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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002494
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】広帯域アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/28 20060101AFI20231228BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01Q9/28
H01Q1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101702
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000227892
【氏名又は名称】日本アンテナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】110002767
【氏名又は名称】弁理士法人ひのき国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深山 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】岸本 知久
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AB07
5J046PA07
5J046PA09
(57)【要約】
【課題】 広帯域アンテナを構成するアンテナ素子の構成を単純な構成とすると共に、背面を取り付け面として利用する。
【解決手段】 広帯域アンテナ2は、基板20の一面に並べて面状の形状に導電体で形成された第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22とを備えている。第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22とが互いに向かい合う端部のほぼ中央に、それぞれ給電点21a,22aが形成されている。第1アンテナ素子21および前記第2アンテナ素子22とは、給電点21a,22aのそれぞれからテーパ状に拡がる面状に形成されていると共に、該テーパ状の部分から延伸する突部21b,22bが形成されており、第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22とはほぼ線対称の形状とされている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形状とされている透明樹脂からなる絶縁性のフィルム基板と、
該フィルム基板の一面に並べて面状の形状に導電体で形成された第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とを備え、
前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とはほぼ線対称の形状とされ、前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子とが互いに向かい合う端部のほぼ中央に、それぞれ給電点が形成されており、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とは、前記給電点のそれぞれからテーパ状に拡がる面状に形成されていることを特徴とする広帯域アンテナ。
【請求項2】
前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とは、視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュ状の導電体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の広帯域アンテナ。
【請求項3】
平板状の長方形状とされている絶縁性の基板と、
該基板の一面に並べて面状の形状に導電体で形成された第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とを備え、
前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子とが互いに向かい合う端部のほぼ中央に、それぞれ給電点が形成されており、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とは、前記給電点のそれぞれからテーパ状に拡がる面状に形成されていると共に、該テーパ状の部分から延伸する突部が形成されており、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とはほぼ線対称の形状とされていることを特徴とする広帯域アンテナ。
【請求項4】
前記絶縁性の基板が透明樹脂からなる基板とされ、
さらに、前記突部が形成された前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とは、視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュ状の導電体で形成されていると共に、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子のそれぞれの前記給電点はベタ状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の広帯域アンテナ。
【請求項5】
前記絶縁性の基板が透明樹脂からなるフィルム基板とされ、
さらに、前記突部が形成された前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とは、視覚的に透明とされ可視光を透過する三角形、四角形または多角形、円形、楕円形のメッシュからなるメッシュ状の導電体で形成されていると共に、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子のそれぞれの前記給電点はベタ状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の広帯域アンテナ。
【請求項6】
前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子に形成された前記突部の長さが、設計周波数帯域における0.9GHzの周波数の波長λaに対して約0.036λa~約0.059λaの長さとされ、2.0GHzの周波数の波長λbに対して約0.080λb~約0.130λbの長さとされていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の広帯域アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限られたスペースに取り付けられる広帯域アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
IoT(Internet of Things)市場の拡大と共に使用される周波数の拡張が進んでおり、広帯域性を有するアンテナの需要が高まっている。近年、通信モジュールなどの端末機器がグローバルな周波数に対応しており、アンテナの電気性能を追従させる必要がある。また、アンテナを取り付けるスペースが限られていることやアンテナを設置しても外観を維持することが求められている。また、屈曲性を有し曲面に設置することができたり、アンテナを広帯域化できることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5138190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に、800MHz帯から2000MHz帯までをカバーすることのできる従来の小型の平面アンテナが開示されている。この従来の平面アンテナ100の正面図を図19に背面図を図20に示す。これらの図に示すように、従来の平面アンテナ100は、平板状の長方形とされている絶縁基板110を有し、この絶縁基板110の一面に形成された第1エレメント111と第2エレメント112からなるエレメント部とを備えている。第1エレメント111は、給電点からテーパ状に拡がるループ状に形成された第1ループエレメント111aと、第1ループエレメント111aの内部に形成されている第1T型エレメント111bとからなる。また、第2エレメント112は、給電点からテーパ状に拡がるループ状に形成された第2ループエレメント112aと、第2ループエレメント112aの内部に形成されている第2T型エレメント112bとからなる。第1エレメント111と第2エレメント112とはほぼ線対称の形状とされている。
また、絶縁基板110の他面に給電部114aおよび給電部114bが形成されていると共に、所定長の無給電素子113が形成されている。
【0005】
従来の平面アンテナ100は、絶縁基板110の一面であるおもて面に形成される第1エレメント111および第2エレメント112の構成が複雑な構成とされている。また、絶縁基板110の他面である背面に給電部114a,114bおよび無給電素子113が形成されており、背面を従来の平面アンテナ100の取り付け面として利用することが困難とされていた。
そこで、本発明は、アンテナ素子の構成を単純な構成とすると共に、基板の一つの面を取り付け面として利用することができ、広帯域化された広帯域アンテナを提供することを目的としている。また、透明化することができる広帯域アンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の広帯域アンテナは、長方形状とされている透明樹脂からなる絶縁性のフィルム基板と、該フィルム基板の一面に並べて面状の形状に導電体で形成された第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とを備え、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とはほぼ線対称の形状とされ、前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子とが互いに向かい合う端部のほぼ中央に、それぞれ給電点が形成されており、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とは、前記給電点のそれぞれからテーパ状に拡がる面状に形成されていることを主要な特徴としている。
また、本発明の広帯域アンテナにおいて、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とは、視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュ状の導電体で形成されている。
【0007】
本発明の他の広帯域アンテナは、平板状の長方形状とされている絶縁性の基板と、該基板の一面に並べて面状の形状に導電体で形成された第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とを備え、前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子とが互いに向かい合う端部のほぼ中央に、それぞれ給電点が形成されており、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とは、前記給電点のそれぞれからテーパ状に拡がる面状に形成されていると共に、該テーパ状の部分から延伸する突部が形成されており、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とはほぼ線対称の形状とされていることを主要な特徴としている。
また、本発明の他の広帯域アンテナにおいて、前記絶縁性の基板が透明樹脂からなるフィルム基板とされ、さらに、前記突部が形成された前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とは、視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュ状の導電体で形成されていると共に、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子のそれぞれの前記給電点はベタ状に形成されている。
さらに、本発明の他の広帯域アンテナにおいて、前記絶縁性の基板が透明樹脂からなるフィルム基板とされ、さらに、前記突部が形成された前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子とは、視覚的に透明とされ可視光を透過する三角形、四角形または多角形、円形、楕円形のメッシュからなるメッシュ状の導電体で形成されていると共に、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子のそれぞれの前記給電点はベタ状に形成されている
さらにまた、本発明の他の広帯域アンテナにおいて、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子に形成された前記突部の長さが、設計周波数帯域における0.9GHzの周波数の波長λaに対して約0.036λa~約0.059λaの長さとされ、2.0GHzの周波数の波長λbに対して約0.080λb~約0.130λbの長さとされている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の広帯域アンテナは、透明樹脂からなるフィルム基板の一面に並べて面状の形状に導電体で形成された第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とを備えることから、屈曲性を有し曲面に設置することができるようになる。この場合、フィルム基板の一面にのみ広帯域アンテナを構成するアンテナ素子等が形成されていることから、フィルム基板の他面を取り付け面として利用することができる。また、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子を、視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュ状の導電体で形成することにより、広帯域アンテナを透明化することができる。これにより、可視光を利用するデバイスの表面にデバイスの性能を維持した状態で外観をそこねることなく広帯域アンテナを設置することができる。
さらに、本発明の他の広帯域アンテナは、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とのテーパ状の部分から延伸する突部が形成されていることから、より広い広帯域性とすることができる。さらにまた、透明樹脂からなる基板とすると共に、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子とを、視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュ状の導電体で形成することにより、広帯域アンテナを透明化することができる。これにより、可視光を利用するデバイスの表面にデバイスの性能を維持した状態で外観をそこねることなく広帯域アンテナを設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明にかかる第1実施例の平面アンテナの構成を示す正面図である。
図2】本発明にかかる第1実施例の平面アンテナの構成を示す背面図である。
図3】本発明にかかる第1実施例の平面アンテナの構成を示す上面図である。
図4】本発明にかかる第1実施例の平面アンテナの構成を示す左側面図および右側面図である。
図5】本発明にかかる第2実施例の平面アンテナの構成を示す正面図である。
図6】本発明にかかる第2実施例の平面アンテナの構成を示す背面図である。
図7】本発明にかかる第2実施例の平面アンテナの構成を示す上面図である。
図8】本発明にかかる第2実施例の平面アンテナの構成を示す左側面図および右側面図である。
図9】本発明にかかる第3実施例の平面アンテナの構成を示す正面図である。
図10】本発明にかかる第3実施例の平面アンテナの構成を示す背面図である。
図11】本発明にかかる第3実施例の平面アンテナの構成を示す上面図である。
図12】本発明にかかる第3実施例の平面アンテナの構成を示す左側面図および右側面図である。
図13】本発明にかかる第4実施例の平面アンテナの構成を示す正面図である。
図14】本発明にかかる第4実施例の平面アンテナの構成を示す背面図である。
図15】本発明にかかる第4実施例の平面アンテナの構成を示す上面図である。
図16】本発明にかかる第4実施例の平面アンテナの構成を示す左側面図および右側面図である。
図17】本発明にかかる第2実施例の平面アンテナにおいて、アンテナ素子の突部の長さに対するVSWR2.0以下帯域を示すグラフである。
図18】本発明にかかる第2実施例の平面アンテナにおいて、設計周波数帯域における周波数の波長に対するアンテナ素子の突部の長さの波長比を示す表である。
図19】従来の平面アンテナの構成を示す正面図である。
図20】従来の平面アンテナの構成を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の第1実施例の広帯域アンテナ>
本発明の第1実施例にかかる広帯域アンテナ1の構成を図1ないし図4に示す。図1は第1実施例の広帯域アンテナ1の構成を示す正面図であり、図2は第1実施例の広帯域アンテナ1の構成を示す背面図であり、図3は第1実施例の広帯域アンテナ1の構成を示す上面図であり、図4は第1実施例の広帯域アンテナ1の構成を示す左側面図および右側面図である。
これらの図に示すように、本発明の第1実施例の広帯域アンテナ1は、長方形状の平板状とされたフィルム基板10を備えており、フィルム基板10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやテフロン(登録商標)製のフィルムなどの高周波特性の良好な可撓性で絶縁性の透明樹脂から構成されている。このフィルム基板10の一面に並べて第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12との2つのパターンが形成されている。第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12とのパターンは面状の形状とされ、フィルム基板10の一面上に蒸着やプリントあるいは貼着、エッチング等のいずれかによりパターンが形成されている。第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12の素材は、銅や銀ペーストなどの電気抵抗の低い導電体が好適とされる。図示するフィルム基板10は縦に長い長方形状とされており、上半面に第1アンテナ素子11が形成されており、下半面に第2アンテナ素子12が形成されている。第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12とはほぼ線対称の形状とされ、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12とが互いに向かい合う端部のほぼ中央に、それぞれ給電点11a,12aが形成されている。第1アンテナ素子11は、給電点11aからフィルム基板10の周縁に達するよう拡がるテーパ部と、テーパ部に続くほぼフィルム基板10の周縁に沿った長方形状部とから構成されている。また、第2アンテナ素子12は第1アンテナ素子11とほぼ線対称の形状に形成されており、給電点12aからフィルム基板10の周縁に達するよう拡がるテーパ部と、テーパ部に続くほぼフィルム基板10の周縁に沿った長方形状部とから構成されている。
【0011】
第1実施例の広帯域アンテナ1において、第1アンテナ素子11の給電点11aおよび第2アンテナ素子12の給電点12aは肉厚の矩形状のパターンに形成され、給電点11aに同軸ケーブルとされる給電ケーブル13の中心導体13aの先端がハンダ付けされ、給電点12aには、給電ケーブル13の外導体13bがハンダ付けされている。広帯域アンテナ1の設計周波数帯域は、例えば650MHz~2750MHzとされ、広帯域アンテナ1における縦方向の寸法L1は設計周波数帯域の中心周波数の波長をλとすると約1/2λとされ、広帯域アンテナ1における横方向の寸法W1は約1/4λとされて、広帯域アンテナ1は給電ケーブル13から中央給電されるダイポールアンテナとして機能する。この場合、第1アンテナ素子11がホット素子とされ、第2アンテナ素子12がコールド素子とされる。
第1実施例の広帯域アンテナ1は、設計周波数帯域が650MHz~2750MHzとされる。そして、第1実施例の広帯域アンテナ1においては、設計周波数帯域の低域をカバーするように広帯域アンテナ1の共振周波数を約650MHzとしている。ここで、フィルム基板10においてはフィルム基板10の比誘電率εrの影響を受けて波長は短縮される。例えば、フィルム基板10を比誘電率εrが約3のPET製とすると、フィルム基板10の波長短縮率は約57.8%となる。すると、650MHzの1/2λは自由空間では約231mmとされるが、比誘電率εrが約3のフィルム基板10上においては波長短縮されて約133.5mmとなる。従って、フィルム基板10上に形成される広帯域アンテナ1の寸法L1を約135mmとすると、広帯域アンテナ1の共振周波数は約650MHzとなる。ここで、広帯域アンテナ1のフィルム基板10の比誘電率εrが約3とされた際に設計周波数帯域を650MHz~2750MHzとした時の概略寸法の一例を挙げると、寸法L1が約135mmで、幅W1が約50mmとされ、フィルム基板10の厚さを約100μmとすることができる。このように、第1実施例の広帯域アンテナ1は小型となる。なお、フィルム基板10の長辺の寸法はL1とほぼ同様の寸法となり、フィルム基板10の短辺の寸法はW1とほぼ同様の寸法となる。
【0012】
以上説明したように、本発明の第1実施例の広帯域アンテナ1は、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12とが面状の形状に導電体で形成されていることから、広帯域なアンテナとして機能する。また、第1実施例の広帯域アンテナ1は、可撓性の透明樹脂からなるフィルム基板10の一面に形成された第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12とを備えることから、屈曲性を有しフィルム基板10の他面を利用して曲面に設置することができるようになる。また、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12を、図示しないが視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュ状の導電体で形成することができる。すなわち、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12を視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュ状とすることにより、第1実施例の広帯域アンテナ1を透明化することができる。これにより、可視光を利用するデバイス、例えば、太陽光パネルの表面に発電機能の性能を維持した状態で外観をそこねることなく第1実施例の広帯域アンテナ1を設置することができるようになる。
【0013】
<本発明の第2実施例の広帯域アンテナ>
次に、本発明の第2実施例の広帯域アンテナ2を説明する。第2実施例の広帯域アンテナ2は、第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22に突部21b、突部22bを設けることにより、第1実施例の広帯域アンテナ1の広帯域性を改善するようにしている。
本発明の第2実施例の広帯域アンテナ2の構成を図5ないし図8に示す。図5は第2実施例の広帯域アンテナ2の構成を示す正面図であり、図6は第2実施例の広帯域アンテナ2の構成を示す背面図であり、図7は第2実施例の広帯域アンテナ2の構成を示す上面図であり、図8は第2実施例の広帯域アンテナ2の構成を示す左側面図および右側面図である。
これらの図に示すように、本発明の第2実施例の広帯域アンテナ2は、長方形状の平板状とされた基板20を備えており、基板20は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やテフロン(登録商標)あるいはガラスエポキシ等の高周波特性の良好な絶縁性の素材から構成されている。この基板20の一面に並べて第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22との2つのパターンが形成されている。第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22とのパターンは面状の形状とされ、基板20の一面上に蒸着やプリントあるいは貼着、エッチング等のいずれかによりパターンが形成されている。この場合、基板20はPETやテフロン(登録商標)等の高周波特性の良好な可撓性の透明樹脂からなる平板やフィルムから構成してもよい。また、第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22の素材は、銅や銀ペーストなどの電気抵抗の低い導電体が好適とされる。図示する基板20は縦に長い長方形状とされており、上半面に第1アンテナ素子21が形成されており、下半面に第2アンテナ素子22が形成されている。第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22とはほぼ線対称の形状とされ、第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22とが互いに向かい合う端部のほぼ中央に、それぞれ給電点21a,22aが形成されている。第1アンテナ素子21は、給電点21aから基板20の周縁に達するよう拡がるテーパ部と、テーパ部に続くほぼ基板20の周縁に沿った長方形状部とから構成されている。また、第2アンテナ素子22は第1アンテナ素子21とほぼ線対称の形状に形成されており、給電点22aから基板20の周縁に達するよう拡がるテーパ部と、テーパ部に続くほぼ基板20の周縁に沿った長方形状部とから構成されている。
【0014】
第2実施例の広帯域アンテナ2において、第2アンテナ素子21の給電点21aおよび第2アンテナ素子22の給電点22aは肉厚の矩形状とされたベタ状のパターンで形成されてハンダ付け可能とされている。給電点21aには同軸ケーブルとされる給電ケーブル23の中心導体23aの先端がハンダ付けされ、給電点22aには、給電ケーブル23の外導体23bがハンダ付けされている。広帯域アンテナ2の設計周波数帯域は、例えば650MHz~2750MHzとされ、広帯域アンテナ2における縦方向の寸法L1は設計周波数帯域の中心周波数の波長をλとすると約1/2λとされ、広帯域アンテナ2における横方向の寸法W1は約1/4λとされて、広帯域アンテナ2は給電ケーブル23から中央給電されるダイポールアンテナとして機能する。この場合、第1アンテナ素子21がホット素子とされ、第2アンテナ素子22がコールド素子とされる。
【0015】
第2実施例の広帯域アンテナ2において特徴的な構成は、第1アンテナ素子21の一方のテーパ部における給電点21aの近傍の始端と、基板20の周縁に達する終端とから延伸するよう細長い2つの突部21bがそれぞれ形成されていることである。第2アンテナ素子22においても同様に、第2アンテナ素子22の一方のテーパ部における給電点22aの近傍の始端と、基板20の周縁に達する終端とから延伸するよう細長い2つの突部22bがそれぞれ形成されている。2つの突部21bおよび2つの突部22bにおけるそれぞれの突部の長さL2は、同じ寸法としてもよいが異なる寸法としてもよい。第1アンテナ素子21に形成した2つの突部21bおよび第2アンテナ素子22に形成した2つの突部22bにより、第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22における誘導性(L)成分と容量性(C)成分との調整を行うことができ、調整を行うことで第2実施例の広帯域アンテナ2の広帯域性が改善されて、より広帯域化することができる。上記L成分およびC成分の調整は、2つの突部21bおよび2つの突部22bの長さL2や幅を変化させることにより行うことができる。なお、突部21bおよび突部22bの数は2つに限らず、1つでもよいし3つ以上としてもよい。突部21bおよび突部22bは対称に設けてもよいが、非対称に設けてもよい。すなわち、突部21bおよび突部22bの突出位置は図示する位置に限らない。向き合って配置された第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22との間のテーパ部の間に形成された空間に配置できれば、突部21bおよび突部22bの突出位置は任意の位置とすることができる。
【0016】
第2実施例の広帯域アンテナ2は、設計周波数帯域が650MHz~2750MHzとされる。そして、第2実施例の広帯域アンテナ2においては、設計周波数帯域の低域をカバーするように広帯域アンテナ2の共振周波数を約650MHzとしている。ここで、基板20においては基板20の比誘電率εrの影響を受けて波長は短縮される。例えば、基板20を比誘電率εrが約3のPET製とすると、基板20の波長短縮率は約57.8%となる。すると、650MHzの1/2λは自由空間では約231mmとされるが、比誘電率εrが約3の基板20上においては波長短縮されて約133.5mmとなる。従って、基板20上に形成される広帯域アンテナ2の寸法L1を約135mmとすると、広帯域アンテナ2の共振周波数は約650MHzとなる。ここで、広帯域アンテナ2の基板20の比誘電率εrが約3とされた際に設計周波数帯域を650MHz~2750MHzとした時の概略寸法の一例を挙げると、寸法L1が約135mmで、幅W1が約50mmとされ、基板20の厚さを約100μmとすることができる。このように、第2実施例の広帯域アンテナ2は小型となる。なお、基板20の長辺の寸法はL1とほぼ同様の寸法となり、基板20の短辺の寸法はW1とほぼ同様の寸法となる。そして、突部21b、突部22bの長さL2は約12mm~約19.5mmとされるのが好適とされ、突部21b、突部22bの幅は例えば約2mmとされる。
【0017】
以上説明したように、本発明の第2実施例の広帯域アンテナ2は、第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22とが面状の形状に導電体で形成されていると共に、2つの突部21bが第1アンテナ素子21に形成されて、2つの突部22bが第2アンテナ素子22に形成されていることから、広帯域性が改善された広帯域アンテナ2として機能する。また、第2実施例の広帯域アンテナ2において、基板20を可撓性の樹脂からなる基板として、基板20の一面に第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22とを形成することにより、屈曲性を有するようになり基板20の他面を利用して曲面に設置することができるようになる。
【0018】
<本発明の第3実施例の広帯域アンテナ>
次に、本発明の第3実施例の広帯域アンテナ3を説明する。第3実施例の広帯域アンテナ3は、第1アンテナ素子31および第2アンテナ素子32をメッシュ状の導電体で形成することにより、広帯域アンテナ3を透明化している。
次に、本発明の第3実施例の広帯域アンテナ3の構成を図9ないし図12に示す。図9は第3実施例の広帯域アンテナ3の構成を示す正面図であり、図10は第3実施例の広帯域アンテナ3の構成を示す背面図であり、図11は第3実施例の広帯域アンテナ3の構成を示す上面図であり、図12は第3実施例の広帯域アンテナ3の構成を示す左側面図および右側面図である。
これらの図に示すように、本発明の第3実施例の広帯域アンテナ3は、長方形状の平板状とされた基板30を備えており、基板30は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やテフロン(登録商標)あるいはガラスエポキシ等の高周波特性の良好な絶縁性の素材から構成されている。この基板30の一面に並べて第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32との2つのパターンが形成されている。第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32とのパターンは面状の形状とされ、基板30の一面上に蒸着やプリントあるいは貼着、エッチング等のいずれかによりパターンが形成されている。この場合、基板30はPETやテフロン(登録商標)等の高周波特性の良好な可撓性の透明樹脂からなる平板やフィルムから構成してもよい。また、第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32はメッシュ状の導電体から形成されており、導電体の素材は、銅や銀ペーストなどの電気抵抗の低い導電体が好適とされる。図示する基板30は縦に長い長方形状とされており、上半面にメッシュ状の第1アンテナ素子31が形成されており、下半面にメッシュ状の第2アンテナ素子32が形成されている。第1アンテナ素子31および第2アンテナ素子32とはほぼ線対称の形状とされ、第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32とが互いに向かい合う端部のほぼ中央に、それぞれ給電点31a,32aが形成されている。第1アンテナ素子31は、給電点31aから基板30の周縁に達するよう拡がるテーパ部と、テーパ部に続くほぼ基板30の周縁に沿った長方形状部とから構成されている。また、第2アンテナ素子32は第1アンテナ素子31とほぼ線対称の形状に形成されており、給電点32aから基板30の周縁に達するよう拡がるテーパ部と、テーパ部に続くほぼ基板30の周縁に沿った長方形状部とから構成されている。
【0019】
第3実施例の広帯域アンテナ3において、第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32とされるメッシュ状の導電体におけるメッシュは四角形とされており、メッシュの間隔はSとされている。例えば、メッシュの間隔Sは約400μmとされ、メッシュを形成する線の幅は約8μmとされて、視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュ状の導電体とされる。すなわち、第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32とは透明化されるようになる。なお、メッシュの間隔Sおよびメッシュを形成する線の幅の寸法は上記した値に限らず、視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュが得られる寸法であればよい。
【0020】
また、第3実施例の広帯域アンテナ3において、第1アンテナ素子31の給電点31aおよび第2アンテナ素子32の給電点32aは肉厚の矩形状とされたベタ状のパターンで形成されてハンダ付け可能とされている。給電点31aには同軸ケーブルとされる給電ケーブル33の中心導体33aの先端がハンダ付けされ、給電点32aには、給電ケーブル33の外導体33bがハンダ付けされている。広帯域アンテナ3の設計周波数帯域は、例えば650MHz~2750MHzとされ、広帯域アンテナ3における縦方向の寸法L1は設計周波数帯域の中心周波数の波長をλとすると約1/2λとされ、広帯域アンテナ3における横方向の寸法W1は約1/4λとされて、広帯域アンテナ3は給電ケーブル33から中央給電されるダイポールアンテナとして機能する。この場合、第1アンテナ素子31がホット素子とされ、第2アンテナ素子32がコールド素子とされる。
【0021】
さらに、第1アンテナ素子31の一方のテーパ部における給電点31aの近傍の始端と、基板30の周縁に達する終端とから延伸するようメッシュ状の細長い2つの突部31bがそれぞれ形成されている。第2アンテナ素子32においても同様に、第2アンテナ素子32の一方のテーパ部における給電点32aの近傍の始端と、基板30の周縁に達する終端とから延伸するようメッシュ状の細長い2つの突部32bがそれぞれ形成されている。2つの突部31bおよび2つの突部32bにおけるそれぞれの突部の長さL2は、同じ寸法としてもよいが異なる寸法としてもよい。第1アンテナ素子31に形成した2つの突部31bおよび第2アンテナ素子32に形成した2つの突部32bにより、第1アンテナ素子31および第2アンテナ素子32におけるL成分とC成分との調整を行うことができ、調整を行うことで第3実施例の広帯域アンテナ3の広帯域性が改善されて、広帯域化される。上記L成分およびC成分の調整は、2つの突部31bおよび2つの突部32bの長さL2や幅を変化させることにより行うことができる。なお、突部31bおよび突部32bの数は2つに限らず、1つでもよいし3つ以上としてもよい。突部31bおよび突部32bは対称に設けてもよいが、非対称に設けてもよい。すなわち、突部31bおよび突部32bの突出位置は図示する位置に限らない。向き合って配置された第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32との間のテーパ部の間に形成された空間に配置できれば、突部31bおよび突部32bの突出位置は任意の位置とすることができる。
【0022】
本発明の第3実施例の広帯域アンテナ3において、第1アンテナ素子31における2つの突部31bおよび第2アンテナ素子32における2つの突部32bの4つの突部の長さL2を同じ寸法で同時に変化させた時の、第3実施例の広帯域アンテナ3におけるVSWR特性を図17に示すグラフで示している。この場合、横軸が0[mm]ないし20[mm]までの突部31bおよび突部32bの長さL2とされ、縦軸がVSWR2.0以下帯域とされている。この場合、突部31b、突部32bの幅は約2mmとされている。
図17に示す広帯域アンテナ3におけるVSWR特性において、設計周波数は650MHz~2750MHzとされている。図17に示すVSWR特性を参照すると、第1アンテナ素子31および第2アンテナ素子32の突部31b、突部32bの長さL2が0mmのときは、突部31b、突部32bが形成されていないことから第1実施例の広帯域アンテナ1において、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12がメッシュ状とされた時に相当する。この突部31b、突部32bの長さL2が0mmのときは、VSWRが2.0以下となる帯域幅として約39%の広帯域の比帯域が得られている。
第1アンテナ素子31および第2アンテナ素子32の突部31b、突部32bの長さL2が20mmのとき、VSWRが2.0以下となる帯域幅として約66%のより広帯域の比帯域が得られており、突部31b、突部32bを設けたことによる作用を理解することができる。
さらに、図17に示すVSWR特性を参照すると、VSWRが2.0以下となる比帯域幅が70%以上となる突部31b、突部32bの長さL2は約12mm~約19.5mmとなる。このようにVSWRが2.0以下となる比帯域幅BWとして70%以上が得られるのは、突部31b、突部32bを設けたことによる作用なのである。
そして、図18の表に示すように12mmは900MHzの波長をλaとすると0.036λaに相当し、2GHzの波長をλbとすると0.08λbに相当する。また、19.5mmは900MHzの波長λaに対して0.059λaに相当し、2GHzの波長λbに対して0.130λbに相当する。
なお、図17に示すグラフで示すVSWR特性は、第3実施例の広帯域アンテナ3におけるVSWR特性としたが、第2実施例の広帯域アンテナ2においてもVSWR特性は図17に示すグラフで示すVSWR特性と同様となる。
【0023】
第3実施例の広帯域アンテナ3は、設計周波数帯域が650MHz~2750MHzとされる。そして、第3実施例の広帯域アンテナ3においては、設計周波数帯域の低域をカバーするように広帯域アンテナ3の共振周波数を約650MHzとしている。ここで、基板30においては基板30の比誘電率εrの影響を受けて波長は短縮される。例えば、基板30を比誘電率εrが約3のPET製とすると、基板30の波長短縮率は約57.8%となる。すると、650MHzの1/2λは自由空間では約231mmとされるが、比誘電率εrが約3の基板30上においては波長短縮されて約133.5mmとなる。従って、基板30上に形成される広帯域アンテナ3の寸法L1を約135mmとすると、広帯域アンテナ3の共振周波数は約650MHzとなる。ここで、広帯域アンテナ3の基板30の比誘電率εrが約3とされた際に設計周波数帯域を650MHz~2750MHzとした時の概略寸法の一例を挙げると、寸法L1が約135mmで、幅W1が約50mmとされ、基板30の厚さを約100μmとすることができる。このように、第3実施例の広帯域アンテナ3は小型となる。なお、基板30の長辺の寸法はL1とほぼ同様の寸法となり、基板30の短辺の寸法はW1とほぼ同様の寸法となる。そして、突部31b、突部32bの長さL2は約12mm~約19.5mmとされるのが好適とされ、突部31b、突部32bの幅は例えば約2mmとされる。
【0024】
以上説明したように、本発明の第3実施例の広帯域アンテナ3は、第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32とが面状の形状にメッシュ状の導電体で形成されていると共に、2つの突部31bが第1アンテナ素子31に形成されて、2つの突部32bが第2アンテナ素子32に形成されていることから、広帯域性が改善された広帯域アンテナ3として機能する。また、第3実施例の広帯域アンテナ3では、基板30が透明の基板とされていると共に、第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32とが視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュ状とされていることから、第3実施例の広帯域アンテナ3は透明化される。これにより、可視光を利用するデバイス、例えば、太陽光パネルの表面に発電機能の性能を維持した状態で外観をそこねることなく第3実施例の広帯域アンテナ3を設置することができるようになる。さらに、基板30を可撓性の樹脂からなるフィルムなどの基板として、基板30の一面に第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32とを形成することにより、屈曲性を有することになるから基板30の他面を利用して被取付面の曲面に設置することができるようになる。
【0025】
<本発明の第4実施例の広帯域アンテナ>
次に、本発明の第4実施例の広帯域アンテナ4を説明する。第4実施例の広帯域アンテナ4は、本発明の第3実施例の広帯域アンテナ3の変形例とされている。すなわち、第1アンテナ素子41および第2アンテナ素子42を形成している導電体のメッシュの形状を変更している。
次に、本発明の第4実施例の広帯域アンテナ4の構成を図13ないし図16に示す。図13は第4実施例の広帯域アンテナ4の構成を示す正面図であり、図14は第4実施例の広帯域アンテナ4の構成を示す背面図であり、図15は第4実施例の広帯域アンテナ4の構成を示す上面図であり、図16は第4実施例の広帯域アンテナ4の構成を示す左側面図および右側面図である。
これらの図に示すように、本発明の第4実施例の広帯域アンテナ4は、長方形状の平板状とされた基板40を備えており、基板40は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やテフロン(登録商標)あるいはガラスエポキシ等の高周波特性の良好な絶縁性の素材から構成されている。この基板40の一面に並べて第1アンテナ素子41と第2アンテナ素子42との2つのパターンが形成されている。第1アンテナ素子41と第2アンテナ素子42とのパターンは面状の形状とされ、基板40の一面上に蒸着やプリントあるいは貼着、エッチング等のいずれかによりパターンが形成されている。この場合、基板40はPETやテフロン(登録商標)等の高周波特性の良好な可撓性の透明樹脂からなる平板やフィルムから構成してもよい。また、第1アンテナ素子41と第2アンテナ素子42はメッシュ状の導電体から形成されており、導電体の素材は、銅や銀ペーストなどの電気抵抗の低い導電体が好適とされる。図示する基板40は縦に長い長方形状とされており、上半面にメッシュ状の第1アンテナ素子41が形成されており、下半面にメッシュ状の第2アンテナ素子42が形成されている。第1アンテナ素子41および第2アンテナ素子42とはほぼ線対称の形状とされ、第1アンテナ素子41と第2アンテナ素子42とが互いに向かい合う端部のほぼ中央に、それぞれ給電点41a,42aが形成されている。第1アンテナ素子41は、給電点41aから基板40の周縁に達するよう拡がるテーパ部と、テーパ部に続くほぼ基板40の周縁に沿った長方形状部とから構成されている。また、第2アンテナ素子42は第1アンテナ素子41とほぼ線対称の形状に形成されており、給電点42aから基板40の周縁に達するよう拡がるテーパ部と、テーパ部に続くほぼ基板30の周縁に沿った長方形状部とから構成されている。
【0026】
第4実施例の広帯域アンテナ4において、第1アンテナ素子41と第2アンテナ素子42とされるメッシュ状の導電体におけるメッシュは三角形とされている。メッシュの間隔およびメッシュを形成する線の幅の寸法は、視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュが得られる寸法とされている。また、メッシュの形状は三角形に限らず、多角形、多角形の組み合わせや円形、楕円形等の視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュが得られる寸法の形状とすることができる。これにより、第1アンテナ素子41と第2アンテナ素子42とは透明化されるようになる。
【0027】
また、第4実施例の広帯域アンテナ4において、第1アンテナ素子41の給電点41aおよび第2アンテナ素子42の給電点42aは肉厚の矩形状とされたベタ状のパターンで形成されてハンダ付け可能とされている。給電点41aには同軸ケーブルとされる給電ケーブル43の中心導体43aの先端がハンダ付けされ、給電点42aには、給電ケーブル43の外導体43bがハンダ付けされている。広帯域アンテナ4の設計周波数帯域は、例えば650MHz~2750MHzとされ、広帯域アンテナ4における縦方向の寸法L1は設計周波数帯域の中心周波数の波長をλとすると約1/2λとされ、広帯域アンテナ4における横方向の寸法W1は約1/4λとされて、広帯域アンテナ4は給電ケーブル43から中央給電されるダイポールアンテナとして機能する。この場合、第1アンテナ素子41がホット素子とされ、第2アンテナ素子42がコールド素子とされる。
【0028】
さらに、第1アンテナ素子41の一方のテーパ部における給電点41aの近傍の始端と、基板40の周縁に達する終端とから延伸するようメッシュ状の細長い2つの突部41bがそれぞれ形成されている。第2アンテナ素子42においても同様に、第2アンテナ素子42の一方のテーパ部における給電点42aの近傍の始端と、基板40の周縁に達する終端とから延伸するようメッシュ状の細長い2つの突部42bがそれぞれ形成されている。2つの突部41bおよび2つの突部42bにおけるそれぞれの突部の長さL2は、同じ寸法としてもよいが異なる寸法としてもよい。第1アンテナ素子41に形成した2つの突部41bおよび第2アンテナ素子42に形成した2つの突部42bにより、第1アンテナ素子41および第2アンテナ素子42におけるL成分とC成分との調整を行うことができ、調整を行うことで第4実施例の広帯域アンテナ4の広帯域性が改善されて、広帯域化される。上記L成分およびC成分の調整は、2つの突部41bおよび2つの突部42bの長さL2や幅を変化させることにより行うことができる。なお、突部41bおよび突部42bの数は2つに限らず、1つでもよいし3つ以上としてもよい。突部41bおよび突部42bは対称に設けてもよいが、非対称に設けてもよい。すなわち、突部41bおよび突部42bの突出位置は図示する位置に限らない。向き合って配置された第1アンテナ素子41と第2アンテナ素子42との間のテーパ部の間に形成された空間に配置できれば、突部41bおよび突部42bの突出位置は任意の位置とすることができる。
【0029】
本発明の第4実施例の広帯域アンテナ4において、第1アンテナ素子41における2つの突部41bおよび第2アンテナ素子42における2つの突部42bの4つの突部の長さL2を同じ寸法で同時に変化させた時の、第4実施例の広帯域アンテナ4におけるVSWR特性は、前記した図17に示すグラフと同様のVSWR特性となる。その説明は省略する。
【0030】
第4実施例の広帯域アンテナ4は、設計周波数帯域が650MHz~2750MHzとされる。そして、第4実施例の広帯域アンテナ4においては、設計周波数帯域の低域をカバーするように広帯域アンテナ4の共振周波数を約650MHzとしている。ここで、基板40においては基板40の比誘電率εrの影響を受けて波長は短縮される。例えば、基板40を比誘電率εrが約3のPET製とすると、基板40の波長短縮率は約57.8%となる。すると、650MHzの1/2λは自由空間では約231mmとされるが、比誘電率εrが約3の基板40上においては波長短縮されて約133.5mmとなる。従って、基板40上に形成される広帯域アンテナ4の寸法L1を約135mmとすると、広帯域アンテナ4の共振周波数は約650MHzとなる。ここで、広帯域アンテナ4の基板20の比誘電率εrが約3とされた際に設計周波数帯域を650MHz~2750MHzとした時の概略寸法の一例を挙げると、寸法L1が約135mmで、幅W1が約50mmとされ、基板20の厚さを約100μmとすることができる。このように、第4実施例の広帯域アンテナ4は小型となる。なお、基板40の長辺の寸法はL1とほぼ同様の寸法となり、基板40の短辺の寸法はW1とほぼ同様の寸法となる。そして、突部41b、突部42bの長さL2は約12mm~約19.5mmとされるのが好適とされ、突部41b、突部42bの幅は例えば約2mmとされる。
【0031】
以上説明したように、本発明の第4実施例の広帯域アンテナ4は、第1アンテナ素子41と第2アンテナ素子42とが面状の形状にメッシュ状の導電体で形成されていると共に、2つの突部41bが第1アンテナ素子41に形成されて、2つの突部42bが第2アンテナ素子42に形成されていることから、広帯域性が改善された広帯域アンテナ4として機能する。また、第4実施例の広帯域アンテナ4では、基板40が透明の基板とされていると共に、第1アンテナ素子41と第2アンテナ素子42とが視覚的に透明とされ可視光を透過するメッシュ状とされていることから、第4実施例の広帯域アンテナ4は透明化される。これにより、可視光を利用するデバイス、例えば、太陽光パネルの表面に発電機能の性能を維持した状態で外観をそこねることなく第4実施例の広帯域アンテナ4を設置することができるようになる。さらに、基板40を可撓性の樹脂からなるフィルムなどの基板として、基板40の一面に第1アンテナ素子41と第2アンテナ素子42とを形成することにより、屈曲性を有することになるから基板40の他面を利用して被取付面の曲面に設置することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の広帯域アンテナは、広帯域の周波数特性を有していることから、周波数の拡張が進んでいるIoT機器に適用することが好適とされる。その場合、IoT機器では商用電源が利用できない環境に設置される場合があり、IoT機器に内蔵される通信モジュールには、二次電池から電源が供給される場合が多くされている。そして、二次電池を充電するために太陽光パネルを備えさせることが多い。この場合、太陽光パネルはIoT機器の外面に設置されるのが通常であるが、通信モジュールに必要とされるアンテナ例えば広帯域アンテナをIoT機器の内部に設置すると、太陽光パネルの影響を受けて広帯域アンテナが所要の性能を発揮できないようになる。すなわち、広帯域アンテナをIoT機器の外面に設置された太陽光パネルの上に設置することが望まれるが、太陽光パネルの上に設置すると広帯域アンテナにより太陽光が遮られて太陽光パネルは性能通りの発電をすることが困難になる。そこで、本発明の広帯域アンテナにおいて透明化された本発明の広帯域アンテナを太陽光パネルの上に設置するようにすれば、太陽光パネルには太陽光が十分照射されることから、太陽光パネルは性能通りの発電を行うことができるようになる。そして、透明化された本発明の広帯域アンテナは視覚的に透明とされ可視光を透過するので、IoT機器の意匠を損なうことなくIoT機器の外面に設置することができる。なお、IoT機器への取付面である外面が曲面とされていても、本発明にかかる可撓性で絶縁性の透明樹脂からなるフィルムから構成された基板を備える広帯域アンテナを用いることにより、曲面であっても取り付けることができる。この場合、本発明の広帯域アンテナにおいては、基板の一面のみに広帯域アンテナを構成する第1アンテナ素子、第2アンテナ素子等のパターンが形成されていることから、基板の他面を粘着層としてIoT機器の取付面に貼着することができる。なお、本発明の広帯域アンテナは、IoT機器に限らず通信モジュールを内蔵するデバイスに適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 広帯域アンテナ、2 広帯域アンテナ、3 広帯域アンテナ、4 広帯域アンテナ、10 フィルム基板、11 第1アンテナ素子、11a,12a 給電点、12 第2アンテナ素子、13 給電ケーブル、13a 中心導体、13b 外導体、20 基板、21 第1アンテナ素子、21a,22a 給電点、21b,22b 突部、22 第2アンテナ素子、23 給電ケーブル、23a 中心導体、23b 外導体、30 基板、31 第1アンテナ素子、31a,32a 給電点、31b,32b 突部、32 第2アンテナ素子、33 給電ケーブル、33a 中心導体、33b 外導体、40 基板、41 第1アンテナ素子、41a,42a 給電点、41b,42b 突部、42 第2アンテナ素子、43 給電ケーブル、43a 中心導体、43b 外導体、100 平面アンテナ、110 絶縁基板、111 第1エレメント、111a 第1ループエレメント、111b 第1T型エレメント、112 第2エレメント、112a 第2ループエレメント、112b 第2T型エレメント、113 無給電素子、114a,114b 給電部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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