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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024902
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/024 20060101AFI20240216BHJP
   B66C 13/16 20060101ALI20240216BHJP
   B66C 23/42 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F15B11/024 C
B66C13/16 C
B66C23/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127872
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】506002823
【氏名又は名称】古河ユニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】明瀬 英行
【テーマコード(参考)】
3F205
3H089
【Fターム(参考)】
3F205AA06
3F205CB14
3H089AA33
3H089BB01
3H089CC01
3H089DA03
3H089DA13
3H089DB43
3H089EE36
3H089FF07
3H089FF12
3H089GG02
3H089JJ08
(57)【要約】
【課題】燃費の低下を抑制することが可能な油圧制御装置を提供する。
【解決手段】コントローラ30は、ロードセル20の検出値が荷重閾値未満であると判断したときは第一モード用の制御信号を回路切換弁50とポンプ機構2へ出力し、回路切換弁50は、制御信号が第一モード用のときは、回生回路43における圧油の流路を、圧油を縮室15から伸室14に回生させる流路に切り換え、ポンプ機構2は、制御信号が第一モード用のときは、制御信号が第二モード用のときと同じ速度でブームが伸長するように、縮室15から伸室14に回生する圧油の流量に応じて、ブーム伸縮用シリンダ1への圧油供給量を、制御信号が第二モード用のときよりも減少させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンが備えるブームが受ける荷重を検出するロードセルと、
前記ロードセルが検出した荷重の検出値と予め設定した荷重閾値との比較に応じた制御信号を出力するコントローラと、
前記ブームを伸縮させるブーム伸縮用シリンダへ供給した圧油を縮室から伸室にのみ回生させる回生回路と、
前記コントローラが出力した制御信号に応じて前記回生回路における前記圧油の流路を切り換える回路切換弁と、
前記制御信号に応じて前記ブーム伸縮用シリンダへの圧油供給量を変化させるポンプ機構と、を備え、
前記コントローラは、
前記検出値が前記荷重閾値未満であると判断したときは第一モード用の前記制御信号を前記回路切換弁と前記ポンプ機構へ出力し、
前記検出値が前記荷重閾値以上であると判断したときは第二モード用の前記制御信号を前記回路切換弁と前記ポンプ機構へ出力し、
前記回路切換弁は、
前記制御信号が前記第一モード用のときは、前記回生回路における前記圧油の流路を、前記圧油を前記縮室から前記伸室に回生させる流路に切り換え、
前記制御信号が前記第二モード用のときは、前記回生回路における前記圧油の流路を、前記縮室から前記伸室への前記圧油の供給を遮断する流路に切り換え、
前記ポンプ機構は、
前記制御信号が前記第一モード用のときは、前記制御信号が前記第二モード用のときと同じ速度で前記ブームが伸長するように、前記縮室から前記伸室に回生する前記圧油の流量に応じて、前記圧油供給量を、前記制御信号が前記第二モード用のときよりも減少させ、
前記制御信号が前記第二モード用のときは、前記制御信号が前記第一モード用のときと同じ速度で前記ブームが伸長するように、前記圧油供給量を変化させる油圧制御装置。
【請求項2】
前記ポンプ機構は、前記制御信号が前記第一モード用のときは、前記圧油供給量と、前記縮室から前記伸室に回生する前記圧油の流量と、の合計が、前記制御信号が前記第二モード用のときに前記ブーム伸縮用シリンダへ供給される前記圧油の量と等しくなるように、前記圧油供給量を変化させる請求項1に記載した油圧制御装置。
【請求項3】
前記クレーンは、車両に搭載され、
前記ポンプ機構は、前記車両が備えるエンジンの回転数を変化させるアクセル機構と連動して動作する請求項1に記載した油圧制御装置。
【請求項4】
前記荷重閾値は、前記クレーンの吊り荷が無い状態における前記検出値を超える値である請求項1に記載した油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーム伸縮用シリンダの動作を制御する油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複動油圧シリンダ(以下、単に「シリンダ」と記載する)が備えるロッドが伸長する速度を増速させる技術として、例えば、特許文献1に開示されている技術がある。特許文献1に開示されている技術では、ロッドの伸長時にシリンダの縮室からタンクへ戻る圧油を、シリンダの伸室に回生させることで、ロッドの伸長速度を増速させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-021625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている構成では、ロッドが伸長する速度を増速させるように油圧制御装置を作動させると、伸室への供給される圧油の圧力が上昇し、定格圧力を超えた分の圧油がタンクへ排出されるため、燃費が低下するという問題がある。
本発明は、上述した問題点を鑑み、燃費の低下を抑制することが可能な油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る油圧制御装置は、ロードセルと、コントローラと、回生回路と、回路切換弁と、ポンプ機構とを備える。ロードセルは、クレーンが備えるブームが受ける荷重を検出する。コントローラは、ロードセルが検出した荷重の検出値と予め設定した荷重閾値との比較に応じた制御信号を出力する。また、コントローラは、検出値が荷重閾値未満であると判断したときは第一モード用の制御信号を回路切換弁とポンプ機構へ出力し、検出値が荷重閾値以上であると判断したときは第二モード用の制御信号を回路切換弁とポンプ機構へ出力する。回生回路は、ブームを伸縮させるブーム伸縮用シリンダへ供給した圧油を縮室から伸室にのみ回生させる回路である。回路切換弁は、コントローラが出力した制御信号に応じて、回生回路における圧油の流路を切り換える。また、回路切換弁は、制御信号が第一モード用のときは、回生回路における圧油の流路を、圧油を縮室から伸室に回生させる流路に切り換える。さらに、回路切換弁は、制御信号が第二モード用のときは、回生回路における圧油の流路を、縮室から伸室への圧油の供給を遮断する流路に切り換える。ポンプ機構は、制御信号が第一モード用のときは、制御信号が第二モード用のときと同じ速度でブームが伸長するように、縮室から伸室に回生する圧油の流量に応じて、ブーム伸縮用シリンダへの圧油供給量を、制御信号が第二モード用のときよりも減少させる。さらに、ポンプ機構は、制御信号が第二モード用のときは、制御信号が第一モード用のときと同じ速度でブームが伸長するように、圧油供給量を変化させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る油圧制御装置によれば、燃費の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】制御信号が第二モード用である場合の、油圧制御装置の構成を示す図である。
図2】制御信号が第二モード用である場合の、油圧制御回路の構造を模式的に示す図である。
図3】制御信号が第一モード用である場合の、油圧制御装置の構成を示す図である。
図4】制御信号が第一モード用である場合の、油圧制御回路の構造を模式的に示す図である。
図5】油圧制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る油圧制御装置について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚さと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なる場合があることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0009】
(第一実施形態)
<構成>
油圧制御装置は、トラック等の作業車両(図示略)に搭載されるクレーンにおいて、クレーンが備えるブームを伸縮させる機構に用いる。
クレーンは、図1に示すように、ブーム伸縮用シリンダ1と、ポンプ機構2と、タンク3と、制御弁4と、アクセルコントロールユニット5と、油圧制御装置10を備える。
【0010】
(ブーム伸縮用シリンダ)
ブーム伸縮用シリンダ1は、ブームを伸縮させるための複動油圧シリンダであり、チューブ11と、ピストン12と、ロッド13を備える。
チューブ11は、両方の端面が閉塞された円筒状に形成されている。
チューブ11の内部には、伸室14と縮室15が形成されている。
【0011】
伸室14は、チューブ11の内部において、ピストン12と、チューブ11の一方の端面(図1では左側の端面)との間に形成されている。
また、伸室14には、第一油路6が接続されている。
【0012】
縮室15は、チューブ11の内部において、ピストン12と、チューブ11の他方の端面(図1では右側の端面)との間に形成されている。
また、縮室15には、第二油路7が接続されている。
【0013】
ピストン12は、円板状に形成されており、チューブ11の内部に配置されている。ピストン12の外径面は、チューブ11の内径面と接触している。
ロッド13は、円柱状に形成されている。ロッド13の一方の端部は、ピストン12の縮室15と対向する面(図1では右側の面)に固定されている。ロッド13の他方の端部は、チューブ11の他方の端面から、チューブ11の外側へ突出している。
【0014】
(ポンプ)
ポンプ機構2は、例えば、可変容量型の油圧ポンプ(斜板式、斜軸式、ラジアルピストン式等)を用いて形成されており、エンジン等の原動機(図示略)によって駆動する。
また、ポンプ機構2は、タンク3に貯留されている油液を吸込側から吸い込み、吐出側から圧油としてブーム伸縮用シリンダ1に向けて吐出する。
ポンプ機構2による圧油の吐出量(吐出流量)は、アクセルコントロールユニット5から出力された吐出流量信号に応じて変化する。
すなわち、ポンプ機構2は、作業車両が備えるエンジンの回転数を変化させるアクセル機構と連動して動作する。
【0015】
(タンク)
タンク3は、ポンプ機構2によって圧油として吐出される油液を貯留している。
すなわち、タンク3は、圧油の供給源である。
【0016】
(制御弁)
制御弁4は、ポンプ機構2及びタンク3とブーム伸縮用シリンダ1との間に設けられた方向制御弁であり、コントロールバルブの内部に配置されている。コントロールバルブは、圧油の供給と排出を制御するバルブである。
また、制御弁4は、第一サービスポート4aと、第二サービスポート4bと、ポンプポート4cと、タンクポート4dを有する。
【0017】
第一サービスポート4aは、後述する伸回路41と第一油路6とを介して、伸室14に接続されている。
第二サービスポート4bは、後述する縮回路42と第二油路7とを介して、縮室15に接続されている。
【0018】
ポンプポート4cは、ポンプ機構2の吐出側に接続されている。
タンクポート4dは、タンク3に接続されている。
また、ポンプポート4c及びタンクポート4dと、ポンプ機構2及びタンク3との間には、リリーフ制御弁8が配置されている。なお、リリーフ制御弁8の説明は後述する。
【0019】
制御弁4は、運転室に配置された操作レバー装置(図示略)の、オペレータによる手動操作によって発生したパイロット圧が供給されることにより、中立位置から、伸長位置又は縮小位置に切り換わる。
制御弁4が中立位置にある間は、ポンプ機構2及びタンク3とブーム伸縮用シリンダ1との間を遮断し、圧油の供給及び圧油の排出を停止させて、ブーム伸縮用シリンダ1を停止状態に保持する。
【0020】
制御弁4が伸長位置に切り換わると、ポンプ機構2が吐出した圧油が第一サービスポート4aから伸室14に入るとともに、縮室15の圧油が、第二サービスポート4bからタンクポート4dを経由して、タンク3へと排出される。
制御弁4が縮小位置に切り換わると、ポンプ機構2が吐出した圧油が第二サービスポート4bから縮室15に入るとともに、伸室14の圧油が、第一サービスポート4aからタンクポート4dを経由して、タンク3へと排出される。
以上により、制御弁4は、オペレータによるクレーンの操作量に応じて、圧油の供給と排出を制御する。
【0021】
(アクセルコントロールユニット)
アクセルコントロールユニット5は、オペレータによるクレーンの操作量に応じて、ポンプ機構2による圧油の吐出量を含む指令信号である吐出流量信号を生成する。そして、生成した吐出流量信号を、ポンプ機構2へ出力する。
また、アクセルコントロールユニット5は、コントローラ30から出力された制御信号に応じて、吐出流量信号が含む吐出量を変化させることで、ポンプ機構2による圧油の吐出量を変化させる。
【0022】
具体的に、コントローラ30が出力した制御信号が、後述する第一モード用の制御信号であると、アクセルコントロールユニット5は、コントローラ30が出力した制御信号が、後述する第二モード用のときと同じ速度でブームが伸長するように、縮室15から伸室14に回生する圧油の流量に応じて、圧油供給量(タンク3からブーム伸縮用シリンダ1へ供給する圧油の供給量)を、コントローラ30が出力した制御信号が第二モード用のときよりも減少させる。
圧油供給量を減少させる際には、縮室15から伸室14に回生する圧油の流量に応じて、ポンプ機構2が備えるポンプの回転数を低下させる。
【0023】
このとき、吐出流量信号が含む吐出量を変化させる際には、圧油供給量と、縮室15から伸室14に回生する圧油の流量との合計が、コントローラ30が出力した制御信号が第二モード用のときにタンク3からブーム伸縮用シリンダ1へ供給される圧油の量と等しくなるように、圧油供給量を変化させる。
【0024】
また、コントローラ30が出力した制御信号が第二モード用のときは、コントローラ30が出力した制御信号が第一モード用のときと同じ速度でブームが伸長するように、圧油供給量を変化させる。
以上により、ポンプ機構2は、コントローラ30が出力した制御信号に応じて、圧油供給量を変化させる。
【0025】
(油圧制御装置)
油圧制御装置10は、ロードセル20と、コントローラ30と、油圧制御回路40と、回路切換弁50を備える。
【0026】
(ロードセル)
ロードセル20は、例えば、ブームに取り付けられている。
また、ロードセル20は、ブーム伸縮用シリンダ1が備えるロッド13に加わる荷重の大きさを検出することで、ブームが受ける荷重を検出する。荷重を検出したロードセル20は、荷重の検出値を含む検出値信号を、コントローラ30へ出力する。
【0027】
(コントローラ)
コントローラ30は、コンピュータと出力用のパワーモジュールを含む制御装置である。
また、コントローラ30は、後述する油圧制御処理のプログラムを実行することで、回路切換弁50を制御する。なお、油圧制御処理は、クレーンの起動によって開始する主プログラムの処理に割り込む処理として、主プログラムの処理と並列的に実行される。
【0028】
<油圧制御回路>
油圧制御回路40は、ブーム伸縮用シリンダ1と制御弁4との間に配置されている。
また、油圧制御回路40は、伸回路41と、縮回路42を有する。
【0029】
伸回路41は、第一油路6と第一サービスポート4aとを接続している。すなわち、第一油路6は、伸回路41と伸室14とを接続している。
縮回路42は、第二サービスポート4bに接続されている。
【0030】
<回路切換弁>
回路切換弁50は、弁本体51と、ソレノイドバルブ52を有する。
弁本体51は、ブロック状に形成されている。
【0031】
弁本体51の内部には、伸回路41と、シリンダ側縮回路42sと、タンク側縮回路42tと、回生回路43が形成されている。
伸回路41の一端は、第一サービスポート4aに接続されている。
伸回路41の他端は、第一油路6に接続されている。
【0032】
シリンダ側縮回路42sの一端は、第二油路7に接続されており、縮回路42の一部を形成している。
タンク側縮回路42tの一端は、第二サービスポート4bに接続されており、縮回路42の一部を形成している。
回生回路43の一端は、伸回路41に接続されている。
【0033】
また、弁本体51には、第一接続ポート51aと、第二接続ポート51bと、第三接続ポート51cが形成されている。
第一接続ポート51aは、シリンダ側縮回路42sの他端を形成している。
第二接続ポート51bは、回生回路43の他端を形成している。
第三接続ポート51cは、タンク側縮回路42tの他端を形成している。
【0034】
ソレノイドバルブ52は、コントローラ30が出力した制御信号によって、非通電状態、又は、通電状態となる。
具体的に、コントローラ30が出力した制御信号が、第一モード用の制御信号であると、ソレノイドバルブ52は通電状態となる。また、コントローラ30が出力した制御信号が、第二モード用の制御信号であると、ソレノイドバルブ52は非通電状態となる。
なお、第一モード用の制御信号とは、ソレノイドバルブ52の駆動信号が「通電」の場合であり、コントローラ30が出力した制御信号が第一モード用の制御信号であると、パワーモジュールを介して、ソレノイドバルブ52の駆動に必要な電流が通電される。また、第二モード用の制御信号とは、ソレノイドバルブ52の駆動信号が「非通電」の場合である。
【0035】
ソレノイドバルブ52が通電状態のときは、図3及び図4に示すように、第一接続ポート51aと第二接続ポート51bとが接続される。
第一接続ポート51aと第二接続ポート51bとが接続されると、回生回路43とシリンダ側縮回路42sが接続される。
【0036】
ソレノイドバルブ52が非通電状態のときは、図1及び図2に示すように、第一接続ポート51aと第三接続ポート51cとが接続される。
第一接続ポート51aと第三接続ポート51cとが接続されると、シリンダ側縮回路42sとタンク側縮回路42tとが接続される。
(リリーフ制御弁)
リリーフ制御弁8は、ブーム伸縮用シリンダ1へ供給される圧油の圧力を、常に、クレーンの定格圧力以下にする制御弁である。また、リリーフ制御弁8は、ポンプから供給される圧油の圧力が定格圧力を超えた場合に開き、圧油の圧力が定格圧力に低下するまで圧油をタンク3へ排出することで、圧油の圧力を、常に定格圧力以下にする制御弁である。
リリーフ制御弁8が設定する設定圧(定格圧力)を「P」と定義すると、制御信号が第二モード用である場合における、圧油の圧力は、以下の式(1)及び式(2)を用いて表される。
F=P・π/4・X … (1)
=F/(π/4・X) … (2)
式(1)及び式(2)において、「F」は、ロッド13を伸長させる際に発生する推力であり、「P」は、タンク3から伸回路41及び第一油路6を介して伸室14へ供給される圧油の圧力である。また、式(1)及び式(2)において、「X」は、チューブ11の内径である。
なお、制御信号が第二モード用である場合における圧油の圧力は、縮室15から第二油路7及び縮回路42を介してタンク3へ戻る圧油の圧力である「P」を基準(P=0)とする圧力である。
このとき、P>Pの場合には、リリーフ制御弁8が開き、P≦Pとなるまで、圧油をタンク3へ排出する。
また、制御信号が第一モード用である場合における、圧油の圧力は、以下の式(3)から式(5)を用いて表される。
F=P・π/4・X-P・π/4・(X-Y)=P・π/4・Y …(3)
=F/(π/4・Y) …(4)
=X/Y・P>P …(5)
式(3)及び式(4)において、「F」は、ロッド13を伸長させる際に発生する推力である。また、式(3)から式(5)において、「P」は、タンク3から伸回路41及び第一油路6を介して伸室14へ供給される圧油の圧力、及び、縮室15から第二油路7及び回路切換弁50を介して伸室14へ供給される圧油の圧力である。さらに、式(3)及び式(5)において、「X」は、チューブ11の内径である。また、式(3)から式(5)において、「Y」は、ロッド13の外径である。また、式(5)において、「P」は、制御信号が第二モード用である場合における、タンク3から伸回路41及び第一油路6を介して伸室14へ供給される圧油の圧力である。
なお、制御信号が第一モード用である場合における圧油の圧力は、縮回路42とタンク3との間に存在する圧油の圧力である「P」を基準(P=0)とする圧力である。
このとき、P>Pの場合には、リリーフ制御弁8が開き、P≦Pとなるまで、圧油をタンク3へ排出する。
【0037】
<油圧制御処理>
油圧制御処理は、ロッド13を伸長させる操作において実行される処理である。
油圧制御処理が実行されると、図5に示すように、コントローラ30は、ステップS1にてロードセル20が検出した荷重の検出値を取得して、ステップS2に移行する。
ステップS2では、オペレータによる操作の入力を検出することで、ロッド13を伸長させる操作の有無を判断する。
【0038】
ステップS2でロッド13を伸長させる操作が有る(ステップS2:Yes)と判断すると、油圧制御処理は、ステップS3に移行する。一方、ステップS2でロッド13を伸長させる操作が無い(ステップS2:No)と判断すると、油圧制御処理は、ステップS1に戻る。
ステップS3では、ステップS1で取得したロードセル20の検出値に応じて、検出値と予め設定した荷重閾値とを比較する。
【0039】
なお、「荷重閾値」とは、第一モードと第二モードとの切り換えポイントを指す、予め設定した規定値である。
【0040】
ステップS3で検出値が荷重閾値未満である(ステップS3:Yes)と判断すると、油圧制御処理は、ステップS4に移行する。一方、ステップS3で検出値が荷重閾値以上である(ステップS3:No)と判断すると、油圧制御処理は、ステップS5に移行する。
ステップS4では、第一モード移行処理を実行して、油圧制御処理をステップS1に戻す。第一モード移行処理は、第一モード用の制御信号を回路切換弁50に送るための処理である。
ステップS5では、第二モード移行処理を実行して、油圧制御処理をステップS1に戻す。第二モード移行処理は、第二モード用の制御信号を回路切換弁50に送るための処理である。
【0041】
<動作>
次に、油圧制御装置10の動作について説明する。
ロッド13を縮小させる際には、ポンプ機構2から吐出された圧油が、第二サービスポート4bから回路切換弁50を介して縮室15に入る。これに加え、伸室14の圧油が、回路切換弁50を介して第一サービスポート4aからタンクポート4dへと排出される。
【0042】
一方、ロッド13を伸長させる際には、コントローラ30は、ロードセル20が検出した荷重の検出値と荷重閾値との比較に応じて、第一モード用の制御信号、又は、第二モード用の制御信号を出力する。
【0043】
そして、コントローラ30が出力した制御信号が第一モード用の制御信号であるとき、ソレノイドバルブ52が通電状態となり、回路切換弁50は、回生回路43における圧油の流路を、圧油を縮室15から伸室14に回生させる流路に切り換える(図4参照)。
このため、コントローラ30が出力した制御信号が第一モード用の制御信号であるときは、縮室15から排出される圧油が、回生回路43を経由し、ポンプ機構2が吐出した圧油と合流して、伸室14に入る。
なお、図4には、ポンプ機構2から吐出されて伸回路41へ入る圧油の流れを、矢印F1で示す。また、図4には、縮室15からシリンダ側縮回路42sへ入る圧油の流れを、矢印F2で示す。さらに、図4には、シリンダ側縮回路42sから、第一接続ポート51aと第二接続ポート51bとを経由し、回生回路43を介して伸回路41に入る圧油の流れを、矢印F3で示す。これに加え、図4には、ポンプ機構2から吐出されて伸回路41へ入る圧油と、シリンダ側縮回路42sから回生回路43を介して伸回路41に入る圧油とが合流して、伸室14に入る圧油の流れを、矢印F4で示す。
【0044】
また、コントローラ30が出力した制御信号が第一モード用の制御信号であるとき、ポンプ機構2は、ロッド13を伸長させる際に、縮室15から伸室14に回生する圧油の流量に応じて、圧油供給量を、コントローラ30が出力した制御信号が第二モード用の制御信号であるときよりも減少させる。
これにより、コントローラ30が出力した制御信号が第二モード用のときと同じ速度でブームが伸長するように、縮室15から伸室14に回生する圧油の流量に応じて、圧油供給量を、コントローラ30が出力した制御信号が第二モード用のときよりも減少させる。
【0045】
一方、コントローラ30が出力した制御信号が第二モード用の制御信号であるとき、ソレノイドバルブ52は非通電状態となる。このため、回路切換弁50は、ロッド13を伸長させる際に、回生回路43における圧油の流路を、縮室15から伸室14への圧油の供給を遮断する流路に切り換える(図2参照)。
このため、コントローラ30が出力した制御信号が第二モード用の制御信号であるとき、縮室15から排出される圧油は、回生回路43に流入せず、縮回路42を介してタンク3に戻る。
したがって、コントローラ30が出力した制御信号が第二モード用の制御信号であるとき、回生回路43への圧油の流入を遮断して、通常の速度でロッド13が伸長する。
なお、図2には、ポンプ機構2から吐出されて伸回路41へ入る圧油の流れを、矢印F5で示す。また、図2には、縮室15からシリンダ側縮回路42sへ入る圧油の流れを、矢印F6で示す。さらに、図2には、シリンダ側縮回路42sから、第一接続ポート51aと第三接続ポート51cとを経由し、タンク側縮回路42tを介して第一サービスポート4aに入る圧油の流れを、矢印F7で示す。
【0046】
また、コントローラ30が出力した制御信号が第二モード用の制御信号であるとき、ポンプ機構2は、ロッド13を伸長させる際に、通常の速度でブームが動作するように、圧油供給量を変化させる。
これにより、コントローラ30が出力した制御信号が第二モード用のときは、コントローラ30が出力した制御信号が第一モード用のときと同じ速度でブームが伸長するように、圧油供給量を変化させる。
【0047】
<第一実施形態の作用及び効果>
第一実施形態の油圧制御装置10であれば、以下の作用及び効果を奏することが可能である。
(1)ブームが受ける荷重を検出するロードセル20と、ロードセル20が検出した荷重の検出値と荷重閾値との比較に応じた制御信号を出力するコントローラ30を備える。さらに、ブーム伸縮用シリンダ1へ供給した圧油を縮室15から伸室14にのみ回生させる回生回路43と、コントローラ30が出力した制御信号に応じて回生回路43における圧油の流路を切り換える回路切換弁50を備える。これに加え、制御信号に応じて圧油供給量を変化させるポンプ機構2を備える。そして、コントローラ30は、検出値が荷重閾値未満であると判断したときは第一モード用の制御信号を回路切換弁50とポンプ機構2へ出力し、検出値が荷重閾値以上であると判断したときは第二モード用の制御信号を回路切換弁50とポンプ機構2へ出力する。また、回路切換弁50は、制御信号が第一モード用のときは、回生回路43における圧油の流路を、圧油を縮室15から伸室14に回生させる流路に切り換え、制御信号が第二モード用のときは、回生回路43における圧油の流路を、縮室15から伸室14への圧油の供給を遮断する流路に切り換える。さらに、ポンプ機構2は、制御信号が第一モード用のときは、制御信号が第二モード用のときと同じ速度でブームが伸長するように、縮室15から伸室14に回生する圧油の流量に応じて、圧油供給量を、制御信号が第二モード用のときよりも減少させる。また、ポンプ機構2は、制御信号が第二モード用のときは、制御信号が第一モード用のときと同じ速度でブームが伸長するように、圧油供給量を変化させる。
【0048】
このため、制御信号が第一モード用のときは、ブームを伸長させる速度が、制御信号が第二モード用のときと同じ速度となるように、ブーム伸縮用シリンダ1へ供給する圧油の供給量を減少させる。これにより、クレーンを用いた作業の効率を低下させることなく、作業車両のアクセル回転と連動しているポンプ機構(ポンプ)の回転数を、低下させることが可能となる。
例えば、チューブ11の内径を「X」と定義し、ロッド13の外径を「Y」と定義すると、制御信号が第一モード用のときは、縮室15から伸室14に回生する圧油の流量と、圧油供給量との比率が、「X-Y:X」となる。このとき、圧油供給量を、制御信号が第二モード用のときの「X/(2X-Y)(<1)」倍とする。すると、縮室15から伸室14に回生する圧油の流量は、制御信号が第二モード用のときの圧油供給量の「(X-Y)/(2X-Y)」倍となる。
したがって、制御信号が第一モード用のときにブーム伸縮用シリンダ1へ供給する圧油の合計量は、「(X-Y)/(2X-Y)+X/(2X-Y)=1」倍となり、制御信号が第二モード用のときとブーム伸縮用シリンダ1へ供給する圧油の供給量が等しくなる。すなわち、制御信号が第一モード用のときは、ブームを伸長させる速度を低下させることなく、圧油供給量を減少させることが可能となる。
そして、例えば、X:Y=4:3の関係が成立している場合、制御信号を第二モード用から第一モード用へ切り換えるときに、圧油供給量を、「23」から「16」に減少させる。すると、縮室15から伸室14に回生する圧油の流量は「7」となり、タンク3からブーム伸縮用シリンダ1へ供給される圧油と合わせて、制御信号が第二モード用のとき等しい供給量である「23」が、ブーム伸縮用シリンダ1へ供給される。
その結果、燃費の低下を抑制することが可能な油圧制御装置10を提供することが可能となる。
また、例えば、チューブ11の内径を「X」と定義し、ロッド13の外径を「Y」と定義すると、制御信号が第一モード用のときに、圧油供給量を、制御信号を第二モード用のときと等しくすると、伸室14に回生する圧油の圧力は、制御信号を第二モード用のときと比較して「X/Y(>1)」倍となる。そして、伸室14への圧油の圧力がクレーンの定格圧力を超えた場合、伸室14への圧油の圧力が定格圧力以下となるまで、リリーフ制御弁8によって、圧油がタンク3へ排出されてしまい、クレーンを用いた作業の燃費が低下する。
これに対し、第一実施形態の油圧制御装置10であれば、制御信号が第一モード用のときは、ブームを伸長させる速度が、制御信号が第二モード用のときと同じ速度となるように、ブーム伸縮用シリンダ1へ供給する圧油の供給量を減少させる。これにより、クレーンを用いた作業の効率を低下させることなく、燃費の低下を抑制することが可能となる。
【0049】
(2)ポンプ機構2は、制御信号が第一モード用のときは、圧油供給量と、縮室15から伸室14に回生する圧油の流量との合計が、制御信号が第二モード用のときにタンク3からブーム伸縮用シリンダ1へ供給される圧油の量と等しくなるように、圧油供給量を変化させる。
その結果、制御信号が第一モード用のときは、制御信号が第二モード用のときにタンク3からブーム伸縮用シリンダ1へ供給される圧油の量と、縮室15から伸室14に回生する圧油の流量に応じた分、圧油供給量を減少させて、燃費の低下を抑制することが可能となる。
【0050】
(3)ポンプ機構2は、作業車両が備えるエンジンの回転数を変化させるアクセル機構と連動して動作する。
その結果、新たな構成を追加することなく、作業車両に既存の構成であるアクセル機構(アクセルコントロールユニット5)を用いて、制御信号が第一モード用のときは、燃費の低下を抑制することが可能となる。
【0051】
<第一実施形態の変形例>
(1)第一実施形態では、ロードセル20が検出した荷重の大きさに応じて、回生回路43における圧油の流路を切り換える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、荷重閾値を、クレーンの吊り荷が無い状態における、ロードセル20の検出値を超える値として設定し、クレーンによる吊り荷の有無に応じて、回生回路43における圧油の流路を切り換える構成としてもよい。
具体的には、ロッド13を伸長させる操作において、吊り荷が有る(ロードセル20の検出値が「0」よりも大きい)と判断したときは、第二モード用の制御信号を回路切換弁50へ出力する構成とする。なお、ロードセル20の検出値が「0」よりも大きいと判断したときとは、例えば、ロードセル20の検出値が不感帯領域を超えたと判断したときである。
【0052】
また、ロッド13を伸長させる操作において、吊り荷が無い(ロードセル20の検出値が「0」である)と判断したときには、第一モード用の制御信号を回路切換弁50へ出力する構成とする。なお、ロードセル20の検出値が「0」であると判断したときとは、例えば、ロードセル20の検出値が不感帯領域未満であると判断したときである。
なお、「不感帯領域」とは、ロードセル20の検出値に、フリクションの変動、振動、慣性等に応じてバラツキが発生する状況を考慮して設定された領域であり、実質的には、吊り荷が無い状態と判断することが可能な検出値の範囲である。
【0053】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から、当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
その他、上記の実施形態において説明される各構成を任意に応用した構成等、本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ、定められるものである。
【0054】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることが可能である。
(1)
クレーンが備えるブームが受ける荷重を検出するロードセルと、
前記ロードセルが検出した荷重の検出値と予め設定した荷重閾値との比較に応じた制御信号を出力するコントローラと、
前記ブームを伸縮させるブーム伸縮用シリンダへ供給した圧油を縮室から伸室にのみ回生させる回生回路と、
前記コントローラが出力した制御信号に応じて前記回生回路における前記圧油の流路を切り換える回路切換弁と、
前記制御信号に応じて前記ブーム伸縮用シリンダへの圧油供給量を変化させるポンプ機構と、を備え、
前記コントローラは、
前記検出値が前記荷重閾値未満であると判断したときは第一モード用の前記制御信号を前記回路切換弁と前記ポンプ機構へ出力し、
前記検出値が前記荷重閾値以上であると判断したときは第二モード用の前記制御信号を前記回路切換弁と前記ポンプ機構へ出力し、
前記回路切換弁は、
前記制御信号が前記第一モード用のときは、前記回生回路における前記圧油の流路を、前記圧油を前記縮室から前記伸室に回生させる流路に切り換え、
前記制御信号が前記第二モード用のときは、前記回生回路における前記圧油の流路を、前記縮室から前記伸室への前記圧油の供給を遮断する流路に切り換え、
前記ポンプ機構は、
前記制御信号が前記第一モード用のときは、前記制御信号が前記第二モード用のときと同じ速度で前記ブームが伸長するように、前記縮室から前記伸室に回生する前記圧油の流量に応じて、前記圧油供給量を、前記制御信号が前記第二モード用のときよりも減少させ、
前記制御信号が前記第二モード用のときは、前記制御信号が前記第一モード用のときと同じ速度で前記ブームが伸長するように、前記圧油供給量を変化させる油圧制御装置。
(2)
前記ポンプ機構は、前記制御信号が前記第一モード用のときは、前記圧油供給量と、前記縮室から前記伸室に回生する前記圧油の流量と、の合計が、前記制御信号が前記第二モード用のときに前記ブーム伸縮用シリンダへ供給される前記圧油の量と等しくなるように、前記圧油供給量を変化させる前記(1)に記載した油圧制御装置。
(3)
前記クレーンは、車両に搭載され、
前記ポンプ機構は、前記車両が備えるエンジンの回転数を変化させるアクセル機構と連動して動作する前記(1)又は(2)に記載した油圧制御装置。
(4)
前記荷重閾値は、前記クレーンの吊り荷が無い状態における前記検出値を超える値である前記(1)~(3)のいずれかに記載した油圧制御装置。
【符号の説明】
【0055】
1 ブーム伸縮用シリンダ
11 チューブ
12 ピストン
13 ロッド
14 伸室
15 縮室
2 ポンプ機構
3 タンク
4 制御弁
4a 第一サービスポート
4b 第二サービスポート
4c ポンプポート
4d タンクポート
5 アクセルコントロールユニット
6 第一油路
7 第二油路
8 リリーフ制御弁
10 油圧制御装置
20 ロードセル
30 コントローラ
40 油圧制御回路
41 伸回路
42 縮回路
42s シリンダ側縮回路
42t タンク側縮回路
43 回生回路
50 回路切換弁
51 弁本体
51a 第一接続ポート
51b 第二接続ポート
51c 第三接続ポート
52 ソレノイドバルブ
図1
図2
図3
図4
図5