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特開2024-24913サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024913
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
B41J2/335 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127896
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】周 旋
(72)【発明者】
【氏名】吉川 泰弘
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JC02
2C065JC10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】搬送改善と印字スピード向上の両立を図ることが可能なサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】サーマルプリントヘッドA1は、基板1と、グレーズ層2と、複数の発熱部41を含む抵抗体層4と、を備える。主面11は、第1面111を含む。凸12部は、第2面121、第3面122、第4面123及び第5面124を有する。第3面122及び第5面124は、主面11に平行である。第2面121及び第4面123は、主面11に対して傾いている。第5面124は、厚さ方向zにおいて第1面111から最も離れたところに位置する。グレーズ層2は、第3面122及び第4面123を覆う第1部21を含む。第2面121は、グレーズ層2から露出している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面及び前記主面から厚さ方向に突出する凸部を有する基板と、
前記凸部に配置されたグレーズ層と、
前記凸部上に配置された複数の発熱部を含む抵抗体層と、を備え、
前記主面は、副走査方向において、前記凸部の一方側に位置する第1面を含み、
前記凸部は、第2面、第3面、第4面及び第5面を有し、
前記第3面及び前記第5面は、前記主面に平行であり、
前記第2面及び前記第4面は、前記主面に対して傾いており、
前記第5面は、前記厚さ方向において前記第1面から最も離れたところに位置し、
前記第3面は、前記厚さ方向及び前記副走査方向において前記第1面と前記第5面との間に位置し、
前記第2面は、前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第1面と前記第3面との間に位置し、
前記第4面は、前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第3面と前記第5面との間に位置し、
前記グレーズ層は、前記第3面及び前記第4面を覆う第1部を含み、
前記第2面は、前記グレーズ層から露出している、
サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記グレーズ層は、前記第5面を覆う第2部をさらに含む、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記第2面が前記第1面と成す角度と、前記第4面が前記第3面と成す角度とは、等しい、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記第1面、前記第3面及び前記第5面は、(100)面である、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記第1面と前記第3面との前記厚さ方向の距離は、前記第3面と前記第5面との前記厚さ方向の距離よりも大きい、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記凸部は、第6面、第7面及び第8面をさらに有し、
前記第7面は、前記主面に平行であり、
前記第6面及び前記第8面は、前記主面に対して傾いており、
前記主面は、前記副走査方向において、前記凸部を介して、前記第1面の反対側に位置する第9面をさらに含み、
前記第7面は、前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第1面と前記第9面との間に位置し、
前記第6面は、前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第5面と前記第7面との間に位置し、
前記第8面は、前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第7面と前記第9面との間に位置し、
前記グレーズ層は、前記第6面及び前記第7面を覆うように形成された第3部をさらに含み、
前記第8面は、前記グレーズ層から露出している、
請求項1ないし5のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記第3面と前記主面との前記厚さ方向の距離と、前記第7面と前記主面との前記厚さ方向の距離とは、互いに等しい、
請求項6に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記第3面と前記第7面とは、同じ形状である、
請求項7に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記第4面が前記第3面と成す角度と、前記第6面が前記第7面と成す角度とは、互いに等しい、
請求項6に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記第2面が前記第1面と成す角度と、前記第8面が前記第9面と成す角度とは、互いに等しい、
請求項6に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
前記凸部は、第10面及び第11面をさらに有し、
前記第10面は、前記主面に対して傾いており、且つ前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第3面と前記第4面との間に位置し、
前記第11面は、前記主面に平行であり、且つ前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第10面と前記第4面との間に位置し、
前記グレーズ層の前記第1部は、前記第10面及び前記第11面をさらに覆う、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
前記第2面が前記第1面と成す角度と、前記第10面が前記第3面と成す角度と、前記第4面が前記第11面と成す角度とは、互いに等しい、
請求項11に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
前記基板の熱伝導率は、前記グレーズ層の熱伝導率よりも大きい、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
前記基板は、シリコンの単結晶半導体から形成されている、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
前記厚さ方向における前記第3面と前記第5面との距離は、前記グレーズ層の前記第2部の前記厚さ方向における最大厚さよりも大きい、
請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
前記グレーズ層の前記厚さ方向における最大厚さは、60μm以上100μm以上である、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項17】
前記複数の発熱部に流す電流を制御する駆動ICと、
前記主面に平行に配置されたFPCと、をさらに備え、
前記FPCは、前記主面に対向する部分を含む内側面を有し、
前記駆動ICは、前記内側面のうち前記主面から前記副走査方向に延出する部分に固定されている、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項18】
前記FPCを介して前記基板に接続された配線基板をさらに備える、
請求項17に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項19】
請求項1に記載のサーマルプリントヘッドを備える、
サーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板の材料にSi(ケイ素、シリコン)が用いられたサーマルプリントヘッドが開示されている。当該文献に開示されたサーマルプリントヘッドにおいて、基板は、主面と、主面から厚さ方向に膨出する凸部とを有する。当該文献の図6などに示すように、凸部は、頂面および一対の傾斜面からなる形状である。グレーズ層は、凸部の頂面に接して形成されている。しかしながら、サーマルプリントヘッドの記録媒体は、たとえば台紙とこの台紙に剥離可能に配置された複数のラベルとを含む場合がある。これらのラベルによって構成される凹凸形状が、サーマルプリントヘッドの傾斜面に引っ掛かると、搬送が阻害されるという問題がある。一方、グレーズ層を厚くすると搬送は改善されるが、発熱部の冷却速度が緩やかとなるため、印字スピードが遅くなることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-40509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は上述の事情に鑑み、搬送改善と印字スピード向上の両立を図ることが可能なサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の側面により提供されるサーマルプリントヘッドは、主面及び前記主面から厚さ方向に突出する凸部を有する基板と、前記凸部に配置されたグレーズ層と、前記凸部上に配置された複数の発熱部を含む抵抗体層と、を備え、前記主面は、副走査方向において、前記凸部の一方側に位置する第1面を含み、前記凸部は、第2面、第3面、第4面及び第5面を有し、前記第3面及び前記第5面は、前記主面に平行であり、前記第2面及び前記第4面は、前記主面に対して傾いており、前記第5面は、前記厚さ方向において前記第1面から最も離れたところに位置し、前記第3面は、前記厚さ方向及び前記副走査方向において前記第1面と前記第5面との間に位置し、前記第2面は前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第1面と前記第3面との間に位置し、前記第4面は前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第3面と前記第5面との間に位置し、前記グレーズ層は前記第3面及び前記第4面を覆う第1部を含み、前記第2面はグレーズ層から露出している。
【0006】
本開示の第2の側面によって提供されるサーマルプリンタは、本開示の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、搬送改善と印字スピード向上の両立を図ることが可能となる。
【0008】
本開示のその他の特徴及び利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
図2図2は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部平面図である。
図3図3は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
図4図4は、図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部断面図である。
図6図6は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図7図7は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
図8図8は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
図9図9は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
図10図10は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
図11図11は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
図12図12は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
図13図13は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
図14図14は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの第1変形例を示す要部拡大断面図である。
図15図15は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの第2変形例を示す要部拡大断面図である。
図16図16は、本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図17図17は、本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図18図18は、本開示の第4実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図19図19は、本開示の第5実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1図6に基づき、本開示の第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA1について説明する。サーマルプリントヘッドA1は、後述のサーマルプリンタB1の主要部をなす。このサーマルプリントヘッドA1は、要部および付随部により構成される。サーマルプリントヘッドA1の要部は、基板1、グレーズ層2、絶縁層3、抵抗体層4、電極層5および保護層6を備える。ここで、抵抗体層4は複数の発熱部41を含む。また、サーマルプリントヘッドA1の付随部は、配線基板71、放熱部材72,複数の駆動IC73、FPC74およびコネクタ75を備える。また、配線基板71を備えず、FPC74がコネクタ75に接続された構成であってもよい。なお、図1図2図3においては、理解の便宜上、保護層6を省略している。
【0012】
さらに、本開示にかかるサーマルプリンタB1は、図4に示すように、サーマルプリントヘッドA1と、プラテンローラ76とを備える。サーマルプリンタB1において、プラテンローラ76は、感熱紙などの記録媒体を送り出すローラ状の機構である。プラテンローラ76が記録媒体を複数の発熱部41に押し当てることにより、当該複数の発熱部41が当該記録媒体に印字を行う。
【0013】
ここで、図4に示すように、基板1及び配線基板71は、放熱部材72上において副走査方向yに並んでいる。以下の説明においては、基板1における配線基板71から遠い側を副走査方向yのy1側といい、基板1における配線基板71に近い側を副走査方向yのy2側とする。また、基板1は厚さ方向zにおいて放熱部材72と重なるように配置されており、基板側を厚さ方向zのz1側、放熱部材72側を厚さ方向zのz2側とする。
【0014】
〔基板1〕
基板1は、主走査方向xを長手方向とし、副走査方向yを短手方向とする細長矩形状の平面形状を有する。基板1の大きさは限定されないが、一例を挙げると、主走査方向xの寸法は、例えば20mm以上250mm以下、副走査方向yの寸法は、例えば1.0mm以上5.0mm以下、厚さ方向zの寸法は、例えば300μm以上800μm以下である。また、基板1は、単結晶半導体からなり、Si(ケイ素、シリコン)が好適である。
【0015】
図5に示すように、基板1には、主面11、凸部12及び裏面13が形成されている。基板1の結晶構造に基づく主面11および裏面13の面方位は、ともに(100)面である。主面11および裏面13はz方向において互いに反対側を向く。図4に示すように、サーマルプリントヘッドA1においては、主面11がプラテンローラ76に対向し、かつ裏面13が放熱部材72に対向する。凸部は、主面11の副走査方向yのy1側寄りに位置し、主面11につながり、かつ厚さ方向zにおいてz1側に膨出している。また、凸部12は、主走査方向xに沿って延びている。
【0016】
図5に示すように、主面11は、第1面111及び第9面112を含む。第1面111は、副走査方向において、凸部12よりも副走査方向yのy1側に位置する。第9面112は、凸部12よりも副走査方向yのy2側に位置する。
【0017】
図6に示すように、凸部は、第2面121、第3面122、第4面123、第5面124、第6面125、第7面126及び第8面127を有する。第3面122、第5面124及び第7面126は、主面11に平行である。第3面122、第5面124及び第7面126は、ともに(100)面であり、厚さ方向zにおいて主面11から離れて位置する。第5面124は、第3面122及び第7面126よりも主面11から離れた位置に存在する。
【0018】
第2面121は、厚さ方向z及び副走査方向yにおいて第1面111と第3面122の間に位置する。第4面123は、厚さ方向z及び副走査方向yにおいて第3面122と第5面124の間に位置する。第2面121及び第4面123は、主面11に対して傾斜しており、副走査方向yにおいてy2側に位置するほどz方向においてz1側に位置するように傾斜している。第8面127は、厚さ方向z及び副走査方向yにおいて第7面126と第9面112との間に位置する。第6面125は、厚さ方向z及び副走査方向yにおいて第5面124と第7面126の間に位置する。第6面125及び第8面127は第5面124に向けて主面11に対して傾斜しており、副走査方向yにおいてy1側に位置するほどz方向においてz1側に位置するように傾斜している。
【0019】
本実施形態においては、第3面122と主面11との厚さ方向zの距離である高さH1と、第7面126と主面11との厚さ方向zの距離である高さH3は互いに等しい。第3面122と第7面126とは、同じ形状であり、第5面124を中心として副走査方向yに線対称となっている。第5面124と第3面122との厚さ方向zの距離である高さH2と、第5面124と第7面126との厚さ方向zの距離である高さH4は等しい。また、高さH1及び高さH3は、高さH2及び高さH4よりも大きい。凸部の高さH0は、たとえば50μm以上300μm以下である。なお、高さH1及び高さH3が、高さH2及び高さH4よりも小さくてもよい。
【0020】
本実施形態においては、第2面121が第1面111と成す角度α1と、第4面123が第3面122と成す角度α2と、第8面127が第9面と成す角度α3と、第6面125が第7面126と成す角度α4とはすべて等しい。角度α1,α2,α3,α4は、たとえば54.7°である。なお、本実施形態と製造方法が異なる場合等においては、角度α1,α2,α3,α4は、互いに異なっていてもよい。
【0021】
本実施形態においては、第5面124の副走査方向yの長さL1は、200μm以下である。第3面122の副走査方向yのy1側の端から第7面126の副走査方向yのy2側の端までの長さL2は、300μm以上1000μm以下であり、好ましくは、660μmである。
【0022】
〔グレーズ層2〕
図6に示すように、グレーズ層2は、凸部12の上に配置されている。グレーズ層2は、第1部21を有する。第1部21は、第3面122及び第4面123を覆う。さらに本実施形態においては、グレーズ層2は、第2部22及び第3部23を有する。第2部22は、第5面124を覆う、第3部23は、第6面125及び第7面126を覆う。第1部21、第2部22及び第3部23は、互いにつながっており、一体として一つのグレーズ層2を形成している。ここで、グレーズ層2は第2面121、第8面127には接していない。言い換えると、第2面121および第8面127は、グレーズ層2から露出している。
【0023】
グレーズ層2は、例えば非晶質ガラスを含む。このため、グレーズ層2は、ガラスを含む材料からなる。グレーズ層2の厚さT0は本開示では100μm程度である。また、グレーズ層2の第2部22の厚さ方向zにおける最大厚さT1は、高さH2及び高さH4よりも小さく、具体的には40μm以下である。また、グレーズ層2の熱伝導率は、前記基板1の熱伝導率よりも小さい。
【0024】
〔絶縁層3〕
図6に示すように、絶縁層3は、基板1およびグレーズ層2を厚さ方向zのz1側から覆っている。なお、グレーズ層2と絶縁層3との順番は逆であってもよい。すなわち、絶縁層3が、基板1とグレーズ層2との間に介在する構成であってもよい。絶縁層3は、絶縁性材料からなり、たとえばSiO2またはSiNからなる。絶縁層3がSiO2からなる場合、TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)を原材料としたSiO2が好適に採用されている。絶縁層3の厚さは特に限定されず、その一例を挙げるとたとえば1μm以上15μm以下であり、好ましくは5μm以上10μm以下である。
【0025】
〔抵抗体層4〕
図6に示すように、抵抗体層4は、厚さ方向zに視て、基板1の主面11及び凸部12に重なる位置に配置されており、絶縁層3を覆うように形成されている。抵抗体層4は、基板1に対して電気絶縁される。抵抗体層4は、たとえば窒化タンタル(TaN)からなる。抵抗体層4の厚さは特に限定されず、たとえば0.02μm以上0.1μm以下であり、好ましくは0.08μm程度である。
【0026】
図2、3、6に示すように、抵抗体層4は、複数の発熱部41を含む。抵抗体層4において、複数の発熱部41は、電極層5から露出する部分である。複数の発熱部41は、厚さ方向zに視て凸部12に重なる位置に形成されており、本実施形態においては、グレーズ層2の上に形成されている。複数の発熱部41のうち、主走査方向xにおいて隣り合う2つの当該発熱部41は、互いに離れて位置する。図4に示すように、サーマルプリンタB1において、複数の発熱部41は、プラテンローラ76に対向している。
【0027】
複数の発熱部41は、電極層5から選択的に通電され発熱する。プラテンローラ76により感熱紙等の記録媒体が発熱部41に押圧されることにより、感熱紙等が局所的に加熱され、感熱紙等への印字がなされる。
【0028】
〔電極層5〕
図6に示すように、電極層5は、抵抗体層4に接して形成されている。電極層5は、抵抗体層4の複数の発熱部41に通電するための導電経路をなしている。電極層5の電気抵抗率は、抵抗体層4の電気抵抗率よりも小さい。電極層5は、例えば銅(Cu)からなる金属層であり、その厚さは、例えば0.3μm以上2.0μm以下である。この他、電極層5は、抵抗体層4の上に積層されたチタン(Ti)層と、当該チタン層の上に積層された銅層との2つの金属層からなる構成でもよい。この場合のチタン層の厚さの例は、0.1μm以上0.2μm以下である。
【0029】
図2に示すように、電極層5は、共通電極51と個別電極52を有する。共通電極51は、抵抗体層4の複数の発熱部41に対して副走査方向yのy1側に位置する。複数の個別電極52は、複数の発熱部41に対して副走査方向yのy2側に位置する。図3に示すように、抵抗体層4のうち、厚さ方向zに沿って視て、共通電極51の帯状部512と複数の個別電極52から露出した部分が、複数の発熱部41である。
【0030】
共通電極51は、基部511と複数の帯状部512と延長部513とを有する。基部511は、複数の帯状部512を共通につなげる部位である。共通電極51においては、基部511から複数の帯状部512を介して複数の発熱部41に電流が流れる。
【0031】
基部511は、抵抗体層4の複数の発熱部41から副走査方向yのy1側に最も離れて位置する。基部511は、厚さ方向zに沿って視て主走査方向xに延びる帯状である。延長部513は、基部511のx両端から副走査方向yのy2側に向けて延びている。
【0032】
複数の帯状部512は、基部511の副走査方向yのy2側の端部から、複数の発熱部41に向けて延びる帯状である。複数の帯状部512は、主走査方向xに沿って配列されており、後記の個別電極52の帯状部521の先端に対して所定間隔を隔てて対向している。
【0033】
図2および図3に示すように、複数の個別電極52の各々は、パッド部522および帯状部521を有する。複数の個別電極52の各々においては、複数の発熱部41のいずれかから帯状部521を介してパッド部522に電流が流れる。
【0034】
副走査方向yにおいて、パッド部522は、抵抗体層4の複数の発熱部41から最も離れて位置する。複数の個別電極52のパッド部522は、主走査方向xに対して千鳥配置となるように配列されている。
【0035】
図2および図3に示すように、帯状部521は、y方向において基板1の凸部12に対向するパッド部522の端部から、複数の発熱部41に向けて延びる帯状である。複数の個別電極52の帯状部521は、主走査方向xに沿って配列されている。
【0036】
厚さ方向zに沿って視て、複数の発熱部41の各々は、複数の個別電極52の帯状部521のいずれかと、共通電極51の複数の帯状部512のいずれかとに挟まれている。図2および図3に示す電極層5、および複数の発熱部41の構成は一例である。そのため、本開示における電極層5、および複数の発熱部41の構成は、図2および図3に示す構成に限定されない。
【0037】
〔保護層6〕
図5に示すように、保護層6は、基板1の主面11の一部と抵抗体層4の複数の発熱部41及び電極層5とを覆っている。保護層6は、絶縁性の材料からなり、ケイ素(Si)をその組成に含み、例えば二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)等からなる。なお、これらの物質のうち複数種類からなる積層体でもよい。保護層6の厚みは、例えば1.0μm以上10μm以下である。サーマルプリンタB1において、記憶媒体は、図4に示すプラテンローラ76により複数の発熱部41を覆う保護層6の領域に押し当てられる。
【0038】
図5に示すように、保護層6は、パッド用開口61を有する。パッド用開口61から、複数の個別電極52のパッド部522と、複数の個別電極52の帯状部521の各々の一部とが露出している。
【0039】
〔配線基板71〕
図4に示すように、配線基板71は、基板1に対して副走査方向yのy2側に位置する。配線基板71は、例えばPCBであり、たとえばコネクタ75が搭載される。配線基板71は、厚さ方向zに沿って視て、主走査方向xを長手方向とする矩形状をしており、配線基板71の面積は、基板1の面積よりも大きい。
【0040】
〔FPC74〕
図4に示すように、FPC(Flexible Printed Circuits)74は、副走査方向yにおいて基板1と配線基板71との間に位置している。FPC74は、基板1及び配線基板71と比べて可撓性に優れており、湾曲させることが可能である。FPC74は、内側面741を有する。内側面741は、その一部が主面11に対向する。内側面741が、パッド部522に導通接合されている。後記する駆動IC73は、内側面741のうち主面11から副走査方向yのy2側に延出する部分に固定されている。また、FPC74は配線基板71に導通接合されている。
【0041】
〔コネクタ75〕
図4に示すように、コネクタ75は、図1および図4に示すように、配線基板71のy方向のy2側の一端に搭載されている。コネクタ75は、サーマルプリンタB1の他の構成要素に接続される。コネクタ75は、複数のピン(図示略)を有する。当該複数のピンの一部は、配線基板71において、FPC74が接合された配線(図示略)に導通している。さらに、当該複数のピンの別の一部は、配線基板71において、共通電極51の基部511に導通する配線(図示略)に導通している。
【0042】
〔駆動IC73〕
駆動IC73は、種々の回路が構成された半導体素子であり、図4に示すように、FPC74上に搭載されている。駆動IC73には、印字信号、制御信号、および抵抗体層4の複数の発熱部41に供給される電圧が、外部からコネクタ75を介して入力される。駆動IC73は、これらの電気信号に基づき、複数の個別電極52に電圧を選択的に印加させる。これにより、複数の発熱部41が選択的に発熱する。
【0043】
図4に示すように、駆動IC73は、保護樹脂77に覆われていてもよい。保護樹脂77の材質としては、例えばエポキシ樹脂等のアンダーフィルに用いられる黒色かつ軟質の合成樹脂で絶縁性を有するものが考えられる。保護樹脂77は、黒色かつ硬質の合成樹脂でもよい。
【0044】
〔放熱部材72〕
図4に示すように、放熱部材72は、基板1および配線基板71を支持している。放熱部材72は、基板1の裏面13と対向している。裏面13は放熱部材72に接合されている。また、配線基板71は、たとえば、ねじなどの締結部材により放熱部材72に固定されている。放熱部材72は、発熱部41により生じた熱の一部を外部へと放熱する役割を有している。具体的には、サーマルプリントヘッドA1の使用時において、抵抗体層4の複数の発熱部41から発生した熱の一部は、基板1を介して放熱部材72に伝導され、外部へと放熱される。放熱部材72は、例えばアルミニウム(Al)などの金属からなる。
【0045】
次に、図7図13に基づき、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一例について説明する。ここで、図7図13の断面位置は、サーマルプリントヘッドA1の要部を示す図5の断面位置と同一である。
【0046】
まず、図7に示すように、材料基板1Aを用意する。材料基板1Aは、半導体材料からなり、当該半導体材料は、ケイ素を組成とする単結晶材料を含み、たとえばシリコン(Si)ウエハである。材料基板1Aは、平坦な主面1A1及び裏面1A2を有し、これらは厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く。材料基板1Aの結晶構造に基づく主面1A1および裏面1A2の面方位は、ともに(100)面である。材料基板1Aには、厚さ方向zに対して直交する方向において、複数の基板1にそれぞれ相当する領域が複数個連なっている。材料基板1Aを用いることにより、複数個のサーマルプリントヘッドA1を一括して作ることができる。ただし、サーマルプリントヘッドA1の製造方法はこれに限定されず、一つのサーマルプリントヘッドA1のみを製造してもよい。以下の説明では、一つのサーマルプリントヘッドA1が形成される部分に着目して説明を行う。
【0047】
次に、図8に示すように、主面1A1の一部を覆う第1マスク層8Aを形成する。第1マスク層8Aは、たとえばSiNからなる膜である。
【0048】
次いで、図8に示す第1マスク層8Aから露出している主面1A1の領域に対して、水酸化カリウム(KOH)水溶液を用いた異方性ウエットエッチングを行う。これにより、図9に示す第4面123、第5面124及び第6面125と、表面1A3が形成される。表面1A3は、裏面1A2に平行な面である。
【0049】
次いで、図10に示すように、第4面123、第5面124及び第6面125と、表面1A3の一部と、を一体的に覆う第2マスク層8Bを形成する。第2マスク層8Bは、第1マスク層8Aに重ねるように形成してもよいし、第1マスク層8Aを除去した後に形成してもよい。そして、水酸化カリウム(KOH)水溶液を用いた異方性ウエットエッチングを再度行うことにより、図11に示すように、第1面111及び第9面112と、第2面121、第3面122、第7面126及び第8面127と、が形成され、主面11から突出する凸部12が得られる
【0050】
ここで、第1マスク層8Aに覆われていた主面1A1の領域が、凸部12の第5面124となる。そして、第2マスク層8Bに覆われていた表面1A3の領域が凸部12の第3面122及び第7面126となる。また、材料基板1Aの裏面1A2は、基板1の裏面13に対応する。凸部12は異方性エッチングにより形成されるので、第2面121、第4面123、第6面125、第8面127が主面11と成す角度は、すべて同一となり、約54.7°である。
【0051】
最後に、フッ化水素酸(HF)を用いたウエットエッチングにより第1マスク層8A、第2マスク層8Bを除去する。
【0052】
次いで、図13に示すように、グレーズ層2を凸部12の第3面122、第4面123、第5面124、第6面125、第7面126に接するように形成する。第3面122および第4面123に接するグレーズ層2が第1部21、第5面124に接するグレーズ層2が第2部22、第6面125、第7面126に接するグレーズ層2が第3部23となる。なお、本実施形態では、第1部21、第2部22、第3部23は一体として形成される。
【0053】
グレーズ層2は、流動体であるグレーズ材料を第5面124に供給した後、当該グレーズ材料を焼成することにより形成される。当該グレーズ材料は、たとえばディスペンサにより吐出される。当該グレーズ材料は、非晶質ガラスなどのガラスを含む。当該グレーズ材料は、複数回にわたった重ね塗布をしてもよい。当該グレーズ材料の供給方法の他の例として、スクリーンを用いて当該グレーズ材料を第5面124に印刷する方法が挙げられる。
【0054】
次いで、基板1の主面11、凸部の第2面121および第8面127、およびグレーズ層2を覆う絶縁層3を形成する。
【0055】
次いで、抵抗体層4、電極層5及び保護層6を形成する。
【0056】
次いで、材料基板1Aを主走査方向xおよび副走査方向yに沿って切断することにより、材料基板1Aを個片に分割する。これにより、基板1を含むサーマルプリントヘッドA1の要部が得られる。次いで、配線基板71にコネクタ75を搭載する。次いで、基板1の裏面13、および配線基板71を放熱部材72に接合させる。次いで、基板1及び配線基板71に対して複数の駆動IC73を搭載したFPC74を接合する。以上の工程を経ることによって、サーマルプリントヘッドA1が得られる。
【0057】
次に、サーマルプリントヘッドA1の作用効果について説明する。
【0058】
図6に示すように、凸部12のグレーズ層2が第3面122及び第4面123を覆い、第2面121はグレーズ層2から露出している。これにより、グレーズ層2の表面の曲率を緩やかに保ちつつ、グレーズ層2の厚さT0をより大きくすることが可能である。したがって、印字紙の凹凸が、サーマルプリントヘッドA1の凸部12等に引っかかることを抑制することが可能であり、搬送改善を図ることができる。また、グレーズ層2のうち複数の発熱部41と厚さ方向zに視て重なる部分である第2部22の最大厚さT1を、厚さT0よりも薄くすることが可能である。したがって、複数の発熱部41の冷却速度が緩やかになり過ぎることを回避可能であり、印字スピードの向上を図ることができる。
【0059】
さらに、グレーズ層2が第5面124も覆っている。これにより、グレーズ層2の上に発熱部41が位置することになるので、過度な冷却を抑制することができる。
【0060】
第6面125、第7面126及び第8面127をさらに有しており、グレーズ層2は、第6面125及び第7面126を覆う第3部23を有する。これにより、記録媒体が副走査方向yのy1側からy2側に搬送される場合は、グレーズ層2の第1部21が搬送改善に寄与し、記録媒体が副走査方向yのy2側からy1側に搬送される場合は、第2部22が搬送改善に寄与する。したがって、印字紙を副走査方向y両側から搬送する場合(いわゆる往復印刷の場合)であっても、搬送改善を図ることができる。
【0061】
グレーズ層2の熱伝導率が基板1の熱伝導率よりも小さいことで、グレーズ層2は適当な蓄熱性を有する。基板の材質はシリコンであり、比較的熱伝導性が良いため、発熱部41が発する熱が放熱部材72に逃げやすい。複数の発熱部41と基板1との間にグレーズ層2の第2部22が介在することにより、発熱部41の熱が過度に放熱部材72に逃げるのを防ぐことができる。これにより、印字スピードの向上を図ることができる。
【0062】
基板1がシリコンの単結晶半導体から形成されていることにより、異方性エッチングを用いて凸部12を形成することができる。これにより、精度の良い形状の凸部12をより容易に形成することができる。
【0063】
グレーズ層2の第2部22の厚さ方向zにおける最大厚さT1を約40μm以下と薄くすることができる。これにより、グレーズ層2が過度に蓄熱することを防ぎ、印字スピードの向上を図ることができる。
【0064】
グレーズ層2の厚さT0は、例えば60~100μm以上で、一般的なラベル紙厚より厚い。これは、サーマルプリントヘッドA1がラベル紙を乗り越えることを容易とするのに有利である。
【0065】
図14図19は、本開示の変形例及び他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。また、各変形例および各実施形態における各部の構成は、技術的な矛盾を生じない範囲において相互に適宜組み合わせ可能である。
【0066】
<第1実施形態 第1変形例>
図14は、サーマルプリントヘッドA1(第1実施形態)の第1変形例を示す。本変形例のサーマルプリントヘッドA11は、主に凸部12、グレーズ層2および絶縁層3の関係がサーマルプリントヘッドA1と異なる。
【0067】
サーマルプリントヘッドA11においては、絶縁層3が、凸部12とグレーズ層2との間に介在する部分を有する。複数の発熱部41は、グレーズ層2に直接接している。サーマルプリントヘッドA11の製造方法においては、図12に示す状態から、絶縁層3を形成し、その後にグレーズ層2を形成する。
【0068】
本変形例によっても、搬送改善と印字スピード向上の両立を図ることができる。また、本変形例から理解されるように、凸部12、グレーズ層2および絶縁層3の積層関係は、何ら限定されない。
【0069】
<第1実施形態 第2変形例>
図15は、サーマルプリントヘッドA1(第1実施形態)の第2変形例を示す。本変形例のサーマルプリントヘッドA12は、主に凸部12、グレーズ層2および絶縁層3の関係がサーマルプリントヘッドA1,A11と異なる。
【0070】
サーマルプリントヘッドA12においては、第5面124がグレーズ層2から露出している。絶縁層3は、第5面124に直接接している。すなわち、グレーズ層2は、上述の第2部22を有していない。グレーズ層2は、第1部21と第3部23とに分離された構成である。
【0071】
本変形例によっても、搬送改善と印字スピード向上の両立を図ることができる。また、第5面124がグレーズ層2から露出していることにより、複数の発熱部41の冷却速度を向上させることが可能である。これは、印字スピードの向上に有利である。また、本変形例から理解されるように、グレーズ層2は、第2部22を有していなくてもよい。また、グレーズ層2は、一体的に形成されたものに限定されず、本変形例のように複数の部位に分離された構成であってもよい。
【0072】
<第2実施形態>
図16は、本開示の第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA2は、凸部12の構成が、上述の実施形態と異なる。
【0073】
サーマルプリントヘッドA2においては、凸部12は、サーマルプリントヘッドA1で説明した第6面125および第7面126を有さず、第14面132を有する。第14面132は、厚さ方向及び副走査方向において、第5面124と第10面128との間に位置する。第14面132は、主面11に対して傾斜しており、本実施形態においては、副走査方向yにおいてy1側に位置するほどz方向においてz1側に位置するように傾斜している。第14面132は、第9面112および第5面124に繋がっている。第14面132は、グレーズ層2から露出している。すなわち、凸部12の副走査方向yのy1側には、第3面122および第4面123によって段差形状が形成されており、y2側にはこのような段差形状が形成されていない。
【0074】
また、本実施形態においては、発熱部41が、厚さ方向zに視て、グレーズ層2の第1部21と重なる位置に配置されており、第3面122と重なる。発熱部41は、厚さ方向zに視て、第5面124に対して副走査方向yのy1側にずれた位置に配置されている。グレーズ層2は、第1部21を有し、第2部22を有していない。なお、本実施形態において、グレーズ層2が第2部22を有する構成としてもよい。
【0075】
本実施形態によっても搬送改善と印字スピードの向上を達成することができる。また、本実施形態から理解されるように、凸部12の両側に段差形状が形成されている構成に限定されず、凸部12の片側のみに段差形状が形成されている構成であってもよい。
【0076】
<第3実施形態>
図17は、本開示の第3実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA3は、凸部12の構成が、上述の実施形態と異なる。
【0077】
サーマルプリントヘッドA3においては、高さH1と高さH3とが異なっており、高さH3の方が高さH1よりも大きい。これに対応して、高さH2と高さH4とが異なっており、高さH2の方が高さH4よりも大きい。
【0078】
本実施形態によっても搬送改善と印字スピードの向上を達成することができる。また、本実施形態から理解されるように、高さH1と高さH3とは、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。また、高さH2と高さH4とは、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0079】
<第4実施形態>
図18は、本開示の第4実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA4は、凸部12の構成が、上述の実施形態と異なる。
【0080】
サーマルプリントヘッドA4においては、凸部12は、第10面128及び第11面129を有する点が、上述のサーマルプリントヘッドA2の凸部12と異なる。第10面128は厚さ方向z及び副走査方向yにおいて、第3面122と第4面123との間に位置する。第10面128は、主面11に対して傾斜しており、副走査方向yのy2側に位置するほど厚さ方向zのz1側に位置するように傾斜している。第11面129は、主面11に平行であり、厚さ方向z及び副走査方向yにおいて、第10面128と第4面123との間に位置する。第1部21は、第3面122、第4面123、第10面128及び第11面129を覆う。第1部21及び第2部22は、互いに繋がっており、グレーズ層2は、一体的に形成されている。
【0081】
また、本実施形態においては、発熱部41が、厚さ方向zに視て、グレーズ層2の第1部21と重なる位置に配置されており、第3面122、第10面128および第11面129と重なる。発熱部41は、厚さ方向zに視て、第5面124に対して副走査方向yのy1側にずれた位置に配置されている。グレーズ層2は、第1部21を有し、第2部22を有していない。なお、本実施形態において、グレーズ層2が第2部22を有する構成としてもよい。
【0082】
本実施形態によっても搬送改善と印字スピードの向上を達成することができる。さらに、本実施形態においては、凸部12の段差形状の段数が増加していることにより、グレーズ層2の厚さT0をより大きくすることができる。これにより、さらなる搬送改善を実現することができる。また、本実施形態から理解されるように、凸部12の段差形状の段数は1段に限定されず、2段以上であってもよい。
【0083】
<第5実施形>
図19は、本開示の第5実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA5は、凸部12の構成が、上述の実施形態と異なる。
【0084】
サーマルプリントヘッドA5の凸部12は、上述のサーマルプリントヘッドA4の凸部12は、第7面126、第8面127、第12面130及び第13面131を有する点が、上述のサーマルプリントヘッドA4の凸部12と異なる。第12面130は、主面11に平行であり、厚さ方向z及び副走査方向yにおいて、第6面125と第7面126との間に位置する。第13面131は、主面11に平行ではなく、副走査方向yのy1側に位置するほど厚さ方向zのz1側に位置するように傾斜している。第13面131は、厚さ方向z及び副走査方向yにおいて、第12面130と第7面126との間に位置する。第3部23は、第6面125、第7面126、第12面130及び第13面131を覆う。第1部21、第2部22及び第3部23は、互いに繋がっている。グレーズ層2は、一体的に形成されている。
【0085】
本実施形態によっても搬送改善と印字スピードの向上を達成することができる。また、本実施形態においては、凸部12の副走査方向yの両側の段差形状の段数が増加している。これにより、印字紙を副走査方向y両側から搬送する場合(いわゆる往復印刷の場合)であっても、さらなる搬送改善を実現することができる。
【0086】
〔付記1〕
主面及び前記主面から厚さ方向に突出する凸部を有する基板と、
前記凸部に配置されたグレーズ層と、
前記凸部上に配置された複数の発熱部を含む抵抗体層と、を備え、
前記主面は、副走査方向において、前記凸部の一方側に位置する第1面を含み、
前記凸部は、第2面、第3面、第4面及び第5面を有し、
前記第3面及び前記第5面は、前記主面に平行であり、
前記第2面及び前記第4面は、前記主面に対して傾いており、
前記第5面は、前記厚さ方向において前記第1面から最も離れたところに位置し、
前記第3面は、前記厚さ方向及び前記副走査方向において前記第1面と前記第5面との間に位置し、
前記第2面は、前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第1面と前記第3面との間に位置し、
前記第4面は、前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第3面と前記第5面との間に位置し、
前記グレーズ層は、前記第3面及び前記第4面を覆う第1部を含み、
前記第2面は、前記グレーズ層から露出している、
サーマルプリントヘッド。
〔付記2〕
前記グレーズ層は、前記第5面を覆う第2部をさらに含む、
付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記3〕
前記第2面が前記第1面と成す角度と、前記第4面が前記第3面と成す角度とは、等しい、
付記1または2に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記4〕
前記第1面、前記第3面及び前記第5面は、(100)面である、
付記1ないし3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記5〕
前記第1面と前記第3面との前記厚さ方向の距離は、前記第3面と前記第5面との前記厚さ方向の距離よりも大きい、
付記1ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記6〕
前記凸部は、第6面、第7面及び第8面をさらに有し、
前記第7面は、前記主面に平行であり、
前記第6面及び前記第8面は、前記主面に対して傾いており、
前記主面は、前記副走査方向において、前記凸部を介して、前記第1面の反対側に位置する第9面をさらに含み、
前記第7面は、前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第1面と前記第9面との間に位置し、
前記第6面は、前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第5面と前記第7面との間に位置し、
前記第8面は、前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第7面と前記第9面との間に位置し、
前記グレーズ層は、前記第6面及び前記第7面を覆うように形成された第3部をさらに含み、
前記第8面は、前記グレーズ層から露出している、
付記1ないし5のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記7〕
前記第3面と前記主面との前記厚さ方向の距離と、前記第7面と前記主面との前記厚さ方向の距離とは、互いに等しい、
付記6に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記8〕
前記第3面と前記第7面とは、同じ形状である、
付記7に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記9〕
前記第4面が前記第3面と成す角度と、前記第6面が前記第7面と成す角度とは、互いに等しい、
付記6ないし8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記10〕
前記第2面が前記第1面と成す角度と、前記第8面が前記第9面と成す角度とは、互いに等しい、
付記6ないし9のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記11〕
前記凸部は、第10面及び第11面をさらに有し、
前記第10面は、前記主面に対して傾いており、且つ前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第3面と前記第4面との間に位置し、
前記第11面は、前記主面に平行であり、且つ前記厚さ方向及び前記副走査方向において、前記第10面と前記第4面との間に位置し、
前記グレーズ層の前記第1部は、前記第10面及び前記第11面をさらに覆う、
付記1ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記12〕
前記第2面が前記第1面と成す角度と、前記第10面が前記第3面と成す角度と、前記第4面が前記第11面と成す角度とは、互いに等しい、
付記11に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記13〕
前記基板の熱伝導率は、前記グレーズ層の熱伝導率よりも大きい、
付記1ないし12のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記14〕
前記基板は、シリコンの単結晶半導体から形成されている、
付記1ないし13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記15〕
前記厚さ方向における前記第3面と前記第5面との距離は、前記グレーズ層の前記第2部の前記厚さ方向における最大厚さよりも大きい、
付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記16〕
前記グレーズ層の前記厚さ方向における最大厚さは、60μm以上100μm以上である、
付記1ないし15のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記17〕
前記複数の発熱部に流す電流を制御する駆動ICと、
前記主面に平行に配置されたFPCと、をさらに備え、
前記FPCは、前記主面に対向する部分を含む内側面を有し、
前記駆動ICは、前記内側面のうち前記主面から前記副走査方向に延出する部分に固定されている、
付記1ないし16のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記18〕
前記FPCを介して前記基板に接続された配線基板をさらに備える、
付記17に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記19〕
付記1ないし18のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドを備える、
サーマルプリンタ。
【符号の説明】
【0087】
A1,A11,A12,A2,A3,A4,A5:サーマルプリントヘッド
B1 :サーマルプリンタ
1 :基板
1A :材料基板
1A1 :主面
1A2 :裏面
1A3 :表面
2 :グレーズ層
3 :絶縁層
4 :抵抗体層
5 :電極層
6 :保護層
8A :第1マスク層
8B :第2マスク層
11 :主面
12 :凸部
13 :裏面
21 :第1部
22 :第2部
23 :第3部
41 :発熱部
51 :共通電極
52 :個別電極
61 :パッド用開口
71 :配線基板
72 :放熱部材
73 :駆動IC
74 :FPC
75 :コネクタ
76 :プラテンローラ
77 :保護樹脂
111 :第1面
112 :第9面
121 :第2面
122 :第3面
123 :第4面
124 :第5面
125 :第6面
126 :第7面
127 :第8面
128 :第10面
129 :第11面
130 :第12面
131 :第13面
132 :第14面
511 :基部
512 :帯状部
513 :延長部
521 :帯状部
522 :パッド部
741 :内側面
H0,H1,H2,H3,H4:高さ
T0 :厚さ
T1 :最大厚さ
x :主走査方向
y :副走査方向
z :厚さ方向
α1,α2,α3,α4:角度
図1
図2
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