態のときに、
図18(I)の矩形波の検査用電流に対応して電磁石130に流れる監視電流を示す。
図18の(III)は、電磁石130と鉄片120とが密着している状態、すなわち吸着面130aと被吸着面120aとの間の距離d2が閾値以下である状態のときに、
図18(I)の矩形波の検査用電流に対応して電磁石130に流れる監視電流を示す。
図18の(II)と(III)とを対比すると分かるように、電磁石130と鉄片120とが密着している状態つまり、吸着面130aと被吸着面120aとの距離d2が閾値より小さい状態のときには、距離d2が閾値以上である状態よりインダクタンスが大きくなるため、検査用電流を供給開始した時点から監視電流の値が一定値に達する時点までの時間が長くなる。
【0068】
検査用電流を供給開始した時点から監視電流の値が一定値に達するまでの時間が異なると、検査用電流を供給開始した時点から一定時間経過したタイミングで電磁石130に流れる電流の値が異なる。
図18の(II)と(III)とは対比のために、検査用電流を電磁石130に供給開始した時点から一定時間経過したタイミングを検査確認タイミングとして図示する。吸着面130aと被吸着面120aとの距離d2が閾値より大きい状態で電磁石130に流れる監視電流の、検査確認タイミングでの電流の値は、
図18の(II)に示される第一監視電流値I1である。また、吸着面130aと被吸着面120aとの距離d2が閾値以下である状態で電磁石130に流れる監視電流の、検査確認タイミングでの電流の値は、
図18の(III)に示される第二監視電流値I2である。第一監視電値流I1と、第二監視電流値I2とを対比すると、第一監視電流値I1の方が大きい。すなわち、検査用電流を供給した時点から一定値に達するまでの時間が短い監視電流(
図18の(II))、換言すれば応答性が高い監視電流の方が、応答性の低い監視電流(
図18の(III))と比較して、検査確認タイミングでの電流の値が大きい。したがって、検査確認タイミングでの監視電流の値を比較することによって、電磁石130に流れる監視電流の応答性の高低、応答性の高低と関連するインダクタンスの大小、及び、インダクタンスの大小と関連する吸着面130aと被吸着面120aとの距離d2の長短を判別することができる。より詳細には、距離d2と閾値との大小関係が判別可能になるように、少なくとも第一監視電流値I1と第二監視電流値I2との間に電流値のしきい値が設定され、検査確認タイミングにおける監視電流の電流値が当該しきい値より大きいか、しきい値以下であるか、に応じて、距離d2が閾値より大きいか閾値以下であるか、が判定される。
【0069】
図19は、アクチュエータ104の好ましい実施例を示すアクチュエータ104の縦断面図である。
図19は、
図2の態様でスイッチ本体102が取り付けられたドア開口枠2に対して、ドアフレーム6が並行になるように取り付けられたドアPDに取り付けられたアクチュエータ104を示す。このため、ドアフレーム6(PD)の法線方向は、スイッチ本体102が備える電磁石139の吸着面130aの法線方向としてのY軸線方向に一致する。さらに、
図19のアクチュエータ104は、アクチュエータ104が備える鉄片120の被吸着面120aの法線方向が、Y軸線方向に一致している状態である。アクチュエータ104は、取付金具126に対して鉄片120が固定的な構造を有していても良いが、
図19に図示のアクチュエータ104は、取付金具126に対して鉄片120が移動可能である。
【0070】
図19を参照して、前述した取付金具126はアクチュエータ104のベース部材を構成している。取付金具126は、両端にフランジを有するコ字状の断面形状を有し、平坦な頂部の中央に貫通孔126aを備えている。アクチュエータ104は、取付金具126の貫通孔126aに挿入された可動ピン320を有し、可動ピン320は、その一端部が鉄片120に固定されている。鉄片120は、その被吸着面120aの中心部分に、正面視円形の永久磁石120bを有している。取付金具126の貫通孔126aに挿入された可動ピン320は取付金具126に対して、可動ピン320の軸線方向に移動可能であり、この構成により、被吸着面120aを取付金具126に対して移動させる機構が構成されている。
【0071】
可動ピン320は、取付金具126側の端に位置するピンヘッド320aを有している。可動ピン320はスリーブ322に挿入されている。スリーブ322は、可動ピン320の軸線方向に長さを有し、共に径方向外方且つ円周方向に延びる一端フランジ322aと他端フランジ322bを有している。スリーブ322の一端フランジ322aと、他端フランジ322bとは、可動ピン320に対する鉄片120の位置を一定にするために用いられ、鉄片120、可動ピン320、及びスリーブ322は、取付金具126に対して移動する。
【0072】
可動ピン320及びスリーブ322は、スリーブ322の外周面が貫通孔126aに案内されて、可動ピン320の軸線方向に移動可能である。スリーブ322は可動ピン320の軸線方向の移動を案内するガイド機能を有している。可動ピン320は、また、スリーブ322と一緒に貫通孔126aの中を揺動可能である。すなわち、スリーブ322の直径は貫通孔126aの径よりも小さく、スリーブ322は貫通孔126aに遊嵌されている。この構成により、被吸着面120aを揺動させる揺動機構が構成されている。
【0073】
スリーブ322の一端フランジ322aと、取付金具126との間に圧縮コイルバネ324が設けられている。圧縮コイルバネ324は、可動ピン320および被吸着面120aがドアフレーム6に近づく方向に付勢する付勢手段を構成している。
【0074】
図20の(I)は圧縮コイルバネ324の平面図である。
図20の(II)は無負荷状態の圧縮コイルバネ324の側面図である。
図20の(III)は負荷が作用して圧縮した状態の圧縮コイルバネ324の側面図である。
図20の(I)から分かるように、圧縮コイルバネ324は、軸線方向に直径を徐々に小さくした側面視台形の渦巻きバネで構成されている。この渦巻き形状の圧縮コイルバネ324は圧縮状態では側面視平らな形状になることができる。このため、圧縮コイルばね324が圧縮される方向に、可動ピン320が移動するときの移動範囲が広がる。
【0075】
本実施例では、
図19に図示されるアクチュエータ104の状態、すなわち圧縮コイルばね324によって、鉄片120が、ドアフレーム6に近づく方向、換言すれば、電磁石130から遠ざかる方向、に移動された状態を待機状態とし、この状態における鉄片120の位置を待機位置とする。鉄片120の待機位置は、
図17に図示される二点鎖線で表現される鉄片120の位置に対応する。なお、圧縮コイルバネ324の変形例として皿バネ、ゴムなどの弾性体を挙げることができる。
【0076】
スリーブ322の他端フランジ322bと取付金具126及び鉄片120との間にはクッション部材326が配設されている(
図19)。後に説明するが、鉄片120が永久磁石120bの吸引力に基づいて電磁石130の吸着面130aと重なり合うときの衝撃は、圧縮コイルバネ324とクッション材326によって緩和される。
【0077】
図21は、アクチュエータ104の作用を説明するための図である。
図21の(I)は待機状態のアクチュエータ104を示し、
図19に対応している。
【0078】
図21の(II)は、ドアPDが開いた状態から閉じた状態になる過程、すなわち、作業者がドアPDを閉める過程において、ドアPDが閉じた状態になったことによって、アクチュエータ104が、スイッチ本体102が備える電磁石130の吸着面130aに接近した状態を図示している。このとき、電磁石130は駆動されていない。
図21の(II)に示すように、アクチュエータ104が電磁石130に接近すると、アクチュエータ104が備える永久磁石120bによる吸引力が電磁石130の吸着面130aに作用する。この吸引力が圧縮コイルバネ324のバネ力よりも大きくなると、圧縮コイルバネ324が圧縮し始める。そして、永久磁石120bによる吸引力の下で可動ピン320及び鉄片120は、アクチュエータ筐体122を伴って、ドアフレーム6から遠ざかる方向、すなわち、吸着面130aに接近する方向に移動する。したがって、例えばドアPDが閉められて、アクチュエータ104とスイッチ本体102との距離が一定範囲内になると、可動ピン320及び鉄片120は、アクチュエータ筐体122を伴って、Y軸線方向に沿って、吸着面130aに接近する方向に移動する。
【0079】
図21の(III)は、上記(II)の過程を経て、永久磁石120bによる吸引力によって、被吸着面120aと吸着面130aとが密着した状態を示す。当該状態における、アクチュエータ通信部124からセンサ側コイル152を介して受信される無線信号の強度に基づいて推定される距離dが閾値以下になるように、すなわち、当該状態においてアクチュエータ通信部124がスイッチ本体102に対してアクチュエータ104が所定の範囲にある、と判定されるように、距離dに対する閾値が設定される。また、
図21の(III)の状態において、第二MCU204は検出用の電流を電磁石130に供給して、電磁石130に流れる電流を監視することで、被吸着面120aと吸着面130aとが密着した状態であるか否かを判定する。被吸着面120aと吸着面130aとが密着した状態であると判定されたとき、第二MCU204は、電磁石130を駆動して、ドアPDが閉じた状態を維持するように鉄片120を吸着させる。なお、本実施例においては、ドアPDが閉じた状態で、アクチュエータ104が備える永久磁石320の吸引力によって、鉄片120が吸着面130a側に移動して、吸着面130aと被吸着面120aとが密着するが、鉄片120の吸着面130a側への移動は他の手段によって実現されても良い。例えば、ドアPDが閉じた状態になる、すなわちドアPDが閉じられるときの慣性によって、鉄片120が吸着面130a側に移動する構成であっても良い。また、電磁石130を、当該電磁石130が、ドアPDが閉じた状態を維持するための吸着力より弱い吸着力を発生するように駆動して、当該吸着力によって、鉄片120が吸着面130a側に移動する構成であっても良い。
【0080】
図22は、アクチュエータ104の状態変化を説明するための断面図である。
図22の(I)は
図19の(I)に対応した図であり、アクチュエータ104は待機状態にある。
図22の(II)は、アクチュエータ104の鉄片120が最大に進出した最大作用位置を取ったときの状態、つまり可動ピン320がその軸線方向つまりY軸線方向に変位した最大ストローク位置を取ったときの状態を示している。この状態は、永久磁石320の吸引力によって作ることができる。
図22の(III)は、鉄片120が永久磁石320の吸引力の下で吸着面130aと互いに重なり合ったときに、被吸着面120aが吸着面130aと平行状態となるように、鉄片120が揺動可能であることを説明するための図である。可動ピン320の揺動つまり、その軸線Axが傾く動作によって、被吸着面120aと吸着面130aとの平行状態が確立される。
【0081】
前述したように、鉄片120の周囲を包囲するアクチュエータ筐体122には、アクチュエータ通信部124が配設されている(
図3)。他方、スイッチ本体102にはセンサ側コイル152が配設されている(
図9)。アクチュエータ通信部124からセンサ側コイル152を介して受信される無線信号の強度に基づいて、スイッチ本体102に対してアクチュエータ104が所定範囲にあるか、すなわち、距離dが閾値以下であるかどうかが判定される。
【0082】
しかしながら、スイッチ本体102において、電磁石130とセンサ側コイル152とが近接した位置関係で設けられる場合、電磁石130から周囲に漏れる磁束が、センサ側コイル152を介してアクチュエータ通信部124から受信する無線信号の強度に影響を与える可能性がある。特に、本実施例においては、被吸着面120aの直径D1が吸着面130aの直径D2より大きく設定されているため、吸着面130aと被吸着面120aとが接触する状態において、電磁石130の近傍に設けられるセンサ側コイル152の少なくとも一部が、吸着面120aの法線方向視で、被吸着面120aに重なるような位置関係で、センサ側コイル152とアクチュエータ通信部124が備えるコイルと、が対向する。このため、センサ側コイル152を介して受信される無線信号の強度に影響を与える磁束漏れが生じやすい。磁束漏れによる無線信号への影響を低減するために、本実施例の電磁石は
図23に示す構成を備える。電磁石130は、周知のように、コア140aと、これを包囲する円筒状のヨーク部分Ykとを含む。コア140aとヨーク部分Ykとは別体で作られていてもよいが、この実施例では、コア140aとヨーク部分Ykとは一体で作られている。また、実施例では、前述した突出部130bが、ヨーク部分Ykの一部で構成されている。すなわち、ヨーク部分Ykは、周方向の一部が径方向外方に突出した形状を備える。変形例として、ヨーク部分Ykの一部を径方向外方に突出した突出部130bとは別に、スイッチ本体102を取り付けるための取付部をスイッチ本体102に設けてもよい。
【0083】
ヨーク部分Ykは電磁石130から出る磁束を通して吸着力を向上するという役割を有している。
図24は、
図23のXXIII-XXIII線に沿って切断した断面図である。
図24に破線で描いた矢印190は電磁石130から漏れ出る磁束を示す。
図24において、参照符号140aはコアを示す。コア140aにはマグネットワイヤが巻回される。
図24において、コア140aと、その外周に位置するヨーク部分Ykとの間が空所140bで描かれているが、周知なように、空所140bの部分にマグネットワイヤが位置している。電磁石130は、アクチュエータ104を吸着することで、電磁石130とアクチュエータ104とで磁気回路が形成される。磁気回路での磁束を黒で塗り潰した矢印で示してある。コア140aから生じる磁束は、ヨーク部分Ykの周方向に略均等に生じる。また、ヨーク部分Ykを通る磁束は、通る磁束の密度が高い場合に、ヨーク部分Ykの外に当該磁束が漏れることが知られている。ヨーク部分Ykの一部に突出部130bを設けることにより、ヨーク部分Ykのうち、周方向において突出部130bが設けられる部分が、周方向における他の部分と比較して断面積が大きくなる。このため、ヨーク部分Ykのうち、周方向において突出部130bが設けられる部分の磁束密度は、他の部分と比較して相対的に低く、これにより、突出部130b近傍の磁束漏れが低減される。
【0084】
センサ側コイル(アンテナコイル)152は突出部130bの近傍に配置されている。センサ側コイル152の好ましい配置を具体的に説明すると、
図23を参照して、吸着面130aの中心O2を通り且つ突出部130bの中央線を通る第1中心線CL1と、中心O2を通り且つ第1中心線CL1と直交する第2中心線CL2とで吸着面130aの周囲を4つの領域に区画すると、図示の例で説明すれば、突出部130bの一方の側の第1象限にセンサ側コイル152が配置される。勿論、突出部130bの他方の側の第2象限にセンサ側コイル152を配置してもよい。更に、第1中心線CL1と直交し且つ突出部130bの頂面と接する第1接線TL1よりも吸着面130aの側に位置し、また、第2中心線CL2と直交し且つ吸着面130aの外周と接する第2接線TL2よりも吸着面130aの側に位置するように、センサ側コイル152が配置される。
【0085】
突出した突出部130bの近傍にセンサ側コイル(アンテナコイル)152を配置することによる利点を説明するために、
図25、
図26に図示の比較例の電磁石400を説明する。
図25は、比較例の電磁石400を吸着面400aの側から見た図である。ヨーク部Ykは周方向において同じ肉厚である。
図26は、
図25のXXV-XXV線で切断した断面図である。図中、参照符号402はコアを示す。
図26を参照して、比較例の電磁石400をさせてアクチュエータ410を吸着することで、アクチュエータ410との間に磁気回路が形成される。磁気回路での磁束を黒で塗り潰した矢印で示してある。この構成の磁気回路は、ヨーク部Ykの周囲で磁束漏れが発生する。破線で描いた矢印190で、磁束漏れを図示してある。
【0086】
比較例の電磁石400の外周において、電磁石400の近傍にセンサ側コイル(アンテナコイル)152を配置した場合、センサ側コイル(アンテナコイル)152はヨーク部Ykから漏れ出た磁束190の影響を受け(
図26)、この漏れ出た磁束190はセンサ側コイル(アンテナコイル)152が検出する信号強度に影響を及ぼす。
【0087】
本実施例に関する
図23、
図24に戻って、ヨーク部Ykの一部を構成する突出した突出部130bは相対的に肉厚であり、これにより突出部130bの近傍では磁束の漏れが生じ難い。このように、磁束が漏れ難い突出部130bの近傍にセンサ側コイル(アンテナコイル)152を配置することで(
図23)、磁束の漏れによるセンサ側コイル(アンテナコイル)152が検出する信号強度への影響を低減できる。
【0088】
上述したように、突出部130bは、その突出部130bが設けられた部分において、磁束密度を低下させる作用がある。一般的に磁石の吸着力は、吸着対象と接触する面の磁束密度により変わる。このため、電磁石130は、電磁石130が鉄片120を吸着したときに、鉄片120と、突出部130bとの間にギャップGp(
図24)ができるように形作られている。ギャップGpにより、ヨーク部分Ykのうち突出部130bが設けられる部分において、鉄片120に接触する面積を、Y軸線方向において突出部130bが位置する部分の断面積より小さくすることができる。これによれば、突出部130bを設けることで鉄片120に接触する部分における磁束密度の低下を抑えることができ、これによれば電磁石130の吸着力を維持することができる。すなわち、ギャップGpによって吸着を効果的に安定化させることができる。相対的に肉厚の突出部(突出部130b)を吸着面130aよりもY軸線方向に退却した位置に位置決めできるように設計することによりギャップGpを形成できる(
図24)。また、本実施例の電磁石130においては、ギャップGpを形成することにより、ヨーク部分Ykが基本的には周方向に同一の肉厚になるようにしているため、ヨーク部分Ykが鉄片120と接する部位の周方向の磁束密度が同じになるように構成されている。これにより電磁石130によるアクチュエータ104の吸着をより安定化させることができる。
【0089】
図27ないし
図29は、スイッチ本体102をドア開口枠2に取り付ける例を説明するための図である。図中、参照符号350はスイッチ本体102の高さレベルを調整するためのレベル調整部材を示す。
図27は、レベル調整部材350にスイッチ本体102が固定され、このレベル調整部材350を介してスイッチ本体102が第1ブラケット106に固定される例を示す。
図28は、
図27の変形例であり、電磁石130と基板収容部132の間に、電磁石130に接続される中間金属板132aが介在されており、この中間金属板132aにスイッチ本体102がネジ固定されている。このように、基板収容部132を形成する筐体Hgより前方に、スイッチ本体102を第1ブラケット106に固定するための取付部が設けられることにより、筐体Hgは、アクチュエータ104が電磁石130に当接することによる衝撃の影響を受けにくい。このため、筐体Hgが比較的安価な樹脂で構成されたとしても、
図28に示すように、筐体Hgを前後方向に長い形状にすることができる。また、
図29は、
図27の変形例であり、基板収容部132の少なくともその上部が金属筐体352で形成され、この基板収容部132の金属筐体352にスイッチ本体102がネジ止めされ、そして、レベル調整部材350を介してスイッチ本体102が第1ブラケット106に固定される例を示す。金属筐体352は電磁石130に接続される。この変形例では、アクチュエータ104が電磁石に当接することによる衝撃に対して、取付部を有し基板収容部132を形成する金属筐体352を設けることによって、スイッチ本体102の耐久性を向上する。
図28に示す第1の変形例、及び
図29に示す第2の変形例において、基板Cbはフローティング支持構造を採用してもよいが、樹脂充填してもよい。
【0090】
模式図の
図27を利用して安全スイッチ100を説明すると、スイッチ本体102は、Y軸線方向の長さ寸法Lが、吸着面130aの直径よりも大きい。ある一定の電流が付与される電磁石において電磁石による吸着力の強さはコイルの巻き数に比例する。したがって、吸着面130aの直径寸法を増大させずに、一定の吸着力を実現するために本実施例の電磁石130は、前後方向に一定の長さを有する。スイッチ本体102全体の前後方向、すなわちY軸線方向の長さに制限がある場合、電磁石130の前後方向の寸法が長いほど、電磁石130の後方に収容部を形成することが困難になる。スイッチ本体102のY軸線方向の長さ寸法Lが吸着面130aの直径より大きい構成によれば、電磁石130の後方に、収容部を形成した筐体Hgを配置できるため、スイッチ本体102が開口に占める面積を低減することができる。さらに本実施例では、Y軸線方向において、スイッチ本体102とアクチュエータ104との合計長さL0が吸着面130aの直径より大きくなるように設計される。