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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024926
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】作業車両及び作業車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240216BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20240216BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
E02F9/20 Z
F15B11/08 A
E02F9/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127922
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100142871
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 哲昌
(74)【代理人】
【識別番号】100094743
【弁理士】
【氏名又は名称】森 昌康
(74)【代理人】
【識別番号】100175628
【弁理士】
【氏名又は名称】仁野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】長尾 昂平
(72)【発明者】
【氏名】阿部 太樹
(72)【発明者】
【氏名】濱本 亮太
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003BA02
2D003CA03
2D003DA03
2D003DB03
2D003FA02
3H089AA60
3H089CC08
3H089DA03
3H089DA07
3H089DA13
3H089DB03
3H089DB46
3H089DB49
3H089EE36
3H089FF10
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】パイロット油の無駄を少なくしつつ、応答性が向上されたアンチストールの制御を行う作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両の制御方法は、第1パイロット油路に設けられた一次圧制御弁によってパイロット一次圧を第1目標値となるように制御することをさらに含む。当該方法は、第2パイロット油路に接続された二次圧制御弁によってパイロット二次圧を第2目標値となるように制御することをさらに含む。当該方法は、エンジンの回転速度を検出することをさらに含む。当該方法は、回転速度センサによって検出されるエンジンの回転速度が目標回転速度から所定の閾値速度差以上下回ると、第2目標値を第1目標値よりも高くし、且つ、第1目標値と第2目標値とを低下させるように一次圧制御弁と二次圧制御弁とをともに制御することをさらに含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を駆動するように構成される油圧モータと、
パイロット油の圧力が印加されるパイロットポートを有し、前記パイロット圧に応じて前記油圧モータに作動油を供給するように構成される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動するように構成されるエンジンと、
前記エンジンの回転速度を検出するように構成される回転速度センサと、
前記エンジンによって駆動され、前記パイロット油を吐出するように構成されるパイロットポンプと、
ユーザによる進行方向の指示が入力される走行指示入力装置と、
前記第1パイロット油路に接続され、走行指示入力装置の操作によって、前記パイロット圧を制御するように構成される操作弁と、
前記パイロットポンプと前記操作弁とを接続し、前記パイロット油が送られる第1パイロット油路と、
前記第1パイロット油路に設けられ、前記第1パイロット油路の前記パイロット油の圧力であるパイロット一次圧を制御するように構成される一次圧制御弁と、
前記操作弁と、前記パイロットポートとを接続し、前記パイロット油が送られる第2パイロット油路と、
前記第2パイロット油路に接続され、前記第2パイロット油路の前記パイロット油の圧力であるパイロット二次圧を制御するように構成される二次圧制御弁と、
前記エンジンの目標回転速度に応じて前記エンジンの回転速度を制御し、前記パイロット一次圧の第1目標値と前記パイロット二次圧の第2目標値に基づいて、前記一次圧制御弁と前記二次圧制御弁とを制御するように構成されるコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記回転速度センサによって検出される前記エンジンの回転速度が前記目標回転速度から所定の閾値速度差以上下回ると、前記第2目標値を前記第1目標値よりも高くし、且つ、前記第1目標値と前記第2目標値とを低下させるように前記一次圧制御弁と前記二次圧制御弁とをともに制御するように構成される、
作業車両。
【請求項2】
前記コントローラは、前記回転速度センサによって検出される前記エンジンの回転速度が前記目標回転速度から所定の閾値速度差以上下回ると、前記一次圧制御弁と前記二次圧制御弁とを同時に制御するように構成される、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記第2パイロット油路から分岐し、前記二次圧制御弁に接続される排出油路と、
前記操作弁と前記排出油路との間の前記第2パイロット油路に設けられる絞りと、
をさらに備える、請求項1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
エンジンの回転速度が目標回転速度になるようにエンジンを制御し、
前記エンジンに接続された油圧ポンプを駆動して、前記油圧ポンプに作動油を走行装置に接続された油圧モータに吐出させ、
前記エンジンに接続されたパイロットポンプを駆動して、前記パイロットポンプにパイロット油を第1パイロット油路に吐出させ、
ユーザによる進行方向の指示に応じて前記第1パイロット油路に接続された操作弁によって、入力される前記パイロット油の圧力であるパイロット一次圧をパイロット二次圧に変換して前記油圧ポンプのパイロットポートに接続される第2パイロット油路に前記パイロット二次圧を出力し、
前記第1パイロット油路に設けられた一次圧制御弁を前記パイロット一次圧が第1目標値となるように制御し、
前記第2パイロット油路に接続された二次圧制御弁を、前記パイロット二次圧が第2目標値となるように制御し、
前記エンジンの回転速度を検出し、
前記回転速度センサによって検出される前記エンジンの回転速度が前記目標回転速度から所定の閾値速度差以上下回ると、前記第2目標値を前記第1目標値よりも高くし、且つ、前記第1目標値と前記第2目標値とを低下させるように前記一次圧制御弁と前記二次圧制御弁とをともに制御する、
作業車両の制御方法。
【請求項5】
前記コントローラは、前記回転速度センサによって検出される前記エンジンの回転速度が前記目標回転速度から所定の閾値速度差以上下回ると、前記一次圧制御弁と前記二次圧制御弁とを同時に制御する、請求項4に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両及び作業車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エンジン回転速度がドロップしたときに、走行操作装置とパイロットポンプとの間の一次圧回路のパイロット圧であるパイロット一次圧(primary pilot pressure)を制御する作業車両の油圧回路を開示している。特許文献2は、エンジン回転速度がドロップしたときに、走行操作装置と油圧ポンプのパイロットポートとの間の二次圧回路のパイロット圧であるパイロット二次圧(secondary pilot pressure)を制御する作業車両の油圧回路を開示している。特許文献3は、別の二次パイロット圧の制御の方法としてリリーフ弁を利用した作業車両の油圧回路を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5687971号
【特許文献2】特開2017-67100号公報
【特許文献3】特許第6695791号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにパイロット一次圧を制御する場合、パイロット油の無駄は少ないが応答性が低い問題がある。一方で、特許文献2の方法で特許文献3のようにリリーフ弁を使ってパイロット二次圧を制御する場合、応答性は高いがパイロット油の無駄が大きい。特許文献1のパイロット一次圧の制御と特許文献2及び3のパイロット二次圧の制御を同時に実行すると、パイロット油の無駄を少なくしつつ、応答性を上げることが可能なようにも考えられる。しかし、二次圧回路や一次圧回路と二次圧回路の間の操作弁からはパイロット油が流出するため、パイロット油の流出による圧力損失がある。このため、単純に同じように制御すると、当該圧力損失の関係で制御したいパイロット圧よりも低下しまう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1態様に係る作業車両は、油圧モータと、油圧ポンプと、エンジンと、回転速度センサと、パイロットポンプと、走行指示入力装置と、制御弁と、第1パイロット油路と、一次圧制御弁と、第2パイロット油路と、二次圧制御弁と、コントローラと、を備える。油圧モータは、走行装置を駆動するように構成される。油圧ポンプは、パイロット油の圧力が印加されるパイロットポートを有し、前記パイロット圧に応じて前記油圧モータに作動油を供給するように構成される。エンジンは、油圧ポンプを駆動するように構成される。回転速度センサは、エンジンの回転速度を検出するように構成される。パイロットポンプは、エンジンによって駆動され、パイロット油を吐出するように構成される。走行指示入力装置は、ユーザによる進行方向の指示が入力される。制御弁は、第1パイロット油路に接続され、走行指示入力装置の操作によって、パイロット圧を制御するように構成される。第1パイロット油路はパイロットポンプと制御弁とを接続し、第1パイロット油路を介してパイロット油が送られる。一次圧制御弁は、第1パイロット油路に設けられ、第1パイロット油路のパイロット油の圧力であるパイロット一次圧を制御するように構成される。第2パイロット油路は、制御弁と、パイロットポートを接続し、パイロット油が送られる。二次圧制御弁は、第2パイロット油路に接続され、第2パイロット油路のパイロット油の圧力であるパイロット二次圧を制御するように構成される。コントローラは、エンジン回転速度の目標回転速度に応じてエンジンの回転速度を制御する。コントローラは、パイロット一次圧の第1目標値とパイロット二次圧の第2目標値に基づいて、一次圧制御弁と二次圧制御弁とを制御するように構成される。コントローラは、回転速度センサによって検出されるエンジンの回転速度が目標回転速度から所定の閾値速度差以上下回ると、第2目標値を第1目標値よりも高くし、且つ、第1目標値と第2目標値とを低下させるように一次圧制御弁と二次圧制御弁とをともに制御するように構成される。
【0006】
本開示の第2態様に係る作業車両の制御方法は、エンジンの回転速度が目標回転速度になるようにエンジンを制御することを含む。当該方法は、エンジンに接続された油圧ポンプを駆動して作動油を走行装置に接続された油圧モータに吐出することをさらに含む。当該方法は、エンジンに接続されたパイロットポンプを駆動してパイロット油を第1パイロット油路に吐出することをさらに含む。当該方法は、ユーザによる進行方向の指示に応じて第1パイロット油路に接続された制御弁によって、入力されるパイロット油の圧力であるパイロット一次圧をパイロット二次圧に変換して油圧ポンプのパイロットポートに接続される第2パイロット油路に出力することをさらに含む。当該方法は、第1パイロット油路に設けられた一次圧制御弁によってパイロット一次圧を第1目標値となるように制御することをさらに含む。当該方法は、第2パイロット油路に接続された二次圧制御弁によってパイロット二次圧を第2目標値となるように制御することをさらに含む。当該方法は、エンジンの回転速度を検出することをさらに含む。当該方法は、回転速度センサによって検出されるエンジンの回転速度が目標回転速度から所定の閾値速度差以上下回ると、第2目標値を第1目標値よりも高くし、且つ、第1目標値と第2目標値とを低下させるように一次圧制御弁と二次圧制御弁とをともに制御することをさらに含む。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示される技術によれば、二次圧回路の圧力損失を考慮して、目標となるパイロット一次圧に合わせてパイロット圧を制御することによって、パイロット油の無駄を少なくしつつ、応答性が向上されたアンチストールの制御を行う作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、作業車両の側面図である。
図2図2は、作業車両の上面図である。
図3図3は、作業車両の走行系の油圧回路図である。
図4図4は、エンジン回転速度とパイロット一次圧と、設定線との関係を示す図である。
図5図5は、操作レバーの操作位置と、走行二次源圧との関係を示す図である。
図6図6は、エンジン回転速度とパイロット二次圧と、設定線との関係を示す図である。
図7図7は、作業車両のブロック図である。
図8図8は、実施形態に係る作業車両のコントローラの動作を示すフローチャートである。
図9図9は、変形例に係る二次圧制御弁を示す油圧回路図である。
【0009】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、図中において同じ符号は、対応するまたは実質的に同一の構成を示している。
<第1実施形態>
<全体構成>
【0010】
図1及び図2を参照すると、作業車両1、例えばコンパクトトラックローダは、車両本体2と、一対の走行装置3と、作業装置4とを備えている。車両本体2は、走行装置3、及び、作業装置4を支持する。図示の実施形態では、走行装置3は、履帯式の走行装置である。このため、一対の走行装置3のそれぞれは、油圧モータ装置30によって駆動される駆動輪31、従動輪32、33、及び、転輪34を含む。ただし、一対の走行装置3のそれぞれは、履帯式走行装置に限定されない。一対の走行装置3のそれぞれは、例えば、前輪/後輪走行装置であってもよいし、前輪と後部クローラとを有する走行装置であってもよい。作業装置4は、作業装置4の末端(distal end)に器具(work equipment)(バケット)41を含む。作業装置4の基端(proximal end)は、車両本体2の後部に取り付けられている。作業装置4は、バケットピボット軸43を介してバケット41を回転可能に支持するための一対のアーム組立体(arm assembly)42を含む。一対のアーム組立体42のそれぞれは、リンク44とアーム45を含む。
【0011】
リンク44は、支点軸(fulcrum shaft)46の周りで車両本体2に対して回転可能である。アーム45は、ジョイント軸(joint shaft)47の周りでリンク44に対して回転可能である。作業装置4は、複数のアームシリンダ48と少なくとも1つの器具シリンダ(equipment cylinder)49とをさらに含む。複数のアームシリンダ48のそれぞれは、車両本体2およびアーム45に回転可能に接続され、リンク44およびアーム45等を移動させて、バケット41を昇降させる。少なくとも1つの器具シリンダ49は、バケット41を傾けるように構成される。車両本体2は、キャビン5を含む。キャビン5は、開閉自在な前窓51を備え、キャブフレーム53によってその外形が定義される。前窓51は、省略されてもよい。作業車両1は、キャビン5内に運転席54および走行指示入力装置(traveling instruction input device)55を含む。キャブフレーム53は、図2に示されるように、車両本体2上の回動軸(rotational shaft)RSL及びRSR周りに回転可能である。図1及び図2では、回動軸RSL及びRSRによって規定される共通の旋回軸(pivot)AXCを図示している。つまり、キャブフレーム53は、車両本体2に対して旋回軸AXC周りに回動可能に取り付けられている。
【0012】
なお、本願に係る実施形態において、前後方向DFB(前方向D/後方向D)とは、キャビン5の運転席54に着座したオペレータから見て前後方向(前方向/後方向)を意味する。左方向D、右方向D、幅方向Dとは、当該オペレータから見てそれぞれ、左方向、右方向、左右方向を意味する。上方向D、下方向D、高さ方向Dとは、当該オペレータから見て上方向、下方向、高さ方向を意味する。作業車両1の前後/左右(幅)/上下(高さ)方向とは、それぞれ、当該オペレータから見た前後/左右(幅)/上下(高さ)方向と一致するものとする。
【0013】
図1は、作業車両1の左側を示している。図2に示すように、車両本体2は、車体中央面Mに対して概ね面対称であり、左側側面である第1側面2Lと、右側側面である第2側面2Rとを含む。一対の走行装置3のうち、第1側面2Lに設けられた走行装置3が第1走行装置3Lとして、第2側面2Rに設けられた走行装置3が第2走行装置3Rとして示されている。一対のアーム組立体42のうち、車体中央面Mに対して左側に設けられるアーム組立体42が第1アーム組立体42Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられるアーム組立体42が第2アーム組立体42Rとして示されている。車体中央面Mに対して左側に設けられるリンク44が第1リンク44Lとして示されている。車体中央面Mに対して左側に設けられるアーム45が第1アーム45Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられるアーム45が第2アーム45Rとして示されている。車体中央面Mに対して左側に設けられる支点軸46が第1支点軸46Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられる支点軸46が第2支点軸46Rとして示されている。車体中央面Mに対して左側に設けられるジョイント軸47が第1ジョイント軸47Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられるジョイント軸47が第2ジョイント軸47Rとして示されている。油圧モータ装置30のうち、車体中央面Mに対して左側に設けられる油圧モータ装置30が第1油圧モータ装置30Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられる油圧モータ装置30が第2油圧モータ装置30Rとして示されている。
【0014】
図1及び図2を参照すると、作業車両1は、車両本体2の後部に設けられたエンジン6、並びに、第1油圧ポンプ7L、及び、第2油圧ポンプ7Rを含む複数の油圧ポンプ7をさらに備える。エンジン6は、複数の油圧ポンプ7を駆動する。第1油圧ポンプ7L、及び、第2油圧ポンプ7Rは、駆動輪31を駆動する油圧モータ装置30等を駆動するために作動油を吐出するように構成されている。第1油圧ポンプ7L、及び、第2油圧ポンプ7R以外の複数の油圧ポンプ7は、作業装置4に接続された油圧アクチュエータ(複数のアームシリンダ48、少なくとも1つの器具シリンダ49等)を駆動するために作動油を吐出するように構成されている。エンジン6は、作業車両1の幅方向Dにおいて、一対のアーム組立体42の間に設けられている。作業車両1は、エンジン6を覆うためのカバー8をさらに備える。作業車両1は、車両本体2の後端に設けられているボンネットカバー9をさらに備える。ボンネットカバー9は、開閉可能であり、保守員がエンジン6などの保守作業を行うことができる。
【0015】
図3は、作業車両1の走行系の油圧回路図である。作業車両1は、油圧回路1Aを含む。油圧回路1Aは、作動油タンク70と、パイロットポンプ71とを含む。パイロットポンプ71は、エンジン6の動力によって駆動される定容量型のギヤポンプである。パイロットポンプ71は、作動油タンク70に貯留された作動油を吐出するように構成される。特に、パイロットポンプ71は、主に制御に用いる作動油を吐出するように構成される。説明の便宜上、パイロットポンプ71から吐出された作動油のうち、制御用として用いられる作動油のことをパイロット油、パイロット油の圧力のことをパイロット圧と呼称される。特に、パイロットポンプ71は、第1油圧ポンプ7L及び第2油圧ポンプ7Rにパイロット油を供給するように構成される。
【0016】
油圧回路1Aは、パイロットポンプ71の吐出ポートに接続されるパイロット供給油路PA1を含む。パイロット油は、パイロット供給油路PA1を流れる。油圧回路1Aは、パイロット供給油路PA1に接続される複数の切換弁(switching valve)(ブレーキ切換弁SV1、方向切換弁SV2)と、複数のブレーキ機構72とを含む。ブレーキ切換弁SV1は、パイロット供給油路PA1に接続されている。ブレーキ切換弁SV1は、複数のブレーキ機構72による制動及び制動の解除を行うための方向切換弁(電磁弁)である。ブレーキ切換弁SV1は、励磁によりその弁体を第1位置VP1aまたは第2位置VP1bに切り換えるように構成された二位置切換弁である。ブレーキ切換弁SV1の弁体の切換は、ブレーキペダル13(図7参照)によって行われる。ブレーキペダル13にはセンサ14が設けられている。センサ14で検出された操作量は、ECU(Electric Control Unit)から成るコントローラ10に入力される。
【0017】
複数のブレーキ機構72は、第1走行装置3Lを制動するための第1ブレーキ機構72Lと、第2走行装置3Rを制動するための第2ブレーキ機構72Rとを含む。第1ブレーキ機構72L及び第2ブレーキ機構72Rは、油路PA2を介してブレーキ切換弁SV1と接続されている。第1ブレーキ機構72L及び第2ブレーキ機構72Rは、パイロット油(作動油)の圧力に応じて走行装置3を制動するように構成される。ブレーキ切換弁SV1の弁体が第1位置VP1aに切り替えられた場合、ブレーキ切換弁SV1とブレーキ機構72との間における区間において油路PA2から作動油が抜け、ブレーキ機構72により、走行装置3が制動される。ブレーキ切換弁SV1の弁体が第2位置VP1bに切り替えられた場合、ブレーキ機構72による制動が解除される。なお、ブレーキ切換弁SV1の弁体が第1位置VP1aに切り替えられた場合、ブレーキ機構72による制動が解除され、ブレーキ切換弁SV1の弁体が第2位置VP1bに切り替えられた場合、ブレーキ機構72により走行装置3が制動されてもよい。
【0018】
方向切換弁SV2は、第1油圧モータ装置30L及び第2油圧モータ装置30Rの回転を変更する電磁弁である。方向切換弁SV2は、励磁によりその弁体を第1位置VP2aまたは第2位置VP2bに切り換えるように構成された二位置切換弁である。方向切換弁SV2の切換は、図示されない操作部材等によって行われる。なお、方向切換弁SV2は、二位置切換弁ではなく吐出する作動油の流量を調整可能な比例弁であってもよい。
【0019】
第1油圧モータ装置30Lは、第1走行装置3Lに設けられた駆動輪31に動力を伝達する装置である。第1油圧モータ装置30Lは、第1油圧モータ31Lと、第1斜板切換シリンダ32Lと、第1走行制御弁(油圧切換弁)SV4とを含む。第1油圧モータ31Lは、第1走行装置3Lを駆動するための斜板形可変容量アキシャルモータあって、車速(回転)を1速或いは2速に変更することができるモータである。第1斜板切換シリンダ32Lは、伸縮によって第1油圧モータ31Lの斜板の角度を変更するように構成されたシリンダである。第1走行制御弁SV4は、第1斜板切換シリンダ32Lを伸縮させるための弁である。第1走行制御弁SV4は、その弁体を第1位置VP4a及び第2位置VP4bに切り換えるように構成された二位置切換弁である。
【0020】
第1走行制御弁SV4の切換えは、第1走行制御弁SV4に接続された上流側に位置する方向切換弁SV2によって行われる。具体的には、方向切換弁SV2と第1走行制御弁SV4とは、油路PA3により接続されており、油路PA3を流れる作動油により第1走行制御弁SV4の切換が行われる。例えば、操作部材の操作によって方向切換弁SV2の弁体が第1位置VP2aに切り替えられた場合、方向切換弁SV2と第1走行制御弁SV4との間における区間においてパイロット油が抜け、第1走行制御弁SV4の弁体が第1位置VP4aに切換えられる。その結果、第1斜板切換シリンダ32Lが縮み、第1油圧モータ31Lの速度は1速に変更される。また、操作部材の操作によって方向切換弁SV2の弁体が第2位置VP2bに切り替えられた場合、方向切換弁SV2を通じて第1走行制御弁SV4にパイロット油が供給され、第1走行制御弁SV4の弁体が第2位置VP4bに切換えられる。その結果、第1斜板切換シリンダ32Lが延び、第1油圧モータ31Lの速度は2速に変更される。
【0021】
第2油圧モータ装置30Rは、第2走行装置3Rに設けられた駆動輪31に動力を伝達する装置である。第2油圧モータ装置30Rは、第2油圧モータ31Rと、第2斜板切換シリンダ32Rと、第2走行制御弁(油圧切換弁)SV5とを含む。第2油圧モータ装置30Rは、第2走行装置3Rを駆動するための油圧モータであり、第1油圧モータ装置30Lと同様に動作する。つまり、第2油圧モータ31Rは、第1油圧モータ31Lと同様に動作する。第2斜板切換シリンダ32Rは、第1斜板切換シリンダ32Lと同様に動作する。第2走行制御弁SV5は、その弁体を第1位置VP5a及び第2位置VP5bに切り換えるように構成された二位置切換弁であり、第1走行制御弁SV4と同様に動作する。
【0022】
油圧回路1Aは、ドレイン油路DR1が接続されている。ドレイン油路DR1は、複数の切換弁(ブレーキ切換弁SV1、方向切換弁SV2)からパイロット油を作動油タンク70へ流す油路である。例えば、ドレイン油路DR1は、複数の切換弁(ブレーキ切換弁SV1、方向切換弁SV2)の排出ポートに接続されている。つまり、ブレーキ切換弁SV1が第1位置VP1aにある場合、ブレーキ切換弁SV1とブレーキ機構72との間における区間において油路PA2から作動油がドレイン油路DR1に排出される。方向切換弁SV2が、第1位置VP1aにある場合、油路PA3のパイロット油は、ドレイン油路DR1に排出される。
【0023】
油圧回路1Aは、第1チャージ油路PA4と、油圧駆動装置75とをさらに含む。第1チャージ油路PA4は、パイロット供給油路PA1から分岐され、油圧駆動装置75に接続される。油圧駆動装置75は、第1油圧モータ装置30L及び第2油圧モータ装置30Rを駆動する装置である。油圧駆動装置75は、第1油圧モータ装置30Lの駆動用の第1駆動回路76Lと、第2油圧モータ装置30Rの駆動用の第2駆動回路76Rとを有する。
【0024】
第1駆動回路76Lは、第1油圧ポンプ7Lと、駆動用油路PA5L,PA6Lと、第2チャージ油路PA7Lとを有する。駆動用油路PA5L,PA6Lは、第1油圧ポンプ7Lと第1油圧モータ31Lとを接続する油路である。駆動用油路PA5L,PA6Lによって形成される油圧回路を第1油圧回路CLと呼ぶ。第2チャージ油路PA7Lは、駆動用油路PA5L,PA6Lに接続され、パイロットポンプ71からの作動油を駆動用油路PA5L,PA6Lに補充する油路である。第1油圧モータ31Lは、駆動用油路PA5Lと接続する第1接続口31P1と、駆動用油路PA6Lと接続する第2接続口31P2とを有する。第1接続口31P1を介して第1走行装置3Lを前進方向に回転させる作動油が第1油圧モータ31Lに入力され、第1接続口31P1を介して第1走行装置3Lを後進方向に回転させる作動油が第1油圧モータ31Lから吐出される。第2接続口31P2を介して第1走行装置3Lを後進方向に回転させる作動油が第1油圧モータ31Lに入力され、第1走行装置3Lを前進方向に回転させる作動油が第1走行装置3Lから吐出される。
【0025】
同様に、第2駆動回路76Rは、第2油圧ポンプ7Rと、駆動用油路PA5R,PA6Rと、第3チャージ油路PA7Rとを有する。駆動用油路PA5R,PA6Rは、第2油圧ポンプ7Rと第2油圧モータ31Rとを接続する油路である。駆動用油路PA5R,PA6Rによって形成される油圧回路を第2油圧回路CRと呼ぶ。第3チャージ油路PA7Rは、駆動用油路PA5R,PA6Rに接続され、パイロットポンプ71からの作動油を駆動用油路PA5R,PA6Rに補充する油路である。第2油圧モータ31Rは、駆動用油路PA5Rと接続する第3接続口31P3と、駆動用油路PA6Rと接続する第4接続口31P4とを有する。第3接続口31P3を介して第2走行装置3Rを前進方向に回転させる作動油が第2油圧モータ31Rに入力され、第3接続口31P3を介して第2走行装置3Rを後進方向に回転させる作動油が第2油圧モータ31Rから吐出される。第4接続口31P4を介して第2走行装置3Rを後進方向に回転させる作動油が第2油圧モータ31Rに入力され、第2走行装置3Rを前進方向に回転させる作動油が第2走行装置3Rから吐出される。
【0026】
第1油圧ポンプ7L及び第2油圧ポンプ7Rは、エンジン6の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプである。第1油圧ポンプ7Lは、第1油圧回路CLを介して第1油圧モータ31Lに接続され、パイロット圧が印加される第1パイロットポートPLaと第2パイロットポートPLbとを有する。第1油圧ポンプ7Lは、第1パイロットポートPLaと第2パイロットポートPLbとに作用するパイロット圧によって斜板の角度が変更される。具体的には、第1油圧ポンプ7Lは、第1パイロットポートPLaにかかる油圧が第2パイロットポートPLbにかかる油圧よりも高いとき、第1走行装置3Lを前進駆動するように第1油圧モータ31Lに第1油圧回路CLを介して作動油を供給し、第2パイロットポートPLbにかかる油圧が第1パイロットポートPLaにかかる油圧よりも高いとき、第1走行装置3Lを後退駆動するように第1油圧モータ31Lに第1油圧回路CLを介して作動油を供給するように構成される。すなわち、第1油圧ポンプ7Lは、パイロット圧に応じて第1油圧モータ31Lに作動油を供給するように構成される。
【0027】
第2油圧ポンプ7Rは、第2油圧回路CRを介して第2油圧モータ31Rに接続され、パイロット圧が印加される第3パイロットポートPRaと第4パイロットポートPRbとを有する。第2油圧ポンプ7Rは、第3パイロットポートPRaと第4パイロットポートPRbとに作用するパイロット圧によって斜板の角度が変更される。具体的には、第2油圧ポンプ7Rは、第3パイロットポートPRaにかかる油圧が第4パイロットポートPRbにかかる油圧よりも高いとき、第2走行装置3Rを前進駆動するように第2油圧モータ31Rに第2油圧回路CRを介して作動油を供給し、第4パイロットポートPRbにかかる油圧が第3パイロットポートPRaにかかる油圧よりも高いとき、第2走行装置3Rを後退駆動するように第2油圧モータ31Rに第2油圧回路CRを介して作動油を供給するように構成される。すなわち、第2油圧ポンプ7Rは、パイロット圧に応じて第2油圧モータ31Rに作動油を供給するように構成される。第1油圧ポンプ7L及び第2油圧ポンプ7Rは、斜板の角度に応じて、出力(作動油の吐出量)や作動油の吐出方向を変えることができる。
【0028】
第1油圧ポンプ7L及び第2油圧ポンプ7Rの出力や作動油の吐出方向の変更は、作業車両1の進行方向を操作するための操作装置56により行われる。以降において、操作装置56のことを方向入力装置と呼んでもよい。具体的には、操作装置56が備える走行指示入力装置55の操作に応じて、第1油圧ポンプ7L及び第2油圧ポンプ7Rの出力や作動油の吐出方向が変更される。つまり、操作装置56は、第1走行装置3L及び第2走行装置3Rの少なくとも一方の走行装置を選択し、少なくとも一方の走行装置の前進あるいは後進を指示することによって、作業車両の進行方向を操作するように構成される装置である。以降の説明において、走行指示入力装置55は、例えば、操作レバーである。走行指示入力装置55を介してユーザによる進行方向の指示が入力される。
【0029】
図3に示すように、油圧回路1Aは、パイロット供給油路PA1から分岐され、操作装置56に接続されるパイロット供給油路PA8と、パイロット供給油路PA8上に設けられる一次圧制御弁CV1とを含む。以降の実施形態では、パイロット供給油路PA1とパイロット供給油路PA8とを総称して第1パイロット油路11と呼ぶ。第1パイロット油路11を介してパイロット油が送られる。一次圧制御弁CV1は、電磁比例弁であり開度を調整することにより、操作装置56に供給されるパイロット圧を調整するように構成される。一次圧制御弁CV1の開度は、コントローラ10によって制御される。一次圧制御弁CV1は、第1パイロット油路11に設けられ、第1パイロット油路11のパイロット油の圧力であるパイロット一次圧を制御するように構成される。一次圧制御弁CV1の詳細な動作については後述する。
【0030】
操作装置56(方向入力装置)は、前進用の操作弁OVAと、後進用の操作弁OVBと、右旋回用の操作弁OVCと、左旋回用の操作弁OVDと、走行指示入力装置55とを備える。また、操作装置56は、第1~4シャトル弁SVa,SVb,SVc,SVdを有する。操作弁OVA,OVB,OVC,OVDは、走行指示入力装置55(1本の操作レバー)によって操作される。操作弁OVA,OVB,OVC,OVDは、走行指示入力装置55の操作に応じてパイロット油の圧力を変化させ、且つ、変化後の作動油を第1油圧ポンプ7Lの第1パイロットポートPLa及び第2パイロットポートPLbと第2油圧ポンプ7Rの第3パイロットポートPRa及び第4パイロットポートPRbとに供給する。つまり、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDは、第1パイロット油路11に接続され、走行指示入力装置55の操作によって、パイロット圧を制御するように構成される。なお、本願に係る実施形態では、1本の操作レバーで操作弁OVA,OVB,OVC,OVDが操作されるが、操作レバーは複数本でもよい。
【0031】
操作弁OVA,OVB,OVC,OVDは入力ポート(一次側ポート)と排出ポートと出力ポート(二次側ポート)を有している。図3に示すように、入力ポートは、パイロット供給油路PA8に接続される。排出ポートは、作動油タンク70に至るドレイン油路DR2に接続される。走行指示入力装置55は、中立位置から、前後、前後に直交する幅方向、斜め方向に傾動可能である。走行指示入力装置55の傾動に応じて、操作装置56の操作弁OVA,OVB,OVC,OVDが操作される。それにより、走行指示入力装置55の中立位置からの操作量に応じたパイロット圧が操作弁OVA,OVB,OVC,OVDの二次側ポートから出力される。なお、一次圧制御弁CV1から出力される一次側ポートにかかるパイロット圧と、二次側ポートにかかるパイロット圧との関係は後述する。
【0032】
操作弁OVAの二次側ポートと操作弁OVCの二次側ポートとは第1シャトル弁SVaの入力ポートに接続され、第1シャトル弁SVaの出力ポートは第1二次パイロット油路PA11を介して第1油圧ポンプ7Lの第1パイロットポートPLaに接続される。操作弁OVAの二次側ポートと操作弁OVDの二次側ポートとは第2シャトル弁SVbの入力ポートに接続され、第2シャトル弁SVbの出力ポートは第3二次パイロット油路PA13を介して第2油圧ポンプ7Rの第3パイロットポートPRaに接続される。操作弁OVBの二次側ポートと操作弁OVDの二次側ポートとは第3シャトル弁SVcの入力ポートに接続され、第3シャトル弁SVcの出力ポートは第2二次パイロット油路PA12を介して第1油圧ポンプ7Lの第2パイロットポートPLbに接続される。操作弁OVBの二次側ポートと操作弁OVCの二次側ポートとは第4シャトル弁SVdの入力ポートに接続され、第4シャトル弁SVdの出力ポートは第4二次パイロット油路PA14を介して第2油圧ポンプ7Rの第4パイロットポートPRbに接続される。
【0033】
つまり、パイロット供給油路PA8、第1二次パイロット油路PA11、及び、第4二次パイロット油路PA14は、パイロットポンプ71と第1油圧ポンプ7Lとを接続する。パイロット供給油路PA8、第2二次パイロット油路PA12、及び、第3二次パイロット油路PA13は、パイロットポンプ71と第2油圧ポンプ7Rとを接続する。以降の実施形態では、第1二次パイロット油路PA11、第4二次パイロット油路PA14、第2二次パイロット油路PA12、及び、第3二次パイロット油路PA13を総称して、複数の第2パイロット油路12と呼ぶ。複数の第2パイロット油路12の各々は、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDのいずれかと、パイロットポートPLa、PLb、PRa、PRbのいずれかとを接続する。第2パイロット油路12を介してパイロット油が送られる。
【0034】
油圧回路1Aは、第5シャトル弁SVe、第6シャトル弁SVf、二次圧制御弁CV11、CV12と排出油路DR3、DR4とをさらに含む。第1二次パイロット油路PA11と第2二次パイロット油路PA12とは第5シャトル弁SVeの入力ポートに接続され、第5シャトル弁SVeの出力ポートは排出油路DR3を介して二次圧制御弁CV11の入力ポートに接続される。第1二次パイロット油路PA11の油圧と第2二次パイロット油路PA12の油圧とのうち高い方の油圧が第5シャトル弁SVeの入力ポートに印加される。
【0035】
第3二次パイロット油路PA13と第4二次パイロット油路PA14とは第6シャトル弁SVfの入力ポートに接続され、第6シャトル弁SVfの出力ポートは排出油路DR4を介して二次圧制御弁CV12の入力ポートに接続される。第3二次パイロット油路PA13の油圧と第4二次パイロット油路PA14の油圧とのうち高い方の油圧が第6シャトル弁SVfの入力ポートに印加される。
【0036】
二次圧制御弁CV11は、比例電磁式リリーフ弁であり、その入力ポートにかかる第1二次パイロット油路PA11の油圧と第2二次パイロット油路PA12の油圧のうちの高い方の油圧が、ソレノイドにかかる電流に対応する油圧よりも大きいときに開くように構成される。二次圧制御弁CV12が開かれると、第1二次パイロット油路PA11と第2二次パイロット油路PA12とのうちの油圧が高い方のパイロット油路のパイロット油が作動油タンク70に排出される。このように、ソレノイドにかかる電流を調整することにより、第1二次パイロット油路PA11と第2二次パイロット油路PA12とのパイロット油の圧力であるパイロット二次圧を制御するように構成される。
【0037】
二次圧制御弁CV12は、比例電磁式リリーフ弁であり、その入力ポートにかかる第3二次パイロット油路PA13の油圧と第4二次パイロット油路PA14の油圧のうちの高い方の油圧が、ソレノイドにかかる電流に対応する油圧よりも大きいときに開くように構成される。このように、ソレノイドにかかる電流を調整することにより、第3二次パイロット油路PA13と第4二次パイロット油路PA14とのパイロット油の圧力であるパイロット二次圧を制御するように構成される。以降の実施形態では、二次圧制御弁CV11、CV12を総称して二次圧制御弁CV2と呼ぶ。排出油路DR3、DR4は、第2パイロット油路から分岐し、二次圧制御弁CV2に接続される。二次圧制御弁CV2は、第2パイロット油路12に接続され、第2パイロット油路12のパイロット油の圧力であるパイロット二次圧を制御するように構成される。二次圧制御弁CV2の詳細な動作については後述する。
【0038】
油圧回路1Aは、絞りTH1~TH4をさらに含む。絞りTH1は、第1シャトル弁SVaと第5シャトル弁SVeとの間の第1二次パイロット油路PA11に設けられ、第1二次パイロット油路PA11のパイロット油の流量を低下させるように構成される。絞りTH2は、第2シャトル弁SVbと第5シャトル弁SVeとの間の第2二次パイロット油路PA12に設けられ、第2二次パイロット油路PA12のパイロット油の流量を低下させるように構成される。絞りTH3は、第3シャトル弁SVcと第5シャトル弁SVeとの間の第3二次パイロット油路PA13に設けられ、第3二次パイロット油路PA13のパイロット油の流量を低下させるように構成される。絞りTH4は、第4シャトル弁SVdと第5シャトル弁SVeとの間の第4二次パイロット油路PA14に設けられ、第4二次パイロット油路PA14のパイロット油の流量を低下させるように構成される。以降の実施形態では、絞りTH1~TH4を総称して絞りTHと呼ぶ。つまり、絞りTHは、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDと排出油路DRとの間の第2パイロット油路12に設けられる。なお、絞りTHは省略されてもよい。
【0039】
走行指示入力装置55が前側に傾動されると、前進用の操作弁OVAが操作されて該操作弁OVAからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、操作装置56と第1油圧ポンプ7Lの第1パイロットポートPLaとを接続する第1二次パイロット油路PA11を介して第1シャトル弁SVaから第1パイロットポートPLaに作用すると共に、操作装置56と第2油圧ポンプ7Rの第3パイロットポートPRaとを接続する第3二次パイロット油路PA13を介して第2シャトル弁SVbから第3パイロットポートPRaに作用する。これにより、第1油圧ポンプ7Lの出力軸及び第2油圧ポンプ7Rの出力軸が走行指示入力装置55の傾動量に対応した速度で正転(前進回転)して作業車両1が前方に直進する。
【0040】
また、走行指示入力装置55が後側に傾動されると、後進用の操作弁OVBが操作されて該操作弁OVBからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、操作装置56と第2パイロットポートPLbとを接続する第2二次パイロット油路PA12を介して第3シャトル弁SVcから第1油圧ポンプ7Lの第2パイロットポートPLbに作用すると共に、操作装置56と第2油圧ポンプ7Rの第4パイロットポートPRbとを接続する第4二次パイロット油路PA14を介して第4シャトル弁SVdから第4パイロットポートPRbに作用する。これにより、第1油圧ポンプ7Lの出力軸及び第2油圧ポンプ7Rの出力軸が走行指示入力装置55の傾動量に対応した速度で逆転(後進回転)して作業車両1が後方に直進する。
【0041】
また、走行指示入力装置55が右側に傾動されると、右旋回用の操作弁OVCが操作されて該操作弁OVCからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1シャトル弁SVaから第1二次パイロット油路PA11を介して第1油圧ポンプ7Lの第1パイロットポートPLaに作用すると共に、第4シャトル弁SVdから第4二次パイロット油路PA14を介して第2油圧ポンプ7Rの第4パイロットポートPRbにも作用する。これにより、走行指示入力装置55の右方向への操作位置に対応した曲がり具合で右へ曲進する。
【0042】
また、走行指示入力装置55が左側に傾動されると、左旋回用の操作弁OVDが操作されて該操作弁OVDからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第2シャトル弁SVbから第3二次パイロット油路PA13を介して第2油圧ポンプ7Rの第3パイロットポートPRaに作用すると共に、第3シャトル弁SVcから第2二次パイロット油路PA12を介して第1油圧ポンプ7Lの第2パイロットポートPLbにも作用する。これにより、走行指示入力装置55の左方向への操作位置に対応した曲がり具合で左へ曲進する。
【0043】
すなわち、走行指示入力装置55が左斜め前側に傾動操作されると、走行指示入力装置55の前後方向への操作位置に対応した速度で作業車両1が前進し、走行指示入力装置55の左方向への操作位置に対応した曲がり具合で左へ曲進する。走行指示入力装置55が右斜め前側に傾動操作されると、走行指示入力装置55の操作位置に対応した速度で作業車両1が前進しながら右旋回する。走行指示入力装置55が左斜め後側に傾動操作されると、走行指示入力装置55の操作位置に対応した速度で作業車両1が後進しながら左旋回する。走行指示入力装置55が右斜め後側に傾動操作されると、走行指示入力装置55の操作位置に対応した速度で作業車両1が後進しながら右旋回する。
【0044】
つぎに、一次圧制御弁CV1の詳細な動作について説明する。作業車両1は、エンジン6の目標回転速度を設定する設定部材16(図7参照)を含む。設定部材16は、上述する方向入力装置とは別の速度入力装置であるアクセルペダルもしくは揺動自在に支持されるアクセルレバーである。設定部材16にはセンサ17が設けられている。センサ17で検出された操作量は、コントローラ10に入力される。センサ17で検出された操作量に対応するエンジン回転速度が、エンジン6の目標回転速度である。言い換えると、設定部材16の操作量に基づいてエンジン6の目標回転速度が設定される。コントローラ10は、この決定されたエンジン6の目標回転速度になるように、例えば、燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射率が示された回転指令をインジェクタに出力して、エンジン6の回転速度を制御する。あるいは、コントローラ10は、この決定されたエンジン6の目標回転速度になるように、燃料噴射圧等が示された回転指令をサプライポンプやコモンレールに出力して、エンジン6の回転速度を制御する。
【0045】
コントローラ10には、実際のエンジン回転速度(エンジン6の実回転速度という)を検出するように構成される回転速度センサ6aが接続されていて、エンジン6の実回転速度が入力される。回転速度センサ6aは、例えば、エンジン6のクランクシャフトに接続される回転部材の回転速度を検出するように構成されたポテンショメータである。エンジン6に負荷がかかると、エンジン6の実回転速度は、エンジン6の目標回転速度から低下する。このエンジン29に負荷がかかったときにおける目標回転速度からの実回転速度の低下量(エンジンの目標回転速度とエンジンの実回転速度との差)を、エンジンのドロップ量という。
【0046】
一次圧制御弁CV1は、エンジン6の回転速度(エンジン回転速度E1)の低下量(ドロップ量)ΔE1に基づいて、複数の操作弁OVA、OVB、OVC、OVDの入力ポート(一次側ポート)に作用するパイロット一次圧を設定可能である。エンジン6の回転速度は、エンジン回転速度E1の回転速度センサ6aにより検出することができる。回転速度センサ6aで検出されたエンジン回転速度E1は、コントローラ10に入力される。図4は、エンジン回転速度と、パイロット一次圧と、設定線L1、L2の関係を示している。設定線L1は、低下量ΔE1が所定未満(アンチストール判定値未満)である場合のエンジン回転速度E1と、パイロット一次圧との関係を示している。設定線L2は、低下量ΔE1がアンチストール判定値以上である場合のエンジン回転速度E1と、パイロット一次圧との関係を示している。設定部材16の操作量に基づいて決定される第1回転速度RS1とエンジン6の実回転速度との差が所定のストール判定速度差(アンチストール判定値)よりも小さいとき、第1回転速度RS1に対応するパイロット一次圧は設定線L1に示される第1の対応関係に応じて遷移する。第1回転速度RS1とエンジン6の実回転速度との差が所定のストール判定速度差(アンチストール判定値)以上であるとき、第1回転速度RS1に対応するパイロット一次圧は設定線L2に示される第2の対応関係に応じて遷移する。
【0047】
コントローラ10は、低下量ΔE1がアンチストール判定値未満である場合、エンジン回転速度E1とパイロット一次圧との関係が、設定線L1で示された基準パイロット圧に一致するように、一次圧制御弁CV1の開度を調整する。また、コントローラ10は、低下量ΔE1がアンチストール判定値以上である場合、エンジン回転速度E1とパイロット一次圧との関係が、基準パイロット圧よりも低い設定線L2に一致するように、一次圧制御弁CV1の開度を調整する。設定線L2では、所定のエンジン回転速度E1に対するパイロット一次圧が、設定線L1のパイロット一次圧よりも低い。即ち、同一のエンジン回転速度E1に着目した場合、設定線L2の走行一次圧は、設定線L1の走行一次圧よりも低く設定される。したがって、設定線L2に基づく制御によって、操作弁OVA、OVB、OVC、OVDに入る作動油の圧力(パイロット圧)が低く抑えられる。その結果、第1油圧ポンプ7L、第2油圧ポンプ7Rの斜板角が調整され、エンジン6に作用する負荷が減少し、エンジン6のストールを防止することができる。なお、図4では、1本の設定線L2を示しているが、設定線L2は複数であってもよい。例えば、エンジン回転速度E1毎に設定線L2が設定されていてもよい。また、設定線L1及び設定線L2を示すデータ、或いは、関数等の制御パラメータ等は、コントローラ10が有していることが好ましい。
【0048】
つぎに、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDの二次側ポートから出力されるパイロット圧について説明する。以下、このパイロット圧をパイロット二次源圧(secondary pilot source pressure)と呼ぶ。図5は、操作レバーの操作位置と、二次パイロット二次源圧との関係を示す図である。図4を参照すると、レバー操作位置は原点がレバーストロークの始端位置である操作始端位置(中立位置、G0位置)であり、該原点から離れるにしたがってレバーストロークの終端位置である操作終端位置(G5位置)に近づく。走行指示入力装置55の操作領域は、操作対象が動作しない(図例では、G0位置からG1位置に至るまでの)中立領域RA1と、操作終端付近の(図例では、G3位置からG5位置までの)フル操作付近領域RA2と、これら中立領域RA1とフル操作付近領域RA2との間(図例では、G1位置からG3位置に至るまで)の中間領域RA3とに分けられる。さらに、中間領域RA3は、G1位置からG2位置に至るまでの微速度領域RA3Aと、G2位置からG3位置に至るまでの中間速度領域RA3Bとに分けられる。
【0049】
中立領域RA1では、走行指示入力装置55を操作してもパイロット二次源圧が供給されない。一方、フル操作付近領域RA2では、操作対象の速度調整をすることはなく、したがって、走行指示入力装置55は途中で止まることはなく操作終端位置(G5位置)まで操作される。中間領域RA3では、領域内の任意の位置で走行指示入力装置55を止めたり、位置を変更したりして、操作対象の速度がオペレータの所望の速度になるように調整される。例えば、各操作領域RA1、RA3A、RA3B、RA2のレバーストロークに対する比率は、以下の通りである。
中立領域RA1 :0%以上15%未満
微速度領域RA3A :15%以上45%未満
中間速度領域RA3B :45%以上75%未満
フル操作付近領域RA2:75%から100%
【0050】
図5に示す特性図にあっては、走行指示入力装置55をG0位置からG1位置に操作すると、パイロット二次源圧(Pa)が発生し、G1位置からG4位置まで走行指示入力装置55を操作すると、走行指示入力装置55の操作量に比例してパイロット二次源圧がPaからPbまで上昇する。また、G4位置においてパイロット一次圧がショートカットされて二次側に流れ、パイロット二次源圧がPbから一気に最高出力圧のPcに上昇する。そして、走行指示入力装置55をG4位置からG5位置まで操作する間、パイロット二次源圧は最高出力圧(Pc)で一定であり、パイロット一次圧と等しくなる。つまり、操作装置56は、左方向への移動を指示するための走行指示入力装置55の中立位置からの変位が第1変位値(G0からG4までの変位)以上であるときに、第1パイロットポートPLa及び第4パイロットポートPRbに、操作装置56に入力されるパイロット一次圧を出力する。操作装置56は、右方向への移動を指示するための走行指示入力装置55の中立位置からの変位が第1変位値(G0からG4までの変位)以上であるときに、第2パイロットポートPLb及び第3パイロットポートPRaに、操作装置56に入力されるパイロット一次圧を出力する。操作装置56は、前方向への移動を指示するための走行指示入力装置55の中立位置からの変位が第1変位値(G0からG4までの変位)以上であるときに、第1パイロットポートPLa及び第3パイロットポートPRaに、操作装置56に入力されるパイロット一次圧を出力する。操作装置56は、後方向への移動を指示するための走行指示入力装置55の中立位置からの変位が第1変位値(G0からG4までの変位)以上であるときに、第2パイロットポートPLb及び第4パイロットポートPRbに、操作装置56に入力されるパイロット一次圧を出力する。
【0051】
前後方向のパイロット二次源圧の特性値は左右方向のパイロット二次源圧の特性値と異なっていてもよい。G0~G5、Pa~Pcに対応する前後方向のパイロット二次源圧の特性値をG0’~G5’、Pa’~Pc’とすれば、操作装置56は、前方向への移動を指示するための走行指示入力装置55の中立位置からの変位が第2変位値(G0’からG4’までの変位)以上であるときに、第1パイロットポートPLa及び第3パイロットポートPRaに、操作装置56に入力されるパイロット一次圧を出力するとしてもよい。操作装置56は、後方向への移動を指示するための走行指示入力装置55の中立位置からの変位が第2変位値(G0’からG4’までの変位)以上であるときに、第2パイロットポートPLb及び第4パイロットポートPRbに、操作装置56に入力されるパイロット一次圧を出力するとしてもよい。また、Pa及びPb(Pa’及びPb’)は、パイロット一次圧の大きさに依存しない値であるが、パイロット一次圧がPaまたはPb(Pa’またはPb’)よりも下回る場合、パイロット二次源圧はパイロット一次圧の大きさで頭打ちとなる。
【0052】
つぎに、二次圧制御弁CV2の詳細な動作について説明する。図6は、図4と同様に、エンジン回転速度と、二次圧制御弁CV2によって制御されるパイロット二次圧と、後述する設定線L11、L12の関係を示している。コントローラ10は、一次圧制御弁CV1の第1目標値とパイロット二次圧の第2目標値に基づいて、前記一次圧制御弁と二次圧制御弁CV2とを制御するように構成される。具体的には、二次圧制御弁CV2は、一次圧制御弁CV1において図4の設定線L2に基づくような制御がされており、且つ、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDがパイロット一次圧と等しいパイロット二次源圧を出力しているときに、パイロット二次圧の第2目標値を一次圧制御弁CV1によって制御されるパイロット一次圧の第1目標値よりも高くなるようにコントローラ10によって制御される。
【0053】
アンチストール制御開始直後(エンジン6の回転速度の低下量ΔE1がアンチストール判定値以上となった直後)は、一次圧制御弁CV1によってパイロット一次圧を減少させたとしても、二次圧制御弁CV2がなければパイロットポートPLa、PLb、PRa、PRbにかかるパイロット圧がすぐには減圧されない。一方で、二次圧制御弁CV2を一次圧制御弁CV1と同じように動作させてしまうと、二次圧制御弁CV2から排出油路DRにパイロット油が流れる関係で生じる圧力損失のため、最終的にパイロット圧としたい第1目標値である図4の設定線L2に基づく圧力値よりも下回るようにパイロット二次圧が制御されてしまう。このため、図6の設定線L12に示すように、設定線L2に対し圧力損失を考慮したオフセットΔVだけ高くなるように、エンジン回転速度に応じてパイロット二次圧の第2目標値が決定される。このように制御することによって一次圧制御弁CV1によって設定された圧力に近い目標圧にスムーズにパイロット二次圧を低下することができる。
【0054】
図3に示された油圧回路1Aにおいては、アンチストール制御がされていない状態においても同様の圧力損失があるため、図4の設定線L1に基づくパイロット一次圧の制御がされている場合、図6の設定線L11に示すように、設定線L1に対し圧力損失を考慮したオフセットΔVだけ高くなるように、エンジン回転速度に応じてパイロット二次圧が制御される。このように制御することによってアンチストールされていない状態であっても、パイロット油の粘性が高くてパイロット二次圧が高くなったときに二次圧制御弁CV2を開いてパイロット油を強制的に流すことができるので、暖機をスムーズに進めることができるメリットがある。
【0055】
以上の操作弁OVA,OVB,OVC,OVDの特徴に基づき、走行指示入力装置55の操作に対応する作業車両1の動きをより詳細に説明する。走行指示入力装置55の前後方向の操作量が右方向の操作量よりも大きく、且つ、走行指示入力装置55の右方向への操作位置がG1位置からG3位置まで操作される場合、第1油圧ポンプ7Lの回転速度の大きさが第2油圧ポンプ7Rの回転速度の大きさよりも大きい状態で同じ方向に回転することにより、作業車両1が大回りに右へ曲進する。走行指示入力装置55の右方向への操作位置が、前後方向への操作位置と同じ位置となると、第2油圧ポンプ7Rの回転速度が0となり、第1油圧ポンプ7Lのみが回転することによって、作業車両1が右信地旋回(右ピボットターン)を行う。さらに、走行指示入力装置55が右方向への操作位置がG4位置からG5位置の間に操作されると、前後方向への操作位置よりも大きくなり、第1油圧ポンプ7Lの出力軸が正転し且つ第2油圧ポンプ7Rの出力軸が逆転して作業車両1が右側に旋回する。
【0056】
また、走行指示入力装置55の前後方向の操作量が左方向の操作量よりも大きく、且つ、走行指示入力装置55の左方向への操作位置がG1位置からG3位置まで操作される場合、第2油圧ポンプ7Rの回転速度の大きさが第1油圧ポンプ7Lの回転速度の大きさよりも大きい状態で同じ方向に回転することにより、作業車両1が大回りに左へ曲進する。走行指示入力装置55の左方向への操作位置が、前後方向への操作位置と同じ位置となると、第1油圧ポンプ7Lの回転速度が0となり、第2油圧ポンプ7Rのみが回転することによって、作業車両1が左信地旋回(左ピボットターン)を行う。さらに、走行指示入力装置55が左方向への操作位置がG4位置からG5位置の間に操作されると、前後方向への操作位置よりも大きくなり、第2油圧ポンプ7Rの出力軸が正転し且つ第1油圧ポンプ7Lの出力軸が逆転して作業車両1が左側に旋回する。本願に係る実施形態では、旋回とは、右方向への操作位置がG4位置からG5位置の間に操作される場合、もしくは、左方向への操作位置がG4位置からG5位置の間に操作される場合の作業車両1の動作をいう。
【0057】
一方で、走行指示入力装置55が前方向への操作位置がG4位置からG5位置の間に操作されると、左右方向への操作位置よりも大きくなり、第1油圧ポンプ7L且つ第2油圧ポンプ7Rの出力軸が正転して作業車両1が高速に前進する。走行指示入力装置55が後方向への操作位置がG4位置からG5位置の間に操作されると、左右方向への操作位置よりも大きくなり、第1油圧ポンプ7L且つ第2油圧ポンプ7Rの出力軸が反転して作業車両1が高速に後進する。なお、その他の走行指示入力装置55の前後方向の操作は、左右方向と同様である。
【0058】
作業車両1には、上述するコントローラ10に接続する各種スイッチやセンサが設けられている。図7は、作業車両1のブロック図である。図7を参照すると、作業車両1は、操作パネル15を含む。操作パネル15は、例えば、作業車両1の各種状態を表示するとともに本願実施形態に係る各種設定を行うことが可能なタッチパネルである。上述するように、コントローラ10は、回転速度センサ6aによって検出されるエンジン6の回転速度が目標回転速度から所定の閾値速度差(アンチストール判定値)以上下回ると、第2目標値を第1目標値よりも高くし、且つ、第1目標値と第2目標値とを低下させるように一次圧制御弁CV1と二次圧制御弁CV2とをともに制御するように構成される。具体的には、コントローラ10は、回転速度センサ6aによって検出されるエンジン6の回転速度が目標回転速度から所定の閾値速度差(アンチストール判定値)以上下回ると、一次圧制御弁CV1と二次圧制御弁CV2とを同時に制御するように構成される。
【0059】
コントローラ10は、以上のような処理を実現するために、図7に示すようなプロセッサ10aとメモリ10bを有している。メモリ10bは揮発性メモリと不揮発性メモリを含む。メモリ10bは、上述する制御を実現するための走行制御プログラム10c1を含んでいる。プロセッサ10aは、走行制御プログラム10c1を実行しながら上述の制御を実行する。以下に、このようなコントローラ10と操作装置56とによる制御方法について詳細に説明する。
【0060】
図8は、作業車両1のコントローラ10の動作を示すフローチャートである。ステップS1において、コントローラ10は、エンジン6の回転速度が目標回転速度になるようにエンジン6を制御する。ステップS2では、コントローラ10は、エンジン6に接続された油圧ポンプ7を駆動して、油圧ポンプ7に作動油を走行装置3に接続された油圧モータ装置30に吐出させる。ステップS3では、コントローラ10は、エンジン6に接続されたパイロットポンプ71を駆動して、パイロットポンプ71にパイロット油を第1パイロット油路11に吐出させる。ステップS4では、ユーザによる進行方向の指示に応じて第1パイロット油路11に接続された操作弁OVA,OVB,OVC,OVDは、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDに入力されるパイロット油の圧力であるパイロット一次圧をパイロット二次圧に変換して油圧ポンプ7のパイロットポートに接続される第2パイロット油路12にパイロット二次圧を出力する。
【0061】
ステップS5では、コントローラ10は、第1パイロット油路11に設けられた一次圧制御弁CV1を、パイロット一次圧が第1目標値となるように制御する。ステップS6では、コントローラ10は、第2パイロット油路12に接続された二次圧制御弁CV2を、パイロット二次圧が第2目標値となるように制御する。ステップS7では、回転速度センサ6aは、エンジン6の回転速度を検出し、コントローラ10は、検出したエンジン6の回転速度を受信する。ステップS8では、コントローラ10は、回転速度センサ6aによって検出されたエンジン6の回転速度が目標回転速度から所定の閾値速度差(アンチストール判定値)以上下回った否か判定する。
【0062】
所定の閾値速度差(アンチストール判定値)以上下回ったとき(ステップS8でYES)、コントローラ10は、第2目標値を第1目標値よりも高くし、且つ、第1目標値と第2目標値とを低下させるように一次圧制御弁CV1と二次圧制御弁CV2とをともに制御する。より具体的には、コントローラ10は、回転速度センサ6aによって検出されるエンジン6の回転速度が目標回転速度から所定の閾値速度差(アンチストール判定値)以上下回ると(ステップS8でYES)、一次圧制御弁CV1と二次圧制御弁CV2とを同時に制御する。
<実施形態の作用及び効果>
【0063】
実施形態に係る作業車両1の制御方法もしくは作業車両1のコントローラ10による処理は、回転速度センサ6aによって検出されるエンジン6の回転速度が目標回転速度から所定の閾値速度差(アンチストール判定値)以上下回ると、第2目標値を第1目標値よりも高くし、且つ、第1目標値と第2目標値とを低下させるように一次圧制御弁CV1と二次圧制御弁CV2とをともに制御するように構成される。したがって、排出油路DRの圧力損失を考慮して、目標となるパイロット一次圧に合わせてパイロット圧を制御することによって、パイロット油の無駄を少なくしつつ、応答性が向上されたアンチストールの制御を行う作業車両1を提供することができる。
<変形例>
【0064】
二次圧制御弁CV2の構成は、図3に示された構成に限られない。図9は、変形例に係る二次圧制御弁CV2を示す油圧回路図である。図9の例では、排出油路DR3~DR6にチェック弁CK1~CK4が設けられる。このチェック弁CK1~CK4を総称してチェック弁CKと呼ぶ。チェック弁CKは、絞りTHのある側の圧力が二次圧制御弁CV2のある側の圧力よりも大きくならないと、排出油路DRを遮断する。この変形例では、二次圧制御弁CV2は、比例弁CV21、CV22とリリーフ弁CV23、CV24とによって構成される。
【0065】
リリーフ弁CV23、CV24は、パイロット油の圧力に基づいて開放されるための設定圧が可変するバランス型のリリーフ弁であって、パイロット油を受圧する制御ポート23a、24aを有している。リリーフ弁CV23、CV24は、入力ポートに係る圧力が制御ポート23a、24aにかかる圧力よりも大きいときに開くように構成される。このとき、パイロット油が作動油タンク70に排出される。比例弁CV21、CV22には、制御ポート23a、24aに接続された作動油路21、22が接続されていて、パイロットポンプ71からのパイロット油が供給される。比例弁CV21、CV22は、ソレノイドを励磁することによって開度が変更可能な電磁比例弁であって、コントローラ10により制御される。
【0066】
排出油路DR3と排出油路DR4は、第1油圧ポンプ7Lがそれぞれ正転、逆転するときにパイロット圧が高くなるため、いずれか一方の片側が高くなり、反対側は低くなる。排出油路DR5と排出油路DR6は、第2油圧ポンプ7Rがそれぞれ正転、逆転するときにパイロット圧が高くなるため、いずれか一方の片側が高くなり、反対側は低くなる。このため、チェック弁CK1とCK2とは、いずれか一方しか開くことがなく、チェック弁CK1とCK2とは、いずれか一方しか開くことがない。このため、比例弁CV21、CV22を、二次圧制御弁CV11、CV12と同じ制御とすることによって、上述の制御を実行可能である。
【0067】
なお、図3の二次圧制御弁CV11、CV12を、図9の比例弁CV21、CV22とリリーフ弁CV23、CV24とに置き換えてもよい。図9の比例弁CV21、CV22とリリーフ弁CV23、CV24とを図3の二次圧制御弁CV11、CV12に置き換えてもよい。
【0068】
本願においては、「備える」およびその派生語は、構成要素の存在を説明する非制限用語であり、記載されていない他の構成要素の存在を排除しない。これは、「有する」、「含む」およびそれらの派生語にも適用される。
【0069】
「~部材」、「~部」、「~要素」、「~体」、および「~構造」という文言は、単一の部分や複数の部分といった複数の意味を有し得る。
【0070】
「第1」や「第2」などの序数は、単に構成を識別するための用語であって、他の意味(例えば特定の順序など)は有していない。例えば、「第1要素」があるからといって「第2要素」が存在することを暗に意味するわけではなく、また「第2要素」があるからといって「第1要素」が存在することを暗に意味するわけではない。
【0071】
程度を表す「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言は、実施形態に特段の説明がない限りにおいて、最終結果が大きく変わらないような合理的なずれ量を意味し得る。本願に記載される全ての数値は、「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言を含むように解釈され得る。
【0072】
本願において「A及びBの少なくとも一方」という文言は、Aだけ、Bだけ、及びAとBの両方を含むように解釈されるべきである。
【0073】
上記の開示内容から考えて、本発明の種々の変更や修正が可能であることは明らかである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本願の具体的な開示内容とは別の方法で本発明が実施されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9