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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024932
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/249 20210101AFI20240216BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20240216BHJP
   H01M 50/242 20210101ALI20240216BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240216BHJP
【FI】
H01M50/249
H01M50/244 Z
H01M50/242
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127931
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成毛 俊昭
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235BB07
3D235CC15
3D235DD12
3D235DD13
3D235DD35
3D235EE63
3D235FF12
3D235HH26
5H040AA01
5H040AA37
5H040AS07
5H040NN00
(57)【要約】
【課題】EA空間の内側にあるバッテリを保護しつつ、航続距離を拡大する。
【解決手段】車両は、モータと、前記モータに電力を供給するための第1電池を収容する第1収容部材と、前記第1収容部材の周囲の少なくとも一部を覆うように設けられ、前記モータに電力を供給するための第2電池を収容する第2収容部材と、を有し、前記第1収容部材の強度は、前記第2収容部材の強度より高い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータに電力を供給するための第1電池を収容する第1収容部材と、
前記第1収容部材の周囲の少なくとも一部を覆うように設けられ、前記モータに電力を供給するための第2電池を収容する第2収容部材と、
を有し、
前記第1収容部材の強度は、前記第2収容部材の強度より高い、
車両。
【請求項2】
前記第1収容部材は、車体フレームを含み、
前記第1電池は、前記車体フレームの内側に搭載され、
前記第2電池は、前記車体フレームの外側に搭載される、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第2収容部材は、複数の前記第2電池を収容し、前記複数の第2電池の間に第1エネルギー吸収部材を有する、
請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記第1収容部材と前記第2収容部材との間に第2エネルギー吸収部材を有する、
請求項1に記載の車両。
【請求項5】
前記第2収容部材は、衝突荷重が加えられた際に、衝突荷重方向に対して傾くように回動する、
請求項1に記載の車両。
【請求項6】
前記第2電池は、全固体電池である、
請求項1~5のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
前記第1電池は、液系電池である、
請求項6に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両にモータが搭載され、モータに電力を供給するためのバッテリが車両に搭載される場合がある。例えば、特許文献1には、車両の下部にバッテリパックを搭載することについて開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-96936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、車両に搭載されるバッテリは、Liイオン電池等の液系電池であることが多い。ここで、Liイオン電池は、例えば車両事故等で衝突荷重あるいは衝撃が加わった際に、変形あるいは損傷し、内部短絡が起きることで、熱暴走を起こし、発火あるいは爆発し、車両火災に繋がる原因となり得る。
【0005】
そのため、Liイオン電池等のバッテリが搭載された車両には、車両事故が起きてしまった際、バッテリに伝わる衝突荷重や衝撃を低減するため、バッテリの周囲にクラッシャブルゾーンやエネルギー吸収(EA)空間を設ける場合がある。以下では、クラッシャブルゾーンやエネルギー吸収空間を、まとめてEA空間と呼ぶ。しかし、バッテリの周囲にEA空間を設けた場合、車両に搭載されるバッテリの搭載量が制限されてしまうため、車両の航続距離が縮小してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、EA空間の内側にあるバッテリを保護しつつ、航続距離を拡大することが可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両は、
モータと、
前記モータに電力を供給するための第1電池を収容する第1収容部材と、
前記第1収容部材の周囲の少なくとも一部を覆うように設けられ、前記モータに電力を供給するための第2電池を収容する第2収容部材と、
を有し、
前記第1収容部材の強度は、前記第2収容部材の強度より高い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、EA空間の内側にあるバッテリを保護しつつ、航続距離を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る車両の構成を示す概略構成図である。
図2図2は、第1電池ユニットおよび第2電池ユニットの拡大斜視図である。
図3図3Aは、車両の衝突前の第1電池ユニットおよび第2電池ユニットの水平断面図である。図3Bは、車両の衝突後の第1電池ユニットおよび第2電池ユニットの水平断面図である。
図4図4Aは、車両の衝突前の第1電池ユニットおよび第2電池ユニットの垂直断面図である。図4Bは、車両の衝突後の第1電池ユニットおよび第2電池ユニットの垂直断面図である。
図5図5は、第2実施形態に係る車両の構成を示す概略構成図である。
図6図6Aは、第2実施形態に係る衝突前の第1電池ユニットおよび第2電池ユニットの垂直断面図である。図6Bは、第2実施形態に係る衝突後の第1電池ユニットおよび第2電池ユニットの垂直断面図である。
図7図7Aは、第3実施形態に係る衝突前の第1電池ユニットおよび第2電池ユニットの垂直断面図である。図7Bは、第3実施形態に係る衝突後の第1電池ユニットおよび第2電池ユニットの垂直断面図である。
図8図8は、第4実施形態に係る車両の構成を示す概略構成図である。
図9図9は、第1電池ユニット、第2電池ユニットの水平断面図である。
図10図10Aは、第4実施形態に係る衝突前の第1電池ユニット、第2電池ユニットの垂直断面図である。図10Bは、第4実施形態に係る衝突後の第1電池ユニット、第2電池ユニットの垂直断面図である。
図11図11Aは、第5実施形態に係る衝突前の第1電池ユニット、第2電池ユニットの垂直断面図である。図11Bは、第5実施形態に係る衝突後の第1電池ユニット、第2電池ユニットの垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る車両100の構成を示す概略構成図である。車両100は、本実施形態では、モータを駆動源として備えた電気自動車である。ただし、これに限定されず、車両100は、エンジンとモータを駆動源として備えたハイブリッド車であってもよい。
【0012】
図1に示すように、車両100は、フロントモータ110と、リアモータ120と、第1電池ユニット130と、第2電池ユニット140と、前輪FWと、後輪RWとを含む。
【0013】
フロントモータ110は、車両100の前輪FWの間に設けられ、車両100の進行方向前側(以下、単に前側という)に配置される。リアモータ120は、車両100の後輪RWの間に設けられ、車両100の進行方向後側(以下、単に後側という)に配置される。
【0014】
フロントモータ110およびリアモータ120は、不図示のインバータを介して第1電池ユニット130および第2電池ユニット140と接続する。フロントモータ110およびリアモータ120は、第1電池ユニット130および第2電池ユニット140から供給される電力を駆動力に変換する。
【0015】
フロントモータ110の駆動力は、不図示の動力伝達機構を介して前輪FWに伝達され、リアモータ120の駆動力は、不図示の動力伝達機構を介して後輪RWに伝達される。この駆動力により、車両100を走行させることができる。
【0016】
図2は、第1電池ユニット130および第2電池ユニット140の拡大斜視図である。第1電池ユニット130および第2電池ユニット140は、例えば、車両100の車体フロアーの床下に設けられる。第1電池ユニット130は、車体内側に設けられ、第2電池ユニット140は、第1電池ユニット130よりも車体外側に設けられる。第2電池ユニット140は、第1電池ユニット130の周囲を覆うように設けられる。
【0017】
第1電池ユニット130は、第1ケース(第1収容部材)132と、第1電池134を有する。第1ケース132は、複数の第1電池134を収容する。ただし、これに限定されず、第1ケース132は、1つの第1電池134を収容してもよい。第1電池134は、フロントモータ110およびリアモータ120に電力を供給する。第1電池134は、例えば、Liイオン電池などの液系電池である。ただし、これに限定されず、第1電池134は、例えば、全固体電池などの固体電池であってもよい。
【0018】
第2電池ユニット140は、第2ケース(第2収容部材)142と、第2電池144を有する。第2ケース142は、第1電池ユニット130に対し、車両100の前側に位置する前部142a、右側面側に位置する右側面部142b、左側面側に位置する左側面部142c、後側に位置する後部142d(図1参照)を含む。第1ケース132は、車体内側に設けられ、第2ケース142は、第1ケース132よりも車体外側に設けられる。第2ケース142は、第1ケース132の周囲を覆うように設けられる。
【0019】
第1電池ユニット130の前側、右側面側、左側面側、後側は、第2ケース142の前部142a、右側面部142b、左側面部142c、後部142dにより囲繞される。第1電池ユニット130の第1ケース132は、第2ケース142の前部142aよりも車両100の後側、後部142dよりも車両100の前側であって、右側面部142bおよび左側面部142cの間に位置する。
【0020】
第1実施形態では、第2ケース142の前部142a、右側面部142b、左側面部142cは、後部142dと別体で構成されているが、前部142a、右側面部142b、左側面部142c、後部142dは、一体で構成されてもよい。また、第2ケース142の前部142a、右側面部142b、左側面部142c、後部142dのそれぞれが、別体で構成されてもよい。
【0021】
また、第2ケース142は、前部142a、右側面部142b、左側面部142c、後部142dのうち少なくとも一部により構成されてもよい。例えば、第2ケース142は、前部142aのみで構成されてもよい。また、第2ケース142は、右側面部142bのみ、あるいは、左側面部142cのみで構成されてもよいし、右側面部142bおよび左側面部142cの双方のみで構成されてもよい。また、第2ケース142は、後部142dのみで構成されてもよい。このように、本実施形態の第2ケース142は、第1ケース132の周囲の少なくとも一部を覆うように設けられる。
【0022】
第2ケース142は、複数の第2電池144を収容する。ただし、これに限定されず、第2ケース142は、1つの第2電池144を収容してもよい。第2電池144は、フロントモータ110およびリアモータ120に電力を供給する。ここでは、第1電池134および第2電池144は、電気的に並列に接続され、それぞれに独立に断絶可能なリレーが設けられる。
【0023】
第2電池144は、全固体電池などの固体電池である。本実施形態では、第2電池144は、全固体電池で構成される。全固体電池は、液系電池に使用される可燃性の電解液の代わりに難燃性の固体電解質が使用され、車両事故が起きた際に液系電池よりも発火し難い。そのため、全固体電池は、液系電池に比べ、車両事故が起きた際の衝撃や衝突荷重による変形および損傷に強く、安全性が高い。
【0024】
そこで、本実施形態では、車両事故の際に液系電池を含む第1電池ユニット130に伝わる衝突荷重および衝撃を低減するため、第1電池ユニット130の周囲に設けられるEA空間に全固体電池を含む第2電池ユニット140を配置する。
【0025】
第2電池ユニット140は、車両事故が起きていない間、第1電池ユニット130と協働して、フロントモータ110およびリアモータ120に電力を供給することができる。そのため、第1電池ユニット130のみが車両100に搭載される場合に比べ、車両100の電池搭載量を増大させることができ、車両100の航続距離を拡大することができる。また、第2電池ユニット140は、車両事故が起きた際、エネルギー吸収部材として活用され、第1電池ユニット130を衝撃荷重および衝撃から保護することができる。ここで、車両衝突により第2電池144が損傷した場合は、不図示のリレーにより第2電池144を切り離して第1電池134のみで車両100の走行に必要な電力をフロントモータ110およびリアモータ120に供給することができる。そのため、第2電池144が損傷した場合でも、車両100は、第1電池134により走行を継続させることができる。
【0026】
図3Aは、車両100の衝突前の第1電池ユニット130および第2電池ユニット140の水平断面図である。図3Bは、車両100の衝突後の第1電池ユニット130および第2電池ユニット140の水平断面図である。
【0027】
図3Bでは、車両100が障害物Obに衝突している様子を示している。図中下側から上側に向かって、車両100では左側から右側に向かって、車両100の左側面に障害物Obが衝突している。図3Bに示すように、車両事故が起きた際、第1電池ユニット130よりも先に第2電池ユニット140が障害物Obと衝突する。したがって、車両事故が起きた際には、まず、障害物Obから第2電池ユニット140に衝突荷重および衝撃が加わることとなる。第2電池ユニット140に衝突荷重および衝撃が加わると、第2ケース142が変形し、また、第2ケース142と第2電池144との隙間が潰れることで、衝撃エネルギーの一部が吸収され、低減される。また、第2ケース142が変形し、また、第2ケース142と第2電池144との隙間が潰れることで、障害物Obの進入加速度が低減され、衝撃荷重が緩和される。
【0028】
また、図3Aおよび図3Bに示すように、第2ケース142の内部には、複数のエネルギー吸収部材(第1エネルギー吸収部材)146が設けられる。各エネルギー吸収部材146は、複数の第2電池144の間に配置される。エネルギー吸収部材146は、第2ケース142の梁として使用され、第2ケース142の強度を高めている。障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃は、第2ケース142内のエネルギー吸収部材146に伝達する。エネルギー吸収部材146に衝突荷重および衝撃が加わると、エネルギー吸収部材146が変形し、衝撃エネルギーの一部が吸収され、低減される。また、エネルギー吸収部材146が変形し潰れることで、障害物Obの進入加速度が低減され、衝撃荷重が緩和される。
【0029】
本実施形態において、第2ケース142内には、複数に分割された第2電池144が設けられ、複数の第2電池144の間には、エネルギー吸収部材146が設けられる。これにより、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃は、第2電池144よりも先に第2ケース142と第2電池144との隙間およびエネルギー吸収部材146が潰れることで吸収および低減される。障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃がすべて、第2ケース142と第2電池144との隙間およびエネルギー吸収部材146が潰れることで吸収されきれれば、第2電池144を保護することができる。
【0030】
一方、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃のすべてが、第2ケース142と第2電池144との隙間およびエネルギー吸収部材146が潰れることで吸収されきれない場合、衝突荷重および衝撃の一部が第2電池144に伝達される。第2電池144に衝突荷重および衝撃が加わると、第2電池144が変形し潰れることで、衝突荷重および衝撃エネルギーの一部が吸収し、低減される。
【0031】
さらに、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃のすべてが、第2電池144が潰れることで吸収されきれない場合、第2電池ユニット140が第1電池ユニット130に近接する方向に移動する。その場合、第2電池ユニット140が第1電池ユニット130と接触し、第2電池ユニット140から第1電池ユニット130に衝突荷重および衝撃の一部が加わることとなる。このときの第2電池ユニット140から第1電池ユニット130に加わる衝突荷重および衝撃の伝達経路について図4Aおよび図4Bを用いて説明する。
【0032】
図4Aは、車両100の衝突前の第1電池ユニット130および第2電池ユニット140の垂直断面図である。図4Bは、車両100の衝突後の第1電池ユニット130および第2電池ユニット140の垂直断面図である。なお、図3Aおよび図3Bと、図4Aおよび図4Bは、それぞれ同じ第1実施形態の第1電池ユニット130および第2電池ユニット140の水平断面図と垂直断面図である。図3Aおよび図3Bは、第2電池ユニット140の変形のみで障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃を吸収できる場合の例を示している。一方、図4Aおよび図4Bは、第2電池ユニット140の変形のみで障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃を吸収できない場合の例を示している。
【0033】
図4Aおよび図4Bに示すように、第1電池ユニット130および第2電池ユニット140は、車体フロアーBFの床下に第1車体フレーム150Aおよび第2車体フレーム150Bを介して吊り下げられている。第1車体フレーム150Aは、車体内側に設けられ、第2車体フレーム150Bは、車体外側に設けられる。ここで、第1車体フレーム150Aは、例えば、車体の強度を保つためのフレーム、すなわち、車体骨格であり、第2車体フレーム150Bは、例えば、サイドシル等のEA部として機能する部材である。第1車体フレーム150Aは、車体フロアーBFと第1ケース132とを連結部材を介して連結する。また、第2車体フレーム150Bは、車体フロアーBFと第2ケース142とを連結部材を介して連結する。
【0034】
第1ケース132の外側面には、エネルギー吸収部材(第2エネルギー吸収部材)136が設けられる。ただし、これに限定されず、エネルギー吸収部材136は、第2ケース142の外側面に設けられてもよい。エネルギー吸収部材136は、車体フレーム150の直下において、第1ケース132と第2ケース142の間に配置される。
【0035】
図4Bでは、図中右側から左側に向かって、車両100では左側から右側に向かって、車両100の左側面に障害物Obが衝突している。図3Aおよび図3Bで詳述したように、まず、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃の一部は、第2ケース142と第2電池144との隙間、エネルギー吸収部材146、第2電池144が変形し潰れることで吸収し、低減される。つぎに、図4Bに示すように、第2電池ユニット140が第1電池ユニット130に近接する方向に移動すると、第2電池ユニット140とエネルギー吸収部材136が衝突し、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃は、エネルギー吸収部材136に伝達する。エネルギー吸収部材136に衝突荷重および衝撃が加わると、エネルギー吸収部材136が変形し、衝撃エネルギーの一部が吸収され、低減される。また、エネルギー吸収部材136が変形し潰れることで、障害物Obの進入加速度が低減され、衝撃荷重が緩和される。
【0036】
また、第2電池ユニット140が第1電池ユニット130に近接する方向に移動すると、エネルギー吸収部材136を介して第2電池ユニット140が第1電池ユニット130と衝突する。エネルギー吸収部材136が潰れることで吸収しきれない衝突荷重および衝撃は、第1電池ユニット130の第1ケース132を介して第1車体フレーム150Aに伝達される。ここで、本実施形態では、第1ケース132の強度は、第2ケース142の強度より高い。そのため、エネルギー吸収部材136を介して第2ケース142から第1ケース132に衝突荷重が加わった際に、第2ケース142に対し第1ケース132が変形し難く、第1電池134を損傷から保護することができる。
【0037】
エネルギー吸収部材136を介して第1ケース132に伝達される衝突荷重および衝撃は、連結部材を介して第1車体フレーム150Aに伝達される。第1車体フレーム150Aに伝達された衝突荷重および衝撃は、例えば、車体のロール挙動、前輪FW、後輪RWおよびサスペンションの変形、車体の横スリップなど車体全体の挙動により低減される。
【0038】
このように、第1実施形態では、車両事故の際に液系電池を含む第1電池ユニット130に伝わる衝突荷重を低減するため、第1電池ユニット130の周囲に設けられるEA空間に全固体電池を含む第2電池ユニット140を配置する。第2電池ユニット140は、第1電池ユニット130の周囲の少なくとも一部を覆うように、第1電池ユニット130の外周に設けられる。具体的に、第1ケース132は、車体内側に設けられ、第2ケース142は、第1ケース132よりも車体外側に設けられる。そして、第2ケース142は、第1ケース132の周囲の少なくとも一部を覆うように、第1ケース132の外周に設けられる。
【0039】
EA空間に第2電池ユニット140が設けられることで、車両100の電池搭載量を増大させることができ、車両100の航続距離を拡大することができる。また、万が一、衝突等で第2電池ユニット140が損傷した場合でも、損傷した第2電池ユニット140のみを交換すればよく、保護された第1電池ユニット130の交換が不要であるため、修理費用を低く抑えることができる。
【0040】
第1実施形態の特徴は、第1ケース132の強度を、第2ケース142の強度より高く設定しているところである。これにより、第2ケース142から第1ケース132に衝突荷重が加わった際でも、第2ケース142に対し第1ケース132が変形し難く、第1電池134を損傷から保護することができる。
【0041】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る車両200の構成を示す概略構成図である。図6Aは、第2実施形態に係る衝突前の第1電池ユニット230および第2電池ユニット240の垂直断面図である。図6Bは、第2実施形態に係る衝突後の第1電池ユニット230および第2電池ユニット240の垂直断面図である。第1実施形態の車両100と実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。第2実施形態に係る車両200は、第1実施形態に係る第1電池ユニット130と異なる第1電池ユニット230、および、第1実施形態に係る第2電池ユニット140と異なる第2電池ユニット240を有する。
【0042】
図5図6A図6Bに示すように、第1電池ユニット230は、第1フレーム(第1収容部材)232と、第1ロアーカバー236と、第1電池134とを有する。第2電池ユニット240は、第2フレーム(第2収容部材)242と、第2ロアーカバー246と、第2電池144とを有する。
【0043】
第1電池ユニット230および第2電池ユニット240は、例えば、車両200の車体フロアーBFの床下に取り付けられる。第1電池ユニット230は、車体内側に設けられ、第2電池ユニット240は、第1電池ユニット230よりも車体外側に設けられる。第2電池ユニット240は、第1電池ユニット230の周囲の少なくとも一部を覆うように設けられる。より具体的に、第1フレーム232は、車体内側に設けられ、第2フレーム242は、第1フレーム232よりも車体外側に設けられる。そして、第2フレーム242は、第1フレーム232の周囲の少なくとも一部を覆うように、第1フレーム232の外周に設けられる。
【0044】
第2実施形態の第1電池ユニット230は、第1実施形態の第1電池ユニット130の第1ケース132の代わりに、第1フレーム232、第1ロアーカバー236を有する。また、第2実施形態の第2電池ユニット240は、第1実施形態の第2ケース142の代わりに、第2フレーム242、第2ロアーカバー246を有する。
【0045】
第1フレーム232は、車両200の車体骨格である車体フレームの一部としての機能を持たせることができる。第1フレーム232は、締結部材250により車体フロアーBFに接続され、第2実施形態の第1電池ユニット230は、車体フロアーBFに吊り下げされている。また、第2フレーム242は、例えば、サイドシル等のEA部としての機能を持たせることができる。第2フレーム242は、締結部材250により車体フロアーBFに接続され、第2実施形態の第2電池ユニット240は、車体フロアーBFに吊り下げされている。
【0046】
第1フレーム232、車体フロアーBF、第1ロアーカバー236で囲まれた収容空間に複数の第1電池134が収容される。また、第1フレーム232、第2フレーム242、車体フロアーBF、第2ロアーカバー246で囲まれた収容空間に複数の第2電池144が収容される。
【0047】
図6Bでは、図中右側から左側に向かって、車両200では左側から右側に向かって、車両200の左側面に障害物Obが衝突している。図6Bに示すように、車両事故が起きた際、第1電池ユニット230よりも先に第2電池ユニット240が障害物Obと衝突する。したがって、車両事故が起きた際には、まず、障害物Obから第2電池ユニット240に衝突荷重および衝撃が加わることとなる。第2電池ユニット240に衝突荷重および衝撃が加わると、第2フレーム242が変形し、また、第2フレーム242と第2電池144との隙間が潰れることで、衝撃エネルギーの一部が吸収され、低減される。また、第2フレーム242が変形し、また、第2フレーム242と第2電池144との隙間が潰れることで、障害物Obの進入加速度が低減され、衝撃荷重が緩和される。
【0048】
障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃のすべてが、第2フレーム242と第2電池144との隙間が潰れることで吸収されきれない場合、衝突荷重および衝撃の一部が第2電池144に伝達される。第2電池144に衝突荷重および衝撃が加わると、第2電池144が変形し潰れることで、衝突荷重および衝撃エネルギーの一部が吸収し、低減される。
【0049】
さらに、衝突荷重および衝撃のすべてが、第2電池144が潰れることで吸収しきれない場合、第1電池ユニット230の車体フレームとしての第1フレーム232に衝突荷重および衝撃が伝達される。ここで、本実施形態では、第1フレーム232の強度は、第2電池ユニット240を構成する各部材の強度より高い。そのため、第2電池ユニット240から第1フレーム232に衝突荷重が加わった際に、第2電池ユニット240に対し第1フレーム232が変形し難く、第1電池134を損傷から保護することができる。
【0050】
第2電池ユニット240から車体フレームとして機能する第1フレーム232に伝達される衝突荷重および衝撃は、例えば、車体のロール挙動、前輪FW、後輪RWおよびサスペンションの変形、車体の横スリップなど車体全体の挙動により低減される。
【0051】
第2実施形態においても、車両事故の際に液系電池を含む第1電池ユニット230に伝わる衝突荷重および衝撃を低減するため、第1電池ユニット230の周囲に設けられるEA空間に全固体電池を含む第2電池ユニット240を配置する。第2電池ユニット240は、第1電池ユニット230を囲繞するように、第1電池ユニット230の外周に設けられる。
【0052】
EA空間に第2電池ユニット240が設けられることで、車両200の電池搭載量を増大させることができ、車両200の航続距離を拡大することができる。また、万が一、衝突等で第2電池ユニット240が損傷した場合でも、損傷した第2電池ユニット240のみを交換すればよく、保護された第1電池ユニット230の交換が不要であるため、修理費用を低く抑えることができる。
【0053】
第2実施形態の特徴は、第1フレーム232に車両200の車体フレームの一部としての機能を持たせ、車体フレームとして機能する強度を持たせるところである。これにより、第2電池ユニット240から第1フレーム232に衝突荷重が加わった際でも、第2電池ユニット240に対し第1フレーム232が変形し難く、第1電池134を損傷から保護することができる。
【0054】
なお、第2実施形態では、第1電池134と第2電池144の間の空間を隔てるフレームが1つ、すなわち、第1フレーム232のみである例について説明した。しかし、これに限定されず、第1電池134と第2電池144の間の空間を隔てるフレームは、複数あってもよい。以下、第1電池134と第2電池144の間の空間を隔てるフレームが複数ある例を第2実施形態の変形例としての第3実施形態として、図7Aおよび図7Bを用いて説明する。
【0055】
(第3実施形態)
図7Aは、第3実施形態に係る衝突前の第1電池ユニット330および第2電池ユニット340の垂直断面図である。図7Bは、第3実施形態に係る衝突後の第1電池ユニット330および第2電池ユニット340の垂直断面図である。第3実施形態は、第2実施形態の変形例であり、第1電池ユニット330および第2電池ユニット340以外の構成は、第2実施形態と同じである。第2実施形態の車両200と実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
第3実施形態の第1電池ユニット330は、第2実施形態の第1電池ユニット230の代わりに、第1フレーム(第1収容部材)332、第1ロアーカバー336を有する。また、第3実施形態の第2電池ユニット340は、第2実施形態の第2電池ユニット240の代わりに、第2フレーム(第2収容部材)342、第2ロアーカバー346を有する。第1フレーム332および第2フレーム342は、車体フレームの一部としての機能を持たせることができる。第1フレーム332の強度は、第2フレーム342の強度より高い。
【0057】
第1電池ユニット330および第2電池ユニット340は、例えば、車両200の車体フロアーBFの床下に取り付けられる。第1電池ユニット330は、車体内側に設けられ、第2電池ユニット340は、第1電池ユニット330よりも車体外側に設けられる。第2電池ユニット340は、第1電池ユニット330の周囲の少なくとも一部を覆うように設けられる。より具体的に、第1フレーム332は、車体内側に設けられ、第2フレーム342は、第1フレーム332よりも車体外側に設けられる。そして、第2フレーム342は、第1フレーム332の周囲の少なくとも一部を覆うように、第1フレーム332の外周に設けられる。
【0058】
第1フレーム332および第2フレーム342は、締結部材350により車体フロアーBFに接続され、第3実施形態の第1電池ユニット330および第2電池ユニット340は、車体フロアーBFに吊り下げされている。
【0059】
第1フレーム332、車体フロアーBF、第1ロアーカバー336で囲まれた収容空間に複数の第1電池134が収容される。また、第2フレーム342、車体フロアーBF、第2ロアーカバー346で囲まれた収容空間に複数の第2電池144が収容される。
【0060】
第1フレーム332の外側面には、エネルギー吸収部材(第2エネルギー吸収部材)338が設けられる。ただし、これに限定されず、エネルギー吸収部材338は、第2フレーム342の外側面に設けられてもよい。エネルギー吸収部材338は、第1フレーム332と第2フレーム342の間に配置される。このように、第3実施形態では、第1電池134と第2電池144の間の空間には、第1フレーム332および第2フレーム342の複数のフレームが設けられ、さらに、第1フレーム332と第2フレーム342の間には、エネルギー吸収部材338が設けられる。なお、第2実施形態と同様に、第1フレーム332は、車両200の車体骨格である車体フレームの一部としての機能を持たせることができ、第2フレーム342は、例えば、サイドシル等のEA部としての機能を持たせることができる。
【0061】
図7Bでは、図中右側から左側に向かって、車両200では左側から右側に向かって、車両200の左側面に障害物Obが衝突している。図7Bに示すように、車両事故が起きた際、第1電池ユニット330よりも先に第2電池ユニット340が障害物Obと衝突する。したがって、車両事故が起きた際には、まず、障害物Obから第2電池ユニット340に衝突荷重および衝撃が加わることとなる。第2電池ユニット340に衝突荷重および衝撃が加わると、第2フレーム342が変形し、また、第2フレーム342と第2電池144との隙間が潰れることで、衝撃エネルギーの一部が吸収され、低減される。また、第2フレーム342が変形し、また、第2フレーム342と第2電池144との隙間が潰れることで、障害物Obの進入加速度が低減され、衝撃荷重が緩和される。
【0062】
また、上記第1実施形態と同様に、第2収容部材である第2フレーム342内には、複数に分割された第2電池144が設けられ、複数の第2電池144の間には、エネルギー吸収部材146(図3Aおよび図3B参照)が設けられる。これにより、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃は、第2電池144よりも先にエネルギー吸収部材146が潰れることで吸収および低減される。障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃がすべて、第2フレーム342と第2電池144との隙間およびエネルギー吸収部材146が潰れることで吸収されきれれば、第2電池144を保護することができる。
【0063】
一方、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃のすべてが、第2フレーム342と第2電池144との隙間およびエネルギー吸収部材146が潰れることで吸収されきれない場合、衝突荷重および衝撃の一部が第2電池144に伝達される。第2電池144に衝突荷重および衝撃が加わると、第2電池144が変形し潰れることで、衝突荷重および衝撃エネルギーの一部が吸収し、低減される。
【0064】
さらに、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃のすべてが、第2電池144が潰れることで吸収されきれない場合、第2電池ユニット340が第1電池ユニット330に近接する方向に移動する。
【0065】
第2電池ユニット340が第1電池ユニット330に近接する方向に移動すると、第2電池ユニット340とエネルギー吸収部材338が衝突し、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃は、エネルギー吸収部材338に伝達される。エネルギー吸収部材338に衝突荷重および衝撃が加わると、エネルギー吸収部材338が変形し、衝撃エネルギーの一部が吸収され、低減される。また、エネルギー吸収部材338が変形し潰れることで、障害物Obの進入加速度が低減され、衝撃荷重が緩和される。
【0066】
また、第2電池ユニット340が第1電池ユニット330に近接する方向に移動すると、エネルギー吸収部材338を介して第2電池ユニット340が第1電池ユニット330と衝突する。エネルギー吸収部材338が潰れることで吸収されきれない衝突荷重および衝撃は、第1電池ユニット330の車体フレームとしての第1フレーム332に伝達される。ここで、本実施形態では、第1フレーム332の強度は、第2フレーム342の強度より高い。そのため、エネルギー吸収部材338を介して第2フレーム342から第1フレーム332に衝突荷重が加わった際に、第2フレーム342よりも第1フレーム332が変形し難く、第1電池134を損傷から保護することができる。
【0067】
車体フレームとして機能する第1フレーム332に伝達される衝突荷重および衝撃は、例えば、車体のロール挙動、前輪FW、後輪RWおよびサスペンションの変形、車体の横スリップなど車体全体の挙動により低減される。
【0068】
第3実施形態においても、車両事故の際に液系電池を含む第1電池ユニット330に伝わる衝突荷重および衝撃を低減するため、第1電池ユニット330の周囲に設けられるEA空間に全固体電池を含む第2電池ユニット340を配置する。第2電池ユニット340は、第1電池ユニット330を囲繞するように、第1電池ユニット330の外周に設けられる。
【0069】
EA空間に第2電池ユニット340が設けられることで、車両200の電池搭載量を増大させることができ、車両200の航続距離を拡大することができる。また、万が一、衝突等で第2電池ユニット340が損傷した場合でも、損傷した第2電池ユニット340のみを交換すればよく、保護された第1電池ユニット330の交換が不要であるため、修理費用を低く抑えることができる。
【0070】
第3実施形態の特徴は、第2実施形態と同様に、第1フレーム332に車両200の車体フレームの一部としての機能を持たせ、車体フレームとして機能する強度を持たせるところである。また、第1電池134と第2電池144の間の空間を隔てる第1フレーム332および第2フレーム342の間には、エネルギー吸収部材338が設けられる。これにより、エネルギー吸収部材338で第2電池ユニット340から加わる衝突荷重および衝撃を吸収することができ、第2実施形態よりも第1電池134を損傷から保護し易くすることができる。
【0071】
なお、第2実施形態および第3実施形態では、第1電池ユニット230、330の第1フレーム232、332に、車両200の車体フレームの一部としての機能を持たせる例について説明した。しかし、これに限定されず、例えば、第1実施形態において、第1電池ユニット130の第1ケース132の強度を、車両100に設けられた車体フレームに機能移管するようにしてもよい。以下、第1実施形態において、第1電池ユニット130の第1ケース132の強度を、車両100の車体フレームに機能移管した例を第4実施形態として図8を用いて説明する。
【0072】
(第4実施形態)
図8は、第4実施形態に係る車両400の構成を示す概略構成図である。第1実施形態の車両100と実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。第4実施形態に係る車両400は、第1収容部材の一部として機能する車体フレーム410を含む第1電池ユニット430と、第2電池ユニット140とを有する。第2電池ユニット140は、第1実施形態と同様の構成である。
【0073】
第1電池ユニット430は、第1電池134を収容する第1収容部材として機能する車体フレーム410、および、第1ケース132を有する。車体フレーム410は、第1電池134および第2電池144の間に設けられる。車体フレーム410は、エンジンルームからのフレームを床下に延ばすことで形成される。これにより、車体剛性の確保と前突時のエネルギーを分散させることができ、乗員への危害を低減することができる。
【0074】
第1電池ユニット430は、車体内側に設けられ、第2電池ユニット140は、第1電池ユニット430よりも車体外側に設けられる。第2電池ユニット140は、第1電池ユニット430の周囲の少なくとも一部を覆うように設けられる。より具体的に、第1ケース132は、車体内側に設けられ、第2ケース142は、第1ケース132よりも車体外側に設けられる。そして、第2ケース142は、第1ケース132の周囲の少なくとも一部を覆うように、第1ケース132の外周に設けられる。
【0075】
さらに、第4実施形態では、固体電池に比べ損傷に対して安全性が低い液系電池を搭載する第1ケース132は、車体フレーム410の内側に設けられる。一方、液系電池に比べ損傷に対して安全性が高い固体電池を搭載する第2ケース142は、車体フレーム410の外側に設けられる。本実施形態では、第1実施形態における第1ケース132の強度は、車体フレーム410に機能移管している。したがって、本実施形態では、車体フレーム410の強度が第2ケース142の強度より高く設定されていればよく、第1ケース132の強度は、第2ケース142の強度と同じであってもよい。また、第1ケース132の強度は、第2ケース142の強度より低くてもよいし、高くてもよい。
【0076】
図9は、第1電池ユニット430、第2電池ユニット140の水平断面図である。図9に示すように、車体フレーム410と第2ケース142の間には、エネルギー吸収部材として機能する複数の接続部材420が設けられる。各接続部材420は、第2ケース142の内部に挿通され、複数の第2電池144の間に配置される。接続部材420は、第2ケース142の梁としても使用され、第2ケース142の強度を高めている。
【0077】
接続部材420は、車両400の衝突時など外部からの力が第2ケース142に加わった際に、第2ケース142に加わる外力を車体フレーム410に伝達する。これにより、第2電池ユニット140に加わる荷重は、車体フレーム410を通じて吸収される。また、第2電池ユニット140に加わった荷重は、接続部材420がつぶれながら車体フレーム410に伝達されることで、第2電池144の破損を抑制することができる。
【0078】
図10Aは、第4実施形態に係る衝突前の第1電池ユニット430、第2電池ユニット140の垂直断面図である。図10Bは、第4実施形態に係る衝突後の第1電池ユニット430、第2電池ユニット140の垂直断面図である。なお、図9と、図10Aおよび図10Bは、それぞれ同じ第4実施形態の第1電池ユニット430および第2電池ユニット140の水平断面図と垂直断面図である。
【0079】
車体フロアーBFの床下には、車体フレーム410が設けられる。第1電池ユニット130は、締結部材440により車体フレーム410に接続され、第2電池ユニット140は、車体フレーム410の外側に設けられた連結部材160により車体フロアーBFに接続される。このようにして、第4実施形態の第1電池ユニット430および第2電池ユニット140は、車体フロアーBFに吊り下げされている。
【0080】
図10Bでは、図中右側から左側に向かって、車両400では左側から右側に向かって、車両400の左側面に障害物Obが衝突している。図10Bに示すように、車両事故が起きた際、第1電池ユニット430よりも先に第2電池ユニット140が障害物Obと衝突する。したがって、車両事故が起きた際には、まず、障害物Obから第2電池ユニット140に衝突荷重および衝撃が加わることとなる。第2電池ユニット140に衝突荷重および衝撃が加わると、第2ケース142が変形し、また、第2ケース142と第2電池144との隙間が潰れることで、衝撃エネルギーの一部が吸収され、低減される。また、第2ケース142が変形し、また、第2ケース142と第2電池144との隙間が潰れることで、障害物Obの進入加速度が低減され、衝撃荷重が緩和される。
【0081】
また、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃は、第2ケース142内の接続部材420(図9参照)に伝達される。接続部材420に衝突荷重および衝撃が加わると、接続部材420が変形し潰れることで、衝撃エネルギーの一部が吸収され、低減される。また、接続部材420が変形し潰れることで、障害物Obの進入加速度が低減され、衝撃荷重が緩和される。障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃のすべてが、第2ケース142と第2電池144との隙間および接続部材420が潰れることで吸収されきれれば、第2電池144を保護することができる。
【0082】
一方、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃のすべてが、第2ケース142と第2電池144との隙間および接続部材420が潰れることで吸収されきれない場合、衝突荷重および衝撃の一部が第2電池144に伝達される。第2電池144に衝突荷重および衝撃が加わると、第2電池144が変形し潰れることで、衝突荷重および衝撃エネルギーの一部が吸収し、低減される。
【0083】
さらに、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃のすべてが、第2電池144が潰れることで吸収されきれない場合、第2電池ユニット140が第1電池ユニット430に近接する方向に移動する。
【0084】
第2電池ユニット140が第1電池ユニット430に近接する方向に移動すると、第2電池ユニット140と車体フレーム410が衝突し、車体フレーム410に衝突荷重および衝撃が伝達する。これにより、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃は、第1電池ユニット430の第1ケース132に直接入力されることなく、第1ケース132および第1ケース132内の第1電池134を保護することができる。車体フレーム410に伝達された衝突荷重および衝撃は、例えば、車体のロール挙動、前輪FW、後輪RWおよびサスペンションの変形、車体の横スリップなど車体全体の挙動により低減される。
【0085】
第4実施形態の特徴は、第1実施形態における第1電池ユニット130の第1ケース132の強度を、車両100の車体フレームに機能移管したところである。これにより、第2電池ユニット140から加わる衝突荷重および衝撃は、車体フレーム410に伝達され、第1電池134を損傷から保護することができる。
【0086】
上記第1~4実施形態では、第1電池134を損傷から保護するために、第2電池144の変形および破損を許容する例について説明した。しかし、これに限定されず、第1電池134を損傷から保護しつつ、第2電池144も可能な限り損傷から極力保護できるように構成してもよい。以下、第1電池134を損傷から保護しつつ、第2電池144も可能な限り損傷から極力保護できるように構成した例を第5実施形態として図11A図11Bを用いて説明する。
【0087】
(第5実施形態)
図11Aは、第5実施形態に係る衝突前の第1電池ユニット530、第2電池ユニット140の垂直断面図である。図11Bは、第5実施形態に係る衝突後の第1電池ユニット530、第2電池ユニット140の垂直断面図である。
【0088】
第5実施形態は、上記第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態で説明した各種構成と組み合わせて適用することができる。具体的に、上記第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態の車体内側に設けられた第1電池ユニット130、230、330、430を保護する機構として第5実施形態が適用されてもよい。つまり、第5実施形態は、上記第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態の第1電池ユニット130、230、330、430と組み合わせて適用されてもよい。ここでは、一例として、第5実施形態を第4実施形態の構成に適用した例について説明する。第5実施形態において、車体フレーム510および後述する支持機構540以外の構成は、第4実施形態と同じである。第4実施形態の車両400と実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0089】
第1電池ユニット530は、第1電池134を収容する第1収容部材として機能する車体フレーム510、および、第1ケース132を有する。車体フレーム510は、第1電池134および第2電池144の間に設けられる。車体フロアーBFの床下には、車体フレーム510が設けられる。車体フレーム510は、車体フロアーBFから鉛直下側に向かって離隔するほど幅が狭くなる傾斜部512を有する。第1電池ユニット130は、連結部材550により車体フレーム510に接続される。
【0090】
第2電池ユニット140は、第1電池ユニット530および車体フレーム510に対し離隔する側が、車体フレーム510の外側に設けられた連結部材160により車体フロアーBFに接続される。また、第2電池ユニット140は、第1電池ユニット530および車体フレーム510に対し近接する側が、支持機構540および連結部材550を介して車体フレーム510に接続される。
【0091】
支持機構540は、連結部材550により車体フレーム510に取り付けられ、第2電池ユニット140の車体フレーム510側を支持する。支持機構540は、屈曲および伸長可能な変形部542を有し、車両400の衝突時など第2電池ユニット140に外力が加わった際に屈曲した状態から伸長した状態に変移する。
【0092】
図11Aに示すように、衝突前の状態において、支持機構540は、第2電池ユニット140の車体フレーム510側を支持するとともに、変形部542は屈曲した状態を維持している。
【0093】
図11Bでは、図中右側から左側に向かって、車両400では左側から右側に向かって、車両400の左側面に障害物Obが衝突している。図11Bに示すように、車両事故が起きた際、第1電池ユニット530よりも先に第2電池ユニット140が障害物Obと衝突する。したがって、車両事故が起きた際には、まず、障害物Obから第2電池ユニット140に衝突荷重および衝撃が加わることとなる。第2電池ユニット140に衝突荷重および衝撃が加わると、第2ケース142が変形し、また、第2ケース142と第2電池144との隙間が潰れることで、衝撃エネルギーの一部が吸収され、低減される。また、第2ケース142が変形し、また、第2ケース142と第2電池144との隙間が潰れることで、障害物Obの進入加速度が低減され、衝撃荷重が緩和される。
【0094】
さらに、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃のすべてが、第2ケース142と第2電池144との隙間が潰れることで吸収されきれない場合、第2電池ユニット140が第1電池ユニット530に近接する方向に移動する。なお、このとき、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃のすべてが、第2ケース142と第2電池144との隙間および接続部材420が潰れることで吸収されきれない場合、衝突荷重および衝撃の一部が第2電池144に伝達されてもよい。その場合、第2電池144に衝突荷重および衝撃が加わり、第2電池144が変形し潰れることで、衝突荷重および衝撃エネルギーの一部が吸収し、低減されてもよい。
【0095】
第2電池ユニット140が第1電池ユニット530に近接する方向に移動すると、第2電池ユニット140と車体フレーム510が衝突し、障害物Obから加わる衝突荷重および衝撃の一部は、車体フレーム510に伝達する。車体フレーム510に伝達された衝突荷重および衝撃は、例えば、車体のロール挙動、前輪FW、後輪RWおよびサスペンションの変形、車体の横スリップなど車体全体の挙動により低減される。
【0096】
また、このとき第2電池ユニット140の第2ケース142は、車体フロアーBFの床下に設けられた車体フレーム510の傾斜部512に衝突する。傾斜部512の第2電池ユニット140側の傾斜面512aは、鉛直下側ほど第2電池ユニット140から離れる位置となるように傾斜している。
【0097】
そのため、第2電池ユニット140が車体フレーム510の傾斜面512aに衝突すると、衝突のエネルギーの一部が車体フレーム510に吸収されるとともに、傾斜面512aは、第2電池ユニット140の水平方向への移動を鉛直下側に逸らすように変更する。この時、支持機構540は、変形部542が屈曲した状態から伸長した状態となり、第2電池ユニット140を衝突荷重方向に対して傾くように回動させる。第2電池ユニット140の第2ケース142は、支持機構540の変形部542の状態変化により、衝突荷重方向に対して傾くように回動する。このように、車体フレーム510の傾斜面512aにより第2電池ユニット140の移動方向が変更されることで、第2電池ユニット140内の第2電池144の損傷を抑制することができる。
【0098】
このとき、支持機構540は、変形部542が屈曲した状態から伸長した状態となるように変形することで第2電池ユニット140の鉛直下側への移動を許容するとともに第2電池ユニット140を支持し、第2電池ユニット140の脱落を防止する。
【0099】
第5実施形態の特徴は、第1電池134を損傷から保護しつつ、第2電池144も可能な限り損傷から極力保護できるように支持機構540を設けたところである。これにより、第1電池134を損傷から保護しつつ、第2電池144も可能な限り損傷から極力保護することができる。
【0100】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0101】
上記実施形態では、複数の第2電池144の間にエネルギー吸収部材146を設ける例について説明した。しかし、エネルギー吸収部材146は、必須の構成ではなく、複数の第2電池144の間にエネルギー吸収部材146が設けられなくてもよい。
【0102】
上記実施形態では、第1ケース132と第2ケース142の間にエネルギー吸収部材136が設けられる例について説明した。しかし、エネルギー吸収部材136は、必須の構成ではなく、第1ケース132と第2ケース142の間にエネルギー吸収部材136が設けられなくてもよい。
【0103】
上記実施形態では、第1フレーム332と第2フレーム342の間にエネルギー吸収部材338が設けられる例について説明した。しかし、エネルギー吸収部材338は、必須の構成ではなく、第1フレーム332と第2フレーム342の間にエネルギー吸収部材338が設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0104】
BF 車体フロアー
FW 前輪
RW 後輪
100 車両
110 フロントモータ
120 リアモータ
130 第1電池ユニット
132 第1ケース(第1収容部材)
134 第1電池
136 エネルギー吸収部材(第2エネルギー吸収部材)
140 第2電池ユニット
142 第2ケース(第2収容部材)
144 第2電池
146 エネルギー吸収部材(第1エネルギー吸収部材)
200 車両
230 第1電池ユニット
232 第1フレーム(第1収容部材)
234 第1アッパーカバー
236 第1ロアーカバー
240 第2電池ユニット
242 第2フレーム(第2収容部材)
244 第2アッパーカバー
246 第2ロアーカバー
330 第1電池ユニット
332 第1フレーム(第1収容部材)
336 第1ロアーカバー
338 エネルギー吸収部材(第2エネルギー吸収部材)
340 第2電池ユニット
342 第2フレーム(第2収容部材)
346 第2ロアーカバー
400 車両
410 車体フレーム
420 接続部材
510 車体フレーム
512 傾斜部
512a 傾斜面
540 支持機構
542 変形部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11