IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コークス炉の操業方法 図1
  • 特開-コークス炉の操業方法 図2
  • 特開-コークス炉の操業方法 図3
  • 特開-コークス炉の操業方法 図4
  • 特開-コークス炉の操業方法 図5
  • 特開-コークス炉の操業方法 図6
  • 特開-コークス炉の操業方法 図7
  • 特開-コークス炉の操業方法 図8
  • 特開-コークス炉の操業方法 図9
  • 特開-コークス炉の操業方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024909
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】コークス炉の操業方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 33/06 20060101AFI20240216BHJP
   C10B 41/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C10B33/06
C10B41/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127892
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】有村 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】飯盛 翔太
(57)【要約】
【課題】コークスの押詰の発生を抑制することのできるコークス炉の操業方法を提供する。
【解決手段】コークス炉の操業方法は、測定工程(#5)と、算出工程(#10)と、判定工程(#15)と、押出工程(#20)と、を備える。測定工程(#5)では、ラムヘッド(12)の幅(H)を測定する。算出工程(#10)では、下記の式(1)で表される指標(A)の値を算出する。判定工程(#15)では、コークスを押し出す前に、指標(A)の値が下記の式(2)を満たすか否かを判定する。押出工程(#20)では、指標(A)の値が下記の式(2)を満たさない場合には、下記の式(2)が満たされるようにラムヘッド(12)の形状を修正し、修正したラムヘッド(12)を含む押出機(10)を用いてコークスを押し出す。
A=0.5×(W-H) (1)
A≦A (2)
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉長方向に延びるラムビームと、前記ラムビームの先端に固定されたラムヘッドと、前記ラムビームの下方に配置され、前記ラムビームと一体化されたスライドシューと、前記ラムビームを前記炉長方向に移動させる力を与える機関と、を含む押出機を用いて、炭化室内のコークスを前記炭化室から押し出す、コークス炉の操業方法であって、
前記ラムヘッドの幅Hを測定する測定工程と、
前記炭化室の幅がWであるとき、下記の式(1)で表される指標Aの値を算出する、算出工程と、
前記押出機で前記コークスを押し出す前に、前記算出工程で算出した指標Aの値が、所定の閾値をAとしたとき、下記の式(2)を満たすか否かを判定する、判定工程と、
前記算出工程で算出した指標Aの値が下記の式(2)を満たす場合には、前記押出機を用いて前記コークスを押し出し、下記の式(2)を満たさない場合には、下記の式(2)が満たされるように前記ラムヘッドの形状を修正し、修正したラムヘッドを含む前記押出機を用いて前記コークスを押し出す、押出工程と、を備える、コークス炉の操業方法。
A=0.5×(W-H) (1)
A≦A (2)
【請求項2】
請求項1に記載のコークス炉の操業方法であって、
前記閾値Aは、前記コークスの平均粒径をDとしたとき、下記の式(3)を満たす、コークス炉の操業方法。
1.3×D≦A≦1.6×D (3)
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコークス炉の操業方法であって、
前記押出工程において、前記算出工程で算出した指標Aの値が上記の式(2)を満たさない場合、上記の式(2)が満たされるように、肉盛溶接により、前記ラムヘッドの形状を修正する、コークス炉の操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コークス炉の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄に用いるコークスは、原料となる石炭をコークス炉に装入し、石炭を高温で乾留することにより製造される。コークス炉は、例えば室炉式コークス炉である。コークス炉は、石炭をコークス化する炭化室と、炭化室に熱を供給する燃焼室とが交互に並列した構造を有し、炭化室と燃焼室とは、煉瓦で構成された炉壁で区切られている。燃焼室の内部で燃料ガスが燃焼し、炉壁の熱伝導により、燃焼室の熱が炭化室に供給される。炭化室には、常温の石炭が装入される。炭化室内の石炭は、燃焼室からの熱により炭化が促進し、乾留されてコークスとなる。炭化室の両端には、それぞれ窯口が設けられている。炭化室内のコークスは、押出機により炭化室から押し出される。具体的には、炭化室内のコークスは、押出機により炭化室の一方の窯口から他方の窯口に向かって押されて、炉外に排出される。排出されたコークスは、ガイド車により消火車に案内され、消火車で搬送される。以下では、炭化室の一方の窯口を「押出機側窯口」、他方の窯口を「ガイド車側窯口」とも言う。
【0003】
押出機は、例えば、押出機側窯口からガイド車側窯口に沿って延びるラムビームと、ラムビームの先端に固定されたラムヘッドと、ラムビームの下方に配置され、ラムビームと一体化されたスライドシューと、を備える。コークスの押出中、ラムヘッドはコークスと接触する。その際、ラムヘッドは、押出機の駆動力をコークスに伝達する。スライドシューは、コークスの押出中、炉底と摺動しながらラムビームを支持する。
【0004】
炭化室及び燃焼室は、それぞれ押出機側窯口からガイド車側窯口に向かう方向に沿って延在する。以下では、炭化室及び燃焼室の延在する方向を、「炉長方向」とも言う。炭化室及び燃焼室の炉長方向における寸法は、例えば十数メートルにおよぶ。ここで、コークスの押出中には、コークスと炉壁との間に摩擦力が生じ、コークスと炉底との間に摩擦力が生じる。以下では、炉壁及び炉底を総称して「炉面」とも言う。特に、コークスが十分に乾留されていない場合や、炉壁の煉瓦に凹凸がある場合には、コークスに対して過大な摩擦抵抗が発生する。このような場合には、コークスの押出性が悪化する。
【0005】
コークスの押出性が過度に悪化すると、炉壁が損傷したり、炉壁が大規模に崩壊したりするおそれがあり、場合によってはコークスの押詰が発生するおそれがある。コークスの押詰とは、炭化室内のコークスの押出中、押出機に作用する反力が急激に大きくなり、押出機がコークスを押し出すことができなくなって、コークスが炭化室内で停止してしまう事態を指す。コークスの押詰が発生した場合には、コークス炉を停止して、手作業で炭化室内のコークスを排出し、その後炉壁の補修を行う。そのため、コークスの押詰が発生すると、コークスの生産性が低下する上、補修のコストが増加する。
【0006】
従来、炭化室内のコークスの押出中に押出機に作用する反力を低減するために、押出機のラムヘッドを特殊な形状にする技術が知られている。例えば、特許文献1には、先端を凹形状としたラムヘッドが開示されている。特許文献1では、凹形状のラムヘッドの溝部深さを好適な値とすることにより、コークスに炭化室中心方向(炉壁から離れる方向)への力を作用させ、コークスと炉壁との間の摩擦力を低減している。また、特許文献2には、空隙部を含むラムヘッドが開示されている。特許文献2では、ラムヘッドの水平断面において、空隙部の幅は、押出機側の炭化室幅とラムヘッドの幅との差よりも大きい。このラムヘッドを用いてコークスの押し出しを行うことにより、コークスは、炉壁から炭化室幅の1/4の距離の位置よりも炉壁側を押される。この場合、コークスに炭化室中央側への回転モーメントが生じ、コークスが炉壁と接触し摩擦抵抗が発生することがない、と特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-213267号公報
【特許文献2】特開平6-271857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
押出機を用いてコークスの押し出しを繰り返し行うと、押出機のラムヘッドはしだいに損耗する。ラムヘッドの損耗が進行すれば、時折コークスの押詰が発生する。
【0009】
本開示の目的は、コークスの押詰の発生を抑制することのできるコークス炉の操業方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る操業方法は、押出機を用いて、炭化室内のコークスを炭化室から押し出す、コークス炉の操業方法である。押出機は、ラムビームと、ラムヘッドと、スライドシューと、ラムビームを炉長方向に移動させる力を与える機関と、を含む。ラムビームは、炉長方向に延びる。ラムヘッドは、ラムビームの先端に固定される。スライドシューは、ラムビームの下方に配置され、ラムビームと一体化される。本開示に係る操業方法は、測定工程と、算出工程と、判定工程と、押出工程と、を備える。測定工程では、ラムヘッドの幅Hを測定する。算出工程では、炭化室の幅がWであるとき、下記の式(1)で表される指標Aの値を算出する。判定工程では、押出機でコークスを押し出す前に、算出工程で算出した指標Aの値が、所定の閾値をAとしたとき、下記の式(2)を満たすか否かを判定する。押出工程では、算出工程で算出した指標Aの値が下記の式(2)を満たす場合には、上述した押出機を用いてコークスを押し出す。押出工程では、指標Aの値が下記の式(2)を満たさない場合には、下記の式(2)が満たされるようにラムヘッドの形状を修正し、修正したラムヘッドを含む押出機を用いてコークスを押し出す。
A=0.5×(W-H) (1)
A≦A (2)
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るコークス炉の操業方法によれば、コークスの押詰の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、コークス炉の押出波形の一例を示す図である。
図2図2は、コークス炉の押出波形の一例を示す図である。
図3図3は、コークス炉の押出波形の一例を示す図である。
図4図4は、コークス炉の全体構成を示す模式図である。
図5図5は、図4の線V-Vにおける断面図である。
図6図6は、押出機の側面図である。
図7図7は、実施形態に係るコークス炉の操業方法を示すフロー図である。
図8図8は、炭化室内の様子を示す模式図である。
図9図9は、実施例の結果を示す図である。
図10図10は、実施例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、コークス炉における押出性が悪化する要因について検討し、コークスの押出中に押出機に作用する反力に着目した。押出機に作用する反力は、押出機を駆動するモータのトルクに相当し、以下、「押出負荷」とも言う。具体的には、本発明者らは、押出機のラムヘッドの移動量に応じて検出される押出負荷の推移(以下、「押出波形」とも言う。)から、コークスの押出中における炉内異常(押詰等)の兆候を認識できることを見出した。
【0014】
図1は、コークス炉の押出波形の一例を示す図である。図1には、炉内が健全な状態のときの押出波形が示される。炉内が健全な状態とは、コークスの押詰等のような異常が発生せず、コークスの押し出しが円滑に行われる状態を指す。図1に示す押出波形は、例えば、新設されたコークス炉を用いたときの押出波形である。
【0015】
図1において、横軸は押出機側窯口を基準としたラムヘッドの位置、すなわち、炭化室の押出機側窯口からのラムヘッドの移動量を示す。図1において、ラムヘッドの移動量は、押出機側窯口からの実測値で示されている。これは、後述する図2及び図3においても同様である。
【0016】
図1において、縦軸は押出負荷を示す。押出負荷は、押出機の設備損傷防止や炉体保護の観点から定められている押出負荷の上限値を1.0としたときの相対値で示されている。つまり、押出負荷は、押出負荷の上限値に対する相対値で示されている。これは、後述する各図においても同様である。
【0017】
炭化室内のコークスは、乾留された後、押出機により炭化室の一方の窯口から他方の窯口に向かって押される。コークスは、押出機により押され始めると、押出機のラムヘッドによって押し潰され、全体が圧縮される。このとき、コークスと炉面との間には静止摩擦力がはたらき、コークスは静止している。その後、押出負荷が大きくなると、コークスと炉面との間の摩擦力が最大値(最大静止摩擦力)に達し、コークスが移動を開始する。コークスが移動を開始すると、コークスは最大静止摩擦力よりも小さい動摩擦力を受ける。そのため、押出負荷は最大値に達した後、急激に低下する。
【0018】
以下では、押出波形において、押出負荷が急激に上昇し始めてから、押出負荷が最大値に達した後の押出負荷の急激な低下が完了するまでの期間、すなわち、押出波形の山に相当する部分を、押出負荷の「ピーク」と言う。コークスの押し出しを開始して最初に発現するピークを、押出負荷の「初期ピーク」と言う。図1に示す押出波形の例では、ラムヘッドの移動量が0から0.9mまでの期間に初期ピークが発現している。また、ピークの中で押出負荷が最大値に達したときの押出負荷の値を「ピーク値」と言う。初期ピークにおけるピーク値は、コークスと炉面との間の最大静止摩擦力に相当する。図1に示す押出波形の例では、ラムヘッドの移動量が約0.6mのときに押出負荷が最大値に達しており、ピーク値は0.15である。
【0019】
一方、コークスが移動を開始すると、ラムヘッドの移動量が大きくなるにつれてコークスは炭化室のガイド車側窯口から排出される。すると、炭化室内のコークスの量はしだいに減少し、ラムヘッドがコークスを押すのに必要な荷重は小さくなる。つまり、押出負荷がしだいに軽減される。そのため、健全な炉の場合、図1に示す押出波形からも明らかなように、初期ピーク以降の押出負荷は、ラムヘッドの移動量が大きくなるにつれて実質的に小さくなる。
【0020】
ここで、新設されたコークス炉では、初期ピークでのピーク値は非常に小さい。一方、老朽化したコークス炉では、初期ピークでのピーク値は大きくなる。これは、コークス炉の老朽化に伴い炭化室の炉面が損耗し、コークスと炉面との間にはたらく摩擦力が大きくなることや、燃焼不良や伝熱の悪化によるコークスの乾留不良が発生しやすくなるためと考えられる。
【0021】
図2は、コークス炉の押出波形の一例を示す図である。図2には、コークス炉の老朽化が進行し、炉壁が一部で膨らんでいたとき、又は炉壁の迫出しが発生したときの押出波形が示される。図2に示す押出波形では、初期ピークでのピーク値は、図1に示す押出波形の初期ピークでのピーク値と比較して大きい。さらに、初期ピーク以降の押出負荷は、ラムヘッドの移動量が約2.0~6.5mの範囲において、ラムヘッドの移動量が大きくなってもしばらく高い状態に維持されている。これは、老朽化が進行したコークス炉では、炉内が健全な状態のコークス炉と比較して、コークスと炉面との間にはたらく動摩擦力が大きいからと考えられる。
【0022】
ただし、一般に、炭化室には水平テーパが設けられている。要するに、炭化室の幅は、押出機側窯口からガイド車側窯口に向かうにつれて大きくなる。この炭化室の水平テーパにより、コークスの押出中にラムヘッドの移動量が大きくなるにつれて、コークスと炉壁とのクリアランスは大きくなる。そのため、コークス炉の老朽化が多少進行し、炉壁の膨らみ又は迫出しが発生したとしても、焼減りが十分で堅牢なコークスであれば、図2に示すように、初期ピーク以降にラムヘッドの移動がある程度進み、ラムヘッドの移動量が約6.5m以降では、ラムヘッドの移動量が大きくなるにつれて押出負荷が徐々に低下する。
【0023】
以上、図1及び図2を参照して、コークス炉に異常が発生していないときの押出波形について説明した。本発明者らは、コークス炉に異常が発生しているときの押出波形に着目して鋭意検討した。その結果、本発明者らは、コークス炉の異常発生時、初期ピークでのピーク値(コークスと炉面との間の最大静止摩擦力)が非常に大きくなるだけでなく、後述する図3の押出波形に示すように、実押出期間における押出負荷のピークの発現又は初期ピーク以降の大幅な波形変化が起こることを突き止めた。実押出期間とは、コークス押出開始から押出完了までの期間のうち、押出負荷の初期ピークが発現した以降の、炭化室内のコークスの排出が進行中の期間を意味する。
【0024】
図3は、コークス炉の押出波形の一例を示す図である。図3には、コークス炉に異常が発生しているときの押出波形が示される。コークス炉に異常が発生している場合、初期ピーク以降の押出負荷は、低下することなくすぐに再上昇することがある。図3に示す例では、ラムヘッドの移動量が約4.0~9.5mの範囲で押出負荷が上昇している。本発明者らは、このような押出波形の場合、高確率でコークスの押詰が発生することを突き止めた。さらに、本発明者らは、図3に示すような異常な押出波形を発生させる要因は、コークスの押出中に押出機のラムヘッドと炉壁の間からこぼれ落ち、炉内に残留したコークス塊であることを新たに見出した。
【0025】
コークス塊が炉内にこぼれ落ちると、コークス塊は押出機のスライドシュー前方の炉底に堆積する。つまり、コークス塊がラムヘッドとスライドシューとの間に堆積する。そのため、炉底と摺動するスライドシューとコークス塊との間に摩擦力が生じ、押出負荷が上昇する。また、スライドシューが炉底に堆積したコークス塊を乗り上げることにより、機械的な負荷が発生する。
【0026】
炭化室の幅に対してラムヘッドの幅が小さい場合、ラムヘッドと炉壁との間のクリアランスが大きいため、コークス塊はラムヘッドと炉壁との間からこぼれ落ちやすくなる。そのため、損耗によりラムヘッドの幅が小さくなると、コークス塊が炉内にこぼれ落ちやすくなり、押出負荷が上昇する。したがって、コークスの押出中、押出機のラムヘッドには、コークス塊ができるだけ炉内にこぼれ落ちないようにすることが求められる。
【0027】
本開示の実施形態に係るコークス炉の操業方法は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0028】
実施形態に係る操業方法は、押出機を用いて、炭化室内のコークスを炭化室から押し出す、コークス炉の操業方法である。押出機は、ラムビームと、ラムヘッドと、スライドシューと、ラムビームを炉長方向に移動させる力を与える機関と、を含む。ラムビームは、炉長方向に延びる。ラムヘッドは、ラムビームの先端に固定される。スライドシューは、ラムビームの下方に配置され、ラムビームと一体化される。実施形態に係る操業方法は、測定工程と、算出工程と、判定工程と、押出工程と、を備える。測定工程では、ラムヘッドの幅Hを測定する。算出工程では、炭化室の幅がWであるとき、下記の式(1)で表される指標Aの値を算出する。判定工程では、押出機でコークスを押し出す前に、算出工程で算出した指標Aの値が、所定の閾値をAとしたとき、下記の式(2)を満たすか否かを判定する。押出工程では、算出工程で算出した指標Aの値が下記の式(2)を満たす場合には、上述した押出機を用いてコークスを押し出す。押出工程では、指標Aの値が下記の式(2)を満たさない場合には、下記の式(2)が満たされるようにラムヘッドの形状を修正し、修正したラムヘッドを含む押出機を用いてコークスを押し出す(第1の構成)。
A=0.5×(W-H) (1)
A≦A (2)
【0029】
第1の構成のコークス炉の操業方法では、算出工程において、測定工程で測定したラムヘッドの幅Hを用いて、上記の式(1)から指標Aの値を算出する。この指標Aの値は、このラムヘッドを用いてコークスの押し出しを行った場合の、ラムヘッドと一方の炉壁との間のクリアランスに実質的に相当する。判定工程では、コークスの押し出しを開始する前に、上記の式(2)が満たされているか否かを判定する。言い換えると、判定工程では、ラムヘッドと炉壁とのクリアランスを指標Aとし、指標Aの値が、所定の閾値A以下であるか否かを判定する。指標Aが閾値A以下であれば、ラムヘッドの幅が適切な状態であり、ラムヘッドと炉壁とのクリアランスが適度に小さい。
【0030】
押出工程では、判定工程において上記の式(2)が満たされていると判定された場合、ラムヘッドの形状を修正せずに、上述した押出機を用いてコークスを押し出す。一方、判定工程において上記の式(2)が満たされていないと判定された場合には、ラムヘッドの形状を上記の式(2)を満たすように修正し、修正後の押出機を用いてコークスを押し出す。要するに、判定工程では、ラムヘッドの形状を修正する必要があるか否か、すなわち、ラムヘッドが損耗しているかどうかを判定する。ラムヘッドが損耗している場合、そのラムヘッドの形状を補修等により修正して、その後コークスを押し出す。このように、第1の構成の操業方法によれば、損耗したラムヘッドの使用を回避することができ、これにより、コークスの押出中、コークス塊がラムヘッドと炉壁との間からこぼれ落ちにくくなる。このため、コークスの押出中における押出負荷を低減することができる。したがって、第1の構成の操業方法によれば、コークスの押詰の発生を抑制することができる。
【0031】
第1の構成に係るコークス炉の操業方法において、好ましくは、閾値Aは、コークスの平均粒径をDとしたとき、下記の式(3)を満たす(第2の構成)。
1.3×D≦A≦1.6×D (3)
【0032】
第2の構成の操業方法では、ラムヘッドと炉壁との間のクリアランスの閾値Aを上記の式(3)を満たすように設定する。式(3)は、閾値Aがコークスの平均粒径Dの1.3倍以上、1.6倍以下の範囲内で設定されることを意味する。第2の構成の操業方法では、押出工程において、ラムヘッドと炉壁との間のクリアランスがコークスの平均粒径との関係である程度大きい場合に、ラムヘッドの補修を行う。ラムヘッドの形状を修正し、ラムヘッドの幅Hを大きくすれば、コークスの押出中にラムヘッドと炉壁との間からこぼれ落ちるコークス塊をより確実に低減できる。したがって、第2の構成の操業方法によれば、コークスの押詰の発生をさらに抑制することができる。
【0033】
第1又は第2の構成の操業方法では、押出工程において、算出工程で算出した指標Aの値が上記の式(2)を満たさない場合、上記の式(2)が満たされるように、肉盛溶接により、ラムヘッドの形状を修正してもよい(第3の構成)。第3の構成の操業方法では、押出工程において、押出機のラムヘッドが損耗していた場合、すなわち、ラムヘッドを補修する必要がある場合、ラムヘッドに肉盛溶接を施す。これにより、ラムヘッドの幅Hを、新品のラムヘッドの幅と同程度の大きさに修正することができる。したがって、第3の構成の操業方法によれば、コークスの押詰の発生を抑制することができる。
【0034】
以下、本開示の実施形態に係るコークス炉の操業方法について、図面を参照しながら説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0035】
[コークス炉]
図4及び図5を参照して、コークス炉の全体構成を説明する。図4は、コークス炉の全体構成を示す模式図である。図5は、図4の線V-Vにおける断面図である。つまり、図5は、炉長方向に垂直な断面図である。コークス炉は、炭化室80と燃焼室90とが交互に並列した構造を有する。炭化室80には、常温の石炭が投入される。燃焼室90は、炭化室80に熱を供給する。燃焼室90から供給された熱により、炭化室80内の石炭は乾留されてコークスとなる。コークスは、押出機10によって炭化室80の押出機側窯口81からガイド車側窯口82に向かって押されて、炭化室80から排出される。排出されたコークスは、図示しないガイド車により消火車70に案内される。その後、コークスは消火車70で次工程に搬送される。
【0036】
炭化室80及び燃焼室90は、天井部83と、炉底84とにより構成される。隣接する炭化室80と燃焼室90とは、炉壁85で区切られている。これらの炉壁85は、それぞれ天井部83と炉底84とを接続する。炭化室80の各々の天井部83には、石炭を装入するための装炭口86が設けられる。装炭口86は天井部83を貫通する。
【0037】
[押出機]
図6は、押出機10の側面図である。図6を参照して、押出機10は、ラムビーム11と、ラムヘッド12と、スライドシュー13と、モータ14と、を含む。ラムビーム11は、炉長方向に延びる。ラムビーム11の上部には、ラックギア15が設けられている。ラックギア15は、炉長方向に延在する。
【0038】
ラムヘッド12は、ラムビーム11の先端に固定される。ラムヘッド12は、例えば一般構造用圧延鋼材(SS材)で構成される。ラムヘッド12の高さhは、押出機10の駆動力をコークスに伝達可能なように適宜設定される。ラムヘッド12の高さhは、例えば6.0mである。
【0039】
スライドシュー13は、ラムビーム11の下方に配置され、ラムビーム11と一体化されている。コークス炉が大型化すると、コークス炉内のコークスを押し出すための押出機10の全長(ラムビーム11の炉長方向の長さ)も大きくなる。スライドシュー13は、ラムビーム11が下方にたわむのを防止するために設けられる。典型的には、スライドシュー13は、ラムビーム11の先端付近に配置される。
【0040】
モータ14には、ピニオンギア16が接続されている。ピニオンギア16は、モータ14の駆動力で回転する。ピニオンギア16は、減速機17を介してモータ14と接続されている。ピニオンギア16は、ラックギア15と噛み合いながら回転することにより、ラムビーム11を炉長方向に移動させる。モータ14は、ラムビーム11に対し、炉長方向に移動させる力を与える機関である。
【0041】
[操業方法]
本実施形態に係る操業方法は、押出機10を用いて炭化室80内のコークスを炭化室80から押し出す、コークス炉の操業方法である。図7は、本実施形態に係るコークス炉の操業方法を示すフロー図である。図7を参照して、本実施形態の操業方法は、測定工程(#5)と、算出工程(#10)と、判定工程(#15)と、押出工程(#20)と、を備える。
【0042】
測定工程(#5)では、ラムヘッド12の幅Hを測定する。具体的には、高さhのラムヘッド12のうち、ラムヘッド12の下端からh/3までの範囲における幅の平均をラムヘッド12の幅Hとする。ラムヘッド12の幅Hの測定方法は特に限定されるものではないが、3次元レーザー測定器を用いてもよい。
【0043】
図8は、炭化室80内の様子を示す模式図である。図8は、押出機10を用いてコークスを押し出す際の、炭化室80内の様子を水平断面で示す。図8において、押出機側窯口81(図4)が下方に位置し、ガイド車側窯口82(図4)が上方に位置している。図8では、説明の便宜上、コークスの図示を省略する。
【0044】
算出工程(#10)では、上記の式(1)で表される指標Aの値を算出する。(1)式から、指標Aの値は、炭化室80の幅Wと測定工程(#5)で測定したラムヘッド12の幅Hとの差を2で除して算出される。指標Aの値は、図8に示す通り、ラムヘッド12を用いたコークスの押出中の、ラムヘッド12と一方の炉壁85との間のクリアランスに実質的に相当する。ただし、算出工程(#10)は、コークスの押出中に行うのではなく、コークスの押出開始前に行う。
【0045】
図8を参照して、炭化室80には、水平テーパが設けられている。要するに、炭化室80の幅は、押出機側窯口81からガイド車側窯口82に向かうにつれて大きくなる。この場合、炭化室80の幅Wは、押出機側窯口81からガイド車側窯口82までの範囲の炭化室80の幅の平均を意味する。指標Aの値を算出する際、炭化室80の幅Wの値として公称値や設計値を用いてもよいし、3次元レーザー測定器で測定した値を用いてもよい。
【0046】
判定工程(#15)では、算出工程(#10)で算出した指標Aの値が、上記の式(2)を満たしているか否かを判定する。式(2)を用いた判定では、ラムヘッド12と炉壁85との間のクリアランスに相当する指標Aの値が、閾値A以下であるか否かを判定する。この判定は、算出工程(#10)と同様に、コークスの押出開始前に行う。
【0047】
通常、押出機10を用いてコークスの押し出しを繰り返し行うと、押出機10のラムヘッド12はしだいに損耗する。これにより、ラムヘッド12の幅Hが徐々に小さくなる。ラムヘッド12の損耗が進行すると、ラムヘッド12と炉壁85との間のクリアランスが大きくなる。すると、コークスの押出中に押出機10のラムヘッド12と炉壁85の間からコークス塊がこぼれ落ちやすくなる。こぼれ落ちたコークス塊は、炉底84に堆積する。上述した通り、コークス塊の堆積は、実押出期間における押出負荷のピークの発現又は初期ピーク以降の大幅な波形変化が起こる要因となる。
【0048】
そこで、判定工程(#15)では、指標Aの値が閾値A以下であるか否かを判定する。この判定結果に基づき、後述する押出工程(#20)において、ラムヘッド12の補修を行う。判定工程(#15)で行う指標Aの判定は、ラムヘッド12の補修の必要性を判定すること、すなわち、ラムヘッド12が損耗して、ラムヘッド12の幅Hが小さくなっているかどうかを判定することを意味する。
【0049】
押出工程(#20)では、押出機10を用いてコークスを押し出す。ただし、判定工程(#15)での結果に応じて、コークスを押し出す前に押出機10のラムヘッド12の形状を修正する場合がある。
【0050】
算出工程(#10)で算出した指標Aの値が上記の式(2)を満たす場合、すなわち、指標Aの値が閾値A以下である場合、ラムヘッド12と炉壁85との間のクリアランスが十分に小さく、ラムヘッド12はそれほど損耗していないと言える。この場合、ラムヘッド12を補修する必要はない。そのため、ラムヘッド12の補修を行うことなく、押出工程(#20)において、そのラムヘッド12が取り付けられた押出機10を用いて、コークス押し出しを実行する。
【0051】
一方、算出工程(#10)で算出した指標Aの値が上記の式(2)を満たさない場合、すなわち、指標Aの値が閾値Aより大きい場合、ラムヘッド12と炉壁85との間のクリアランスが大きく、ラムヘッド12が損耗していると言える。この場合には、上記の式(2)が満たされるようにラムヘッド12の形状を修正する。典型的には、ラムヘッド12を補修することにより、ラムヘッド12の幅Hを大きくする。ラムヘッド12を補修する手段は特に限定されるものではないが、例えば肉盛溶接により、ラムヘッド12の形状を修正してもよい。また、上記の式(2)が満たされるようにラムヘッド12の形状を修正する場合、ラムヘッド12を補修する代わりに、ラムヘッド12を新品に交換してもよい。そして、押出工程(#20)において、修正したラムヘッド12が取り付けられた押出機10を用いて、コークスの押し出しを実行する。
【0052】
閾値Aは、コークスの平均粒径Dに応じて設定されてもよい。本実施形態の例では、閾値Aは、上記の式(3)を満たすように設定される。式(3)は、閾値Aがコークスの平均粒径Dの1.3倍以上、1.6倍以下の範囲内で設定されることを意味する。平均粒径Dは、例えばJIS K 2151:2004(コークス類 試験方法)に記載の試験・算出方法に準じて算出される。具体的には、まず、コークス炉から押し出され、冷却後のコークスを、搬送過程で試料としてサンプリングする。試料をサンプリングする方法は、例えばJIS M 8811:2000に準ずる。この試料を乾燥後、ふるい目の異なる複数のふるいでふるい分けし、各ふるいのふるい目上に残留した試料の質量及び最小のふるい目のふるいを通過した試料の質量を測定する。JIS K 2151:2004に記載された手順により、測定した試料の質量から平均粒径Dが算出される。なお、上記の方法でコークスの平均粒径Dを算出する場合、測定対象のコークスは、コークス炉から押し出された後のコークスである。しかしながら、同一の炭化室及び同一の条件で製造されるコークスの平均粒径Dは、実質的に一定の値となるため、上記の方法で予め算出された平均粒径Dを、押出中の(炭化室内の)コークスの平均粒径として用いることができる。
【0053】
例えば、閾値Aをコークスの平均粒径Dの1.6倍以下に設定すれば、押出工程(#20)において、ラムヘッド12と炉壁85との間のクリアランスがコークスの平均粒径Dとの関係である程度大きい場合に、ラムヘッド12の形状を修正することができる。ラムヘッド12の形状を修正し、ラムヘッド12の幅Hを大きくすれば、コークスの押出中にラムヘッド12と炉壁85との間からこぼれ落ちるコークス塊を低減できる。したがって、閾値Aは、好ましくはコークスの平均粒径Dの1.6倍以下に設定される。
【0054】
一方、閾値Aをコークスの平均粒径Dの1.3倍より小さく設定すると、ラムヘッド12と炉壁85との間のクリアランスが小さすぎるため、コークスの押出中にラムヘッド12が炉壁85と接触するおそれがある。ラムヘッド12が炉壁85と接触すれば、ラムヘッド12が炉壁85から受ける摩擦力が大きくなる。逆に言えば、コークスの平均粒径Dの1.3倍以上に設定すれば、コークスの押出中にラムヘッド12が炉壁85から受ける摩擦力を低減することができる。そのため、操業上の観点から、閾値Aはコークスの平均粒径Dの1.3倍以上に設定されるのが好ましい。コークスの平均粒径Dは、例えば50mmであり、その場合、閾値Aは75mmに設定されてもよい。
【0055】
[効果]
本実施形態のコークス炉の操業方法では、算出工程(#10)において、測定工程(#5)で測定したラムヘッド12の幅Hを用いて、上記の式(1)から指標Aの値を算出する。指標Aの値は、ラムヘッド12と炉壁85とのクリアランスに実質的に相当する。判定工程(#15)では、コークスの押し出しを開始する前に、上記の式(2)を用いて、指標Aの値が、閾値A以下であるか否かを判定する。押出工程(#20)では、指標Aの値が閾値A以下である場合、ラムヘッド12の補修を行うことなく、押出機10を用いてコークスを押し出す。この場合には、ラムヘッド12と炉壁85との間のクリアランスが十分に小さく、ラムヘッド12を補修する必要はないからである。一方、指標Aの値が閾値Aより大きい場合には、ラムヘッド12の補修を行った上で、補修後の押出機10を用いてコークスを押し出す。このように、本実施形態の操業方法によれば、押出機10のラムヘッド12を補修するか否かを判断するための基準が明確化されているため、ラムヘッド12の補修時機を判断することができる。さらに、損耗したラムヘッド12の使用を避けることにより、コークスの押出中、コークス塊がラムヘッド12と炉壁85との間からこぼれ落ちにくくなる。これにより、コークスの押出中における押出負荷を低減することができる。したがって、本実施形態の操業方法によれば、コークスの押詰の発生を抑制することができる。
【0056】
本実施形態の操業方法では、ラムヘッド12と炉壁85との間のクリアランスの閾値Aを上記の式(3)を満たすように設定する。本実施形態の操業方法では、押出工程(#20)において、ラムヘッド12と炉壁85との間のクリアランスがコークスの平均粒径Dとの関係である程度大きい場合に、ラムヘッド12の補修を行う。ラムヘッド12の幅Hを大きくすれば、コークスの押出中、コークス塊がラムヘッド12と炉壁85との間からこぼれ落ちるのをより確実に抑制できる。したがって、本実施形態の操業方法によれば、コークスの押詰の発生をさらに抑制することができる。
【0057】
本実施形態の操業方法では、押出工程(#20)において、ラムヘッド12を補修する必要がある場合、ラムヘッド12に肉盛溶接を施す。これにより、ラムヘッド12の幅Hを、新品のラムヘッドの幅と同程度の大きさに修正することができる。したがって、本実施形態の操業方法によれば、コークスの押詰の発生を抑制することができる。
【実施例0058】
本実施形態に係るコークス炉の操業方法の効果を確認するため、コークスの押し出しに用いるラムヘッドの幅が、コークスの押出中に押出機のラムヘッドと炉壁の間からこぼれ落ちるコークス塊に与える影響について検証した。具体的には、用いるラムヘッドの幅を変えて実際にコークスの押し出しを行い、押出後に炉底に堆積したコークス塊の高さを測定した。主な条件は以下の通りである。
炭化室の幅:460mm
コークスの平均粒径:50mm
【0059】
図9は、実施例の結果を示す図である。図9には、用いたラムヘッドの幅に応じたコークス塊の堆積高さが示される。図9において、横軸はラムヘッドの幅を示し、縦軸は炉底に堆積したコークス塊の高さを示す。
【0060】
図10は、実施例の結果を示す図である。図10において、横軸はラムヘッドの幅を示し、縦軸は発生率を示す。ここで、図10では、異なる2つの事象ごとに発生率を表している。一方の発生率として、ある幅のラムヘッドを用いたコークスの押出中、実押出期間における押出負荷のピークが発現する確率が示される。他方の発生率として、ある幅のラムヘッドを用いたコークスの押出中、実押出期間に押出機に作用する反力(押出負荷)が50ton以上となる確率が示される。
【0061】
ラムヘッドの幅が210mmの場合、ラムヘッドの下部が損耗し、ラムヘッドと炉壁とのクリアランス(指標Aの値)が125.0mmになっている。この場合、ラムヘッドと炉壁とのクリアランスは、コークスの平均粒径(50mm)の2.5倍である。図9及び図10を参照して、幅が210mmのラムヘッドを用いてコークスを押し出すと、コークス塊の堆積高さは310mmに達し、上述した2つの事象の発生率は非常に高かった。
【0062】
ラムヘッドの幅が310mmの場合、ラムヘッドはそれほど損耗しておらず、ラムヘッドと炉壁とのクリアランスが75.0mmになっている。この場合、ラムヘッドと炉壁とのクリアランスは、コークスの平均粒径の1.5倍である。図9及び図10を参照して、幅が310mmのラムヘッドを用いてコークスを押し出すと、コークス塊の堆積高さが220mmに抑えられ、上述した2つの事象の発生率は、幅が210mmのラムヘッドを用いた場合と比較して低下した。
【0063】
ラムヘッドの幅が325mmの場合、ラムヘッドはそれほど損耗しておらず、ラムヘッドと炉壁とのクリアランスが67.5mmになっている。この場合、ラムヘッドと炉壁とのクリアランスは、コークスの平均粒径の1.35倍である。図9及び図10を参照して、幅が325mmのラムヘッドを用いてコークスの押し出すと、コークス塊の堆積高さが140mmに抑えられ、上述した2つの事象の発生率は、幅が310mmのラムヘッドを用いた場合と比較して遥かに低下した。
【0064】
以上より、図9に示す結果から、コークスの押し出しに用いるラムヘッドの幅が大きくなるほど、コークス塊の堆積高さは小さくなることが分かる。さらに、図10に示す結果から、コークスの押し出しに用いるラムヘッドの幅が大きくなるほど、上述した2つの事象の発生率が低下することが分かる。したがって、ラムヘッドの形状を修正して、ラムヘッドの幅を大きく、すなわち、ラムヘッドと炉壁との間のクリアランスを小さくすれば、炉底に堆積するコークス塊が減少する。したがって、本実施形態の操業方法によれば、コークスの押出中における押出負荷を低減することができ、これにより、コークスの押詰の発生を抑制することができる。
【0065】
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
10:押出機
11:ラムビーム
12:ラムヘッド
13:スライドシュー
14:モータ
80:炭化室
H:ラムヘッドの幅
W:炭化室の幅
D:コークスの平均粒径
A:指標
:閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10