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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002492
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】油性インクジェットインク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20231228BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20231228BHJP
【FI】
C09D11/36
C09D11/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101697
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金城 潤
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 駿
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD04
4J039AD09
4J039BA04
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE28
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】吐出安定性、低揮発性、及びOD値の低下抑制に優れた、実質的にミネラルオイルを含有しない油性インクジェットインク組成物を提供すること。
【解決手段】顔料、溶剤、バインダー樹脂、及び顔料分散剤を含有する油性インクジェットインク組成物であって、前記溶剤は、炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物を含有し、かつ実質的にミネラルオイルを含有せず、前記バインダー樹脂は、アクリル系樹脂及び/又は塩素化ポリプロピレン樹脂であり、粘度が2mPa・s~30mPa・s(25℃)である油性インクジェットインク組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、溶剤、バインダー樹脂、及び顔料分散剤を含有する油性インクジェットインク組成物であって、
前記溶剤は、炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物を含有し、かつ実質的にミネラルオイルを含有せず、
前記バインダー樹脂は、アクリル系樹脂及び/又は塩素化ポリプロピレン樹脂であり、
油性インクジェットインク組成物粘度が2mPa・s~30mPa・s(25℃)であることを特徴とする油性インクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物は、粘度が2mPa・s~15mPa・s(25℃)であることを特徴とする請求項1に記載の油性インクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記塩素化ポリプロピレン樹脂は、塩素化度が20~50%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の油性インクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記顔料が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1又は2に記載の油性インクジェットインク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性インクジェットインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、流動性の高いインクジェットインクを微細なノズルから液滴として噴射し、ノズルに対向して置かれた記録媒体に画像を記録するものであり、低騒音で高速印字が可能であることから、近年急速に普及している。このようなインクジェット記録方式に用いられるインクとして、水を主溶媒として含有する水性インク、重合性モノマーを主成分として高い含有量で含有する紫外線硬化型インク(UVインク)、ワックスを主成分として高い含有量で含有するホットメルトインク(固体インク)とともに、非水系溶剤を主溶媒として含有する、いわゆる非水系インクが知られている。非水系インクは、主溶媒が揮発性有機溶剤であるソルベントインク(溶剤系インク)と、主溶媒が低揮発性あるいは不揮発性の有機溶剤である油性インク(オイル系インク)に分類できる。ソルベントインクは主に有機溶剤の蒸発によって記録媒体上で乾燥するのに対して、油性インクは記録媒体への浸透が主となって乾燥する。
【0003】
油性インクのオイルとしては、ミネラルオイル(鉱物油)と脂肪酸エステルに大別され、単独で使用されるもの、混合して使用されるものが例示できる(例えば、特許文献1~3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002-501966号公報
【特許文献2】特開2022-024421号公報
【特許文献3】特開2017-088638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環境問題から欧州ではミネラルオイルの規制が開始されるためミネラルオイルフリーの油性インクが必要となってきた。油性インクは、ノズル詰まり等を防止するため低揮発性が要求され、また、基材として浸透基材を使用するため、着弾後に濃度(OD値)が低下し易い問題があった。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、吐出安定性、低揮発性、及びOD値の低下抑制に優れた、実質的にミネラルオイルを含有しない油性インクジェットインク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[項1]すなわち、本発明は、顔料、溶剤、バインダー樹脂、及び顔料分散剤を含有する油性インクジェットインク組成物であって、前記溶剤は、炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物を含有し、かつ実質的にミネラルオイルを含有せず、前記バインダー樹脂は、アクリル系樹脂及び/又は塩素化ポリプロピレン樹脂であり、粘度が2mPa・s~30mPa・s(25℃)である油性インクジェットインク組成物に関する。
【0008】
[項2]また、本発明は、前記炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物は、粘度が2mPa・s~15mPa・s(25℃)である前項1に記載の油性インクジェットインク組成物に関する。
【0009】
[項3]また、本発明は、前記塩素化ポリプロピレン樹脂は、塩素化度が20~50%である前項1又は2に記載の油性インクジェットインク組成物に関する。
【0010】
[項4]また、本発明は、前記顔料が、カーボンブラックである前項1~3のいずれかに1項に記載の油性インクジェットインク組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油性インクジェットインク組成物の作用メカニズムは以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定されない。
【0012】
本発明の油性インクジェットインク組成物は、顔料、溶剤、バインダー樹脂、及び顔料分散剤を含有し、前記溶剤は、炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物を含有し、かつ実質的にミネラルオイル(鉱物油)を含有せず、前記バインダー樹脂は、アクリル系樹脂及び/又は塩素化ポリプロピレン樹脂であり、粘度が2mPa・s~30mPa・s(25℃)である。炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物は油性インクとしての低揮発性に優れ、アクリル系樹脂及び/又は塩素化ポリプロピレン樹脂は、OD値の低下を抑制でき、また、油性インクジェットインク組成物は、粘度が2mPa・s~30mPa・s(25℃)であるため吐出安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の油性インクジェットインク組成物は、顔料、溶剤、バインダー樹脂、及び顔料分散剤を含有し、前記溶剤は、炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物を含有し、かつ実質的にミネラルオイル(鉱物油)を含有せず、前記バインダー樹脂は、アクリル系樹脂及び/又は塩素化ポリプロピレン樹脂であり、粘度が2mPa・s~30mPa・s(25℃)である。
【0014】
<顔料>
顔料は、一般に有機溶剤を含有するインク組成物で使用され得る無機、有機及び体質顔料が挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等が挙げられる。体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリンクレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等が挙げられる。これらの中でも、濃度(OD値)の低下の抑制に優れる観点から、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、酸性カーボンブラック、中性カーボンブラック等のカーボンブラックが使用できる。
【0015】
顔料の含有量は、油性インクジェットインク組成物中、通常、0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましく、4~10質量%であることがより好ましい。
【0016】
<溶剤>
溶剤は、炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物を含有し、かつ実質的にミネラルオイルを含有しない。ここで、「実質的にミネラルオイルを含有しない」とは、油性インクジェットインク組成物を製造する際に、意図的にミネラルオイルを添加しないことを意味し、油性インクジェットインク組成物の製造中、あるいは保管中に不可避的に混入する微量のミネラルオイルを含む場合がある。
【0017】
炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物は、例えば、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸プロピル、デカン酸ヘキシル、デカン酸ヘプチル、ノナン酸イソオクチル、ノナン酸ヘプチル、オクタン酸イソデシル、オクタン酸オクチル、オクタン酸ノニル、ヘキサン酸デシル、イソオクタン酸セチル、ラウリン酸イソセチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、パルミチン酸イソオクチル、ステアリン酸イソオクチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソプロピル、ネオペンタン酸2-オクチルデシル、ネオペンタン酸2-オクチルドデシル、ノナン酸2-エチルヘキシル、ノナン酸6-メチルヘプチル、オクタン酸2-プロピルヘプチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。また、炭素数12~30の高級脂肪酸のアルキルエステル化合物を含む、大豆油脂肪酸メチル、大豆油脂肪酸ブチル、大豆油脂肪酸2-エチルヘキシル、トール油脂肪酸メチル、トール油脂肪酸イソブチル、亜麻仁油脂肪酸メチル、亜麻仁油脂肪酸2-エチルヘキシル、米油脂肪酸ブチル、米油脂肪酸2-エチルヘキシルも本発明では炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物に含まれるものと定義する。
【0018】
これら中でも、油性インクジェットインク組成物を吐出時加熱しない粘度とするように、炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物は、粘度が2mPa・s~15mPa・s(25℃)であるものが好ましい。具体的には、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸プロピル、デカン酸ヘキシル、デカン酸ヘプチル、ノナン酸イソオクチル、ノナン酸2-エチルヘキシル、ノナン酸6-メチルヘプチル、ノナン酸ヘプチル、オクタン酸イソデシル、オクタン酸2-プロピルヘプチル、オクタン酸オクチル、オクタン酸ノニル、ヘキサン酸デシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、大豆油脂肪酸メチル、大豆油脂肪酸ブチル、大豆油脂肪酸2-エチルヘキシル、米油脂肪酸ブチル、米油脂肪酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらの中でも、樹脂の溶解性、ライナー等の浸透基材の点より、大豆油脂肪酸メチル、大豆油脂肪酸ブチル、大豆油脂肪酸2-エチルヘキシル、米油脂肪酸ブチルを含有させることが好ましい。また、炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物は、低揮発性の観点から、炭素数が12~24であることが好ましい。
【0019】
溶剤の含有量は、油性インクジェットインク組成物の粘度が2mPa・s~30mPa・s(25℃)程度になるように使用すればよく、例えば、油性インクジェットインク組成物中、吐出性の点より、通常、70~95質量%程度であり、85~93質量%であることが好ましい。
【0020】
なお、溶剤としては、性能が低下しない範囲内で、炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物以外の有機溶剤を併用してもよい。炭素数12~30の高級脂肪酸アルキルエステル化合物の含有量は、溶剤中、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることがよりさらに好ましい。
【0021】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂は、着弾後の濃度(OD値)の低下を抑制する観点から、炭素数12~30の高級脂肪酸のアルキルエステル化合物に溶解するアクリル系樹脂及び/又は塩素化ポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0022】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸の誘導体を重合して得られる樹脂、及びその誘導体を含有する樹脂である。中でも、アクリル系樹脂は、環状構造を有していないものが好ましい。
【0023】
アクリル系樹脂は、酸価が10mgKOH/g以下であることが好ましい。なお、前記酸価は、製造元のカタログ値が参考となるが、これが入手できない場合、中和滴定法により算出することができる。
【0024】
アクリル系樹脂は、着弾後の濃度(OD値)、溶剤への溶解性の観点から、重量平均分子量が30,000以上80,000以下であることが好ましく40,000以上70,000以下であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、製造元のカタログ値が参考となるが、これが入手できない場合、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって算出することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED-D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0025】
アクリル系樹脂は、溶解性等の観点から、ブロッキング性の観点から、ガラス転移温度が40℃以上70℃以下であることが好ましい。なお、ガラス転移温度は、製造元のカタログ値が参考となるが、これが入手できない場合、示差走査熱量測定(DSC)によって求められ、通常、ガラス転移が起こる温度範囲の中点により算出される。
【0026】
アクリル系樹脂の市販品としては、三菱化学社製「ダイナヤールBR-106」、Evonik社製「DEGALAN PM602」、Evonik社製「DEGALAN LP 64/12」等が挙げられる。
【0027】
塩素化プロピレン樹脂は、塩素化度が20~50%のものが好適に使用される。塩素化度が上記範囲内であることにより、塩素化ポリプロピレン樹脂は、溶剤との相溶性が優れ、かつ、フィルムに対する接着性が優れる。なお、本発明において、塩素化度は、塩素化ポリプロピレン樹脂中の塩素原子の質量%で定義される。また、塩素化ポリプロピレン樹脂は、質量平均分子量が5000~200000の変性された、又は未変性の塩素化ポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
【0028】
アクリル系樹脂及び/又は塩素化プロピレン樹脂の含有量は、油性インクジェットインク組成物中、基材との定着性を向上させ、着弾後の濃度(OD値)の低下を抑制する観点から、1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、そして、吐出安定性を向上させる観点から、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることがさらに好ましく、4質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0029】
なお、油性インクジェットインク組成物は、性能が低下しない範囲内で、アクリル系樹脂及び/又は塩素化プロピレン樹脂以外のバインダー樹脂として、炭素数12~30の高級脂肪酸のアルキルエステル化合物に溶解する樹脂を併用してもよい。このような樹脂としては、例えば、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等が挙げられる。
【0030】
<顔料分散剤>
顔料分散剤としては、インク組成物に用いられる顔料分散剤であれば制限なく使用でき、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が挙げられる。
【0031】
顔料分散剤の市販品例としては、例えば、アイ・エス・ピー・ジャパン株式会社製「アンタロンV216(ビニルピロリドン・ヘキサデセン共重合体)、V220(ビニルピロリドン・エイコセン共重合体)」(いずれも商品名);日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、16000、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、24000、28000」(いずれも商品名);BASFジャパン株式会社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46、47、48、49、4010、4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名);楠本化成株式会社製「ディスパロンKS-860、KS-873N4(ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名);第一工業製薬株式会社製「ディスコール202、206、OA-202、OA-600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名);ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK2155、9077」(いずれも商品名);クローダジャパン株式会社製「HypermerKD2、KD3、KD11、KD12」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0032】
顔料分散剤は、上記顔料を十分にインク組成物中に分散可能な量であれば足り、適宜設定できる。例えば、質量比で、顔料1に対し顔料分散剤を0.1~5で配合することができ、好ましくは0.3~1である。
【0033】
本発明の油性インクジェットインク組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない限り、各種添加剤が含まれていてよい。添加剤としては、ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤等が挙げられる。
【0034】
<油性インクジェットインク組成物の製造方法>
本発明の油性インクジェットインク組成物の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、油性インクジェットインク組成物は、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して原料を分散混合し、吐出時加熱しない場合は、25℃における粘度が約2~30mPa・sとなるように調整することによって製造することができる。なお、得られたインク組成物は、インクジェットプリンターのヘッドでの詰まりを防止するため、分散後やバインダー樹脂の溶解後に、孔径3μm以下のフィルターにて濾過されることが好ましい。
【0035】
油性インクジェットインク組成物は、ライナー等の浸透紙基材にインクジェット用プリンターにより印刷してインクジェット画像を形成することができる。
【実施例0036】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0037】
<油性インクジェットインク組成物の製造>
表1に示す配合量にしたがって、顔料、バインダー樹脂、顔料分散剤、及び溶剤の各材料を撹拌混合し、孔径3μmの(メンブレン)フィルターでろ過することで各実施例及び各比較例の油性インクジェットインク組成物を得た。
【0038】
表1に示す材料は、以下の通りである。
<顔料>
MA7:カーボンブラック顔料、三菱化学社製
MONARCH280:カーボンブラック顔料、CABOT社製
<バインダー樹脂>
ダイナヤールBR-106:アクリル系樹脂、三菱化学社製(Tg:47℃、Mw:5,5000、酸価:3.6mgKOH/g)
DEGALAN PM602:アクリル系樹脂、Evonik社製(Tg:62℃、Mw:6,4000、酸価:6mgKOH/g)
スーパークロン814HS:塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化度41%、日本製紙社製
スーパークロン390S:塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化度36%、日本製紙社製
ペンセルD-135:重合ロジン樹脂、荒川化学工業社製
<顔料分散剤>
ソルスパース18000:分散剤、ルーブリゾール社製
<溶剤>
リックサイザーC-88:脂肪酸エステル、伊藤製油社製
TOSOLV-ME:大豆油脂肪酸メチル、東新油脂社製
エキセパールML-85:ラウリン酸メチル、花王ケミカル社製
エキセパールTD-S:ステアリン酸イソトリデシル、花王ケミカル社製
デカン酸メチル:東京化成工業社製
モレスコホワイトP-55:炭化水素系溶剤、MORESCO社製
【0039】
上記で得られた各実施例及び各比較例の油性インクジェットインク組成物を用い、以下の評価を行った。
【0040】
<粘度の評価>
油性インクジェット用インク組成物の25℃における粘度(mPa・s)を、粘度計(東機産業社製 RE100L型)を用いて測定した。
【0041】
<吐出安定性の評価>
油性インクジェット用インク組成物を用いてライナー紙(商品名:Kライナー(210g/m)、王子製紙社製)に印刷を行い、印刷されない部分が発生する枚数で評価した。〇又は△であればよく、〇が好ましい。
[評価基準]
〇:印刷されない部分が71枚目以降に発生するか、印刷されない部分が100枚目までは発生しない。
△:印刷されない部分が51枚目~70枚目で発生する。
×:印刷されない部分が31枚目~50枚目で発生する。
××:印刷されない部分が30枚目までに発生する。
【0042】
<OD値の低下抑制の評価>
油性インクジェット用インク組成物を用いてライナー紙(商品名:Kライナー(210g/m)、王子製紙社製)に印刷を行い、吐出後と24時間後のOD値を分光光度計(商品名「Spectro Eye」、エックスライト社製)を用いて測定し、OD値変化率により評価した。〇又は△であればよく、〇が好ましい。
[評価基準]
〇:OD値変化率が10%未満である。
△:OD値変化率が10%以上、15%未満である。
×:OD値変化率が15%以上である。
【0043】
<低揮発性の評価>
油性インクジェット用インク組成物を直径4cmのシャーレに入れ,40℃環境下で14日静置し、静置前と静置後の重量変化率により評価した。〇又は△であればよく、〇が好ましい。
[評価基準]
〇:重量変化率が5%未満である。
△:重量変化率が5%以上、7%未満である。
×:重量変化率が5%以上である。
【0044】
【表1】