(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024960
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】発泡性ポリプロピレン組成物および射出発泡成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127975
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】597021842
【氏名又は名称】サンアロマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】陣内 和哉
(72)【発明者】
【氏名】片桐 章公
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA24
4F074AC32
4F074AG01
4F074BA03
4F074CA23
4F074CA26
4F074CC22X
4F074CC62Y
4F074DA02
4F074DA35
(57)【要約】
【課題】優れた外観を有するポリプロピレン発泡体を与える発泡性ポリプロピレン組成物を提供する。
【解決手段】(A1):以下からなる組成物を50~90重量%、
(A1-1)PP 70~85重量%、
(A1-2)25重量%以上かつ35重量%未満のエチレン由来単位を含むC3/C2コポリマー15~30重量%;
(A2):以下からなる組成物を1~41重量%、
(A2-1)PP 50~80重量%
(A2-2)25~50重量%のエチレン由来単位を含むC3/C2コポリマー20~50重量%;
(B):エラストマーを9以上20重量%未満;
(C):フィラーを0~15重量%;
(F):発泡剤を含み、
(A1)のXSIVが1.5~3.0dl/g
(A2)のXSIVが6.0dl/g超
(B)のMFR(190℃)が15g/10分超
エラストマー総重量が31~35重量%
発泡剤を含まない組成物のMFR(230℃)が40~80g/10分である組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A1)~(C)の総重量中、
成分(A1)として、(A1-1)および(A1-2)からなるポリプロピレン組成物を、50~90重量%、
(A1-1)ポリプロピレン70~85重量%、
(A1-2)25重量%以上かつ35重量%未満のエチレン由来単位を含むプロピレン-エチレンコポリマー15~30重量%;
成分(A2)として、(A2-1)および(A2-2)からなるポリプロピレン組成物を1~41重量%、
(A2-1)ポリプロピレン50~80重量%
(A2-2)25~50重量%のエチレン由来単位を含むプロピレン-エチレンコポリマー20~50重量%;
成分(B)としてエラストマーを9以上かつ20重量%未満;ならびに
成分(C)としてフィラーを0~15重量%含み、さらに
成分(F)として発泡剤、
を含む発泡性組成物であって、
前記成分(A1)のキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)が1.5~3.0dl/gであり、
前記成分(A2)のキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)が6.0dl/g超であり、
前記成分(B)のMFR(温度190℃、荷重2.16kg)が15g/10分超であり、
成分(A1)~(C)の総重量中、成分(A1-2)と(A2-2)と(B)の重量の総和で定義されるエラストマー総重量が31~35重量%であり、
前記成分(A1)~(C)からなる発泡剤を含まない組成物のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)が40~80g/10分である、発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項2】
前記成分(A1)のキシレン不溶分(XI)のMw/Mnが、7未満である、請求項1に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項3】
前記成分(A1)が、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン、およびフタレート系化合物から選択される電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒;(b)有機アルミニウム化合物;ならびに(c)外部電子供与体化合物、を含む触媒を用いて、プロピレンとエチレンとを重合させて得たポリプロピレン組成物である、請求項1または2に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項4】
前記成分(A1)のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)が50~120g/10分である、請求項1または2に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項5】
前記成分(A1-1)のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)が50~500g/10分である、請求項1または2に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項6】
成分(A1)のキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)が1.9~2.5dl/gである、請求項1または2に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項7】
前記成分(A1)~(C)からなる発泡剤を含まない組成物のダイスウェル(温度210℃、剪断速度9728s-1)が1.5以上である、請求項1または2に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項8】
前記成分(B)が、エチレン-1-ブテン共重合体(EBR)、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-オクテン共重合体(EOR)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1または2に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項9】
請求項1または2に記載の発泡性ポリプロピレン組成物から射出発泡成形により形成される射出発泡成形体。
【請求項10】
自動車内装部品用成形体である、請求項9に記載の射出発泡成形体。
【請求項11】
前記自動車内装部品用成形体が、ドアトリム、グローブボックス、コラムカバー、インスツルメントパネル、パッケージトレイ、リアトレイ、ピラーガーニッシュ、またはコンソールボックスである、請求項10に記載の射出発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡性ポリプロピレン組成物およびこれから形成される射出発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン射出発泡成形体は優れた物理的特性を有することから自動車部品等の用途に幅広く使用されている。しかし、近年、省エネルギー化の観点からポリプロピレン射出発泡成形体にはさらなる軽量化が望まれている。例えば特許文献1および2には、優れた流動性および耐衝撃性を備える発泡体を与える発泡性ポリプロピレン組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-41038号公報
【特許文献2】国際公開第2021/015191号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリプロピレン発泡体には優れた外観が求められる。前記特許文献1に開示されたポリプロピレン発泡体は、スワルマークの低減が十分でなく、前記特許文献2に開示されたポリプロピレン発泡体は、スワルマークが低減された優れた外観を有するが、成形条件によっては、特にアバタおよび破泡の点においてさらなる改善の余地があった。かかる事情に鑑み、本発明は、優れた外観を有するポリプロピレン発泡体を与える発泡性ポリプロピレン組成物を提供することを課題とする。
【0005】
前記課題は以下の本発明によって解決される。
態様1
成分(A1)~(C)の総重量中、
成分(A1)として、(A1-1)および(A1-2)からなるポリプロピレン組成物を、50~90重量%、
(A1-1)ポリプロピレン70~85重量%、
(A1-2)25重量%以上かつ35重量%未満のエチレン由来単位を含むプロピレン-エチレンコポリマー15~30重量%;
成分(A2)として、(A2-1)および(A2-2)からなるポリプロピレン組成物を1~41重量%、
(A2-1)ポリプロピレン50~80重量%
(A2-2)25~50重量%のエチレン由来単位を含むプロピレン-エチレンコポリマー20~50重量%;
成分(B)としてエラストマーを9以上かつ20重量%未満;ならびに
成分(C)としてフィラーを0~15重量%含み、さらに
成分(F)として発泡剤を含む発泡性組成物であって、
前記成分(A1)のキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)が1.5~3.0dl/gであり、
前記成分(A2)のキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)が6.0dl/g超であり、
前記成分(B)のMFR(温度190℃、荷重2.16kg)が15g/10分超であり、
成分(A1)~(C)の総重量中、成分(A1-2)と(A2-2)と(B)の重量の総和で定義されるエラストマー総重量が31~35重量%であり、
前記成分(A1)~(C)からなる発泡剤を含まない組成物のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)が40~80g/10分である、発泡性ポリプロピレン組成物。
態様2
前記成分(A1)のキシレン不溶分(XI)のMw/Mnが、7未満である、態様1に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
態様3
前記成分(A1)が、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン、およびフタレート系化合物から選択される電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒;(b)有機アルミニウム化合物;ならびに(c)外部電子供与体化合物、を含む触媒を用いて、プロピレンとエチレンとを重合させて得たポリプロピレン組成物である、態様1または2に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
態様4
前記成分(A1)のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)が50~120g/10分である、態様1~3のいずれかに記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
態様5
前記成分(A1-1)のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)が50~500g/10分である、態様1~4のいずれかに記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
態様6
成分(A1)のキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)が1.9~2.5dl/gである、態様1~5のいずれかに記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
態様7
前記成分(A1)~(C)からなる発泡剤を含まない組成物のダイスウェル(温度210℃、剪断速度9728s-1)が1.5以上である、態様1~6のいずれかに記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
態様8
前記成分(B)が、エチレン-1-ブテン共重合体(EBR)、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-オクテン共重合体(EOR)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、態様1~7のいずれかに記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
態様9
態様1~8のいずれかに記載の発泡性ポリプロピレン組成物から射出発泡成形により形成される射出発泡成形体。
態様10
自動車内装部品用成形体である、態様9に記載の射出発泡成形体。
態様11
前記自動車内装部品用成形体が、ドアトリム、グローブボックス、コラムカバー、インスツルメントパネル、パッケージトレイ、リアトレイ、ピラーガーニッシュ、またはコンソールボックスである、態様10に記載の射出発泡成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、優れた外観を有するポリプロピレン発泡体を与える発泡性ポリプロピレン組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」はその端値であるXおよびYを含む。
【0009】
1.発泡性ポリプロピレン組成物
本発明の発泡性ポリプロピレン組成物は、必須成分として以下を含む。
成分(A1):ポリプロピレン組成物
成分(A2):高いXSIVを有するポリプロピレン組成物
成分(B):エラストマー
成分(F):発泡剤
【0010】
(1)成分(A1):ポリプロピレン組成物
成分(A1)としてのポリプロピレン組成物は、(A1-1)ポリプロピレンおよび(A1-2)25重量%以上かつ35重量%未満のエチレン由来単位を含むプロピレン-エチレンコポリマーからなる。成分(A1-1)と(A1-2)の重量比は70~85:15~30である。成分(A1-2)の量がこの上限値を超えると射出発泡成形体の剛性が低下し、下限値未満であると、耐衝撃性を維持するために成分(B)を増量する必要があり、経済性が低下する。これらの観点から、前記比率は好ましくは、73~80:20~27である。
【0011】
成分(A1-1)のポリプロピレンはホモポリマーである。ただし、リサイクルモノマーの混入等に由来する0.5重量%以下のコモノマーが含まれていてもよい。成分(A1-1)のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は好ましくは50~500g/10分である。当該MFRが上限値を超えると発泡性ポリプロピレン組成物の製造が困難となり、下限値未満であると発泡性ポリプロピレン組成物の流動性が不足する。かかる観点から、当該MFRの下限値は、好ましくは100g/10分以上、より好ましくは200g/10分以上である。当該MFRの上限値は、好ましくは400g/10分以下である。
【0012】
成分(A1-2)はプロピレン-エチレンコポリマーであり、25重量%以上かつ35重量%未満のエチレン由来単位を含む。エチレン由来単位の含有量が下限値未満または上限値以上であると射出発泡成形体の耐衝撃性が低下する。これらの観点からエチレン由来単位の含有量は27~33重量%であることが好ましい。
【0013】
成分(A1)のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は好ましくは50~120g/10分であり、より好ましくは70~100g/10分である。MFRが上限値を超えると、発泡性ポリプロピレン組成物の製造が困難になる場合があり、さらには射出発泡成形体の耐衝撃性が低下しうる。また、MFRが下限値未満であると発泡性ポリプロピレン組成物の流動性が低下しうる。
【0014】
成分(A1)のキシレン可溶分(XS)の極限粘度(XSIV)は、成分(A1)における結晶性を持たない成分の分子量の指標である。本発明においてXSIVは25℃のキシレンに可溶な成分を得て、当該成分の極限粘度を定法にて測定することで求められる。例えば、当該成分をテトラヒドロナフタレンに溶解し、135℃で測定できる。測定には、細管式の粘度計を用いることができる。XSは公知の方法で取得できるが、本発明においては次のようにしてXSを取得することが好ましい。2.5gのポリマーを、o-キシレン(溶媒)を250mL入れたフラスコに入れ、還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間、攪拌して加熱する。ポリマーを完全に溶解させた後、25℃で1時間、冷却を行い、溶液を、濾紙を用いて濾過する。濾液を、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固して、XSを得る。
【0015】
成分(A1)のXSIVは1.5~3.0dl/gであり、好ましくは1.9~2.5dl/g、より好ましくは2.1~2.5dl/g、さらに好ましくは2.2~2.5dl/g、特に好ましくは2.3~2.5dl/gである。XSIVが上限値を超えるとブツまたはゲル等が発生し射出発泡成形体の外観が不良となることがある。またXSIVが下限値未満であると射出発泡成形体の耐衝撃性が低下するとともに外観が悪化(アバタの増加とセル密度の低下)することがある。
【0016】
成分(A1)のキシレン不溶分(XI)のMw/Mnは、好ましくは7未満であり、より好ましくは6.5未満である。当該Mw/Mnが上限値を超えると、射出発泡成形体の耐衝撃性が低下し、かつ外観が低下(アバタの増加とセル密度の低下)しうる。当該Mw/Mnの下限値は限定されないが、通常は4以上である。XIは公知の方法で取得できるが、本発明においては次のようにしてXIを取得することが好ましい。前記XSの取得方法と同じ方法でポリマー溶液を得て、これを、濾紙を用いて濾過する。メタノールで濾紙の残留物を洗浄して残留したo-キシレンを除去し、真空下80℃において乾燥してXIを得る。
【0017】
XIのMw/Mnは公知の方法に従って求められるが、好ましくは以下のようにして測定される。
1)装置としてGPC(例えば、ポリマーラボラトリーズ社製PL GPC220)を使用する。
2)移動相として酸化防止剤を含む1,2,4-トリクロロベンゼンを用いる。
3)カラムとして、例えば昭和電工社製UT-G(1本)、UT-807(1本)、UT-806M(2本)を直列に接続したものを使用する。
4)検出器として示差屈折率計を使用する。
5)試料溶液の溶媒としては移動相と同じものを使用する。試料濃度は1mg/mLである。試料溶液の調製方法は限定されないが、例えば150℃の温度で2時間撹拌または振とうしながら溶解することによって調製できる。
6)以下の条件で測定する。
試料溶液の注入量:500μL
流速:1.0mL/分
温度:145℃
データ取り込み間隔:1秒
7)カラムの較正は、分子量580~745万のポリスチレン標準試料(Shodex STANDARD、昭和電工社製)を使用し、三次式近似で行うことができる。Mark-Houwink-Sakuradaの係数は、ポリスチレン標準試料に関しては、K=1.21×10-4、α=0.707、ポリプロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、および他のポリプロピレン系重合体に関しては、K=1.37×10-4、α=0.75とする。
【0018】
成分(A1)の量は、前記成分(A1)~(C)の総重量に対して50~90重量%である。当該量が下限値未満であると発泡性ポリプロピレン組成物の流動性が低下し、かつ射出発泡成形体の剛性が低下する。また、当該量が上限値を超えると射出発泡成形体の耐衝撃性が低下する。これらの観点から、成分(A1)の量は好ましくは60~85重量%である。本発明において、前記成分(A1)~(C)の総重量とは、成分(A1)、(A2)、(B)、および(C)の総重量である。
【0019】
成分(A1)は、成分(A1-1)および成分(A1-2)の原料モノマーを、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン、およびフタレート系化合物から選択される内部電子供与体を含有する固体触媒、(b)有機アルミニウム化合物、ならびに(c)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いて重合する工程を含む方法で製造される。フタレート系化合物は比較的狭い分子量分布を与える。狭い分子量分布を有する成分(A1)を含む発泡性ポリプロピレン組成物は、靭性に優れ、破泡し難くなるため、射出発泡成形体の外観を向上(アバタの低減とセル密度の増加)させる。以下、触媒について説明する。
【0020】
1)固体触媒(成分a)
成分(a)は、公知の方法、例えばマグネシウム化合物と、チタン化合物と、フタレート系化合物から選択される内部電子供与体化合物とを相互接触させることにより調製できる。フタレート系化合物としては、公知のものを使用できるが、例えば、モノエチルフタレート、ジメチルフタレート、メチルエチルフタレート、モノイソブチルフタレート、モノノルマルブチルフタレート、ジエチルフタレート、エチルイソブチルフタレート、エチルノルマルブチルフタレート、ジn-プロピルフタレート、ジイソプロピルフタレート、ジn-ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジn-ヘプチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジn-オクチルフタレート、ジネオペンチルフタレート、ジデシルフタレート、ベンジルブチルフタレート、ジフェニルフタレート等が挙げられる。中でもジイソブチルフタレートが特に好ましい。
【0021】
2)有機アルミニウム化合物(成分b)
成分(b)の有機アルミニウム化合物としては以下が挙げられる。
トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;
トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム:
ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
【0022】
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジプロピルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリドなどのような部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドのような部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム。
【0023】
3)電子供与体化合物(成分c)
成分(c)の電子供与体化合物は、一般に「外部電子供与体」と称される。このような電子供与体化合物としては有機ケイ素化合物が好ましい。好ましい有機ケイ素化合物として以下が挙げられる。
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo-トリルジメトキシシラン、ビスm-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、iso-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2-ノルボルナントリメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサン、メチル(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロペンチル-t-ブトキシジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、t-ブチルプロピルジメトキシシラン、t-ブチル-t-ブトキシジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン-2-イル)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジシクロペンチル-ビス(エチルアミノ)シラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルセク-ブチルジメトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリン2-イル)ジメトキシシラン、トリ(イソプロペニロキシ)フェニルシラン、i-ブチルi-プロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、p-トリルメチルジメトキシシラン。
【0024】
中でも、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、t-ブチルプロピルジメトキシシラン、t-ブチルt-ブトキシジメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、i-ブチルセク-ブチルジメトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリン2-イル)ジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン-2-イル)ジメトキシシラン、トリ(イソプロペニロキシ)フェニルシラン、テキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、i-ブチルi-プロピルジメトキシシラン、シクロペンチルt-ブトキシジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、ビスp-トリルジメトキシシラン、p-トリルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(3、3、3-トリフルオロ-n-プロピル)ジメトキシシラン、ケイ酸エチルなどが好ましい。
【0025】
4)重合
上記のとおりに調製した触媒に原料モノマーを接触させて重合する。この際、前記触媒を用いて予重合を行ってもよい。予重合とは、その後の原料モノマーの本重合の足がかりとなるポリマー鎖を固体触媒成分に形成させる工程である。予重合は公知の方法で行うことができる。予重合は、通常は40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下で行われる。次いで、予重合した触媒(予重合触媒)を重合反応系内に導入して、原料モノマーの本重合を行う。重合は、液相中、気相中または液-気相中で実施してよい。重合温度は0~90℃が好ましく、20~80℃がより好ましい。重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは0.8~6.0MPaの範囲であり、気相中で行われる場合には好ましくは0.5~3.0MPaの範囲である。本発明においては連鎖移動剤(たとえば、水素またはZnEt2)などの当該分野で公知の慣用の分子量調整剤を微量使用することができる。
【0026】
成分(A1)または成分(A2)の重合には公知の方法を用いることができる。例えば、成分(A1-1)と成分(A1-2)の原料モノマー、あるいは成分(A2-1)と成分(A2-2)の原料モノマーを、2つ以上の反応器を用いて重合することが好ましい。また、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いてもよい。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接続されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法は、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体または液体混合物を下降管中に導入する。上記の重合方法として、例えば、特表2002-520426号公報に記載された方法を適用できる。
【0027】
(2)成分(A2):ポリプロピレン組成物
成分(A2)としてのポリプロピレン組成物は、(A2-1)ホモポリマーであるポリプロピレン(ただし、リサイクルモノマーの混入等に由来する0.5重量%以下のコモノマーが含まれていてもよい)と(A2-2)25~50重量%のエチレン由来単位を含むプロピレン-エチレンコポリマーからなる。両者の重量比は50~80:20~50であるが、好ましくは55~75:25~45である。(A2-2)のエチレン由来単位は、好ましくは25~45重量%、より好ましくは27~35重量%である。成分(A2)は成分(A1)と成分(B)の双方に親和性があり、その結果、組成物における剛性と耐衝撃性のバランスが保たれると考えられる。
【0028】
成分(A2)のキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)は6.0dl/g超であり、成分(A1)のXSIVよりも高い。キシレン可溶分は25℃のキシレンに可溶な成分であり、非晶性成分に相当する。すなわち成分(A2)は非晶性の高分子量成分を含むので、成形時の破泡を抑制することで射出発泡成形体の外観不良を低減すると考えられる。具体的に成分(A2)は、射出発泡成形体表面に生じる筋状あるいは渦巻き状の外観不良であるスワルマークを低減させることができる。また、アバタも低減しうる。一方、XSIVが過度に大きいと発泡性ポリプロピレン組成物の流動性が低下する。これらの観点から、XSIVは好ましくは6.5~8.0dl/gである。
【0029】
成分(A2)のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は好ましくは0.1~20g/10分であり、より好ましくは5~15g/10分である。MFRが上限値を超えると成分(A2)の製造が困難になる場合があり、かつ発泡性ポリプロピレン組成物の発泡特性が低下することがある。また、MFRが下限値未満であると成分(A2)の製造が困難になる場合があり、かつ発泡性ポリプロピレン組成物の流動性が低下することがある。
【0030】
成分(A2)の量は、前記成分(A1)~(C)の総重量に対して1~41重量%である。当該量が下限値未満であると射出発泡成形体の表面にスワルマークが発生しやすく外観が低下する。また、アバタも発生することがある。当該量が上限値を超えると経済性が低下する。これらの観点から、成分(A2)の量は好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~8重量%である。
【0031】
(3)成分(B):エラストマー
エラストマーとは弾性を有するポリマーである。本発明で用いるエラストマーは前記成分(A1-2)および成分(A2-2)のプロピレン-エチレンコポリマーとは異なる。成分(B)の量は、前記成分(A1)~(C)の総重量に対して9重量%以上かつ20重量%未満である。成分(B)は射出発泡成形体の耐衝撃性、適量を含む場合は射出発泡成形体の外観および耐傷付性を向上させる。一方、成分(B)の量が過剰であると射出発泡成形体の剛性が低下するとともに外観が悪化(スワルマークおよびアバタが増加)し、さらには経済性も低下する。これらの観点から、成分(B)量は、好ましくは10~18重量%である。
【0032】
エラストマーの温度190℃、荷重2.16kgでのMFR(以下この条件で測定したMFRを「MFR190℃」ともいう)は15/10分超である。MFR190℃が下限値以下であると発泡性ポリプロピレン組成物の流動性が低下するとともに、スワルマークが発生し易くなる。また、アバタも発生することがある。これらの観点から、MFR190℃は、好ましくは25~40g/10分である。MFR190℃が前記上限値を超えると、成分(B)の製造が困難になり、かつ射出発泡成形体の耐衝撃性が低下する。
【0033】
エラストマーとしてエチレンとα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。α-オレフィンとしては、炭素数3~12のα-オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が好ましい。すなわち、成分(B)は、エチレン-1-ブテン共重合体(EBR)、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-オクテン共重合体(EOR)、およびこれらの組合せからなる群から選択されることが好ましい。
【0034】
エラストマーは、成分(A1-1)および成分(A1-2)のプロピレン-エチレンコポリマーよりも低い密度を有することが好ましい。例えば、エラストマーの密度は限定されないが0.850~0.890g/cm3であることが好ましく、0.860~0.880g/cm3であることがより好ましい。このようなエラストマーは、例えば特開2015-113363号に記載のとおりメタロセンまたはハーフメタロセン等の均一系触媒を用いてモノマーを重合することにより調製できる。
【0035】
(4)成分(C):フィラー
フィラーとしては通常当該分野で使用されるものを用いてよいが、例えば、以下のものが挙げられる。
タルク、カオリナイト、クレー、バイロフィライト、セリナイト、ウォラストナイト、マイカ等の天然珪酸または珪酸塩;含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸等の合成珪酸または珪酸塩;沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の酸化物。
【0036】
また、フィラーとしては形状の観点から、例えば、以下のものが挙げられる。
含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸等の合成珪酸または珪酸塩等の粉末状充填材;タルク、カオリナイト、クレー、マイカ等の板状充填材;塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セピオライト、PMF(Processed Mineral Filler)、ゾノトライト、チタン酸カリウム、およびエレスタダイト等のウィスカー状充填材;ガラスバルン、フライアッシュバルン等のバルン状充填材;ガラスファイバー等の繊維状充填材。
【0037】
フィラーとして1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのフィラーの分散性を向上させるため、必要に応じてフィラーに表面処理を行ってもよい。本発明に用いるフィラーは限定されないが、剛性および耐衝撃性を高める観点から、板状無機充填材が好ましい。板状無機充填材としてはタルク、カオリナイト、クレー、マイカ等の公知のものを使用できるが、ポリプロピレン系樹脂との親和性や原料としての調達容易性や経済性等を考慮すると、好ましくはタルク、マイカであり、さらに好ましくはタルクである。板状無機充填材の体積平均粒子径は、好ましくは1~10μm、より好ましくは2~7μmである。体積平均粒子径が前記下限値未満の場合、射出発泡成形体の剛性が低くなることがある。体積平均粒子径が前記上限値を超える場合は延伸時に破断が生じやすくなるのでの発泡性ポリプロピレン組成物の製造が困難となる。前記体積平均粒子径は、レーザ回折法(JIS R1629に基づく)によって体積基準の積算分率における50%径として測定できる。
【0038】
また、フィラーとして、タルク-炭酸カルシウム複合フィラーを用いることもできるが、経済性の観点からは、タルクの方が好ましい。
【0039】
成分(C)の量は、前記成分(A1)~(C)の総重量に対して0~15重量%である。成分(C)が存在すると、射出発泡成形体の剛性が向上するが、当該量が過多であると射出発泡成形体の密度が増加し、軽量化が困難となる。これらの観点から、成分(C)の有無およびその量は適宜調整されるが、成分(C)を含む場合、その量は前記成分(A1)~(C)の総重量に対して好ましくは1~10重量%である。
【0040】
(5)成分(D):炭酸リチウム
発泡性ポリプロピレン組成物は、炭酸リチウムを含んでいてもよい。炭酸リチウムは、均一な発泡を達成するために用いられる。レーザ回折・散乱法によって測定される炭酸リチウムの平均粒径は1~10μmが好ましく、2~8μmがより好ましい。成分(C)に含まれる板状フィラーであるタルクとは形状が異なり、かつ炭酸カルシウムとは粒径が異なる炭酸リチウムが組成物中に均一に分散されることで、発泡時に気泡サイズが揃い易く、結果としてより均一な発泡が達成されると考えられる。成分(D)の量は、前記成分(A1)~(C)の総重量100重量部に対して、0.05~0.5重量部である。当該量が下限値未満であると前記効果を奏することができない。また、当該量が上限値を超えても効果は頭打ちとなり、経済性が低下する。これらの観点から、成分(D)の量は好ましくは0.1~0.4重量部である。
【0041】
(6)成分(F):発泡剤
発泡剤としては分解型発泡剤、溶剤型発泡剤のいずれも使用できる。分解型発泡剤とは射出成形機のシリンダ温度条件下で分解して炭酸ガス、窒素ガス等の気体を発生する化合物である。分解型発泡剤としては、無機系、有機系のいずれも使用できる。
【0042】
無機系の分解型発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどが挙げられる。有機系の分解型発泡剤としては、N,N’-ジニトロソテレフタルアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のN-ニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルフェニルヒドラジド)、ジフェニルスルフォン-3,3’-ジスルフォニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4’-ジフェニルジスルフォニルアジド、p-トルエンスルフォニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。
【0043】
これらの発泡剤の中でも、環境への影響が少なく、安全で、さらには発泡セルが安定化するという観点から、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩が好ましく、その際、助剤としてクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の有機カルボン酸、またはクエン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩を併用することが好ましい。炭酸水素塩と助剤との配合比は、炭酸水素塩が10~70重量%、助剤が30~90重量%であることが好ましい。
【0044】
溶剤型発泡剤は、射出成形機のシリンダ部分から発泡剤を含まない組成物に注入して、射出成形金型中で蒸発して発泡剤として機能する物質である。プロパン、ブタン、ネオペンタン、ヘプタン、イソヘキサン、ヘキサン、イソヘプタン、ヘプタン等の低沸点脂肪族炭化水素や、フロンガスで代表される低沸点のフッ素含有炭化水素等が使用できる。
【0045】
本発明の発泡性ポリプロピレン組成物に用いる発泡剤は、ポリオレフィンをキャリアとする発泡剤マスターバッチの形態で添加することができる。当該ポリオレフィンとしてはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等が挙げられる。当該マスターバッチに含まれるキャリアは後述する他の成分に該当する。発泡剤マスターバッチ中に含まれる分解型発泡剤の含有量は、通常5~80重量%、好ましくは10~70重量%であり、市販品をそのまま用いることができる。発泡剤の添加量は、前記成分(A1)~(C)の総重量100重量部に対する量で定義される。その下限値は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上である。またその上限値は、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、さらに好ましくは3重量部以下である。さらに、この範囲内において発生ガス量および発泡倍率等を考慮して最適量が選択される。
【0046】
(7)成分(E):滑剤
発泡性ポリプロピレン組成物は、成分(E)として滑剤を含むことが好ましい。滑剤とは摩擦軽減のために用いられる添加剤である。本発明において滑剤は射出発泡成形体の耐傷付性を向上させる。滑剤としては公知のものを使用できるが、入手容易性等の観点から脂肪酸アミドが好ましく、高級脂肪酸アミドがより好ましい。脂肪酸アミドを構成する脂肪酸は飽和脂肪酸でもよいし不飽和脂肪酸でもよい。高級脂肪酸基が有する炭素数は、10以上であり、12以上であることが好ましい。具体的な高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘミン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド;エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ブラシジン酸アミド、エライジン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等のビス脂肪酸アミド等が挙げられる。これらの中でもエルカ酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドが好ましい。
【0047】
滑剤(成分(E))の量は、前記成分(A1)~(C)の総重量100重量部に対して、好ましくは0.05~0.5重量部、より好ましくは0.1~0.4重量部である。当該量が下限値未満であると発泡性ポリプロピレン組成物の耐傷付性の向上効果が十分でない場合がある。また、当該量が上限値を超えても効果は頭打ちとなり経済性が低下しうる。
【0048】
(8)エラストマー総重量
エラストマー総重量とは、成分(A1-2)と成分(A2-2)と成分(B)の重量の総和である。成分(A1)~(C)の総重量中、エラストマー総重量は31~35重量%である。エラストマー総重量が下限値未満であると射出発泡成形体の耐衝撃性が低下する。また、スワルマークが発生することがある。エラストマー総重量が上限値を超えると射出発泡成形体の剛性が低下する。かかる観点から、エラストマー総重量は好ましくは32~34重量%である。
【0049】
(9)他の成分
発泡性ポリプロピレン組成物には、酸化防止剤、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、結晶核剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、架橋剤、過酸化物、油展、および他の有機および無機顔料などの当該分野で通常用いられる慣用の添加剤を添加してもよい。各添加剤の添加量は公知の量としてよい。
【0050】
発泡性ポリプロピレン組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記成分(A1)~(B)以外の樹脂またはエラストマーを含有してもよい。発泡性ポリプロピレン組成物が含有してもよい樹脂またはエラストマーは1種のみでもよいし、2種以上でもよい。含有量は公知の量としてよい。
【0051】
(10)特性
1)MFR
発泡性ポリプロピレン組成物のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は、発泡剤を含まない場合(以下「非発泡性ポリプロピレン組成物」ともいう)に40~80g/10分である。MFRが上限値を超えると射出発泡成形体の耐衝撃性が低下し、下限値未満であると発泡性ポリプロピレン組成物の流動性が低下する。これらの観点から、その上限値は、好ましくは75g/10分以下、より好ましくは68g/10分以下である。またその下限値は、好ましくは50g/10分以上、より好ましくは54g/10分以上である。なお、本明細書において、測定条件を示さず単に「MFR」と記載された場合は、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定したMFRのことをいう。
【0052】
2)密度
非発泡性ポリプロピレン組成物の密度は好ましくは1.00g/cm3以下であり、より好ましくは0.98g/cm3以下である。
【0053】
3)剛性
非発泡性ポリプロピレン組成物の曲げ弾性率は23℃において、好ましくは900MPa以上、より好ましくは1000MPa以上である。
【0054】
4)耐衝撃性
非発泡性ポリプロピレン組成物のシャルピー衝撃強さは23℃において、好ましくは10kJ/m2以上、より好ましくは20kJ/m2以上、さらに好ましくは25kJ/m2以上である。当該シャルピー衝撃強さは-30℃において、好ましくは2.0kJ/m2以上、より好ましくは2.5kJ/m2以上である。
【0055】
5)ダイスウェル
成分(A1)~(C)からなる発泡剤を含まない組成物のダイスウェル(温度210℃、剪断速度9728s-1)は、好ましくは1.5以上である。ダイスウェルが大きいと成形時に溶融ポリマーが金型に速やかに接触するので外観が良好(スワルマークが減少)となる。かかる観点から、ダイスウェルの下限値は、より好ましくは1.6以上である。ダイスウェルが過度に大きい材料では流動性が不足すると考えられるため、その上限は好ましくは3以下である。
【0056】
ダイスウェルは、キャピラリーレオメーター(例えば、株式会社東洋精機製キャピログラフ1C)を用いて、210℃、9728s
-1で測定される。
図1は当該測定法の概要を示す。キャピラリー1から溶融樹脂2を押出し、溶融樹脂の直径rとキャピラリー径r
0の比R=(r/r
0)からダイスウェルを求めることができる。キャピラリー長さは、10mm、キャピラリー径は0.5mm、流入角は90°であることが好ましい。
【0057】
2.製造方法
分解型発泡剤を用いる場合、本発明の発泡性ポリプロピレン組成物は、成分(F)以外の成分を溶融混練して非発泡性ポリプロピレン組成物を製造し、これと発泡剤(成分(F))をドライブレンドすることにより製造できる。前記ドライブレンドは、射出成形機付帯の押出機中で、成形前に溶融混練してよい。各成分は前述のとおりに準備される。また、発泡剤の添加方法としてポリオレフィンをキャリアとする発泡剤マスターバッチを用いてもよい。
【0058】
溶剤型発泡剤を用いる場合は、前記非発泡性ポリプロピレン組成物を調製し、前述のとおり射出成形機内で溶剤型発泡剤と混合することで発泡性ポリプロピレン組成物を製造できる。
【0059】
3.成形
本発明の発泡性ポリプロピレン組成物を射出発泡させることで射出発泡成形体を製造できる。射出発泡成形工程は、射出工程と発泡工程を備える。射出発泡成形は、キャビティの容積を変化させない方法と変化させる方法に大別できる。前者は、発泡性ポリプロピレン組成物を金型のキャビティへ充填し、ポリマー成分の収縮に伴う圧力低下によって成形体内部で発泡剤を気化させて発泡させる方法である。後者は、発泡性ポリプロピレン組成物をキャビティに充填する途中または充填完了後に、金型をコアバックする、あるいは金型内のスライドコア等を移動させてキャビティの容積を拡大することにより発泡させる方法である。後者の場合、発泡性ポリプロピレン組成物の膨張速度よりもキャビティの容積を速く拡大させることが好ましい。
【0060】
成形温度は一般的には150~350℃、好ましくは170~250℃である。成形温度が350℃を超えると、組成物の劣化および成形不良の原因となり、150℃より低いと充填不足やヒケまたは反りなどの外観不良、成形不良が発生する。金型温度は10~60℃が好ましい。金型温度が60℃を超えると表面仕上げ度が優れ、剛性に優れた射出発泡成形体が得られるものの、成形サイクルが長くなり生産性が低下する。逆に、金型温度が10℃より低いと、ヒケまたは反りや収縮などが顕著になり満足な射出発泡成形体が得られにくくなる。さらには、金型に結露が生じやすくなるために金型腐食を進行させる原因ともなり、冷却のためのエネルギーコストも増大する。
【0061】
射出発泡成形体の発泡倍率は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.8以上である。
【0062】
4.用途
射出発泡成形体は自動車内装部品用成形体として有用である。自動車内装部品用成形体としては、ドアトリム、グローブボックス、コラムカバー、インスツルメントパネル、パッケージトレイ、リアトレイ、ピラーガーニッシュ、またはコンソールボックス等が挙げられる。製品強度を高めるために、前記成形体には非意匠面にリブが形成されていることが好ましい。本発明の発泡性ポリプロピレン組成物はMFRが大きく流動性が高いため、金型のリブ形成用の溝に溶融樹脂を充分に充填することができる。さらには、スワルマーク等の発生を抑制し、外観に優れた射出発泡成形体を与える。特に、本発明の発泡性ポリプロピレン組成物は意匠面の面積が大きいドアトリムへの適用において顕著な効果を奏する。
【実施例0063】
(1)成分(A1)の調製
[HECO1-1の製造]
MgCl2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号公報の実施例5に記載された方法により調製した。次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの重量比が20、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予重合を行った。得られた予重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造し、二段目の重合反応器でプロピレン-エチレンコポリマーを製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調節剤として用いた。
【0064】
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、水素濃度が、それぞれ70℃、3.26モル%、二段目の反応器では、重合温度、水素濃度、C2/(C2+C3)が、それぞれ80℃、1.75モル%、0.22モル比であった。また、コポリマー成分の量(BIPO)が24.9重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られた重合体100重量部に、酸化防止剤として、BASF社製B225を0.1重量部、中和剤として淡南化学株式会社製カルシウムステアレートを0.05重量部配合し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌、混合した後、スクリュー直径15mmの単軸押出機(株式会社テクノベル製)を用いて、シリンダ温度200℃で溶融混練して押出した。ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレットを得た。得られたブロックポリプロピレン(HECO1-1)の230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは75.0g/10分、プロピレン-エチレン共重合体のエチレン由来単位(BIPO C2)は27.5重量%、XSIVは2.4dL/g、キシレン不溶分(XI)の分子量分布(Mw/Mn)は6.1であった。
【0065】
[HECO1-2~HECO1-18の製造]
BIPOとBIPO C2が表1に記載の割合となるように、一段目と二段目の滞留時間分布と二段目の反応器のC2/(C2+C3)を調整するとともに、MFRとXSIVが表1に記載の値となるように、一段目と二段目の水素濃度を調整した以外は、HECO1-1の場合と同様の製造方法にて、HECO1-2~HECO1-18を得た。
【0066】
[HECO1-19の製造]
特開2011-500907号の実施例に記載の調製法に従い、固体触媒成分を調製した。具体的には以下ようにして固体触媒成分を調製した。
窒素でパージした500mLの4つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiCl4を0℃にて導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl2・1.8C2H5OH、および9.1ミリモルのジエチル-2,3-(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。MgCl2・1.8C2H5OHは、米国特許第4,399,054号の実施例2に記載の方法にしたがい、ただし回転数を10000rpmに代えて3000rpmで運転して製造した。内容物の温度を100℃に上昇し、120分間保持した。次に撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。続いて以下の操作を2回繰り返した:250mLの新しいTiCl4を加え、混合物を120℃にて60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。
【0067】
上記固体触媒とトリエチルアルミニウム(TEAL)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が18であり、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、室温において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予重合を行った。得られた予重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造し、二段目の重合反応器でプロピレン-エチレンコポリマーを製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調節剤として用いた。
【0068】
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、水素濃度が、それぞれ70℃、0.99モル%、二段目の反応器では、重合温度、水素濃度、C2/(C2+C3)が、それぞれ80℃、2.45モル%、0.29モル比であった。また、コポリマー成分の量(BIPO)が18.9重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られた重合体から、HECO1-1と同様にしてペレットを得た。得られたブロックポリプロピレン(HECO1-19)の230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは65.0g/10分、プロピレン-エチレン共重合体のエチレン由来単位(BIPO C2)は34.5重量%、XSIVは2.0dL/g、キシレン不溶分(XI)の分子量分布(Mw/Mn)は8.3であった。
【0069】
(2)成分(A2)の調製
[HECO2-1の製造]
HECO1-19の製造に用いた予重合物を1段目の重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を得た。その後、得られた重合体から未反応モノマー類をパージした後、2段目の重合反応器に導入して共重合体(エチレン-プロピレン共重合体)を得た。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調節剤として用いた。重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、水素濃度が、それぞれ70℃、0.81モル%、二段目の反応器では、重合温度、水素濃度、C2/(C2+C3)が、それぞれ80℃、100モルppm、0.24モル比であった。また、BIPOの量が30重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られたポリプロピレン重合体に、酸化防止剤として、BASF社製B225を0.2重量%、中和剤として、淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレートを0.05重量%配合し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌して混合した後、スクリュー直径50mmの単軸押出機(ナカタニ機械株式会社製NVC)で、シリンダ温度230℃で押出し、ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状のHECO2-1を得た。
【0070】
得られたHECO2-1の230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは9.5g/10分、BIPO C2は30.0重量%、XSIVは7.0dL/gであった。
【0071】
(3)成分(B)
以下のエラストマーを準備した。
1)B-1
ダウ・ケミカル社製エンゲージ8407
エチレン-オクテン共重合体(EOR)
MFR190℃=30g/10分、密度=0.870g/cm3
【0072】
2)B-2
三井化学社製タフマーA35070
エチレン-1-ブテン共重合体(EBR)
MFR190℃=35g/10分、密度=0.870g/cm3
【0073】
3)B-3
ダウ・ケミカル社製エンゲージ8200
エチレン-オクテン共重合体(EOR)
MFR190℃=5g/10分、密度=0.870g/cm3
【0074】
4)B-4
ダウ・ケミカル社製エンゲージ7447
エチレン-1-ブテン共重合体(EBR)
MFR190℃=5g/10分、密度=0.865g/cm3
【0075】
(4)成分(C)
以下を用いた。
タルク(ネオライト興産株式会社製UNI05) 平均粒径=5μm
【0076】
[実施例]
(1)非発泡性ポリプロピレン組成物
表1に示す組成で成分(A1)~(C)を配合し、かつ成分(A1)~(C)の総重量100重量部に対し、酸化防止剤としてBASF社製B225を0.1重量部、耐候剤として株式会社ADEKA製アデカスタブLA502XPを0.3重量部、帯電防止剤として花王株式会社製TS-5を0.3重量部、顔料等の分散剤として日油株式会社製マグネシウムステアレートGRを0.2重量部加え、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌、混合した。当該混合物を、株式会社JSW製同方向2軸押出機TEX-30αを用いて、シリンダ温度200℃で溶融混練して押出した。ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、非発泡性ポリプロピレン組成物のペレットを得た。このようにして製造した非発泡性ポリプロピレン組成物について各種物性を評価した。結果を表2に示す。評価方法は後述する。
【0077】
(2)発泡成形体
発泡剤マスターバッチとして、永和化成工業株式会社製ポリスレンEE65C(炭酸水素ナトリウムを含む分解型発泡剤マスターバッチ、キャリア=ポリエチレン)を準備した。上記の非発泡性ポリプロピレン組成物に発泡剤マスターバッチを3重量部加えて射出成形機のシリンダ内で溶融混練した後、下記条件にて射出発泡成形を行って射出発泡成形体を製造した。当該発泡剤マスターバッチは分解型発泡剤とキャリアとしてのポリエチレンを含んでいる。発泡成形体の評価結果を表2に合わせて示す。成分(A1)~(C)の総重量100重量部に対する発泡剤の量は約2重量部であった。
【0078】
[射出発泡成形条件]
射出成形機として、株式会社ニイガタマシンテクノ製射出成形機(MD280S2000、スクリュー径52mmφ、スクリューストローク240mmのシングルフライトスクリュー装備)を用いた。金型として、自動車内装部品を想定して作製された200mm×400mmのキャビティを持ち、片面に強度補強リブ(高さ10mm×厚さ1mm)が形成された平板成形用金型(キャビティ面はシボ、コア面は鏡面)を用いた。条件は以下のとおりの設定とした。
シリンダ温度:210℃
スクリュー回転数:80rpm
射出速度:45mm/秒
射出時間:2.1秒
冷却時間:40秒
金型温度:60℃
金型の初期キャビティ開度:1.5mm
金型のコアバック量:1.2mm
【0079】
[比較例]
表1に示す成分を用いて実施例と同様にして比較用の非発泡性ポリプロピレン組成物および発泡成形体を製造し評価した。結果を表2に示す。
【0080】
成分(A2)を含まない比較例1と2の組成物はスワルマークが増加した。比較例1の組成物においてはアバタも発生した。
成分(B)のMFR(190℃)が15g/10分以下の比較例3~5の組成物はスワルマークが増加した。比較例4と5の組成物においてはアバタも発生した。
エラストマー総重量が31重量%に満たない比較例6~8、および10の組成物は温度23℃のシャルピー衝撃強さが低下し、スワルマークが増加した。成分(A1)のXSIVが好ましい範囲を下回る比較例7と成分(A1)のXIのMw/Mnが好ましい範囲以上の比較例10の組成物においては、さらにセル密度が低下しかつアバタが増加した。
成分(B)の量が20重量%の比較例9の組成物は外観が悪化(スワルマークおよびアバタが増加)した。
【0081】
本発明の非発泡性ポリプロピレン組成物は、優れた剛性と耐衝撃性に加えて、発泡剤を添加して発泡性組成物とした場合に外観に優れるという特性を有する。以上から、本発明の発泡性ポリプロピレン組成物は自動車内装部品等として有用な発泡成形体を与えることが明らかである。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
以下に物性値の測定方法を示す。
[密度]
JIS K 7112に準じて測定した。
[MFR]
JIS K 7210-1に準じ、に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。
[MFR190℃]
JIS K 7210-1に準じ、に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。
【0086】
[曲げ弾性率]
JIS K6921-2に従い、射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT S2000i)を用い、以下の条件で、発泡剤を含まないポリプロピレン組成物からJIS K7139に規定する多目的試験片(タイプA1)を射出成形した。
溶融樹脂温度:200℃
金型温度:40℃
平均射出速度:200mm/秒
保圧時間:40秒
全サイクル時間:60秒
前記試験片を幅10mm、厚さ4mm、長さ80mmに加工して測定用試験片(タイプB2)を得た。株式会社島津製作所製精密万能試験機(オートグラフAG-X 10kN)を用い、温度23℃、相対湿度50%、支点間距離64mm、試験速度2mm/分の条件で、タイプB2測定用試験片の曲げ弾性率を測定した。
【0087】
[シャルピー衝撃強さ]
JIS K6921-2に従い、曲げ弾性率測定で用いた試験片と同一の操作で得たタイプA1試験片を用いて測定した。すなわち、JIS K7111-1に従い、株式会社東洋精機製作所製ノッチングツールA-4を用いて幅10mm、厚み4mm、長さ80mmに加工してから幅方向に2mmのノッチを入れ、形状Aの測定用試験片を得た。当該測定用試験片について、株式会社安田精機製作所製低温槽付き全自動衝撃試験機(No.258-ZA)を用い、温度23℃または-30℃の条件でシャルピー衝撃強さ(エッジワイズ打撃、1eA法)を測定した。
【0088】
[スワルマーク]
発泡成形体について、その表面のスワルマークを目視で観察し、下記2段階で評価した。
A:スワルマークの発生無し、あるいは極めて目立ちにくい。
B:スワルマークが目立つ。
【0089】
[セル密度]
射出発泡成形体を厚さ方向に10cm長さで切断し、断面を観察した。拡大倍率20倍で5cm長さの範囲を撮影し、気泡が疎な位置に鏡面側と平行な5cm長さの直線を引いた。直線上の独立気泡数をカウントした。
A:独立気泡が250個以上。
B:独立気泡が250個未満。
[アバタ]
射出発泡成形体について、その表面のスワルマークを目視で観察し、下記2段階で評価した。
A:アバタの発生無し、あるいは極めて目立ちにくい。
B:アバタが目立つ。
【0090】
[ダイスウェル]
キャピラリーレオメーター(株式会社東洋精機製キャピログラフ1C)を用いてキャピラリー1から溶融樹脂2を押出し、
図1に示すように押出された溶融樹脂の直径rとキャピラリー径r
0の比R=(r/r
0)から求めた。
キャピラリー長さ:10mm、キャピラリー径:0.5mm、流入角:90°
【0091】
[XSIV]
ポリマー2.5gを、o-キシレン(溶媒)を250mL入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間、攪拌し、完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却を行った。得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。濾過後の濾液を100mL採取し、アルミカップ等に移し、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置し、キシレン可溶分(XS)を得た。上記のキシレン可溶分を試料とし、ウベローデ型粘度計(SS-780-H1、柴山科学器械製作所製)を用いて135℃テトラヒドロナフタレン中で極限粘度の測定を行った。
【0092】
[成分(A1)または成分(A2)におけるコポリマー中のエチレン由来単位の含有量(BIPO C2)およびコポリマーの量(BIPO)]
1,2,4-トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、Bruker社製AVANCEIII HD400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、測定温度120℃、フリップ角45度、パルス間隔7秒、試料回転数20Hz、積算回数5000回の条件で13C-NMRのスペクトルを得た。
【0093】
<成分(A1)または成分(A2)の総エチレン量>
上記で得られたスペクトルを用いて、Kakugo,Y.Naito、K.Mizunuma and T.Miyatake、Macromolecules、15、1150-1152(1982)の文献に記載された方法により、ポリプロピレン組成物の総エチレン量(重量%)を求めた。
【0094】
<成分(A1)または成分(A2)のコポリマー中のエチレン由来単位の含有量(BIPO C2)>
上記で得られたTββの積分強度の替わりに下記式で求めた積分強度を使用した以外は、総エチレン量と同様の方法で計算を行い、コポリマー中のエチレン由来単位の含有量(BIPO C2)を求めた。
T’ββ= 0.98×Sαγ×A/(1-0.98×A)
ここで、A= Sαγ/(Sαγ+Sαδ)
【0095】
<成分(A1)または成分(A2)のコポリマーの量(BIPO)>
以下の式で求めた。
コポリマーの量(重量%)=組成物の総エチレン量/(コポリマー中のエチレン由来単位の含有量/100)
【0096】
<キシレン不溶分(XI)の分子量分布(Mw/Mn)>
上記のキシレン可溶分(XS)を得た際と同様に、ポリマー2.5gを、o-キシレン(溶媒)を250mL入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間、攪拌し、完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却を行った。得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。キシレン不溶分(XI)は、濾過した沈殿物をメタノールで残留したキシレンを十分に洗い流した後、真空下80℃において乾燥させて採取した。
上記のXIを試料とし、以下のように、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の測定を行い、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除して分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
装置としてポリマーラボラトリーズ社製PL GPC220を使用し、酸化防止剤を含む1,2,4-トリクロロベンゼンを移動相とし、カラムとして昭和電工社製UT-G(1本)、UT-807(1本)、UT-806M(2本)を直列に接続したものを使用し、検出器として示差屈折率計を使用した。また、試料溶液の溶媒としては移動相と同じものを使用し、1mg/mLの試料濃度で、150℃の温度で振とうさせながら2時間溶解して測定試料を調製した。これにより得た試料溶液500μLをカラムに注入し、流速1.0mL/分、温度145℃、データ取り込み間隔1秒で測定した。カラムの較正には、分子量580~745万のポリスチレン標準試料(Shodex STANDARD、昭和電工社製)を使用し、三次式近似で行った。Mark-Houwink-Sakuradaの係数は、ポリスチレン標準試料に関しては、K=1.21×10-4、α=0.707、ポリプロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、および他のポリプロピレン系重合体に関しては、K=1.37×10-4、α=0.75を使用した。