(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024880
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
H02P27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127831
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 拓也
(72)【発明者】
【氏名】安保 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】大神 崇
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA06
5H505AA16
5H505BB05
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505HA03
5H505HA05
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ28
5H505LL22
5H505LL24
(57)【要約】
【課題】コモンモード電流を低減できる電動機を提供する。
【解決手段】電動機は、電動モータと、電動モータを駆動するインバータ部と、コモンモードノイズを低減させるノイズ低減部と、制御部と、金属製の筐体とを備える。電動モータは、3相コイルを有する。インバータ部は、スイッチング素子を有する。ノイズ低減部は、インバータ部よりも入力側に設けられている。制御部は、電圧指令値とキャリア周波数とに基づいて生成されるPWM信号を用いてスイッチング素子を制御する。筐体は、電動モータ、インバータ部、ノイズ低減部、及び制御部を収容している。筐体は、車両のボディに接地されている。制御部は、電圧指令値の変調率を演算する演算部と、演算部によって演算された変調率に応じてキャリア周波数を設定する設定部とを有している。設定部は、変調率が所定の変調率よりも低い場合、変調率が所定の変調率以上の場合よりも高いキャリア周波数に設定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相コイルを有する電動モータと、
スイッチング素子を有し、前記電動モータを駆動するインバータ部と、
前記インバータ部よりも入力側に設けられ、コモンモードノイズを低減させるノイズ低減部と、
電圧指令値とキャリア周波数とに基づいて生成されるPWM信号を用いて前記スイッチング素子を制御する制御部と、
前記電動モータ、前記インバータ部、前記ノイズ低減部、及び前記制御部を収容し、車両のボディに接地された金属製の筐体と、
を備える電動機であって、
前記制御部は、
前記電圧指令値の変調率を演算する演算部と、
前記演算部によって演算された前記変調率に応じて、前記キャリア周波数を設定する設定部と、
を有し、
前記設定部は、前記変調率が所定の変調率よりも低い場合、前記変調率が前記所定の変調率以上の場合よりも高い前記キャリア周波数に設定することを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記ノイズ低減部は、コンデンサとチョークコイルとを有し、
前記設定部は、前記変調率が前記所定の変調率よりも低い場合、前記キャリア周波数を、前記ノイズ低減部の共振周波数帯域よりも高い周波数に設定する請求項1に記載の電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動モータと、インバータ部と、ノイズ低減部と、制御部と、金属製の筐体とを備える空調装置が開示されている。電動モータは、3相コイルを有している。インバータ部は、スイッチング素子を有している。インバータ部は、電動モータを駆動する。ノイズ低減部は、インバータ部よりも入力側に設けられている。ノイズ低減部は、コモンモードノイズを低減する。制御部は、電圧指令値とキャリア周波数とに基づいて生成されるPWM信号を用いてスイッチング素子を制御する。筐体は、電動モータ、インバータ部、ノイズ低減部、及び制御部を収容している。筐体は、車両のボディに接地されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コモンモードノイズの1つとして、電動モータの中性点電圧に起因するコモンモード電流が挙げられる。このコモンモード電流の低減が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するための電動機は、3相コイルを有する電動モータと、スイッチング素子を有し、前記電動モータを駆動するインバータ部と、前記インバータ部よりも入力側に設けられ、コモンモードノイズを低減させるノイズ低減部と、電圧指令値とキャリア周波数とに基づいて生成されるPWM信号を用いて前記スイッチング素子を制御する制御部と、前記電動モータ、前記インバータ部、前記ノイズ低減部、及び前記制御部を収容し、車両のボディに接地された金属製の筐体と、を備える電動機であって、前記制御部は、前記電圧指令値の変調率を演算する演算部と、前記演算部によって演算された前記変調率に応じて、前記キャリア周波数を設定する設定部と、を有し、前記設定部は、前記変調率が所定の変調率よりも低い場合、前記変調率が前記所定の変調率以上の場合よりも高い前記キャリア周波数に設定することを要旨とする。
【0006】
上記構成では、設定部は、変調率が所定の変調率よりも低い場合、変調率が所定の変調率以上の場合よりも高いキャリア周波数に設定する。これにより、変調率が所定の変調率よりも低い場合のキャリア周波数が、変調率が所定の変調率以上の場合のキャリア周波数と同じであるときと比較して、中性点電圧のパルス幅が短くなるため、コモンモード電流の振幅が小さくなる。よって、コモンモード電流を低減できる。
【0007】
上記電動機において、前記ノイズ低減部は、コンデンサとチョークコイルとを有し、前記設定部は、前記変調率が前記所定の変調率よりも低い場合、前記キャリア周波数を、前記ノイズ低減部の共振周波数帯域よりも高い周波数に設定してもよい。
【0008】
上記構成では、変調率が所定の変調率よりも低い場合におけるキャリア周波数は、ノイズ低減部の共振周波数帯域内に含まれないため、共振現象によるノイズの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コモンモード電流を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態における車両の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態におけるインバータ部、ノイズ低減部、及びインバータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】チョークコイルのコイルに流れる電流とチョークコイルのインダクタンスとの関係を示す図である。
【
図4】キャリア周波数と共振周波数帯域との関係を示す図である。
【
図5】実施形態における制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図6】(a)は3相電圧指令値及びキャリア信号を示す図、(b)は各相のPWM信号を示す図、(c)は中性点電圧及びコモンモード電流を示す図である。
【
図7】(a)は3相電圧指令値及びキャリア信号を示す図、(b)は各相のPWM信号を示す図、(c)は中性点電圧及びコモンモード電流を示す図である。
【
図8】(a)は3相電圧指令値及びキャリア信号を示す図、(b)は各相のPWM信号を示す図、(c)は中性点電圧及びコモンモード電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、電動機を具体化した一実施形態を
図1~
図8にしたがって説明する。本実施形態の電動機は、車両に搭載されている。本実施形態の電動機は、空調装置の電動圧縮機に用いられている。
【0012】
図1に示すように、車両100は、空調装置110と、蓄電装置120とを備えている。
空調装置110は、電動圧縮機111と、外部冷媒回路112と、空調ECU113とを有している。電動圧縮機111は、冷媒を圧縮する。外部冷媒回路112は、例えば、熱交換器及び膨張弁等を有している。空調装置110は、電動圧縮機111によって冷媒が圧縮され、かつ外部冷媒回路112によって冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車内の冷暖房を行う。空調ECU113は、空調装置110の全体を制御する。空調ECU113は、車内温度やカーエアコンの設定温度等のパラメータを把握可能に構成されている。空調ECU113は、把握したパラメータに基づいて、電動圧縮機111に対して指令回転速度Ncなどの各種指令を送信する。
【0013】
蓄電装置120は、直流電力の充放電が可能なものであれば任意である。蓄電装置120は、例えば、二次電池や電気二重層キャパシタ等である。蓄電装置120は、車両100のボディに搭載されている。蓄電装置120は、電動圧縮機111の直流電源として用いられる。蓄電装置120の負極は、車両100のボディに接地されている。
【0014】
電動圧縮機111は、電動機10と圧縮部11とを備えている。電動機10は、電動モータ12と、インバータ部13と、ノイズ低減部14と、インバータ制御装置15とを有している。電動モータ12は、圧縮部11を駆動する。インバータ部13は、電動モータ12を駆動する。ノイズ低減部14は、コモンモードノイズを低減させる。インバータ制御装置15は、インバータ部13の制御に用いられる。
【0015】
図2に示すように、電動機10は、筐体16を有している。筐体16は、電動モータ12、インバータ部13、ノイズ低減部14、及びインバータ制御装置15を収容している。筐体16は、金属製である。したがって、筐体16は、導電性を有している。筐体16は、車両100のボディに接地されている。
【0016】
<電動モータ>
図1に示すように、電動モータ12は、回転軸21と、ロータ22と、ステータ23とを有している。電動モータ12は、3相モータである。ロータ22は、回転軸21に固定されている。ロータ22は、永久磁石22aを含んでいる。ステータ23は、ロータ22に対して対向配置されている。ステータ23は、図示しないステータコアと、3相コイル24u,24v,24wとを有している。3相コイル24u,24v,24wとは、u相コイル24u、v相コイル24v、及びw相コイル24wである。3相コイル24u,24v,24wは、ステータコアに巻回されている。ロータ22は、3相コイル24u,24v,24wが所定のパターンで通電されることにより回転する。回転軸21は、ロータ22と一体的に回転する。
【0017】
図2に示すように、3相コイル24u,24v,24wは、Y結線されている。3相コイル24u,24v,24wの第1端は、互いに電気的に接続されることによって、中性点24nを構成している。3相コイル24u,24v,24wの第1端とは反対側の端である第2端は、インバータ部13に接続されている。
【0018】
<圧縮部>
圧縮部11は、電動モータ12が駆動することによって冷媒を圧縮する。詳細には、圧縮部11は、回転軸21が回転することによって、外部冷媒回路112から供給された冷媒を圧縮する。圧縮部11によって圧縮された冷媒は、外部冷媒回路112に吐出される。圧縮部11は、スクロールタイプ、ピストンタイプ、ベーンタイプ等、任意である。
【0019】
<インバータ部>
インバータ部13は、蓄電装置120が出力する直流電力を交流電力に変換する。電動モータ12は、インバータ部13から出力される交流電力によって駆動する。
【0020】
図2に示すように、インバータ部13は、スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2を有している。以下、スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2を「スイッチング素子Qu1~Qw2」と記載する。
【0021】
本実施形態のスイッチング素子Qu1~Qw2は、例えば、IGBT等のパワースイッチング素子である。スイッチング素子Qu1~Qw2はそれぞれ、還流ダイオードを有している。詳しくは、u相スイッチング素子Qu1は、還流ダイオードDu1を有している。u相スイッチング素子Qu2は、還流ダイオードDu2を有している。v相スイッチング素子Qv1は、還流ダイオードDv1を有している。v相スイッチング素子Qv2は、還流ダイオードDv2を有している。w相スイッチング素子Qw1は、還流ダイオードDw1を有している。w相スイッチング素子Qw2は、還流ダイオードDw2を有している。以下、還流ダイオードDu1,Du2,Dv1,Dv2,Dw1,Dw2を「還流ダイオードDu1~Dw2」と記載する。還流ダイオードDu1~Dw2のカソードは、対応するスイッチング素子Qu1~Qw2のコレクタに接続されている。還流ダイオードDu1~Dw2のアノードは、対応するスイッチング素子Qu1~Qw2のエミッタに接続されている。
【0022】
u相スイッチング素子Qu1,Qu2は、u相接続線を介して互いに直列に接続されている。u相接続線は、途中で分岐してu相コイル24uの第2端に接続されている。u相スイッチング素子Qu1のコレクタは、正極母線L1に接続されている。u相スイッチング素子Qu2のエミッタは、負極母線L2に接続されている。v相スイッチング素子Qv1,Qv2は、v相接続線を介して互いに直列に接続されている。v相接続線は、途中で分岐してv相コイル24vの第2端に接続されている。v相スイッチング素子Qv1のコレクタは、正極母線L1に接続されている。v相スイッチング素子Qv2のエミッタは、負極母線L2に接続されている。w相スイッチング素子Qw1,Qw2は、w相接続線を介して互いに直列に接続されている。w相接続線は、途中で分岐してw相コイル24wの第2端に接続されている。w相スイッチング素子Qw1のコレクタは、正極母線L1に接続されている。w相スイッチング素子Qw2のエミッタは、負極母線L2に接続されている。
【0023】
<ノイズ低減部>
ノイズ低減部14は、蓄電装置120とインバータ部13との間に設けられている。ノイズ低減部14は、インバータ部13よりも入力側に設けられている。ノイズ低減部14は、蓄電装置120からインバータ部13に入力される前の直流電力に含まれるコモンモードノイズを低減させる。ノイズ低減部14が低減させるコモンモードノイズには、電動モータ12の中性点24nの電圧である中性点電圧Vnに起因するコモンモード電流Icが含まれている。このコモンモード電流Icは、浮遊容量Csを介して車両100のボディに流出した後、ボディを経由して正極母線L1及び負極母線L2に戻る。
【0024】
ノイズ低減部14は、チョークコイル41を有している。本実施形態のチョークコイル41は、コモンモードチョークコイルである。チョークコイル41は、コア41aと、コア41aに巻回されたコイル41bとを有している。チョークコイル41は、正極母線L1及び負極母線L2上に設けられている。また、ノイズ低減部14は、2つのコンデンサ42を有している。コンデンサ42は、Yコンデンサである。2つのコンデンサ42は、直列接続されている。2つのコンデンサ42を接続する接続線は、途中で分岐して筐体16に接続されることにより、車両100のボディに接地されている。2つのコンデンサ42は、チョークコイル41に対して並列接続されている。2つのコンデンサ42は、チョークコイル41に対してインバータ部13側に設けられている。ノイズ低減部14は、チョークコイル41及びコンデンサ42によって構成されたLCフィルタである。
【0025】
図3は、チョークコイル41のコイル41bに流れる電流Iとチョークコイル41のインダクタンスLとの関係を示す。チョークコイル41のコイル41bに流れる電流Iが増加すると、コア41aが磁気飽和することによって、インダクタンスLが低下する。
【0026】
図4に示すように、ノイズ低減部14は、共振周波数帯域Aを有している。チョークコイル41のコイル41bに流れる電流Iが増大することによってインダクタンスLが低下した場合、共振周波数帯域Aは高周波数側に移動する。
【0027】
<インバータ制御装置>
図2に示すように、インバータ制御装置15は、電圧センサ51と、電流センサ52と、制御部53とを有している。
【0028】
電圧センサ51は、蓄電装置120の電圧である直流電圧Vdcを検出する。
電流センサ52は、3相電流Iu,Iv,Iwを検出する。3相電流Iu,Iv,Iwとは、u相電流Iu、v相電流Iv、及びw相電流Iwである。u相電流Iuは、u相コイル24uに流れる電流である。v相電流Ivは、v相コイル24vに流れる電流である。w相電流Iwは、w相コイル24wに流れる電流である。
【0029】
制御部53は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めインバータ制御装置15が備えるHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの非一過性の記憶媒体を備える記憶装置(不図示)に格納されていてもよい。記憶装置は、例えば、上記の各種記憶媒体、或いはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により実現されてもよい。
【0030】
制御部53は、インバータ部13、詳細にはスイッチング素子Qu1~Qw2を制御することにより、電動モータ12を駆動する。制御部53は、3相/2相変換部53aと、位置推定部53bと、3相電圧指令値導出部53cと、演算部53dと、設定部53eと、生成部53fと、回転制御部53gとを有している。制御部53は、空調ECU113と接続されている。
【0031】
3相/2相変換部53aは、電流センサ52によって検出された3相電流Iu,Iv,Iwを2相電流Id,Iqに変換する。2相電流Id,Iqとは、d軸電流Id及びq軸電流Iqである。d軸電流Idとq軸電流Iqは、互いに直交している。d軸電流Idは、ロータ22の磁束軸方向成分の電流、すなわち励磁成分電流である。q軸電流Iqは、電動モータ12のトルクに寄与するトルク成分電流である。
【0032】
位置推定部53bは、ロータ22の回転位置及び回転速度を推定する。位置推定部53bは、例えば、2相電流Id,Iqと後述する2相電圧指令値Vdr,Vqrとのうち、少なくとも1つに基づいて、ロータ22の回転位置、及び実際の回転速度である実回転速度Nrを推定する。実回転速度Nrの単位は、例えば、rpm等である。
【0033】
3相電圧指令値導出部53cは、空調ECU113から外部指令値を取得する。外部指令値とは、例えば、指令回転速度Ncである。指令回転速度Ncの単位は、例えば、rpm等である。空調ECU113は、空調装置110の運転状況などから、必要な冷媒の流量を算出する。空調ECU113は、必要な冷媒の流量を実現できる指令回転速度Ncを算出する。
【0034】
3相電圧指令値導出部53cは、空調ECU113から取得した指令回転速度Ncと、位置推定部53bによって推定された実回転速度Nrとに基づいて、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを導出する。3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrとは、u相電圧指令値Vur、v相電圧指令値Vvr、及びw相電圧指令値Vwrである。u相電圧指令値Vurは、u相コイル24uに印加する電圧の目標値である。v相電圧指令値Vvrは、v相コイル24vに印加する電圧の目標値である。w相電圧指令値Vwrは、w相コイル24wに印加する電圧の目標値である。
【0035】
詳しくは、3相電圧指令値導出部53cは、空調ECU113から取得した指令回転速度Ncと、位置推定部53bによって推定された実回転速度Nrとに基づいて、2相電流指令値Idr,Iqrを導出する。2相電流指令値Idr,Iqrとは、d軸電流指令値Idr及びq軸電流指令値Iqrである。d軸電流指令値Idrは、d軸電流Idの目標値である。q軸電流指令値Iqrは、q軸電流Iqの目標値である。
【0036】
3相電圧指令値導出部53cは、導出した2相電流指令値Idr,Iqrと、3相/2相変換部53aが変換した2相電流Id,Iqとに基づいて、2相電圧指令値Vdr,Vqrを導出する。2相電圧指令値Vdr,Vqrとは、d軸電圧指令値Vdr及びq軸電圧指令値Vqrである。d軸電圧指令値Vdrは、電動モータ12のd軸に印加する電圧の目標値である。q軸電圧指令値Vqrは、電動モータ12のq軸に印加する電圧の目標値である。
【0037】
3相電圧指令値導出部53cは、2相電圧指令値Vdr,Vqrに基づいて、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを導出する。3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrは、電気角に応じて変化するものである。3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrは、例えば、電気角の0[°]~360[°]を1周期とした基準振幅を有する波形となっている。3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrの位相は互いに異なっている。3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrの位相は、例えば、互いに120[°]ずれている。3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrの波形は、正弦波、三角波、矩形波、又は、それらの波形の変形したものなど、任意である。
【0038】
演算部53dは、電圧センサ51によって検出された直流電圧Vdcと、3相電圧指令値導出部53cによって導出された2相電圧指令値Vdr,Vqrとに基づいて、変調率Mを演算する。変調率Mは、直流電圧Vdcに対するモータ電圧Vmの比である。モータ電圧Vmは、√(Vdr^2+Vqr^2)で求められる。したがって、変調率Mは、M=(√(Vdr^2+Vqr^2))/Vdcで求められる。変調率Mは、電動モータ12の起動時や低速回転時には低くなり、高速回転時には高くなる。この場合、変調率Mは、直流電圧Vdcの変動にも依存する。
【0039】
設定部53eは、演算部53dによって演算された変調率Mに応じて、キャリア信号Pcの周波数であるキャリア周波数fを設定する。設定部53eは、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合、キャリア周波数fを第1周波数f1に設定する。設定部53eは、変調率Mが所定の変調率Mth以上の場合、キャリア周波数fを第1周波数f1よりも低い第2周波数f2に設定する。つまり、設定部53eは、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合、変調率Mが所定の変調率Mth以上の場合よりも高いキャリア周波数fに設定する。
【0040】
例えば、コモンモード電流Icが所定の電流値Icthよりも大きい場合、チョークコイル41のコア41aが磁気飽和することによって、インダクタンスLが低下するとする。本実施形態では、所定の変調率Mth及びキャリア周波数fは、コモンモード電流Icが所定の電流値Icth以下になるように設定される。
【0041】
コモンモード電流Icは、変調率Mが高いほど小さくなる。キャリア周波数fが第2周波数f2の場合に、コモンモード電流Icが所定の電流値Icthよりも大きくなるときの変調率Mを変調率M0とする。キャリア周波数fが第2周波数f2の場合、変調率Mが変調率M0以下のとき、コモンモード電流Icは所定の電流値Icthよりも大きくなる。変調率Mが変調率M0よりも高いとき、コモンモード電流Icは所定の電流値Icth以下になる。この場合、所定の変調率Mthは、変調率M0以下に設定される。
【0042】
コモンモード電流Icは、キャリア周波数fが高いほど小さくなる。第1周波数f1は、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合であっても、コモンモード電流Icが所定の電流値Icth以下になるように設定される。
【0043】
図4に示すように、本実施形態では、設定部53eは、第1周波数f1を、ノイズ低減部14の共振周波数帯域Aよりも高い周波数に設定する。つまり、設定部53eは、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合、キャリア周波数fをノイズ低減部14の共振周波数帯域Aよりも高い周波数に設定する。また、設定部53eは、第2周波数f2を、ノイズ低減部14の共振周波数帯域Aよりも高い周波数に設定する。つまり、設定部53eは、変調率Mが所定の変調率Mth以上の場合、キャリア周波数fをノイズ低減部14の共振周波数帯域Aよりも高い周波数に設定する。
【0044】
生成部53fは、3相電圧指令値導出部53cによって導出された3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrと、設定部53eによって設定されたキャリア周波数fのキャリア信号Pcとに基づいて、PWM信号Pu,Pv,Pwを生成する。PWM信号Pu,Pv,Pwとは、u相PWM信号Pu、v相PWM信号Pv、及びw相PWM信号Pwである。u相PWM信号Puは、u相コイル24uに印加する電圧である。v相PWM信号Pvは、v相コイル24vに印加する電圧である。w相PWM信号Pwは、w相コイル24wに印加する電圧である。PWM信号Pu,Pv,Pwは、スイッチング素子Qu1~Qw2のスイッチングパターン、詳細にはデューティ比を設定する。
【0045】
詳細には、生成部53fは、3相電圧指令値導出部53cによって導出されたu相電圧指令値Vurと、設定部53eによって設定されたキャリア周波数fのキャリア信号Pcとに基づいて、u相PWM信号Puを生成する。生成部53fは、3相電圧指令値導出部53cによって導出されたv相電圧指令値Vvrと、設定部53eによって設定されたキャリア周波数fのキャリア信号Pcとに基づいて、v相PWM信号Pvを生成する。生成部53fは、3相電圧指令値導出部53cによって導出されたw相電圧指令値Vwrと、設定部53eによって設定されたキャリア周波数fのキャリア信号Pcとに基づいて、w相PWM信号Pwを生成する。
【0046】
回転制御部53gは、生成部53fによって生成されたPWM信号Pu,Pv,Pwをスイッチング素子Qu1~Qw2に出力することによって、スイッチング素子Qu1~Qw2のスイッチング制御を行う。つまり、制御部53は、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrとキャリア周波数fとに基づいて生成されるPWM信号Pu,Pv,Pwを用いて、スイッチング素子Qu1~Qw2を制御する。
【0047】
<動作フロー>
制御部53の動作の一例について説明する。
図5に示すように、ステップS11において、3相電圧指令値導出部53cは、空調ECU113から取得した指令回転速度Ncと、位置推定部53bによって推定された実回転速度Nrとに基づいて、2相電流指令値Idr,Iqrを導出する。
【0048】
次に、ステップS12において、3相電圧指令値導出部53cは、導出した2相電流指令値Idr,Iqrと、3相/2相変換部53aが変換した2相電流Id,Iqとに基づいて、2相電圧指令値Vdr,Vqrを導出する。
【0049】
次に、ステップS13において、3相電圧指令値導出部53cは、2相電圧指令値Vdr,Vqrに基づいて、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを導出する。
次に、ステップS14において、演算部53dは、3相電圧指令値導出部53cによって導出された2相電圧指令値Vdr,Vqrと、電圧センサ51によって検出された直流電圧Vdcとに基づいて、変調率Mを演算する。
【0050】
変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合(ステップS15でYES)、ステップS16に進む。ステップS16において、設定部53eは、キャリア周波数fを第1周波数f1に設定する。変調率Mが所定の変調率Mth以上の場合(ステップS15でNO)、ステップS17に進む。ステップS17において、設定部53eは、キャリア周波数fを第2周波数f2に設定する。
【0051】
次に、ステップS18において、生成部53fは、3相電圧指令値導出部53cによって導出された3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrと、設定部53eによってキャリア周波数fが設定されたキャリア信号Pcとに基づいて、PWM信号Pu,Pv,Pwを生成する。
【0052】
そして、ステップS19において、回転制御部53gは、生成部53fによって生成されたPWM信号Pu,Pv,Pwを用いてスイッチング素子Qu1~Qw2を制御する。
[本実施形態の作用]
本実施形態の作用について、比較例を用いて説明する。
【0053】
本実施形態では、設定部53eは、演算部53dによって演算された変調率Mに応じてキャリア周波数fを設定する。設定部53eは、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合、キャリア周波数fを第1周波数f1に設定する。設定部53eは、変調率Mが所定の変調率Mth以上の場合、キャリア周波数fを第2周波数f2に設定する。これに対し、比較例では、キャリア周波数fは、変調率Mに関わらず、一定値に設定されている。キャリア周波数fは、第2周波数f2に設定されている。
【0054】
まず、実施形態及び比較例において変調率Mが所定の変調率Mth以上の場合について、
図6(a)、
図6(b)、及び
図6(c)を用いて説明する。なお、
図6(a)、
図6(b)、及び
図6(c)は、実施形態及び比較例で共通である。
【0055】
図6(a)は、3相電圧指令値Vur1,Vvr1,Vwr1と、キャリア周波数fが第2周波数f2であるキャリア信号Pc1とを示している。
図6(b)は、PWM信号Pu1,Pv1,Pw1を示している。PWM信号Pu1,Pv1,Pw1は、3相電圧指令値Vur1,Vvr1,Vwr1とキャリア信号Pc1とに基づいて生成されている。
図6(c)は、中性点電圧Vn1とコモンモード電流Ic1とを示している。中性点電圧Vnは、u相PWM信号Pu、v相PWM信号Pv、及びw相PWM信号Pwの総和を3で除した値である。したがって、中性点電圧Vnは、(Pu+Pv+Pw)/3で求められる。中性点電圧Vn1は、(Pu1+Pv1+Pw1)/3で求められる。
【0056】
変調率Mが所定の変調率Mth以上であり、かつキャリア周波数fが第2周波数f2である場合、PWM信号Pu1,Pv1,Pw1のパルス幅は変動している。また、PWM信号Pu1,Pv1,Pw1のパルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングは、相毎に異なっている。このため、中性点電圧Vn1のパルス波形は台形波形になっている。このときのコモンモード電流Ic1は、所定の電流値Icth以下である。
【0057】
続いて、比較例において変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合について、
図7(a)、
図7(b)、及び
図7(c)を用いて説明する。
図7(a)は、3相電圧指令値Vur2,Vvr2,Vwr2と、比較例におけるキャリア信号Pc1とを示している。3相電圧指令値Vur2,Vvr2,Vwr2の振幅は、3相電圧指令値Vur1,Vvr1,Vwr1の振幅よりも小さい。比較例におけるキャリア信号Pc1のキャリア周波数fは、第2周波数f2である。
図7(b)は、比較例におけるPWM信号Pu2,Pv2,Pw2を示している。PWM信号Pu2,Pv2,Pw2は、3相電圧指令値Vur2,Vvr2,Vwr2とキャリア信号Pc1とに基づいて生成されている。
図7(c)は、比較例における中性点電圧Vn2とコモンモード電流Ic2を示している。中性点電圧Vn2は、(Pu2+Pv2+Pw2)/3で求められる。
【0058】
変調率Mが所定の変調率Mthよりも低く、かつキャリア周波数fが第2周波数f2である場合、PWM信号Pu2,Pv2,Pw2のパルス幅はほぼ一定である。また、PWM信号Pu2,Pv2,Pw2のパルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングは、各相でほぼ同じである。このため、中性点電圧Vn1の波形は方形波になっている。キャリア周波数fが第2周波数f2である場合、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低いときのコモンモード電流Ic2の振幅は、変調率Mが所定の変調率Mth以上であるときのコモンモード電流Ic1の振幅よりも大きい。つまり、キャリア周波数fが一定値である場合、変調率Mが低下すると、コモンモード電流Icは増大する。
【0059】
コモンモード電流Icが所定の電流値Icthよりも大きい場合には、チョークコイル41のコア41aの磁気飽和が発生することによって、チョークコイル41のインダクタンスLが低下する。チョークコイル41のインダクタンスLが低下すると、ノイズ低減部14の共振周波数帯域Aが高周波数側に移動するため、キャリア周波数fがノイズ低減部14の共振周波数帯域Aに含まれた場合には、共振現象によるノイズが発生する。
【0060】
続いて、実施形態において変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合について、
図8(a)、
図8(b)、及び
図8(c)を用いて説明する。
図8(a)は、3相電圧指令値Vur2,Vvr2,Vwr2と、実施形態におけるキャリア信号Pc2とを示している。実施形態におけるキャリア信号Pc2のキャリア周波数fは、第2周波数f2よりも高い第1周波数f1である。
図8(b)は、実施形態におけるPWM信号Pu3,Pv3,Pw3を示している。PWM信号Pu3,Pv3,Pw3は、3相電圧指令値Vur2,Vvr2,Vwr2とキャリア信号Pc2とに基づいて生成されている。
図8(c)は、実施形態における中性点電圧Vn3とコモンモード電流Ic3とを示している。中性点電圧Vn3は、(Pu3+Pv3+Pw3)/3で求められる。
【0061】
変調率Mが所定の変調率Mthよりも低く、かつキャリア周波数fが第1周波数f1である場合、PWM信号Pu3,Pv3,Pw3のパルス幅はほぼ一定である。また、PWM信号Pu3,Pv3,Pw3のパルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングは、各相でほぼ同じである。このため、中性点電圧Vn3の波形は、比較例と同様、方形波になっている。その一方で、実施形態におけるキャリア信号Pc2のキャリア周波数fは、比較例におけるキャリア信号Pc1のキャリア周波数fよりも高い。言い換えると、実施形態におけるキャリア信号Pc2の周期は、比較例におけるキャリア信号Pc1の周期よりも短い。このため、実施形態におけるPWM信号Pu3,Pv3,Pw3のパルス幅は、比較例におけるPWM信号Pu2,Pv2,Pw2のパルス幅よりも小さくなっている。したがって、実施形態における中性点電圧Vn3のパルス幅は、比較例における中性点電圧Vn2のパルス幅よりも小さくなっている。その結果、実施形態におけるコモンモード電流Ic3の振幅は、比較例におけるコモンモード電流Ic2の振幅よりも小さくなっている。つまり、実施形態では、比較例と比較して、コモンモード電流Icが低減されている。実施形態におけるコモンモード電流Ic3は、所定の電流値Icth以下である。
【0062】
このように、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合には、キャリア周波数fが第2周波数f2よりも高い第1周波数f1に設定されることによって、コモンモード電流Icが低減される。この場合、チョークコイル41のコア41aの磁気飽和が発生しにくくなることによってインダクタンスLの低下が抑制されるため、ノイズ低減部14の共振周波数帯域Aは高周波数側に移動しにくくなる。また、本実施形態では、キャリア周波数fである第1周波数f1及び第2周波数f2は、共振周波数帯域Aよりも高い周波数に設定されている。よって、キャリア周波数fが共振周波数帯域A内に含まれることにより生じる共振現象によるノイズの発生が抑制される。
【0063】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)設定部53eは、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合、変調率Mが所定の変調率Mth以上の場合よりも高いキャリア周波数fに設定する。これにより、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合のキャリア周波数fが、変調率Mが所定の変調率Mth以上の場合のキャリア周波数fと同じである場合と比較して、中性点電圧Vnのパルス幅が短くなるため、コモンモード電流Icの振幅が小さくなる。よって、コモンモード電流Icを低減できる。
【0064】
なお、変調率Mが所定の変調率Mth以上の場合、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合より、コモンモード電流Icは小さい。したがって、変調率Mが所定の変調率Mth以上の場合には、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合より、キャリア周波数fが低く設定されることによって、スイッチング素子Qu1~Qw2のスイッチング動作回数を減少させることができる。よって、スイッチング損失を低減できる。また、スイッチング素子Qu1~Qw2の発熱による部品の故障を抑制できる。
【0065】
(2)ノイズ低減部14は、チョークコイル41とコンデンサ42とを有している。設定部53eは、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合、キャリア周波数fを、ノイズ低減部14の共振周波数帯域Aよりも高い周波数に設定する。これにより、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合におけるキャリア周波数fである第2周波数f2は、ノイズ低減部14の共振周波数帯域A内に含まれない。よって、共振現象によるノイズの発生を抑制できる。
【0066】
(3)コモンモード電流Icが低減されることによって、チョークコイル41のコア41aの磁気飽和が発生しにくくなるため、チョークコイル41のインダクタンスLの低下が抑制される。これにより、共振周波数帯域Aが高周波数側に移動しにくくなるため、キャリア周波数fが共振周波数帯域Aに含まれることによって生じる共振減少によるノイズの発生を抑制できる。
【0067】
(4)例えば、コア41aの材質の変更やコイル41bの巻き数の増加といった部品構成の変更を行わなくても、コモンモード電流Icを低減できる。
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0068】
○ スイッチング素子Qu1~Qw2は、IGBTに限定されない。スイッチング素子Qu1~Qw2は、例えば、MOSFETでもよい。
○ ノイズ低減部14の構成は、コモンモードノイズを低減可能であれば、適宜変更されてもよい。
【0069】
○ チョークコイル41は、コモンモードノイズを低減することに加えて、コア41aの漏れ磁束によってノーマルモードノイズも低減させる構造であってもよい。
○ 電流センサ52は、3相電流Iu,Iv,Iw全てを検出しなくてもよい。電流センサ52は、3相電流Iu,Iv,Iwのうちの2つの電流を検出するとともに、残りの1つの電流は、計算で求められてもよい。
【0070】
○ 変調率Mと時間情報とが紐付けられている場合、設定部53eは、時間情報に基づいてキャリア周波数fを設定してもよい。
例えば、空調ECU113がインバータ制御装置15に対して電動モータ12の起動指令を送信した時刻t0から所定の時刻t1までは、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低いとする。また、所定の時刻t1に、変調率Mが所定の時刻Mth以上になるとする。この場合、設定部53eは、時刻t0から時刻t1までの間は、キャリア周波数fを第1周波数f1に設定する。設定部53eは、時刻t1においてキャリア周波数fを第1周波数f1から第2周波数f2に切り替える。つまり、設定部53eは、変調率Mと所定の変調率Mthとを比較することなくキャリア周波数fを設定する。この場合であっても、設定部53eは、変調率Mが所定の変調率Mthよりも低い場合、変調率Mが所定の変調率Mth以上の場合よりも高いキャリア周波数fに設定することになる。
【0071】
○ 電動機10は、電動圧縮機111に用いられるものに限定されない。例えば、電動機10は、車両100を走行させる走行用モータとして用いられてもよい。
○ 2つのコンデンサ42を接続する接続線は、途中で分岐して筐体16に接続されるのではなく、途中で分岐して車両100のボディに接地されていてもよい。
【0072】
○ 2つのコンデンサ42を接続する接続線の途中で分岐して筐体16に接続される配線はなくてもよい。
○ コモンモード電流Icは、浮遊容量Csを介して筐体16に流出した後、筐体16を経由して、筐体16と正極母線L1との浮遊容量及び筐体16と負極母線L2との浮遊容量を介して正極母線L1及び負極母線L2に戻ってもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…電動機、12…電動モータ、13…インバータ部、14…ノイズ低減部、16…筐体、53…制御部、53d…演算部、53e…設定部、24u,24v,24w…3相コイル、41…チョークコイル、42…コンデンサ、100…車両、Qu1~Qw2…スイッチング素子。