(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000249
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】レーザ加工装置の制御装置、レーザ加工装置、及びレーザアニール方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/268 20060101AFI20231225BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H01L21/268 T
H01L21/265 602C
H01L21/268 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098933
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】安田 和正
(57)【要約】
【課題】エネルギ利用効率を低下させることなく、所望のパルスエネルギ密度でアニールを行うことが可能なレーザアニール装置の制御装置を提供する。
【解決手段】レーザ発振器から出力されたパルスレーザビームを、ビームサイズ調整光学系を経由して加工対象物に入射させるレーザ加工装置が、制御装置によって制御される。制御装置は、加工時に用いるパルスレーザビームのパルスエネルギの密度目標値を取得する機能と、レーザ発振器から出力されるパルスレーザビームのパルスエネルギ、及び密度目標値に基づいて、加工対象物の表面におけるパルスエネルギ密度が密度目標値になるように、加工対象物の表面におけるビームスポットの面積目標値を計算する機能と、加工対象物の表面におけるビームスポットの面積が、面積目標値になるようにビームサイズ調整光学系を制御する機能とを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器から出力されたパルスレーザビームを、ビームサイズ調整光学系を経由して加工対象物に入射させるレーザ加工装置を制御する制御装置であって、
加工時に用いるパルスレーザビームのパルスエネルギの密度目標値を取得する機能と、
前記レーザ発振器から出力されるパルスレーザビームのパルスエネルギ、及び前記密度目標値に基づいて、前記加工対象物の表面におけるパルスエネルギ密度が前記密度目標値になるように、前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積目標値を計算する機能と、
前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積が、前記面積目標値になるように前記ビームサイズ調整光学系を制御する機能と
を備えた制御装置。
【請求項2】
さらに、
前記加工対象物の表面におけるパルスレーザビームのビームプロファイルを計測する計測器から、計測結果を取得する機能と、
前記計測器から取得した計測結果から求まるビームスポットの面積と、前記面積目標値との差が許容範囲か否かを判定し、前記差が前記許容範囲から外れている場合、ビームスポットの面積が前記面積目標値に近づくように、前記ビームサイズ調整光学系を制御する機能と
を備えた請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
パルスレーザビームを出力するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から加工対象物までのパルスレーザビームの経路に配置され、前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積を変化させるビームサイズ調整光学系と、
レーザ加工条件が入力される入力装置と、
前記ビームサイズ調整光学系を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記入力装置に入力されたパルスエネルギの密度目標値を取得する機能と、
前記レーザ発振器から出力されるパルスレーザビームのパルスエネルギ、及び前記密度目標値に基づいて、前記加工対象物の表面におけるパルスエネルギ密度が前記密度目標値になるように、前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積目標値を計算する機能と、
前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積が、前記面積目標値になるように前記ビームサイズ調整光学系を制御する機能と
を有するレーザ加工装置。
【請求項4】
さらに、前記加工対象物の位置におけるパルスレーザビームのビームプロファイルを計測する計測器を備え、
前記制御装置は、前記計測器から取得した計測結果から求まるビームスポットの面積と、前記面積目標値との差が許容範囲か否かを判定し、前記差が前記許容範囲から外れている場合、ビームスポットの面積が前記面積目標値に近づくように、前記ビームサイズ調整光学系を制御する機能を、さらに有する請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
加工対象物の表面におけるパルスエネルギ密度の目標値を決定し、
レーザ発振器から出力されるパルスレーザビームのパルスエネルギ、及び前記目標値に基づいて、前記加工対象物の表面におけるパルスエネルギ密度が前記目標値になるように前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積を決定し、
前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積が、決定された面積になる条件で前記加工対象物にパルスレーザビームを入射させるレーザアニール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置の制御装置、レーザ加工装置、及びレーザアニール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハにドープしたドーパントの活性化を行うアニール、ガラス基板に形成したアモルファス半導体層を結晶化させるアニール等の、パルスレーザビームを用いたレーザアニールが用いられる(例えば、特許文献1等)。レーザアニールにおいては、加工対象物の表面上でビームスポットを走査することにより、加工対象物のほぼ全域のアニールを行う。
【0003】
最適なアニールを行うために、1パルス当たりのエネルギ密度(パルスエネルギ密度)を最適化することが好ましい。レーザ発振器から出力されたレーザビームを可変減衰器で減衰させることにより、パルスエネルギ密度を最適化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パルスエネルギ密度を最適化するために、レーザ発振器から出力されたパルスレーザビームを減衰させると、エネルギ利用効率が低下してしまう。本発明の目的は、エネルギ利用効率を低下させることなく、所望のパルスエネルギ密度でアニールを行うことが可能なレーザアニール装置、その制御装置及びレーザアニール方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
レーザ発振器から出力されたパルスレーザビームを、ビームサイズ調整光学系を経由して加工対象物に入射させるレーザ加工装置を制御する制御装置であって、
加工時に用いるパルスレーザビームのパルスエネルギの密度目標値を取得する機能と、
前記レーザ発振器から出力されるパルスレーザビームのパルスエネルギ、及び前記密度目標値に基づいて、前記加工対象物の表面におけるパルスエネルギ密度が前記密度目標値になるように、前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積目標値を計算する機能と、
前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積が、前記面積目標値になるように前記ビームサイズ調整光学系を制御する機能と
を備えた制御装置が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると、
パルスレーザビームを出力するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から加工対象物までのパルスレーザビームの経路に配置され、前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積を変化させるビームサイズ調整光学系と、
レーザ加工条件が入力される入力装置と、
前記ビームサイズ調整光学系を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記入力装置に入力されたパルスエネルギの密度目標値を取得する機能と、
前記レーザ発振器から出力されるパルスレーザビームのパルスエネルギ、及び前記密度目標値に基づいて、前記加工対象物の表面におけるパルスエネルギ密度が前記密度目標値になるように、前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積目標値を計算する機能と、
前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積が、前記面積目標値になるように前記ビームサイズ調整光学系を制御する機能と
を有するレーザ加工装置が提供される。
【0008】
本発明のさらに他の観点によると、
加工対象物の表面におけるパルスエネルギ密度の目標値を決定し、
レーザ発振器から出力されるパルスレーザビームのパルスエネルギ、及び前記目標値に基づいて、前記加工対象物の表面におけるパルスエネルギ密度が前記目標値になるように前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積を決定し、
前記加工対象物の表面におけるビームスポットの面積が、決定された面積になる条件で前記加工対象物にパルスレーザビームを入射させるレーザアニール方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
パルスエネルギの密度目標値に基づいてビームスポットの面積目標値を調整すると、パルスエネルギを一定にしても、目標とするパルスエネルギ密度でレーザ加工を行うことができる。パルスエネルギの目標値を低下させる場合でも、パルスエネルギを低下させる必要がないため、エネルギの利用効率の低下を抑制することができる。さらに、パルスエネルギの密度目標値が低下したときに、ビームスポットの面積を拡大することにより、レーザ加工に必要な時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施例によるレーザ加工装置の概略図である。
【
図2】
図2Aは、加工対象物の表面にけるパルスレーザビームのビームスポットの移動の様子を示す模式図であり、
図2Bは、
図2Aに示したビームスポットに比べて幅Lxを長くした場合のビームスポットの移動の様子を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本実施例によるレーザ加工方法の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4A~
図4Cは、レーザ加工時におけるビームスポットの移動の様子及びレーザ照射条件を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図3を参照して、一実施例によるレーザ加工装置について説明する。
図1は、本実施例によるレーザ加工装置の概略図である。2台のレーザ発振器10が、制御装置30からの指令に基づいてパルスレーザビームを出力する。2台のレーザ発振器10のそれぞれから出力されたパルスレーザビームが、ビーム合成器12で1本のパルスレーザビームに合成される。一方のレーザ発振器10から出力されたパルスレーザビームはミラー11で反射されてビーム合成器12に入射する。
【0012】
ビーム合成器12で合成されたパルスレーザビームは、アッテネータ13、ビームエキスパンダ14、ビームサイズ調整光学系15を通過し、ミラー18で反射され、集光レンズ21を通過して加工対象物50に入射する。加工対象物50は、XYステージ等の可動ステージ22に保持されている。可動ステージ22は、制御装置30からの指令に基づいて加工対象物50を水平面内の二方向に移動させる。加工対象物50は、例えばドーパントがイオン注入された半導体ウエハであり、パルスレーザビームの入射によってドーパントの活性化アニールを行う。
【0013】
可動ステージ22に計測器20が取り付けられている。可動ステージ22を移動させて、計測器20をパルスレーザビームの入射位置に配置することにより、加工対象物50の表面の位置におけるパルスレーザビームのビームプロファイルを計測することができる。ビームプロファイルの計測結果が制御装置30に入力される。
【0014】
レーザ発振器10として、例えばファイバレーザ発振器、レーザダイオード、固体レーザ発振器等を用いることができる。アッテネータ13は、パルスレーザビームを所定の減衰率で減衰させる。ビームエキスパンダ14は、ビームサイズ調整光学系15の入射位置におけるビームサイズを調整する。ビームサイズ調整光学系15は、加工対象物50の表面におけるビームスポットを整形するとともに、強度分布を均一化する。さらに、ビームサイズ調整光学系15は、制御装置30からの指令により、ビームスポットの面積を変化させる。
【0015】
ビームサイズ調整光学系15は、例えば、加工対象物50の表面におけるビームスポットの形状を長方形に整形し、その面積を変化させることができる。ビームスポットの長軸方向の寸法を変化させるために、一対のシリンドリカルレンズアレイ15Aが配置されており、短軸方向の寸法を変化させるために、他の一対のシリンドリカルレンズアレイ15Bが配置されている。
【0016】
ビームサイズ調整光学系15に入射したパルスレーザビームは、短軸用のシリンドリカルレンズアレイ15B、長軸用のシリンドリカルレンズアレイ15A、及び凸レンズ15Cを通過して、ビームサイズ調整光学系15から出力される。制御装置30からの指令により、長軸調整機構15Dが長軸用の一対のシリンドリカルレンズアレイ15Aの間隔を変化させると、ビームスポットの長軸方向の寸法が変化する。同様に、短軸調整機構15Eが短軸用の一対のシリンドリカルレンズアレイ15Bの間隔を変化させると、ビームスポットの短軸方向の寸法が変化する。
【0017】
入力装置31に、レーザ加工条件及び種々のコマンドが入力される。制御装置30は、入力装置31に入力されたレーザ加工条件に基づいて、パルスレーザビームが加工対象物50の表面の目標位置に入射するように、可動ステージ22を制御する。さらに、レーザ発振器10からのパルスレーザビームの出力タイミングを制御する。
【0018】
次に、
図2Aを参照して、レーザ加工時におけるビームスポットの移動について説明する。
図2Aは、加工対象物50(
図1)の表面にけるパルスレーザビームのビームスポット40の移動の様子を示す模式図である。本実施例では、パルスレーザビームの経路を固定し、加工対象物50を移動させることにより、加工対象物50に対してビームスポット40を移動させている。
図2Aでは、加工対象物50に対するビームスポット40の相対的な移動の様子を示している。
【0019】
加工対象物50の表面をxy面とするxyz直交座標系を定義する。ビームスポット40の形状は、y方向に長い角丸長方形である。ビームスポット40のy方向の寸法(長さ)をLyと標記し、x方向の寸法(幅)をLxと標記することとする。
【0020】
レーザ加工は、加工対象物50の表面をパルスレーザビームでx方向に走査する走査処理と、ビームスポット40をy方向に移動させるステップ動作とを交互に繰り返すことにより行われる。走査動作において、パルスレーザビームのパルスの繰返しの一周期の間にビームスポット40がx方向に移動する距離をWxと標記する。移動距離Wxはビームスポット40のx方向の寸法(以下、幅Lxという。)よりも短い。このため、あるショットのビームスポット40は、直前のショットのビームスポット40とx方向に関して部分的に重なる。重なり部分のx方向の寸法、すなわちLx-Wxの、ビームスポット40の幅Lxに対する比を走査動作におけるオーバラップ率という。
【0021】
1回のステップ動作におけるビームスポット40のy方向への移動距離をWyと標記する。移動距離Wyはビームスポット40のy方向の寸法(以下、長さLyという。)より短い。このため、ある走査動作で走査される領域は、直前の走査動作で走査された領域とy方向に関して部分的に重なる。重なり部分のy方向の寸法、すなわちLy-Wyの、ビームスポット40の長さLyに対する比をステップ動作におけるオーバラップ率という。
【0022】
制御装置30がビームサイズ調整光学系15を制御することにより、ビームスポット40の長さLy及び幅Lxを変化させることができる。例えば、長軸調整機構15Dを制御することにより、ビームスポット40の長さLyを変化させることができ、短軸調整機構15Eを制御することにより、ビームスポット40の幅Lxを変化させることができる。
【0023】
図2Bは、
図2Aに示したビームスポット40に比べて幅Lxを長くした場合のビームスポット40の移動の様子を示す模式図である。幅Lxを長くすると、ビームスポット40の面積が広くなる。パルスレーザビームの1パルス当たりのエネルギ(以下、パルスエネルギという。)が同一の条件でビームスポット40の面積を広くすると、1パルス当たりのエネルギ密度(以下、パルスエネルギ密度という。)が低下する。
【0024】
次に、
図3を参照して、本実施例によるレーザ加工装置でレーザ加工を行う方法について説明する。
図3は、本実施例によるレーザ加工方法の手順を示すフローチャートである。
【0025】
ピークパワー、パルス幅、パルスエネルギ密度等のレーザ照射条件が入力装置31に入力されると、制御装置30が、入力装置31からこれらのレーザ照射条件を取得する(ステップS1)。なお、ピークパワー及びパルス幅の値は、予め制御装置30に記憶させておいてもよい。レーザ照射条件として入力されたパルスエネルギ密度の値を、密度目標値ということとする。ピークパワーは、レーザ発振器10のピークパワーの定格値に基づいて決定するとよい。例えば、2台のレーザ発振器10を用いる場合は、レーザ発振器10のピークパワーの定格値の約2倍にするとよい。
【0026】
制御装置30は、ピークパワー、パルス幅、及び密度目標値に基づいて、パルスエネルギ密度が密度目標値になるためのビームスポット40の面積を計算する(ステップS2)。計算で求められた面積の値を、面積目標値ということとする。
【0027】
ビームスポット40の面積目標値が求まると、ビームスポット40の走査方向(x方向)及びステップ動作方向(y方向)のビームスポット40の寸法Lx、Lyを決定する(ステップS3)。一例として、y方向の寸法Lyは予め固定的に与えられており、面積目標値と寸法Lyとから、x方向の寸法Lxを決定する。その他に、寸法LxとLyとの比を予め決定しておき、この比と面積目標値とから、寸法Lx、Lyを決定してもよい。
【0028】
制御装置30は、ビームスポット40の寸法Lx、Lyが、ステップS3で決定された値になるように、ビームサイズ調整光学系15を制御する(ステップS4)。制御装置30は、可動ステージ22(
図1)を動作させて、計測器20をパルスレーザビームの経路上に配置し、レーザ発振器10からパルスレーザビームを出力させる。制御装置30は、計測器20から計測結果を取得し、計測結果から、ビームスポット40の寸法Lx、Lyを求め、面積を計算する(ステップS5)。
【0029】
計測結果から計算したビームスポット40の面積の計測値と面積目標値とを比較し、両者の差が許容範囲か否かを判定する(ステップS6)。両者の差が許容範囲から外れている場合は、ビームサイズ調整光学系15を再度制御し、ビームスポット40の寸法Lx、Lyの微調整を行う(ステップS4)。両者の差が許容範囲に収まっている場合は、現在のビームスポット40の寸法でレーザ加工を行う(ステップS7)。
【0030】
次に、
図4A~
図4Cを参照して本実施例の優れた効果について説明する。
図4A~
図4Cは、レーザ加工時におけるビームスポット40の移動の様子及びレーザ照射条件を示す図である。
図4Aは、パルスエネルギの密度目標値がE
0の場合、
図4B及び
図4Cは、パルスエネルギの密度目標値がE
0より小さいE
1の場合を示す。
【0031】
図4Aに示すように、パルスエネルギをP
0、ビームスポット40の面積をS
0に設定した条件でレーザ加工を行う。パルスエネルギP
0は、例えばレーザ発振器10(
図1)の定格値から決定される。ビームスポット40の面積S
0は、P
0/S
0=E
0を満たすように決定される。ビームスポット40のx方向およびy方向の寸法を、それぞれLx、Lyと標記する。ビームスポット40のショット間でのx方向の移動距離をWxと標記する。
【0032】
図4Bは、従来行われていた比較例によるレーザ加工方法におけるレーザ照射条件を示す。従来は、パルスエネルギの密度目標値がE
0からE
1に低下しても、ビームスポット40の面積はS
0のままであり、パルスエネルギをP
0からP
1に低下させることにより、パルスエネルギ密度が密度目標値E
1になるように調整していた。パルスエネルギの低下は、例えばアッテネータ13(
図1)によるパルスレーザビームの減衰量を大きくすることにより行う。パルスエネルギP
1は、P
1/S
0=E
1を満たすように決定される。ビームスポット40のx方向の寸法Lx、y方向の寸法Ly、及び移動距離Wxは、
図4Aに示したレーザ加工の場合と同一である。
【0033】
図4Cは、実施例によるレーザ加工方法におけるレーザ照射条件を示す。パルスエネルギの密度目標値がE
0からE
1に低下しても、パルスエネルギは変化させず、ビームスポット40の面積をS
0からS
1に広くする。ビームスポット40の面積S
1は、P
0/S
1=E
1を満たすように決定される。
【0034】
ビームスポット40の面積の拡大は、ビームスポット40のx方向の寸法Lxを大きくすることにより実現する。オーバラップ率一定の条件でレーザ加工を行う場合、ビームスポット40の移動距離Wxは、
図4Aに示したレーザ加工の場合より長くなる。このため、レーザ加工の時間短縮を図ることが可能である。
【0035】
また、
図4Bに示した比較例では、アッテネータ13(
図1)によるパルスレーザビームの減衰量を大きくするため、レーザエネルギが有効に利用されない。これに対して
図4Cに示した実施例では、パルスエネルギの密度目標値が低下してもパルスエネルギを低下させないため、レーザエネルギの利用効率の低下が抑制される。
【0036】
次に、上記実施例の変形例について説明する。
上記実施例では、
図2A及び
図2Bに示したように、ビームスポット40の面積を変化させる場合に、y方向の寸法Lyを固定し、x方向の寸法Lxを変化させたが、逆に、x方向の寸法Lxを固定し、y方向の寸法Lyを変化させてもよい。
【0037】
寸法Lyの複数の候補値を決めておき、ビームスポット40の面積に基づいて複数の候補値から1つを選択するようにしてもよい。この場合、もう一方の寸法Lxの値は、ビームスポット40の面積と寸法Lyの選択された候補値とから計算することができる。なお、逆に、寸法Lxの複数の候補値を決めて起きてもよい。
【0038】
寸法LxとLyとの比を決めておき、ビームスポット40の面積から、寸法Lx、Lyを決定してもよい。
【0039】
上記実施例では、2台のレーザ発振器10(
図1)から出力されたパルスレーザビームを合成しているが、1台のレーザ発振器10を用いてもよい。また、第1実施例では、計測器20を可動ステージ22に取り付けているが、ミラー18を部分反射鏡にし、部分反射鏡を透過したパルスレーザビームが入射する位置に計測器20を配置してもよい。この場合、計測器20が配置された位置におけるビームスポットが、加工対象物50の表面におけるビームスポットと同じ大きさになるように調整しておくことが好ましい。
【0040】
上記実施例は例示であり、本発明は上記の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0041】
10 レーザ発振器
11 ミラー
12 ビーム合成器
13 アッテネータ
14 ビームエキスパンダ
15 スポットサイズ調整光学系
15A 長軸用シリンドリカルレンズアレイ
15B 短軸用シリンドリカルレンズアレイ
15C 凸レンズ
15D 長軸調整機構
15E 短軸調整機構
18 部分反射ミラー
20 計測器(ビームプロファイラ)
21 集光レンズ
22 可動ステージ
30 制御装置
31 入出力装置
40 ビームスポット
50 加工対象物