(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024888
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】加飾パルプモールドおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 37/16 20060101AFI20240216BHJP
B65C 3/10 20060101ALI20240216BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20240216BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B32B37/16
B65C3/10
B65D1/00 110
B65D1/00 120
B32B29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127841
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】節田 征矢
(72)【発明者】
【氏名】和田 奈央子
【テーマコード(参考)】
3E033
3E095
4F100
【Fターム(参考)】
3E033AA09
3E033BA10
3E033BB01
3E033FA10
3E095AA03
3E095BA01
3E095DA42
3E095DA55
3E095FA30
4F100AJ04E
4F100AJ11B
4F100AK01A
4F100AK03D
4F100AK03G
4F100AK51A
4F100AK52B
4F100AT00
4F100BA05
4F100CB03D
4F100DD01E
4F100DD11E
4F100DG10E
4F100EC182
4F100EC18D
4F100EC18G
4F100EH012
4F100EH411
4F100EH41E
4F100EJ912
4F100EJ91D
4F100GB90
4F100HB312
4F100HB31C
4F100JL12D
4F100JL12G
(57)【要約】
【課題】パルプモールドの表面形状の如何に関わらず加飾性を高めつつ美観の向上が図られた加飾パルプモールドの新規な形態の製造方法を提供する。
【解決手段】加飾パルプモールド1Aの製造方法は、基材3a、離型層3b、加飾層3cおよび接着剤層3dがこの順で積層された転写ラベルが準備される工程と、曲面部を有するパルプモールド2Aが抄造成形されかつ乾燥される工程と、接着剤層3dがパルプモールド2Aに面するように、転写ラベルがパルプモールド2Aに対して位置決めされて配置される工程と、転写ラベルおよびパルプモールド2Aがプレスされることで加飾層3cが接着剤層3dを介して曲面部の少なくとも一部に貼り付けられる工程と、基材3aが加飾層3cから剥離されることにより、加飾層3cがパルプモールド2Aに転写される工程とを備える。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、離型層、加飾層および接着剤層がこの順で積層された転写ラベルが準備される工程と、
複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールドが抄造成形されかつ乾燥される工程と、
前記接着剤層が前記パルプモールドに面することとなるように、前記転写ラベルが前記パルプモールドに対して位置決めされて配置される工程と、
前記転写ラベルが前記パルプモールドに対して位置決めされて配置された状態において、前記転写ラベルおよび前記パルプモールドがプレスされることによって前記加飾層が前記接着剤層を介して前記曲面部の少なくとも一部に貼り付けられる工程と、
前記加飾層が前記曲面部の少なくとも一部に貼り付けられた状態において、前記基材が前記加飾層から剥離されることにより、前記加飾層が前記パルプモールドに転写される工程とを備えた、加飾パルプモールドの製造方法。
【請求項2】
前記パルプモールドが抄造成形されかつ乾燥される工程の後であってかつ前記転写ラベルが前記パルプモールドに対して位置決めされて配置される工程の前に、前記曲面部がプレスされることによって当該曲面部の少なくとも一部が成形される工程をさらに備え、
前記加飾層が前記曲面部の少なくとも一部に貼り付けられる工程において、前記曲面部の成形された部分の少なくとも一部に対して前記加飾層の貼り付けが行なわれる、請求項1に記載の加飾パルプモールドの製造方法。
【請求項3】
基材、離型層、加飾層および接着剤層がこの順で積層された転写ラベルが準備される工程と、
複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールドが抄造成形されかつ乾燥される工程と、
前記接着剤層が前記パルプモールドに面することとなるように、前記転写ラベルが前記パルプモールドに対して位置決めされて配置される工程と、
前記パルプモールドに対して位置決めされて配置された前記転写ラベルを加熱することで軟化させた状態において、前記転写ラベルが前記パルプモールドに当接されることにより、前記パルプモールドと前記転写ラベルとの間の隙間が前記パルプモールドと前記転写ラベルとによって密閉された状態とする工程と、
前記隙間が前記パルプモールドと前記転写ラベルとによって密閉された状態において、前記転写ラベルの一対の主面のうちの前記隙間を規定する側とは反対側の主面が面する空間の気圧が前記隙間の気圧よりも高い状態とされることにより、前記転写ラベルが前記パルプモールドに密着され、これによって前記加飾層が前記接着剤層を介して前記曲面部の少なくとも一部に貼り付けられる工程と、
前記加飾層が前記曲面部の少なくとも一部に貼り付けられた状態において、前記基材が前記加飾層から剥離されることにより、前記加飾層が前記パルプモールドに転写される工程とを備えた、加飾パルプモールドの製造方法。
【請求項4】
複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールドと、
前記曲面部の少なくとも一部を覆う加飾層とを備え、
前記加飾層が、接着剤層を介して前記パルプモールドに貼り付けられている、加飾パルプモールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾パルプモールドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減の観点から、容器としてのパルプモールドに対するニーズが高まっている。また、パルプモールドに収容される商品が多様化していることから、その商品の形状に合わせてパルプモールドの形状も多様化しており、特に、立体的な形状を有しかつ美観に優れたパルプモールドが求められている。
【0003】
立体的な形状を有するパルプモールドの美観を向上させるための方法として、たとえば特開2001-270505号公報(特許文献1)には、デザインが施されたラベルを貼り付けることによって美観の向上が図られたラベル付きパルプモールドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、パルプモールドの表面には、パルプ繊維の不規則な絡み合いに由来する凹凸が形成される。そのため、パルプモールドの表面に、伸縮性に乏しい紙製の基材等かなるラベルを貼り付けた場合には、この凹凸に起因して、当該表面に貼り付けられたラベルに皺や折り重なりが生じる場合がある。一方で、伸縮性に優れたフィルム製の基材等からなるラベルを貼り付けた場合には、この凹凸に対応する部分のラベルが、凹凸以外に対応する部分のラベルに比べ、それ自体が引き延ばされた状態で貼り付けられることになる。そのため、ラベルの厚みが不均一になってしまい、結果としてラベルに破れが生じ易くなる場合がある。
【0006】
このように、ラベル付きパルプモールドにあっては、その表面の手触り感や美観が損なわれてしまう問題があり、この問題は、立体的な形状をパルプモールドが有している場合には、その曲面部において顕著に生じることにもなる。
【0007】
したがって、本発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであり、パルプモールドの表面形状の如何に関わらず、加飾性を高めつつ美観の向上が図られた加飾パルプモールドの新規な形態の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の局面に基づく加飾パルプモールドの製造方法は、基材、離型層、加飾層および接着剤層がこの順で積層された転写ラベルが準備される工程と、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールドが抄造成形されかつ乾燥される工程と、上記接着剤層が上記パルプモールドに面することとなるように、上記転写ラベルが上記パルプモールドに対して位置決めされて配置される工程と、上記転写ラベルが上記パルプモールドに対して位置決めされて配置された状態において、上記転写ラベルおよび上記パルプモールドがプレスされることによって上記加飾層が上記接着剤層を介して上記曲面部の少なくとも一部に貼り付けられる工程と、上記加飾層が上記曲面部の少なくとも一部に貼り付けられた状態において、上記基材が上記加飾層から剥離されることにより、上記加飾層が上記パルプモールドに転写される工程とを備えている。
【0009】
上記本発明の第1の局面に基づく加飾パルプモールドの製造方法にあっては、上記パルプモールドが抄造成形されかつ乾燥される工程の後であってかつ上記転写ラベルが上記パルプモールドに対して位置決めされて配置される工程の前に、上記曲面部がプレスされることによって当該曲面部の少なくとも一部が成形される工程をさらに備えていることが好ましく、その場合には、上記加飾層が上記曲面部の少なくとも一部に貼り付けられる工程において、上記曲面部の成形された部分の少なくとも一部に対して上記加飾層の貼り付けが行なわれることが好ましい。
【0010】
本発明の第2の局面に基づく加飾パルプモールドの製造方法は、基材、離型層、加飾層および接着剤層がこの順で積層された転写ラベルが準備される工程と、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールドが抄造成形されかつ乾燥される工程と、上記接着剤層が上記パルプモールドに面することとなるように、上記転写ラベルが上記パルプモールドに対して位置決めされて配置される工程と、上記パルプモールドに対して位置決めされて配置された上記転写ラベルを加熱することで軟化させた状態において、上記転写ラベルが上記パルプモールドに当接されることにより、上記パルプモールドと上記転写ラベルとの間の隙間が上記パルプモールドと上記転写ラベルとによって密閉された状態とする工程と、上記隙間が上記パルプモールドと上記転写ラベルとによって密閉された状態において、上記転写ラベルの一対の主面のうちの上記隙間を規定する側とは反対側の主面が面する空間の気圧が上記隙間の気圧よりも高い状態とされることにより、上記転写ラベルが上記パルプモールドに密着され、これによって上記加飾層が上記接着剤層を介して上記曲面部の少なくとも一部に貼り付けられる工程と、上記加飾層が上記曲面部の少なくとも一部に貼り付けられた状態において、上記基材が上記加飾層から剥離されることにより、上記加飾層が上記パルプモールドに転写される工程とを備えている。
【0011】
本発明に基づく加飾パルプモールドは、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールドと、上記曲面部の少なくとも一部を覆う加飾層とを備えており、上記加飾層が、接着剤層を介して上記パルプモールドに貼り付けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パルプモールドの表面形状の如何に関わらず、加飾性を高めつつ美観の向上が図られた加飾パルプモールドの新規な形態の製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1に係る加飾パルプモールドの製造方法に従って製造された加飾パルプモールドの斜視図である。
【
図2】
図1に示す加飾パルプモールドの模式断面図および要部拡大断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る加飾パルプモールドの製造方法を示すフロー図である。
【
図5】
図4に示す工程S1において準備される転写ラベルの平面図および模式断面図である。
【
図6】
図4に示す工程S2および工程S3を表わした模式断面図である。
【
図7】
図4に示す工程S4を表わした模式断面図である。
【
図8】
図4に示す工程S7を表わした模式断面図である。
【
図9】
図4に示す工程S8を表わした模式断面図である。
【
図10】
図4に示す工程S9を表わした模式断面図である。
【
図11】
図4に示す工程S10を表わした模式断面図である。
【
図12】
図4に示す工程S11を表わした模式断面図である。
【
図13】
図4に示す工程S12を表わした模式断面図である。
【
図14】
図4に示す工程S13を表わした模式断面図である。
【
図15】実施の形態2に係る加飾パルプモールドの製造方法に従って製造された加飾パルプモールドの斜視図である。
【
図16】
図15に示す加飾パルプモールドの模式断面図および要部拡大断面図である。
【
図17】実施の形態2に係る加飾パルプモールドの製造方法における、
図4に示す工程S11を表わした模式断面図である。
【
図18】実施の形態2に係る加飾パルプモールドの製造方法における、
図4に示す工程S13を表わした模式断面図である。
【
図19】実施の形態3に係る加飾パルプモールドの製造方法を示すフロー図である。
【
図20】
図19に示す工程S3Cおよび工程S4Cを表わした模式断面図である。
【
図21】
図19に示す工程S5Cおよび工程S6Cを表わした模式断面図である。
【
図22】
図19に示す工程S7Cおよび工程S8Cを表わした模式断面図である。
【
図23】
図19に示す工程S9Cを表わした模式断面図である。
【
図24】
図19に示す工程S10Cを表わした模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、ファンデーションおよびパフを収容可能に構成された加飾パルプモールドに本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る加飾パルプモールドの製造方法に従って製造された加飾パルプモールドの形状および構成を示す図であり、
図1(A)は、開閉可能な蓋になる上側容器部が閉じられた状態の斜視図、
図1(B)は、上側容器部が開かれた状態の斜視図である。
図2は、
図1(A)に示す状態の加飾パルプモールドの形状および構成を示す図であり、
図2(A)は、
図1(A)中に示すIIA-IIA線に沿った模式断面図、
図2(B)は、
図2(A)の上側容器部近傍を拡大した要部拡大断面図である。
図3は、
図1に示すパルプモールドの平面図である。まず、これら
図1ないし
図3を参照して、本実施の形態に係る加飾パルプモールドの製造方法に従って製造された加飾パルプモールド1Aについて説明する。なお、
図1(A)においては、加飾層3cに色を付している(後述する
図15(A)においても同様である)。
【0016】
図1および
図2に示すように、加飾パルプモールド1Aは、偏平形状の内容物であるファンデーションおよびパフを収容するための容器であり、パルプモールド2Aと、これに接着剤層3dを介して貼り付けられた加飾層3cとを備えている。
【0017】
パルプモールド2Aは、これが閉じられた状態において、全体として平面視略矩形状の外形を有しており、下面開口の上側容器部21と、上面開口の下側容器部22と、これら上側容器部21および下側容器部22を回動可能に連結するヒンジ部23とを有している。下側容器部22には、上側容器部21が閉じられた状態において当該上側容器部21に面する2つの凹状の収容部22aが設けられている。これら2つの収容部22aは、上側容器部21が閉じられた状態において、当該上側容器部21と共に、内容物としてのファンデーションおよびパフが収容される2つの収容空間20を規定する。
【0018】
図3に示すように、パルプモールド2Aの上側容器部21は、略平板状の部位と、その周囲に位置する湾曲状の部位とを含んでおり、これにより上側容器部21の内側表面には、凹形状の部位が設けられている。また、上側容器部21の外側表面の中央部は、略平面形状を有するように構成されており、上側容器部21の外側表面の周縁部の四隅は、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を含んでおり、当該四隅以外の上記周縁部には、一方向に湾曲した曲面からなる曲面部が位置している。
【0019】
説明の便宜上、上側容器部21のうちの上述した複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を第1部分Xと称し、それ以外の部分(すなわち、上述した略平面形状を有する部分、および、上記周縁部のうちの一方向に湾曲した曲面からなる曲面部)を第2部分Yと称する。なお、
図3においては、理解を容易とするために、第1部分Xに濃い色を付すとともに、第2部分Yに薄い色を付している。
【0020】
パルプモールド2Aの原料としては、新聞紙、チラシ、中質紙、および上質紙等からなる印刷使用済み古紙に、湿式で離解、および精選等の処理を施すことによって得られる古紙パルプ、または、上記処理に加えて脱墨および漂白等の処理を施すことによって得られる脱墨古紙パルプ、もしくは晒パルプまたは未晒パルプ等のセルロースパルプが用いられる。パルプモールド2Aは、これらのパルプにサイズ剤、填料、染料、定着剤、および耐水化剤等が適宜添加されてなるパルプスラリーが、所望の形状に成形されることによって製作される。
【0021】
なお、上述した各種パルプに代えて、バージンパルプ、または、サトウキビの搾りかすであるバガスもしくは竹等の非木材系パルプが用いられてもよい。また、いずれのパルプにおいても、合成樹脂が少量(好ましくは5%以下程度)含まれていてもよい。
【0022】
図1ないし
図3に示すように、上側容器部21の第1部分Xおよび第2部分Yの外側表面の全面は、印刷インキ層からなる加飾層3cによって覆われている。より具体的には、第1部分Xおよび第2部分Yの外側表面の全面には、接着剤層3dを介して、加飾層3cが途切れることなく連続的に貼り付けられている。このように、第1部分Xを含む上側容器部21の外側表面に加飾層3cを貼り付けて当該外側表面にデザインを付与することにより、加飾パルプモールド1Aの加飾性を高めつつその美観の向上を図ることができる。
【0023】
加飾層3cおよび接着剤層3dは、後述する加飾パルプモールド1Aの製造方法において用いられる転写ラベル3Aの一部を構成するものである。加飾層3cおよび接着剤層3dの具体的な構成については、後において詳述することとする。
【0024】
図4は、本実施の形態に係る加飾パルプモールドの製造方法を示すフロー図である。
図5は、
図4に示す工程S1において準備される転写ラベル3Aの形状および構成を示す図であり、
図5(A)は、転写ラベル3Aの平面図、
図5(B)は、
図5(A)中に示すVB-VB線に沿った模式断面図である。
図6ないし
図14は、
図4に示す工程の一部を表わした模式断面図である。次に、これら
図4ないし
図14を参照して、本実施の形態に係る加飾パルプモールド1Aの製造方法について具体的に説明する。
【0025】
ここで、
図6は、
図1(B)中に示すVI-VI線に対応した位置のパルプモールド2Aに対応する後述する抄造成形用型201等の各装置の断面を表わした図であり、
図7においても同様である。
図8ないし
図14においても、用いられる型は異なるものの、同様の位置のパルプモールド2A等の断面を表わしている。また、
図11ないし
図14においては、上記位置のパルプモールド2A等に加えて、同様の位置の転写ラベル3Aの断面も表している。
【0026】
図5に示すように、本実施の形態に係る加飾パルプモールド1Aの製造方法は、大きく分けて、転写ラベル3Aが準備される工程、パルプモールド2Aが抄造成形されかつ乾燥される工程、抄造成形されかつ乾燥されたパルプモールド2Aが成形される工程、成形されたパルプモールド2Aのさらなる成形と加飾層3cのパルプモールド2Aへの貼り付けとが同時に行なわれる工程、および、加飾層3cから基材3aを剥離することで加飾層3cをパルプモールド2Aに転写する工程を備えている。
【0027】
加飾パルプモールド1Aの製造方法においては、まず、
図4および
図5に示すように、パルプモールド2Aの上側容器部21の外側表面の全面を覆うことが可能な大きさの外形を有する転写ラベル3Aが準備される(工程S1)。
【0028】
図5(A)および
図5(B)に示すように、転写ラベル3Aは、基材3a、離型層3b、加飾層3cおよび接着剤層3dがこの順で積層されてなる平面視略矩形状のシート状のものである。これにより、転写ラベル3Aの一対の主面のうちの一方である第1主面3(1)は、基材3aによって規定され、他方である第2主面3(2)は、接着剤層3dによって規定されている。
【0029】
なお、転写ラベル3Aの平面視した場合の外形は、パルプモールド2Aの上側容器部21の外形に合わせて適宜変更されてもよく、たとえば、略円形状、略楕円形状、多角形状等であってもよい。
【0030】
基材3aは、耐熱性がありかつ常温においても伸縮性に優れたものであることが好ましい。具体的には、基材3aとして、伸縮性熱可塑性ポリウレタン系樹脂からなる単層のフィルム等が用いられる。また、基材3aとして、ポリウレタン系樹脂もしくはポリプロピレン系樹脂を主体とした複層のフィルム等が用いられてもよく、このようなフィルムとしては、たとえば、大倉工業(株)の熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム「商品名:シルクロン」等が挙げられる。
【0031】
離型層3bとしては、離型性に優れたものであれば特にこれが制限されるものではなく、たとえば、シリコン系樹脂やワックス樹脂等を用いることができる。なお、離型層3bは、透明性を有していてもよい。
【0032】
加飾層3cを構成する印刷インキ層は、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、およびインキジェット印刷等の公知の印刷法により、離型層3bの一対の主面のうちの基材3a側とは反対側の主面に塗布されてなるものである。なお、加飾層3cを離型層3bに塗布する方法としては、上記印刷法のうち、グラビア印刷が特に好適とされる。加飾層3cを構成する印刷インキ層は、単色印刷されたものに限定されず、各種図柄等が多色印刷されたものであってもよい。グラビア印刷によって形成される場合の加飾層3cの厚みは、たとえば1μm以上7μm以下とされる。
【0033】
なお、離型層3bと加飾層3cとの間には、さらに、透明インキからなる保護層が設けられてもよい。
【0034】
接着剤層3dは、透明性を有しかつ熱接着性を有するものであることが好ましい。具体的には、接着剤層3dは、熱接着性を有する樹脂である、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene(LDPE))、エチレン酢酸ビニル共重合体(Ethylene-Vinyl Acetate(EVA))、エチレンアクリル酸共重合体、塩素化ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を主成分とするものであることが好ましいが、その他アクリル系樹脂、スチレンブタジエン共重合体、ウレタン系樹脂、アイオノマー等からなりかつ良好な接着性を有する樹脂等であってもよい。
【0035】
さらに、接着剤層3dは、植物由来の原料を用いたPBS(Poly Butylene Succinate)やPLA(Poly Lactic Acid)等の生分解性樹脂であってもよく、このようにすれば、石油由来材料の使用を抑制することができる。ここで、接着剤層3dは、粘着付与剤や滑剤等が添加されたものであってもよい。
【0036】
なお、接着剤層3dは、熱接着性を有するもの以外のものでもよい。具体的には、接着剤層3dとして、水の塗布や加湿によって活性化することで接着性が生じる再湿性接着剤が用いられてもよい。再湿性接着剤としては、ポリビニルアルコール樹脂や水溶性アクリル系樹脂、天然ゴム、カゼイン等からなるものが挙げられる。
【0037】
また、接着剤層3dとして、接着剤含有マイクロカプセルからなるものが用いられてもよい。このように構成された接着剤層3dは、加圧プレスされることでマイクロカプセルが破裂し、これによって露出した接着剤によって接着性が生じることになる。
【0038】
接着剤層3dを加飾層3cの主面に設ける手法としては、接着剤層3dを構成する上述した熱接着性を有する樹脂等を押出しラミネートによって加飾層3cにコーティングする手法でもよく、溶液もしくはエマルジョンの状態とした当該樹脂等を加飾層3cにコーティングして乾燥させる手法等でもよい。なお、接着剤層3dの厚みは、0.5μm以上20μm以下であることが好ましく、より好適には、0.5μm以上8μm以下とされる。
【0039】
以上のように構成された転写ラベル3Aを用いることにより、加飾層3cをパルプモールド2Aに転写することが可能になるが、その詳細については後述することとする。
【0040】
次に、
図4および
図6に示すように、抄造成形用型201が材料槽204へ浸漬される(工程S2)。
【0041】
より具体的には、
図6に示すように、抄造成形用型201と、網202とが準備され、抄造成形用型201に網202が張られた状態において、抄造成形用型201と網202とが、パルプスラリー203が充填された材料槽204の中に浸漬される。抄造成形用型201は、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールド2Aの形状に沿う形状を有するとともに、その一対の主面を貫通する吸引用貫通孔が多数設けられたものである。網202は、抄造成形用型201の一対の主面の一方に張られるものである。
【0042】
次に、
図4および
図6に示すように、抄造成形用型201へパルプスラリー203が吸引される(工程S3)。
【0043】
より具体的には、
図6に示すように、抄造成形用型201の網202が張られた側の主面とは反対側の主面が位置する側から、パルプスラリー203の吸引が行なわれる。これにより、網202の表面には、パルプスラリー203が吸い付けられて堆積される。
【0044】
次に、
図4および
図7に示すように、材料槽204から抄造成形用型201が取り出される(工程S4)。この状態における抄造成形用型201の網202が張られた側の主面上には、堆積されたパルプスラリー203からなるパルプモールド2Aが形成されている。
【0045】
次に、
図4に示すように、抄造成形用型201からパルプモールド2Aが取り出される(工程S5)。
【0046】
次に、
図4に示すように、パルプモールド2Aが乾燥される(工程S6)。より具体的には、パルプモールド2Aが、高温の乾燥炉内に投入されることによって乾燥される。
【0047】
工程S2~S6を経て抄造成形されかつ乾燥されたパルプモールド2Aは、製品としての加飾パルプモールド1Aを構成するパルプモールド2Aに比べ、柔らかく、かつ、厚みが相当程度に大きなものとなる。さらに、この状態におけるパルプモールド2Aは、厚みが不均一な状態で乾燥されることに起因して歪に変形したり、また、その表面には、厚みの不均一性やパルプ繊維の不規則な絡み合い等に起因する凹凸が形成されたりしている。さらに、網202に面する側の上記表面には、当該網202の跡に起因する凹凸もまた形成されている。
【0048】
次に、
図4および
図8に示すように、上側容器部21が開かれた状態におけるパルプモールド2Aの形状に沿う形状を有するプレス用第1型100に、パルプモールド2Aが載置される(工程S7)。
【0049】
ここで、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、製品としての加飾パルプモールド1Aの形状に実質的に沿う形状のことを意味しており、後述するパルプモールド2Aがプレス用第2型110によって1次プレスされる工程(工程S8)の前のパルプモールド2Aの形状と完全に一致した形状を意味するものではない。すなわち、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、後述する工程S11において転写ラベル3Aと共にプレス用第2型110によって2次プレスされた後の(すなわち、2次プレスによって圧縮変形した後の)パルプモールド2Aに沿う形状を意味している。
【0050】
図8に示すように、プレス用第1型100には、その一対の主面のうちの一方から突出するように、第1凸状部101および第2凸状部102が設けられている。第1凸状部101は、パルプモールド2Aの上側容器部21に含まれる凹形状の部位に沿う形状を有しており、第2凸状部102は、パルプモールド2Aの下側容器部22の収容部22aに沿う形状を有している。
【0051】
パルプモールド2Aは、上側容器部21に含まれる凹形状の部位が第1凸状部101に当接するとともに、下側容器部22の収容部22aが第2凸状部102に当接するように、上側容器部21が開かれた状態でプレス用第1型100に載置される。
【0052】
次に、
図4および
図9に示すように、パルプモールド2Aが、プレス用第1型100およびプレス用第2型110によって1次プレスされる(工程S8)。
【0053】
具体的には、
図9に示すように、パルプモールド2Aの形状に沿う形状を有するプレス用第2型110が、プレス用第1型100に向けて(すなわち、
図9中に示す矢印AR1方向に向けて)移動することにより、パルプモールド2Aが、プレス用第2型110によって1次プレスされる。
【0054】
ここで、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、製品としての加飾パルプモールド1Aの形状に実質的に沿う形状のことを意味しており、当該工程S8の前のパルプモールド2Aの形状と完全に一致した形状を意味するものではない。すなわち、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、後述する工程S11において転写ラベル3Aと共にプレス用第2型110によって2次プレスされた後の(すなわち、2次プレスによって圧縮変形した後の)パルプモールド2Aに沿う形状を意味している。
【0055】
プレス用第2型110のプレス面には、第1凹状部111および第2凹状部112が設けられている。第1凹状部111は、パルプモールド2Aの上側容器部21に含まれる凹形状の部位の外側表面(すなわち、
図9中に示す上側の表面)に沿う形状を有している。第2凹状部112は、パルプモールド2Aの下側容器部22の収容部22aの外側表面(すなわち、
図9中に示す上側の表面)に沿う形状を有している。
【0056】
プレス用第2型110による1次プレスは、プレス温度が概ね80℃以上150℃以下であることが好ましい。その際、プレス用第1型100も同程度に加熱されていてもよい。プレス時間は、1秒以上5秒以下程度であることが好ましく、プレス圧力は、後述する2次プレスにおけるプレス圧力よりも小さくされることが好ましい。
【0057】
なお、1次プレスにおけるプレス温度、プレス時間およびプレス圧力は、後述する2次プレスにおけるプレス温度、プレス時間およびプレス圧力との関係性や、基材3aの耐熱性、接着剤層3dの接着温度等によって適宜変更されるものである。
【0058】
1次プレス前の状態において、厚みの不均一性やパルプ繊維の不規則な絡み合い、網202の跡等に起因する凹凸が表面に形成されていたパルプモールド2Aは、当該1次プレスによって成形されることにより、厚みの均一化および表面の平滑化が施されることになる。
【0059】
さらに、1次プレスによって成形されたパルプモールド2Aは、1次プレス前の状態に比べて、硬く、薄く、その表面が平滑化したものとなる。一例として、1次プレス前において厚みが0.8mm以上3.0mm以下あるいは1.5mm以上2.5mm以下のパルプモールド2Aは、当該1次プレスによって厚みが0.6mm以上2.5mm以下等になる。
【0060】
次に、
図4および
図10に示すように、プレス用第2型110によるパルプモールド2Aの1次プレスが解除される(工程S9)。具体的には、
図10に示すように、プレス用第2型110が1次プレス前の位置に後退する(すなわち、
図10中に示す矢印AR2方向に向けて移動する)ことにより、プレス用第2型110によるパルプモールド2Aの1次プレスが解除される。
【0061】
次に、
図4および
図11に示すように、転写ラベル3Aが、パルプモールド2Aに対して位置決めされて配置される(工程S10)。
【0062】
具体的には、
図11に示すように、パルプモールド2Aがプレス用第1型100に載置された状態において、転写ラベル3Aが、接着剤層3dが設けられた第2主面3(2)がパルプモールド2Aの上側容器部21に面し、かつ、後述するパルプモールド2Aおよび転写ラベル3Aがプレス用第2型110によって2次プレスされる工程(工程S11)において上側容器部21の外側表面の全面を覆うこととなるように、上側容器部21に対して位置決めされて配置される。これにより、転写ラベル3Aは、プレス用第1型100とプレス用第2型110との間に配置されることになる。
【0063】
なお、作図の都合上、
図11ないし
図14にあっては、基材3aと離型層3bとを1つの層として描画し、加飾層3cと接着剤層3dとを1つの層として描画している。後述する
図17、
図18、および
図24においても同様である。
【0064】
次に、
図4および
図12に示すように、パルプモールド2Aおよび転写ラベル3Aが、プレス用第1型100およびプレス用第2型110によって2次プレスされる(工程S11)。
【0065】
具体的には、
図12に示すように、転写ラベル3Aがパルプモールド2Aに対して位置決めされた状態において、プレス用第2型110がプレス用第1型100に向けて(すなわち、
図12中に示す矢印AR3方向に向けて)移動することにより、パルプモールド2Aおよび転写ラベル3Aが、プレス用第2型110によって2次プレスされる。
【0066】
プレス用第2型110によって2次プレスされることにより、パルプモールド2Aおよび転写ラベル3Aは、積層された状態でプレス用第1型100およびプレス用第2型110によって挟み込まれる。これにより、パルプモールド2Aにさらなる成形がされると同時に、転写ラベル3Aが、上側容器部21のうちの複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部である第1部分Xと、それ以外の部分である第2部分Yとを含む外側表面の全面を覆うように、第2主面3(2)側に設けられた熱接着性の接着剤層3dを介して当該上側容器部21に貼り付けられる。
【0067】
本実施の形態においては、転写ラベル3Aの基材3aとして伸縮性に優れたものが用いられる。そのため、転写ラベル3Aが立体的な形状を有するパルプモールド2Aに2次プレスによって貼り付けられる際における、パルプモールド2Aの表面への転写ラベル3Aの追従性を向上させることができる。
【0068】
プレス用第2型110による2次プレスは、プレス温度が概ね70℃以上100℃以下であることが好ましい。その際、プレス用第1型100も同程度に加熱されていてもよい。プレス時間は、1秒以上3秒以下程度であることが好ましく、プレス圧力は、上述した1次プレスにおけるプレス圧力よりも大きくされることが好ましい。
【0069】
すなわち、本実施の形態に係る加飾パルプモールド1Aの製造方法にあっては、2次プレスにおけるプレス温度は、1次プレスにおけるプレス温度よりも低くされる。また、2次プレスが行なわれる工程におけるプレス時間は、1次プレスが行なわれる工程におけるプレス時間よりも短くされる。
【0070】
これにより、転写ラベル3Aに印加される熱負荷を低減できる。そのため、転写ラベル3Aの加飾層3cが変色あるいは熱劣化することを未然に防止できる。
【0071】
2次プレスにおけるプレス圧力は、1次プレスにおけるプレス圧力よりも大きくされる。なお、2次プレスにおけるプレス温度、プレス時間およびプレス圧力は、上述した1次プレスにおけるプレス温度、プレス時間およびプレス圧力との関係性や、基材3aの耐熱性、接着剤層3dの接着温度等によって適宜変更されるものである。
【0072】
2次プレスによってさらなる成形がされたパルプモールド2Aは、2次プレス前の状態に比べて、硬く、薄く、その表面が平滑化したものとなる。一例として、2次プレス前において厚みが0.6mm以上2.5mm以下のパルプモールド2Aは、当該2次プレスによって厚みが0.4mm以上2.0mm以下等になる。
【0073】
ここで、本実施の形態に係る加飾パルプモールド1Aの製造方法においては、上述したように、当該2次プレスを行なう前に、パルプモールド2Aを1次プレスによって成形している(上記工程S8参照)。
【0074】
これにより、抄造成形されかつ乾燥された後の状態におけるパルプモールド2A(すなわち、上記工程S6後の状態におけるパルプモールド2A)の表面に形成された、厚みの不均一性や網202の跡、パルプ繊維の不規則な絡み合い等に由来する凹凸が平滑された後に、転写ラベル3Aの貼り付けを行なうことが可能になる。そのため、当該凹凸部分に起因して、転写ラベル3Aから転写される加飾層3cに皺や亀裂が生じたり、本来転写されるべき部分のパルプモールド2Aに加飾層3cの転写が行なわれなかったりする等、加飾層3cの転写不良が生じることを効果的に抑制できることになる。
【0075】
次に、
図4および
図13に示すように、プレス用第2型110による2次プレスが解除される(工程S12)。具体的には、
図13に示すように、プレス用第2型110が2次プレス前の位置に後退する(すなわち、
図13中に示す矢印AR4方向に向けて移動する)ことにより、プレス用第2型110によるパルプモールド2Aおよび転写ラベル3Aの2次プレスが解除される。
【0076】
次に、
図4および
図14に示すように、基材3aが加飾層3cから剥離される(工程S13)。
【0077】
具体的には、
図14に示すように、基材3aが、加飾層3cから離間する方向に向けて(すなわち、
図14中に示す矢印AR5方向に向けて)当該加飾層3cから引き剥がされる。これにより、転写ラベル3Aの加飾層3cが、上側容器部21のうちの複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部である第1部分Xと、それ以外の部分である第2部分Yとを含む外側表面の全面に転写されることになる。このようにして加飾層3cを転写することにより、第1部分Xを含む上側容器部21の外側表面に、加飾層3cを途切れることなく連続的に貼り付けることができる。なお、上記転写の際、離型層3bもまた、基材3aと共に加飾層3cから剥離されることになる。
【0078】
以上において説明した工程S1~S13を経ることにより、
図1および
図2において示した加飾パルプモールド1Aが製造されることになる。
【0079】
一般に、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールドに対して、加飾層を具備するラベルを貼り付けることで当該パルプモールドにデザインを付与することがある。この方法に従ってラベル付きパルプモールドが製造される場合には、当該曲面部に貼り付けられた部分のラベルの基材に皺や折り重なりが生じることに起因して、ラベル付きパルプモールドの表面の手触り感や美観が損なわれてしまったり、皺や折り重なり部分においてラベルに傷や破れが生じたり、ラベルの加飾層によるデザインが途切れてしまったりする問題がある。
【0080】
この点、本実施の形態に係る加飾パルプモールド1Aの製造方法においては、上述したように、転写ラベル3Aの基材3aが加飾層3cから剥離されることにより、加飾層3cがパルプモールド2Aに転写される。そのため、製造後の加飾パルプモールド1Aにあっては、その表面に転写ラベル3Aの基材3aが残存することなく、加飾層3cのみが貼り付けられることになる。このような製造方法を採用することにより、表面の手触り感に優れ、かつ、曲面部においても加飾層3cのデザインが途切れることなく連続的に付与された加飾パルプモールド1Aとすることができる。
【0081】
したがって、本実施の形態に係る加飾パルプモールド1Aの製造方法とすることにより、パルプモールドの表面形状の如何に関わらず、加飾性を高めつつ美観の向上が図られた加飾パルプモールドの新規な形態の製造方法を提供することが可能になる。
【0082】
なお、上述した本実施の形態においては、1次プレスと2次プレスとが、いずれも、同一のプレス用第1型100とプレス用第2型110とを用いて行なわれる場合について説明したが、一対の1次プレス用型と、一対の2次プレス用型とは、互いに異なるものであってもよい。
【0083】
また、上述した本実施の形態においては、パルプモールド2Aを成形するためのプレスが1回行なわれる場合について説明したが、当該パルプモールド2Aを成形するためのプレスが複数回行なわれ、その後に、パルプモールド2Aのさらなる成形と転写ラベル3Aのパルプモールド2Aへの貼り付けとが同時に行なわれる工程(すなわち、上述した2次プレス)が行なわれてもよい。なお、2次プレスにおいては、必ずしもパルプモールド2Aのさらなる成形は行なわれる必要はなく、少なくとも転写ラベル3Aのパルプモールド2Aへの貼り付けが行なわれればよい。なお、2次プレスにおいてパルプモールド2Aのさらなる成形を行なわない場合には、1次プレスにおけるプレス圧力は、2次プレスにおけるプレス圧力よりも大きくされることが好ましい。
【0084】
さらに、上述した本実施の形態においては、パルプモールド2Aを成形するための1次プレスが、抄造成形されかつ乾燥されたパルプモールド2Aの全体に対して行なわれる場合について説明したが、1次プレスによる成形は、少なくとも、2次プレスにおいて転写ラベル3Aが貼り付けられる部分のパルプモールド2Aに対して行なわれていればよい。
【0085】
なお、上述した本実施の形態においては、工程S13において基材3aが加飾層3cから剥離される際に、離型層3bが、当該基材3aと共に加飾層3cから剥離される場合について例示したが、離型層3bは、加飾層3cから剥離されなくてもよい。その際、離型層3bとして透明性を有するものが用いられる場合には、加飾層3cから剥離されずに加飾パルプモールド1Aに残存した当該離型層3bが、加飾層3cの保護層として機能することになる。
【0086】
また、上述した本実施の形態においては、加飾層3cが印刷インキ層によって構成される場合について説明したが、加飾層3cは、金属光沢を有する蒸着層によって構成されたものであってもよい。
【0087】
加飾層3cとしてアルミニウム等の蒸着層が用いられる場合には、基材3aは、伸縮性に乏しい二軸延伸フィルムによって構成されることが好ましい。これにより、基材3aが伸びることによって蒸着層に亀裂が入ったり、光沢が失われて白化したりすることを防止することが可能になる。基材3aに用いられる上記フィルムとしては、厚みが9μm以上16μm以下の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適とされる。
【0088】
ここで、伸縮性に乏しいフィルムが基材3aとして用いられる場合には、上述したように伸縮性に優れたフィルムが基材3aとして用いられる場合に比べ、パルプモールド2Aの複数方向に湾曲した曲面部において基材3aの皺や折り重なりが生じ易くなるところ、上述したように、基材3aは、加飾層3cの転写後において加飾パルプモールド1Aには残存しない。そのため、基材3aの上記皺や折り重なりが加飾パルプモールド1Aの加飾性に与える悪影響は最小限とされる。
【0089】
なお、加飾層3cは、上述した構成のものに限定されない。加飾層3cは、たとえば、離型層3b側に位置するものから順に、透明な保護層、印刷インキ層および蒸着層が積層された構成のものや、印刷インキ層あるいは蒸着層が部分的に設けられることによってデザイン性の向上が図られた構成のもの等とすることも可能である。
【0090】
さらに、上述した本実施の形態においては、工程S2~S4を経て抄造成形されるパルプモールド2Aが、工程S6において乾燥され、その後に、工程S8において1次プレスされることで成形される場合について説明したが、工程S2~S4を経て抄造成形されるパルプモールド2Aには、工程S6において、加熱された一対の型によって挟持することにより、乾燥とプレスによる成形とが同時に行なわれてもよい。この場合においても、転写ラベル3Aが貼り付けられる前の状態のパルプモールド2Aの表面を平滑化することが可能である。なお、この場合には、工程S8(すなわち、1次プレスによるパルプモールド2Aの成形)は行なわないこととしてもよい。
【0091】
(実施の形態2)
図15は、実施の形態2に係る加飾パルプモールドの製造方法に従って製造された加飾パルプモールドの形状および構成を示す図であり、
図15(A)は、開閉可能な蓋になる上側容器部が閉じられた状態の斜視図、
図15(B)は、上側容器部が開かれた状態の斜視図である。
図16は、
図15(A)に示す状態のラベル付きパルプモールドの形状および構成を示す図であり、
図16(A)は、
図15(A)中に示すXVIA-XVIA線に沿った模式断面図、
図16(B)は、
図16(A)の上側容器部近傍を拡大した要部拡大断面図である。以下、これら
図15および
図16を参照して、本実施の形態に係る加飾パルプモールドの製造方法に従って製造された加飾パルプモールド1Bについて説明する。
【0092】
図15および
図16に示すように、本実施の形態に係る加飾パルプモールドの製造方法に従って製造された加飾パルプモールド1Bは、上述した実施の形態1に係る加飾パルプモールドの製造方法に従って製造された加飾パルプモールド1Aと比較した場合に、当該加飾パルプモールド1Bを構成するパルプモールド2Bの上側容器部21Bに孔部21aが設けられている点において、加飾パルプモールド1Aと相違している。
【0093】
より具体的には、加飾パルプモールド1Bのパルプモールド2Bにおいては、第2部分Yのうちの略平面形状の部分の上側容器部21Bの外側表面に、平面視略円形状の孔部21aが設けられている。これにより、上側容器部21Bが閉じられた状態においても、外部から収容空間20を視認可能になる。
【0094】
孔部21aの平面視した場合の形状は、特にこれが略円形状に限定されるものではなく、たとえば文字、記号、マーク、草花等の図柄の輪郭を有するように適宜変更されてよい。また、孔部21aの数は、特にこれが単数に限定されるものではなく、複数であってもよい。
【0095】
加飾パルプモールド1Bの加飾層3cおよび接着剤層3dは、上述した加飾パルプモールド1Aの加飾層3cおよび接着剤層3dと同様の構成を有するものである。
【0096】
図17および
図18は、本実施の形態に係る加飾パルプモールドの製造方法の工程の一部を表わした模式断面図である。次に、これら
図17および
図18と、前述の
図4とを参照して、本実施の形態に係る加飾パルプモールド1Bの製造方法について具体的に説明する。
【0097】
ここで、
図17は、
図15(B)中に示すXVII-XVII線に対応した位置のパルプモールド2Bと、これに対応する転写ラベル3B等の断面を表わした図である。
図18についても同様である。
【0098】
本実施の形態に係る加飾パルプモールド1Bの製造方法にあっては、そのフローは、実施の形態1に係る加飾パルプモールド1Aの製造方法と共通するものの、一部の工程においてその内容が異なる。そのため、以下においては、加飾パルプモールド1Bの製造方法のうち、加飾パルプモールド1Aの製造方法と内容が共通する工程についてはその説明を省略し、加飾パルプモールド1Aの製造方法と内容が異なる工程についてのみ説明することにする。なお、加飾パルプモールド1Bの製造において準備される転写ラベル3Bの構成は、加飾パルプモールド1Aの製造方法において準備される転写ラベル3Aの構成と同様である。
【0099】
図4および
図17に示すように、工程S11においては、パルプモールド2Bおよび転写ラベル3Bが、プレス用第1型100Bおよびプレス用第2型110によって2次プレスされる。
【0100】
具体的には、
図17に示すように、転写ラベル3Bがパルプモールド2Bに対して位置決めされた状態において、プレス用第2型110がプレス用第1型100Bに向けて(すなわち、
図17中に示す矢印AR6方向に向けて)移動することにより、パルプモールド2Bおよび転写ラベル3Bが、プレス用第2型110によって2次プレスされる。
【0101】
ここで、加飾パルプモールド1Bの製造に用いられるプレス用第1型100Bは、加飾パルプモールド1Aの製造に用いられるプレス用第1型100と比較した場合に、転写ラベル3Bに面する側の表面に、離型性に優れたポリテトラフルオロエチレン系樹脂等によるコーティングが施されている点が相違している。
【0102】
このように構成した場合には、パルプモールド2Bの上側容器部21Bに孔部21aが設けられていることに起因して、プレス用第1型100Bの第1凸状部101に転写ラベル3Bの接着剤層3dが当接した際に、第1凸状部101に当該接着剤層3dが接着することを防止することができる。なお、パルプモールド2Bの厚みが相当程度あること等に起因して、第1凸状部101に接着剤層3dが当接しない場合には、プレス用第1型100Bの表面に上記離型性に優れたコーティングを施さなくてもよい。
【0103】
図4および
図18に示すように、工程S13においては、基材3aが加飾層3cから剥離される。
【0104】
具体的には、
図18に示すように、基材3aが、加飾層3cから離間する方向に向けて(すなわち、
図18中に示す矢印AR7方向に向けて)当該加飾層3cから引き剥がされる。ここで、加飾層3cおよび接着剤層3dのうちの、上側容器部21Bの孔部21aに対応する部分は、基材3aおよび離型層3bと共に、パルプモールド2Bに貼り付けられることなく、その余の部分の加飾層3c(すなわち、パルプモールド2Bに貼り付けられる部分の加飾層3c)から剥離されることになる。
【0105】
以上において説明した加飾パルプモールドの製造方法に従って加飾パルプモールド1Bを製造した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られることになり、パルプモールドの表面形状の如何に関わらず、加飾性を高めつつ美観の向上が図られた加飾パルプモールドの新規な形態の製造方法を提供することが可能になる。
【0106】
さらに、本実施の形態に係る加飾パルプモールドの製造方法を採用することにより、加飾層を具備するラベルを貼り付けることでパルプモールドにデザインを付与する方法に比べ、孔部が設けられたパルプモールドの加飾を容易に行なうことが可能になる。
【0107】
すなわち、孔部が設けられたパルプモールドにラベルを貼り付ける場合には、パルプモールドにラベルを貼り付けた後に、孔部に対応する部分のラベルを切除する工程が必要となるところ、本実施の形態に係る加飾パルプモールドの製造方法を採用した場合には、上述したように、孔部21aに対応する部分の加飾層3cが、基材3a等と共に、その余の部分の加飾層3cから剥離される。そのため、上記ラベルの切除工程に対応する工程が不要となり、結果として孔部が設けられたパルプモールドの加飾が容易になる。
【0108】
(実施の形態3)
図19は、実施の形態3に係る加飾パルプモールドの製造方法を示すフロー図である。
図20ないし
図24は、
図19に示す工程の一部を表わした模式断面図である。次に、これら
図19ないし
図24を参照して、本実施の形態に係る加飾パルプモールド1Cの製造方法について具体的に説明する。
【0109】
ここで、本実施の形態に係る加飾パルプモールドの製造方法に従って製造される加飾パルプモールド1Cは、上述した実施の形態1に係る加飾パルプモールドの製造方法に従って製造される加飾パルプモールド1Aと比較した場合に、加飾層3cがパルプモールド2Cの外側表面の全面に貼り付けられている点においてのみ構成が異なっているものの、その余の構成は同様である。
【0110】
なお、
図20は、
図1(B)中に示すVI-VI線に対応した位置のパルプモールド2Cおよびこれに対応する転写ラベル3C等の断面を表わした図である。
図21ないし
図24についても同様である。
【0111】
図19ないし
図24に示すように、本実施の形態に係る加飾パルプモールド1Cの製造方法は、その大部分が、上述した実施の形態1に係る加飾パルプモールド1Aの製造方法と異なる。
【0112】
加飾パルプモールド1Cの製造方法においては、まず、
図19に示すように、パルプモールド2Cの上側容器部21および下側容器部22の外側表面の全面を覆うことが可能な大きさの外形を有する転写ラベル3Cが準備される(工程S1C)。なお、転写ラベル3Cの構成は、上述した加飾パルプモールド1Aの製造において用いられる転写ラベル3Aの構成と比較した場合に、基材3aに用いられる材料のみが相違し、その余の構成は同様である。具体的には、転写ラベル3Cに用いられる基材3aとしては、加熱されることで軟化し易い、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等からなる無延伸フィルムが好適に用いられる。
【0113】
次に、
図19に示すように、パルプモールド2Cが準備される(工程S2C)。ここで準備されるパルプモールド2Cの形状および構成は、製品としての加飾パルプモールド1Cを構成するパルプモールド2Cの形状および構成と同一のものである。本実施の形態にあっては、このようなパルプモールド2Cは、上述した実施の形態1に係る加飾パルプモールド1Aの製造方法における工程S2~S6工程(
図4等参照)を経て形成されるパルプモールドをプレス成形すること等によって得られるものである。
【0114】
次に、
図19および
図20に示すように、上側容器部21が開かれた状態におけるパルプモールド2Cの形状に沿う形状を有する載置台500に、パルプモールド2Cが載置される(工程S3C)。
【0115】
図20に示すように、載置台500は、上側チャンバー511と共に真空チャンバー510を構成する下側チャンバー512内に設置されたものである。上側チャンバー511および下側チャンバー512は、それぞれが有底略角筒状に形成されている。真空チャンバー510は、上側チャンバー511および下側チャンバー512の開口部同士が向き合った状態で遠ざかったり近づいたりするS方向に沿って相対的に移動することにより、開閉可能に構成されている。パルプモールド2Cは、真空チャンバー510が開かれた状態において、載置台500に載置される。ここで、載置台500は、これに接続された駆動装置520によって上記S方向に沿って移動可能に構成されている。
【0116】
なお、作図の都合上、
図20ないし
図23にあっては、基材3a、離型層3b、加飾層3cおよび接着剤層3dを1つの層として描画している。
【0117】
次に、
図19および
図20に示すように、転写ラベル3Cが、パルプモールド2Cに対して位置決めされて配置される(工程S4C)。
【0118】
具体的には、
図20に示すように、パルプモールド2Cが載置台500に載置された状態において、転写ラベル3Cが、接着剤層3dが設けられた第2主面3(2)がパルプモールド2Cの外側表面に面するように、パルプモールド2Cに対して位置決めされて配置される。これにより、転写ラベル3Cは、上側チャンバー511と下側チャンバー512との間に配置されることになる。
【0119】
次に、
図19および
図21に示すように、真空チャンバー510内の空間が密閉される(工程S5C)。具体的には、
図21に示すように、上側チャンバー511が下側チャンバー512に近づくようにS方向に沿って移動される。これにより、上側チャンバー511の開口部の縁が下側チャンバー512の開口部の縁に密着する。その結果、上側チャンバー511および転写ラベル3Cによって規定される上側空間511Sと、下側チャンバー512および転写ラベル3Cによって規定される下側空間512Sが密閉状態となる。
【0120】
次に、
図19および
図21に示すように、転写ラベル3Cが加熱される(工程S6C)。具体的には、
図21に示すように、上側チャンバー511に取付けられたヒーター511aを作動させることにより、転写ラベル3Cが加熱される。これにより、転写ラベル3Cが軟化された状態となり、かつ、接着剤層3dが活性化されて接着可能な状態となる。ここで、転写ラベル3Cは、概ね50℃以上110℃以下程度になるまで加熱されることが好ましい。
【0121】
次に、
図19に示すように、真空チャンバー510内の上側空間511Sと下側空間512Sとが減圧される(工程S7C)。具体的には、真空チャンバー510に接続された図示しないポンプ等を作動させることにより、上側空間511Sと下側空間512Sとが、大気圧よりも低い気圧となるように減圧される。
【0122】
次に、
図19および
図22に示すように、パルプモールド2Cが、転写ラベル3Cに向けて移動される(工程S8C)。
【0123】
具体的には、
図22に示すように、載置台500が駆動装置520によってS方向に沿って上側チャンバー511側に向けて移動される。これによって転写ラベル3Cに向けて移動されたパルプモールド2Cは、その外側表面の一部が、軟化された状態の転写ラベル3Cの一部に当接することになる。パルプモールド2Cの外側表面に当接する部分の転写ラベル3Cは、第2主面3(2)側に設けられた熱接着性の接着剤層3dを介して、対応する部分の上記外側表面に貼り付けられる。その結果、パルプモールド2Aと転写ラベル3Cとの間の隙間600は、パルプモールド2Cと転写ラベル3Cとによって密閉された状態とされることになる。なお、ヒーター511aは、当該工程S8Cにおいて転写ラベル3Cの一部がパルプモールド2Cの外側表面の一部に貼り付けられるよりも前の時点において、その作動が停止される。
【0124】
次に、
図19および
図23に示すように、真空チャンバー510内の上側空間511Sが加圧される(工程S9C)。
【0125】
具体的には、
図23に示すように、上記ポンプ等を作動させることにより、転写ラベル3Cの一対の主面のうちの隙間600を規定する側とは反対側の主面である第1主面3(1)が面する空間である上側空間511Sの気圧が、大気圧以上となるまで加圧される。これにより、上側空間511Sの気圧は、隙間600の気圧よりも高い状態とされる。
【0126】
このようにして上側空間511Sと隙間600との間に気圧差を設けることにより、転写ラベル3Cが、パルプモールド2Cの上側容器部21および下側容器部22のうちの、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部である第1部分Xと、それ以外の部分である第2部分Yとを含む外側表面の全面に沿ってこれに密着する。その結果、転写ラベル3Cの加飾層3cは、接着剤層3dを介して、第1部分Xを含むパルプモールド2Cの外側表面に貼り付けられることになる。
【0127】
次に、
図19および
図24に示すように、基材3aが加飾層3cから剥離される(工程S10C)。
【0128】
具体的には、まず、上記ポンプ等を作動させることによって上側空間511Sおよび下側空間512Sが大気圧となるように調整される。次に、
図24に示すように、上側チャンバー511が下側チャンバー512から遠ざかるようにS方向に沿って移動される。これにより、真空チャンバー510内の空間の密閉状態が解除される。次に、接着剤層3dが固化する程度にまでその温度が低下したことが確認された後に、基材3aが、加飾層3cから離間する方向に向けて(すなわち、
図24中に示す矢印AR8方向に向けて)当該加飾層3cから引き剥がされる。これにより、転写ラベル3Cの加飾層3cが、上側容器部21および下側容器部22のうちの複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部である第1部分Xと、それ以外の部分である第2部分Yとを含む外側表面の全面に転写されることになる。なお、上記転写の際、離型層3bもまた、基材3aと共に加飾層3cから剥離されることになる。
【0129】
以上において説明した工程S1C~S10Cを経ることにより、加飾層3cがパルプモールド2Cの外側表面の全面に貼り付けられた加飾パルプモールド1Cが製造されることになる。
【0130】
以上において説明した加飾パルプモールドの製造方法に従って加飾パルプモールド1Cを製造した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られることになり、パルプモールドの表面形状の如何に関わらず、加飾性を高めつつ美観の向上が図られた加飾パルプモールドの新規な形態の製造方法を提供することが可能になる。
【0131】
なお、上述した本実施の形態に係る加飾パルプモールドの製造方法においては、上側空間511Sと下側空間512Sとを減圧した後に(すなわち、工程S7Cを行なった後に)、パルプモールド2Cを転写ラベル3Cに当接させる(すなわち、工程S8Cを行なう)場合について例示したが、上側空間511Sと下側空間512Sとを減圧することと、パルプモールド2Cを転写ラベル3Cに当接させることとは、これらが同時に行なわれてもよい。
【0132】
また、上述した本実施の形態に係る加飾パルプモールドの製造方法においては、上側空間511Sと下側空間512Sとを減圧した後に(すなわち、工程S7Cを行なった後に)、パルプモールド2Cを転写ラベル3Cに当接させることでこれらの間の隙間600を密閉された状態とし(すなわち、工程S8Cを行ない)、さらにその後に上側空間511Sを加圧する(すなわち、工程S9Cを行なう)ことにより、上側空間511Sの気圧を隙間600の気圧よりも高い状態としたが、上記工程と異なる工程を経ることで上側空間511Sの気圧を隙間600の気圧よりも高い状態としてもよい。
【0133】
具体的には、上記工程S7C~S9Cを行なう代わりに、加熱することで軟化された状態の転写ラベル3Cにパルプモールド2Cを当接させることでこれらの間の隙間600を密閉された状態とし、その後に、下側空間512S側から、パルプモールド2Cを介して隙間600を減圧することとしてもよい。このような工程を経た場合においても、上側空間511Sの気圧は、隙間600の気圧よりも高い状態とされる。そのため、転写ラベル3Cが、パルプモールド2Cの外側表面の全面に沿ってこれに密着することになり、結果として、転写ラベル3Cの加飾層3cをパルプモールド2Cの外側表面に貼り付けることが可能になる。
【0134】
(その他の形態等)
上述した実施の形態においては、上側容器部と下側容器部とがヒンジ部によって連結された場合の加飾パルプモールドの構成を例示して説明を行なったが、上側容器部および下側容器部は、ヒンジ部によって連結されることなく、別個の部材として形成されていてもよい。この場合、上側容器部および下側容器部は、たとえば、各々に形成された嵌合部を介して互いに取り付けられてもよく、上述した凹部は、これら上側容器部および下側容器部のうちのいずれか一方に設けられていればよい。
【0135】
また、上述した実施の形態においては、内容物としてファンデーションおよびパフを収容可能に構成された加飾パルプモールドに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、上述したファンデーション等以外の種々の商品を内容物として収容可能に構成された加飾パルプモールドにも、本発明は当然に適用可能である。
【0136】
さらに、上述した実施の形態においては、内容物を収容可能に構成された容器としての加飾パルプモールドに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、容器等の蓋材や、各種物品のカバー等としての加飾パルプモールドにも、本発明は当然に適用可能である。より具体的には、本発明は、ギフトBOXやボトルケース、雑貨あるいは化粧品の収納ケース等として用いられる加飾パルプモールドにも、当然に適用可能である。
【0137】
また、上述した本発明の実施の形態において示した各部の形状や構成、大きさ、数、材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
【0138】
さらに、上述した本発明の実施の形態において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当然に相互に組み合わせることができる。
【0139】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0140】
1A,1B,1C 加飾パルプモールド、2A,2B,2C パルプモールド、3A,3B,3C 転写ラベル、3(1) 第1主面、3(2) 第2主面、3a 基材、3b 離型層、3c 加飾層、3d 接着剤層、20 収容空間、21,21B 上側容器部、21a 孔部、22 下側容器部、22a 収容部、23 ヒンジ部、100,100B プレス用第1型、101 第1凸状部、102 第2凸状部、110 プレス用第2型、111 第1凹状部、112 第2凹状部、201 抄造成形用型、202 網、203 パルプスラリー、204 材料槽、500 載置台、510 真空チャンバー、511 上側チャンバー、511a ヒーター、511S 上側空間、512 下側チャンバー、512S 下側空間、520 駆動装置、600 隙間、X 第1部分、Y 第2部分。