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特開2024-24884生体情報処理装置および生体情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024884
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】生体情報処理装置および生体情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20240216BHJP
   A61B 5/0215 20060101ALI20240216BHJP
   A61B 5/029 20060101ALI20240216BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20240216BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20240216BHJP
【FI】
A61B5/02 310V
A61B5/0215 B
A61B5/02 310B
A61B5/029
A61B5/08
A61B5/352
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127835
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 喜晴
(72)【発明者】
【氏名】須郷 義広
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 紗也香
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA03
4C017AA08
4C017AA09
4C017AA10
4C017AA14
4C017AA19
4C017AB03
4C017AC03
4C017AC16
4C017AC28
4C017BC11
4C017BC21
4C017BD01
4C017BD04
4C017EE15
4C017FF05
4C038SS08
4C127AA02
4C127GG02
(57)【要約】
【課題】被験者の循環動態の変化を容易に確認することができる生体情報処理装置および生体情報処理方法を提供する。
【解決手段】生体情報処理装置1は、被験者の脈波伝播時間PWTTの移動平均値を算出し、算出した移動平均値を用いて被験者の循環動態パラメータを算出する算出部70を備え、算出部70は、第1の脈波伝播時間分の移動平均値PWTT-64を用いた循環動態パラメータと、第1の脈波伝播時間分よりも少ない第2の脈波伝播時間分の移動平均値PWTT-16を用いた循環動態パラメータとの間で算出対象を切り替え可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の脈波伝播時間の移動平均値を算出し、算出した前記移動平均値を用いて前記被験者の循環動態パラメータを算出する算出部を備え、
前記算出部は、第1の脈波伝播時間分の前記移動平均値を用いた循環動態パラメータと、前記第1の脈波伝播時間分よりも少ない第2の脈波伝播時間分の前記移動平均値を用いた循環動態パラメータとの間で算出対象を切り替え可能である、生体情報処理装置。
【請求項2】
前記生体情報処理装置は、さらに、
前記被験者に対する処置の開始タイミングを示す開始信号、および前記処置の終了タイミングを示す終了信号を受信する受信部を備え、
前記算出部は、前記受信部により受信された前記開始信号および前記終了信号に基づいて、前記被験者に対する処置が行われていない状況においては前記第1の脈波伝播時間分の前記移動平均値を用いた循環動態パラメータを算出し、前記被験者に対する処置が行われている状況においては前記第2の脈波伝播時間分の前記移動平均値を用いた循環動態パラメータを算出する、請求項1に記載の生体情報処理装置。
【請求項3】
前記算出部は、作業者による操作を受け付ける受付部が所定の操作を受け付けた場合、前記算出対象を、前記第1の脈波伝播時間分の前記移動平均値を用いた循環動態パラメータから、前記第2の脈波伝播時間分の前記移動平均値を用いた循環動態パラメータに切り替える、請求項1または請求項2に記載の生体情報処理装置。
【請求項4】
被験者の脈波伝播時間の移動平均値を算出し、算出した前記移動平均値を用いて前記被験者の循環動態パラメータを算出する算出ステップを含み、
前記算出ステップにおいて、第1の脈波伝播時間分の前記移動平均値を用いた循環動態パラメータと、前記第1の脈波伝播時間分よりも少ない第2の脈波伝播時間分の前記移動平均値を用いた循環動態パラメータとの間で算出対象を切り替え可能である、生体情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体情報処理装置および生体情報処理方法に関するものである。
【0002】
従来、被験者へ輸液の投与などの処置を行う場合、当該被験者の状態を確認するための有用なパラメータとして、当該被験者の一回拍出量または心拍出量などの循環動態に関するパラメータ(以下、「循環動態パラメータ」と称する)の変化が用いられる。例えば、少量の輸液を投与し、投与前における循環動態パラメータの値と、投与後における循環動態パラメータの値との変化率が一定値以上であれば輸液の投与を継続し、当該変化率が一定値未満であれば他の処置に切り替えるために投与を終了するなどの判断が行われる。また、特許文献1では、脈波伝搬時間を用いることにより、心拍出量を算出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-312947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、循環動態パラメータの算出に用いられる脈波伝搬時間の値がノイズ等の影響により大きく変化することがある。このため、例えば、複数の脈波伝播時間の移動平均値を用いて循環動態パラメータの算出が行われる。しかしながら、上記の方法では、移動平均値が算出されるまでに上記の複数の脈波伝搬時間分の時間を要するため、循環動態の変化を速やかに確認することができない。
【0005】
本開示は、被験者の循環動態の変化を容易に確認することができる生体情報処理装置および生体情報処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る生体情報処理装置は、
被験者の脈波伝播時間の移動平均値を算出し、算出した前記移動平均値を用いて前記被験者の循環動態パラメータを算出する算出部を備え、
前記算出部は、第1の脈波伝播時間分の前記移動平均値を用いた循環動態パラメータと、前記第1の脈波伝播時間分よりも少ない第2の脈波伝播時間分の前記移動平均値を用いた循環動態パラメータとの間で算出対象を切り替え可能である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、被験者の循環動態の変化を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一態様に係る生体情報処理装置(生体情報表示装置)の構成を示す図である。
図2図2は、図1に示す生体情報処理装置の一例であるモニタ装置を用いた測定形態の一例を示す図である。
図3図3は、図1に示す表示部に表示される画面の一例を示す図である。
図4図4は、被験者に対する処置が新たに開始された場合に表示される画面の一例を示す図である。
図5図5は、循環動態パラメータの算出に用いられる脈波伝播時間の切り替えを指示するための操作を説明するための図である。
図6図6は、本開示の実施の形態に係る生体情報処理装置において、循環動態パラメータの算出に用いられる脈波伝播時間の切り替え動作の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る生体情報処理装置および生体情報処理方法の実施形態の一例を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
[生体情報処理装置の構成]
図1は、本開示の一態様に係る生体情報処理装置(生体情報表示装置)Mの構成を示す図である。図2は、図1に示す生体情報処理装置Mの一例であるモニタ装置M1を用いた測定形態の一例を示す図である。
【0011】
生体情報処理装置Mは、被験者の循環動態に関する循環動態パラメータの算出および表示制御などを行う表示装置1と、心臓の収縮期および拡張期における血圧を測定する血圧測定装置2と、呼吸測定装置4と、観血血圧測定装置5と、受付部6と、心電図電極31と、光電脈波検出センサ32と、測定データ送信器65と、表示部71とを備える。
【0012】
血圧測定装置2は、非観血式血圧(NIBP:Non Invasive Blood Pressure)測定方法によって被験者の血圧を測定する装置であり、カフ21と、排気弁22と、加圧ポンプ23と、圧力センサ24と、カフ圧検出部25と、A/D変換器26とを含む。具体的には、血圧測定装置2は、図2に示すように、カフ21を被験者の上腕部に装着して血圧の測定を行う。
【0013】
カフ21は、排気弁22の開閉によって、その内部が大気に対し開放または閉塞される。排気弁22は、例えば、モニタ装置M1から出力される制御信号に基づいて開閉される。また、カフ21には加圧ポンプ23から空気が供給される。空気の供給は、例えば、モニタ装置M1から出力される制御信号に基づいて制御される。
【0014】
また、カフ21には圧力センサ24が接続されており、圧力センサ24のセンサ出力がカフ圧検出部25によって検出される。カフ圧検出部25からのセンサ出力は、A/D変換器26によってディジタル信号に変換された後、表示装置1のNIBP脈圧測定手段11に入力される。
【0015】
心電図電極31は、図2に示すように、被験者の胸部に装着され、心電図のR波発生時点を時間間隔の基準点として測定する。また、心電図電極31は、測定データ送信器65と電気的に接続されている。心電図電極31による測定データは、測定データ送信器65に入力され、測定データ送信器65から、図1に示す表示装置1における時間間隔検出部36へ無線送信される。
【0016】
光電脈波検出センサ32は、図2に示すように、指など被験者の末梢部に装着し、例えば、脈波を測定する。心電図電極31から得られた測定データおよび光電脈波検出センサ32から得られた脈波により、脈波伝播時間(PWTT: Pulse Wave Transit Time)が得られる。光電脈波検出センサ32は、測定データ送信器65と電気的に接続されている。光電脈波検出センサ32による測定データは、測定データ送信器65に入力され、測定データ送信器65から、図1に示す表示装置1における脈波検出部33へ無線送信される。
【0017】
呼吸測定装置4は、被験者の呼吸を連続的に測定する。呼吸測定装置4によって測定された測定データは、表示装置1の呼吸周期検出手段41に入力される。
【0018】
観血血圧測定装置5は、観血式(IBP:Invasive Blood Pressure)方法によって、すなわち被験者の血管にカテーテルを挿入して血圧を測定する。観血血圧測定装置5による測定データは、表示装置1の観血血圧脈圧測定手段51に入力される。
【0019】
受付部6は、作業者の入力操作を受け付けると共に、当該入力操作に対応する指示信号を生成する。受付部6は、例えば、後述する表示部71に重ねて配置されたタッチパネル、表示装置1の筐体に設けられた操作ボタン、または図示しない入出力インターフェース(例えば、USBインターフェース等)に接続されたマウスもしくはキーボード等である。受付部6によって生成された指示信号は、表示装置1に入力される。
【0020】
[表示装置の構成]
表示装置1は、脈波検出部33と、A/D変換器34と、時間間隔検出部36と、算出部70と、表示制御部72と、受信部74とを備える。算出部70は、NIBP脈圧測定手段11と、心拍数算出手段12と、脈波伝播時間測定手段13と、脈波伝播時間呼吸性変動測定手段14と、脈波振幅測定手段15と、脈波振幅呼吸性変動測定手段16と、循環動態算出手段17と、固有係数算出手段18と、記憶部19と、呼吸周期検出手段41と、観血血圧脈圧測定手段51と、脈圧呼吸性変動測定手段52とを含む。
【0021】
時間間隔検出部36は、心電図電極31から測定データ送信器65を介して受信した測定データに基づいて心電図波形を取得する。また、時間間隔検出部36は、測定データをディジタル信号に変換して、算出部70の心拍数算出手段12および脈波伝播時間測定手段13へ出力する。
【0022】
脈波検出部33は、光電脈波検出センサ32から測定データ送信器65を介して受信した測定データに基づいて、光電脈波の末梢部の波形を取得する。そして、脈波検出部33は、当該測定データをA/D変換器34へ出力する。A/D変換器34は、当該測定データをディジタル信号に変換して、算出部70の脈波伝播時間測定手段13および脈波振幅測定手段15へ出力する。
【0023】
NIBP脈圧測定手段11は、血圧測定装置2によって測定された血圧データに基づいて、NIBP脈圧を測定する。NIBP脈圧は、収縮期(最高)血圧値と拡張期(最低)血圧値との差から算出される。測定されたNIBP脈圧は、固有係数算出手段18に入力される。
【0024】
心拍数算出手段12は、時間間隔検出部36によって測定された基準点(R波発生時点)に基づいて1分間の拍動の数(心拍数:Heart Rate,HR)を算出する。算出された心拍数HRは、循環動態算出手段17に入力される。
【0025】
脈波伝播時間測定手段13は、時間間隔検出部36によって測定された基準点(R波発生時点)と、光電脈波検出センサ32によって検出された末梢部の波形とに基づいて、心電図のR波から末梢のSpO脈波までの到達時間である脈波伝播時間PWTTを算出する。
【0026】
より詳細には、脈波伝播時間測定手段13は、瞬間的なノイズ等の影響によって脈波伝播時間PWTTの値が乱れることを避けるため、現在時刻の直近の複数の脈波伝播時間分の移動平均値を算出する。具体的には、脈波伝播時間測定手段13は、連続する16回分の脈波伝播時間PWTTを算出すると、これら16回分の脈波伝播時間PWTTの移動平均値を算出する。以下、16回分の脈波伝播時間PWTTの移動平均値を、「移動平均値PWTT-16」と称する。
【0027】
さらに、脈波伝播時間測定手段13は、連続する64回分の脈波伝播時間PWTTを用いて、4回連続して移動平均値PWTT-16を算出すると、これら4回分の移動平均値PWTT-16の移動平均値を算出する。このように算出された脈波伝播時間PWTTの移動平均値を、「移動平均値PWTT-64」と称する。そして、脈波伝播時間測定手段13は、算出した移動平均値PWTT-64を、脈波伝播時間PWTTとして、循環動態算出手段17および脈波伝播時間呼吸性変動測定手段14へ出力する。
【0028】
脈波伝播時間呼吸性変動測定手段14は、脈波伝播時間測定手段13により算出された脈波伝播時間PWTTと、呼吸周期検出手段41によって検出された呼吸周期とに基づいて、脈波伝播時間PWTTの呼吸性変動を測定する。測定された脈波伝播時間PWTTの呼吸性変動を示す測定データは、固有係数算出手段18に入力される。
【0029】
脈波振幅測定手段15は、脈波検出部33により取得された末梢部の波形から脈波の振幅を測定する。測定された脈波振幅は、脈波振幅呼吸性変動測定手段16に入力される。
【0030】
呼吸周期検出手段41は、呼吸測定装置4によって測定された呼吸データから呼吸周期を検出する。検出された呼吸周期は、脈波伝播時間呼吸性変動測定手段14、脈波振幅呼吸性変動測定手段16、および脈圧呼吸性変動測定手段52に入力される。
【0031】
脈波振幅呼吸性変動測定手段16は、脈波振幅測定手段15によって測定された脈波振幅と、呼吸周期検出手段41によって検出された呼吸周期とに基づいて、脈波振幅の呼吸性変動(PAV:Pulse Amplitude Variation)を測定する。測定された脈波振幅の呼吸性変動は、固有係数算出手段18に入力される。
【0032】
観血血圧脈圧測定手段51は、観血血圧測定装置5によって測定された血圧データに基づいて、IBP脈圧を測定する。測定されたIBP脈圧は、脈圧呼吸性変動測定手段52に入力される。
【0033】
脈圧呼吸性変動測定手段52は、観血血圧脈圧測定手段51によって測定されたIBP脈圧と、呼吸周期検出手段41によって測定された呼吸周期に基づいて、脈圧の呼吸性変動(PPV:Pulse Pressure Variation)を測定する。測定された脈圧の呼吸性変動を示す測定データは、固有係数算出手段18に入力される。
【0034】
固有係数算出手段18は、NIBP脈圧測定手段11によって測定されたNIBP脈圧と、脈波伝播時間呼吸性変動測定手段14によって測定された脈波伝播時間PWTTの呼吸性変動と、脈波振幅呼吸性変動測定手段16によって測定された脈波振幅の呼吸性変動と、脈圧呼吸性変動測定手段52によって測定された脈圧の呼吸性変動とに基づいて、被験者固有の係数を算出する。算出された係数は、例えば、後述する係数K,α,βであり、循環動態算出手段17に入力される。
【0035】
循環動態算出手段17は、心拍数算出手段12によって算出された心拍数HRと、脈波伝播時間測定手段13によって測定されたて脈波伝播時間PWTTと、固有係数算出手段18によって算出された係数K,α,βとに基づいて、被験者の循環動態パラメータを算出する。
【0036】
ここでは、循環動態算出手段17は、循環動態パラメータとして、心臓の収縮期に大動脈に流入した血液の流量(一回拍出量:Stroke Volume,SV)、および非侵襲かつ連続的に測定される心拍出量(非侵襲連続推定心拍出量:estimated Continuous Cardiac Output,esCCO)を算出することとする。
【0037】
また、循環動態算出手段17は、被験者に対する輸液投与または薬剤を使用する治療などの処置が行われている期間(以下、「処置期間」と称する)における循環動態パラメータの変化率を算出する。循環動態算出手段17による循環動態パラメータの算出、および循環動態パラメータの変化率の算出については、後述する。
【0038】
[循環動態パラメータおよび循環動態パラメータの変化率の算出]
(循環動態パラメータの算出)
一回拍出量SVと脈波伝播時間PWTTとの間には、式1に示すような相関がある。式1において、K,α,βは被験者固有の係数である。
SV=K*(α*PWTT+β)・・・(式1)
【0039】
循環動態算出手段17は、固有係数算出手段18によって算出された係数K,α,βを式1に代入する。また、循環動態算出手段17は、例えば、脈波伝播時間測定手段13から受けた移動平均値PWTT-64を、式1のPWTTに代入する。これにより、循環動態算出手段17は、一回拍出量SVを算出することができる。循環動態算出手段17により算出された一回拍出量SVを、以下「一回拍出量esSV」と称する。
【0040】
循環動態算出手段17は、一回拍出量esSVの算出を定期的に行い、例えば、算出した一回拍出量esSVと算出タイミングとを対応づけて記憶部19に保存する。
【0041】
また、心臓の拍動により駆出される血液量(心拍出量:Cardiac Output,CO)を用いると、一回拍出量SVと心拍数HRとの間には、式2に示すような相関がある。
SV=CO/HR・・・(式2)
【0042】
式1および式2を用いることにより、非侵襲連続推定心拍出量esCCOを、以下の式3のように算出することができる。
CO=SV*HR
=K*(α*PWTT+β)*HR
=esCCO・・・(式3)
【0043】
循環動態算出手段17は、係数K,α,βを式3に代入する。また、循環動態算出手段17は、移動平均値PWTT-64を式3のPWTTに代入する。これにより、循環動態算出手段17は、非侵襲連続推定心拍出量esCCOを算出することができる。
【0044】
循環動態算出手段17は、非侵襲連続推定心拍出量esCCOの算出を定期的に行い、例えば、算出した非侵襲連続推定心拍出量esCCOと算出タイミングとを対応づけて記憶部19に保存する。
【0045】
(循環動態パラメータの変化率の算出)
被験者に対する処置を行う作業者は、受付部6に対して所定の入力操作を行うことにより、生体情報処理装置Mに対して処置の開始タイミングを入力することができる。このような入力操作が行われた場合、受付部6は、入力操作の内容および開始タイミングを示す開始信号を表示装置1へ出力する。
【0046】
また、作業者は、受付部6に対して所定の入力操作を行うことにより、生体情報処理装置Mに対して処置の終了タイミングを入力することができる。このような入力操作が行われた場合、受付部6は、終了タイミングを示す終了信号を表示装置1へ出力する。
【0047】
表示装置1の受信部74は、受付部6から出力された開始信号または終了信号を受信すると、受信した開始信号または終了信号を算出部70および表示制御部72へ出力する。
【0048】
算出部70の循環動態算出手段17は、受信部74からの開始信号を受けた場合、当該開始信号が示す開始タイミングを記憶部19に保存する。また、循環動態算出手段17は、受信部74からの終了信号を受けた場合、当該終了信号が示す終了タイミングを記憶部19に保存する。
【0049】
また、循環動態算出手段17は、終了信号を受けた後、開始タイミングおよび終了タイミングに基づいて処置期間を特定する。そして、循環動態算出手段17は、特定した処置期間における循環動態パラメータの変化率を算出する。
【0050】
例えば、循環動態算出手段17は、記憶部19に保存されている複数の非侵襲連続推定心拍出量esCCOを参照して、処置期間に算出された非侵襲連続推定心拍出量esCCOのうちの最大値esCCOmax、および処置期間に算出された非侵襲連続推定心拍出量esCCOのうちの最小値esCCOminを特定する。
【0051】
そして、循環動態算出手段17は、最大値esCCOmaxおよび最小値esCCOminを用いることにより、非侵襲連続推定心拍出量esCCOの変化率を、以下の式4のように算出することができる。循環動態算出手段17は、算出した当該変化率を記憶部19に保存する。
esCCOの変化率=2*(esCCOmax-esCCOmin)/(esCCOmax+esCCOmin)・・・(式4)
【0052】
また、循環動態算出手段17は、記憶部19に保存されている複数の一回拍出量esSVを参照して、処置期間に算出された一回拍出量esSVのうちの最大値esSVmax、および処置期間に算出された一回拍出量esSVのうちの最小値esSVminを特定する。
【0053】
そして、循環動態算出手段17は、最大値esSVmaxおよび最小値esSVminを用いることにより、一回拍出量esSVの変化率を、以下の式5のように算出することができる。循環動態算出手段17は、算出した当該変化率を記憶部19に保存する。
esSVの変化率=2*(esSVmax-esSVmin)/(esSVmax+esSVmin)・・・(式5)
【0054】
なお、受付部6からの開始信号は、開始タイミングの情報を含まない信号であってもよい。この場合、例えば、受信部74は、当該開始信号の受信タイミングを開始タイミングとして算出部70および表示制御部72に通知する。また、終了信号についても同様に、終了信号が終了タイミングの情報を含まない信号である場合、例えば、受信部74は、当該終了信号の受信タイミングを終了タイミングとして算出部70および表示制御部72に通知する。
【0055】
[表示制御処理]
(循環動態パラメータおよび循環動態パラメータの変化率の表示)
(a)処置が行われていない期間における表示
表示制御部72は、循環動態算出手段17により算出された循環動態パラメータおよび循環動態パラメータの変化率を、モニタ等である表示部71に出力する制御を行う。これにより、表示部71には、循環動態パラメータおよび循環動態パラメータの変化率を含む画面が表示される。図3は、図1に示す表示部71に表示される画面の一例を示す図である。
【0056】
図3に示すように、表示部71に表示される画面には、被験者の現在の心拍数、血圧値、非侵襲連続推定心拍出量esCCOおよび一回拍出量esSVなどが表示される。また、当該画面には、被験者の処置期間における循環動態パラメータが表示される領域Rが含まれる。
【0057】
領域Rには、複数のタブTbが含まれる。これら複数のタブTbには、例えば、循環動態パラメータに関する表示を選択するためのタブTb1、循環動態パラメータの変化率に関する表示を選択するためのタブTb2が含まれる。タブTb1には、例えば「esCCO」の文字が付されている。タブTb2には、例えば「変化率計算」の文字が付されている。
【0058】
図3では、作業者が、タブTb1を選択し、さらに、タブTb2を選択する入力操作を図1に示す受付部6に対して行った場合であり、かつ被験者に対する処置が行われていない期間に表示される画面を示している。
【0059】
受付部6は、上記のような入力操作が行われると、当該入力操作の内容を示す指示信号を表示装置1の受信部74へ出力する。受信部74は、受付部6から出力された当該指示信号を受信すると、当該指示信号を表示制御部72へ出力する。
【0060】
表示制御部72は、受信部74から出力された当該指示信号を受けると、記憶部19に保存されている開始タイミングおよび終了タイミングを読み出し、被験者に対する1または複数の処置期間を特定する。
【0061】
また、表示制御部72は、記憶部19に保存されている複数の循環動態パラメータ、および複数の循環動態パラメータの変化率を参照して、処置期間ごとに、開始タイミング、終了タイミング、開始タイミングに対応づけられた循環動態パラメータ、終了タイミングに対応づけられた循環動態パラメータ、および循環動態パラメータの変化率を記憶部19から読み出す。そして、表示制御部72は、読み出したこれらの値が領域Rに表示されるように制御を行う。
【0062】
また、表示制御部72は、循環動態パラメータの変化率の表示として、非侵襲連続推定心拍出量esCCOの変化率の表示と、一回拍出量esSVの変化率とを切り替え可能である。
【0063】
より詳細には、タブTb1およびタブTb2が選択された場合における領域Rには、非侵襲連続推定心拍出量esCCOの表示を選択するための選択ボタンB11と、一回拍出量esSVの表示を選択するための選択ボタンB12と、処置期間ごとの循環動態パラメータの変化率の一覧を示すテーブルTaとが含まれる。選択ボタンB11には、例えば「ΔesCCO」の文字が付されている。選択ボタンB12には、例えば「ΔesSV」の文字が付されている。
【0064】
作業者は、選択ボタンB11および選択ボタンB12のいずれか一方を選択することができる。作業者が選択ボタンB11および選択ボタンB12のいずれも選択していない状態においては、選択ボタンB11が自動的に選択されている。すなわち、このような状態では、テーブルTaには、非侵襲連続推定心拍出量esCCOおよび非侵襲連続推定心拍出量esCCOの変化率が表示される。
【0065】
具体的には、被験者に対して、15時30分から15時45分までの期間に1回目の処置が行われ、15時48分から15時58分までの期間に2回目の処置が行われたとする。
【0066】
この場合、例えば、15時30分における非侵襲連続推定心拍出量esCCOが5.00であり、15時45分における非侵襲連続推定心拍出量esCCOが5.08であり、1回目の処置期間における非侵襲連続推定心拍出量esCCOの変化率が12%であることがテーブルTaに表示される。また、15時48分における非侵襲連続推定心拍出量esCCOが5.10であり、15時58分における非侵襲連続推定心拍出量esCCOが5.20であり、2回目の処置期間における非侵襲連続推定心拍出量esCCOの変化率が10%であることがテーブルTaに表示される。
【0067】
テーブルTaでは、例えば、最新の処置期間の値ほど上の行に表示される。このため、2回の処置が行われた場合には、2回目の処置の期間における値が第1行に表示され、1回目の処置の期間における値が第2行に表示される。
【0068】
また、作業者が、領域Rに含まれる選択ボタンB12を選択する入力操作を行ったとする。この場合、表示制御部72は、処置期間ごとの非侵襲連続推定心拍出量esCCOおよび非侵襲連続推定心拍出量esCCOの変化率の代わりに、処置期間ごとの一回拍出量esSVおよび一回拍出量esSVの変化率がテーブルTaに表示されるように制御を行う。
【0069】
なお、表示制御部72は、テーブルTaに表示される循環動態パラメータの変化率のうち、所定の閾値未満である変化率が存在する場合には、当該変化率が閾値未満であることが作業者に認識されやすくなるような表示が行われるように制御してもよい。例えば、表示制御部72は、当該変化率の色を他の変化率の色とは異なる色で表示されるように制御したり、当該変化率が閾値未満である旨のメッセージが画面に表示されるように制御したりすることができる。
【0070】
(b)処置期間における表示
領域Rには、さらに、処置の開示タイミングおよび終了タイミングを入力するための選択ボタンB13が含まれる。選択ボタンB13には、例えば、処置が行われていない期間においては「実施前」の文字が付され、処置期間においては「実施後」の文字が付されている。
【0071】
上述のとおり、作業者は、受付部6に対して所定の入力操作を行うことにより、処置の開始タイミングおよび終了タイミングを生体情報処理装置Mに入力することができる。この所定の入力操作は、例えば、領域Rに表示されている選択ボタンB13を選択する操作である。
【0072】
すなわち、作業者は、処置の開始タイミングにおいて、「実施前」の文字が付されている選択ボタンB13を選択する操作を行う。これにより、当該開始タイミングが生体情報処理装置Mに入力されると共に、選択ボタンB13の文字が「実施後」に切り替わる。また、作業者は、処置の終了タイミングにおいて、「実施後」の文字が付されている選択ボタンB13を選択する操作を行う。これにより、当該終了タイミングが生体情報処理装置Mに入力されると共に、選択ボタンB13の文字が「実施前」に切り替わる。
【0073】
図4は、被験者に対する処置が新たに開始された場合に表示される画面の一例を示す図である。図3および図4を参照して、例えば、作業者は、被験者に対して新たに処置を開始するタイミングである16時に、図3に示す選択ボタンB13を選択する入力操作を受付部6に対して行ったとする。
【0074】
この場合、受付部6は、当該入力操作の内容および開始タイミングである16時を示す指示信号を開始信号として、表示装置1の受信部74へ出力する。受信部74は、受付部6から出力された当該指示信号を受信すると、当該指示信号を算出部70および表示制御部72へ出力する。
【0075】
算出部70における循環動態算出手段17は、受信部74から出力された当該指示信号を受けると、当該指示信号の示す16時を、開始タイミングとして記憶部19に保存する。
【0076】
表示制御部72は、受信部74から出力された当該指示信号を受けると、画面において選択ボタンB13に付されている文字が「実施前」から「実施後」に切り替わるように制御する。また、表示制御部72は、記憶部19に保存されている複数の循環動態パラメータを参照して、開始タイミングである16時に対応する循環動態パラメータを記憶部19から読み出す。そして、表示制御部72は、当該開始タイミング、および読み出した循環動態パラメータの値がテーブルTaに表示されるように制御する。
【0077】
具体的には、表示制御部72は、テーブルTaの第1行に、最新の処置の開始タイミングである16時、および16時における循環動態パラメータの値が表示されるように制御する。また、表示制御部72は、図3において第1行に表示されていた15時48分から15時58分の処置期間における各値が第2行に表示され、図3において第2行に表示されていた15時30分から15時45分の処置期間における各値が第3行に表示されるように制御する。
【0078】
(c)現在時刻における循環動態パラメータの表示
表示部71に表示される画面には、上記のとおり、被験者の現在時刻の非侵襲連続推定心拍出量esCCOおよび一回拍出量esSVが表示される。表示制御部72は、定期的に、記憶部19に保存されている最新の非侵襲連続推定心拍出量esCCOおよび一回拍出量esSVを読み出し、読み出した非侵襲連続推定心拍出量esCCOおよび一回拍出量esSVを表示部71に出力する。
【0079】
図4に示す画面では、一例として、現在時刻の非侵襲連続推定心拍出量esCCOである「3.73」、および現在時刻の一回拍出量esSVである「47」が表示されている。
【0080】
なお、図3および図4に示す画面では、被験者の現在時刻の循環動態パラメータとして、非侵襲連続推定心拍出量esCCOおよび一回拍出量esSVの両方が表示されているが、非侵襲連続推定心拍出量esCCOおよび一回拍出量esSVのいずれか一方が表示される構成であってもよい。
【0081】
(循環動態パラメータの算出に用いられる脈波伝播時間PWTTの移動平均値の切り替え)
ここで、仮に心拍数HRが80bpmである場合、64回分の脈波伝播時間PWTTの移動平均値PWTT-64が算出されるまでには約1分間の時間を要する。しかしながら、処置期間などの特定の期間においては、被験者の循環動態の急激な変化を監視することが必要となる場合がある。
【0082】
このため、生体情報処理装置Mは、例えば、循環動態パラメータの算出に用いられる脈波伝播時間PWTTの移動平均値を、64回分(第1の脈波伝搬時間分)の脈波伝播時間PWTTの移動平均値PWTT-64と、16回分(第2の脈波伝搬時間分)の脈波伝播時間PWTTの移動平均値PWTT-16との間で切り替え可能に構成されている。
【0083】
(a)自動切り換え
再び図1を参照して、脈波伝播時間測定手段13は、処置が行われていない期間、すなわち受信部74からの開始信号を受信していない期間においては、移動平均値PWTT-64を、脈波伝播時間PWTTとして循環動態算出手段17に出力する。これにより、循環動態算出手段17は、ノイズ等による影響を低減させた正確性の高い移動平均値PWTT-64を用いて循環動態パラメータを算出することができる。
【0084】
すなわち、処置が行われていない期間においては、現在の非侵襲連続推定心拍出量esCCOおよび一回拍出量esSVとして、移動平均値PWTT-64を用いた値が表示部71に表示される。このため、作業者において、非侵襲連続推定心拍出量esCCOおよび一回拍出量esSVのより正確な変化を確認することができる。
【0085】
一方、脈波伝播時間測定手段13は、処置期間、すなわち受信部74からの開始信号の受信後であって、受信部74からの終了信号を受信していない期間においては、移動平均値PWTT-16を、脈波伝播時間PWTTとして循環動態算出手段17に出力する。これにより、循環動態算出手段17は、早期に算出される移動平均値PWTT-16を用いて循環動態パラメータを算出することができる。
【0086】
すなわち、処置期間においては、表示部71において、現在の非侵襲連続推定心拍出量esCCOおよび一回拍出量esSVが高い頻度で更新される。このため、作業者において、非侵襲連続推定心拍出量esCCOおよび一回拍出量esSVの変化を速やかに確認することができる。
【0087】
(b)手動切り替え
脈波伝播時間測定手段13は、処置期間であるか否かに関わらず、作業者により所定の入力操作が行われた場合に、脈波伝播時間PWTTとして循環動態算出手段17に出力する移動平均値を移動平均値PWTT-64と移動平均値PWTT-16との間で切り替えてもよい。
【0088】
図5は、循環動態パラメータの算出に用いられる脈波伝播時間PWTTの切り替えを指示するための操作を説明するための図である。図5に示すように、領域Rに含まれる複数のタブTbには、循環動態パラメータに関する設定画面の表示を選択するためのタブTb3が含まれる。タブTb3には、例えば「詳細設定」の文字が付されている。
【0089】
図5では、作業者が、タブTb1を選択し、さらに、タブTb3を選択する入力操作を、図1に示す受付部6に対して行った場合の画面を示している。受付部6は、上記のような入力操作が行われると、当該入力操作の内容を示す指示信号を表示装置1の受信部74へ出力する。受信部74は、受付部6から出力された当該指示信号を受信すると、当該指示信号を表示制御部72へ出力する。
【0090】
表示制御部72は、受信部74から出力された当該指示信号を受けると、当該指示信号に基づいて、図5に示すように、循環動態パラメータに関する設定画面が表示部71に表示されるように制御する。設定画面には、循環動態パラメータの算出に用いられる脈波伝播時間PWTTを選択するための選択ボタンB21,B22が表示されている。選択ボタンB21には、例えば「Normal」の文字が付されている。選択ボタンB22には、例えば「Quick」の文字が付されている。
【0091】
作業者が、選択ボタンB21を選択する入力操作を受付部6に対して行ったとする。受付部6は、上記のような入力操作が行われると、当該入力操作の内容を示す指示信号を表示装置1の受信部74へ出力する。受信部74は、受付部6から出力された当該指示信号を受信すると、当該指示信号を算出部70へ出力する。
【0092】
算出部70の脈波伝播時間測定手段13は、選択ボタンB21が選択されたことを示す指示信号を受けた場合、脈波伝播時間PWTTとして移動平均値PWTT-64を循環動態算出手段17に出力する。循環動態算出手段17は、移動平均値PWTT-64を用いて、循環動態パラメータを算出する。
【0093】
また、作業者が、選択ボタンB22を選択する入力操作を受付部6に対して行ったとする。受付部6は、上記のような入力操作が行われると、当該入力操作の内容を示す指示信号を表示装置1の受信部74へ出力する。受信部74は、受付部6から出力された当該指示信号を受信すると、当該指示信号を算出部70へ出力する。
【0094】
算出部70の脈波伝播時間測定手段13は、選択ボタンB22が選択されたことを示す指示信号を受けた場合、脈波伝播時間PWTTとして循環動態算出手段17に出力する移動平均値を、移動平均値PWTT-64から移動平均値PWTT-16に切り替える。そして、循環動態算出手段17は、移動平均値PWTT-16を用いて、循環動態パラメータを算出する。
【0095】
なお、作業者が選択ボタンB21および選択ボタンB22のいずれも選択していない状態においては、選択ボタンB21が自動的に選択されている。このため、このような状態では、循環動態算出手段17は、移動平均値PWTT-64を用いた循環動態パラメータの算出を行う。
【0096】
また、循環動態パラメータの算出に用いることのできる脈波伝播時間PWTTの移動平均値は、移動平均値PWTT-16および移動平均値PWTT-64の2種類の間で切り替え可能である構成に限定されず、3種類以上の移動平均値の間で切り替え可能に構成されてもよい。
【0097】
また、脈波伝播時間測定手段13は、循環動態パラメータの変化率に関する表示を選択するためのタブTb2が選択された場合においても、循環動態算出手段17へ出力する移動平均値を、移動平均値PWTT-64から移動平均値PWTT-16に切り替えてもよい。
【0098】
また、算出部70における循環動態算出手段17、固有係数算出手段18および記憶部19、表示部71、表示制御部72ならびに受信部74を備える生体情報表示装置が、算出部70における他の構成要素を備える処理装置とは別体に設けられてもよい。
【0099】
また、表示部71は、表示装置1の内部に設けられてもよい。また、上記のように、処理装置と別体に生体情報表示装置が設けられる場合には、表示部71は、当該生体情報表示装置の内部に設けられてもよい。
【0100】
[動作の流れ]
図6は、本開示の実施の形態に係る生体情報処理装置Mにおいて、循環動態パラメータの算出に用いられる脈波伝播時間PWTTの切り替え動作の流れを説明するためのフローチャートである。
【0101】
図6を参照して、まず、例えば、作業者が表示装置1を起動させると、算出部70における各手段が測定等を行う。このとき、脈波伝播時間測定手段13は、移動平均値PWTT-64を脈波伝播時間PWTTとして循環動態算出手段17に出力し、循環動態算出手段17は、移動平均値PWTT-64を用いた循環動態パラメータの算出を行う。そして、循環動態算出手段17により算出された循環動態パラメータが表示部71に表示される(ステップS10)。
【0102】
次に、被験者に対する処置を開始していない場合、すなわち作業者により処置の開始タイミングの入力操作が行われていない場合、または、作業者により、図5に示す選択ボタンB22を選択する操作が行われていない場合(ステップS11において「NO」)、ステップS10に示す動作が継続して行われる。
【0103】
一方、被験者に対する処置を開始した場合、すなわち作業者により処置の開始タイミングの入力操作が行われた場合、または、作業者により、図5に示す選択ボタンB22を選択する操作が行われたとする(ステップS11において「YES」)。この場合、脈波伝播時間測定手段13は、脈波伝播時間PWTTとして循環動態算出手段17に出力する移動平均値を、移動平均値PWTT-64から移動平均値PWTT-16に切り替える。そして、循環動態算出手段17は、移動平均値PWTT-16を用いた循環動態パラメータの算出を行い、循環動態算出手段17により算出された循環動態パラメータが表示部71に表示される(ステップS12)。
【0104】
次に、被験者に対する処置を終了していない場合、すなわち作業者により処置の終了タイミングの入力操作が行われていない場合、または、作業者により、図5に示す選択ボタンB21を選択する操作が行われていない場合(ステップS13において「NO」)、ステップS12に示す動作が継続して行われる。
【0105】
一方、被験者に対する処置を終了した場合、すなわち作業者により処置の終了タイミングの入力操作が行われた場合、または、作業者により、図5に示す選択ボタンB21を選択する操作が行われた場合(ステップS13において「YES」)、再びステップS10に示す動作が行われる。これらのステップS10からステップS13までの動作は、例えば作業者が生体情報処理装置Mを停止させるまでの間、繰り返される。
【0106】
上記のように、本開示の一態様に係る生体情報処理装置Mでは、受信部74が、被験者に対する処置の開始タイミングを示す開始信号、および当該処置の終了タイミングを示す終了信号を受信する。また、算出部70が、被験者の脈波伝播時間PWTTの移動平均値を算出し、算出した移動平均値を用いて被験者の循環動態パラメータを算出し、さらに、受信部74により受信された開始信号および終了信号に基づいて、開始タイミングから終了タイミングまでの処置期間における循環動態パラメータの変化率を算出する。そして、表示制御部72が、算出された変化率を表示部71に出力する制御を行う。
【0107】
このように、循環動態パラメータの変化率が自動的に算出されて表示される構成により、被験者に対する処置期間における当該被験者の循環動態の変化を視覚的に容易に確認することができる。また、複数の脈波伝播時間分の移動平均値を用いて循環動態パラメータを算出することにより、ノイズ等による影響を避けた、より正確な値を表示することができる。
【0108】
また、本開示の別の態様に係る生体情報処理装置Mでは、表示制御部72が、変化率の表示として、一回拍出量esSVの変化率の表示と、非侵襲連続推定心拍出量esCCOの変化率の表示とを切り替え可能である。このような構成により、作業者において、一回拍出量esSVの変化率と非侵襲連続推定心拍出量esCCOの変化率とを任意に選択して確認することができる。
【0109】
また、本開示の別の態様に係る生体情報処理装置Mでは、表示制御部72は、さらに、現在時刻の直近の複数の脈波伝播時間分の移動平均値を用いて算出部70により算出された循環動態パラメータを、表示部71に出力する制御を行う。このような構成により、処置期間における循環動態パラメータの変化率だけでなく、循環動態パラメータそのものを速やかに確認することができる。
【0110】
また、本開示の別の態様に係る生体情報処理装置Mでは、表示制御部72は、さらに、処置の開始タイミング、終了タイミング、開始タイミングの直近の複数の脈波伝播時間分の移動平均値を用いて算出された循環動態パラメータ、および終了タイミングの直近の複数の脈波伝播時間分の移動平均値を用いて算出された循環動態パラメータを、表示部71に出力する制御を行う。このような構成により、被験者に対する処置の開始タイミングおよび終了タイミングにおける循環動態パラメータを確認することができる。
【0111】
また、本開示の別の態様に係る生体情報処理装置Mでは、表示制御部72は、受信部74により受信された開始信号および終了信号に基づいて、複数回の処置の変化率の一覧を表示部71に出力する制御を行う。このような構成により、複数回分の処置における循環動態の変化を比較することができる。
【0112】
また、本開示の別の態様に係る生体情報処理装置Mでは、算出部70は、被験者の脈波伝播時間PWTTの移動平均値を算出し、算出した移動平均値を用いて被験者の循環動態パラメータを算出する。また算出部70は、第1の脈波伝播時間分の移動平均値PWTT-64を用いた循環動態パラメータと、第1の脈波伝播時間分よりも少ない第2の脈波伝播時間分の移動平均値PWTT-16を用いた循環動態パラメータとの間で算出対象を切り替え可能である。
【0113】
このような構成により、例えば、被験者の循環動態の変化を早めに確認すべき状況においては、第2の脈波伝播時間分の移動平均値PWTT-16を用いて循環動態パラメータを算出し、ノイズ等による影響を低減させた正確性の高い循環動態の変化を確認すべき状況においては、第1の脈波伝播時間分の移動平均値PWTT-64を用いて循環動態パラメータを算出することができる。したがって、被験者の生体情報を、使用状況に応じたより適切な方法で処理することができる。
【0114】
また、本開示の別の態様に係る生体情報処理装置Mでは、受信部74は、被験者に対する処置の開始タイミングを示す開始信号、および当該処置の終了タイミングを示す終了信号を受信する。算出部70は、受信部74により受信された開始信号および終了信号に基づいて、処置が行われていない状況においては移動平均値PWTT-64を用いた循環動態パラメータを算出し、処置期間においては移動平均値PWTT-16を用いた循環動態パラメータを算出する。
【0115】
このように、被験者に対して処置が行われている期間においては、早期に算出される第2の脈波伝播時間分の移動平均値PWTT-16を用いて循環動態パラメータが算出されることにより、循環動態の変化を速やかに確認することができる。一方、処置が行われていない状況においては、ノイズ等による影響を低減させた正確性の高い第1の脈波伝播時間分の移動平均値PWTT-64を用いて循環動態パラメータが算出されることにより、循環動態のより正確な変化を確認することができる。
【0116】
また、本開示の別の態様に係る生体情報処理装置Mでは、算出部70は、作業者による操作を受け付ける受付部6が所定の操作を受け付けた場合、算出対象を、移動平均値PWTT-64を用いた循環動態パラメータから移動平均値PWTT-16を用いた循環動態パラメータに切り替える。このような構成により、作業者の任意のタイミングにおいて、移動平均値PWTT-64を用いた循環動態パラメータと、移動平均値PWTT-16を用いた循環動態パラメータとの間で算出対象を切り替えることができる。
【0117】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本願の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではない。本実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本願の技術的範囲は、特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0118】
M:生体情報処理装置(生体情報表示装置)、1:表示装置、2:血圧測定装置、4:呼吸測定装置、5:観血血圧測定装置、6:受付部、11:NIBP脈圧測定手段、12:心拍数算出手段、13:脈波伝播時間測定手段、14:脈波伝播時間呼吸性変動測定手段、15:脈波振幅測定手段、16:脈波振幅呼吸性変動測定手段、17:循環動態算出手段、18:固有係数算出手段、19:記憶部、41:呼吸周期検出手段、51:観血血圧脈圧測定手段、52:脈圧呼吸性変動測定手段、71:表示部、72:表示制御部、74:受信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6