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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002490
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】コイル部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20231228BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20231228BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F27/29 123
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101694
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】川口 裕一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直明
(72)【発明者】
【氏名】西川 朋永
(72)【発明者】
【氏名】陳 利益
(72)【発明者】
【氏名】名取 光夫
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070AB02
5E070BB03
5E070CB13
5E070DA13
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】磁界の折れ曲がり部分における磁気抵抗が低減されたコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品1は、磁性素体Mと、磁性素体Mに埋め込まれたコイル部Cとを備える。磁性素体Mは、コイル軸方向における一方側からコイル部Cを覆う領域M11と、コイル軸方向における他方側からコイル部Cを覆う領域M20と、コイル部Cの内径領域に設けられ、領域M11と領域M20を繋ぐ領域M13とを含む。コイル部Cのコイル軸方向における高さは、内径領域に近づくにつれて小さくなる。これにより、磁性素体Mの領域M11,M20を通る磁界と磁性素体Mの領域M13を通る磁界の成す角度が緩和されることから、磁界の折れ曲がり部分における磁気抵抗が低減する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性素体と、
前記磁性素体に埋め込まれたコイル部と、を備え、
前記磁性素体は、コイル軸方向における一方側から前記コイル部を覆う第1の領域と、前記コイル軸方向における他方側から前記コイル部を覆う第2の領域と、前記コイル部の内径領域に設けられ、前記第1の領域と前記第2の領域を繋ぐ第3の領域とを含み、
前記コイル部の前記コイル軸方向における高さは、前記内径領域に近づくにつれて小さくなることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記磁性素体の前記第2の領域は、前記内径領域に近づくにつれて前記コイル軸方向における厚さが増大することを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記磁性素体の前記第1の領域に埋め込まれ、一端が前記コイル部に接続され、他端が前記磁性素体の前記第1の領域から露出する導体ポストをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記磁性素体の前記第1の領域は、前記内径領域に近づくにつれて前記コイル軸方向における厚さが増大することを特徴とする請求項2に記載のコイル部品。
【請求項5】
コイル部を形成する工程と、
前記コイル部のコイル軸方向における一方側、並びに、前記コイル部の内径領域に第1の磁性素体を形成する工程と、
前記コイル部の前記コイル軸方向における高さが前記内径領域に近づくにつれて小さくなるよう、前記コイル部の前記コイル軸方向における他方側の面を変形させる工程と、
前記コイル部の前記コイル軸方向における前記他方側に第2の磁性素体を形成する工程と、を備えることを特徴とするコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品及びその製造方法に関し、特に、磁性素体にコイル部が埋め込まれた構造を有するコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁性素体にコイル部が埋め込まれた構造を有するコイル部品が開示されている。特許文献1に記載されたコイル部品のように、コイル部を埋め込む素体に磁性材料を用いれば、小型で高いインダクタンスを得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-052076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたコイル部品は、コイル部のコイル軸方向における高さがほぼ一定であることから、コイル軸方向に対して垂直な磁界が急激にコイル軸方向に曲げられるため、磁界の折れ曲がり部分において磁気抵抗が高くなってしまう。
【0005】
したがって、本発明は、磁界の折れ曲がり部分における磁気抵抗が低減されたコイル部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコイル部品は、磁性素体と、磁性素体に埋め込まれたコイル部とを備え、磁性素体は、コイル軸方向における一方側からコイル部を覆う第1の領域と、コイル軸方向における他方側からコイル部を覆う第2の領域と、コイル部の内径領域に設けられ、第1の領域と第2の領域を繋ぐ第3の領域とを含み、コイル部のコイル軸方向における高さは、内径領域に近づくにつれて小さくなることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、コイル部のコイル軸方向における高さが内径領域に近づくにつれて縮小されていることから、磁性素体の第1又は第2の領域を通る磁界と磁性素体の第3の領域を通る磁界の成す角度が緩和される。これにより、磁界の折れ曲がり部分における磁気抵抗が低減されるとともに、磁性素体のボリュームを十分に確保することが可能となる。
【0008】
本発明において、磁性素体の第2の領域は、内径領域に近づくにつれてコイル軸方向における厚さが増大するものであっても構わない。これによれば、磁性素体の第2の領域を通る磁界と磁性素体の第3の領域を通る磁界の成す角度を緩和することが可能となる。
【0009】
本発明によるコイル部品は、磁性素体の第1の領域に埋め込まれ、一端がコイル部に接続され、他端が磁性素体の第1の領域から露出する導体ポストをさらに備えていても構わない。これによれば、回路基板に対してコイル軸が垂直となるよう、コイル部品を実装することが可能となる。
【0010】
本発明において、磁性素体の第1の領域は、内径領域に近づくにつれてコイル軸方向における厚さが増大するものであっても構わない。これによれば、磁性素体の第1の領域を通る磁界と磁性素体の第3の領域を通る磁界の成す角度を緩和することが可能となる。
【0011】
本発明によるコイル部品の製造方法は、コイル部を形成する工程と、コイル部のコイル軸方向における一方側、並びに、コイル部の内径領域に第1の磁性素体を形成する工程と、コイル部のコイル軸方向における高さが内径領域に近づくにつれて小さくなるよう、コイル部のコイル軸方向における他方側の面を変形させる工程と、コイル部のコイル軸方向における他方側に第2の磁性素体を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、簡単な方法によって、コイル部のコイル軸方向における高さを内径領域に近づくにつれて縮小することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、磁界の折れ曲がり部分における磁気抵抗が低減されたコイル部品及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品1を実装面側から見た略平面図である。
図2図2は、図1に示すA-A線に沿った略断面図である。
図3図3は、コイル部Cに電流を流した場合に磁性素体Mに生じる磁界を説明するための模式図である。
図4図4は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図5図5は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図6図6は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図7図7は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図8図8は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図9図9は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図10図10は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図11図11は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図12図12は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図13図13は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図14図14は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図15図15は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図16図16は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図17図17は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図18図18は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図19図19は、第1の変形例によるコイル部品1Aの略平面図である。
図20図20は、第2の変形例によるコイル部品1Bの略平面図である。
図21図21は、本発明の第2の実施形態によるコイル部品2の構成を示す略断面図である。
図22図22は、本発明の第3の実施形態によるコイル部品3の構成を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品1を実装面側から見た略平面図である。また、図2は、図1に示すA-A線に沿った略断面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態によるコイル部品1は、Z方向をコイル軸とするコイル部Cが磁性素体Mに埋め込まれた構造を有している。磁性素体Mは、コイル部Cを+Z方向側から覆う領域M11と、コイル部Cを-Z方向側から覆う領域M20と、コイル部Cの内径領域に埋め込まれ、領域M11,M20を繋ぐ領域M13と、コイル部Cの外側領域に位置する領域M14とを含んでいる。磁性素体Mの領域M11には導体ポストP1,P2が埋め込まれている。
【0018】
コイル部Cは、コイル軸方向に交互に積層された層間絶縁膜70~76及び導体層L1~L6からなる。導体層L1~L6は、それぞれコイルパターン10,20,30,40,50,60を有している。コイルパターン10,20,30,40,50,60は直列に接続されることにより、単一のコイルを構成している。そして、コイルの一端は導体ポストP1の一端(下端)に接続され、コイルの他端は導体ポストP2の一端(下端)に接続される。図2に示す例では、最上層に位置するコイルパターン60の外周端が導体ポストP1に接続され、最下層に位置するコイルパターン10の外周端が接続パターン21,31,41,51,61を介して導体ポストP2に接続される。導体ポストP1,P2の他端(上端)は、実装面S1から露出する。このように、導体ポストP1,P2は、コイル軸方向から見てコイル部Cと重なり、且つ、コイル軸方向に延在する導体である。
【0019】
磁性素体Mは、鉄(Fe)やパーマロイ系材料などからなる金属磁性体フィラーと樹脂バインダーを含む複合磁性部材であり、コイルパターン10,20,30,40,50,60に電流を流すことによって生じる磁束の磁路を構成する。樹脂バインダーとしては、液状又は粉体のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。尚、金属磁性体フィラーとしては、平均粒径サイズが異なる複数の金属磁性体フィラーを混合して用いても構わない。これによれば、磁性素体Mの透磁率や流動性の調整が容易となる。流動性の調整は、後述する水圧等を用いた加工によるコイル部Cの変形において重要である。
【0020】
図2に示すように、コイル部Cのコイル軸方向における高さは、内径領域に近づくにつれて小さくなる。つまり、コイル部Cの最外周位置における高さをH1とし、コイル部Cの最内周位置における高さをH2とした場合、H1>H2である。図2に示す例では、コイル部Cのコイル軸方向における他方側の表面を構成する層間絶縁膜70の表面70aがコイル軸に対して垂直な仮想面V1に対して傾きを有している。層間絶縁膜70の表面70aと仮想面V1が成す角度はθ1である。このように、本実施形態においては、内径領域に近づくほど、層間絶縁膜70の表面70aが実装面S1とは反対側の表面S2から遠ざかる形状を有している。これに対し、表面S2はほぼ平坦であり、コイル軸に対してほぼ垂直であることから、磁性素体Mの領域M20は、内径領域に近づくにつれてコイル軸方向における厚さが増大することになる。
【0021】
図3は、コイル部Cに電流を流した場合に磁性素体Mに生じる磁界を説明するための模式図である。
【0022】
図3に示すようにコイル部Cに電流を流すと、磁性素体Mの領域M11、M14、M20、M13の順(又はその逆)に周回する磁界が発生する。ここで、本実施形態においては、コイル部Cの断面形状がH1>H2であることから、層間絶縁膜70の表面70aと内径領域の表面77aが成す角が鈍角となる。これにより、磁性素体Mの領域M20から領域M13(又は領域M13から領域M20)に向かって折り曲げられる磁界の折り曲げ角度が緩和されることから、表面70aと表面77aの角部における磁界の集中が緩和され、この部分における磁気抵抗が低減する。表面70aと表面77aの角部は、磁束密度が最も高くなる領域であり、この領域における磁気抵抗が低減することによって、インダクタンスが有意に高められる。しかも、磁性素体Mの領域M20のコイル軸方向における厚さは、内径領域に近づくにつれてが増大する。これにより、磁性素体Mの領域M20のボリュームが十分に確保されることから、H1=H2である場合と比べて高いインダクタンスを得ることが可能となる。
【0023】
ここで、層間絶縁膜70の表面70aと仮想面V1が成す角度θ1は、0.1°以上、5°以下であることが好ましい。これは、角度θ1が0.1°未満であると磁気抵抗の低減効果が十分に得られないからである。また、後述する方法を用いた場合、角度θ1が5°超となるようコイル部Cを変形させることは困難だからである。
【0024】
次に、本実施形態によるコイル部品1の製造方法について説明する。
【0025】
図4図17は、本実施形態によるコイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【0026】
まず、支持体90の表面に銅箔91が形成されてなる基材を用意し、エッチングなどを行うことによって、コイル部Cと重なる位置の銅箔91の膜厚を選択的に減少させる(図4)。次に、銅箔91の表面を層間絶縁膜70で覆った後(図5)、層間絶縁膜70の表面に導体層L1を形成する(図6)。図6に示すように、この時点では導体層L1に犠牲パターン92が含まれている。そして、図5及び図6に示す工程を繰り返すことにより、コイル部Cを形成する(図7)。ここで、各導体層L1~L6に含まれる犠牲パターン92は、層間絶縁膜71~75によって分離されることなく、互いに接する状態とする。
【0027】
次に、レジスト93を形成した後(図8)、電解メッキを行うことによって導体ポストP1,P2を形成する(図9)。これにより、コイル部Cのコイル軸方向における一方側に導体ポストP1,P2が形成される。次に、導体ポストP1,P2をレジスト94で覆った後(図10)、酸などを用いて犠牲パターン92をエッチング、或いは、レーザ処理とうによって除去する(図11)。これにより、コイル部Cの内径領域が空洞状態となる。図示しないが、コイル部Cの外側領域にも犠牲パターン92が形成されており、これを除去することによってコイル部Cの外側領域も空洞状態となる。
【0028】
次に、コイル部C及び導体ポストP1,P2が埋め込まれるよう、コイル部Cのコイル軸方向における一方側、コイル部Cの内径領域、並びに、コイル部Cの外側領域に流動性を有する磁性素体M10を形成する(図12)。磁性素体M10は、コイル部Cのコイル軸方向における一方側に位置する領域M11、コイル部Cの内径領域に位置する領域M13、コイル部Cの外側領域に位置する領域M14を有しているが、図12に示す断面には領域M11,M13のみが現れている。
【0029】
次に、磁性素体M10を仮硬化させた後、その表面を研削することによって、導体ポストP1,P2の表面を露出させる(図13)。次に、支持体90を剥離した後(図14)、エッチングにより銅箔91を除去し、層間絶縁膜70を露出させる(図15)。そして、層間絶縁膜70に対してデスミア処理などを行うことによって層間絶縁膜70の膜厚を減少させることより、コイル部Cの内径領域及び外側領域に位置する磁性素体M10の領域M13,M14を露出させる(図16)。
【0030】
次に、コイル部Cのコイル軸方向における他方側にあらかじめ硬化済みの磁性素体M20を貼り付ける(図17)。これにより、コイル部Cは、磁性素体M10の領域M11と磁性素体M20によって軸方向から挟まれるとともに、両者が領域M13,M14によって磁気的に接続される。次に、全体をプレート95,96によって挟み込んだ状態で、水圧等を用いて全体を加圧し、仮硬化状態にある磁性素体M10を硬化させる。これにより、仮硬化状態にある磁性素体M10の領域M13が圧縮され、図2に示すように、領域M13と領域M20の界面が湾曲するとともに、これに追随してコイル部Cが変形し、内径領域に近づくほどコイル軸方向における高さが小さくなる。領域M11,M20については、それぞれプレート95,96によって固定されていることから、変形はほとんど生じない。その後、磁性素体Mの完全硬化及び個片化を行えば、本実施形態によるコイル部品1が完成する。
【0031】
このように、本実施形態においては、全体をプレート95,96によって挟み込んだ状態で、水圧等を用いて全体を加圧していることから、コイル部Cを図2に示す形状に変形させることが可能となる。ここで、図2に示す角度θ1をより大きくするためには、図16に示す工程を行った後、図18に示すように、磁性素体Mの領域M11側のみをプレート96で固定した状態で、水圧等を用いて全体を加圧すれば、コイル部Cのコイル軸方向における高さが内径領域に近づくにつれて小さくなるよう、コイル部Cのコイル軸方向における他方側の面がより大きく変形する。このようにしてコイル部Cをあらかじめ変形させた後、図17に示すように磁性素体M20を形成すれば、よりボリュームの大きな磁性素体M20を用いることが可能となる。
【0032】
尚、導体ポストP1,P2は、図19に示す第1の変形例によるコイル部品1Aのように、実装面S1からだけでなくYZ側面からも露出するものであっても構わない。これによれば、コイル部品1Aを回路基板に実装した際、YZ側面にハンダのフィレットを形成することが可能となる。また、実装面S1に露出する導体ポストP1,P2の平面形状が矩形である必要はなく、図20に示す第2の変形例によるコイル部品1Bのように円形であっても構わない。
【0033】
図21は、本発明の第2の実施形態によるコイル部品2の構成を示す略断面図である。
【0034】
図21に示すように、第2の実施形態によるコイル部品2は、コイル部Cのコイル軸方向における一方側の表面を構成する層間絶縁膜70の表面76aがコイル軸に対して垂直な仮想面V2に対して傾きを有している点において、第1の実施形態によるコイル部品1と相違している。層間絶縁膜76の表面76aと仮想面V2が成す角度はθ2であり、0.1°以上、5°以下であることが好ましい。このように、本実施形態においては、内径領域に近づくほど、層間絶縁膜76の表面76aが実装面S1から遠ざかる形状を有している。これに対し、実装面S1はほぼ平坦であり、コイル軸に対してほぼ垂直であることから、磁性素体Mの領域M11は、内径領域に近づくにつれてコイル軸方向における厚さが増大することになる。その他の基本的な構成は、第1の実施形態によるコイル部品1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
本実施形態が例示するように、コイル部Cは、コイル軸方向における両側の面が変形していても構わない。これによれば、磁性素体Mの領域M11から領域M13(又は領域M13から領域M11)に向かって折り曲げられる磁界の折り曲げ角度が緩和されることから、表面76aと表面77aの角部における磁界の集中が緩和され、この部分における磁気抵抗が低減する。しかも、磁性素体Mの領域M11のボリュームが十分に確保されることから、より高いインダクタンスを得ることが可能となる。
【0036】
図22は、本発明の第3の実施形態によるコイル部品3の構成を示す略断面図である。
【0037】
図22に示すように、第3の実施形態によるコイル部品3は、導体ポストP1,P2が省略されている代わりに、導体層L1~L6の一部が磁性素体MのYZ側面に露出し、これが端子電極として用いられる点において、第1の実施形態によるコイル部品1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態によるコイル部品1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態が例示するように、本発明において導体ポストP1,P2を用いることは必ずしも必要ではない。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0039】
例えば、コイル部Cの構成が上記実施形態に限定されるものではなく、2つのコイルが層間絶縁膜を介して交互に積層されることによりコモンモードフィルタを構成するものであっても構わない。
【符号の説明】
【0040】
1~3,1A,1B コイル部品
10,20,30,40,50,60 コイルパターン
21,31,41,51,61 接続パターン
70~76 層間絶縁膜
70a,76a 層間絶縁膜の表面
77a 内径領域の表面
90 支持体
91 銅箔
92 犠牲パターン
93,94 レジスト
95,96 プレート
C コイル部
L1~L6 導体層
M,M10,M20 磁性素体
M11,M13,M14 領域
P1,P2 導体ポスト
S1 実装面
S2 実装面とは反対側の表面
V1,V2 仮想面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22