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特開2024-24914電力使用量予測方法及び電力使用量予測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024914
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】電力使用量予測方法及び電力使用量予測装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
H02J3/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127898
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 泰則
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 政典
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA02
(57)【要約】
【課題】工場の電力使用量を操業計画を用いて精度良く予測可能な電力使用量予測装置等を提供する。
【解決手段】電力使用量予測装置100は、操業時刻に関わる工場の操業計画を取得する操業計画取得手段10と、過去の所定時間内での操業時刻に関わる前記工場の操業実績を取得する操業実績取得手段20と、前記過去の所定時間内での前記操業計画に対する前記操業実績の変化の度合いを算出する操業実績変化算出手段30と、前記操業実績の変化の度合いに基づき、将来の前記操業計画を修正する操業計画修正手段40と、修正後の前記操業計画に基づき、将来の前記工場の電力使用量を予測する電力使用量予測手段50と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操業時刻に関わる工場の操業計画を取得する操業計画取得ステップと、
過去の所定時間内での操業時刻に関わる前記工場の操業実績を取得する操業実績取得ステップと、
前記過去の所定時間内での前記操業計画に対する前記操業実績の変化の度合いを算出する操業実績変化算出ステップと、
前記操業実績の変化の度合いに基づき、将来の前記操業計画を修正する操業計画修正ステップと、
修正後の前記操業計画に基づき、将来の前記工場の電力使用量を予測する電力使用量予測ステップと、を有する、
電力使用量予測方法。
【請求項2】
前記操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内である場合、前記操業計画修正ステップにおいて、前記操業実績の変化の度合いを一律に用いて、将来の前記操業計画を修正し、
前記操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内でない場合、前記操業計画修正ステップにおいて、前記操業実績の変化の度合いが操業時刻に対して単調増加又は単調減少であると仮定して、将来の前記操業計画を修正する、
請求項1に記載の電力使用量予測方法。
【請求項3】
前記操業計画修正ステップにおいて、過去の前記操業実績の変化の度合いを入力とし、将来の前記操業計画の修正の度合いを出力とする、機械学習によって生成された学習モデルを用いて、将来の前記操業計画の修正の度合いを算出し、算出した将来の前記操業計画の修正の度合いに基づき、将来の前記操業計画を修正する、
請求項1に記載の電力使用量予測方法。
【請求項4】
操業時刻に関わる工場の操業計画を取得する操業計画取得手段と、
過去の所定時間内での操業時刻に関わる前記工場の操業実績を取得する操業実績取得手段と、
前記過去の所定時間内での前記操業計画に対する前記操業実績の変化の度合いを算出する操業実績変化算出手段と、
前記操業実績の変化の度合いに基づき、将来の前記操業計画を修正する操業計画修正手段と、
修正後の前記操業計画に基づき、将来の前記工場の電力使用量を予測する電力使用量予測手段と、を備える、
電力使用量予測装置。
【請求項5】
前記操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内である場合、前記操業計画修正手段は、前記操業実績の変化の度合いを一律に用いて、将来の前記操業計画を修正し、
前記操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内でない場合、前記操業計画修正手段は、前記操業実績の変化の度合いが操業時刻に対して単調増加又は単調減少であると仮定して、将来の前記操業計画を修正する、
請求項4に記載の電力使用量予測装置。
【請求項6】
前記操業計画修正手段は、過去の前記操業実績の変化の度合いを入力とし、将来の前記操業計画の修正の度合いを出力とする、機械学習によって生成された学習モデルを具備し、
前記操業計画修正手段は、前記学習モデルを用いて、将来の前記操業計画の修正の度合いを算出し、算出した将来の前記操業計画の修正の度合いに基づき、将来の前記操業計画を修正する、
請求項4に記載の電力使用量予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所等の工場の電力使用量を操業計画を用いて精度良く予測可能な電力使用量予測方法及び電力使用量予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所等の多くの電力を使用する工場では、電力会社と電力購入契約を締結し、この電力会社から電力を購入している。一般的に、電力購入契約では、所定時間(例えば、30分間)内に使用する電力量の最大値に基づき契約電力量が決定されており、実際の電力使用量が契約電力量を超過すると違約金が課せられる。一方で、実際の電力使用量が大幅に契約電力量を下回った場合にも契約電力量分の金額を支払う仕組みとなっている。このような契約の下では、工場側では、常に電力使用量が安定に保たれるように調整することが経済的に重要であり、そのためには所定時間先までの将来の工場の電力使用量を精度良く予測する必要がある。
【0003】
例えば、製鉄所全体の電力使用量のうち、圧延工場では電力使用量が多く、なお且つ、被圧延材の製造条件に応じて電力使用量が大きく異なる。したがって、所定時間先までの将来の電力使用量を精度良く予測するためには、所定時間内に圧延される被圧延材の情報である工場の操業計画を正確に把握して、電力使用量を予測することが重要であり、例えば、特許文献1~3には、工場の操業計画に基づいて電力使用量を予測する方法が提案されている。
【0004】
ここで、工場の設備トラブル、操業時刻の繰上げ操業、圧延機の前後工程(加熱炉、コイル置き場等)のボトルネック起因などで、実際の操業(操業実績)に計画からの変動が生じると、被圧延材の圧延時刻が操業計画時の圧延予定時刻と乖離し、電力使用量の予測精度が大幅に悪化してしまう。このため、操業実績と操業計画とに乖離が生じた場合、操業計画を修正することが、特許文献1、2に提案されている。
しかしながら、特許文献1には、当初の操業計画に製造進捗やオペレータからの修正量を加えると記載されているだけで、具体的な修正方法は提案されていない。また、特許文献2には、被圧延材の圧延開始予定時刻と圧延開始実績時刻との差の分だけ、将来の被圧延材の圧延開始予定時刻を一律で修正する方法(例えば、圧延開始実績時刻が圧延開始予定時刻より6分遅い場合には、将来の被圧延材全ての圧延開始予定時刻を6分間遅らせる方法)が提案されているに過ぎない。
【0005】
工場の設備トラブルや操業時刻の繰上げ操業により、一定時間だけ圧延開始実績時刻が遅くなったり、早くなったりしている場合には、特許文献2に記載のように、将来の圧延開始予定時刻を一律で修正すれば問題ないが、圧延機の前後工程がボトルネックとなっている場合には(例えば、前工程の熱間圧延工場の加熱炉で被圧延材の加熱時間が不足気味で被圧延材が目標温度に加熱されるまで圧延機が待機せざるを得なかったり、後工程の圧延完了材(コイル)を載置するコイル置き場が満杯のため圧延開始実績時刻が遅れている場合など)、ボトルネックが解消されるまでは、被圧延材の圧延完了時刻から、次の被圧延材の圧延開始予定時刻までの時間間隔が、通常より長めになるように調整して操業(以下、これを「ピッチダウン操業」という)する必要がある。このような場合には、圧延開始予定時刻を一律に修正するのではなく、被圧延材間の時間間隔が長くなることも考慮して、操業計画を修正する必要がある。
【0006】
以上に述べたように、製鉄所等の工場の電力使用量を予測する上で、工場の操業計画を用いる場合、操業実績と操業計画とに乖離が生じると予測精度が悪化する。この精度悪化を抑制するために、将来の操業計画を修正して、電力使用量予測に用いればよいが、この際、操業実績と操業計画とが乖離した原因に応じて、適切な修正を行うことが重要である。
しかしながら、特許文献1、2には、この点について何ら提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2015/178256号
【特許文献2】特開2000-217253号公報
【特許文献3】特開2017-70134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、製鉄所等の工場の電力使用量を操業計画を用いて精度良く予測可能な電力使用量予測方法及び電力使用量予測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、操業時刻に関わる工場の操業計画を取得する操業計画取得ステップと、過去の所定時間内での操業時刻に関わる前記工場の操業実績を取得する操業実績取得ステップと、前記過去の所定時間内での前記操業計画に対する前記操業実績の変化の度合いを算出する操業実績変化算出ステップと、前記操業実績の変化の度合いに基づき、将来の前記操業計画を修正する操業計画修正ステップと、修正後の前記操業計画に基づき、将来の前記工場の電力使用量を予測する電力使用量予測ステップと、を有する、電力使用量予測方法を提供する。
【0010】
本発明において、「操業時刻に関わる工場の操業計画」とは、操業の開始予定時刻、操業の終了予定時刻、所定時間当たりの操業予定回数など、工場の操業計画のうち、操業の時刻に関わる操業計画を意味する。例えば、工場が製鉄所の圧延工場である場合、「操業時刻に関わる工場の操業計画」としては、被圧延材のコイル毎の圧延開始予定時刻、被圧延材のコイル毎の圧延終了予定時刻、所定時間当たりに圧延する被圧延材のコイル数の予定値などを例示できる。
また、本発明において、「操業時刻に関わる前記工場の操業実績」とは、操業の開始実績時刻、操業の終了実績時刻、所定時間当たりの操業実績回数など、工場の操業実績のうち、操業の時刻に関わる操業実績を意味する。例えば、工場が製鉄所の圧延工場である場合、「操業時刻に関わる前記工場の操業実績」としては、被圧延材のコイル毎の圧延開始実績時刻、被圧延材のコイル毎の圧延終了実績時刻、所定時間当たりに圧延した被圧延材のコイル数の実績値などを例示できる。
さらに、本発明において「前記操業計画に対する前記操業実績の変化の度合い」とは、操業実績と操業計画との差、又は、操業実績と操業計画との比を意味する。例えば、工場が製鉄所の圧延工場である場合、「前記操業計画に対する前記操業実績の変化の度合い」としては、被圧延材のコイル毎の圧延開始実績時刻と圧延開始予定時刻との差、被圧延材のコイル毎の圧延終了実績時刻と圧延終了予定時刻との差、所定時間当たりに圧延した被圧延材のコイル数の実績値/所定時間当たりに圧延する被圧延材のコイル数の予定値などを例示できる。
本発明によれば、操業実績変化算出ステップにおいて、過去の所定時間内での操業計画に対する操業実績の変化の度合いを算出し、操業計画修正ステップにおいて、前記操業実績の変化の度合いに基づき、将来の操業計画を修正する。換言すれば、操業実績と操業計画とが乖離した原因に応じて変わり得る操業実績の変化の度合いを算出し、この操業実績の変化の度合いに基づき、将来の操業計画を修正するため、操業実績と操業計画とが乖離した原因に応じて将来の操業計画を修正することになる。このため、将来の操業計画を適切に修正でき、ひいては、修正後の操業計画に基づき、将来の工場の電力使用量を精度良く予測可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内である場合、前記操業計画修正ステップにおいて、前記操業実績の変化の度合いを一律に用いて、将来の前記操業計画を修正し、前記操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内でない場合、前記操業計画修正ステップにおいて、前記操業実績の変化の度合いが操業時刻に対して単調増加又は単調減少であると仮定して、将来の前記操業計画を修正する。
【0012】
上記の好ましい方法において、「前記操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内である場合」とは、操業計画に対する操業実績の変化の度合いがほぼ一定である場合を意味し、具体的には、操業実績と操業計画との差が所定範囲内である場合、又は、操業実績と操業計画との比が所定範囲内である場合を意味する。例えば、工場が製鉄所の圧延工場である場合、被圧延材のコイル毎の圧延開始実績時刻と圧延開始予定時刻との差の所定時間内での累積値や、被圧延材のコイル毎の圧延終了実績時刻と圧延終了予定時刻との差の所定時間内での累積値が所定範囲内であったり、所定時間当たりに圧延した被圧延材のコイル数の実績値/所定時間当たりに圧延する被圧延材のコイル数の予定値が所定範囲内であることを例示できる。
また、上記の好ましい方法において、「前記操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内でない場合」とは、操業計画に対する操業実績の変化の度合いがほぼ一定とはいえない場合を意味し、具体的には、操業実績と操業計画との差が所定範囲内でない場合、又は、操業実績と操業計画との比が所定範囲内でない場合を意味する。例えば、工場が製鉄所の圧延工場である場合、被圧延材のコイル毎の圧延開始実績時刻と圧延開始予定時刻との差の所定時間での累積値や、被圧延材のコイル毎の圧延終了実績時刻と圧延終了予定時刻との差の所定時間での累積値が所定範囲内でなかったり、所定時間当たりに圧延した被圧延材のコイル数の実績値/所定時間当たりに圧延する被圧延材のコイル数の予定値が所定範囲内でないことを例示できる。
上記の好ましい方法によれば、操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内である場合には、操業実績と操業計画とが乖離した原因が工場の設備トラブルや操業時刻の繰上げ操業等にあると考え、操業計画修正ステップにおいて、操業実績の変化の度合いを一律に用いて、将来の操業計画を修正する。例えば、工場が製鉄所の圧延工場である場合、被圧延材のコイル毎の圧延開始予定時刻を、操業実績の変化の度合い分だけ、一律に遅らせる等の修正を施すことになる。また、操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内でない場合には、操業実績と操業計画とが乖離した原因がピッチダウン操業等にあると考え、操業計画修正ステップにおいて、操業実績の変化の度合いが操業時刻に対して単調増加又は単調減少であると仮定して、将来の操業計画を修正する。例えば、工場が製鉄所の圧延工場である場合、被圧延材のコイル毎の圧延開始実績時刻と圧延開始予定時刻との差が操業時刻に対して単調増加であると仮定して、操業時刻が遅いほど、すなわち、圧延順序が遅いコイルほど、圧延開始予定時刻の遅延量を大きくする等の修正を施すことになる。
したがって、上記の好ましい方法によれば、操業実績と操業計画とが乖離した原因に応じて、将来の操業計画の修正方法を場合分けすることになり、将来の操業計画を適切に修正可能である。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記操業計画修正ステップにおいて、過去の前記操業実績の変化の度合いを入力とし、将来の前記操業計画の修正の度合いを出力とする、機械学習によって生成された学習モデルを用いて、将来の前記操業計画の修正の度合いを算出し、算出した将来の前記操業計画の修正の度合いに基づき、将来の前記操業計画を修正する。
【0014】
上記の好ましい方法において、「将来の前記操業計画の修正の度合い」とは、修正後の操業計画と修正前の操業計画との差、又は、修正後の操業計画と修正前の操業計画との比を意味する。例えば、工場が製鉄所の圧延工場である場合、被圧延材のコイル毎の修正後の圧延開始予定時刻と修正前の圧延開始予定時刻との差、被圧延材のコイル毎の修正後の圧延終了予定時刻と修正前の圧延終了予定時刻との差、所定時間当たりに圧延する修正後の被圧延材のコイル数の予定値/所定時間当たりに圧延する修正前の被圧延材のコイル数の予定値を例示できる。
操業実績と操業計画とが乖離した原因は、必ずしも何れか一つの原因に限られるものではなく、所定時間内において、工場の設備トラブル、操業時刻の繰上げ操業、ピッチダウン操業等の原因が混在する場合もあり得る。
上記の好ましい方法によれば、将来の操業計画を修正する際に、操業実績の変化の度合いを入力とし、将来の操業計画の修正の度合いを出力とする、機械学習によって生成された学習モデルを用いるため、乖離の原因が混在する場合であっても、将来の操業計画を適切に修正できることが期待できる。
なお、学習モデルを機械学習によって生成する際には、過去に取得した操業計画と操業実績との組み合わせを教師データとして用いればよい。具体的には、過去に取得したある操業時刻より前の操業計画と操業実績とから算出した操業実績の変化の度合いを教師データの入力とし、過去に取得したある操業時刻よりも後の操業計画と操業実績とから算出した操業計画の修正の度合い(ある操業時刻よりも後の操業実績に合致させるために必要な、ある操業時刻よりも後の操業計画の修正の度合い)を教師データの出力として用いればよい。
【0015】
前記課題を解決するため、本発明は、操業時刻に関わる工場の操業計画を取得する操業計画取得手段と、過去の所定時間内での操業時刻に関わる前記工場の操業実績を取得する操業実績取得手段と、前記過去の所定時間内での前記操業計画に対する前記操業実績の変化の度合いを算出する操業実績変化算出手段と、前記操業実績の変化の度合いに基づき、将来の前記操業計画を修正する操業計画修正手段と、修正後の前記操業計画に基づき、将来の前記工場の電力使用量を予測する電力使用量予測手段と、を備える、電力使用量予測装置としても提供される。
【0016】
好ましくは、前記操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内である場合、前記操業計画修正手段は、前記操業実績の変化の度合いを一律に用いて、将来の前記操業計画を修正し、前記操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内でない場合、前記操業計画修正手段は、前記操業実績の変化の度合いが操業時刻に対して単調増加又は単調減少であると仮定して、将来の前記操業計画を修正する。
【0017】
好ましくは、前記操業計画修正手段は、過去の前記操業実績の変化の度合いを入力とし、将来の前記操業計画の修正の度合いを出力とする、機械学習によって生成された学習モデルを具備し、前記操業計画修正手段は、前記学習モデルを用いて、将来の前記操業計画の修正の度合いを算出し、算出した将来の前記操業計画の修正の度合いに基づき、将来の前記操業計画を修正する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操業実績と操業計画とが乖離した原因に応じて将来の操業計画を適切に修正でき、ひいては、修正後の操業計画に基づき、将来の工場の電力使用量を精度良く予測可能である。このため、精度良く予測した電力使用量に基づき、この電力使用量が契約電力量を超過しないように、工場の操業や自家発電量を調整することで、違約金を課せられるおそれが低減する。したがって、工場の製造コストを最小限に抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る電力使用量予測装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示す電力使用量予測装置を用いて実行する電力使用量予測方法の概略手順を示すフロー図である。
図3】第1実施形態の操業計画修正手段40が実行する操業計画修正ステップST4の概略手順を示すフロー図である。
図4】第1実施形態の操業計画修正手段40が実行する操業計画修正ステップST4の一例を示すタイミングチャートである。
図5】第2実施形態の操業計画修正手段40が実行する操業計画修正ステップST4の概略手順を示すフロー図である。
図6】第2実施形態の操業計画修正手段40が具備する学習モデル(学習モデルの入出力項目)の一例を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の実施形態(第1実施形態及び第2実施形態)について、工場が製鉄所の圧延工場である場合を例に挙げて説明する。
【0021】
<共通事項>
最初に、第1実施形態及び第2実施形態で共通する事項について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電力使用量予測装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、図1に示す電力使用量予測装置を用いて実行する電力使用量予測方法の概略手順を示すフロー図である。
図1に示すように、本実施形態に係る電力使用量予測装置100は、操業計画取得手段10と、操業実績取得手段20と、操業実績変化算出手段30と、操業計画修正手段40と、電力使用量予測手段50と、を備える。
電力使用量予測装置100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の1つ又は複数のハードウェアプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の1つ又は複数のメモリを具備し、メモリに格納される1つ又は複数のプログラムが1つ又は複数のハードウェアプロセッサにより実行されることで各種の演算を実行する。これにより、電力使用量予測装置100は、操業計画取得手段10、操業実績取得手段20、操業実績変化算出手段30、操業計画修正手段40及び電力使用量予測手段50として機能する。なお、電力使用量予測装置100は、PLC(Programmable Logic Controller)であってもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアによって実現してもよい。
【0022】
操業計画取得手段10は、図2に示す操業計画取得ステップST1を実行する。具体的には、操業計画取得手段10は、例えば、圧延工場の生産を管理するコンピュータ(図示せず)又は操業を制御するプロセスコンピュータ(図示せず)から、操業時刻に関わる圧延工場の操業計画(例えば、被圧延材のコイル毎の圧延開始予定時刻、被圧延材のコイル毎の圧延終了予定時刻、所定時間当たりに圧延する被圧延材のコイル数の予定値など)を予め取得して記憶する。この操業計画取得手段10が取得する操業時刻に関わる操業計画は、現在時刻(電力使用量予測手段50によって電力使用量を予測する(予測演算を行う)時刻)の前後に亘る操業計画である。なお、操業計画取得手段10は、上記の操業時刻に関わる操業計画以外にも、後述の電力使用量予測手段50による電力使用量の予測に必要な操業条件(例えば、被圧延材のコイル毎の材質、圧延前の厚み・幅・長さ、圧延後の厚み・幅・長さ等)についても、操業計画として予め取得して記憶する。
【0023】
操業実績取得手段20は、図2に示す操業実績取得ステップST2を実行する。具体的には、操業実績取得手段20は、現在時刻よりも過去の所定時間内(例えば、過去30分間)での操業時刻に関わる工場の操業実績(例えば、被圧延材のコイル毎の圧延開始実績時刻、被圧延材のコイル毎の圧延終了実績時刻、所定時間当たりに圧延した被圧延材のコイル数の実績値など)を逐次取得して記憶する。
【0024】
操業実績変化算出手段30は、図2に示す操業実績変化算出ステップST3を実行する。具体的には、操業実績変化算出手段30は、操業計画取得手段10で取得した操業計画と、操業実績取得手段20で取得した過去の所定時間内での操業実績に基づき、過去の所定時間内での操業計画に対する操業実績の変化の度合い(例えば、被圧延材のコイル毎の圧延開始実績時刻と圧延開始予定時刻との差、被圧延材のコイル毎の圧延終了実績時刻と圧延終了予定時刻との差、所定時間当たりに圧延した被圧延材のコイル数の実績値/所定時間当たりに圧延する被圧延材のコイル数の予定値など)を算出する。
【0025】
操業計画修正手段40は、図2に示す操業計画修正ステップST4を実行する。具体的には、操業計画修正手段40は、操業実績変化算出手段30で算出した操業実績の変化の度合いに基づき、将来の操業計画を修正する。
後述のように、この操業計画修正手段40による操業計画修正ステップST4の具体的な内容が、第1実施形態と第2実施形態とでは異なるものとなっている。
【0026】
電力使用量予測手段50は、図2に示す電力使用量予測ステップST5を実行する。具体的には、電力使用量予測手段50は、操業計画修正手段40によって修正した操業計画に基づき、将来の圧延工場の電力使用量を予測する。
なお、修正後の操業計画に基づく電力使用量の予測方法としては、例えば、特許文献3に記載のように、過去の所定時間内での電力使用量の実績値を取得し、時系列予測モデルに基づき算出した電力使用量予測値と、操業計画として取得された被圧延材のコイル毎の圧延条件、すなわち、圧延予定時間(修正後の操業計画によって得られる圧延予定時間)、材質、圧延前の厚み・幅・長さ、圧延後の厚み・幅・長さ等を用いて、重回帰モデルに基づき算出した電力使用量予測値と、を加算することによって予測する方法を用いることが可能である。修正後の操業計画に基づく電力使用量の予測方法としては、特許文献3に記載の方法に限らず、従来公知の方法を適宜用いることが可能であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0027】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図3は、第1実施形態の操業計画修正手段40が実行する操業計画修正ステップST4の概略手順を示すフロー図である。
図3に示すように、第1実施形態の操業計画修正手段40は、操業実績変化算出手段30で算出した(操業実績変化算出ステップST3で算出した)操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内であるか否かを判断する(図3のST41)。
そして、操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内である場合(図3のST41で「YES」の場合)、操業計画修正手段40は、操業実績の変化の度合いを一律に用いて、将来の操業計画を修正する(図3のST42)。
一方、操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内でない場合(図3のST41で「NO」の場合)、操業計画修正手段40は、操業実績の変化の度合いが操業時刻に対して単調増加又は単調減少であると仮定して、将来の操業計画を修正する(図3のST43)。
【0028】
図4は、第1実施形態の操業計画修正手段40が実行する操業計画修正ステップST4の一例を示すタイミングチャートである。
図4に示す「No.1」のブロックの左端が、被圧延材のNo.1コイルの圧延開始時刻(操業計画及び修正後の操業計画のブロックについては圧延開始予定時刻であり、操業実績のブロックについては圧延開始実績時刻である)を意味する。被圧延材のNo.2~No.20コイルについても同様である。
【0029】
図4(a)に示す例は、現在時刻(電力使用量予測手段50によって電力使用量を予測する(予測演算を行う)時刻)よりも過去の所定時間内(図4(a)に示す例では、過去30分間)に圧延開始した被圧延材のNo.1~No.10のコイルのうち、No.2コイル以降の圧延開始実績時刻が圧延開始予定時刻に対して一律に2分遅延した例を示す。
例えば、「操業実績の変化の度合い」として、被圧延材のコイル毎の圧延開始実績時刻と圧延開始予定時刻との差を用い、「予め定めた所定範囲」を過去の所定時間の10%以下(所定時間が30分間の場合には3分以下)と定義すると、図4(a)に示す例では、過去30分間での圧延開始実績時刻の遅延時間の累積値Δtが2分であり、3分以下となるため、操業実績の変化の度合いが所定範囲内であると判断され、操業計画修正手段40は、操業実績の変化の度合いを一律に用いて、将来の操業計画を修正する(図3のST42)。具体的には、図4(a)に示すように、将来の操業計画(No.11コイル以降の圧延開始予定時刻)を、遅延時間の累積値Δt(2分)だけ一律に遅らせる修正を施す。換言すれば、操業計画修正手段40は、下記の式(1)を用いて、現在時刻以降、n(n=1、2、・・・)番目に圧延する予定の被圧延材のコイルの圧延開始予定時刻tをtn、revに修正する。
n、rev=t+Δt ・・・(1)
なお、過去30分間に圧延開始した被圧延材の圧延開始実績時刻が圧延開始予定時刻と等しかった場合、すなわち、操業計画通りの操業実績であった場合には、Δt=0となり、操業実績の変化の度合いが予め定めた所定範囲内(上記の例では、3分以下)であるため、操業計画修正手段40は、操業実績の変化の度合いを一律に用いて、将来の操業計画を修正することになる(図3のST42)。ただし、この場合には、操業実績の変化の度合いが0であるため、修正後の操業計画は、予め取得した操業計画と同一になる(すなわち、図3のST42における「修正」には、修正量=0の場合も含まれる)。
【0030】
図4(b)に示す例は、現在時刻よりも過去の所定時間内(図4(b)に示す例では、過去30分間)に圧延開始予定であった被圧延材のNo.1~No.10のコイルのうち、圧延機の前工程である加熱炉で被圧延材の加熱時間が不足していたため、被圧延材が目標温度に加熱されるまで加熱炉からの抽出を待ち、この間、圧延機の待機が発生して、圧延開始実績時刻が遅延し、その遅延時間が徐々に拡大していった例を示す。図4(b)に示す例では、過去30分間での圧延開始実績時刻の遅延時間の累積値Δtが6分、すなわち、現在時刻で6分の遅延が生じており、過去30分間に予定していたNo.1~No.10のコイルのうち、実際にはNo.1~No.8の8コイルしか圧延できていない。
図4(b)に示す例では、過去30分間での圧延開始実績時刻の遅延時間の累積値Δtが6分であり、3分以下とならないため、操業実績の変化の度合いが所定範囲内でないと判断され、操業計画修正手段40は、操業実績の変化の度合いが操業時刻に対して単調増加又は単調減少であると仮定(図4(b)に示す例では、単調増加であると仮定)して、将来の操業計画(No.9コイル以降の圧延開始予定時刻)を修正する(図3のST43)。具体的には、操業計画修正手段40は、下記の式(2)を用いて、現在時刻以降、n(n=1、2、・・・)番目に圧延する予定の被圧延材のコイルの圧延開始予定時刻tをtn、revに修正する。なお、下記の式(2)に示すNは、過去の所定時間内(図4(b)に示す例では、過去30分間)に圧延した被圧延材の実績コイル数(図4(b)に示す例では、N=8)である。
n、rev=t+Δt+(n-1)・Δt/N・・・(2)
図4(b)に示す例では、例えば、No.11のコイルについては、上記の式(2)にΔt=6分、n=3、N=8を代入することで、tn、rev=t+7.5分となるため、圧延開始予定時刻の修正量(tn、rev-t)の小数点以下を切り捨てるとすれば、修正量は7分となり、No.11コイルの圧延開始予定時刻を7分遅らせる修正を施すことになる。同様に、例えば、No.17のコイルについては、上記の式(2)にΔt=6分、n=9、N=8を代入することで、tn、rev=t+12分となるため、修正量は12分となり、No.17コイルの圧延開始予定時刻を12分遅らせる修正を施すことになる。
【0031】
なお、図4(b)に示す例では、圧延開始予定時刻を1分刻みで考えているため、式(2)で計算した修正量(tn、rev-t)が整数にならない場合には、小数点以下を切り捨てて圧延開始予定時刻を修正しているが、小数点以下を四捨五入することも可能である。また、時間分解能を細かくして、圧延開始予定時刻を1秒刻みとすることも可能である。さらに、式(2)に示すNは必ずしも整数である必要はない。図4(a)に示す例のように、現在時刻においてコイルNo.10が圧延途中の場合、過去30分間に圧延したコイルは、コイルNo.1~No.9と、コイルNo.10の総圧延時間の1/3であり、N=9.33として計算すればよい。過去30分前に、あるコイルが圧延途中の場合も同様である。
【0032】
以上のようにして、第1実施形態の操業計画修正手段40が図4に示すような操業計画修正ステップST4を実行することで、将来(例えば、現在時刻から将来30分間)に圧延が予定されている被圧延材のコイルの圧延開始予定時刻と圧延開始実績時刻との差を低減することが可能である。
【0033】
以下、第1実施形態の操業計画修正手段40によって、将来の操業計画を適切に修正できるか否かを評価した結果の一例について説明する。
ある時刻t以降、30分間に圧延された被圧延材のコイル数の実績値(実績コイル数)をMactとする。また、修正前の圧延開始予定時刻に基づいて算出される、時刻t以降、30分間に圧延される予定の被圧延材のコイル数の計画数(計画コイル数)をMとする。Mは、t≦t+30<tM+1を満たす計画コイル数である。ここで、tは、時刻t以降、M番目に圧延される予定の被圧延材のコイルの圧延開始予定時刻である。同様に、tM+1は、時刻t以降、M+1番目に圧延される予定の被圧延材のコイルの圧延開始予定時刻である。そして、時刻tを10分ずつ変更して、k組のMact(各組のMactをM actと表記する。i=1、2、・・・、k)と、k組のM(各組のMをMと表記する。i=1、2、・・・、k)とを算出し、以下の式(3)に示す二乗平均平方誤差RMSEを算出する。
【数1】
【0034】
同様に、図3のST42又はST43によって修正した後の圧延開始予定時刻tn、revに基づいて算出される、時刻t以降、30分間に圧延される予定の被圧延材のコイル数の計画数(計画コイル数)をMrevとする。Mrevは、t rev≦t+30<tM+1 revを満たす計画コイル数である。ここで、t revは、時刻t以降、M番目に圧延される予定の被圧延材のコイルの修正後の圧延開始予定時刻である。同様に、tM+1 revは、時刻t以降、M+1番目に圧延される予定の被圧延材のコイルの修正後の圧延開始予定時刻である。そして、時刻tを10分ずつ変更して、k組のMrev(各組のMrevをM revと表記する。i=1、2、・・・、k)を算出し、以下の式(4)に示す二乗平均平方誤差RMSEを算出する。なお、式(4)のM actは、式(3)のM actと同じ値である。
【数2】
【0035】
k=259組のデータを用いて、式(3)及び式(4)に示すRMSEをそれぞれ算出した結果、式(4)に示すRMSEは、式(3)に示すRMSEに対して、14.5%低減することを確認できた。
この結果は、第1実施形態の操業計画修正手段40によって、将来の操業計画を適切に修正でき、将来に圧延が予定されている被圧延材のコイルの圧延開始予定時刻と圧延開始実績時刻との差を低減可能であることを示すものである。
【0036】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
図5は、第2実施形態の操業計画修正手段40が実行する操業計画修正ステップST4の概略手順を示すフロー図である。
第2実施形態の操業計画修正手段40は、操業実績変化算出手段30で算出した(操業実績変化算出ステップST3で算出した)過去の操業実績の変化の度合いを入力とし、将来の操業計画の修正の度合いを出力とする、機械学習によって生成された学習モデルを具備する。
この学習モデルは、過去に取得した操業計画と操業実績との組み合わせを教師データとする機械学習によって生成され、操業計画修正手段40に記憶される(図5のST6)。具体的には、過去に取得したある操業時刻より前の操業計画と操業実績とから算出した操業実績の変化の度合いを教師データの入力とし、過去に取得したある操業時刻よりも後の操業計画と操業実績とから算出した操業計画の修正の度合い(ある操業時刻よりも後の操業実績に合致させるために必要な、ある操業時刻よりも後の操業計画の修正の度合い)を教師データの出力として用いた機械学習によって生成される。
第2実施形態の操業計画修正手段40は、上記の学習モデルを用いて、将来の操業計画の修正の度合いを算出する(図5のST44)。そして、算出した将来の操業計画の修正の度合いに基づき、将来の操業計画を修正する(図5のST45)。
【0037】
図6は、第2実施形態の操業計画修正手段40が具備する学習モデル(学習モデルの入出力項目)の一例を概念的に示す図である。
図6に示す例では、第2実施形態の操業計画修正手段40は、図6(a)に入出力項目を示す学習モデル1、図6(b)に入出力項目を示す学習モデル2、及び、図6(c)に入出力項目を示す学習モデル3の3個の学習モデルを具備している。
図6に示す学習モデル1~3は、過去の操業実績の変化の度合いとして、10分間で圧延した被圧延材の実績コイル数と計画コイル数との比(操業計画や操業実績が、圧延開始時刻で表されている場合には、10分間で圧延開始されるコイル数を計画コイル数又は実績コイル数に換算して使用すればよい)、すなわち実績コイル数/計画コイル数(現在時刻~10分前、10分前~20分前、20分前~30分前のそれぞれについての実績コイル数/計画コイル数)を用い、これらを各学習モデル1~3への入力(説明変数)としたものである。各学習モデル1~3への入力は同一である。
【0038】
また、図6に示す学習モデル1~3は、将来の操業計画の修正の度合いとして、計画コイル数の修正比率(10分間で圧延する修正後の被圧延材の計画コイル数/10分間で圧延する修正前の被圧延材の計画コイル数)を用い、学習モデル1の出力(目的変数)を現在時刻~10分後の計画コイル数の修正比率とし、学習モデル2の出力(目的変数)を10分後~20分後の計画コイル数の修正比率とし、学習モデル3の出力(目的変数)を20分後~30分後の計画コイル数の修正比率としたものである。なお、各学習モデル1~3の機械学習を行う際には、学習モデル1の教師データの出力として、過去に取得したある操業時刻~10分後の被圧延材の実績コイル数/修正前の被圧延材の計画コイル数が与えられ、学習モデル2の教師データの出力として、10分後~20分後の被圧延材の実績コイル数/修正前の被圧延材の計画コイル数が与えられ、学習モデル3の教師データの出力として、20分後~30分後の被圧延材の実績コイル数/修正前の被圧延材の計画コイル数が与えられることになる。
【0039】
上記のようにして生成された学習モデル1~3を用いることで、現在時刻~10分後、10分後~20分後、20分後~30分後の計画コイル数の修正比率がそれぞれ算出される。操業計画修正手段40は、この計画コイル数の修正比率を用いて、将来の操業計画を修正する(図5のST45)。具体的には、操業計画修正手段40は、各学習モデル1~3によって算出された修正比率をrとすると、修正前の圧延開始予定時刻(現在時刻のx分後とする)に対して、修正後の圧延開始予定時刻を現在時刻のx/r分後に修正する。すなわち、操業計画修正手段40は、現在時刻以降、n(n=1、2、・・・)番目に圧延する予定の被圧延材のコイルの圧延開始予定時刻tを、以下の式(5)を用いて、tn、revに修正する。
n、rev=t+x/r-x ・・・(5)
【0040】
学習モデル1~3としては、例えば、ランダムフォレスト回帰モデルを用いることができるが、これに限られるものではなく、ニューラルネットワークやサポートベクタマシンなど、他の機械学習モデルを用いることも可能である。
【0041】
以下、第2実施形態の操業計画修正手段40によって、将来の操業計画を適切に修正できるか否かを評価した結果の一例について説明する。
第2実施形態の操業計画修正手段40が具備する学習モデル1~3を用い、現在時刻から過去30分間の操業実績及び操業計画に基づき、将来30分間の操業計画を修正した結果、将来30分間の実績コイル数と計画コイル数との二乗平均平方誤差RMSEは、操業計画の修正前に対して、修正後には27.6%低減することを確認できた。その内訳は、現在時刻~10分後の実績コイル数と計画コイル数とのRMSEは16.2%低減、10分後~20分後の実績コイル数と計画コイル数とのRMSEは9.4%低減、20分後~30分後の実績コイル数と計画コイル数とのRMSEが10.6%低減したものであった。ここで、上記RMSEの算出は、第1実施形態の場合と同一のk=259組のデータを用いた。
【0042】
なお、操業計画の修正は、現在時刻から30分後に限られず、例えば、現在時刻から100分後までの操業計画を修正することも可能である。また、上記の説明では、出力(将来の修正時間)の異なる学習モデル1~3を複数個(3個)作成しているが、これに限られず、単数の学習モデルしか作成しなくてもよいし、2個又は4個以上の学習モデルを作成してもよい。
【0043】
第2実施形態の操業計画修正手段40が図5に示すような操業計画修正ステップST4を実行することで、所定時間内において、工場の設備トラブル、操業時刻の繰上げ操業、ピッチダウン操業等の操業実績と操業計画とが乖離する原因が混在する場合であっても、将来の操業計画を適切に修正できることが期待できる。
【符号の説明】
【0044】
10・・・操業計画取得手段
20・・・操業実績取得手段
30・・・操業実績変化算出手段
40・・・操業計画修正手段
50・・・電力使用量予測手段
100・・・電力使用量予測装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6