IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-密封装置および密封装置の製造方法 図1
  • 特開-密封装置および密封装置の製造方法 図2
  • 特開-密封装置および密封装置の製造方法 図3
  • 特開-密封装置および密封装置の製造方法 図4
  • 特開-密封装置および密封装置の製造方法 図5
  • 特開-密封装置および密封装置の製造方法 図6
  • 特開-密封装置および密封装置の製造方法 図7
  • 特開-密封装置および密封装置の製造方法 図8
  • 特開-密封装置および密封装置の製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024915
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】密封装置および密封装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/18 20060101AFI20240216BHJP
   F16K 5/04 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F16J15/18 C
F16K5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127900
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】但野 光
(72)【発明者】
【氏名】柳 得徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博志
(72)【発明者】
【氏名】吉村 浩一
【テーマコード(参考)】
3H054
3J043
【Fターム(参考)】
3H054AA02
3H054BB17
3H054BB22
3H054CB09
3J043AA04
3J043CA08
3J043CB13
3J043CB14
3J043DA10
3J043DA11
(57)【要約】
【課題】容易に製造可能であるとともに低フリクション化することができる密封装置及び密封装置の製造方法を提供する。
【解決手段】密封装置1は、筒状の内周面201Aに複数の開口部2011~2016が形成されたハウジング200と、ハウジング200内に配置されてハウジング200と相対回転することで流路を切り換えるロータ300と、の間に設けられる。密封装置1は、内周面201Aに沿って配置されるとともに内面2B又は外面2Aに摺動部材が設けられた密封装置本体2を備える。密封装置本体2は、複数の開口部2011~2016のそれぞれと連通する複数の貫通孔231~235を有するとともに、平板状の帯板状部材6が湾曲変形されたものである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の内周面に複数の開口部が形成されたハウジングと、前記ハウジング内に配置されて該ハウジングと相対回転することで流路を切り換える弁体と、の間に設けられる密封装置であって、
前記内周面に沿って配置されるとともに内面又は外面に摺動部材が設けられた密封装置本体を備え、
前記密封装置本体は、前記複数の開口部のそれぞれと連通する複数の貫通孔を有するとともに、平板状の帯板状部材が湾曲変形されたものである、密封装置。
【請求項2】
前記密封装置本体は、前記ハウジングから取り出されて加熱された際に、平板状に近づくように復元する、請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
前記密封装置本体は、前記貫通孔の周囲に、前記内面および前記外面から突出したビード部を有する、請求項1又は2に記載の密封装置。
【請求項4】
前記密封装置本体は、前記摺動部材が設けられた面とは反対側の面が、ゴム材料によって構成されるとともに、ゴム流入用のゲート跡を有する、請求項1又は2に記載の密封装置。
【請求項5】
前記密封装置本体のうち軸線方向に沿って延びる端縁部には、前記摺動部材が設けられた面側から半分以上の領域に亘って摺動部材が設けられている、請求項1又は2に記載の密封装置。
【請求項6】
筒状の内周面に複数の開口部が形成されたハウジングと、前記ハウジング内に配置されて該ハウジングと相対回転するロータと、の間に設けられる密封装置の製造方法であって、
一面側に摺動部材が設けられた板状の帯板状部材を形成し、
前記帯板状部材の形成時または形成後に、該帯板状部材に貫通孔を形成し、
前記帯板状部材を前記内周面に沿った形状に湾曲変形させる、密封装置の製造方法。
【請求項7】
ゴム材料と、フッ素樹脂シートと、を重ね合わせるとともに重なり方向から圧力を加えることによって、前記帯板状部材を成形する、請求項6に記載の密封装置の製造方法。
【請求項8】
前記ゴム材料及び前記フッ素樹脂シートに圧力を加える際に、前記帯板状部材のうち前記貫通孔の周囲または前記貫通孔の形成予定位置の周囲に、両面に突出するビード部を形成する、請求項7に記載の密封装置の製造方法。
【請求項9】
ゴム注入部を有する金型を用いて、ゴム材料及びフッ素樹脂シートに対して圧力を加える、請求項7又は8に記載の密封装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密密封装置および密封装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数のポートが形成されたハウジングと、ハウジング内に配置されるとともに連通路を有する弁体と、を備え、弁体を回転させることにより、連通路によって連通されるポートの組み合わせを切り換え、即ち流路を切り換える切換装置が知られている。このような切換装置として、ハウジングとしての本体と弁体との間にOリングが設けられたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された装置では、本体および弁体が円錐面を有し、これらの間にOリングを設けることで流体の漏れ防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-92176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたようにハウジングに対して弁体を回転させる装置では、低フリクション化(即ち摺動抵抗を低減すること)が望まれていた。そこで、摺動面にフッ素樹脂等の摺動部材を設ける構成が考えられる。また、このシール部材は、例えば円筒面であるハウジングの内周面に沿った形状を有し、且つ、ハウジングの開口と弁体の連通路とを連通させるための貫通孔を有しており、曲面に貫通孔を形成する必要がある。しかしながら、摺動部材が設けられたシール部材では、曲面に貫通孔を形成するといった複雑な加工が困難となってしまう可能性があり、低フリクション化と製造容易性とを両立させることは困難であった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易に製造可能であるとともに低フリクション化することができる密封装置及び密封装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る密封装置は、筒状の内周面に複数の開口部が形成されたハウジングと、前記ハウジング内に配置されて該ハウジングと相対回転することで流路を切り換える弁体と、の間に設けられる密封装置であって、前記内周面に沿って配置されるとともに内面又は外面に摺動部材が設けられた密封装置本体を備え、前記密封装置本体は、前記複数の開口部のそれぞれと連通する複数の貫通孔を有するとともに、平板状の帯板状部材が湾曲変形されたものである。
【0007】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記密封装置本体は、前記ハウジングから取り出されて加熱された際に、平板状に近づくように復元する。
【0008】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記密封装置本体は、前記貫通孔の周囲に、前記内面および前記外面から突出したビード部を有する。
【0009】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記密封装置本体は、前記摺動部材が設けられた面とは反対側の面が、ゴム材料によって構成されるとともに、ゴム流入用のゲート跡を有する。
【0010】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記密封装置本体のうち軸線方向に沿って延びる端縁部には、前記摺動部材が設けられた面側から半分以上の領域に亘って摺動部材が設けられている。
【0011】
本発明に係る密封装置の製造方法は、筒状の内周面に複数の開口部が形成されたハウジングと、前記ハウジング内に配置されて該ハウジングと相対回転するロータと、の間に設けられる密封装置の製造方法であって、一面側に摺動部材が設けられた板状の帯板状部材を形成し、前記帯板状部材の形成時または形成後に、該帯板状部材に貫通孔を形成し、前記帯板状部材を前記内周面に沿った形状に湾曲変形させる。
【0012】
本発明の一態様に係る密封装置の製造方法において、ゴム材料と、フッ素樹脂シートと、を重ね合わせるとともに重なり方向から圧力を加えることによって、前記帯板状部材を成形する。
【0013】
本発明の一態様に係る密封装置の製造方法において、前記ゴム材料及び前記フッ素樹脂シートに圧力を加える際に、前記帯板状部材のうち前記貫通孔の周囲または前記貫通孔の形成予定位置の周囲に、両面に突出するビード部を形成する。
【0014】
本発明の一態様に係る密封装置の製造方法において、ゴム注入部を有する金型を用いて、ゴム材料及びフッ素樹脂シートに対して圧力を加える。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る密封装置及び密封装置の製造方法によれば、容易に製造可能であるとともに低フリクション化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る密封装置が設けられた切換装置の縦断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る密封装置が設けられた切換装置の横断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る密封装置の密封装置本体の斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る密封装置の密封装置本体の断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る密封装置の密封装置本体の斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る密封装置の密封装置本体の拡大図である。
図7】本発明の実施の形態に係る密封装置の密封装置本体の製造工程を示す断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る密封装置の帯板状部材の斜視図である。
図9】本発明の変形例に係る密封装置の密封装置本体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態に係る密封装置1が設けられた切換装置100の縦断面図であり、図2は切換装置100の横断面図であり、図3は密封装置1の密封装置本体2の斜視図であり、図4は密封装置本体2の断面図である。
【0018】
図1~4に示すように、本発明の実施の形態に係る密封装置1は、筒状の内周面201Aに複数の開口部2011~2016が形成されたハウジング200と、ハウジング200内に配置されてハウジング200と相対回転することで流路を切り換えるロータ300と、の間に設けられる。密封装置1は、内周面201Aに沿って配置されるとともに内面2B又は外面2Aに摺動部材が設けられた密封装置本体2を備える。密封装置本体2は、複数の開口部2011~2016のそれぞれと連通する複数の貫通孔231~235を有するとともに、平板状の帯板状部材6が湾曲変形されたものである。
【0019】
密封装置1が設けられる切換装置100は、ハウジング200と、弁体としてのロータ300と、軸シール400と、モータ500と、密封装置1と、を備え、例えば車両において冷却水等の流路を切り換える冷却水多方向弁として用いられる。
【0020】
ハウジング200は、円筒状の筒状部201と、筒状部201の一端に設けられる底面部202と、他端に設けられる上面部203と、を備える。筒状部201の側面には、複数(本実施の形態では6個)の開口部2011~2016が形成されており、開口部2011~2016は、適宜な流体通路を介して車載された各装置に接続されている。上面部203には、ロータ300の軸部301が貫通する貫通孔2031が形成されている。
【0021】
ロータ300は、軸線x方向に沿って延びる軸部301と、軸部301の端部に接続されたロータ本体302と、を有する。ロータ本体302は、ハウジング200内に配置され、外周面302Aの2箇所において開口した連通路303が形成されている。軸シール400は、貫通孔2031と軸部301との間に配置され、ハウジング200を密封する。モータ500は、軸部301のうちロータ本体302とは反対側の端部に接続され、軸線xを中心にロータ300を回転させる。尚、本実施の形態では、ロータ300が回転することでハウジング200とロータ300とが相対回転するものとするが、ハウジングが回転する構成としてもよいし、これら両方が回転する構成としてもよい。
【0022】
モータ500は、制御装置(不図示)によりその回転量が制御されている。これにより、連通路303の両端部が、それぞれ、複数の開口部2011~2016のうち所定の開口部と連通する。即ち、複数の開口部2011~2016のうち2つが連通路303を介して連通し、モータ500の回転によって連通する2つの開口部が切り換えられる。従って、例えば流体が向かう対象となる車載装置や、複数の装置に対して流体が流れる順番が切り換えられる。
【0023】
上記のような複数の開口部2011~2016を独立なものとする(連通路303以外によって互いに連通しないようにする)ために、筒状部201の内周面201Aと、ロータ本体302の外周面302Aと、の間に密封装置1が設けられる。
【0024】
尚、図1,2には、1つの連通路303のみを示しているが、複数の連通路が形成されていてもよいし、連通路の形状は直線状に限定されない。また、ハウジングには軸線x方向に並ぶように複数の開口部が形成されていてもよい。以下に説明する密封装置1は、図1に模式的に示すような切換装置100に対応したものであり、密封装置の各部の数や配置等は、切換装置における開口部の数や配置等に応じて適宜に設定されればよい。
【0025】
密封装置本体2を備えた密封装置1は、軸受部材3とともに密封構造を構成する。密封装置本体2は、内周面201Aに沿って配置され、軸線x方向から見てC字状(即ち開環状)に形成されている。また、密封装置本体2は外周面302Aにも沿っており、内周面201Aに沿うことは、外周面302Aに沿うことに等しい。図4に示すように、密封装置本体2は、弾性部材によって構成された弾性層21と、摺動部材によって構成された摺動層22と、を有して2層構造となっており、弾性層21によって構成された外面2Aが固定面となり、摺動層22によって構成された内面2Bが摺動面となる。
【0026】
弾性層21を構成する弾性部材は、例えば天然ゴムや合成ゴム等のゴム材料により構成されるが、ゴム材料に代えて弾性樹脂を用いてもよい。摺動層22を構成する摺動部材は、例えばPTFE等のフッ素樹脂材料により構成される。
【0027】
密封装置本体2は、ハウジング200の開口部2011~2016よりも1つだけ少ない数の貫通孔231~235と、貫通孔231~235の周囲に形成されるとともに両面に突出したビード部24,25と、を有する。複数の貫通孔231~235は、それぞれ、開口部2011~2015と重なるように配置され、外面側のビード部24の内側に開口部2011~2015が配置される。連通路303が開口部2011~2015と連通する際に、内面側のビード部25の内側に、連通路303の開口が配置される。
【0028】
ビード部24,25は、図4図3のA-A線に沿った断面図)に示すように、曲面状となっており、即ち先端が角部を有していない形状となっている。これにより、密封装置本体2と流路との干渉が抑制されている。
【0029】
密封装置本体2の外面2Aには、図5に示すように、ゴム注入用のゲート跡26が形成されていてもよい。このように摺動面ではなく固定面となる外面2Aにゲート跡26が形成されていることで、ロータ300とゲート跡26周囲の突起等とが干渉せず、ゲート跡26周囲の突起等によって、ロータの回転や揺動等に影響(特に悪影響)を与えることを抑制することができる。図示の例では、貫通孔231~235を囲むように四角形の頂点にゲート跡26が配置されているものとするが、ゲート跡の配置は適宜に設定されていればよい。また、成形方法によってはゲート跡が形成されないこともある。
【0030】
C字状に形成された密封装置本体2は、軸線xを中心とする周方向に沿って延びる一対の端縁部2C,2Dと、軸線x方向に沿って延びる端縁部(即ち互いに対向する端縁部)2E,2Fと、を有する。図6に示すように、端縁部2E,2Fにおいて、摺動層22が外側に向かって折り返され、弾性層21が覆われている。これにより、端縁部2E,2Fには、内面2B側から半分以上の領域に摺動部材が設けられており、端縁部2E,2Fにおいて摺動部材が設けられた範囲の長さL1は、端縁部2E,2Fの厚さT1の半分以上となっている。尚、端縁部2E,2F以外において、摺動層22の厚さは、弾性層21の厚さよりも小さく、厚さT1の30%以下であることが好ましい。これにより、後述するように金型601,602によってビード部24,25を形成することが容易になる。
【0031】
軸受部材3は、軸線x方向から見て円弧状に形成されるとともに外周面がハウジング200に対して固定され、開口部2016と連通する貫通孔31と、ハウジング200の内側を向いた摺動面32と、を有している。軸受部材3は密封装置本体2よりも硬質な部材によって構成されており、密封装置本体2は軸受部材3よりも変形容易となっている。尚、軸受部材3は、ハウジング200と一体的に形成されていてもよい。
【0032】
C字状の密封装置本体2と円弧状の軸受部材3とによって、全体として環状の密封装置1が構成される。このとき、ハウジング200に固定された軸受部材3に対して密封装置本体2が周方向から当接することにより、密封装置本体2の回転が規制されるようになっている。環状の密封装置1が筒状部201の内周面201Aとロータ本体302の外周面302Aとの間に配置される際、主に密封装置本体2(特にビード部24,25)が圧縮されて変形するようになっている。また、本実施の形態では、密封装置1全体の周方向寸法に対し、密封装置本体2の周方向寸法が例えば75%以上となっている。
【0033】
ここで、密封装置本体2の製造方法について説明する。図7に示すように、ゴム材料4とフッ素樹脂製のシート5とを重ね合わせ、これらを一対の金型601,602によって挟み込むとともに圧力を加えることで成形する。金型601,602には、凹部601A,602Aが形成されており、凹部601A,602Aによってビード部24,25が形成されるようになっている。また、上記のように摺動層22が弾性層21を覆うことができるように、シート5の端部は約90°折り返されている。
【0034】
図7では、金型601,602を開いた状態において間にゴム材料4が配置された様子を模式的に示しているが、型締めした状態でゴム材料を注入してもよく、この場合、凹部601A,602Aには、ゴム注入用の通路(ゲート穴)が形成されており、成形後のゴムには上記のようなゲート跡26が形成される。尚、加圧や加熱のタイミングと、ゴム注入のタイミングと、は適宜に設定されていればよい。型締めをした状態でゴム材料を注入することで、フッ素樹脂製シート5を固定した状態でのゴム成形が可能となり、密封装置本体2に対してシート5を適切な位置への配置することが容易となる。
【0035】
上記のように金型601,602を用いた成形により、フッ素樹脂材料とゴム材料とが化学的に接着されるとともに積層された帯状の部材が形成される。このような帯状の部材に対し、必要に応じて打ち抜き加工を施すことにより、図8に示すような帯板状部材6が形成される。帯板状部材6は、複数の貫通孔231~235を有する。このとき、帯板状部材6は、完全な平板でなくてもよく、多少の反りを有していてもよい。
【0036】
次に、帯板状部材6を円周に沿うように湾曲変形させることにより、C字状の密封装置本体2を形成する。このとき、ロータ本体302の外周面302Aに帯板状部材6を巻き付けてからハウジング200に対して挿入してもよいし、筒状部201の内周面201Aに沿うように帯板状部材6を湾曲変形させてからロータ本体302を挿入してもよいし、治具を用いて帯板状部材6を湾曲変形させてもよい。
【0037】
上記のように平板状の帯板状部材6を湾曲変形させると、帯板状部材6の厚さに応じて内周面と外周面との周長に差が生じる。このとき、ゴム材料4の方がフッ素樹脂製のシート5よりも伸縮に対応しやすいことから、湾曲変形前の帯板状部材6全体の長手方向寸法は、湾曲変形後の内面2Bの周長(ロータ300の外周面302Aの周長と略等しい)と等しくなるように設定される。尚、後述するように密封装置本体の外面が摺動面となる場合には、湾曲変形前の帯板状部材全体の長手方向寸法は、湾曲変形後の外面の周長と等しくなるように設定されればよい。
【0038】
上記のように形成された密封装置本体2は、ハウジング200から取り出されると、元の形状である平板状に近づくように復元しようとするものの、湾曲変形された時間が長い場合等には、復元しにくいことがある。このような場合であっても、取り出された密封装置本体2を、フッ素樹脂が溶融しない程度に加熱すると、フッ素樹脂部材が元の形状に復元しようとする。これにより、密封装置本体2が平板状に近づくように変形する。このとき、密封装置本体2は完全に平板状に復元しなくてもよく、取り出された状態よりも平板状に近づけばよい。
【0039】
このように、本発明の実施の形態に係る密封装置1によれば、密封装置本体2が、帯板状部材6が湾曲変形されたものであることで、平板状または曲率半径が極めて大きい帯板状部材6に対して貫通孔231~235を形成した後に、湾曲変形によって密封装置本体2を形成することができる。これにより、摺動部材を設けつつ容易に貫通孔231~235を形成することができ、密封装置1を容易に製造することができるとともに、低フリクション化することができる。
【0040】
また、密封装置本体2が、両面から突出したビード部24,25を有することで、ハウジング及びロータ300に対する接触圧を向上させることができ、密封性を確保しやすい。このようなビード部24,25を、ゴム材料及びフッ素樹脂シートに圧力を加える際に形成することで、加圧成形とビード部の成形とを別工程とする方法と比較して、製造工数を削減することができる。
【0041】
また、端縁部2E,2Fにおいて、摺動部材が設けられた内面2B側から半分以上の領域に亘って摺動部材が設けられていることで、端縁部2E,2Fとロータ300とが干渉した場合であっても低フリクション化することができる。
【0042】
尚、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、帯板状部材6が湾曲変形されて密封装置本体2が形成されているものとしたが、図9に示すように、湾曲変形した状態を維持するための保持部材7を設けてもよい。保持部材7は、C字状に形成され、密封装置本体2の端縁部2C,2Dを保持する。保持部材7は、密封装置本体2とともにハウジング200内に収容されてもよいし、密封装置本体2をハウジング200に収容する際に取り外されて治具として用いられてもよい。また、密封装置本体2をハウジング200に収容し、一対の保持部材7のうち上面部203側の保持部材7のみを取り外してもよい。
【0043】
また、上記の実施の形態では、密封装置本体2がハウジング200から取り出されて加熱された際に平板状に復元するものとしたが、例えば加熱により変形しにくい摺動部材が用いられていてもよい。
【0044】
また、上記の実施の形態では、密封装置本体2の外面2A及び内面2B及びにビード部24,25が形成されているものとしたが、密封装置本体の材質や接触圧等が、流体の漏れを抑制しやすいようなものである場合には、一方の面にのみビード部が設けられていてもよいし、いずれの面にもビード部が設けられていなくてもよい。
【0045】
また、上記の実施の形態では、端縁部2E,2Fにおいて摺動層22が外側に向かって折り返されているものとしたが、例えば摺動層22が厚く形成され、端縁部2Eの内面2B側の角部がロータ300と干渉した際に、摺動部材のみが接触するように構成されていれば、摺動層22は折り返されていなくてもよい。このような場合、端縁部2E,2Fにおいて摺動部材が設けられた領域は、厚さT1の半分未満であってもよい。
【0046】
また、上記の実施の形態では、ゴム材料及びフッ素樹脂シートに圧力を加える際にビード部24,25を形成するものとしたが、圧力を加えて板状の部材を成形した後に、ビード部を形成してもよい。このような構成によれば、ビード部の形状を自由に設定しやすくすることができる。
【0047】
また、ビード部を形成するタイミングと貫通孔を形成するタイミングとは、適宜に設定されていればよく、例えば上記の実施の形態のように金型を用いてビード部を成形する場合には、貫通孔を形成するための部位を金型に設けておき、ビード部と貫通孔とを同時に形成してもよい。
【0048】
また、上記の実施の形態では、ゴム材料と、フッ素樹脂シートと、を重ね合わせるとともに金型601,602によって圧力を加えることで帯板状部材6を成形するものとしたが、帯板状部材の製造方法はこれに限定されず、基材となる弾性部材の材質等に応じて適宜な方法が採用されればよい。例えば、ゴム板や弾性樹脂板にシート状の摺動部材を接着し、切断や打ち抜き等の加工を施すことで帯板状部材を成形してもよい。このとき、弾性層と摺動層との接着は、表面処理や接着剤による化学的な接着に限らず、表面加工や接着剤による物理的な接着などが適宜選択される。
【0049】
また、上記の実施の形態では、密封装置1が密封装置本体2と軸受部材3とを備えるものとしたが、密封装置が軸受部材を備えていなくてもよい。密封装置本体の貫通孔の数がハウジングに形成された開口部の数と等しければ、軸受部材は不要となる。また、密封装置本体の貫通孔の数がハウジングに形成された開口部の数よりも1つだけ少ない場合、ハウジングの開口部のうち1つが密封装置本体の貫通孔と重ならないこととなるが、この開口部は、密封装置本体によって他の開口部と区画され、即ち連通しないようになっている。従って、軸受部材が設けられていなくてもよい。
【0050】
また、密封装置本体の貫通孔の数がハウジングに形成された開口部の数よりも2つ以上少ない場合、1つ以上の貫通孔を有する軸受部材が必要となる。軸受部材は、密封装置本体よりも変形しにくいものであることから、ロータが回転する際の抵抗となりにくい。従って、密封装置本体の周方向寸法がハウジングの内周面の周長に対して短いほど低トルク化することができるものの、密封装置本体の周方向寸法は、ハウジングの内周面の周長の50%以上であることが好ましく、上記の実施の形態のように75%以上であることがより好ましい。尚、例えばロータの組み付けが容易であったり回転の安定性が確保できたりする場合等においては、密封装置本体の周方向寸法は、ハウジングの内周面の周長の50%未満であってもよい。
【0051】
また、上記の実施の形態では、ハウジング200の内周面201Aが円筒状であるものとしたが、ハウジングの内周面は、筒状であればよい。即ち、ハウジングの内周面は軸線に対して傾斜していても(即ち円錐台状であっても)よいし、軸線を含む断面において円弧状となっていても(即ちボール弁に対応した形状であっても)よい。このとき、帯板状部材は、湾曲変形されることでハウジングの内周面に沿うように、湾曲変形前の形状を有していればよい。
【0052】
また、上記の実施の形態では、密封装置本体2の内面2Bが摺動面となり外面2Aが固定面となるものとしたが、外面にのみ摺動部材を設けることで内面を固定面とするとともに外面を摺動面としてもよい。即ち、密封装置本体がロータ(弁体)に連れ回る構成としてもよい。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係る密封装置に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0054】
1…密封装置、2…密封装置本体、21…弾性層、22…摺動層、231~235…貫通孔、24,25…ビード部、26…ゲート跡、2A…外面、2B…内面、2C~2F…端縁部、3…軸受部材、31…貫通孔、32…摺動面、4…ゴム材料、5…シート、6…帯板状部材、7…保持部材、100…切換装置、200…ハウジング、201…筒状部、201A…内周面、2011~2016…開口部、202…底面部、203…上面部、2031…貫通孔、300…ロータ(弁体)、301…軸部、302…ロータ本体、303…連通路、302A…外周面、400…軸シール、500…モータ、601,602…金型、601A,602A…凹部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9