IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-キャップ及びこれを含むチューブ容器 図1
  • 特開-キャップ及びこれを含むチューブ容器 図2
  • 特開-キャップ及びこれを含むチューブ容器 図3
  • 特開-キャップ及びこれを含むチューブ容器 図4
  • 特開-キャップ及びこれを含むチューブ容器 図5
  • 特開-キャップ及びこれを含むチューブ容器 図6
  • 特開-キャップ及びこれを含むチューブ容器 図7
  • 特開-キャップ及びこれを含むチューブ容器 図8
  • 特開-キャップ及びこれを含むチューブ容器 図9
  • 特開-キャップ及びこれを含むチューブ容器 図10
  • 特開-キャップ及びこれを含むチューブ容器 図11
  • 特開-キャップ及びこれを含むチューブ容器 図12
  • 特開-キャップ及びこれを含むチューブ容器 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024925
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】キャップ及びこれを含むチューブ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/44 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
B65D35/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127920
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】岩田 賢
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA03
3E084AA12
3E084AA24
3E084AA34
3E084AB06
3E084BA02
3E084CA01
3E084CC03
3E084CC04
3E084CC05
3E084CC07
3E084DA01
3E084DB12
3E084DB17
3E084DC03
3E084DC04
3E084DC05
3E084DC07
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】樹脂の使用量を増やすことなくプラスチック成形部材と紙成形部材が結合されたキャップ及びこれを用いたチューブ容器を提供する。
【解決手段】開口部71を有する紙成形部材40の内側にプラスチック成形部材30を係合してキャップ10を構成するにあたり、プラスチック成形部材30の一部を紙成形部材40の内部に入り込ませてプラスチック成形部材30と紙成形部材40とが溶着される構成とした。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する紙成形部材の内側にプラスチック成形部材が係合されてなるキャップであり、
前記プラスチック成形部材の一部が前記紙成形部材の内部に入り込んで前記プラスチック成形部材と前記紙成形部材とが溶着された、キャップ。
【請求項2】
前記紙成形部材の材料は、キャップ全体の材料に対し、質量比で50%を超える、請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記プラスチック成形部材の一部は前記紙成形部材の繊維間に含侵している、請求項1又は2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記紙成形部材の内側面にメッシュ状の凹凸部が形成されている、請求項3に記載のキャップ。
【請求項5】
前記紙成形部材の内側部分の密度が外側部分の密度より小さい、請求項1に記載のキャップ。
【請求項6】
前記プラスチック成形部材の前記紙成形部材側に向く面に設けられた凸部が前記紙成形部材の内部に入り込んでいる、請求項1又は2に記載のキャップ。
【請求項7】
前記凸部が前記紙成形部材を貫通している、請求項6に記載のキャップ。
【請求項8】
前記プラスチック成形部材の一部が前記紙成形部材に予め形成された凹部から前記繊維間に含侵している、請求項3に記載のキャップ。
【請求項9】
請求項1に記載のキャップを含むチューブ容器であって、
一方端が閉塞されたチューブ状の胴部と、前記胴部の他方端に設けられ前記キャップが装着される注出口部と、を備え、
前記胴部が、紙を主体とする材料により形成される、チューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ及びこれを含むチューブ容器、特に開口部を有する紙成形部材の内側にプラスチック成形部材が嵌まり込んで一体的に回転可能なキャップ、及び、そのキャップを備えたチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現行製品化されている軽量な蓋付きの容器は樹脂製のものが主流であるが、環境対応(環境問題の改善や環境負荷の低減)として容器の紙製化が求められている。下記特許文献1では、パルプモールド部材(紙成形部材)の開口部に注出口部を構成する成形部材が装着された容器本体が開示されている。成形部材の円筒部外周面にはネジ山が形成されており、このネジ山に蓋体の内周面に形成されたネジ溝を螺着させることでキャップ(蓋体)が容器本体に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-219921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器の紙製化のために、例えば、上記特許文献1に記載されるキャップを紙製化しようとした場合、紙製のネジ溝は高い精度を維持することが困難であることから、容器の密封性を確保することが難しい。容器のキャップとしての機能を確保するために必要限度のプラスチック成形部材を用い、その余の構成を紙成形部材とする場合、両者を係合(結合)してキャップを構成するに際して樹脂の使用量が増加しないことが望まれる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂の使用量を増やすことなくプラスチック成形部材と紙成形部材が結合されたキャップ及びこれを用いたチューブ容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るキャップは、開口部を有する紙成形部材の内側にプラスチック成形部材が係合されてなるキャップであり、前記プラスチック成形部材の一部が前記紙成形部材の内部に入り込んで前記プラスチック成形部材と前記紙成形部材とが溶着されたことを要旨とする。
また、本発明の一態様に係るチューブ容器は、上記のキャップを含むチューブ容器であって、一方端が閉塞されたチューブ状の胴部と、前記胴部の他方端に設けられ前記キャップが装着される注出口部と、を備え、前記胴部が、紙を主体とする材料により形成されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のキャップ及びこれを用いたチューブ容器によれば、プラスチック成形部材の一部が紙成形部材の内部に入り込んだ状態で両者が溶着してキャップが構成されているので、樹脂の使用量が増加しない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のキャップの第1実施形態を示す一部断面斜視図である。
図2図1のキャップと容器本体の正面図である。
図3図1のキャップの分解斜視図である。
図4図3のプラスチック成形部材を異なる方向から見た斜視図である。
図5図3の紙成形部材を異なる方向から見た斜視図である。
図6図1のキャップの結合工程と完成形態を示す説明図である。
図7】本発明のキャップの第2実施形態を示す結合工程と完成形態の説明図である。
図8】本発明のキャップの第3実施形態を示す結合工程と完成形態の説明図である。
図9】本発明のキャップの第4実施形態を示す結合工程と完成形態の説明図である。
図10】本発明のチューブ容器の一実施形態を示す分解斜視図である。
図11図10の注出口部の斜視図である。
図12図11のD-D断面図である。
図13図10のチューブ容器の胴部を構成するシートの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明のキャップ及びこれを用いたチューブ容器の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
図1は、キャップ10の第1実施形態を示す一部断面斜視図であり、図2は、図1のキャップ10と、このキャップ10が装着される容器本体20の正面図である。容器本体20は、例えばチューブ状であり、容器本体20の内容物を注出するための注出口部21を有する。容器本体20の注出口部21にキャップ10が装着されて注出口部21が閉じられ、このキャップ10を取り外すことで注出口部21が開かれる。注出口部21における円筒形状の注出筒部の外周には、キャップ10を装着するための雄ネジが形成されている。なお、注出口部21の注出筒部の内周に雌ネジを形成してもよい。容器本体20として、チューブ状容器を例示したが、これに限定されず、チューブ以外の容器本体であってもよい。容器の用途は特に問わないが、内容物としては、例えばシャンプー、リンス、ボディーソープ、洗顔料、歯磨き粉、洗剤、漂白剤、柔軟剤、飲料、食品、潤滑剤などが挙げられる。
【0009】
この実施形態のキャップ10は、図1に示すように、紙成形部材40とプラスチック成形部材30で構成される。図3は、図1のキャップ10の分解斜視図、図4は、図3のプラスチック成形部材30を異なる方向から見た斜視図、図5は、図3の紙成形部材40を異なる方向から見た斜視図である。紙成形部材40は、キャップ10として容器本体20の注出口部21全体を覆う覆い体を構成し、注出口部21を収容するための内部空洞と開口部71を有する。プラスチック成形部材30は、注出口部21の雄ネジに螺合される円筒形状の雌ネジ部51と、この雌ネジ部51と一体に形成されて注出口部21の開口部を覆う蓋体部50とを有する機能部材である。そして、後述するように紙成形部材40の内側にプラスチック成形部材30が嵌め込まれ、さらに両者が結合されて一体的に回転される。プラスチック成形部材30の蓋体部50には、注出口部21の開口部を覆う部分だけでなく、円筒形状の雌ネジ部51から径方向外側に広がって後述する紙成形部材40の天板部72と接合される接合部60が延設されている。この接合部60は、後述するように、紙成形部材40の天板部72に当接された状態でその筒体部70の内側に比較的緊密に嵌合するように正六角形の外形とされている。これらは、樹脂(プラスチック)を成形型でモールドして一体に形成されている。なお、注出口部21に雌ネジが形成されている場合にはプラスチック成形部材30には雌ネジ部51に代えて雄ネジ部を設ける。また、筒体部70の内部断面形状が正六角形以外の場合、接合部60の外形は筒体部70の内部断面形状に適合させる。
【0010】
このプラスチック成形部材30は、樹脂の射出成型品である。この樹脂には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどが使用できる。プラスチック成形部材30は、前述した環境対応に鑑みて、キャップ10の機能、例えばチューブ容器の注出口部21の開閉、バリア性、密閉性などのために必要最小限とすることを眼目とする。
紙成形部材40は、覆い体の外周部を構成する筒体部70と、覆い体の覆い部、すなわち筒体部70の開口部71と反対側の端部である上面を閉塞する天板部72を有する。この実施形態の筒体部70は、前述のように、開口端側がやや外側広がりで且つ内部が空洞な正六角柱(正六角錘台)の外周面とそれと相似形の内側面を有する。図の筒体部70は下端部が開口部71とされ、上端部が天板部72で閉塞されている。したがって、天板部72は外形が六角形の板部で構成される。筒体部70の開口端側外周縁部には、筒体部70の下端部を円形のリング状に縁取る補強用のフランジ部73が径方向外側に向けて僅かに突出するように形成されている。このフランジ部73を円形のリング状としたのは、筒体部70の剛性を向上するためである。したがって、筒体部70の外周面は、正確には、上部が六角柱(六角錘台)の平面で、下部になるにしたがって各面が断面円形の曲面になっている。この紙成形部材40は、後述するようにパルプ(繊維)を成形型内でモールドして形成されるので、筒体部70も天板部72もフランジ部73も一体である。そして、この実施形態では、筒体部70の内側面や天板部72の内側面は、比較的細かい目のメッシュ状の凹凸部74とされている。また、この実施形態では、筒体部70の(上部の)内部断面を六角形とし、これに緊密に嵌合する接合部60の外形を六角形とすることにより、例えば、注出口部21を開閉するためにキャップ10を回転させる場合に紙成形部材40とプラスチック成形部材30が周方向にずれることなく一体に回転される。なお、この実施形態では、筒体部70の内部断面として正六角形を例示したが、これに限らず、例えば正三角形、正四角形、正五角形、正七角形などの多角形としてもよい。
【0011】
紙成形部材40は、例えばパルプモールドで成形したものである。パルプモールドは、植物繊維を水で溶かし絡み合わせて、金型で抄き上げた後、乾燥させてできるものをいう。紙成形品部材は、パルプモールドに限定されず、主成分にパルプ(繊維)と澱粉とを用いた成形材料を射出成形して3次元立体構造物を実現する紙素材射出成形方法や、紙管の製造方法、コップや容器などの型材を用いた製造方法が適用可能であり、或いは射出成型の金型に紙のブランクスを入れて一体成型するインサートインジェクションの技術を用いて製造しても良い。なお、この実施形態の紙成形部材40は、後述のようにして、内側部分の密度を外側部分の密度よりも小さくしている。
【0012】
紙成形部材40は、紙を主とするバイオマス素材が用いられ、その材料は、キャップ10全体の材料に対し、質量比で50%を超え、好ましくは60質量%以上、より好ましく80質量%以上である。バイオマスとは、再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものいう。バイオマス要素には、その賦存状態により、(1)廃棄物系バイオマス、(2)未利用バイオマス、(3)資源作物に分類されている。廃棄物系バイオマスには、例えば廃棄紙、食品廃棄物、黒液(パルプ工場廃液)などが含まれる。未利用バイオマスには、例えば稲わら、麦わら、もみがら、林地残材などが含まれる。資源作物には、例えば糖質資源(さとうきび等)、でんぷん資源(とうもろこし等)、油脂資源(なたね等)、柳、ポプラ、スイッチグラスなどが含まれる。紙成形部材40の厚さは、例えば、ラフモールドを想定した場合には、0.5mm~5.0mmであり、パルプモールドの高精細品を想定した場合には、好ましくは0.8~5mmである。この実施形態では、紙成形部材40のプラスチック成形部材30との結合部、すなわち天板部72の厚さを0.7mm~3.0mm、好ましくは0.8mm~2.0mmとした。材料の詳細については、プラスチック成形部材30の樹脂を含めて後段に詳述する。
【0013】
この実施形態では、プラスチック成形部材30と紙成形部材40の結合を超音波接合によって行う。超音波接合は、周知のように、接合させたい被接合物を受け台(アンビル)A上に重ね合わせて搭載し、受け台Aと反対側から被接合物に当接されたホーンHで被接合物を加圧しながらホーンHの先端から被接合物に超音波振動を付与する。被接合物が樹脂(プラスチック)の場合、加圧当接されている箇所で樹脂が溶融し、それが固化することによって被接合物同士が結合される(金属の超音波接合原理とはやや異なる)。図6aは、この実施形態で紙成形部材40とプラスチック成形部材30を超音波接合している工程の説明図であり、図6bは、結果として得られたキャップ10の断面図である。すなわち、図6bでは、紙成形部材40とプラスチック成形部材30が超音波接合によって結合されている。なお、図6では図1図5のキャップ10を模式的に示している。この実施形態では、開口部71を上向きにして受け台Aの上に紙成形部材40を搭載し、その内側に、接合部60が天板部72に当接するようにしてプラスチック成形部材30を嵌め込む。ホーンHは、プラスチック成形部材30の雌ネジ部51を囲繞して接合部60を加圧するような円筒形状とし、接合部60に当接される先端部に向けて肉厚が次第に小さくなるものを用いた。また、この実施形態では、プラスチック成形部材30の接合部60が紙成形部材40の天板部72に当接される面は、図4に示すように平坦(フラット)である。
【0014】
この実施形態では、プラスチック成形部材30の平坦な接合部60の一部がホーンHの当接箇所で溶融し、それが紙成形部材40の繊維間に含侵し(入り込み)、その後に固化することでプラスチック成形部材30と紙成形部材40が溶着(結合)されている。図6bに破線で示す領域が溶融したプラスチックが繊維に含侵している領域を模式的に示している。前述のように、この実施形態では、紙成形部材40の内側部分の密度を外側部分の密度より小さくしているので、溶融した樹脂が紙成形部材40(の天板部72)の内側部分で含侵しやすく、その分だけ、プラスチック成形部材30と紙成形部材40の結合強度が大きくなっている。また、この実施形態では、前述のように紙成形部材40の内側面、この場合は天板部72の内側面にメッシュ状の凹凸部74が形成されているので、この凹凸部74にも溶融した樹脂が含侵(侵入)することでプラスチック成形部材30と紙成形部材40の結合強度を大きくすることができている。この実施形態では、前述のように、紙成形部材40へのプラスチック成形部材30の嵌合形態を多角形(六角形)とすることで両者の相対回転が規制される構造としているので、超音波接合によるプラスチック成形部材30と紙成形部材40の結合は、両者、すなわち接合部60と天板部72を剥離する方向への力に対する強度が得られればよい。
【0015】
図7は、キャップ10の第2実施形態を示す説明図であり、図7aは、この実施形態で紙成形部材40とプラスチック成形部材30を超音波接合している工程の説明図、図7bは、結果として得られたキャップ10の断面図である。キャップ10を構成する紙成形部材40及びプラスチック成形部材30の主要な構成は、図1図6の第1実施形態のものとほぼ同様である。この実施形態では、プラスチック成形部材30の紙成形部材40側に向く面、具体的には接合部60の天板部72に対向する面にスパイク(エネルギーダイレクターともいう)61と呼ばれる凸部が設けられている。このスパイク61は、比較的鋭利な先端を有する円錐や多角錘などの錘形状とされている。被接合物の当接面にスパイク61を設けることにより、超音波接合時には、通常は、主にスパイク61の部分の樹脂だけが溶融し、その後に固化して被接合物同士が溶着(結合)される。例えば、樹脂の被接合物同士の超音波接合におけるスパイク61は、超音波振動をスパイク61の先端部に集中させて溶融までの時間を短縮したり、スパイク61を適切に配置することにより結合力を結合面全体でバランスさせたりする効果を得る。紙成形部材40とプラスチック成形部材30の溶着を超音波接合によって行うこの実施形態では、図7bに示すように、スパイク61が紙成形部材40に突き刺さった状態で溶融・固化する現象が生じる。
【0016】
前述のように、紙成形部材40の筒体部70とプラスチック成形部材30の接合部60が多角形嵌合されている実施形態のキャップ10では、両者の相対回転を改めて規制する必要はないが、両者に相対的な回転が生じるような場合には、スパイク61が相対回転を規制する規制体として機能し得る。このような効果も考慮して、スパイク61を配置する。例えば、スパイク61を同心円状に配置したり、格子点状に配置したりすることが考えられる。スパイク61を同心円状に配置することにより、円筒形状のホーンHから付与される超音波振動を各スパイク61に有効に振り分けることができる。スパイク61を同心円状に配置する場合に、円の半径が小さければ回転力(トルク)に対して有効に回転規制することができ、円の半径が大きければ回転変位に対して有効に回転規制することができる。また、スパイク61の大きさも一様である必要はなく、例えば、相対回転規制と剥離防止を規制する必要がある場合、深く突き刺さる大きなスパイク61で相対回転を物理的に規制し、小さなスパイク61の樹脂を紙成形部材40の結合表面近くで含侵させて剥離を有効に防止することも可能である。
【0017】
図8は、キャップ10の第3実施形態を示す説明図であり、図8aは、この実施形態で紙成形部材40とプラスチック成形部材30を超音波接合している工程の説明図、図8bは、結果として得られたキャップ10の断面図である。キャップ10を構成する紙成形部材40及びプラスチック成形部材30の主要な構成は、図1図6の第1実施形態のものとほぼ同様である。この実施形態でも、プラスチック成形部材30の紙成形部材40側に向く面、具体的には接合部60の天板部72に対向する面にスパイク61が設けられている。スパイク61の形状そのものは、第2実施形態のものと同様である。この実施形態では、第2実施形態のスパイク61と比較して、スパイク61を大きくすると共に、紙成形部材40の天板部72の厚さを小さくしている。その結果、スパイク61の先端部が紙成形部材40の天板部72を貫通し、その貫通している部分の樹脂が超音波振動によって受け台Aとの摩擦熱で溶融し、その後に固化してプラスチック成形部材30と紙成形部材40が溶着(結合)されている。溶融した樹脂の一部は紙成形部材40の天板部72の繊維に含侵した状態で固化している。これらにより、溶融固化後のスパイク61は天板部72を挟んだ鳩目のように機能し、紙成形部材40とプラスチック成形部材30の結合強度を大きくすることができている。スパイク61の配置条件などは、第2実施形態と同様である。なお、このようにスパイク61を紙成形部材40に貫通させる場合には、その貫通箇所に予め貫通穴や凹部を形成しておいてもよい。
【0018】
図9は、キャップ10の第4実施形態を示す説明図であり、図9aは、この実施形態で紙成形部材40とプラスチック成形部材30を超音波接合している工程の説明図、図9bは、結果として得られたキャップ10の断面図である。キャップ10を構成する紙成形部材40及びプラスチック成形部材30の主要な構成は、図1図6の第1実施形態のものとほぼ同様である。この実施形態でも、プラスチック成形部材30の紙成形部材40側に向く面、具体的には接合部60の天板部72に対向する面にスパイク61が設けられているが、この実施形態のスパイク61は先端部が平坦な錘台形状とされている。そして、この実施形態では、紙成形部材40の天板部72のスパイク61が当接する箇所に予め凹部62が形成されている。この凹部62は、紙成形部材40の天板部72を内側から厚さ方向に圧縮して形成されている。そのため、凹部62の底面は繊維が圧縮されて密度が大きくなっているのに対し、側面では繊維が引きちぎられたり切断されたりしている。凹部62は、例えば雌ネジ部51の周りで連続する溝部であってもよい。この凹部62にスパイク61が嵌った状態で超音波接合を行うと、スパイク61の部分の樹脂が溶融して凹部62内に充満すると共に主として凹部62の側面から紙成形部材40の繊維に含侵し、密度の大きい凹部62の底面からはさほど含侵しない。すなわち、紙成形部材40の繊維間で固化している樹脂は、凹部62の側面から更に凹部62の外側に広がるように含侵しており、これが紙成形部材40内における樹脂のフランジのように機能して、特に両者を剥離する方向への力に対する強度を大きくすることができている。このように、この例では、スパイク61が紙成形部材40に突き刺さる必要がないので、スパイク61の先端部を平坦にしている。
【0019】
プラスチック成形部材30に用いる樹脂は、剛性や融点、溶融時流動性などの物性を考慮する。特に、プラスチック成形部材30にスパイク61を設ける場合には、樹脂の剛性が小さいとスパイク61が紙成形部材40に突き刺さりにくくなり、紙成形部材40の結合面で溶融してしまうことから紙成形部材40の繊維間への含侵量が小さくなる可能性がある。紙成形部材40の繊維間への溶融樹脂の含侵量は、紙成形部材40の密度などにも影響されるので樹脂の剛性だけで規定はできないが、スパイク61が紙成形部材40に突き刺さった状態で樹脂を溶融させたい場合にはスパイク61の剛性が確保されるような樹脂を選択する。また、第3実施形態では、スパイク61を紙成形部材40に貫通させて受け台Aとの摩擦で溶融したが、紙成形部材40の繊維間に溶融樹脂を十分に含侵させたい場合には、スパイク61が紙成形部材40を貫通してしまわないことが望ましく、場合によっては、樹脂の剛性を調整してスパイク61が紙成形部材40を貫通しないようにすることも可能である。比較的低い融点の樹脂の方が溶融性(溶けやすさ)の点で有意であり、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの汎用プラスチックで、溶融時流動性が1~30g/10min、好ましくは5~15g/10minであることが望ましい。
【0020】
紙成形部材40のプラスチック成形部材30との結合部の厚さは、前述のように、0.7mm~3.0mm、好ましくは0.8mm~2.0mmが好ましい。紙成形部材40を構成する繊維には、木材パルプ、非木材パルプ、再生パルプなどがあり、植物繊維としては、紙(パルプ)、バガス(サトウキビ)、竹などが挙げられる。木質パルプのうち、針葉樹材(N材)の繊維長は2mm~4mm、広葉樹材(L材)の繊維長は1mm前後、バガスの繊維長は0.8mm~2.8mm程度、竹の繊維長は1.5mm~4.4mm程度である。繊維長の大きい材料(繊維)で構成される紙成形部材40は丈夫であり、繊維長の小さい材料で構成される紙成形部材40はきめが細かいという特性がある。樹脂との含侵溶着に関しては、繊維長が大きいほど、含侵固化した樹脂が抜けにくくなるが、紙成形部材40としての表面平滑性が低下するので、竹やバガスのように大小の繊維長が混在する材料や、長繊維の材料と短繊維の材料を混合して使用することが望ましく、特に短繊維の材料として再生紙を用いることで環境適性が向上される。長繊維の割合が大きいほど密度が小さくなるが、紙成形部材40の密度は、例えば後述するようにして部分的に調整することも可能であるので、ここでは紙成形部材40に用いられる材料(繊維)全体の密度として概説している。
【0021】
紙成形部材40の全体の密度は、0.6g/cm~1.5g/cm、好ましくは0.8g/cm~1.2g/cmであることが望ましい。プラスチック成形部材30にスパイク61を設ける場合には、樹脂の剛性と逆で、紙成形部材40の密度が大きすぎるとスパイク61が紙成形部材40に突き刺さらず、紙成形部材40の密度が小さすぎると紙成形部材40に突き刺さったスパイク61(の樹脂)が溶融せず、溶着できなくなってしまう。上記実施形態では、紙成形部材40の内側にプラスチック成形部材30を溶着するので、紙成形部材40の内側部分の密度を小さくしておけば、溶融した樹脂が含侵しやすく、またスパイク61を設けた場合にはスパイク61が突き刺さりやすい。これに対し、紙成形部材40の外表面はキャップ10の外表面であり、製品としては平滑な面で且つ紙粉の生じにくいことが望まれる。また、キャップ10の外表面である紙成形部材40の外表面の密度が大きい方が、剛性が大きく、対汚性にも優れる。このように紙成形部材40の外表面の密度を大きくする場合には、例えば、紙成形部材40の外表面を熱プレスして水分を蒸発しながら加圧することで、剛性が大きくなり、密度も大きくなり、結果として防汚効果も向上する。
【0022】
また、紙成形部材40の表面粗さに関し、紙成形部材40の内側面の凹凸部は40meshとした。また、ISOに規定する表面粗さの算術平均高さSaは、紙成形部材40の外側面で27μm、内側面で35μmとした。また、同じく表面粗さの最大高さSzは、紙成形部材40の外側面で171μm、内側面で288μmとした。また、同じく表面性状のアスペクト比Strは、紙成形部材40の外側面で0.45、内側面で0.09とした。アスペクト比Strは、小さい値ほど、方向性のあることを意味する。また、同じく表面粗さの山頂点の算出平均曲率Spcは、紙成形部材40の外側面で4.13/mm、内側面で9.33/mmとした。算出平均曲率Spcは、値が小さいと全体のうねりがあり、値が大きいと尖りがあることを意味する。また、同じく界面の展開面積比Sdrは、紙成形部材40の外側面で0.002、内側面で0.174とした。展開面積比Sdrは、粗さを伸ばした場合の表面積を表し、「0.174」は17.4%の面積増を意味する。
【0023】
スパイク61については、前述のように紙成形部材40に突き刺さった状態で溶融し、溶融後には元の形状よりも小さくなり、スパイク61自体の外周部分もホーンHの形状に対応して紙成形部材40と溶着する。したがって、プラスチック成形部材30に設けるスパイク61を増やすほど、その溶着による紙成形部材40との結合強度は増大するが、ホーンHによる加圧力や超音波振動の発振時間が増加するトレードオフが考えられるので、生産性を考慮して設定するとよい。例えば、前述のような円筒形状のホーンHを用い、以下の条件でプラスチック成形部材30と紙成形部材40の結合(溶着)試験を行った場合のスパイク61の有無による結合強度を求めた。
【0024】
超音波振動周波数 30kHz
ホーンHの内径 25mm
ホーンHの肉厚 3mm
ホーンHの加圧力 200kPa
超音波振動発振時間 0.5秒
冷却時間 0.5秒
結合強度 スパイクなし 10kgf
スパイクあり 15kgf
これらを総合的に調整し、例えば、スパイク61を設けない場合に溶着されたプラスチック成形部材30と紙成形部材40の剥離方向への力のみに対する結合強度が得られる樹脂の紙成形部材40の繊維間への含侵深さは0.1mm~0.2mm、相対回転も合わせて規制する必要がある場合の結合強度が得られる樹脂の紙成形部材40の繊維間への含侵深さは0.2mm~0.3mmであることが望ましい。また、スパイク61を設けた場合に溶着されたプラスチック成形部材30と紙成形部材40の剥離方向への力のみに対する結合強度が得られる樹脂の紙成形部材40の繊維間への含侵深さは0.3mm~0.4mm、相対回転も合わせて規制する必要がある場合の結合強度が得られる樹脂の紙成形部材40の繊維間への含侵深さは0.4mm~0.5mmであることが望ましい。なお、プラスチック成形部材30にスパイク61を形成するのと同様に、紙成形部材40の内側面に刃物などで切れ目やひっかき溝などの切り込みを後加工で入れることでも、スパイク形成と同様の効果が得られる。これは、切り込みによって紙成形部材40の内側面の表面積が大きくなる(内側面の荒れを含む)ことに加えて、この切り込みの部分に溶融樹脂が入り込むことによって含侵量が増加し、これらによって接合強度が大きくなる。なお、紙成形部材40の内側面に切り込みを入れると、超音波振動に必要とされるエネルギーがスパイク形成の場合よりも大きくなる。この超音波振動エネルギーの増大は、切り込みを入れた部分のみに超音波振動を付与してプラスチックを溶融含侵させることで回避することができる。
【0025】
このように、これらの実施形態のキャップ10では、プラスチック成形部材30の一部が紙成形部材40の内部に入り込んだ状態で両者が溶着してキャップ10が構成されているので、樹脂の使用量が増加しない。
また、紙成形部材40の材料は、キャップ10全体の材料に対し、質量比で50%を超えているので、環境対応の要望に応えることができる。
また、プラスチック成形部材30の一部を紙成形部材40の繊維間に含侵させることにより、樹脂の使用量を増加することなく、プラスチック成形部材30と紙成形部材40の溶着(結合)強度を得ることができる。
【0026】
また、紙成形部材40の内側面にメッシュ状の凹凸部74を形成することにより、プラスチック成形部材30と紙成形部材40の溶着(結合)強度を大きくすることができる。
また、紙成形部材40の内側部分の密度を外側部分の密度より小さくすることにより、紙成形部材40の内側に溶着されるプラスチック成形部材30と紙成形部材40の溶着(結合)強度を大きくすることができると共に、紙成形部材40の外表面における紙粉の発生を防止したり、防汚性を高めたりすることもできる。
また、プラスチック成形部材30の紙成形部材40側に向く面に設けられたスパイク(凸部)61を紙成形部材40の内部に突き刺さらせる(入り込ませる)ことにより、プラスチック成形部材30と紙成形部材40の溶着(結合)強度を大きくすることができる。
【0027】
また、スパイク(凸部)61を紙成形部材40に貫通させることにより、プラスチック成形部材30と紙成形部材40の溶着(結合)強度を大きくすることができる。
また、プラスチック成形部材30の一部を紙成形部材40に予め形成された凹部62から繊維間に含侵させることにより、プラスチック成形部材30と紙成形部材40の溶着(結合)強度を大きくすることができる。
次に、チューブ容器の実施形態について説明する。図10は、この実施形態のチューブ容器100を示す分解斜視図である。このチューブ容器100には、前述した各実施形態のキャップ10が装着される。この実施形態のチューブ容器100は、図10に示すように、一方の端部が閉塞されたチューブ状の胴部110と、胴部110の他方端に取付けられた注出口部21と、を備え、胴部110が、紙を主体とする材料によって形成されている。したがって、キャップ10と同様に、環境対応に適合したチューブ容器100を提供することができる。
【0028】
図11は、図10の注出口部21の斜視図、図12は、図11のD-D断面図である。注出口部21は、胴部110に収容された内容物を外部に注出するためのスパウトであり、注出口を構成する円筒形状の注出筒部120と張出部130とを備える。注出筒部120の外周には、キャップ10の雌ネジ部51が螺合される雄ネジが形成されている。張出部130は、注出筒部120の一方の端部(図10における下端)に接続され、注出筒部120の径方向外側に延伸する平板状の部分である。この実施形態の張出部130は、注出筒部120の径方向外側に広がる円環形状に形成されている。この張出部130は円環状に形成されているが、胴部110を接合することができる限り、張出部130の形状は限定されず、楕円形、長円形、トラック形、多角形などでもよい。
【0029】
注出口部21は、熱可塑性樹脂と、樹脂以外のフィラーを含む材料により成型される。注出口部21の材料に用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド及びシクロポリオレフィンのいずれか1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。フィラーとしては、タルク、カオリン、紙粉及びセルロース繊維のいずれか1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。注出口部21の材料として、熱可塑性樹脂と、樹脂以外のフィラーの混合物を用いることにより、成型性や胴部110のシート材との熱溶着性を維持しつつ、樹脂の使用量を低減することが可能となる。注出口部21の成型方法は特に限定されないが、射出成形、真空成形・熱板圧空成型等のサーモフォーミング、コンプレッション成型等の既存の成型方法を利用可能である。
【0030】
図13は、図10のチューブ容器100の胴部110を構成するシート140の一例を示す断面図である。チューブ容器100の胴部110は、図13に示すように、紙を主体とするシート140により構成する。シート140は、紙層141の一方の面に、基材フィルム層142、バリア層143及びシーラント層144をこの順に積層し、紙層141の他方の面に、紙保護層145を積層し、更に紙保護層145上にインキ層146及びオーバーコートニス層147を積層した多層シートである。以下、各層の詳細を説明する。
紙層141は、チューブ容器100に強度及びコシを付与する構造層である。紙層141を構成する用紙の種類は特に限定されないが、強度、屈曲耐性、印刷適性を備える点で、片艶クラフト紙又は両艶クラフト紙を用いることが好ましい。また、紙層141を構成する用紙として、必要に応じて、耐水紙又は耐油紙を使用しても良い。紙層141に用いる紙の坪量は、30~200g/mであり、50~120g/mであることが好ましい。紙層141に用いる紙の坪量が30g/m未満である場合、胴部110のコシが不足する。コシを補うためには、例えば、紙層141より内側に設ける樹脂フィルムを厚くする必要があるが、樹脂比率の増大に繋がり、環境負荷低減の面で望ましくない。また、紙層141に用いる紙の坪量が200g/mを超える場合、紙のコシや断熱性により、製筒性(製袋性)、成型性及び溶着性が悪化する上、製造コストも増加するため好ましくない。
【0031】
基材フィルム層142は、シート140に耐熱性と強靱性などの物理的強度とを付与する層である。基材フィルム層142は、バリア層143の基材となる層でもある。基材フィルム層142を構成するフィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性及び物理的強度の観点から、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドなどの延伸フィルムを用いることが好ましい。ただし、基材フィルム層142を紙により構成しても良い。
バリア層143は、酸素や水蒸気等を遮断して、内容物の保存性を向上させる機能層である。バリア層143は、例えば、シリカやアルミナなどの無機化合物の蒸着膜、アルミニウムなどの金属蒸着膜、アルミニウムなどの金属箔、板状鉱物及び/又はバリア性樹脂を含むバリアコート剤の塗膜の1種以上により構成することができる。バリアコート剤に用いるバリア性樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)等を使用することができ、バリアコート剤にはバリア性樹脂以外のバインダー樹脂が適宜配合される。バリア層143は、予め基材フィルム層142上に積層されてバリアフィルムを構成していても良いし、単層膜として設けられても良い。
【0032】
シーラント層144の材質は特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂であることが好ましい。シーラント層144は、軟化温度が基材フィルム層142の軟化温度より20℃以上低い樹脂を用いる。シーラント層144の軟化温度が、基材フィルム層142の軟化温度より20℃以上低くない場合、シール時に基材フィルム層142が軟化してピンホールが発生する可能性が高くなるため好ましくない。シーラント層144の軟化温度は、基材フィルム層142の軟化温度より40℃以上低いことが好ましい。シーラント層144に用いる熱可塑性樹脂は、注出口部21の材料を構成する熱可塑性樹脂に対して接着性を有するものであれば良いが、注出口部21に用いる熱可塑性樹脂と同じ材質であることが好ましい。シーラント層144に用いる熱可塑性樹脂と注出口部21に用いる熱可塑性樹脂層とを同じにすることにより、胴部110と注出口部21とのシール強度を向上させることができる。
【0033】
紙保護層145は、シート140を構成する紙層141への内容物や汚れの付着から保護するための層である。紙保護層145の材料や形成方法は特に限定されないが、熱可塑性樹脂の押出コートや、耐水剤あるいは耐油剤などのコート剤のコートにより紙保護層145を積層することができる。紙保護層145の厚みは、0.2~50μmであることが好ましく、1~20μmであることがより好ましい。紙保護層145の厚みが0.2μm未満である場合、紙保護層145にピンホールが発生する可能性があり、紙層141の保護が不十分となる場合がある。また、紙保護層145の厚みが50μmを超える場合、樹脂使用量や製造コストの面で好ましくない。
【0034】
インキ層146は、各種表示を行うために印刷により施される層であり、オーバーコートニス層147は、耐摩性などを付与するための層である。インキ層146とオーバーコートニス層147の積層順序は図13と逆であっても良い。また、オーバーコートニス層147が紙保護層145を兼ねていても良い。
胴部110を構成するシート140の厚さ(総厚)は、特に限定されないが、30~300μmであることが好ましい。胴部110を構成するシート140の厚みが、この範囲であれば、製袋機やピロー・スティック包装機等を用いて胴部110を容易に筒状に加工することができる。また、紙層141によって強度とコシが付与されるため、一般的なラミネートチューブ(厚み300~500μm)と比べて、薄くすることができ、樹脂使用量も低減できる。
【0035】
また、胴部110を構成するシート140の樹脂比率を低減するため、シート140の質量のうち、紙層141の占める割合が50%以上であることが好ましい。樹脂の使用量を低減する観点では紙層141の割合は高いほど好ましい。なお、胴部110を構成するシートは、少なくとも紙層141の一方面側(チューブ容器100の内側となる面側)にシーラント層144が積層されたものであれば良く、上記の基材フィルム層142、バリア層143、紙保護層145、インキ層146及びオーバーコートニス層147の1層以上を省略しても良い。
チューブ容器100の製造時に胴部110及び注出口部21を溶着する方法としては、超音波溶着、高周波溶着、ヒートシール溶着、ホットエア溶着、胴部インサートのコンプレッション成型等を利用することができるが、紙の断熱性に左右されにくい点で超音波溶着を採用することが好ましい。ここで、図10に示すように、チューブ容器100のチューブ長さをL、チューブ口径をDとしたとき、L/Dを1~10の範囲とすることが好ましく、1.5~8の範囲とすることがより好ましい。チューブ長さLは、張出部130への溶着箇所から胴部110の端部までの軸方向の長さであり、チューブ口径Dは、張出部130が円形の場合、張出部130の直径であり、張出部130が楕円形の場合、(A+B)/2である(ただし、A:楕円の長径、B:楕円の短径)。L/Dの値が1未満の場合、チューブ口径Dに対してチューブ長さLが短すぎ、チューブ容器100の形状が包装容器に適さないものとなる。一方、L/Dの値が10を超える場合、チューブ口径Dに対してチューブ長さLが長すぎるために、チューブ容器100の外観が悪くなり、チューブ容器100の形状が包装容器に適さないものとなる。
【0036】
この実施形態では、胴部110の構造材として紙を用いることにより、樹脂の使用量を低減しつつ、胴部110にコシを付与することができる。また、注出口部21の成形材料に樹脂以外のフィラーが配合されていることによっても、チューブ容器100の樹脂使用量を少なくすることができる。したがって、この実施形態によれば、従来と比べて樹脂使用量が低減され、かつ、容器の自立性やハンドリング性に必要なコシを有するチューブ容器100を実現できる。また、胴部110に用いる紙の坪量が200g/m以下であるため、胴部110を形成する際における丸め加工、貼り合わせ部の溶着、胴部110を注出口部21に取り付ける際における胴部110の端部近傍の折り畳み、胴部110の端部近傍の張出部130への溶着を問題なく行うことができ、加工装置による成形性が良好である。
【0037】
また、この実施形態に係るチューブ容器100においては、張出部130が円筒形状の注出筒部120の径方向外側に延伸する平板形状を有しており、胴部110が張出部130の外面に溶着されているため、チューブ容器100の内容物が少なくなった場合に、胴部110を張出部130の外周縁に沿って折り畳むことにより、内容物を容易に絞り出すことができる。また、張出部130が平板形状であり、張出部130によって内容物が残存する空間が形成されないため、胴部110を張出部130の外周縁に沿って折り曲げ、張出部130と胴部110とをほぼフラットな状態とすることにより、内容物を残らず絞り出すことができる。
【0038】
以上、実施形態に係るキャップ及びこれを用いたチューブ容器について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施形態では、チューブ容器100の注出口部21に設けられた雄ネジにキャップ10の雌ネジ部51を螺合してチューブ容器100にキャップ10を装着する構成としたが、この装着構造は、これに限定されるものではなく、その装着構造に応じた機能部材をプラスチック成形部材30で構成し、その余の部材を紙成形部材40とすればよい。ただし、いずれの場合も、プラスチック成形部材30に使用される樹脂量を必要最小限とすることを眼目とする。
【0039】
また、キャップ10を構成する際、プラスチック成形部材30と紙成形部材40の超音波接合に用いられる受け台AやホーンHは、実際の部材に適応する形態とすればよい。
【符号の説明】
【0040】
10 キャップ
21 注出口部
30 プラスチック成形部材
40 紙成形部材
61 スパイク(凸部)
62 凹部
71 開口部
74 凹凸部
100 チューブ容器
110 胴部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13